(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】真空管ホルダー
(51)【国際特許分類】
A61B 5/154 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
A61B5/154 200
(21)【出願番号】P 2020129421
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海老原 竜夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢
(72)【発明者】
【氏名】藤原 悠太
(72)【発明者】
【氏名】大木 聡
(72)【発明者】
【氏名】実川 聡
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-291830(JP,A)
【文献】特開平07-204180(JP,A)
【文献】特開2001-299729(JP,A)
【文献】特開2008-161311(JP,A)
【文献】実公昭50-019745(JP,Y1)
【文献】特開2000-201908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空管を保持する真空管ホルダーであって、
前記真空管が挿入される筒状のホルダー本体と、
前記ホルダー本体の先端部に取り付けられ、前記真空管を穿刺する穿刺針と、
前記ホルダー本体内に設けられた複数の可撓片により構成され、前記ホルダー本体の径方向に弾性変形して前記真空管の側面を押圧する保持爪と、
を備え、
前記ホルダー本体の先端部には、前記真空管の天面と当接し、前記真空管の進入を止める位置規制部が形成され、
前記保持爪と前記位置規制部は、前記ホルダー本体の周方向に沿って交互に複数配置されている、真空管ホルダー。
【請求項2】
前記保持爪と前記位置規制部の間隔は、前記ホルダー本体の周方向に沿って一定であり、2つの前記位置規制部の中間に前記保持爪が配置されている、請求項1に記載の真空管ホルダー。
【請求項3】
前記位置規制部は、前記ホルダー本体の底部内面に立設したリブである、請求項1又は2に記載の真空管ホルダー。
【請求項4】
真空管を保持する真空管ホルダーであって、
前記真空管が挿入される筒状のホルダー本体と、
前記ホルダー本体の先端部に取り付けられ、前記真空管を穿刺する穿刺針と、
前記ホルダー本体内に設けられた複数の可撓片により構成され、前記ホルダー本体の径方向に弾性変形して前記真空管の側面を押圧する保持爪と、
前記ホルダー本体内に設けられ、前記真空管の進入を止める位置規制部と、
を備え、
前記位置規制部は、前記ホルダー本体の底部内面に立設すると共に、前記ホルダー本体の
筒壁の内周面から径方向内側に向かって延びる突出部を有し、当該突出部により前記ホルダー本体の筒壁に厚肉部が形成されている、真空管ホルダー。
【請求項5】
前記ホルダー本体内に収容された前記穿刺針の一端を覆うラバースリーブを備え、
前記位置規制部の内側には、前記ラバースリーブが前記真空管に押されて圧縮されたときに当該ラバースリーブを収容するスペースが形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の真空管ホルダー。
【請求項6】
複数の前記保持爪の先端をつなぐ内接円Xは、前記位置規制部の内端に沿った内接円Yと同心円であり、
内接円Xの直径は、内接円Yの直径より小さい、請求項
1~5のいずれか1項に記載の真空管ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空管を保持する真空管ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空管が挿入される筒状のホルダー本体に穿刺針が取り付けられた構造を有する真空管ホルダーが広く知られている(例えば、特許文献1参照)。一般的に、穿刺針は、ホルダー本体の先端部に取り付けられ、針の一端側がホルダー本体の先端から本体の軸方向に沿って延出し、針の他端側がホルダー本体内に収容されている。真空管ホルダーを用いた採血は、穿刺針の一端側を患者の血管に穿刺した後、ホルダー本体内に真空管を挿入して、穿刺針の他端側を真空管に挿し込むことにより行われる。真空管内は減圧されているため、穿刺針を真空管に挿し込むことで所定量の血液が採取される。
【0003】
