(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B22F 10/14 20210101AFI20241001BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20241001BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20241001BHJP
B22F 10/37 20210101ALI20241001BHJP
B22F 12/53 20210101ALI20241001BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20241001BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20241001BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20241001BHJP
B29C 64/35 20170101ALI20241001BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241001BHJP
【FI】
B22F10/14
B22F3/16
B22F10/28
B22F10/37
B22F12/53
B29C64/112
B29C64/165
B29C64/209
B29C64/35
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2020130105
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼谷 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】平井 利充
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 薫
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-123208(JP,A)
【文献】特開2019-077152(JP,A)
【文献】特開2017-056724(JP,A)
【文献】特開2019-123232(JP,A)
【文献】特開2020-104290(JP,A)
【文献】特表2017-510475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/16
B22F 10/00
B22F 12/00
B29C 64/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形テーブルと、
前記造形テーブルに粉末層を形成する層形成部と、
前記粉末層における三次元造形物の造形領域にバインダーを含む液体を第1ノズルから
吐出する第1ヘッドと、
前記粉末層における前記造形領域に対する境界領域にセラミック粒子を含む液体を第2
ノズルから吐出する第2ヘッドと、
前記造形テーブルに対する前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドの移動と、電圧を印加す
ることによる前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドの駆動と、を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1ヘッドに第1フラッシング動作を実行させ、前記第1フラッシ
ング動作と異なるフラッシング条件で前記第2ヘッドに第2フラッシング動作を実行させ
るよう制御し、
前記第2フラッシング動作における前記第2ヘッドへ入力される波形の周波数は、前記
第1フラッシング動作における前記第1ヘッドへ入力される波形の周波数よりも高い
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
請求項
1に記載された三次元造形装置において、
前記第2フラッシング動作における前記第2ヘッドへの印加電圧は、前記第1フラッシ
ング動作における前記第1ヘッドへの印加電圧よりも高いことを特徴とする三次元造形装
置。
【請求項3】
請求項1
または2のいずれか1項に記載された三次元造形装置において、
前記第2フラッシング動作における前記第2ヘッドからの前記セラミック粒子を含む液
体の吐出速度は、前記第1フラッシング動作における前記第1ヘッドからの前記バインダ
ーを含む液体の吐出速度よりも速いことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1
から3のいずれか1項に記載された三次元造形装置において、
前記第2フラッシング動作において前記第2ヘッドから吐出される前記セラミック粒子
を含む液体の液滴サイズは、前記第1フラッシング動作における前記第1ヘッドから吐出
される前記バインダーを含む液体の液滴サイズよりも大きいことを特徴とする三次元造形
装置。
【請求項5】
請求項1
から4のいずれか1項に記載された三次元造形装置において、
前記第2ヘッドは、前記第2ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室に前記セラミック
粒子を含む液体を供給する供給路と、循環させるために前記圧力室から前記セラミック粒
子を含む液体を流入する循環路と、を備えることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項6】
請求項
5に記載された三次元造形装置において、
前記制御部は、単位時間当たりに前記循環路に流入する前記セラミック粒子を含む液体
の流量をq1とし、単位時間当たりに前記第2ノズルから吐出される前記セラミック粒子
を含む液体の最大流量をq2としたときに、q2/q1が0.05以上20以下となるよ
う制御することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項7】
請求項
6に記載された三次元造形装置において、
前記q2/q1は、0.05であることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項8】
請求項1
から7のいずれか1項に記載された三次元造形装置において、
前記セラミック粒子はアナターゼ型TiO2を含むことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項9】
造形テーブルと、
前記造形テーブルに粉末層を形成する層形成部と、
前記粉末層における三次元造形物の造形領域に光吸収粒子を含む液体を第1ノズルから
吐出する第1ヘッドと、
前記粉末層における前記造形領域に対する境界領域にコロイド状インクまたはポリマー
系インクを含む液体を第2ノズルから吐出する第2ヘッドと、
前記造形テーブルに対する前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドの移動と、電圧を印加す
ることによる前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドの駆動と、を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1ヘッドに第1フラッシング動作を実行させ、前記第1フラッシ
