(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1226 20160101AFI20241001BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20241001BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20241001BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20241001BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20241001BHJP
【FI】
H01M8/1226
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/2483
H01M8/0273
H01M8/0258
(21)【出願番号】P 2020119060
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青山 祐介
(72)【発明者】
【氏名】市原 敬士
(72)【発明者】
【氏名】安武 明
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-027014(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056320(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/004267(WO,A1)
【文献】特表2017-538257(JP,A)
【文献】特開2018-092909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/1226
H01M 8/12
H01M 8/2483
H01M 8/0273
H01M 8/0258
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード層とカソード層との間に電解質層を挟持したセルを支持するセルフレームを有する固体酸化物形燃料電池であって、
前記セルフレームは、中空部を備える中空部材から形成された本体部と、前記本体部に接続され前記セルを支持するセル支持部とを有し、
前記本体部は、入口側マニホールド部と、出口側マニホールド部と、前記入口側マニホールド部と前記出口側マニホールド部とを接続するフレーム部と、を有し、
前記フレーム部は前記セル支持部に支持された前記セルの周囲を囲む4辺を有する矩形形状をなし、
前記セルフレームはさらに、前記入口側マニホールド部に形成され前記中空部に連通する入口側マニホールド連通部と、前記出口側マニホールド部に形成され前記中空部に連通する出口側マニホールド連通部と、前記フレーム部に形成され前記セルと前記中空部とを連通し前記中空部を流れる流体を前記セルに供給する供給側セル連通部と、前記フレーム部に形成され前記セルと前記中空部とを連通し前記セルを流れる流体を前記中空部に排出する排出側セル連通部とを有
し、
前記供給側セル連通部は前記フレーム部の4辺のうちいずれか1辺に形成され、前記排出側セル連通部は前記供給側セル連通部を形成した前記1辺と対称位置の他の辺に形成され、前記セルを流れる流体の流れ方向を前記いずれか1辺から前記他の辺に向かう方向に設定してなる、固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記セルフレームの前記本体部は、前記入口側マニホールド部、前記出口側マニホールド部、および前記フレーム部を有する少なくとも2つの本体部構成体を積層して構成され、
一方の前記本体部構成体は、前記入口側マニホールド連通部および前記供給側セル連通部を有し、他方の前記本体部構成体は、前記出口側マニホールド連通部および前記排出側セル連通部を有し、
前記セルフレームの前記本体部は、少なくとも2つの前記本体部構成体を、前記供給側セル連通部および前記排出側セル連通部が前記セルに対して対称位置に配置された状態に積層されてなる、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記セルを支持した前記セルフレームに、流路部が形成されたセパレータを封止固定してなるセルユニットを有する、請求項1または請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
複数の前記セルユニットを積層し、前記セパレータと前記セルとの間に酸化剤流路と燃料流路とを形成したスタックを有する、請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記スタックは、複数の前記セルユニット毎の燃料または酸化剤の供給方向が異なる、請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
前記スタックは、少なくとも1つの前記セルユニット毎の燃料の供給方向が異なる、請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項7】
前記スタックは、少なくとも1つの前記セルユニット毎の酸化剤の供給方向が異なる、請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項8】
燃料および酸化剤の供給方式は、コフローとカウンターフローとの組み合わせ、または、燃料もしくは酸化剤の供給される向きが異なるクロスフローの組み合わせである、請求項6または請求項7に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項9】
前記セルフレームは、前記本体部における中空部の一部が封止されてなる、請求項8に記載の固体酸化物形燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell。以下、単に「SOFC」という。)は、アノード層とカソード層との間に電解質層を挟持したセルを有する。SOFCにおける発電性能は温度と正の相関があるため、SOFCの発電出力を向上させるためには、セルの反応面全体を高温に保持する必要がある。燃料電池は、発電によって生じる熱の一部が供給ガスの熱伝達によって輸送されることから、ガスの供給方式(コフロー、カウンターフロー、クロスフロー)を問わず、反応面に温度分布が生じることは避けられない。反応面の最高温度は材料の耐熱温度より低温である必要がある。反応面内の温度差が大きいと、反応面全体を高温化できず、発電出力の向上が阻害される。
【0003】
従来、セルの反応面の均熱を図ることによって、低電気抵抗、高出力を図る燃料電池のスタック構造が提案されている(特許文献1を参照)。このスタック構造は、正方形の内部マニホールド型セパレータを有し、正方形の4辺のそれぞれに、セルの中心に対して点対称位置に複数のアノードマニホールドおよびカソードマニホールドが形成されている。セパレータは、燃料電池の各段毎にセル中心に対して90°回転して積層されている。これによって、各セルにおける燃料および酸化剤の供給方式をクロスフローとし、さらに1段毎に燃料の流れ方向を直交させ、酸化剤の流れ方向を直交させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術は、セルごとにフロー方向を変えるために四辺にマニホールドが形成されており、1セル当たりマニホールドとマニホールドのシール部品等が最低4個必要となる。このように、マニホールドおよびマニホールドに付随する補機類の構造が複雑になり、実際に適用することが難しい。
【0006】
そこで、本発明は、単純な構造によってガスの供給方式(コフロー、カウンターフロー、クロスフロー)を組み合わせることが可能な固体酸化物形燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、アノード層とカソード層との間に電解質層を挟持したセルを支持するセルフレームを有する固体酸化物形燃料電池である。前記セルフレームは、中空部を備える中空部材から形成された本体部と、前記本体部に接続され前記セルを支持するセル支持部とを有する。前記本体部は、入口側マニホールド部と、出口側マニホールド部と、前記入口側マニホールド部と前記出口側マニホールド部とを接続するフレーム部と、を有する。前記フレーム部は前記セル支持部に支持された前記セルの周囲を囲む4辺を有する矩形形状をなす。前記セルフレームはさらに、前記入口側マニホールド部に形成され