特許文献1に開示された真空管ホルダーには、ホルダー本体の径方向に弾性変形する複数の可撓部が設けられている。可撓部は、ホルダー本体内に挿入されると外方に撓んで真空管の側面を内側に押圧し、真空管が抜けないように保持する機能を有する。また、可撓部の先端には、径方向内側に突出した突出部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
真空管は、ガラス又は樹脂製の有底管と、有底管の開口を塞ぐキャップとを含むものであるが、その直径及び形状はメーカーによって大きく異なる。直径及び形状について適用外の真空管が用いられると、可撓部が過剰に撓んで可撓部の突出部が所望の位置より外方に移動してしまい、真空管の挿入位置を目的とする位置に制御することが難しくなる。このため、可撓部による真空管の保持が安定的に機能せず、真空管の姿勢が傾き、穿刺針が真空管の内部と連通しないといった事態が生じる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、直径が異なる複数種の真空管についても安定的に使用することが可能な汎用性に富む真空管ホルダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である真空管ホルダーは、真空管を保持する真空管ホルダーであって、真空管が挿入される筒状のホルダー本体と、ホルダー本体の先端部に取り付けられ、真空管を穿刺する穿刺針と、ホルダー本体内に設けられ、真空管の側面を押圧する保持爪とを備え、ホルダー本体の先端部には、真空管の天面と当接し、真空管の進入を止める位置規制部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ホルダー本体に形成された位置規制部によって、所望の挿入位置で安定的に真空管の進入を止めることができ、真空管の姿勢や、真空管に対する針の穿刺が安定化する。例えば、ホルダー本体内における真空管の挿入位置を揃えることができるので、1つの真空管ホルダーで複数種の真空管に対応することが可能になる。
【0009】
本発明の一態様である真空管ホルダーにおいて、保持爪と位置規制部は、ホルダー本体の周方向に沿って交互に複数配置されていることが好ましい。この場合、ホルダー本体内における真空管の安定性が向上し、例えば、よりスムーズな採血が可能となる。
【0010】
本発明の一態様である真空管ホルダーにおいて、位置規制部は、ホルダー本体の先端部の底部内面に立設したリブであることが好ましい。ホルダー本体は、真空管が挿入される部分であると共に、穿刺時に把持される部分でもある。このため、ホルダー本体の外形は把持性を考慮して決定する必要がある。上記構成によれば、位置規制部がホルダー本体の外形に影響しないため、従来同様ホルダー本体の良好な把持性を確保しつつ、ホルダー本体内における真空管の挿入位置を揃えることができる。
【0011】
本発明の一態様である真空管ホルダーは、真空管を保持する真空管ホルダーであって、
前記真空管が挿入される筒状のホルダー本体と、ホルダー本体の先端部に取り付けられ、真空管を穿刺する穿刺針と、ホルダー本体の内周面に設けられ、真空管の側面に係合する保持部と、ホルダー本体内に設けられ、真空管の進入を止める位置規制部とを備え、位置規制部は、ホルダー本体の内周面又は底部内面から延びる突出部であることを特徴とする。この場合も、ホルダー本体内の所望の挿入位置で安定的に真空管の進入を止めることができ、真空管の姿勢や、真空管に対する針の穿刺が安定化する。
【0012】
本発明の一態様である真空管ホルダーにおいて、ホルダー本体内に収容された穿刺針の一端を覆うラバースリーブを備え、位置規制部の内側には、ラバースリーブが真空管に押されて圧縮されたときに当該ラバースリーブを収容するスペースが形成されていることが好ましい。ラバースリーブが過剰に圧縮されると、その反発力により真空管が押し戻され、真空管から穿刺針が抜ける所謂キックバックが発生し得るが、圧縮されたラバースリーブを収容するスペースを設けることで、ラバースリーブの圧縮の程度を軽減できる。このため、上記構成によれば、真空管のキックバックを抑制できる。
【0013】