ング動作と異なるフラッシング条件で前記第2ヘッドに第2フラッシング動作を実行させ
るよう制御し、
前記第2フラッシング動作における前記第2ヘッドへ入力される波形の周波数は、前記
第1フラッシング動作における前記第1ヘッドへ入力される波形の周波数よりも高い
ことを特徴とする三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な種類の三次元造形装置が使用されている。このうち、粉末層を形成し、該粉末層における三次元造形物の造形領域にバインダーを含む液体をノズルから吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置がある。例えば、特許文献1には、粉末材料で層を形成し、ラインヘッドのノズルから該層に硬化液を吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される三次元造形装置は、ノズルの硬化液を吐出するフラッシング動作を実行するためのフラッシングステージが形成されている。フラッシング動作によりノズル内の異物が除去される。フラッシング動作は、フラッシング動作の際の制御を簡単にするため、三次元造形物の造形時、すなわち、三次元造形物の造形領域に液体を吐出する際と同様の吐出条件で行われることが一般的である。しかしながら、近年、様々な材料または様々な方法で三次元造形物が製造されるようになっており、様々な粉末や様々な液体が使用されるようになっている。このため、使用される粉末によっては多くの粉末が舞い上がってノズルに混入する場合があるとともに、使用される液体によってはフラッシング動作を行ってもノズルに混入した粉末が効果的に除去できない場合があった。ノズルに混入した粉末が除去できないと、液体の吐出不良などが生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の三次元造形装置は、造形テーブルと、前記造形テーブルに粉末層を形成する層形成部と、前記粉末層における三次元造形物の造形領域にバインダーを含む液体を第1ノズルから吐出する第1ヘッドと、前記粉末層における前記造形領域に対する境界領域にセラミック粒子を含む液体を第2ノズルから吐出する第2ヘッドと、前記造形テーブルに対する前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドの移動と、電圧を印加することによる前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドの駆動と、を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1ヘッドに第1フラッシング動作を実行させ、前記第1フラッシング動作と異なるフラッシング条件で前記第2ヘッドに第2フラッシング動作を実行させるよう制御することを特徴とする。
【0006】
また、上記課題を解決するための本発明の三次元造形装置は、造形テーブルと、前記造形テーブルに粉末層を形成する層形成部と、前記粉末層における三次元造形物の造形領域に光吸収粒子を含む液体を第1ノズルから吐出する第1ヘッドと、前記粉末層における前記造形領域に対する境界領域にコロイド状インクまたはポリマー系インクを含む液体を第2ノズルから吐出する第2ヘッドと、前記造形テーブルに対する前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドの移動と、電圧を印加することによる前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドの駆動と、を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1ヘッドに第1フラッシング動作を実行させ、前記第1フラッシング動作と異なるフラッシング条件で前記第2ヘッドに第2フラッシング動作を実行させるよう制御することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施例に係る本発明の三次元造形装置を表す概略構成図。
【
図2】
図1の三次元造形装置の液体共有システムを表す概略図。
【
図3】
図1の三次元造形装置のヘッドを表す斜視図。
【
図4】
図1の三次元造形装置のヘッドを表す底面側から見た
図5の一点鎖線Aで切った断面図であって、一部の構成部材を透視して破線で表した図。
【
図5】
図1の三次元造形装置のヘッドを表す
図5の一点鎖線Bで切った側面断面図。
【
図6】
図1の三次元造形装置を用いて行う三次元造形方法を説明するための概略図。
【
図7】
図1の三次元造形装置を用いて行う三次元造形方法のフローチャート。
【
図8】
図1の三次元造形装置を用いて行う三次元造形方法のフローチャートであって、
図3の三次元造形方法とは別の三次元造形方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の三次元造形装置は、造形テーブルと、前記造形テーブルに粉末層を形成する層形成部と、前記粉末層における三次元造形物の造形領域にバインダーを含む液体を第1ノズルから吐出する第1ヘッドと、前記粉末層における前記造形領域に対する境界領域にセラミック粒子を含む液体を第2ノズルから吐出する第2ヘッドと、前記造形テーブルに対する前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドの移動と、電圧を印加することによる前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドの駆動と、を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1ヘッドに第1フラッシング動作を実行させ、前記第1フラッシング動作と異なるフラッシング条件で前記第2ヘッドに第2フラッシング動作を実行させるよう制御することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、粉末層における境界領域にセラミック粒子を含む液体を吐出することで、造形領域に吐出されたバインダーを含む液体が境界領域を超えて流れることを抑制できる。さらに、例え、バインダーを含む液体が境界領域を超えて流れた場合であっても、焼結の際などにおいて境界領域にセラミック粒子が配置されることで該セラミック粒子を簡単かつきれいに除去することができ、高精度の三次元造形物とすることができる。また、バインダーを含む液体を吐出する第1ヘッドとセラミック粒子を含む液体を吐出する第2ヘッドとでは、好ましいフラッシング条件が変わるが、第1ヘッドに対して実行する第1フラッシング動作とは異なるフラッシング条件で第2ヘッドに第2フラッシング動作を実行することで、第1ヘッド及び第2ヘッドの夫々を好ましいフラッシング条件でフラッシングすることができる。したがって、フラッシング動作を行ってもノズルに混入した粉末が除去できないということを抑制できる。
【0010】
本発明の第2の態様の三次元造形装置は、前記第2フラッシング動作における前記第2ヘッドへ入力される波形の周波数は、前記第1フラッシング動作における前記第1ヘッドへ入力される波形の周波数よりも高いことを特徴とする。
