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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】液体吐出装置及びヘッドユニット
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20241001BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/01 301
B41J2/01 305
B41J2/01 127
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020132971
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029604
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭博
(72)【発明者】
【氏名】武田 賢悟
(72)【発明者】
【氏名】西本 隆弘
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-30290(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0266305(US,A1)
【文献】特開2021-146612(JP,A)
【文献】特開2016-78252(JP,A)
【文献】特開2014-4699(JP,A)
【文献】特開2010-234818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を被吐出媒体に吐出するノズル孔が形成された吐出面を有するヘッドと、
前記被吐出媒体上に前記液体を定着させる定着部と、
前記液体のミストを回収するためのミスト回収部であって、前記ミスト回収部及び前記定着部の順に、前記吐出面と平行な第1方向に並ぶ前記ミスト回収部と、を備え、
前記ミスト回収部は、空気を吸入する吸入口、及び、前記空気を排出する排出口を有する空気流路を備え、
前記空気流路は、
前記吸入口が設けられ、前記第1方向において前記ヘッドと前記定着部との間に位置し、一方端と他方端を有し、前記吐出面と直交し且つ前記一方端から前記他方端に向かう第2方向に延び、前記第2方向において前記一方端が前記他方端よりも前記吐出面に近い第1部分と、
前記第1部分の他方端に繋がる第2部分と、を有し、
前記排出口は、前記第2部分において、前記第1方向とは反対側の方向を方向成分として含む方向に開口している、液体吐出装置。
【請求項2】
前記定着部は、エネルギを発生する発生源、前記発生源を収容するケース、及び、前記ケースの外部から内部へ空気を流入させる流入口を有し、
前記流入口は、前記定着部のうち前記ヘッド側以外の範囲に設けられている、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記定着部は、前記ケースの外部から内部へ空気を前記流入口から流入させるように第1回転軸を中心に回転する第1ファンを有し、
前記ミスト回収部は、前記吸入口から吸入された空気を前記排出口から排出するように第2回転軸を中心に回転する第2ファンを有し、
前記第1ファン及び前記第2ファンは、前記第1回転軸が延びる延伸方向と前記第2回転軸が延びる延伸方向とが互いに非平行であるように配置されている、請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記排出口の少なくとも一部が、前記第2方向において、前記流入口よりも前記吐出面から離れて位置している、請求項2又は3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記ヘッド、前記定着部及び前記ミスト回収部を収容し、上部に開閉可能な蓋を有する筐体を備え、
前記ミスト回収部は、前記排出口を覆うフィルタ、及び、前記フィルタを保持し上下方向に着脱可能なホルダを有している、請求項1~のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記ヘッド、前記定着部及び前記ミスト回収部を収容し、外部の空気を取り込む取込口を有する筐体を備え、
前記ヘッドは、前記第2方向において前記吐出面、及び、前記吐出面の反対側の端面を有しており、