前記中空部に連通する入口側マニホールド連通部と、前記出口側マニホールド部に形成され前記中空部に連通する出口側マニホールド連通部と、前記フレーム部に形成され前記セルと前記中空部とを連通し前記中空部を流れる流体を前記セルに供給する供給側セル連通部と、前記フレーム部に形成され前記セルと前記中空部とを連通し前記セルを流れる流体を前記中空部に排出する排出側セル連通部とを有する。前記供給側セル連通部は前記フレーム部の4辺のうちいずれか1辺に形成され、前記排出側セル連通部は前記供給側セル連通部を形成した前記1辺と対称位置の他の辺に形成され、前記セルを流れる流体の流れ方向を前記いずれか1辺から前記他の辺に向かう方向に設定してなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セルフレームの本体部を構成する中空部材の中空部をガスの流通路として使用する。セルフレームの本体部の基本構造を同じにしたまま、供給側セル連通部および排出側セル連通部の形成位置を変更することによって、ガスの流れ方向を選択できる。したがって、単純な構造によってガスの供給方式(コフロー、カウンターフロー、クロスフロー)を組み合わせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】固体酸化物形燃料電池のセルスタックアッセンブリを、スカート、断熱材、一対のエンドプレート、およびスタックに分解した状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1の断熱材およびスタックを示す平面図である。
【
図3】
図1に示すスタックを、セルユニットに分解した状態を、ユニット間シールとともに示す斜視図である。
【
図4】
図3に示すセルユニットを、セルフレームおよびセパレータに分解し、さらに、セルフレームを本体部とセルを支持したセル支持部とに分解した状態を、ユニット間シールとともに示す斜視図である。
【
図5】セルユニットを積層した状態の
図4の5-5線に沿う断面図である。
【
図6】セルユニットとユニット間シールとを積層した状態の
図4の6-6線に沿う断面図である。
【
図7B】
図7Aにおいて一点鎖線によって囲まれる7B部を拡大して示す斜視図である。
【
図7D】セルフレームの本体部を構成する2つの本体部構成体を分離した状態を示す斜視図である。
【
図8】燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がコフローとカウンターフローとの組み合わせの場合におけるスタックの温度分布を模式的に示す図である。
【
図9A】燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をコフローとしたセルフレームの本体部を示す斜視図である。
【
図9B】
図9Aに示される上位側の第2本体部構成体を示す平面図である。
【
図9C】
図9Aに示される下位側の第1本体部構成体を示す平面図である。
【
図10A】燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をカウンターフローとしたセルフレームの本体部を示す斜視図である。
【
図11】燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がクロスフローとクロスフローとの組み合わせの場合におけるスタックの温度分布を模式的に示す図である。
【
図12A】燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をクロスフローとしたセルフレームの本体部を示す斜視図である。
【
図13A】燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をクロスフローとし、さらに燃料ガスが流れる方向を
図12Aに示される方向と逆方向としたセルフレームの本体部を示す斜視図である。
【
図14A】変形例1に係るセルフレームを適用したスタックであって、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がコフローとカウンターフローとの組み合わせの場合のスタックを模式的に示す図である。
【
図14B】燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をコフローとしたセルフレームの本体部を示す平面図である。
【
図14C】燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をカウンターフローとしたセルフレームの本体部を示す平面図である。
【
図15A】変形例1に係るセルフレームを適用したスタックであって、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がクロスフローとクロスフローとの組み合わせの場合のスタックを模式的に示す図である。
【
図15B】燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をクロスフローとしたセルフレームの本体部を示す平面図である。
【
図15C】燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をクロスフローとし、さらに燃料ガスが流れる方向を
図15Bに示される方向と逆方向としたセルフレームの本体部を示す平面図である。
【
図16A】セルフレームの連通部の変形例を示す斜視図である。
【
図16B】セルフレームの連通部の他の変形例を示す斜視図である。
【
図17A】セルフレームの中空部材の変形例を示す平面図である。
【
図17C】セルフレームの中空部材の変形例を示す
図17Bに相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図を参照しつつ、実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)について説明する。以下の説明の便宜のため、XYZ直交座標系を図中に示す。X軸およびY軸は水平方向、Z軸は上下方向にそれぞれ平行な軸を示す。
【0012】
図1は、実施形態に係るSOFCのセルスタックアッセンブリ10を、スカート11、断熱材12、上部エンドプレート13a、下部エンドプレート13b、およびスタック14に分解した状態を示す斜視図、
図2は、断熱材12およびスタック14を示す平面図である。
図3は、スタック14を、セルユニット20に分解した状態を、ユニット間シール30とともに示す斜視図である。
図4は、セルユニット20を、セルフレーム100およびセパレータ110に分解し、さらに、セルフレーム100を本体部120とセル130を支持したセル支持部140とに分解した状態を、ユニット間シール30とともに示す斜視図である。
図5は、セルユニット20を積層した状態の
図4の5-5線に沿う断面図、
図6は、セルユニット20とユニット間シール30とを積層した状態の
図4の6-6線に沿う断面図である。
【0013】
図1に示すように、実施形態に係るSOFCのセルスタックアッセンブリ10は、スタック14と、スタック14を上下から挟み込む上部エンドプレート13aおよび下部エンドプレート13bと、スタック14の周囲を覆う断熱材12と、断熱材12の側面部を覆うスカート11と、を有する。スカート11は、上部エンドプレート13aおよび下部エンドプレート13bに溶接またはボルト締結される。
【0014】
図2に示すように、スタック14と断熱材12との間の閉空間15、16は、酸化剤ガスが流れる流路を形成する。図中左側の閉空間15が酸化剤ガス用の入口側マニホールド部を構成し、図中右側の閉空間16が酸化剤ガス用の出口側マニホールド部を構成する。酸化剤ガスは、X正方向に流れる。
【0015】
図3に示すように、スタック14は、複数のセルユニット20がユニット間シール30を介して積層されている。以下、図中にZ軸で示すスタック14の上下方向を「積層方向」とも称する。また、セルユニット20を構成する各層の面方向は、XY面方向に相当する。
【0016】
図4および
図5に示すように、セルユニット20は、セル130と、セル130を支持するセルフレーム100と、流路部が形成されたセパレータ110と、を有する。セルユニット20は、セル130を支持したセルフレーム100にセパレータ110が封止固定されている。
【0017】