本発明の一態様である真空管ホルダーは、真空管が挿入される筒状のホルダー本体と、ホルダー本体の先端部に取り付けられ、真空管を穿刺する穿刺針と、ホルダー本体の内周面に設けられ、真空管の側面に係合する保持部と、ホルダー本体内に収容された穿刺針の一端を覆うラバースリーブと、ホルダー本体内に設けられ、真空管の進入を止める位置規制部とを備え、穿刺針は針ハブと針ハブから露出する針本体とを有し、位置規制部は、針本体を覆うラバースリーブの外側に位置することを特徴とする。この場合、ホルダー本体内における、真空管の姿勢や、真空管に対する針の穿刺が安定化すると共に、上記真空管のキックバックを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る真空管ホルダーによれば、1つの真空管ホルダーで複数種の真空管を用いたスムーズな採血が可能である。このため、医療従事者は真空管の種類に応じて真空管ホルダーを選別する必要がなく、医療従事者の負担が大きく軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の一例である採血管ホルダーの斜視図である。
【
図2】実施形態の一例である採血管ホルダーの分解斜視図である。
【
図3】実施形態の一例である採血管ホルダーの底面図である。
【
図5】実施形態の一例である採血管ホルダーに採血管が挿入された状態を示す図である。
【
図6】採血管ホルダーに採血管が挿入された状態の断面図である。
【
図7】実施形態の他の一例である採血管ホルダーを示す図である。
【
図8】実施形態の他の一例である採血管ホルダーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る真空管ホルダーの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例の各構成要素を選択的に組み合わせることは当初から想定されている。
【0017】
図1は実施形態の一例である採血管ホルダー10の外観を示す斜視図、
図2は採血管ホルダー10の分解斜視図である。採血管ホルダー10は、採血管100(
図9等参照)を保持する医療器具であって、採血を行う際に使用される。以下では、採血管ホルダー10のホルダー本体11に挿入される真空管の一例として採血管100を例示するが、採血管ホルダー10には直径が異なる複数種の採血管を適用可能である。詳しくは後述するが、この機能は、ホルダー本体11に形成された位置規制部によって実現される。なお、本発明に係る真空管ホルダーには、採血用以外の真空管を適用することもできる。
【0018】
図1及び
図2に示すように、採血管ホルダー10は、採血管100が挿入される筒状のホルダー本体11と、ホルダー本体11の先端部に取り付けられ、採血管100を穿刺する穿刺針12と、ホルダー本体11内に設けられる保持部材14とを備える。穿刺針12は、例えば、中空の両頭針であり、採血管ホルダー10の先端側と基端側に鋭利な針先12a,12bをそれぞれ有する。保持部材15には、ホルダー本体11に挿入される採血管100の側面を押圧する保持爪51が形成されている。
【0019】
本明細書において、採血管ホルダー10の先端側とは、患者の血管に穿刺される穿刺針12の針先12a側を意味する。基端側とは、採血管100に挿し込まれる穿刺針12の針先12b側を意味する。
【0020】
採血管ホルダー10は、穿刺針12が固定される針ハブ13と、穿刺針12の針先12bを覆うラバースリーブ15とを備える。穿刺針12は、針先12a側がホルダー本体11の軸方向に沿ってホルダー本体11の先端から延出し、針先12b側がホルダー本体11内に収容された状態で、針ハブ13を介してホルダー本体11の先端部に取り付けられている。ラバースリーブ15は、可撓性を有するゴム製部材であって、一端が閉じられたチューブ状に形成されている。ラバースリーブ15は、針ハブ13に装着され、ホルダー本体11内に設けられている。
【0021】
採血管ホルダー10は、ホルダー本体11の先端部に装着されるキャップ(図示せず)を備える。キャップは、未使用時に穿刺針12の針先12aを覆い、針先12aによる誤穿刺を防止する。詳しくは後述するが、採血管ホルダー10を用いた採血は、穿刺針12の針先12a側を患者の血管に穿刺した後、ホルダー本体11内に採血管100を挿入して行われる。本実施形態では、ホルダー本体11に大径部20と小径部21が形成され、大径部20内に採血管100が挿入される。また、針ハブ13が取り付けられる先端部が小径部21となっている。
【0022】
図9は、採血管100の斜視図である。
図9に示すように、採血管100は、一端が開口し、他端が閉じられた有底管101と、有底管101の開口部に装着されるキャップ102とを備える。有底管101は、例えば、ガラス製又は樹脂製の透明な有底円筒状のチューブであって、検査項目等に応じて種々の薬剤が充填されている。キャップ102は、有底管101の開口部を塞ぐゴム栓103、及びゴム栓103を保持する筒状のカバー104を有する。採血管100は、一般的に真空採血管と呼ばれ、有底管101内は陰圧である。