【0011】
一般的に、ノズルにバインダーを含む液体がある場合よりもノズルにセラミック粒子とバインダーとを含む液体がある場合のほうが、ノズルに混入した粉末を排出することが困難な場合が多い。しかしながら、本態様によれば、第2フラッシング動作における第2ヘッドへ入力される波形の周波数は、第1フラッシング動作における第1ヘッドへ入力される波形の周波数よりも高い。ヘッドへ入力される波形の周波数を高くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本態様によれば、第1ヘッドに粉末が混入した場合だけでなく、第2ヘッドに粉末が混入した場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0012】
本発明の第3の態様の三次元造形装置は、前記第1または第2の態様において、前記第2フラッシング動作における前記第2ヘッドへの印加電圧は、前記第1フラッシング動作における前記第1ヘッドへの印加電圧よりも高いことを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、第2フラッシング動作における第2ヘッドへの印加電圧は、第1フラッシング動作における第1ヘッドへの印加電圧よりも高い。ヘッドへの印加電圧を高くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本態様によれば、第1ヘッドに粉末が混入した場合だけでなく、第2ヘッドに粉末が混入した場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0014】
本発明の第4の態様の三次元造形装置は、前記第1から第3のいずれか1つの態様において、前記第2フラッシング動作における前記第2ヘッドからの前記セラミック粒子を含む液体の吐出速度は、前記第1フラッシング動作における前記第1ヘッドからの前記バインダーを含む液体の吐出速度よりも速いことを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、第2フラッシング動作における第2ヘッドからのセラミック粒子を含む液体の吐出速度は、第1フラッシング動作における第1ヘッドからのバインダーを含む液体の吐出速度よりも速い。ヘッドからの液体の吐出速度を速くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本態様によれば、第1ヘッドに粉末が混入した場合だけでなく、第2ヘッドに粉末が混入した場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0016】
本発明の第5の態様の三次元造形装置は、前記第1から第4のいずれか1つの態様において、前記第2フラッシング動作において前記第2ヘッドから吐出される前記セラミック粒子を含む液体の液滴サイズは、前記第1フラッシング動作における前記第1ヘッドから吐出される前記バインダーを含む液体の液滴サイズよりも大きいことを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、第2フラッシング動作において第2ヘッドから吐出されるセラミック粒子を含む液体の液滴サイズは、第1フラッシング動作における第1ヘッドから吐出されるバインダーを含む液体の液滴サイズよりも大きい。ヘッドからの液体の吐出量を多くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本態様によれば、第1ヘッドに粉末が混入した場合だけでなく、第2ヘッドに粉末が混入した場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0018】
本発明の第6の態様の三次元造形装置は、前記第1から第5のいずれか1つの態様において、前記第2ヘッドは、前記第2ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室に前記セラミック粒子を含む液体を供給する供給路と、循環させるために前記圧力室から前記セラミック粒子を含む液体を流入する循環路と、を備えることを特徴とする。
【0019】
セラミック粒子は重く沈降しやすいが、本態様によれば、第2ヘッドはセラミック粒子を含む液体を循環させるための循環路を備えている。このため、セラミック粒子を含む液体を循環させることでセラミック粒子の沈降を抑制でき、セラミック粒子を含む液体においてセラミック粒子が沈降することに伴う不具合を抑制できる。
【0020】
本発明の第7の態様の三次元造形装置は、前記第6の態様において、前記制御部は、単位時間当たりに前記循環路に流入する前記セラミック粒子を含む液体の流量をq1とし、単位時間当たりに前記第2ノズルから吐出される前記セラミック粒子を含む液体の最大流量をq2としたときに、q2/q1が0.05以上20以下となるよう制御することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、循環路に流入するセラミック粒子を含む液体の流量を適正な範囲に制御する。このことで、第2ノズル内の液体にかかる圧力と外気圧との圧力差が大きくなることを抑制できる。該圧力差が大きくなることを抑制することで、第2ノズルに粉末が混入することを抑制できる。
【0022】
本発明の第8の態様の三次元造形装置は、前記第7の態様において、前記q2/q1は、0.05であることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、循環路に流入するセラミック粒子を含む液体の流量を特に好ましい範囲に制御する。このことで、第2ノズル内の液体にかかる圧力と外気圧との圧力差が大きくなることを特に効果的に抑制でき、第2ノズルに粉末が混入することを特に効果的に抑制できる。
【0024】
本発明の第9の態様の三次元造形装置は、前記第1から第8のいずれか1つの態様において、前記セラミック粒子はアナターゼ型TiO2を含むことを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、アナターゼ型TiO2を含むセラミック粒子を含む液体を使用する。アナターゼ型TiO2の粒子の粒径は、一般的な他のセラミック粒子に比べて小さいため、セラミック粒子の表面活性が高くなり、第2ヘッドに収容される液体においてセラミック粒子が分散しやすくなる。さらに、アナターゼ型TiO2の粒子は、ルチル型TiO2の粒子に比べて分解しやすいため、造形した三次元造形物から境界領域を容易に取り除くことができる。
【0026】
本発明の第10の態様の三次元造形装置は、造形テーブルと、前記造形テーブルに粉末層を形成する層形成部と、前記粉末層における三次元造形物の造形領域に光吸収粒子を含む液体を第1ノズルから吐出する第1ヘッドと、前記粉末層における前記造形領域に対する境界領域にコロイド状インクまたはポリマー系インクを含む液体を第2ノズルから吐出する第2ヘッドと、前記造形テーブルに対する前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドの移動と、電圧を印加することによる前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドの駆動と、を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1ヘッドに第1フラッシング動作を実行させ、前記第1フラッシング動作と異なるフラッシング条件で前記第2ヘッドに第2フラッシング動作を実行させるよう制御することを特徴とする。