セル130は、アノード層131と、カソード層132と、電解質層133と、を有する。電解質層133は、アノード層131とカソード層132との間に挟持される。カソード層132は、酸化剤極であって、酸化剤ガス(例えば空気に含まれる酸素)と電子を反応させて、酸素分子を酸化物イオンに変換する。カソード層132の形成材料は、例えば、ランタン、ストロンチウム、マンガン、コバルト等からなる酸化物が挙げられる。電解質層133は、燃料ガスと酸化剤ガスを分離する機能を有する。電解質層133は、カソード層132からアノード層131に向かって酸化物イオンを通過させつつ、ガスと電子を通過させない。電解質層133の形成材料は、特に限定されないが、例えば、希土類酸化物(例えば、Y2O3、Sc2O3、Gd2O3、Sm2O3、Yb2O3、Nd2O3等から選択される1種または2種以上)をドープした安定化ジルコニア、セリア系固溶体、ペロブスカイト型酸化物(例えば、SrCeO3、BaCeO3、CaZrO3、SrZrO3等)等の固体酸化物セラミックスなどが挙げられる。アノード層131は、燃料極であって、燃料ガス(例えば水素)と酸化物イオンを反応させて、燃料ガスの酸化物を生成するとともに電子を取り出す。アノード層131の形成材料としては、例えば、NiやFe等の金属や、該金属と上記電解質層133の形成材料として挙げたセラミックスとのサーメットなどが挙げられる。アノード層131は、複数の空孔が形成された多孔体である。アノード層131内の空孔には、触媒が含浸される。アノード層131の触媒としては、例えば、NiやCu等の金属触媒を用いることができる。
【0018】
セルフレーム100は、セル130を支持する。セルフレーム100は、中空部122を備える中空部材121から形成された本体部120と、本体部120に接続されセル130を支持するセル支持部140とを有する。
【0019】
セルフレーム100の本体部120は、入口側マニホールド部151と、出口側マニホールド部152と、入口側マニホールド部151と出口側マニホールド部152とを接続するフレーム部153と、を有する。本体部120は、中空部材121の中空部122を燃料ガスが流通する通路として利用する。フレーム部153は、矩形形状を有し、第1フレーム161、第2フレーム162、第3フレーム163、および第4フレーム164から構成される。第1フレーム161は、X方向左手前側に位置し、Y方向に伸びている。第2フレーム162は、第1フレーム161からX正方向側に離れて第1フレーム161に対向し、Y方向に伸びている。第3フレーム163は、Y方向右手前側に位置し、X方向に伸びている。第4フレーム164は、第3フレーム163からY正方向側に離れて第3フレーム163に対向し、X方向に伸びている。図示例では、一対の入口側マニホールド部151は、第1フレーム161に、Y方向に離れて配置されている。一対の出口側マニホールド部152は、第2フレーム162に、Y方向に離れて配置されている。入口側マニホールド部151は、セル130に供給される燃料ガスが流通する。出口側マニホールド部152は、セル130から排出された燃料ガスが流通する。本体部120は、ガスを透過させない緻密な金属材料、例えば、ステンレスから形成される。セルフレーム100の本体部120の詳細な構成については後述する。
【0020】
セルフレーム100のセル支持部140は、セル130を周囲から保持する。
図5に示すように、セル支持部140は、薄板から形成され、セル130が配置される開口部141を有する。セル130のカソード層132は、セル支持部140の図中上面に接合される。セル支持部140は、ガスを透過させない緻密な金属材料、例えば、ステンレスから形成される。セル支持部140の表面は、絶縁処理が施されている。セル支持部140の外周部は、溶接またはろう付けなどによって本体部120の図中下面に接合される。なお、
図5中の符号142は、セル130の外周縁部を覆ってシールするエッジシール142を示している。
【0021】
セパレータ110は、ガスの流路を区画形成する流路部113を有する。
図5に示すように、流路部113は凹凸形状を有する。図示例の流路部113は、一方向(X方向)に略直線状に伸びている。この形態の場合、流路部113に沿って流れるガスの流れ方向は、X方向となる。セパレータ110の外周部は、溶接またはろう付けなどによってセルフレーム100の本体部120の図中上面に接合される。
図4に示すように、セパレータ110は、セルフレーム100の入口側マニホールド部151に連通する第1流路111と、出口側マニホールド部152に連通する第2流路112とを有する。第1流路111および第2流路112は、燃料ガスが流通する。上述したように、スタック14は、複数のセルユニット20が積層されている。スタック14において、セパレータ110とセル130との間に酸化剤流路114と燃料流路115とが形成される。
図5の下位側のセルユニット20のセパレータ110に着目して、下位側のセル130におけるアノード層131との間の空間が燃料流路115であり、上位側のセル130におけるカソード層132との間の空間が酸化剤流路114である。
【0022】
ユニット間シール30は、セパレータ110の第1流路111および第2流路112から、酸化剤ガス用の流路に向かって燃料ガスが混入することを防止する。ユニット間シール30は、例えば、耐熱性およびシール性を有するサーミキュライトからなる。
【0023】
[セルフレーム100の本体部120の構成]
次に、セルフレーム100の本体部120の構成について説明する。
図7Aは、セルフレーム100を示す平面図、
図7Bは、
図7Aの7B部を拡大して示す斜視図、
図7Cは、
図7Aの7C-7C線に沿う断面図である。
図7Dは、セルフレーム100の本体部120を構成する2つの本体部構成体201、202を分離した状態を示す斜視図である。
【0024】
セルフレーム100の本体部120は、上述したように、中空部材121の中空部122を燃料ガスが流通する通路として利用する。セルフレーム100は、ガスの供給方式(コフロー、カウンターフロー、クロスフロー)を組み合わせることが可能な単純な構造を有する。なお、ガスの供給方式に関して、燃料ガスの流れる方向と酸化剤ガスの流れる方向とが平行の場合であって、同方向に流れる方式がコフローであり、逆方向に流れる方式がカウンターフローである。また、燃料ガスの流れる方向と酸化剤ガスの流れる方向とが垂直の場合がクロスフローである。
【0025】
図7A、
図7B、
図7C、および
図7Dを参照して、セルフレーム100の一態様を説明する。
図7Dに示される破線は、入口側マニホールド連通部、出口側マニホールド連通部、供給側セル連通部、および排出側セル連通部を模式的に示している。
【0026】
セルフレーム100は、中空部122を燃料ガス通路として利用するため、中空部122と外部とを連通する複数の連通部を有する。連通部は、入口側マニホールド連通部171、出口側マニホールド連通部172、供給側セル連通部173、および排出側セル連通部174を有する。入口側マニホールド連通部171は、入口側マニホールド部151に形成され、中空部122に連通する。入口側マニホールド連通部171は、入口側マニホールド部151から燃料ガスを中空部122に流入させる。出口側マニホールド連通部172は、出口側マニホールド部152に形成され、中空部122に連通する。出口側マニホールド連通部172は、中空部122から燃料ガスを出口側マニホールド部152に流出させる。供給側セル連通部173は、フレーム部153に形成され、セル130と中空部122とを連通する。供給側セル連通部173は、中空部122を流れる燃料ガスをセル130に供給する。排出側セル連通部174は、フレーム部153に形成され、セル130と中空部122とを連通する。排出側セル連通部174は、セル130を流れた燃料ガスを中空部122に排出する。
【0027】
図7B、
図7C、および
図7Dに示すように、本体部120は、入口側マニホールド部151、出口側マニホールド部152、およびフレーム部153を有する2つの本体部構成体201、202を積層して構成することができる。説明の便宜上、図中下位側に示される一方の本体部構成体201を第1本体部構成体201と言い、上位側に示される他方の本体部構成体202を第2本体部構成体202と言う。
図7Dに示すように、第1本体部構成体201は、入口側マニホールド連通部171および供給側セル連通部173を有し、第2本体部構成体202は、出口側マニホールド連通部172および排出側セル連通部174を有する。第1本体部構成体201の入口側マニホールド連通部171は、入口側マニホールド部151の内周縁に形成される。第2本体部構成体202の出口側マニホールド連通部172は、出口側マニホールド部152の内周縁に形成される。第1本体部構成体201の供給側セル連通部173は、フレーム部153の第1フレーム161に、X正方向に向かって開口して形成される。第2本体部構成体202の排出側セル連通部174は、フレーム部153の第2フレーム162に、X負方向に向かって開口して形成される。このように、セルフレーム100の本体部120は、第1本体部構成体201および第2本体部構成体202を、供給側セル連通部173および排出側セル連通部174がセル130に対して対称位置に配置された状態に積層される。
