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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】集合住宅
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20241001BHJP
   E04H 1/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
E04H1/02
E04H1/04 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020119052
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022015895
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三木 健史
(72)【発明者】
【氏名】目▲崎▼ 和也
(72)【発明者】
【氏名】安部 裕光
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 敦
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-332428(JP,A)
【文献】特開2005-113436(JP,A)
【文献】特開2000-104411(JP,A)
【文献】特開昭63-176572(JP,A)
【文献】特開2000-274093(JP,A)
【文献】特開平09-275780(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0296769(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/02
E04H 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3戸以上の住戸を備え、前記住戸それぞれの玄関前の領域が繋がった共通領域を有し、前記共通領域において道路から前記玄関までの玄関アプローチ以外の少なくとも一部が植栽領域と区画される集合住宅であって、
複数の前記住戸それぞれの住戸前領域のうちの少なくとも1つの前記住戸前領域の構成は、他の前記住戸の住戸前領域の構成と異なり、
複数の前記住戸の住戸前領域それぞれに植栽領域が設けられ、
前記共通領域には、前記植栽領域が他の植栽領域と繋がらない独立植栽領域と、前記植栽領域が他の植栽領域と繋がる連結植栽領域とが設けられ、
複数の前記住戸の住戸前領域に構成される前記玄関アプローチとして、直線玄関アプローチと非直線玄関アプローチとを含み、
前記直線玄関アプローチは、道路側の端縁と玄関側の端縁とを結ぶ第1仮想直線が、道路に沿う第2仮想直線と直交するように構成され、
前記非直線玄関アプローチは、道路側の端縁と玄関側の端縁とを結ぶ第3仮想直線が、前記第2仮想直線と斜めに交差するように構成され、
前記非直線玄関アプローチが構成された前記住戸前領域と前記直線玄関アプローチが構成された他の住戸前領域とが隣接し、前記第1仮想直線と前記第3仮想直線とが前記共通領域よりも道路側ではなく住戸側で交差する状態において、前記直線玄関アプローチと前記非直線玄関アプローチとの間には前記連結植栽領域が設けられる
集合住宅。
【請求項2】
複数の前記住戸のうちの少なくとも1つの住戸において、前記住戸の玄関の配置が、他の住戸の玄関の配置と異なり、かつ、道路から前記玄関までの玄関アプローチの配置が、他の住戸の前記玄関アプローチの配置と異なることによって、前記住戸の住戸前領域の構成が他の住戸の住戸前領域と異なる
請求項1に記載の集合住宅。
【請求項3】
複数の前記住戸のうちの少なくとも1つの住戸において、前記住戸の玄関は、前記住戸に隣接する住戸の玄関に隣り合うように配置される
請求項2に記載の集合住宅。
【請求項4】
複数の前記植栽領域に亘るように設けられる暗渠をさらに備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の集合住宅。
【請求項5】
前記連結植栽領域に植栽される植物の種類は、前記独立植栽領域に植栽される植物の種類と異なる
請求項1~4のいずれか一項に記載の集合住宅。
【請求項6】
前記複数の住戸のそれぞれは、複数の階を有し、
複数の前記住戸のうちの少なくとも1つの前記住戸のフロア構成は、他の住戸のフロア構成と異なる
請求項1~のいずれか一項に記載の集合住宅。
【請求項7】
複数の前記住戸のうちで少なくとも1つの前記住戸において居室が設けられる階は、他の住戸において居室が設けられる階と異なる