【0023】
採血管ホルダー10は、上述のように、複数種の採血管の使用を想定して構成されている。複数種の採血管は、互いに直径や形状が異なる。また、有底管の開口部に装着されるキャップには、ゴム栓のみで構成されるものや、開口部の周縁部に接着される薄いフィルムタイプのものがある。なお、いずれの採血管を用いた場合も、採血管100を用いる場合と同様に、ホルダー本体11(大径部20)内に挿入される。そして、採血管100のゴム栓103がラバースリーブ15に当接すると、穿刺針12の針先12bがラバースリーブ15を突き破り、穿刺針12が有底管101内に挿し込まれる。
【0024】
以下、採血管ホルダー10の各構成要素について、特にホルダー本体11及び保持部材15の構成について詳説する。
【0025】
[穿刺針・針ハブ]
図1及び
図2に示すように、穿刺針12は、ホルダー本体11の軸方向に沿って真っ直ぐに延びた中空の両頭針であって、針先12a,12bには軸方向に対して傾斜した刀面が形成されている。穿刺針12は、その中間部が針ハブ13に固定され、上述の通り、針先12a側がホルダー本体11の先端から延出し、針先12b側がホルダー本体11の大径部20内に収容された状態で、針ハブ13を介してホルダー本体11に取り付けられている。穿刺針12のうち、大径部20内に収容される部分の長さは、採血管100が大径部20に挿入されたときに有底管101内に挿し込み可能な長さとされる。
【0026】
針ハブ13は、穿刺針12を通す筒部40を有する樹脂製部材である。本実施形態では、筒部40の外周面にネジ41が形成されている。針ハブ13は、このネジ41により、ホルダー本体11の先端部に着脱自在に取り付けられる。筒部40のネジ41よりも基端側には、基端側から順に大径部42と小径部43が形成されている。小径部43は、ネジ41及び大径部42よりも外径が小さく、ネジ41と大径部42に挟まれて溝状に形成されている。ラバースリーブ15は、その開口縁部が小径部43に嵌るように針ハブ13の基端部に装着され、大径部42によって抜けないように係止されている。
【0027】
針ハブ13のネジ41よりも先端側には、筒部40の外周面から放射状に張り出した複数のリブ44が形成されている。リブ44は、キャップと係合する部分であって、針ハブ13の取り付け、取り外しに利用される。なお、針ハブの形状は特に限定されず、例えば、ネジ41やリブ44を有さないものであってもよい。また、針が真空管ホルダーに直接固定されていて、針ハブと真空管ホルダーが一体になっていてもよい。
【0028】
[ラバースリーブ]
ラバースリーブ15は、上述のように、一端が閉じられたチューブ状の部材であって、針ハブ13の基端部に装着されて穿刺針12の針先12bを覆い、針先12bの露出を防止して血液の漏出を防止している。ラバースリーブ15は、穿刺針12のうち、針ハブ13の基端からホルダー本体11の大径部20内に延出した部分の全体を覆っている。ラバースリーブ15は、針ハブ13に装着された状態で、針先12bがスリーブの底部内面に接触しない長さを有することが好ましい。
【0029】
ラバースリーブ15は、可撓性を有するゴム製部材であって、ホルダー本体11内に挿入される採血管100に押されて弾性変形する。採血管100のゴム栓103がラバースリーブ15に当接すると、穿刺針12の針先12bがラバースリーブ15を突き破り、ラバースリーブ15は採血管100によって圧縮される。このとき、採血管100にはラバースリーブ15の復元力(反発力)が作用するが、本実施形態では、後述のスペース31によりこの反発力が大きく軽減される。
【0030】
[保持部材]
図3は、採血管ホルダー10の底面図であって、基端側の開口22からホルダー本体11の筒内を図示している。
図4は、
図3中のAA線断面図である。
図2~
図4に示すように、保持部材15は、基端側の開口22からホルダー本体11の大径部20内に挿入される。保持部材15は、大径部20の内径よりも小さな外径を有する筒部50を含み、筒部50の外周面が大径部20の内周面に接触した状態で、大径部20に装着されている。
【0031】
本実施形態では、筒部50の外周面に軸方向に延びる凹部53が形成され、大径部20の内周面に凹部53に嵌合する凸部32が形成されている。保持部材15の筒部50は、この凹凸嵌合により大径部20内に係止され、さらに溶着や接着剤により大径部20の内周面に固定されていてもよい。筒部50は、軸方向両端が開口しており、採血管100を挿通可能である。
【0032】