【0028】
図7Cに示すように、第1本体部構成体201および第2本体部構成体202のそれぞれは、断面凹形状を有する一対のケース体210を有する。ケース体210は、例えば、本体部120の平面形状に対応したステンレスからなる枠材(厚さは例えば1mm程度)に、エッチング加工を施すことによって凹部が形成される。一対のケース体210は、凹部同士が向かい合わされ、溶接などによって固定される。その後、
図7Aおよび
図7Bに示すように、ケース体210の縁部に半円状の穴加工をZ方向に施すことによって、連通部(
図7Aおよび
図7Bにおいては、出口側マニホールド連通部172および排出側セル連通部174)が形成される。連通部は、所望の位置に、所望のピッチで形成できる。第1本体部構成体201および第2本体部構成体202は、連通部を形成する前の段階では、共通の構造を有する。第1本体部構成体201および第2本体部構成体202は、連通部を形成する位置が異なるだけである。
図7Dから明らかなように、第1本体部構成体201および第2本体部構成体202がXY平面において点対称の構造を有する場合には、第1本体部構成体201および第2本体部構成体202は、同一の本体部構成体をXY平面において180度回転させて使用できる。
【0029】
第1本体部構成体201および第2本体部構成体202のそれぞれは、ケース体210同士を固定する溶接部によって自身の剛性を確保できる。セルフレーム100の本体部120は、積層した第1本体部構成体201および第2本体部構成体202が溶接などによって固定される。セルフレーム100は、本体部120にセル支持部140(金属薄板)を接合することによって、全体の剛性を確保できる。
【0030】
[コフローとカウンターフローとの組み合わせ]
次に、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がコフローとカウンターフローとの組み合わせの場合におけるスタック14の温度分布について説明する。
図8は、スタック14の温度分布を模式的に示す図である。
図9Aは、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をコフローとしたセルフレーム100の本体部120を示す斜視図、
図9Bは、上位側の第2本体部構成体202を示す平面図、
図9Cは、下位側の第1本体部構成体201を示す平面図である。
図10Aは、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をカウンターフローとしたセルフレーム100の本体部120を示す斜視図、
図10Bは、上位側の第2本体部構成体204を示す平面図、
図10Cは、下位側の第1本体部構成体203を示す平面図である。
【0031】
各図において、実線矢印は燃料ガスの流れを示し、破線矢印は酸化剤ガスの流れを示している。
図9A、
図9B、
図9C、
図10A、
図10B、および
図10Cに示される破線は、入口側マニホールド連通部171、出口側マニホールド連通部172、供給側セル連通部173、および排出側セル連通部174を模式的に示している。
【0032】
図8に示すように、このスタック14において、図中上側から1段目、3段目、5段目のセルユニット20内の燃料ガスはX正方向に流れ、2段目、4段目のセルユニット20内の燃料ガスはX負方向に流れる。酸化剤ガスは、セルユニット20間をX正方向に流れる。したがって、1段目、3段目、5段目のセルユニット20は、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がコフローとなる。2段目、4段目のセルユニット20は、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がカウンターフローとなる。
【0033】
(ガスの供給方式がコフローのセルフレーム100)
図9A、
図9B、および
図9Cに示すように、第1本体部構成体201は、入口側マニホールド連通部171および供給側セル連通部173を有し、第2本体部構成体202は、出口側マニホールド連通部172および排出側セル連通部174を有する。第1本体部構成体201の入口側マニホールド連通部171は、入口側マニホールド部151の内周縁に形成される。第2本体部構成体202の出口側マニホールド連通部172は、出口側マニホールド部152の内周縁に形成される。第1本体部構成体201の供給側セル連通部173は、フレーム部153の第1フレーム161に、X正方向に向かって開口して形成される。第2本体部構成体202の排出側セル連通部174は、第2フレーム162に、X負方向に向かって開口して形成される。
【0034】
図9Aおよび
図9Cに示すように、入口側マニホールド部151を流通する燃料ガスは、第1本体部構成体201の入口側マニホールド連通部171を通って中空部122に流入する。燃料ガスは、第1フレーム161内を流れ、供給側セル連通部173を通ってセル130に向けて供給される。燃料ガスは、セル130のアノード層131の上をX正方向に流れる。セパレータ110の燃料ガス用の流路部113は、X方向に略直線状に伸びている(
図5を参照)。
【0035】
図9Aおよび
図9Bに示すように、セル130を通過した燃料ガスは、第2本体部構成体202の排出側セル連通部174を通って中空部122に排出される。燃料ガスは、第2フレーム162内を流れ、出口側マニホールド連通部172を通って出口側マニホールド部152に流出する。
【0036】
図9Bおよび
図9Cに示すように、酸化剤ガス用の入口側マニホールド部15は、燃料ガス用の一対の入口側マニホールド部151の間に形成され、酸化剤ガス用の出口側マニホールド部16は、燃料ガス用の一対の出口側マニホールド部152の間に形成される(
図2も参照)。酸化剤ガスは、セル130のカソード層132の上をX正方向に流れる。セパレータ110の酸化剤ガス用の流路部113は、X方向に略直線状に伸びている(
図5を参照)。
【0037】
このように、
図9A、
図9B、および
図9Cに示されるセルフレーム100を備えることによって、燃料ガスはセルユニット20内をX正方向に流れ、酸化剤ガスは積層方向に隣り合うセルユニット20との間をX正方向に流れる。燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式はコフローとなる。
【0038】
(ガスの供給方式がカウンターフローのセルフレーム100)
図10A、
図10B、および
図10Cに示すように、上述したセルフレーム100と異なり、第1本体部構成体203の供給側セル連通部173は、第2フレーム162に、X負方向に向かって開口して形成される。第2本体部構成体204の排出側セル連通部174は、第1フレーム161に、X正方向に向かって開口して形成される。
【0039】
図10Aおよび
図10Cに示すように、入口側マニホールド部151を流通する燃料ガスは、第1本体部構成体203の入口側マニホールド連通部171を通って中空部122に流入する。燃料ガスは、第3フレーム163および第4フレーム164内をX正方向に流れて第2フレーム162に達し、供給側セル連通部173を通ってセル130に向けて供給される。燃料ガスは、セル130のアノード層131の上をX負方向に流れる。セパレータ110の燃料ガス用の流路部113は、X方向に略直線状に伸びている(
図5を参照)。
【0040】
図10Aおよび
図10Bに示すように、セル130を通過した燃料ガスは、第2本体部構成体204の排出側セル連通部174を通って中空部122に排出される。燃料ガスは、第1フレーム161から第3フレーム163および第4フレーム164内をX正方向に流れて流れ、出口側マニホールド連通部172を通って出口側マニホールド部152に流出する。
【0041】
図10Bおよび
図10Cに示すように、酸化剤ガスは、セル130のカソード層132の上をX正方向に流れる。セパレータ110の酸化剤ガス用の流路部113は、X方向に略直線状に伸びている(
図5を参照)。
【0042】
このように、
図10A、
図10B、および
図10Cに示されるセルフレーム100を備えることによって、燃料ガスはセルユニット20内をX負方向に流れ、酸化剤ガスは積層方向に隣り合うセルユニット20との間をX正方向に流れる。燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式はカウンターフローとなる。