請求項に記載の集合住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の住戸から構成される集合住宅が知られている。特許文献1は、第1の住戸および第2の住戸が左右の方向に隣接して配置される集合住宅の一例を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-152679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、集合住宅の前には、植物が植えられる植栽領域が設けられる場合がある。このような領域の活用は、住環境を向上させることに寄与する。しかし、植栽領域が画一的である場合、植栽領域の活用法が単調なものとなりやすく改善の余地がある。
本発明は、上記課題を解決するための発明であり、住環境が向上する集合住宅を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に関する集合住宅は、3戸以上の住戸を備え、前記住戸それぞれの玄関前の領域が繋がった共通領域を有し、前記共通領域において道路から前記玄関までの玄関アプローチ以外の少なくとも一部が植栽領域に区画される集合住宅であって、複数の前記住戸それぞれの住戸前領域のうちの少なくとも1つの前記住戸前領域の構成は、他の前記住戸の住戸前領域の構成と異なる。
【0006】
上記集合住宅によれば、少なくとも1つの住戸前領域の構成が他の住戸前領域の構成と異なることから、共通領域の複数の植栽領域について大きさまたは形状を異ならせることが出来る。この結果、共通領域における植栽領域の活用が単調なものになり難くなる。このようにして、集合住宅の住環境が向上する。
【0007】
(2)上記(1)の集合住宅において、複数の前記住戸のうちの少なくとも1つの住戸において、前記住戸の玄関の配置が、他の住戸の玄関の配置と異なり、かつ、道路から前記玄関までの玄関アプローチの配置が、他の住戸の前記玄関アプローチの配置と異なることによって、前記住戸の住戸前領域の構成が他の住戸の住戸前領域と異なる。
上記集合住宅によれば、植栽領域の活用が単調なものになりにくい。このようにして、集合住宅の住環境が向上する。
【0008】
(3)上記(2)の集合住宅において、複数の前記住戸のうちの少なくとも1つの住戸において、前記住戸の玄関は、前記住戸に隣接する住戸の玄関に隣り合うように配置される。
上記集合住宅によれば、広い植栽領域を設けることができる。このため、植栽領域の活用が単調なものになりにくい。
【0009】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つの集合住宅において、複数の前記住戸の住戸前領域それぞれに植栽領域が設けられ、前記共通領域には、前記植栽領域が他の植栽領域と繋がらない独立植栽領域と、前記植栽領域が他の植栽領域と繋がる連結植栽領域とが設けられる。
上記集合住宅によれば、様々な形態の植栽領域が設けられるため、様々な方法で住戸前領域の活用できる。このため、集合住宅の住環境が向上する。
【0010】
(5)上記(4)の集合住宅において、複数の前記植栽領域に亘るように設けられる暗渠をさらに備える。
上記集合住宅によれば、暗渠によって水はけが向上する。これによって、植栽領域の植物を好適な状態に維持できる。
【0011】
(6)上記(4)または(5)の集合住宅において、前記連結植栽領域に植栽される植物の種類は、前記独立植栽領域に植栽される植物の種類と異なる。
上記集合住宅によれば、植栽領域ごとに異なる種類の植物を植栽することで、共通領域における生物多様性が向上する。
【0012】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つの集合住宅において、前記複数の住戸のそれぞれは、複数の階を有し、複数の前記住戸のうちの少なくとも1つの前記住戸のフロア構成は、他の住戸のフロア構成と異なる。
上記集合住宅によれば、フロア構成が異なる複数の住戸を提供できる。
【0013】
(8)上記(7)の集合住宅において、複数の前記住戸のうちで少なくとも1つの前記住戸において居室が設けられる階は、他の住戸において居室が設けられる階と異なる。
上記集合住宅によれば、居室が設けられている階が異なる複数の住戸を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に関する集合住宅によれば、住環境が向上する集合住宅を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の集合住宅の正面図。
図2図1のII-II線に沿う集合住宅の断面図。
図3】第1住戸から第3住戸の一例を示す集合住宅の断面図。
図4】第1住戸から第3住戸の一例を示す集合住宅の断面図。
図5】第2住戸のフロア構成の一例を示す模式図。
図6】第3住戸のフロア構成の一例を示す模式図。