保持部材14には、筒部50の先端から延出した保持爪51が形成されている。保持爪51は、複数形成されることが好ましい。本実施形態では、筒部50の周方向に等間隔で4つの保持爪51が形成されている。複数の保持爪51は、互いに同じ形状、同じ寸法を有する。保持爪51は、筒部50の径方向に弾性変形可能に形成され、ホルダー本体11に挿入される採血管100の側面に当接する。なお、採血管100は、筒部50内を通って複数の保持爪51の内側に挿入される。
【0033】
保持爪51は、採血管100により外方に弾性変形することで採血管100を側方から保持する。保持爪51は、細長い板状に形成された可撓片であり、筒部50との付け根から先端側に向かって次第にホルダー本体11の径方向内側に位置するように延び、途中でホルダー本体11の軸方向に沿うように折れ曲がっている。保持爪51には屈曲部52が形成されており、屈曲部52から先端までの部分が採血管100の側面に当接する。複数の保持爪51は、穿刺針12(ラバースリーブ15)を中心として、これを取り囲むように配置されている。
【0034】
複数の保持爪51の先端部をつなぐ内接円Xの直径(
図3参照)は、採血管100(キャップ102)の直径より小さい。また、使用が想定される全ての採血管の直径よりも内接円Xの直径が小さくなるように、複数の保持爪51が配置される。この場合、ホルダー本体11内に採血管を挿入すると、保持爪51は径方向外側に弾性変形する。そして、採血管の側面が保持爪51の復元力によって押圧され、採血管が抜けないようにホルダー本体11内に保持される。また、複数の保持爪51は、穿刺針12が配置されるホルダー本体11の径方向中央に採血管をセンタリングする。
【0035】
保持爪51は、穿刺針12の針先12bを大きく超えてホルダー本体11の先端側に延びており、屈曲部52も針先12bよりホルダー本体11の先端側に位置する。他方、保持爪51は、先端がホルダー本体11の大径部20の底部24から離れた自由端となっており、底部24の内面と干渉しない長さで形成されている。保持爪51の先端部(屈曲部52から先端までの部分)は、ホルダー本体11の軸方向に沿って真っ直ぐに形成され、先端部には採血管100が引っ掛かるような部分が存在しない。保持爪51に要求される機能が採血管の側面を保持する機能のみとされることで、設計自由度が向上し、様々な採血管においてより安定的に保持機能が生じるようにすることができる。なお、複数の保持爪51において、屈曲部52及び先端は同じ位置に形成されていることが好ましい。
【0036】
[ホルダー本体]
図1~
図4に示すように、ホルダー本体11は軸方向両端が開口した筒状体である。ホルダー本体11には、基端側の開口22から採血管100が挿入され、先端側の開口23から針ハブ13が挿入される。ホルダー本体11は、上述のように、針ハブ13が取り付けられる先端部が直径の小さな小径部21であり、先端部以外の部分が小径部21よりも直径が大きな大径部20となっている。大径部20と小径部21の直径の差(大径部20の直径/小径部21の直径)は、例えば、1.5倍~2.5倍である。大径部20の内径は、使用が想定される全ての採血管の直径よりも大きい。
【0037】
大径部20は、採血管100が挿入される部分であると共に、採血を行う際に採血管ホルダー10が把持される部分でもある。このため、大径部20の外周面には、滑り止め用の凸条部25が形成されている。凸条部25は、例えば、大径部20の軸方向に延び、周方向に等間隔で複数形成されている。また、大径部20の開口22の周縁部には、径方向外側に張り出したフランジ部26が形成されている。フランジ部26は、例えば、大径部20に採血管100を挿入する際に使用される。
【0038】
小径部21は、大径部20の底部24の中央部から延出している。底部24は、大径部20の先端側の開口を塞ぐように形成された部分であって、換言すると、大径部20の筒壁と小径部21の筒壁を連結する部分である。底部24の中央部には、大径部20の筒内と小径部21の筒内を連通させる開口部が存在する。なお、大径部20と小径部21の中心軸は一致していることが好ましく、穿刺針12は底部24の中央に配置されている。
【0039】
小径部21は、内筒27と外筒28を含む二重筒構造を有する。本実施形態では、内筒27の内周面にネジが形成され、針ハブ13は内筒27にネジ止めされている。外筒28は内筒27よりも長く形成され、外筒28内にはキャップが挿入される。例えば、キャップの内周面には針ハブ13のリブ44と係合する凸部が存在し、キャップを針ハブ13の先端部に嵌めた状態で針ハブ13の基端部を内筒27に挿入してキャップを回転させることで、針ハブ13を小径部21に取り付けることができる。針ハブ13は、その全体が小径部21内に収容されている。