【0043】
(温度分布)
図8に示すように、同一のスタック14内において、ガスの供給方式をセルユニット20毎にコフローまたはカウンターフローに切り替えることができる。
【0044】
1段目、3段目、5段目のセルユニット20は、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がコフローである。この場合、セルユニット20の温度は、X正方向に沿って高くなる(温度分布301を参照)。2段目、4段目のセルユニット20は、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がカウンターフローである。この場合、セルユニット20の温度は、X正方向に沿って高くなるが、ほぼ中央部分を超えると、X正方向に沿って低くなる(温度分布302を参照)。このように温度分布が異なるセルユニット20を積層することによって、相互に伝熱して双方の温度ピークを打ち消し合う。このため、温度分布303のように、最高温度が低くなり、反応面内の温度勾配が減少する。反応面内の温度差を小さくできるため、温度分布304のように、反応面全体を高温化できる。その結果、発電出力の向上を図ることができる。さらに、反応面の出口付近が高温部となるため、セル温度の把握も容易となる。
【0045】
[クロスフローとクロスフローとの組み合わせ]
次に、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がクロスフローとクロスフローとの組み合わせの場合におけるスタック14の温度分布について説明する。
図11は、スタック14の温度分布を模式的に示す図である。
図12Aは、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をクロスフローとしたセルフレーム100の本体部120を示す斜視図、
図12Bは、上位側の第2本体部構成体206を示す平面図、
図12Cは、下位側の第1本体部構成体205を示す平面図である。
図13Aは、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をクロスフローとし、さらに燃料ガスが流れる方向を
図12Aに示される方向と逆方向としたセルフレーム100の本体部120を示す斜視図、
図13Bは、上位側の第2本体部構成体208を示す平面図、
図13Cは、下位側の第1本体部構成体207を示す平面図である。
【0046】
図11に示すように、このスタック14において、図中上側から1段目、3段目、5段目のセルユニット20内の燃料ガスはY負方向に流れ、2段目、4段目のセルユニット20内の燃料ガスはY正方向に流れる。酸化剤ガスは、セルユニット20間をX正方向に流れる。したがって、1段目、3段目、5段目のセルユニット20は、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がクロスフローであって、燃料ガスがY負方向に流れる。2段目、4段目のセルユニット20は、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がクロスフローであって、燃料ガスがY正方向に流れる。
【0047】
(ガスの供給方式がクロスフローのセルフレーム100(燃料ガスの流れ方向がY負方向))
図12A、
図12B、および
図12Cに示すように、第1本体部構成体205は、入口側マニホールド連通部171および供給側セル連通部173を有し、第2本体部構成体206は、出口側マニホールド連通部172および排出側セル連通部174を有する。第1本体部構成体205の入口側マニホールド連通部171は、入口側マニホールド部151の内周縁に形成される。第2本体部構成体206の出口側マニホールド連通部172は、出口側マニホールド部152の内周縁に形成される。第1本体部構成体205の供給側セル連通部173は、第4フレーム164に、Y負方向に向かって開口して形成される。第2本体部構成体206の排出側セル連通部174は、第3フレーム163に、Y正方向に向かって開口して形成される。
【0048】
図12Aおよび
図12Cに示すように、入口側マニホールド部151を流通する燃料ガスは、第1本体部構成体205の入口側マニホールド連通部171を通って中空部122に流入する。燃料ガスの一部は、第1フレーム161内をY正方向に流れて第4フレーム164に達する。燃料ガスの残余は、第3フレーム163内をX正方向に流れ、第2フレーム162内をY正方向に流れて第4フレーム164に達する。燃料ガスは、供給側セル連通部173を通ってセル130に向けて供給される。燃料ガスは、セル130のアノード層131の上をY負方向に流れる。図示省略するが、セパレータ110の燃料ガス用の流路部113は、Y方向に略直線状に伸びている。
【0049】
図12Aおよび
図12Bに示すように、セル130を通過した燃料ガスは、第2本体部構成体206の排出側セル連通部174を通って中空部122に排出される。燃料ガスの一部は、第3フレーム163内をX正方向に流れ、出口側マニホールド連通部172に達する。燃料ガスの残余は、第3フレーム163内をX負方向に流れ、第1フレーム161内をY正方向に流れ、第4フレーム164をX正方向に流れ、出口側マニホールド連通部172に達する。燃料ガスは、出口側マニホールド連通部172を通って出口側マニホールド部152に流出する。
【0050】
図12Bおよび
図12Cに示すように、酸化剤ガスは、セル130のカソード層132の上をX正方向に流れる。セパレータ110の酸化剤ガス用の流路部113は、X方向に略直線状に伸びている(
図5を参照)。
【0051】
このように、
図12A、
図12B、および
図12Cに示されるセルフレーム100を備えることによって、燃料ガスはセルユニット20内をY負方向に流れ、酸化剤ガスは積層方向に隣り合うセルユニット20との間をX正方向に流れる。燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式はクロスフローとなる(燃料ガスの流れ方向がY負方向)。
【0052】
(ガスの供給方式がクロスフローのセルフレーム100(燃料ガスの流れ方向がY正方向))
図13A、
図13B、および
図13Cに示すように、上述したセルフレーム100と異なり、第1本体部構成体207の供給側セル連通部173は、第3フレーム163に、Y正方向に向かって開口して形成される。第2本体部構成体208の排出側セル連通部174は、第4フレーム164に、Y負方向に向かって開口して形成される。
【0053】
図13Aおよび
図13Cに示すように、入口側マニホールド部151を流通する燃料ガスは、第1本体部構成体207の入口側マニホールド連通部171を通って中空部122に流入する。燃料ガスの一部は、第1フレーム161内をY負方向に流れて第3フレーム163に達する。燃料ガスの残余は、第4フレーム164内をX正方向に流れ、第2フレーム162内をY負方向に流れて第3フレーム163に達する。燃料ガスは、供給側セル連通部173を通ってセル130に向けて供給される。燃料ガスは、セル130のアノード層131の上をY正方向に流れる。図示省略するが、セパレータ110の燃料ガス用の流路部113は、Y方向に略直線状に伸びている。
【0054】
図13Aおよび
図13Bに示すように、セル130を通過した燃料ガスは、第2本体部構成体208の排出側セル連通部174を通って中空部122に排出される。燃料ガスの一部は、第4フレーム164内をX正方向に流れ、出口側マニホールド連通部172に達する。燃料ガスの残余は、第4フレーム164内をX負方向に流れ、第1フレーム161内をY負方向に流れ、第3フレーム163をX正方向に流れ、出口側マニホールド連通部172に達する。燃料ガスは、出口側マニホールド連通部172を通って出口側マニホールド部152に流出する。
【0055】
図13Bおよび
図13Cに示すように、酸化剤ガスは、セル130のカソード層132の上をX正方向に流れる。セパレータ110の酸化剤ガス用の流路部113は、X方向に略直線状に伸びている(
図5を参照)。
【0056】
このように、
図13A、
図13B、および
図13Cに示されるセルフレーム100を備えることによって、燃料ガスはセルユニット20内をY正方向に流れ、酸化剤ガスは積層方向に隣り合うセルユニット20との間をX正方向に流れる。燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式はクロスフローとなる(燃料ガスの流れ方向がY正方向)。
【0057】
(温度分布)
図11に示すように、同一のスタック14内において、ガスの供給方式をセルユニット20毎にクロスフロー(燃料ガスの流れ方向がY負方向)またはクロスフロー(燃料ガスの流れ方向がY正方向)に切り替えることができる。