【0027】
光吸収粒子を含む液体を吐出する第1ヘッドとコロイド状インクまたはポリマー系インクを含む液体を吐出する第2ヘッドとでは、好ましいフラッシング条件が変わるが、第1ヘッドに対して実行する第1フラッシング動作とは異なるフラッシング条件で第2ヘッドに第2フラッシング動作を実行することで、第1ヘッド及び第2ヘッドの夫々を好ましいフラッシング条件でフラッシングすることができる。したがって、フラッシング動作を行ってもノズルに混入した粉末が除去できないということを抑制できる。
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
最初に、本発明の三次元造形装置1の一実施例について
図1を参照して説明する。ここで、
図1及び後述する各図における図中のX方向は水平方向であり供給ユニット8の往復移動方向に対応し、このうち、X1方向は往方向、X2方向は復方向に対応する。また、Y方向は水平方向であるとともにX方向と直交する方向であり、ローラー6の回転軸の延びる方向に対応する。また、Z方向は鉛直方向であり、層500の積層方向に対応する。
【0029】
なお、本明細書における「三次元造形」とは、いわゆる立体造形物を形成することを示すものであって、例えば、平板状、いわゆる二次元形状の形状であっても厚さを有する形状を形成することも含まれる。
【0030】
本実施例の三次元造形装置1は、層501、層502、層503、・・・層50nからなる層500を積層することにより三次元造形物を製造する三次元造形装置である。そして、
図1で表されるように、本実施例の三次元造形装置1は、造形テーブル9を有するテーブルユニット10と、三次元造形物の造形材料を造形テーブル9に供給する供給ユニット8と、テーブルユニット10及び供給ユニット8の動作を制御する制御部12と、を備えている。なお、三次元造形装置1は、パーソナルコンピューターなどの外部装置20と電気的に接続されており、外部装置20を介してユーザーからの指示を受け付け可能な構成となっている。
【0031】
造形テーブル9は、制御部12の制御によりZ方向に移動可能な構成となっている。造形テーブル9の造形面9aをテーブルユニット10の上面部10aに対してZ方向において所定の距離だけ低い位置に配置し、造形面9aに供給ユニット8から三次元造形物の造形材料を供給して1層分の層500を形成する。そして、造形テーブル9の所定の距離分の下方への移動と、供給ユニット8からの三次元造形物の造形材料の供給と、を繰り返すことで積層する。
図1は、層501、層502、層503及び層504の4層分の層形成を繰り返して、造形面9a上に三次元造形物の構造体Sを形成した様子を表している。
【0032】
供給ユニット8は、ガイドバー11に沿って、X方向に移動可能な構成となっている。また、供給ユニット8は、金属などの粉末を含む造形材料を造形テーブル9に供給する造形材料供給部2を備えている。
【0033】
また、供給ユニット8は、造形テーブル9に供給された造形材料を圧縮して均すことが可能なローラー6を備えている。ここで、造形材料供給部2とローラー6とで、造形テーブル9に粉末層である層500を形成する、層形成部を構成している。なお、供給ユニット8は、ローラー6の代わりに、造形テーブル9に供給された造形材料を均すことが可能なスキージを備えていても構わない。
【0034】
また、供給ユニット8は、造形材料供給部2から供給された造形材料に含まれる粉末を結着するバインダーを含む液体を、第1ノズルN1から三次元造形物の造形領域Pに吐出する第1ヘッド3を備えている。ここで、第1ヘッド3から吐出される液体は、バインダーとして紫外線硬化樹脂を含む液体である。ただし、このような液体に限定されず、熱硬化樹脂をバインダーとして含む液体や、バインダーとしての固体の樹脂が揮発性の溶媒に溶解された状態の液体などを使用してもよい。
【0035】
また、供給ユニット8は、造形領域Pに対する境界領域Bに対してセラミック粒子を含む液体を、第2ノズルN2から吐出する第2ヘッド13を備えている。ここで、第2ヘッド13から吐出される液体は、セラミック粒子としてアナターゼ型TiO2を含む液体である。ただし、このような液体に限定されず、セラミック粒子としてアナターゼ型TiO2以外のセラミック粒子を含む液体を使用してもよい。境界領域Bに対してセラミック粒子を含む液体を吐出することで、造形領域Pからバインダーが外側にブリードすることを抑制して三次元造形物の構造体Sの輪郭をきれいに構成できるとともに、三次元造形物の構造体Sを取り出す際に該三次元造形物の構造体Sに付着する粉末をきれいに剥離できる。
【0036】
そして、供給ユニット8は、紫外線硬化樹脂を硬化させることが可能な紫外線を照射する紫外線照射部4を備えている。なお、本実施例の供給ユニット8は、紫外線照射部4を備える構成であるが、使用する液体の種類などに応じて、紫外線照射部4の代わりに熱硬化樹脂を硬化させるため或いは溶媒を揮発させるためのヒーターを備える構成などとしてもよい。
【0037】
図1で表されるように、本実施例の供給ユニット8は、X方向において構成部材の形状が非対称となっている。ただし、供給ユニット8は、X方向において構成部材の形状が対称となる構成であってもよい。供給ユニット8がX方向において構成部材の形状が対称となる構成であれば、供給ユニット8をX1方向に移動させつつ三次元造形物の造形動作を実行できるとともに、供給ユニット8をX2方向に移動させつつ三次元造形物の造形動作を実行できる。
【0038】
また、
図1で表されるように、本実施例の三次元造形装置1は、テーブルユニット10に液体受け部5が設けられており、液体受け部5と対向する位置で第1ヘッド3及び第2ヘッド13から液体を吐出させてフラッシング動作を実行可能である。すなわち、液体受け部5と対向する位置がフラッシング位置であり、このため当然、フラッシング位置は三次元造形物の造形領域Pとは異なる位置である。なお、液体受け部5で受けた液体は、ポンプ14を駆動することにより廃液タンク7に向けて流すことができる。
【0039】
ここで、制御部12は、フラッシング位置である液体受け部5と対向する位置において第1ヘッド3及び第2ヘッド13に電圧を印加して、第1ノズルN1及び第2ノズルN2から液体を吐出するフラッシング動作を実行させる。なお、本実施例の三次元造形装置1は、液体受け部5と対向する位置をフラッシング位置としているが、このような構成に限定されず、例えば、造形面9a上の造形領域Pとは異なる領域をフラッシング位置としてもよい。
【0040】
このように、本実施例の三次元造形装置1は、造形テーブル9と、造形テーブル9に粉末層である層500を形成する層形成部としての造形材料供給部2及びローラー6と、層500における三次元造形物の造形領域Pにバインダーを含む液体を第1ノズルN1から吐出する第1ヘッド3と、層500における造形領域Pに対する境界領域Bにセラミック粒子を含む液体を第2ノズルN2から吐出する第2ヘッド13と、造形テーブル9に対して第1ヘッド3及び第2ヘッド13を相対移動させる移動システムとしての供給ユニット8及びテーブルユニット10と、造形テーブル9に対する第1ヘッド3及び第2ヘッド13の移動と、電圧を印加することによる第1ヘッド3及び第2ヘッド13の駆動と、を制御する制御部12と、を備えている。また、第1ヘッド3及び第2ヘッド13に液体を供給する液体供給システム40を備えている。