【0040】
ホルダー本体11の先端部には、採血管100の天面と当接し、採血管100の進入を所定の位置で止める位置規制部が形成されている。位置規制部は、大径部20に形成され、使用が想定される複数種の採血管が大径部20内に挿入された場合に、目的とする所望の挿入位置で採血管の進入を止める機能を有する。例えば、採血管100よりも直径が小さな採血管、採血管100よりも直径が大きな採血管のいずれを用いた場合も、位置規制部が大径部20の同じ位置で採血管の進入を止める。これにより、1つの採血管ホルダー10で複数種の採血管に対応することが可能となる。なお、後述するように、一部の採血管は、第1の位置規制部よりもホルダー本体11の基端側に形成される第2の位置規制部により、その挿入位置が規制されてもよい。
【0041】
本実施形態では、位置規制部として、ホルダー本体11(大径部20)の底部24の内面に立設した複数のリブ30が形成されている。
図3及び
図4に示すように、リブ30は、底部24の内面に対して垂直に形成された板状の突出部である。また、リブ30は、大径部20の内周面とつながっており、内周面から径方向内側に延びている。リブ30が大径部20の内周面につながっていることで、良好な機械的強度を確保でき、リブ30の変形、破損が抑制される。
【0042】
リブ30は、穿刺針12(ラバースリーブ15)を中心として、これを取り囲むように複数形成されている。複数のリブ30は、底部24から所定の高さで形成され、互いに同じ高さを有することが好ましい。本実施形態では、ホルダー本体11の周方向に等間隔で、径方向に沿った4つのリブ30が形成されている。複数のリブ30は、互いに同じ形状、同じ寸法を有する。また、ホルダー本体11の径方向に、2つのリブ30と穿刺針12が並ぶように配置されている。残りの2つのリブ30についても同様に、ホルダー本体11の径方向に並んでいる。なお、リブは等間隔に形成されてなくともよく、また後述の
図8に示すように、周状に連続的に形成されていてもよい。
【0043】
リブ30の基端から針先12bまでのホルダー本体11の軸方向に沿った長さLは、採血管100のゴム栓103の厚みよりも長くなるように設計されている。リブ30とゴム栓103の間にカバー104の一部が介在する場合は、その厚みをさらに考慮して長さLを設定する。長さLは、使用が想定される全ての採血管について、各キャップのリブ30と針先12bの間に介在する部分の厚みよりも長くされる。言い換えると、穿刺針12のうち、大径部20内に収容される部分の長さは、大径部20に挿入された採血管が位置規制部に当接した状態で、針先12bが有底管101内に挿し込み可能な長さとされる。
【0044】
複数のリブ30の内端をつなぐ内接円Yの直径(
図3参照)は、採血管100(キャップ102)の直径より小さく、例えば、保持爪51の少なくとも一部(例えば、屈曲部52)は内接円Yの内側に位置する。また、使用が想定される全ての採血管の直径よりも内接円Yの直径が小さくなるように、リブ30の径方向長さが設定される。この場合、リブ30がより確実に採血管の天面に当接し、採血管の安定した位置規制が可能である。複数のリブ30の内接円Yの直径は、5mm~15mmが好ましい。また、ホルダー本体11の内径は、17.5mm以上であることが好ましい。
【0045】
本実施形態では、内接円Y>内接円Xであるが、後述の
図8に例示する形態のように、内接円Y<内接円Xであってもよい。内接円X,Yは、例えば、同心円である。なお、フィルムタイプのキャップを有し、当該キャップの中央部にゴム栓が設けられた採血管を使用する場合、ゴム栓の直径<内接円Yの直径<キャップの直径であることが好ましい。
【0046】
リブ30は、上述のように、保持爪51と同数形成されている。そして、リブ30と保持爪51は、ホルダー本体11の周方向に沿って交互に配置されている。リブ30と保持爪51の間隔は、例えば、周方向に沿って一定であり、2つのリブ30の中間に保持爪51が配置されている。この場合、ホルダー本体11内における採血管の安定性が向上し、よりスムーズな採血が可能となる。
【0047】
リブ30はラバースリーブ15の外側に位置し、リブ30の内側には、ラバースリーブ15が採血管100に押されて圧縮されたときに、圧縮されたラバースリーブ15を収容するスペース31が形成されている。なお、ラバースリーブ15の一部は小径部21内に位置しているが、小径部21内のスペースでは圧縮されたラバースリーブ15を収容できず、ラバースリーブ15の反発力により採血管100が押し戻されるキックバックを十分に抑制できない。本実施形態では、リブ30によって、大径部20内に大きなスペース31が形成されている。