【0058】
1段目、3段目、5段目のセルユニット20は、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がクロスフローである(燃料ガスの流れ方向がY負方向)。この場合、セルユニット20の温度は、略同心円状に高くなり、ほぼ中央部分からX正方向およびY負方向に若干ずれた部分が最も高くなる(温度分布305を参照)。2段目、4段目のセルユニット20は、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がクロスフローである(燃料ガスの流れ方向がY正方向)。この場合、セルユニット20の温度は、略同心円状に高くなり、ほぼ中央部分からX正方向およびY正方向に若干ずれた部分が最も高くなる(温度分布306を参照)。このように温度分布が異なるセルユニット20を積層することによって、相互に伝熱して双方の温度ピークを打ち消し合う。このため、温度分布307のように、最高温度が低くなり、反応面内の温度勾配が減少する。反応面内の温度差を小さくできるため、反応面全体を高温化できる。その結果、発電出力の向上を図ることができる。さらに、反応面の出口付近が高温部となるため、セル温度の把握も容易となる。
【0059】
[セルフレーム100の変形例1]
上述したセルフレーム100は、本体部120が2枚の本体部構成体201、202等を積層して構成されているが、この場合に限定されるものではない。セルフレーム100は、本体部120が1層であってもよい。以下、変形例1に係るセルフレーム100を適用して、コフローとカウンターフローとを組み合わせたスタック14、およびクロスフローとクロスフローとを組み合わせたスタック14のそれぞれを説明する。
【0060】
[コフローとカウンターフローとの組み合わせ]
図14Aは、変形例1に係るセルフレーム100を適用したスタック14であって、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がコフローとカウンターフローとの組み合わせの場合のスタック14を模式的に示す図である。
図14Bは、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をコフローとしたセルフレーム100の本体部221を示す平面図、
図14Cは、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をカウンターフローとしたセルフレーム100の本体部222を示す平面図である。
【0061】
図14Aに示すように、このスタック14において、図中上側から1段目、3段目、5段目のセルユニット20内の燃料ガスはX正方向に流れ、2段目、4段目のセルユニット20内の燃料ガスはX負方向に流れる。酸化剤ガスは、セルユニット20間をX正方向に流れる。したがって、1段目、3段目、5段目のセルユニット20は、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がコフローとなる。2段目、4段目のセルユニット20は、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がカウンターフローとなる。
【0062】
(ガスの供給方式がコフローのセルフレーム100)
図14Bに示すように、セルフレーム100の本体部221は、入口側マニホールド部151と、出口側マニホールド部152と、入口側マニホールド部151と出口側マニホールド部152とを接続するフレーム部153と、を有する。セルフレーム100はさらに、入口側マニホールド連通部171と、出口側マニホールド連通部172と、供給側セル連通部173と、排出側セル連通部174とを有する。1つの入口側マニホールド部151は、フレーム部153の第1フレーム161に、Y負方向の端部に配置されている。1つの出口側マニホールド部152は、第2フレーム162に、Y正方向の端部に配置されている。入口側マニホールド連通部171は、入口側マニホールド部151の内周縁に形成される。出口側マニホールド連通部172は、出口側マニホールド部152の内周縁に形成される。供給側セル連通部173は、第1フレーム161に、X正方向に向かって開口して形成される。排出側セル連通部174は、第2フレーム162に、X負方向に向かって開口して形成される。
【0063】
本体部221は、第1フレーム161から第3フレーム163へのガス流れを遮断する第1仕切板231、第1フレーム161から第4フレーム164へのガス流れを遮断する第2仕切板232、第2フレーム162から第3フレーム163へのガス流れを遮断する第3仕切板233、第2フレーム162から第4フレーム164へのガス流れを遮断する第4仕切板234を有する。
【0064】
入口側マニホールド部151を流通する燃料ガスは、入口側マニホールド連通部171を通って中空部122に流入する。燃料ガスは、第1フレーム161内を流れ、供給側セル連通部173を通ってセル130に向けて供給される。燃料ガスは、セル130のアノード層131の上をX正方向に流れる。セパレータ110の燃料ガス用の流路部113は、X方向に略直線状に伸びている(
図5を参照)。
【0065】
セル130を通過した燃料ガスは、排出側セル連通部174を通って第2フレーム162内に排出される。燃料ガスは、第2フレーム162内を流れ、出口側マニホールド連通部172を通って出口側マニホールド部152に流出する。
【0066】
酸化剤ガスは、セル130のカソード層132の上をX正方向に流れる。セパレータ110の酸化剤ガス用の流路部113は、X方向に略直線状に伸びている(
図5を参照)。
【0067】
このように、
図14Bに示される本体部221を備えることによって、燃料ガスはセルユニット20内をX正方向に流れ、酸化剤ガスは積層方向に隣り合うセルユニット20との間をX正方向に流れる。燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式はコフローとなる。
【0068】
(ガスの供給方式がカウンターフローのセルフレーム100)
図14Cに示すように、上述したセルフレーム100と異なり、供給側セル連通部173は、第2フレーム162に、X負方向に向かって開口して形成される。排出側セル連通部174は、第1フレーム161に、X正方向に向かって開口して形成される。
【0069】
本体部222は、入口側マニホールド連通部171から第1フレーム161へのガス流れを遮断する第5仕切板235、第2フレーム162から出口側マニホールド連通部172へのガス流れを遮断する第6仕切板236を有する。
【0070】
入口側マニホールド部151を流通する燃料ガスは、入口側マニホールド連通部171を通って中空部122に流入する。燃料ガスは、第3フレーム163内をX正方向に流れて第2フレーム162に達し、供給側セル連通部173を通ってセル130に向けて供給される。燃料ガスは、セル130のアノード層131の上をX負方向に流れる。セパレータ110の燃料ガス用の流路部113は、X方向に略直線状に伸びている(
図5を参照)。
【0071】
セル130を通過した燃料ガスは、排出側セル連通部174を通って第1フレーム161内に排出される。燃料ガスは、第1フレーム161から第4フレーム164内をX正方向に流れ、出口側マニホールド連通部172を通って出口側マニホールド部152に流出する。
【0072】
酸化剤ガスは、セル130のカソード層132の上をX正方向に流れる。セパレータ110の酸化剤ガス用の流路部113は、X方向に略直線状に伸びている(
図5を参照)。
【0073】
このように、
図14Cに示される本体部222を備えることによって、燃料ガスはセルユニット20内をX負方向に流れ、酸化剤ガスは積層方向に隣り合うセルユニット20との間をX正方向に流れる。燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式はカウンターフローとなる。
【0074】
(温度分布)
図14Aに示すように、変形例1に係るセルフレーム100を適用した場合においても、同一のスタック14内において、ガスの供給方式をセルユニット20毎にコフローまたはカウンターフローに切り替えることができる。
【0075】
温度分布は
図8に示した温度分布と同様であり、温度分布が異なるセルユニット20を積層することによって、相互に伝熱して双方の温度ピークを打ち消し合う。このため、最高温度が低くなり、反応面内の温度勾配が減少する。反応面内の温度差を小さくできるため、反応面全体を高温化できる。その結果、発電出力の向上を図ることができる。さらに、反応面の出口付近が高温部となるため、セル温度の把握も容易となる。