【0041】
本実施例の三次元造形装置1は、層500における境界領域Bにセラミック粒子を含む液体を吐出することで、造形領域Pに吐出されたバインダーを含む液体が境界領域Bを超えて流れることを抑制できる。さらに、例え、バインダーを含む液体が境界領域Bを超えて流れた場合であっても、焼結の際などにおいて境界領域Bにセラミック粒子が配置されることで該セラミック粒子を簡単かつきれいに除去することができ、三次元造形物の構造体Sの輪郭を高精度にすることができる。
【0042】
以下に、
図2から
図5を参照して液体供給システム40、第1ヘッド3及び第2ヘッド13について詳細に説明する。ここで、
図2に示す液体供給システム40は、第1ヘッド3及び第2ヘッド13に液体を供給するための供給流路45aを含む循環部41と、循環部41に液体を補充するための液体補充流路45dを含む補充部42と、によって構成されている。なお、
図2の符号3、並びに、
図3及び
図4は第1ヘッド3を示す図であるが、第1ヘッド3及び第2ヘッド13は、それらの構成及びそれらに繋がる液体供給システムが同様である。このため、以下の第1ヘッド3に対する説明は第2ヘッド13に読み替えて理解することができる。
【0043】
最初に、液体供給システム40について説明する。
図2で表されるように、循環部41は、第1ヘッド3(第2ヘッド13)と、加圧制御用液体タンク43aと減圧制御用液体タンク43bと、加圧制御用ポンプ44aと、減圧制御用ポンプ44bと、流動用ポンプ44cと、電磁弁V1と、を有する。また、循環部41は、加圧制御用液体タンク43aと第1ヘッド3(第2ヘッド13)を連結する供給流路45aと、第1ヘッド3(第2ヘッド13)と減圧制御用液体タンク43bを連結する第1循環流路45bと、加圧制御用液体タンク43aと減圧制御用液体タンク43bとを連結する第2循環流路45cと、を有する。ここで、第1循環流路45bには、フィルターF2と、第1循環流路45b中を流れる液体の流量を検出する流量センサー46と、が設けられている。
【0044】
加圧制御用液体タンク43a、加圧制御用ポンプ44a、減圧制御用液体タンク43b、減圧制御用ポンプ44bによって、第1ヘッド3のノズルN1(第2ヘッド13のノズルN2)には大気圧から若干負圧が掛かるように差圧制御が行われる。
【0045】
減圧用タンクである減圧制御用液体タンク43bから加圧用タンクである加圧制御用液体タンク43aに液体を流動させる第2循環流路45cには、流動用ポンプ44cと、電磁弁V1が設置されている。第1ヘッド3(第2ヘッド13)における液体吐出動作が実行されるとき、第1ヘッド3(第2ヘッド13)に液体を供給するときは、電磁弁V1を開き、流動用ポンプ44cを動作させて、供給流路45a、第1循環流路45b及び第2循環流路45cにおいて液体を循環させる。
【0046】
補充部42は、液体が収容された交換可能な液体カートリッジ43cと、流動用ポンプ44dと、電磁弁V2と、を有する。また、補充部42は、加圧制御用液体タンク43aと液体カートリッジ43cとを連結する液体補充流路45dを有する。液体カートリッジ43cから加圧制御用液体タンク43aに液体を補充するときは、電磁弁V2を開き、流動用ポンプ44dを動作させて、液体補充流路45dにおいて液体を流させる。ここで、本実施例の三次元造形装置1においては、第1ヘッド3及び第2ヘッド13のそれぞれに対して1つずつの同様の構成の液体供給システム40を備える構成である。
【0047】
次に、第1ヘッド3(第2ヘッド13)の詳細な構成について
図3から
図5を参照して説明する。なお、
図5中の実線の矢印は、第1ヘッド3(第2ヘッド13)の内部での液体の流れる方向を表している。
【0048】
図3に示されるように、第1ヘッド3(第2ヘッド13)は、供給流路45a及び第1循環流路45bと接続されている。第1ヘッド3(第2ヘッド13)の内部に液体を供給する供給流路としての供給流路45a、並びに、第1ヘッド3(第2ヘッド13)の内部の液体を一旦外部に排出して循環させる循環流路としての第1循環流路45bは、第1ヘッド3(第2ヘッド13)の一部を構成しているとみなすことができる。別の表現をすると、第1ヘッド3(第2ヘッド13)は、供給流路45a及び第1循環流路45bを備えている。供給流路45aは供給口33に接続され、第1循環流路45bは排出口34に接続されている。
【0049】
第1ヘッド3(第2ヘッド13)は、
図3から
図5で表されるように、供給口33を有する供給液室31を有し、液体は、供給流路45aから供給口33を介して供給液室31に送られる。また、第1ヘッド3(第2ヘッド13)は、
図4及び
図5で表されるように、フィルターF3を介して供給液室31と通じる個別供給流路37を有し、供給液室31に供給された液体は、個別供給流路37に送られる。
【0050】
第1ヘッド3(第2ヘッド13)は、
図3及び
図5で表されるように、電圧を印加させることでZ方向に沿って変形する圧電素子35を有し、圧電素子35は、Z方向において振動板Dを挟んで圧力室36と反対側の空間に配置されている。
図4及び
図5で表されるように、圧力室36は個別供給流路37と通じており、液体は個別供給流路37から圧力室36に送られる。また、圧力室36には第1ノズルN1(第2ノズルN2)が連通しており、圧電素子35が変形することで圧力室36の容積が収縮し、圧力室36中の液体が加圧されることで、第1ノズルN1(第2ノズルN2)から液体が吐出する。なお、
図5における下方が鉛直下方向であり、第1ノズルN1(第2ノズルN2)からの液体の吐出方向は、重力方向に対応する鉛直下方向である。
【0051】
なお、上記のように、本実施例の三次元造形装置1は、
図2で表される液体供給システム40を備えており、第1ヘッド3(第2ヘッド13)に供給する液体を循環して供給している。このため、圧力室36に一度送られた液体を循環させるため、圧力室36は個別供給流路37に加えて個別循環流路38にも通じている。個別循環流路38は、フィルターF1を介して、排出口34を有する循環液室32と通じている。本実施例の三次元造形装置1は、第1ヘッド3(第2ヘッド13)の内部において、供給流路45a、供給液室31、個別供給流路37、圧力室36、個別循環流路38、循環液室32、第1循環流路45b、と液体を流すことで該液体を循環させている。
【0052】
上記のように、第1ヘッド3及び第2ヘッド13は、第1ノズルN1及び第2ノズルN2に連通する圧力室36と、圧力室36にバインダーを含む液体及びセラミック粒子を含む液体を供給する供給路としての供給流路45a、供給液室31、個別供給流路37と、循環させるために圧力室36からバインダーを含む液体及びセラミック粒子を含む液体を流入する循環路としての個別循環流路38、循環液室32、第1循環流路45bと、を備えている。ここで、セラミック粒子は重く沈降しやすいが、本実施例の三次元造形装置1においては、上記のように、第2ヘッド13はセラミック粒子を含む液体を循環させるための循環路を備えている。このため、セラミック粒子を含む液体を循環させることでセラミック粒子の沈降を抑制でき、セラミック粒子を含む液体においてセラミック粒子が沈降することに伴う不具合を抑制できる。