図7】従来の集合住宅の一例を示す集合住宅の図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
図1図7を参照して、実施形態の集合住宅10について説明する。一例では、集合住宅10は、居住者が生活する複数の住戸20を備える。任意の1戸の住戸20は、他の住戸20に隣接するように配置され、または、2つの他の住戸20の間に配置される。実施形態の集合住宅10は、少なくとも第1住戸20A、第2住戸20B、および、第3住戸20Cを含む。図1に示される例では、集合住宅10は、第4住戸20D、第5住戸20E、第6住戸20F、および、第7住戸20Gをさらに備える。住戸20A~住戸20Gは、一例では道路Rに沿って一列で配置される。
【0017】
住戸20は、居住者が出入りするための玄関21、1つまたは複数の部屋22、居住者が玄関21に別途出入りするための勝手口23を備える。勝手口23は、住戸20の外側床部24から部屋22に出入りするために使用される。外側床部24には、例えばバルコニーやベランダが形成される。各住戸20の外側床部24は、壁部25により区分される。好ましくは、玄関21と勝手口23とは、部屋22を挟んだ場所にそれぞれ設けられる。
【0018】
住戸20は、1つまたは複数のフロアFを備える。各フロアFは、居住者の生活様式に応じた1つまたは複数の部屋22を含む。居住者の生活様式に応じた部屋22は、例えば寝室B、居室L、応接室、および、台所である。図示される例では、住戸20A~20Gは、第1フロアF1、第2フロアF2、第3フロアF3を備える。第1フロアF1の上方に第2フロアF2が形成される。第2フロアF2の上方に第3フロアF3が形成される。各フロアF間の移動手段は、例えば階段Sである。別の例では、各フロアF間の移動手段は、エレベータである。
【0019】
住戸20は、1つまたは複数の窓26を備える。窓26の形状および大きさは、任意に設定される。好ましくは、部屋22の用途に応じて窓26の形状および大きさが設定される。一例では、居室Lとして使用されると想定する部屋22の窓26は、寝室Bとして使用されると想定する部屋22の窓26よりも大きい。好ましくは、少なくとも居室Lとして使用されると想定する部屋22の窓26は、開閉可能に構成される。例えば、窓26は、開き窓に構成される。
【0020】
図2に示されるように、集合住宅10は、共通領域30を備える。共通領域30は、住戸20それぞれの住戸前領域31が繋がった部分である。住戸20の玄関21と道路Rとの間には、居住者が通行することに適した玄関アプローチ21Aが構成される。玄関アプローチ21Aは、好ましくは透水性を備える舗装により構成される。玄関21には、庇が設けられ玄関ポーチが形成されていてもよい。
【0021】
共通領域30は、植栽領域40を含む。植栽領域40は、玄関21および玄関アプローチ21Aの領域を含まない住戸前領域31に設けられる。植物は、一例では樹木類および草花の少なくとも1つを含む。樹木類は、高木類、高木類よりも背丈の低い中木類、中木類よりも背丈の低い低木類を含む。一例では、低木類は、成長した状態における背丈が1m未満である樹木である。中木類は、成長した状態における背丈が1m以上3m未満である樹木である。高木類は、成長した状態の背丈が3m以上である樹木である。植栽領域40は、例えば植栽桝を備える。植栽桝は、植物が生育可能な土壌および周囲を囲うブロックを備える。
【0022】
集合住宅10は、暗渠50をさらに備える。暗渠50は、植栽領域40の土壌環境を好適に維持または改良する機能を備える。暗渠50は、植栽領域40に供給される水の排出および植栽領域40の水分の保持の作用を備える。暗渠50は、複数の植栽領域40に亘るように共通領域30の地下に埋設される。一例では、暗渠50は、貫通孔を有する吸水管(「吸水渠」とも呼ばれる。)を有する。共通領域30の土壌は、植物が植えられる植栽層と、植栽層の下に設けられる砕石層とを備える。砕石層に吸水管が配置される。
【0023】
複数の住戸20それぞれの住戸前領域31について、少なくとも1つの住戸前領域31の構成は、他の住戸20の住戸前領域31の構成と異なるように構成される。具体的には、複数の住戸20のうちの少なくとも1つの住戸20において、住戸20の玄関21の配置が、他の住戸20の玄関21の配置と異なり、かつ、道路Rから玄関21までの玄関アプローチ21Aの配置が、他の住戸20の玄関アプローチ21Aの配置と異なる。このような構成によって、住戸20の住戸前領域31の構成が他の住戸20の住戸前領域31と異なっている。
【0024】