【0076】
[クロスフローとクロスフローとの組み合わせ]
図15Aは、変形例1に係るセルフレーム100を適用したスタック14であって、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がクロスフローとクロスフローとの組み合わせの場合のスタック14を模式的に示す図である。
図15Bは、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をクロスフローとしたセルフレーム100の本体部223を示す平面図、
図15Cは、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式をクロスフローとし、さらに燃料ガスが流れる方向を
図15Bに示される方向と逆方向としたセルフレーム100の本体部224を示す平面図である。
【0077】
図15Aに示すように、このスタック14において、図中上側から1段目、3段目、5段目のセルユニット20内の燃料ガスはY負方向に流れ、2段目、4段目のセルユニット20内の燃料ガスはY正方向に流れる。酸化剤ガスは、セルユニット20間をX正方向に流れる。したがって、1段目、3段目、5段目のセルユニット20は、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がクロスフローであって、燃料ガスがY負方向に流れる。2段目、4段目のセルユニット20は、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式がクロスフローであって、燃料ガスがY正方向に流れる。
【0078】
(ガスの供給方式がクロスフローのセルフレーム100(燃料ガスの流れ方向がY負方向))
図15Bに示すように、セルフレーム100の本体部223は、入口側マニホールド部151と、出口側マニホールド部152と、入口側マニホールド部151と出口側マニホールド部152とを接続するフレーム部153と、を有する。セルフレーム100はさらに、入口側マニホールド連通部171と、出口側マニホールド連通部172と、供給側セル連通部173と、排出側セル連通部174とを有する。1つの入口側マニホールド部151は、第1フレーム161に、Y負方向の端部に配置されている。1つの出口側マニホールド部152は、第2フレーム162に、Y正方向の端部に配置されている。入口側マニホールド連通部171は、入口側マニホールド部151の内周縁に形成される。出口側マニホールド連通部172は、出口側マニホールド部152の内周縁に形成される。供給側セル連通部173は、第4フレーム164に、Y負方向に向かって開口して形成される。排出側セル連通部174は、第3フレーム163に、Y正方向に向かって開口して形成される。
【0079】
本体部223は、第1フレーム161から第3フレーム163へのガス流れを遮断する第7仕切板237、第4フレーム164から第2フレーム162へのガス流れを遮断する第8仕切板238を有する。
【0080】
入口側マニホールド部151を流通する燃料ガスは、入口側マニホールド連通部171を通って中空部122に流入する。燃料ガスは、第1フレーム161から第4フレーム164内をX正方向に流れ、供給側セル連通部173を通ってセル130に向けて供給される。燃料ガスは、セル130のアノード層131の上をY負方向に流れる。図示省略するが、セパレータ110の燃料ガス用の流路部113は、Y方向に略直線状に伸びている。
【0081】
セル130を通過した燃料ガスは、排出側セル連通部174を通って第3フレーム163内に排出される。燃料ガスは、第3フレーム163内をX正方向に流れ、第2フレーム162内をY正方向に流れ、出口側マニホールド連通部172を通って出口側マニホールド部152に流出する。
【0082】
酸化剤ガスは、セル130のカソード層132の上をX正方向に流れる。セパレータ110の酸化剤ガス用の流路部113は、X方向に略直線状に伸びている(
図5を参照)。
【0083】
このように、
図15Bに示される本体部223を備えることによって、燃料ガスはセルユニット20内をY負方向に流れ、酸化剤ガスは積層方向に隣り合うセルユニット20との間をX正方向に流れる。燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式はクロスフローとなる(燃料ガスの流れ方向がY負方向)。
【0084】
(ガスの供給方式がクロスフローのセルフレーム100(燃料ガスの流れ方向がY正方向))
図15Cに示すように、上述したセルフレーム100と異なり、供給側セル連通部173は、第3フレーム163に、Y正方向に向かって開口して形成される。排出側セル連通部174は、第4フレーム164に、Y負方向に向かって開口して形成される。
【0085】
本体部224は、入口側マニホールド連通部171から第1フレーム161へのガス流れを遮断する第9仕切板239、第3フレーム163から第2フレーム162へのガス流れを遮断する第10仕切板240、第1フレーム161から第4フレーム164へのガス流れを遮断する第11仕切板241、第4フレーム164から第2フレーム162へのガス流れを遮断する第12仕切板242を有する。
【0086】
入口側マニホールド部151を流通する燃料ガスは、入口側マニホールド連通部171を通って中空部122に流入する。燃料ガスは、第3フレーム163内をX正方向に流れ、供給側セル連通部173を通ってセル130に向けて供給される。燃料ガスは、セル130のアノード層131の上をY正方向に流れる。図示省略するが、セパレータ110の燃料ガス用の流路部113は、Y方向に略直線状に伸びている。
【0087】
セル130を通過した燃料ガスは、排出側セル連通部174を通って第4フレーム164内に排出される。燃料ガスは、第4フレーム164内をX正方向に流れ、出口側マニホールド連通部172を通って出口側マニホールド部152に流出する。
【0088】
酸化剤ガスは、セル130のカソード層132の上をX正方向に流れる。セパレータ110の酸化剤ガス用の流路部113は、X方向に略直線状に伸びている(
図5を参照)。
【0089】
このように、
図15Cに示される本体部224を備えることによって、燃料ガスはセルユニット20内をY正方向に流れ、酸化剤ガスは積層方向に隣り合うセルユニット20との間をX正方向に流れる。燃料ガスと酸化剤ガスとの供給方式はクロスフローとなる(燃料ガスの流れ方向がY正方向)。
【0090】
(温度分布)
図15Aに示すように、変形例1に係るセルフレーム100を適用した場合においても、同一のスタック14内において、ガスの供給方式をセルユニット20毎にクロスフロー(燃料ガスの流れ方向がY負方向)またはクロスフロー(燃料ガスの流れ方向がY正方向)に切り替えることができる。
【0091】
温度分布は
図11に示した温度分布と同様であり、温度分布が異なるセルユニット20を積層することによって、相互に伝熱して双方の温度ピークを打ち消し合う。このため、最高温度が低くなり、反応面内の温度勾配が減少する。反応面内の温度差を小さくできるため、反応面全体を高温化できる。その結果、発電出力の向上を図ることができる。さらに、反応面の出口付近が高温部となるため、セル温度の把握も容易となる。
【0092】
[セルフレーム100の他の変形例]
次に、セルフレーム100の他の変形例について説明する。
【0093】
図16Aは、セルフレーム100の連通部の変形例を示す斜視図、
図16Bは、セルフレーム100の連通部の他の変形例を示す斜視図である。
【0094】
セルフレーム100の連通部は、半円状の穴加工をZ方向に施すことによって形成する形態に限定されない。例えば、
図16Aに示すように、連通部175は、貫通する穴加工をXY平面に平行な方向に施すことによって形成できる。また、
図16Bに示すように、連通部176は、溝加工をXY平面に平行な方向に施すことによって形成できる。
【0095】
図17Aは、セルフレーム100の中空部材123の変形例を示す平面図、
図17Bは、
図17Aの17B-17B線に沿う断面図である。
図17Cは、セルフレーム100の中空部材124の変形例を示す
図17Bに相当する断面図である。
【0096】
セルフレーム100の本体部120を形成する中空部材121は、一対のケース体210を溶接などによって固定する形態に限定されない。例えば、
図17Aおよび
図17Bに示すように、中空部材123は、引抜加工または押出加工によって形成できる。また、
図17Cに示すように、中空部122を2段備える中空部材124も引抜加工または押出加工によって形成できる。