【0053】
なお、制御部12は、単位時間当たりに循環路に流入するセラミック粒子を含む液体の流量をq1とし、単位時間当たりに第2ノズルN2から吐出されるセラミック粒子を含む液体の最大流量をq2としたときに、q2/q1が0.05以上20以下となるよう制御する。すなわち、本実施例の三次元造形装置1は、循環路に流入するセラミック粒子を含む液体の流量を適正な範囲に制御する。このことで、第2ノズルN2内の液体にかかる圧力と外気圧との圧力差が大きくなることを抑制できる。本実施例の三次元造形装置1は、該圧力差が大きくなることを抑制することで、第2ノズルN2に層500を形成する粉末が混入することを抑制できる。
【0054】
なお、制御部12は、通常状態においては、前記q2/q1を0.05とする。すなわち、本実施例の三次元造形装置1は、循環路に流入するセラミック粒子を含む液体の流量を特に好ましい範囲に制御する。このことで、本実施例の三次元造形装置1は、第2ノズルN2内の液体にかかる圧力と外気圧との圧力差が大きくなることを特に効果的に抑制でき、第2ノズルN2に層500を形成する粉末が混入することを特に効果的に抑制できる。
【0055】
次に、本実施例の三次元造形装置1で使用可能な造形材料についての具体例を説明する。造形材料に含有可能な金属粉末としては、例えばマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単体粉末、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金(マルエージング鋼、ステンレス(SUS)、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金)の粉末、これらの混合粉末を、用いることが可能である。
【0056】
また、第1ヘッド3から造形領域Pに吐出される液体中に含有されるバインダーとしては、例えば、PMMA(アクリル)、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-アクリル酸エステル)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル)、PLA(ポリ乳酸)、PEI(ポリエーテルイミド)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PA(ポリアミド)、EP(エポキシ)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PS(ポリスチレン)、パラフィンワックス、PVA(ポリビニルアルコール)、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレートなどを好ましく使用可能である。また、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂などを単独で或いは組み合わせて用いることができる。さらには、熱可塑性樹脂や、アクリルなどのような不飽和二重結合のラジカル重合を用いるタイプやエポキシなどのカチオン重合を用いるタイプの紫外線硬化性樹脂を用いることもできる。
【0057】
また、第2ヘッド13から境界領域Bに吐出される液体中に含有されるセラミックス粉末としては、例えば二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化ケイ素(Si3N4)などを好ましく使用可能である。このうち、TiO2を特に好ましく使用でき、なかでも、アナターゼ型のTiO2を特に好ましく使用できる。これは、アナターゼ型TiO2の粒子の粒径は、一般的な他のセラミック粒子に比べて小さいため、セラミック粒子の表面活性が高くなり、第2ヘッドに収容される液体においてセラミック粒子が分散しやすくなるためである。さらに、アナターゼ型TiO2の粒子は、ルチル型TiO2の粒子に比べて分解しやすいため、造形した三次元造形物の構造体Sから境界領域Bを容易に取り除くことができる。
【0058】
また、第1ヘッド3及び第2ヘッド13から吐出される液体中に含有される溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等)等のイオン液体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
次に、本実施例の三次元造形装置1を用いて実行可能な三次元造形方法の一例について、
図6を参照しつつ、
図7及び
図8のフローチャートを用いて説明する。
図7及び
図8のフローチャートで表される本実施例の三次元造形方法は、供給ユニット8や造形テーブル9など三次元造形装置1の各構成部材の制御を制御部12が行うことにより行われる。なお、
図6は、層500のうちの層502を形成する際の一例を表している。
【0060】
最初に、
図7のフローチャートで表される三次元造形方法について説明する。
図7で表されるように、最初に、ステップS110の造形データ入力工程で、製造する三次元造形物の造形データを入力する。三次元造形物の造形データの入力元に特に限定はないが、外部装置20を用いて造形データを三次元造形装置1に入力できる。
【0061】
次に、ステップS120の造形前フラッシング工程で、第1ヘッド3及び第2ヘッド13について造形前フラッシングを行う。ここで、造形前フラッシングは、フラッシング位置である液体受け部5と対向する位置に第1ヘッド3及び第2ヘッド13を移動し、該位置で行う。本ステップS120においては、第1ヘッド3及び第2ヘッド13について同時に造形前フラッシングを行うが、第1ヘッド3及び第2ヘッド13を順番に造形前フラッシングさせてもよい。なお、本ステップS120の造形前フラッシング工程は、省略してもよい。
【0062】
次に、ステップS160の層形成工程で、造形材料供給部2から造形材料を造形テーブル9の造形面9aに供給するとともにローラー6で造形材料を圧縮して均すことで層500を形成する。
図6の一番上の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動して層502を形成している状態を表している。
【0063】
次に、ステップS170の液体吐出工程で、層500における三次元造形物の造形領域Pにバインダーを含む液体を第1ヘッド3のノズルN1から吐出する。
図6の上から2番目の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動しつつ層502の造形領域Pにバインダーを含む液体を第1ヘッド3のノズルN1から吐出している状態を表している。そして、本ステップS170の液体吐出工程では、続けて、層500における造形領域Pに対する境界領域Bにセラミック粒子を含む液体を第2ヘッド13のノズルN2から吐出する。
図6の上から3番目の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動しつつ層502の造形領域Pにセラミック粒子を含む液体を第2ヘッド13のノズルN2から吐出している状態を表している。
【0064】