図3に示される例では、第1住戸20A~第3住戸20Cにおいて、第2住戸20Bの玄関21の位置が、第1住戸20Aおよび第3住戸20Cの玄関21の位置と異なる。一例では、第2住戸20Bの玄関21は、第3住戸20Cの玄関21に隣り合うように配置される。具体的には、第2住戸20Bの玄関21と第3住戸20Cの玄関21との間の距離が、第2住戸20Bの玄関21と第1住戸20Aの玄関21との間の距離より短くなるように、第2住戸20Bの玄関21が配置される。この構成によって、第2住戸20Bの住戸前領域31における玄関アプローチ21Aの配置は、他の住戸の玄関アプローチ21Aの配置と異なる。なお、第1住戸20A~第3住戸20Cにおいて、玄関アプローチ21Aそれぞれは、道路Rに対して同じ方向に延びる。
【0025】
第1住戸20A~第3住戸20Cの住戸前領域31それぞれには、1つの植栽領域40が設けられる。第3住戸20Cの住戸前領域31の植栽領域40は、他の植栽領域40から独立した独立植栽領域41を構成する。これに対して、第1住戸20Aの住戸前領域31の植栽領域40と第2住戸20Bの住戸前領域31の植栽領域40とは互いに繋がり、連結植栽領域42を構成する。すなわち、第1住戸20Aと第2住戸20Bとの前には、第1住戸20Aと第2住戸20Bとの間の境界を跨ぐように連結植栽領域42が形成される。連結植栽領域42の面積は、独立植栽領域41の面積よりも大きい。具体的には、連結植栽領域42に設けられる植栽桝42Aの面積は、独立植栽領域41に設けられる植栽桝41Aの面積よりも大きい。このため、連結植栽領域42には、独立植栽領域41に植えられる植物よりも大きい植物を植えることができ、または、独立植栽領域41に植えられる植物の数よりも多くの植物を植えることが出来る。これによって集合住宅10前の共通領域30に植えられる植物の多様性を増大できる。独立植栽領域41に設けられる植栽桝41Aには、例えば樹木類および草花のいずれか1種類の植物が植えられる。好ましくは、樹木類は低木類である。連結植栽領域42に設けられる植栽桝42Aは、例えば樹木類および草花から2種類以上が選択される。一例では、樹木類は高木類、中木類、および、草花の組み合わせである。
【0026】
図4に各住戸20の住戸前領域31の構成について別の例を説明する。図4に示される例では、第1住戸20A~第3住戸20Cにおいて、各住戸20の玄関21の位置は同一の位置に配置される。第1住戸20A~第3住戸20Cにおいて、第1住戸20Aの玄関アプローチ21Aの構成が、第2住戸20Bおよび第3住戸20Cの玄関アプローチ21Aの構成と異なる。第1住戸20Aの玄関アプローチ21Aは、隣接の第2住戸20Bから離れるように延びる。第2住戸20Bおよび第3住戸20Cの玄関アプローチ21Aは、道路Rに直交するように延びる。
【0027】
第1住戸20Aの住戸前領域31には、玄関アプローチ21Aを挟んで第1植栽領域40Aと第2植栽領域40Bとが設けられる。第2植栽領域40Bは、第1植栽領域40Aよりも第2住戸20Bに近い位置にある。第2住戸20Bの住戸前領域31には1つの植栽領域40が設けられる。第3住戸20Cの住戸前領域31には1つの植栽領域40が設けられる。第1住戸20Aの住戸前領域31の第1植栽領域40Aは、他の植栽領域40から独立した独立植栽領域41を構成する。第1住戸20Aの住戸前領域31の第2植栽領域40Bは、第2住戸20Bの住戸前領域31の植栽領域40に繋がる。第2植栽領域40Bと第2住戸20Bの住戸前領域31の植栽領域40とは互いに繋がり、連結植栽領域42を構成する。すなわち、第1住戸20Aと第2住戸20Bとの前には、第1住戸20Aと第2住戸20Bとの間の境界を跨ぐように連結植栽領域42が形成される。連結植栽領域42の面積は、独立植栽領域41の面積よりも大きい。具体的には、連結植栽領域42に設けられる植栽桝42Aの面積は、独立植栽領域41に設けられる植栽桝41Aの面積よりも大きい。このため、連結植栽領域42には、独立植栽領域41に植えられる植物よりも大きい植物を植えることができ、または、独立植栽領域41に植えられる植物の数よりも多くの植物を植えることが出来る。これによって集合住宅10前の共通領域30に植えられる植物の多様性を増大できる。
【0028】
第1住戸20A、第2住戸20B、および、第3住戸20Cの少なくとも1つの住戸のフロア構成は、他の住戸20と異なるフロア構成を有する。具体的には、集合住宅の住戸の各階のフロアFは、用途に応じた間取りに構成される。従来の集合住宅では、各住戸20のいずれの階のフロアFとも、他の住戸20の同階のフロアFと同じ間取りを有する。一方、本実施形態では、少なくとも1つの住戸20について所定の階のフロアFは、他の住戸20の同階のフロアFと異なる間取りを有する。一例では、住戸20前に大きい植栽領域40を有する住戸20は、住戸20前に小さい植栽領域40を有する住戸20と異なるフロア構成を有する。より具体的には、住戸前領域31が連結植栽領域42の一部となっている住戸20は、住戸前領域31が独立植栽領域41となっている住戸20と異なるフロア構成を有する。