前記取込口は、前記第2方向において前記端面よりも前記吐出面側の反対側に配置されている、請求項1~のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記筐体は、前記取込口が設けられた第1壁、及び、前記ヘッド、前記定着部及び前記ミスト回収部を挟んで前記第1壁の反対側に位置する第2壁を有し、
前記第2壁には、外部へ空気を放出する放出口を有し、
前記放出口から空気を放出するための第3ファンを備えている、請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記被吐出媒体を搬送する搬送装置を備え、
前記吸入口は、前記搬送装置に搬送される前記被吐出媒体と対向可能に位置する、請求項1~のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記液体は、エネルギを付与されることで硬化するものであり、
前記定着部は、前記被吐出媒体上の前記液体に前記エネルギを付与する、請求項1~のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
液体を被吐出媒体に吐出するノズル孔が形成された吐出面を有するヘッドと、
前記被吐出媒体上に前記液体を定着させる定着部と、
前記液体のミストを回収するためのミスト回収部であって、前記ミスト回収部及び前記定着部の順に、前記吐出面と平行な第1方向に並ぶ前記ミスト回収部と、を備え、
前記ミスト回収部は、空気を吸入する吸入口、及び、前記空気を排出する排出口を有する空気流路を備え、
前記空気流路は、
前記吸入口が設けられ、前記第1方向において前記ヘッドと前記定着部との間に位置し、一方端と他方端を有し、前記吐出面と直交し且つ前記一方端から前記他方端に向かう第2方向に延び、前記第2方向において前記一方端が前記他方端よりも前記吐出面に近い第1部分と、
前記第1部分の他方端に繋がる第2部分と、を有し、
前記排出口は、前記第2部分において、前記第1方向とは反対側の方向を方向成分として含む方向に開口している、ヘッドユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及びヘッドユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体吐出装置として、特許文献1の画像形成装置が知られている。この画像形成装置では、インクジェット記録ヘッド、ミスト捕獲部及びUV光照射手段がこの順で並んで配置されている。このインクジェット記録ヘッドからインクを記録媒体上に飛翔させ、UV光照射手段によりUV光を記録媒体上のインクに照射することにより、インクを硬化している。また、飛翔したインクのミストをミスト捕獲部にて捕獲している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-62433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の画像形成装置では、ミストがミスト捕獲部の下方から流入し上方へ流出している。このため、ミスト捕獲部で捕獲されずにミスト捕獲部から流出したミストが、UV光照射手段側へ流れてUV光照射手段に付着するおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事態に鑑み、ミストの照射部への付着を低減することができる液体吐出装置及びヘッドユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る液体吐出装置は、液体を被吐出媒体に吐出するノズル孔が形成された吐出面を有するヘッドと、前記被吐出媒体上に前記液体を定着させる定着部と、前記液体のミストを回収するためのミスト回収部であって、前記ミスト回収部及び前記定着部の順に、前記吐出面と平行な第1方向に並ぶ前記ミスト回収部と、を備え、前記ミスト回収部は、空気を吸入する吸入口、及び、前記空気を排出する排出口を有する空気流路を備え、前記空気流路は、前記吸入口が設けられ、前記第1方向において前記ヘッドと前記定着部との間に位置し、一方端と他方端を有し、前記吐出面と直交し且つ前記一方端から前記他方端に向かう第2方向に延び、前記第2方向において前記一方端が前記他方端よりも前記吐出面に近い第1部分と、前記第1部分の他方端に繋がる第2部分と、を有し、前記排出口は、前記第2部分において、前記第1方向とは反対側の方向を方向成分として含む方向、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向、及び、前記第3方向とは反対側の方向のいずれかの方向に開口する。