次に、ステップS180の紫外線照射工程で、層500における三次元造形物の造形領域Pに向けて紫外線照射部4から紫外線を照射する。
図6の上から4番目の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動しつつ層502における三次元造形物の造形領域Pに向けて紫外線照射部4から紫外線を照射している状態を表している。
【0065】
次に、ステップS190のフラッシング工程で、第1ヘッド3及び第2ヘッド13のフラッシングを行う。ここで、本ステップにおけるフラッシングは、造形前フラッシング工程と同様、フラッシング位置である液体受け部5と対向する位置に第1ヘッド3及び第2ヘッド13を移動し、該位置で行う。また、本ステップS120においても、造形前フラッシング工程と同様、第1ヘッド3及び第2ヘッド13について同時に造形前フラッシングを行う。
図6の一番下の状態は、液体受け部5と対向する位置に第1ヘッド3及び第2ヘッド13を移動し、第1ヘッド3及び第2ヘッド13から液体受け部5に向けて液体を吐出するフラッシングをしている状態を表している。
【0066】
ここで、制御部12は、本ステップのフラッシング工程において、第1ヘッド3に第1フラッシング動作を実行させ、第1フラッシング動作と異なるフラッシング条件で第2ヘッド13に第2フラッシング動作を実行させる。第1フラッシング動作と第2フラッシング動作とにおける異なるフラッシング条件については後述する。
【0067】
そして、ステップS210の造形データ終了有無判断工程で、三次元造形装置1の制御部12において、ステップS110で入力した造形データに基づく層500の形成が全て終了したかどうかを判断する。層500の形成が全て終了していないと判断した場合、ステップS120の造形前フラッシング工程に戻り、次の層500を形成する。一方、層500の形成が全て終了したと判断した場合、ステップS220の脱脂工程に進む。
【0068】
ステップS220の脱脂工程では、バインダーなど、ステップS120の造形前フラッシング工程からステップS210の造形データ終了有無判断工程を繰り返すことで製造された構造体Sの樹脂成分を、外部装置などを用いて脱脂する。なお、脱脂の方法は、加熱することにより樹脂成分を揮発させる方法や、溶剤中に構造体Sを漬けて樹脂成分を溶解させる方法などがあるが、特に限定はない。なお、樹脂製の三次元造形物を製造する場合など、製造する三次元造形物の種類などによっては、本ステップS220の脱脂工程を省略してもよい。
【0069】
そして、ステップS230の焼結工程では、ステップS220の脱脂工程で脱脂がなされた構造体Sを外部装置などを用いて加熱して造形材料を焼結する。なお、ステップS220の脱脂工程を実行した後においても構造体Sのバインダーなどの樹脂成分が残存していた場合でも、本ステップS230の焼結工程の実行に伴い該樹脂成分は除去される。そして、本ステップS230の焼結工程の終了に伴い、本実施例の三次元造形物の製造方法を終了する。なお、ステップS220の脱脂工程と同様、製造する三次元造形物の種類などによっては、本ステップS230の焼結工程を省略してもよい。
【0070】
次に、
図8のフローチャートで表される三次元造形方法について説明する。
図8のフローチャートで表される三次元造形方法は、ステップS110からステップS120、ステップS160からステップS180、ステップS210からステップS230が、
図7のフローチャートで表される三次元造形方法と共通する。このため、これらのステップについての説明は省略する。
【0071】
図8で表されるように、ステップS120の終了後、ステップS130の第1ヘッドフラッシング間隔判断工程で、第1ヘッド3のフラッシング間隔が所定値よりも長くあいたか否かを制御部12において判断する。本ステップで制御部12がフラッシング間隔が所定値よりも長くあいたと判断したら、ステップS140の第1ヘッドフラッシング工程に移行し、第1ヘッド3のフラッシングを実行し、ステップS150の第1ヘッドフラッシング間隔リセット工程で第1ヘッド3の最後のフラッシング時間を更新して、ステップS160の層形成工程に移行する。一方、本ステップで制御部12がフラッシング間隔が所定値よりも長くあいていないと判断したら、第1ヘッド3のフラッシングを実行することなくステップS160の層形成工程に移行する。なお、ステップS140の第1ヘッドフラッシング工程では、フラッシング位置である液体受け部5と対向する位置に第1ヘッド3を移動し、該位置で第1ヘッド3のフラッシングを行う。
【0072】
また、
図8で表されるように、ステップS180の紫外線照射工程後、ステップS200の第2ヘッドフラッシング工程に移行し、第2ヘッド13のフラッシングを実行する。ステップS200の第2ヘッドフラッシング工程では、ステップS140の第1ヘッドフラッシング工程と同様、フラッシング位置である液体受け部5と対向する位置に第2ヘッド13を移動し、該位置で第2ヘッド13のフラッシングを行う。
【0073】
ここで、
図8のフローチャートで表される三次元造形方法は、ステップS130の第1ヘッドフラッシング間隔判断工程を実行することで、ステップS140の第1ヘッドフラッシング工程とステップS200の第2ヘッドフラッシング工程の実行頻度を変更することができる。例えば、供給ユニット8の1回の走査(X方向における移動)ごとに第2ヘッドフラッシング工程を実行するとともに、供給ユニット8の4回の走査ごとに第1ヘッドフラッシング工程を実行することとすることができる。また、制御部12は、ステップS140の第1ヘッドフラッシング工程における第1フラッシング動作と、本ステップの第2ヘッドフラッシング工程とにおける第2フラッシング動作とで、フラッシング条件を異ならせる。第1フラッシング動作と第2フラッシング動作とにおける異なるフラッシング条件については後述する。
【0074】
ここで、一旦まとめると、本実施例の三次元造形装置1においては、制御部12は、第1ヘッド3に第1フラッシング動作を実行させ、第1フラッシング動作と異なるフラッシング条件で第2ヘッド13に第2フラッシング動作を実行させるよう制御する。バインダーを含む液体を吐出する第1ヘッド3とセラミック粒子を含む液体を吐出する第2ヘッド13とでは、好ましいフラッシング条件が変わるが、本実施例の三次元造形装置1は、第1ヘッド3に対して実行する第1フラッシング動作とは異なるフラッシング条件で第2ヘッド13に第2フラッシング動作を実行することで、第1ヘッド3及び第2ヘッド13の夫々を好ましいフラッシング条件でフラッシングすることができる。したがって、本実施例の三次元造形装置1は、フラッシング動作を行ってもノズルに混入した粉末が除去できないということを抑制できる。
【0075】
ここで、第1フラッシング動作と第2フラッシング動作とにおける異なるフラッシング条件について説明する。本実施例の三次元造形装置1においては、第2フラッシング動作を第1フラッシング動作よりもヘッド内のインクをより効果的に排出できる条件で行う。一般的に、ノズルにバインダーを含む液体がある場合よりもノズルにセラミック粒子を含む液体がある場合のほうが、ノズルに混入した粉末を排出することが困難な場合が多いためである。
【0076】