図17Aおよび
図17Bの符号177は、中空部122と外部とを連通する連通部を示している。
【0097】
1つのセルユニット20毎の燃料ガスの供給方向が異なるスタック14について例示した。しかしながら、スタック14は、複数のセルユニット20毎に燃料ガスの供給方向を異ならせることができる。
【0098】
酸化剤ガスの供給方向が一定(X正方向)であるスタック14について例示した。しかしながら、スタック14は、複数のセルユニット20毎に酸化剤ガスの供給方向を異ならせることができ、あるいは、1つのセルユニット20毎に酸化剤ガスの供給方向を異ならせることができる。例えば、酸化剤ガスの入口を逆にすることによって、酸化剤ガスをX負方向に供給できる。
【0099】
セルフレーム100の本体部224を構成する中空部材121の中空部122を燃料ガスの流通路として使用したスタック14について例示した。しかしながら、中空部材121の中空部122は、酸化剤ガスの流通路として使用できる。
【0100】
2つの本体部構成体201、202を積層して本体部120を構成したセルフレーム100について例示した。しかしながら、3つ以上の本体部構成体を積層して本体部120を構成できる。奇数個の本体部構成体を積層する場合、供給側セル連通部173を形成する層数と、排出側セル連通部174を形成する層数とを異ならせることができる。
【0101】
以上、実施形態および種々の変形例を通して説明したように、固体酸化物形燃料電池は、以下の効果を奏する。なお、部材の符号については代表的な符号のみを付して説明する。
【0102】
固体酸化物形燃料電池は、セル130を支持するセルフレーム100を有し、セルフレーム100は、中空部122を備える中空部材121から形成された本体部120と、本体部120に接続されセル130を支持するセル支持部140とを有する。本体部120は、入口側マニホールド部151と、出口側マニホールド部152と、入口側マニホールド部151と出口側マニホールド部152とを接続するフレーム部153と、を有する。セルフレーム100はさらに、入口側マニホールド連通部171と、出口側マニホールド連通部172と、供給側セル連通部173と、排出側セル連通部174とを有する。
【0103】
このように構成した固体酸化物形燃料電池は、セルフレーム100の本体部120を構成する中空部材121の中空部122をガスの流通路として使用する。セルフレーム100の本体部120の基本構造を同じにしたまま、供給側セル連通部173および排出側セル連通部174の形成位置を変更することによって、ガスの流れ方向を選択できる。したがって、単純な構造によってガスの供給方式(コフロー、カウンターフロー、クロスフロー)を組み合わせることが可能となる。セルフレーム100の構造が単純になるため、セルフレーム100の小型化を図ることができ、これを通して固体酸化物形燃料電池のスタック14の小型化も図ることができる。セルフレーム100の本体部120の基本構造を同じであることから、部品点数の低減も図ることができる。
【0104】
上述した特許文献1にあっては、セルごとにフロー方向を変えるために四辺にマニホールドを形成する必要がある。一方、本件の固体酸化物形燃料電池は、供給側セル連通部173および排出側セル連通部174の形成位置を変更することによって、最低2辺にマニホールドを設置するだけでよい。
【0105】
セルフレーム100の本体部120は少なくとも2つの本体部構成体201、202を積層して構成され、一方の第1本体部構成体201は、入口側マニホールド連通部171および供給側セル連通部173を有し、他方の第2本体部構成体202は、出口側マニホールド連通部172および排出側セル連通部174を有する。そして、セルフレーム100の本体部120は、少なくとも2つの本体部構成体201、202を、供給側セル連通部173および排出側セル連通部174がセル130に対して対称位置に配置された状態に積層されている。このように構成することによって、本体部構成体201、202の基本構造を同じにしたまま、供給側セル連通部173および排出側セル連通部174の形成位置を変更することによって、ガスの流れ方向を選択できる。したがって、単純な構造によってガスの供給方式を組み合わせることが可能となる。
【0106】
セル130を支持したセルフレーム100に、流路部113が形成されたセパレータ110を封止固定してなるセルユニット20を有する。このように構成することによって、セルフレーム100の本体部120の基本構造を同じにしたまま、供給側セル連通部173および排出側セル連通部174の形成位置を変更することによって、セルユニット20内におけるガスの流れ方向を選択できる。
【0107】
複数のセルユニット20を積層し、セパレータ110とセル130との間に酸化剤流路114と燃料流路115とを形成したスタック14を有する。このように構成することによって、同一のスタック14内において、ガスの供給方式(コフロー、カウンターフロー、クロスフロー)を切り替えることができる。
【0108】
スタック14は、複数のセルユニット20毎の燃料または酸化剤の供給方向が異なる。このように構成することによって、温度分布が異なるセルユニット20が積層され、相互に伝熱して双方の温度ピークを打ち消し合う。このため、最高温度が低くなり、反応面内の温度勾配が減少する。反応面内の温度差を小さくできるため、反応面全体を高温化できる。その結果、発電出力の向上を図ることができる。さらに、反応面の出口付近が高温部となるため、セル温度の把握も容易となる。
【0109】
スタック14は、少なくとも1つのセルユニット20毎の燃料の供給方向が異なる。このように構成することによって、温度分布が異なるセルユニット20が1層毎に積層され、相互に伝熱して双方の温度ピークを打ち消し合う作用が顕著となる。このため、最高温度が低くなり、反応面内の温度勾配が減少する。反応面内の温度差をより小さくできるため、反応面全体をより高温化できる。その結果、発電出力のさらなる向上を図ることができる。
【0110】
スタック14は、少なくとも1つのセルユニット20毎の酸化剤の供給方向が異なる。このように構成することによって、上記と同様に、温度分布が異なるセルユニット20が1層毎に積層され、相互に伝熱して双方の温度ピークを打ち消し合う作用が顕著となる。その結果、発電出力のさらなる向上を図ることができる。
【0111】
燃料および酸化剤の供給方式は、コフローとカウンターフローとの組み合わせ、または、燃料もしくは酸化剤の供給される向きが異なるクロスフローの組み合わせである。このように構成することによって、温度分布が異なるセルユニット20を積層でき、相互に伝熱して双方の温度ピークを打ち消し合うことができる。その結果、発電出力の向上を図ることができる。さらに、反応面の出口付近が高温部となるため、セル温度の把握も容易となる。
【0112】
セルフレーム100は、本体部221、222、223、224における中空部122の一部が封止されてる。このように構成することによって、中空部122を利用してガスの流通路をより自由に設定できる。セルフレーム100の本体部221、222、223、224の基本構造を同じにしたまま、中空部122を封止する位置、供給側セル連通部173および排出側セル連通部174の形成位置を変更することによって、ガスの流れ方向を選択できる。したがって、単純な構造によってガスの供給方式(コフロー、カウンターフロー、クロスフロー)を組み合わせることが可能となる。セルフレーム100の本体部221、222、223、224は1層だけであり、本体部構成体201、202を積層して本体部120を構成する場合に比較して、部品点数の低減も図ることができる。
【符号の説明】
【0113】
14 スタック、
20 セルユニット、
30 ユニット間シール、
100 セルフレーム、
110 セパレータ、
113 流路部、
114 酸化剤流路、
115 燃料流路、
120、221、222、223、224 本体部、
121、123、124 中空部材、
122 中空部、
130 セル、
131 アノード層、
132 カソード層、
133 電解質層、
140 セル支持部、
141 開口部、
151 入口側マニホールド部、
152 出口側マニホールド部、
153 フレーム部、
161 第1フレーム、
162 第2フレーム、
163 第3フレーム、
164 第4フレーム、
171 入口側マニホールド連通部、
172 出口側マニホールド連通部、
173 供給側セル連通部、
174 排出側セル連通部、
201、203、205、207 第1本体部構成体(本体部構成体)、
202、204、206、208 第2本体部構成体(本体部構成体)、
231~242 第1仕切板~第12仕切板。