【0007】
本発明のある態様に係るヘッドユニットは、液体を被吐出媒体に吐出するノズル孔が形成された吐出面を有するヘッドと、前記被吐出媒体上に前記液体を定着させる定着部と、前記液体のミストを回収するためのミスト回収部であって、前記ミスト回収部及び前記定着部の順に、前記吐出面と平行な第1方向に並ぶ前記ミスト回収部と、を備え、前記ミスト回収部は、空気を吸入する吸入口、及び、前記空気を排出する排出口を有する空気流路を備え、前記空気流路は、前記吸入口が設けられ、前記第1方向において前記ヘッドと前記定着部との間に位置し、一方端と他方端を有し、前記吐出面と直交し且つ前記一方端から前記他方端に向かう第2方向に延び、前記第2方向において前記一方端が前記他方端よりも前記吐出面に近い第1部分と、前記第1部分の他方端に繋がる第2部分と、を有し、前記排出口は、前記第2部分において、前記第1方向とは反対側の方向を方向成分として含む方向、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向、及び、前記第3方向とは反対側の方向のいずれかの方向に開口する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る液体吐出装置の斜視図である。
図2図1の液体吐出装置を左右方向に直交する断面で切断した断面図である。
図3図1の液体吐出装置の構成を示す機能ブロック図である。
図4図1の液体吐出装置を前後方向に直交する断面で切断した断面図である。
図5図1のヘッドユニットを下方から視た概略図である。
図6図4のミスト回収部を、前後方向に直交する断面で切断した断面図である。
図7図5のミスト回収部を左側から視た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0010】
<液体吐出装置の構成>
本発明の実施の形態に係る液体吐出装置10は、図1及び図2に示すように、例えば、ヘッド20から被吐出媒体A(図4)に、インク等の液体を吐出して画像を印刷するインクジェットプリンタである。被吐出媒体Aとしては、布帛及び紙等のシート、並びに、ボール及びマグカップなどの立体物が挙げられる。液体吐出装置10は、筐体11、ヘッドユニット12、走査装置50、搬送装置60及び制御装置70(図3)を備えている。なお、制御装置70の詳細については後述する。
【0011】
また、ヘッドユニット12は、図4に示すように、ヘッド20、ミスト回収部40及び定着部30を備えている。ヘッド20は、液体を吐出する吐出面20a、及び、吐出面20aの反対側の上端面20bを有している。このヘッド20、ミスト回収部40及び定着部30がこの順で並び吐出面20aに平行な第1方向を右方向と称し、その反対方向を左方向と称する。吐出面20aに直交し且つ、後述する第1部分43dの一方端から他方端に向かう第2方向を上方向と称し、その反対の方向を下方向と称する。また、第1方向及び第2方向に直交する第3方向を前方向と称し、その反対方向を後方向と称する。この第1方向及び第2方向は、互いに交差(例えば、直交)する方向である。但し、液体吐出装置10の配置はこれに限定されない。
【0012】
図1及び図2に示すように、筐体11は、ヘッドユニット12、走査装置50、搬送装置60及び制御装置70を収容している。筐体11は、上部が開口する本体13、及び、本体13の上部開口13aを開閉可能に覆う蓋14を有している。例えば、本体13は、その上部の一部(例えば、本体13の前部分)に上部開口13aが設けられ、上壁13b、下壁13c、前壁(第1壁13d)、後壁(第2壁13e)、右壁13f及び左壁13hを有している。なお、上部開口13aは本体13の上部の全体に設けられていてもよい。この場合、本体13は上壁13bを有さず、下壁13c、第1壁13d、第2壁13e、右壁13f及び左壁13hを有する。
【0013】
本体13において、上部開口13aの周囲を取り囲む上周縁は、上下方向の高さが前方ほど低くなるように傾斜している。このため、上周縁上に配置された蓋14は、前方ほど低くなるように傾斜して、上部開口13aを覆っている。本体13において、上部開口13aよりも後部分では、その上壁13bの上下方向の高さが前後方向に一定であって、上壁13bが下壁13cに平行に設けられている。
【0014】
上部開口13aが蓋14により覆われた状態において、筐体11は本体13及び蓋14により取り囲まれた内部空間が備えている。本体13は箱形状である。本体13において、上壁13bは筐体11の内部空間を挟んで下壁13c側の反対側に設けられ、第1壁13dは内部空間を挟んで第2壁13e側の反対側に設けられ、右壁13fは内部空間を挟んで左壁13h側の反対側に設けられている。