【0048】
スペース31は、リブ30によって形成されるため、その高さはリブ30の高さに依存する。スペース31は、ラバースリーブ15の圧縮の程度を軽減し、採血管100のキックバックを抑制する。リブ30は、針本体を覆うラバースリーブ15の外側に位置していることが好ましい。複数のリブ30は、例えば、ラバースリーブ15からホルダー本体11の径方向外側に離れた位置において、ラバースリーブ15を取り囲むように形成されている。この場合、採血管100のキックバックをより効果的に抑制できる。
【0049】
リブ30は、大径部20に挿入される採血管100のキャップ102に当接することで、採血管100の進入を止める。使用が想定される他の採血管についても、キャップがリブ30に当接し、それ以上の進入が防止される。本実施形態では、リブ30よりも基端側に大径部20の周方向に沿って段部29(
図4参照)が形成されている。大径部20は、段部29が形成された箇所で小さく縮径し、段部29よりも先端側で内径が僅かに小さくなっている。それ故、段部29は直径の大きな採血管の進入を止める第2の位置規制部として機能し得る。
【0050】
例えば、直径が大きく、キャップが薄いフィルムタイプの採血管は、段部29により挿入位置が規制されてもよい。この場合、ラバースリーブ15の圧縮の程度がより軽減されるので、採血管100のキックバックがさらに抑制される。なお、フィルムタイプのキャップを有する採血管であれば、リブ30よりもホルダー本体11の基端側で採血管が止められても、穿刺針12の針先12aはフィルムを貫通して有底管101内に挿し込まれる。
【0051】
本実施形態では、リブ30と保持爪51は、ホルダー本体11の軸方向に重ならないように配置されている。保持爪51の先端は、リブ30の基端よりもホルダー本体11の基端側に位置している。なお、保持爪51の先端は、ホルダー本体11の径方向に段部29と重なる位置に存在していてもよく、段部29とリブ30の間に位置していてもよい。
【0052】
図5及び
図6は、上記構成を備えた採血管ホルダー10の大径部20に採血管100が挿入された状態を示す図である。
図5及び
図6に示すように、採血管100は、大径部20の基端側の開口22から、ホルダー本体11の先端の方向にキャップ102を向けた状態で大径部20内に挿入される。このとき、穿刺針12の針先12aは既に患者の血管に穿刺されている。採血管100は、フランジ部26を利用することにより片手で簡単に挿入される。直径や形状が異なる他の採血管についても、採血管100の場合と同様に、大径部20内に挿入できる。
【0053】
採血管100が大径部20内に挿入されると、保持爪51がホルダー本体11の径方向外側に弾性変形し、保持爪51の復元力により採血管100の側面が押圧される。採血管100は、複数の保持爪51によって大径部20内から抜けないように保持される。また、採血管100のキャップ102は大径部20の底部24に立設した複数のリブ30に当接し、それ以上の進入が防止される。
【0054】
採血管100を大径部20に挿入すると、キャップ102がリブ30に当接する前に、ゴム栓103がラバースリーブ15に当接する。そして、穿刺針12の針先12bがラバースリーブ15の底部を突き破り、針先12bがゴム栓103を貫通して穿刺針12が有底管101内に挿し込まれる。有底管101内は陰圧であるため、穿刺針12を有底管101に挿し込むことで所定量の血液が採取される。採血の終了後、採血管100を大径部20から引き抜くことで、針先12bは再びラバースリーブ15により覆われる。採血管ホルダー10によれば、採血管100の引き抜きもスムーズである。
【0055】
ラバースリーブ15がゴム栓103に押されて圧縮される際には、採血管100にはラバースリーブ15の復元力(反発力)が作用するが、採血管ホルダー10によれば、リブ30によって採血管100と底部24の間に大きなスペース31が形成されるため、この反発力は大きく軽減される。このため、採血管100のスプリングバックが抑制され、採血管100の保持性が向上する。
【0056】
採血管ホルダー10によれば、採血管100以外の他の採血管を用いた場合も、大径部20の同じ挿入位置で採血管を保持できるので、1つの採血管ホルダー10で複数種の採血管を用いたスムーズな採血が可能となる。このため、医療従事者は採血管の種類に応じて採血管ホルダーを選別する必要がなく、医療従事者の負担が大きく軽減される。なお、一部の採血管(特に、キャップが薄いフィルムタイプの採血管)は、リブ30よりもホルダー本体11の基端側に形成される段部29(第2の位置規制部)により、その挿入位置が規制されてもよい。