連結植栽領域42には高木類を植えることが可能であることから、住戸前領域31が連結植栽領域42の一部となっている住戸20では、居室Lから樹木の上の部分を眺めることが出来るように、各階のフロアFが構成される。例えば、1階よりも上の階に居室Lが設けられる。独立植栽領域41には高木類を植えることが難しく、草花が植えられることから、住戸前領域31が独立植栽領域41となっている住戸20では、居室Lから草花を眺めることが出来るように、各階のフロアFが構成される。例えば、1階に居室Lが設けられる。このように、住戸前領域31が連結植栽領域42の一部となっている住戸20において居室Lが設けられる階は、住戸前領域31が独立植栽領域41となっている住戸20において居室Lが設けられる階と異なる。好ましくは、住戸前の植栽領域40が連結植栽領域42の一部を含むような住戸20において居室Lが設けられる階は、住戸20前の植栽領域40が独立植栽領域41を含むような住戸20において居室Lが設けられる階よりも上階である。
【0029】
本実施形態では、このように、住戸20において所定用途のフロアFが設けられている階が、他の住戸20において同じ所定用途のフロアFが設けられている階と異なることを「フロア構成が異なる」という。
【0030】
図5に示される例は、図3における第2住戸20Bの1階の第1フロアF1から3階の第3フロアF3の構成を開示する。図6に示される例は、図3における第3住戸20Cの1階の第1フロアF1から3階の第3フロアF3の構成を開示する。
【0031】
第2住戸20Bは、2階の第2フロアF2における部屋22が寝室Bを含む。第2住戸20Bは、3階の第3フロアF3における部屋22が居室Lを含む。第2住戸20Bの前の植栽領域40は、連結植栽領域42の一部を含む。
【0032】
第3住戸20Cは、2階の第2フロアF2における部屋22が居室Lを含む。第1住戸20Aは、3階の第3フロアF3における部屋22が寝室Bを含む。第1住戸20Aの前の植栽領域40は、独立植栽領域41を含む。
【0033】
本実施形態の集合住宅10の作用について説明する。
図7に示される従来の集合住宅100は、各住戸120A~120Gの玄関121および玄関アプローチ121Aの構成は同一である。このため、共通領域130における植栽領域140の構成が画一的に構成される。本実施形態の集合住宅10は、各住戸20A~20Gの少なくとも1つは、玄関21の配置および玄関アプローチ21Aの少なくとも1つが他の住戸20と異なる構成を有する。このような構成によって、住戸20A~20Gのうちで少なくとも1戸において、住戸前の植栽領域40の大きさが他と植栽領域40と異なるようになり、植栽領域140の構成が画一的でなくなる。具体的には、共通領域30は、独立植栽領域41と連結植栽領域42とを含むようになる。連結植栽領域42は、独立植栽領域41よりも植物の生育可能な領域が広い。このため、独立植栽領域41および連結植栽領域42のそれぞれに適した植物を生育させることが可能である。例えば、独立植栽領域41には、草花または低木類を植えることが可能である。連結植栽領域42には、高木類および中木類を植えることが可能である。高木類、中木類、および、低木類は、常緑樹または落葉樹を含む。高木類は、中型の鳥類が好む樹木を含む。中型の鳥類は、例えばムクドリおよびヒヨドリである。中木類は、小鳥類が好む樹木を含む。小鳥類は、例えばウグイスおよびメジロである。低木類は、昆虫類が好む樹木を含む。昆虫類は、例えばアゲハチョウおよびモンシロチョウである。高木類、中木類、および、低木類は、集合住宅10が設けられる地域の気候に適した種類が選択されることが好ましい。集合住宅10が設けられる地域が比較的寒冷な地域の場合、高木類および中木類は例えば、オオヤマザクラ、イチイ、マユミ、ナナカマド、ガマズミの少なくとも1つが選択される。低木類は例えば、シラカバ、タニウヅキ、コナラ、ヤマハギの少なくとも1つが選択される。集合住宅10が設けられる地域が比較的温暖な地域の場合、高木類および中木類は例えば、ヤマザクラ、ソヨゴ、ニシキギ、コブシ、ヒサカキ、ヤマモモ、ユズリハ、トベラの少なくとも1つが選択される。低木類は例えば、ヤマハギ、リョウブ、クヌギ、イロハモミジ、シロダモ、サンショウの少なくとも1つが選択される。このように、共通領域30に植えることができる植物の種類が豊富になる。植物の種類が豊富になることによって、植物に集まる昆虫や鳥類を含む動物の種類が多様になり、集合住宅前の共通領域30において生物多様性の向上が図られる。集合住宅10の居住者は、多種多様な生物を身近に感ずることが出来るようになる。生物多様性の向上という点で集合住宅10および集合住宅10の周辺の住環境が向上する。
【0034】