【0015】
第1壁13dに前口13d1が開口しており、第2壁13eに後口13e1が開口している。前方から見ると、前口13d1と後口13e1とが互いに重なるように配置されている。本体13の内部空間は、前口13d1及び後口13e1を介して外部に連通している。
【0016】
走査装置50は、一対の走査レール51、キャリッジ52、駆動ベルト53、走査モータ54を有し、ヘッドユニット12を左右方向に移動させる。一対の走査レール51は、左右方向に延びる長尺部材であって、前後方向において互いの間にヘッドユニット12を挟むように互いに平行に配置されている。キャリッジ52は、ヘッドユニット12を搭載し、走査レール51に沿って左右方向に搬送可能に支持されている。駆動ベルト53は、無端ベルトであって、左右方向に走査レール51に沿って延び、キャリッジ52に接続され、プーリを介して走査モータ54に連結されている。走査モータ54が駆動ベルト53を駆動することにより、走査レール51に沿ってキャリッジ52が左右方向に往復移動する。
【0017】
搬送装置60は、ステージ61、一対の搬送レール62、ステージ支持台63及び搬送モータ64(図3)を有している。ステージ61は、その上面に被吐出媒体Aが載置され、上下方向において被吐出媒体Aとヘッド20との間隔を規定する。一対の搬送レール62は、前後方向に延び、筐体11を貫通して、前口13d1から前方に突出し、後口13e1から後方に突出している。ステージ支持台63は、例えば、ステージ61を取り外し可能に支持し、一対の搬送レール62に沿って前後方向に移動可能に支持され、搬送モータ64に連結されている。搬送モータ64がステージ支持台63を駆動することにより、ステージ61を前後方向に移動する。
【0018】
ヘッドユニット12は、1つ又は複数のヘッド20を備えている。ヘッド20が複数の場合、複数のヘッド20は互いに前後方向に並べられる。ヘッド20にはタンクが接続されており、液体がタンクからヘッド20に供給される。図3に示すように、ヘッドユニット12は、ヘッド20に加えて、ヘッド20数と同数の定着部30及びミスト回収部40を備えている。ヘッド20は駆動素子21を有し、定着部30は光源31及び第2ファンモータ36aを有し、ミスト回収部40は第1ファンモータ41aを有している。ヘッドユニット12の詳細は後述する。
【0019】
<制御装置の構成>
制御装置70は、図3に示すように、ヘッド駆動回路22を介して駆動素子21に接続され、駆動素子21の駆動を制御する。制御装置70は、光源駆動回路32を介して光源31に接続され、光源31の駆動を制御する。制御装置70は、第2ファン駆動回路37を介して第2ファンモータ36aに接続され、第2ファンモータ36aの駆動を制御する。制御装置70は、第1ファン駆動回路42を介して第1ファンモータ41aに接続され、第1ファンモータ41aの駆動を制御する。制御装置70は、走査駆動回路55を介して走査モータ54に接続され、走査モータ54の駆動を制御する。制御装置70は、搬送駆動回路65を介して搬送モータ64に接続され、搬送モータ64の駆動を制御する。
【0020】
制御装置70は、演算部71及び記憶部72を有している。記憶部72は、演算部71がアクセス可能なメモリであって、RAM及びROM等により構成されている。RAMは、印刷ジョブ等の各種データを一時的に記憶する。ROMは、各種データ処理を行うためのプログラムを記憶している。
【0021】
演算部71は、CPU等のプロセッサ、及び、ASIC等の集積回路等により構成されている。演算部71は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、駆動素子21、光源31、第2ファンモータ36a、第1ファンモータ41a、走査モータ54及び搬送モータ64を制御して、印刷処理を実行する。印刷処理の詳細については後述する。
【0022】
<ヘッドユニットの構成>
ヘッドユニット12では、図4及び図5に示すように、ヘッド20、ミスト回収部40及び定着部30がこの順で左から右に並べられている。例えば、ヘッド20が左側に移動する際に液体を吐出し右側に移動する際には液体を吐出しない一方向印刷を行う場合、定着部30及びミスト回収部40は、この印刷時の移動方向(左側)におけるヘッド20の上流(右側)に配置されている。このため、定着部30及びミスト回収部40は、液体を吐出するヘッド20に追随して移動する。