【0057】
図7及び
図8は、実施形態の他の一例を示す図である。
図7及び
図8では、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を使用して重複する説明を省略する。
【0058】
図7に示すように、大径部20の先端部を大きく縮径させることで位置規制部35を形成してもよい。
図7に例示する形態では、大径部20と小径部21の間に、直径が大径部20より小さく、小径部21より大きな縮径部36が形成され、大径部20の筒壁と縮径部36の筒壁を連結する部分が位置規制部35となっている。この場合も、大径部20に挿入される採血管のキャップが位置規制部35の内面に当接して、複数種の採血管が大径部20の同じ挿入位置で保持される。位置規制部35の内面は、ホルダー本体11の径方向と略平行に形成されていることが好ましい。
【0059】
位置規制部35は、穿刺針12を中心として、これを取り囲むように形成されている点で、リブ30と共通する。他方、位置規制部35は、リブ30と異なり、ホルダー本体11の周方向に沿って環状に形成されている。なお、ホルダー本体11内には、位置規制部35により、圧縮されたラバースリーブ15を収容するスペース31が形成されている。
【0060】
図8に示すように、位置規制部は、ホルダー本体11の底部24の内面に底面視円環状に形成された筒壁37であってもよい。筒壁37は、底部24の内面に対して垂直に立設し、穿刺針12を中心として、これを取り囲むように形成されている。周方向に連続した筒壁37とすることで、良好な機械的強度が確保される。筒壁37は、角のない円筒状に形成されることが好ましく、その直径は、ゴム栓のみで構成される採血管、ゴム栓の周りにキャップが嵌合したオーバーキャップ式の採血管、開口部の周縁部に接着される薄いフィルムタイプの採血管における天面の直径よりも小さくなるように設定され、使用が想定される全ての採血管(キャップ)の直径よりも小さくなるように設定される。また、ゴム栓付きのフィルムタイプのキャップを有する採血管を使用する場合は、ゴム栓の直径<筒壁37の直径<キャップの直径であることが好ましい。
【0061】
筒壁37は、ホルダー本体11の周方向に沿って環状に形成されている点で、位置規制部35と共通するが、位置規制部35と異なり、保持爪51よりもホルダー本体11の径方向内側に形成されている。この場合も、筒壁37によって、圧縮されたラバースリーブ15を収容するスペース31が形成される。なお、位置規制部は、ホルダー本体の底部内面から基端側に延びる突出部(リブ30、筒壁37等)に限らず、ホルダー本体の内周面から延びる突出部、例えば、一方側側面から他方側側面に延びる突出部を形成することで実現してもよい。
【0062】
また、上述の実施形態では、穿刺針12は両頭針であるが、これに限るものではない。例えば、穿刺針12が針先12bしかなく、先端がメスコネクタやオスコネクタであってもよい。また、針先12aと針先12bの間に可撓性のチューブが設けられてもよい。また、上述の実施形態では、ホルダー本体と別体の保持部材の筒部から保持爪が延出した構成を例示したが、保持爪は溶着等によりホルダー本体と一体的に形成されていてもよい。また、ホルダー本体の内周面に設けられ、採血管の側面に係合する保持部の形状は、実施形態に記載の形状(保持爪)に限らず、例えば、保持部が内側に頂点を有する円弧状の可撓片として形成されて、採血管が挿入されることで円弧の頂点が外側に変位し、変位による弾発力により採血管が保持されてもよいし、弾発力が生じないようなリブを保持部としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 採血管ホルダー、11 ホルダー本体、12 穿刺針、12a,12b 針先、13 針ハブ、14 保持部材、15 ラバースリーブ、20 大径部、21 小径部、22,23 開口、24 底部、25 凸条部、26 フランジ部、27 内筒、28 外筒、29 段部、30 リブ、31 スペース、32 凸部、35 位置規制部、36 縮径部、37 筒壁、40,50 筒部、41 ネジ、42 大径部、43 小径部、44 リブ、51 保持爪、52 屈曲部、53 凹部、100 採血管、101 有底管、102 キャップ、103 ゴム栓、104 カバー、X,Y 内接円