また、以下の点において集合住宅10および集合住宅10の周辺の住環境が向上する。集合住宅10に植えられる植物の多様性によって集合住宅10周辺の景観が向上する。また、共通領域30に大きい樹木が植えられることによって、道路Rから集合住宅10に伝わる騒音を低減できる。また、集合住宅10の共通領域30に大きい樹木が植えられることによって大気汚染の低減に寄与する。また、集合住宅10の共通領域30に大きい樹木が植えられることによって住戸20内に飛砂が入ることを低減できる。
【0035】
本実施形態の集合住宅10によれば、以下の効果が得られる。
(1)複数の住戸20それぞれの住戸前領域31のうちの少なくとも1つの住戸前領域31の構成は、他の住戸20の住戸前領域31の構成と異なる。この構成によって、共通領域30の複数の植栽領域40について大きさまたは形状を異ならせることが出来る。この結果、共通領域30における植栽領域40の活用が単調なものになり難くなる。このようにして、集合住宅10の住環境が向上する。
【0036】
(2)複数の住戸20のうちの少なくとも1つの住戸20において、住戸20の玄関21の配置が、他の住戸20の玄関21の配置と異なる。また、住戸20において、道路から玄関21までの玄関アプローチ21Aの配置が、他の住戸20の玄関アプローチ21Aの配置と異なる。これによって、住戸20の住戸前領域31の構成が他の住戸20の住戸前領域31と異なる。この構成によれば、住戸20の住戸前領域31に設けられる植栽領域40の大きさまたは形状が異ならせることが出来る。この結果、植栽領域40の活用が単調なものになり難くなる。このようにして、集合住宅10の住環境が向上する。
【0037】
(3)複数の住戸20のうちの少なくとも1つの住戸20において、住戸20の玄関21は、その住戸20に隣接する住戸20の玄関21に隣り合うように配置されてもよい。上記集合住宅10によれば、広い植栽領域40を設けることができる。このため、植栽領域40の活用が単調なものになりにくい。
【0038】
(4)共通領域30には、独立植栽領域41と、連結植栽領域42とが設けられる。この構成によれば、様々な形態の植栽領域40を設けられるため、様々な方法で住戸前領域31の活用できる。このため、集合住宅10の住環境が向上する。
【0039】
(5)好ましくは、集合住宅10において、暗渠50が、複数の植栽領域40に亘るように設けられる。この構成によれば、暗渠50によって水はけが向上する。これによって、植栽領域40の植物を好適な状態に維持できる。
【0040】
(6)連結植栽領域42に植栽される植物の種類は、独立植栽領域41に植栽される植物の種類と異なることが好ましい。この構成によれば、植栽領域40ごとに異なる種類の植物を植栽することで、共通領域30における生物多様性が向上する。
【0041】
(7)複数の住戸20のそれぞれは、複数の階を有し、複数の住戸20のうちの少なくとも1つの住戸20のフロア構成は、他の住戸20のフロア構成と異なる。この構成によれば、フロア構成が異なる複数の住戸20を提供できる。
【0042】
(8)複数の住戸20のうちで少なくとも1つの住戸20において居室が設けられる階は、他の住戸20において居室が設けられる階と異なる。この構成によれば、居室が設けられている階が異なる複数の住戸20を提供できる。
【0043】
(変形例)
実施形態に関する説明は本発明に関する集合住宅が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明は、実施形態以外に例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0044】
・集合住宅10は、本実施形態の7戸よりも多く住戸20を備えていてもよい。さらに含まれる住戸20のうち、少なくとも1つ住戸20の玄関21と玄関アプローチ21Aの構成が、異なっていてもよい。
【0045】
・住戸20の少なくとも1つが1つのフロアFのみを有する平屋であってもよい。1階建ての住戸20の住戸前領域31には、独立植栽領域41が設けられ、2階以上の住戸20の住戸前領域31には、連結植栽領域42が設けられてもよい。
【0046】
・玄関21および玄関アプローチ21Aを照らす照明の明るさを、植栽領域40に応じて変更してもよい。一例では、独立植栽領域41に隣接する玄関21および玄関アプローチ21Aにおいて、草花に生息する昆虫および鳥類に配慮して、照度が低い照明を採用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…集合住宅
20…住戸
21…玄関
21A…玄関アプローチ
30…共通領域
31…住戸前領域
40…植栽領域
41…独立植栽領域
42…連結植栽領域
50…暗渠
L…居室
R…道路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7