【0023】
ヘッド20は、連結部56によりキャリッジ52(図1)に連結されており、複数のノズル23、複数の個別流路24、共通流路25、流路形成体26、及び、複数の駆動素子21(図3)を有している。複数のノズル23は、前後方向において所定の間隔を空けながら並んで列を成してノズル列を形成し、さらに、複数のノズル列は、左右方向において互いに所定の間隔を空けながら並べられている。なお、ノズル列は、前後方向に対して傾斜していてもよい。
【0024】
流路形成体26は、例えば、直方体形状であって、その内部にノズル23、個別流路24及び共通流路25が形成されており、その下面(吐出面20a)にノズル23の先端(ノズル孔23a)が開口している。共通流路25は前後方向に延び、タンクに接続されている。複数の個別流路24は、共通流路25から分岐して設けられている。個別流路24は、その上流端が共通流路25に接続し、その下流端がノズル23に接続している。ノズル列を構成する複数のノズル23は、互いに同じ共通流路25に連通している。よって、液体は、タンクから共通流路25に供給され、共通流路25を前後方向に流れる間に、個別流路24に分流し、ノズル23に供給される。
【0025】
駆動素子21は、圧電素子等であって、個別流路24に対応して設けられている。駆動素子21は、制御装置70(図3)により駆動されて個別流路24の体積を変更する。これにより、個別流路24の液体に、ノズル孔23aから液体を吐出する圧力が付与される。この液体は、光のエネルギにより硬化する液体である。
【0026】
定着部30は、図5及び図6に示すように、複数の光源31、カバー33、光源基板34、ケース35及び第2ファン36を有している。なお、ケース35は、ヒートシンクをさらに収容していてもよい。この場合には、ヒートシンクは、第2ファン36と光源基板34との間に配置され、光源基板34に取り付けられる。これにより、第2ファン36からの空気を受けて、光源基板34及び光源31を冷却する。
【0027】
光源31は、ノズル23から吐出されて被吐出媒体Aに着弾した液体を硬化する光(例えば、紫外線)を発光する発生源であって、例えば、LEDであって、光源基板34の下面に配置されている。カバー33は、光源31からの光を透過可能な透過性であって、複数の光源31を覆うようにケース35に取り付けられている。光源基板34には、複数の光源31及び光源駆動回路32(図3)が搭載されている。
【0028】
ケース35は、例えば、内部空間を有する直方体形状であって、その内部空間に光源31、光源基板34及び第2ファン36を収容している。ケース35は、下側開口、上側開口(流入口35a)及び流出口35bを有し、下側開口はカバー33により覆われている。このため、ケース35の内部空間は、流入口35a及び流出口35bを介して外部に連通している。なお、流入口35aを覆うようにフィルタがケース35に取り付けられていてもよい。これにより、流入口35aからケース35内に空気が流入する際、空気に含まれるミストをフィルタが捕集することができる。
【0029】
流出口35bは、第2ファン36と光源基板34との間のケース35に開口している。流出口35bは、左右方向において、ケース35のうちミスト回収部40側(左側)の反対側(右側)に設けられている。このため、流出口35bから流出する空気は、ミスト回収部40から離れる方向に流れる。
【0030】
第2ファン36は、第2回転軸36b、複数の第2羽根36c、第2吸い込み口36d及び第2吹き出し口36eを有している。第2回転軸36bは、上下方向に延び、第2ファンモータ36a(図3)に接続されており、第2ファンモータ36aの駆動により回転する。複数の第2羽根36cは、第2回転軸36bに接続されており、第2回転軸36bを中心に回る。
【0031】
第2ファン36は、第2吹き出し口36eが光源基板34に対向し、第2吸い込み口36dが流入口35aに対向するように配置されている。第2ファン36は、第2吸い込み口36dから空気を吸い込んで、第2吹き出し口36eから吹き出す。これにより、空気がケース35の外から流入口35aの内部に流入し、第2ファン36を通過して光源基板34に吹き付けられるため、光源基板34が冷却される。
【0032】
ミスト回収部40は、図6及び図7に示すように、空気を流す空気流路43を備え、液体のミストを回収する。空気流路43は、空気を吸入する吸入口43a、及び、空気を排出する排出口43bを有している。
【0033】