本実施例の三次元造形装置1は、第2フラッシング動作における第2ヘッド13へ入力される波形の周波数を、第1フラッシング動作における第1ヘッド3へ入力される波形の周波数よりも高くすることができる。ヘッドへ入力される波形の周波数を高くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本実施例の三次元造形装置1は、第1ヘッド3に粉末が混入した場合だけでなく、第2ヘッド13に粉末が混入した場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0077】
また、本実施例の三次元造形装置1は、第2フラッシング動作における第2ヘッド13への印加電圧を、第1フラッシング動作における第1ヘッド3への印加電圧よりも高くすることができる。ヘッドへの印加電圧を高くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本実施例の三次元造形装置1は、第1ヘッド3に粉末が混入した場合だけでなく、第2ヘッド13に粉末が混入した場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0078】
また、本実施例の三次元造形装置1は、ヘッドへの印加電圧やヘッドに電圧を印加する際の波形を調整することで、第2フラッシング動作における第2ヘッド13からのセラミック粒子を含む液体の吐出速度を、第1フラッシング動作における第1ヘッド3からのバインダーを含む液体の吐出速度よりも速くすることができる。ヘッドからの液体の吐出速度を速くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本実施例の三次元造形装置1は、第1ヘッド3に粉末が混入した場合だけでなく、第2ヘッド13に粉末が混入した場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0079】
また、本実施例の三次元造形装置1は、ヘッドへの印加電圧やヘッドに電圧を印加する際の波形を調整することで、第2フラッシング動作において第2ヘッド13から吐出されるセラミック粒子を含む液体の液滴サイズを、第1フラッシング動作における第1ヘッド3から吐出されるバインダーを含む液体の液滴サイズよりも大きくすることができる。ヘッドからの液体の吐出量を多くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本実施例の三次元造形装置1は、第1ヘッド3に粉末が混入した場合だけでなく、第2ヘッド13に粉末が混入した場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0080】
また、本実施例の三次元造形装置1は、ヘッドへの印加電圧やヘッドに電圧を印加する際の波形を調整することで、第2フラッシング動作において第2ヘッド13から吐出されるセラミック粒子を含む液体の液滴数を、第1フラッシング動作における第1ヘッド3から吐出されるバインダーを含む液体の液滴数よりも多くすることができる。ヘッドからの液体の吐出量を多くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本実施例の三次元造形装置1は、第1ヘッド3に粉末が混入した場合だけでなく、第2ヘッド13に粉末が混入した場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0081】
また、本実施例の三次元造形装置1において、層500における三次元造形物の造形領域Pにバインダーを含む液体を第1ノズルN1から吐出する第1ヘッド3と、層500における造形領域Pに対する境界領域Bにセラミック粒子を含む液体を第2ノズルN2から吐出する第2ヘッド13とを備えると記載したが、第1ノズルN1から吐出される液体に近赤外吸収粒子または可視光吸収粒子を含み、第2ノズルN2から吐出される液体にコロイド状インクまたはポリマー系インクを含んでいても構わない。このような構成の場合、ステップS180のエネルギー付与工程において、紫外線や、赤外線、または近赤外線などのエネルギーを印加することで、近赤外吸収粒子または可視光吸収粒子が供給された造形材料の部分が、造形材料の融点を超えて加熱されて融着することができる。制御部12は、本ステップのフラッシング工程において、第1ヘッド3に第1フラッシング動作を実行させ、第1フラッシング動作と異なるフラッシング条件で第2ヘッド13に第2フラッシング動作を実行させる。本実施例の三次元造形装置1は、第2フラッシング動作における第2ヘッド13へ入力される波形の周波数を、第1フラッシング動作における第1ヘッド3へ入力される波形の周波数よりも高くすることができる。ヘッドへ入力される波形の周波数を高くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本実施例の三次元造形装置1は、第1ヘッド3に粉末が混入した場合だけでなく、第2ヘッド13に粉末が混入した場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0082】
上述した異なるフラッシング条件とは、第1フラッシング動作における第1ヘッド3への印加電圧を、第2フラッシング動作における第2ヘッド13への印加電圧よりも高くすること、ヘッドへの印加電圧やヘッドに電圧を印加する際の波形を調整することで、第1フラッシング動作における第1ヘッド3からの近赤外吸収粒子または可視光吸収粒子を含む液体の吐出速度を、第2フラッシング動作における第2ヘッド13からのコロイド状インクまたはポリマー系インクを含む液体の吐出速度よりも速くすること、ヘッドへの印加電圧やヘッドに電圧を印加する際の波形を調整することで、第1フラッシング動作において第1ヘッド3から吐出される近赤外吸収粒子または可視光吸収粒子を含む液体の液滴サイズを、第2フラッシング動作における第2ヘッド13から吐出されるコロイド状インクまたはポリマー系インクを含む液体の液滴サイズよりも大きくすること、などの条件である。
【0083】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…三次元造形装置、2…造形材料供給部(層形成部)、
3…第1ヘッド、4…紫外線照射部、5…液体受け部、6…ローラー(層形成部)、
7…廃液タンク、8…供給ユニット、9…造形テーブル、9a…造形面、
10…テーブルユニット、10a…上面部、11…ガイドバー、
12…制御部、13…第2ヘッド、14…ポンプ、20…外部装置、
31…供給液室(供給路)、32…循環液室(循環路)、33…供給口、34…排出口、
35…圧電素子、36…圧力室、37…個別供給流路(供給路)、
38…個別循環流路(循環路)、40…液体供給システム、41…循環部、
42…補充部、43a…加圧制御用液体タンク、43b…減圧制御用液体タンク、
43c…液体カートリッジ、44a…加圧制御用ポンプ、44b…減圧制御用ポンプ、
44c…流動用ポンプ、44d…流動用ポンプ、45a…供給流路(供給路)、
45b…第1循環流路(循環路)、45c…第2循環流路、45d…液体補充流路、
46…流量センサー、500…層(粉末層)、
501、502、503、・・・50n…層、B…境界領域、D…振動板、
F1…フィルター、F2…フィルター、F3…フィルター、N1…第1ノズル、
N2…第2ノズル、P…造形領域、S…構造体、V1…電磁弁、V2…電磁弁