吸入口43aは、空気流路43の一方端に設けられ、空気流路43に対して下を向いている。吸入口43aは、左右方向においてヘッド20の吐出面20aと定着部30の光源31との間に配置されている。
【0034】
排出口43bは、空気流路43の他方端に設けられ、吸入口43aよりも上に配置されている。排出口43bは、上下方向においてヘッド20の上端面20bよりも上であって、その少なくとも一部が定着部30の上端よりも上に配置されている。このため、上下方向において、排出口43bは、その下端がヘッド20の上端面20bよりも上であって、また、その上端が、定着部30の上端にある流入口35aよりも上である。
【0035】
また、排出口43bは、第1方向(例えば、右)とは反対側の方向(例えば、左)を方向成分として含む方向、第1方向及び第2方向と直交する第3方向(例えば、前)、及び、第3方向とは反対側の方向(例えば、後)のいずれかの方向に開口し、その開口する方向に空気を排出する。
【0036】
すなわち、排出口43bは、例えば、左方向を方向成分として含む方向、前方向及び後方向のいずれかの方向に向いている。この左方向を方向成分として含む方向は、例えば、左、左上、左下、左前及び左後等がある。なお、例えば、左上方向は、左方向及び上方向を方向成分として含む方向である。排出口43bは、好適には、第1方向とは反対側の方向(例えば、左方向)を方向成分として含む方向に開口している。図6の例では、排出口43bは、左方向に向いており、空気流路43において定着部30側よりもヘッド20側に開口している。
【0037】
さらに、排出口43bは上方向に向かず、空気は排出口43bから上に排出されない。また、排出口43bの開口方向は、右方向を方向成分として含まない。このため、排出口43bは、右方向、右上方向、右下方向、右前方向及び右後方向等に向かない。よって、空気は排出口43bから右に排出されない。
【0038】
空気流路43は、中空部を有する筒形状であって、この中空部に空気が流れる。空気流路43は、その内側に中空部を形成する内面(内壁)、及び、その反対側に外面(外壁)を有している。外壁は、空気流路43の外側に露出している。空気流路43は、縦部分44、角部分45及び横部分46を有し、角部分45で曲がった筒形状である。なお、図6の例では、空気流路43は角部分45において90度に曲がっているが、曲がる角度はこれに限定されない。例えば、空気流路43は角部分45にて、90度より大きな角度(鈍角)で曲がっていてもよいし、90度未満の角度(鋭角)で曲がっていてもよい。
【0039】
角部分45は、空気流路43において吸入口43aと排出口43bとの間に設けられている。縦部分44は、吸入口43aから角部分45へ上に延び、横部分46は、角部分45から排出口43bに左に延びている。
【0040】
縦部分44は、例えば、上下方向に直交する断面が矩形の筒形状であって、第1左壁44a、第1右壁44b、第1前壁44c及び第1後壁44dを有している。これらは、平板形状であって、その下端が吸入口43aの周囲を取り囲み、その下端から上に延びている。第1右壁44bの内面(第1右内面44b1)と第1左壁44aの内面(第2左内面44a1)とは互いに対向し、第2左内面44a1は第1右内面44b1よりもヘッド20に近い。第1前壁44c及び第1後壁44dは、その内面同士が対向し互いに平行であって、第1左壁44a及び第1右壁44bの間に配置され、これらの縁を接続している。
【0041】
縦部分44は、上下方向において直管部分44e及び拡径部分44fを有している。直管部分44eは、上下方向に直交する断面が全体に亘って一定であって、その下端が拡径部分44fの上端に接続されている。直管部分44eでは、第1右内面44b1及び第2左内面44a1は互いに平行に配置されている。
【0042】
拡径部分44fは、下端に吸入口43aを有し、上下方向に直交する断面が下に向かって拡大している。拡径部分44fでは、第1右壁44bが上下方向に延び、第1左壁44aは下に向かって左に延びるように第1右壁44bに対して傾斜している。
【0043】
このため、第1右内面44b1は、平坦であって、吸入口43aから拡径部分44f及び直管部分44eに亘って上に延びている。第2左内面44a1は、直管部分44eにおいて第1右内面44b1に平行であって、拡径部分44fにおいて下に向かうに伴い左側に第1右内面44b1に対して傾斜しており、連結部56の下方においてヘッド20側に延びている。この第2左内面44a1は、直線的に傾斜する平面で形成されていてもよいし、湾曲する曲面で形成されていてもよい。第2左内面44a1が直線的に傾斜する場合、段階的に傾斜角度を変えながら傾斜していてもよい。
【0044】
横部分46は、例えば、左方向に直交する断面が矩形の筒形状であって、第2上壁46a、第2下壁46b、第2前壁46c及び第2後壁46dを有している。これらは、平板形状であって、その左端が排出口43bの周囲を取り囲み、その左端から右方向に延びている。このため、排出口43bは、横部分46の左端開口に設けられている。
【0045】
第2上壁46a及び第2下壁46bは、その内面同士が対向し互いに平行に配置されている。第2前壁46c及び第2後壁46dは、その内面同士が対向し互いに平行であって、第2上壁46a及び第2下壁46bの間に配置され、これらの縁を接続している。
【0046】
角部分45は、その下端が縦部分44の上端に接続され、その左端が横部分46の右端に接続されている。角部分45は、開口部45a、第3右壁45b、第3前壁45c、第3後壁45d及び接続板45eを有している。第3前壁45cは第1前壁44c及び第2前壁46cに接続され、これらは互いに同一平面上に配置されている。第3後壁45dは第1後壁44d及び第2後壁46dに接続され、これらは互いに同一平面上に配置されている。
【0047】
第3右壁45bは第1右壁44bに接続されている。第3右壁45bは、第1右内面44b1に接続された内面(第3右内面45f)を有している。第1右内面44b1及び第3右内面45fは、空気流路43の内側において互いに同一平面上に配置されており、平坦であって、左右方向に直交している。第3右内面45fは、左右方向においてフィルタ48を挟んで排出口43bに対向している。
【0048】
第3右壁45bは、第3右内面45fの反対側の外面(第3右外面)を有し、第1右壁44bは、第1右内面44b1の反対側の外面(第1右外面)を有している。第3右外面及び第1右外面は、空気流路43の外側において互いに同一平面上に配置されており、平坦であって、左右方向に直交している。第3右外面の少なくとも一部及び第1右外面は、定着部30に対向している。
【0049】
開口部45aは、角部分45の上端に開口し、ホルダ49が通過可能なサイズを有している。開口部45aは、上下方向において空気流路43のうち吸入口43a側の反対側に設けられており、左右方向において第2上壁46aと接続板45eとの間に配置されている。開口部45aの周囲を取り囲む周縁部は、第2上壁46aの右端、第3右壁45bの上端、第3前壁45cの上端及び第3後壁45dの上端により形成されている。開口部45aは、本体13の上部開口13a(図2)に対向している。
【0050】
接続板45eは、平板形状であって、第3右壁45bの上端から右側に突出しており、上下方向において第2上壁46aと同じ高さに配置されている。接続板45eには、ホルダ49を空気流路43に固定するための第1固定孔45gが設けられており、第1固定孔45gは上下方向に接続板45eを貫通している。
【0051】
また、空気流路43は、第1部分43d及び第2部分43eを有している。第1部分43dは、左右方向においてヘッド20と定着部30との間に配置され、上下方向においてその下端に吸入口43aを有している。このため、第1部分43dは、空気流路43のうちヘッド20と定着部30との間に配置されている部分であり、例えば、縦部分44のうち拡径部分44f及び、上端面20b及びこれよりも下の直管部分44eである。第2部分43eは、その上端が第1部分43dの下端に接続されている。第2部分43eは、ヘッド20の上端面20b及び定着部30の流入口35aうち低い方よりも上の空気流路43の部分であり、例えば、上端面20bよりも上の直管部分44e、角部分45及び横部分46である。
【0052】
第2部分43eは排出口43bを有している。排出口43bは、第2部分43eにおいて、上下方向におけるヘッド20の上端面20bよりも上側に配置され、左右方向における定着部30側(右)の反対側(左)を向いている。これにより、排出口43bから排出された空気は、ヘッド20よりも上において定着部30から離れる方向に流れる。
【0053】
ミスト回収部40は、空気流路43に加えて、フィルタ48、ホルダ49及び第1ファン41を備えている。フィルタ48は、例えば、スポンジ等の多孔質材料により形成されており、例えば、直方体形状であって、排出口43bを覆うように空気流路43内に配置されている。フィルタ48は、右面48a、左面48b及び側面48cを有している。
【0054】
右面48aは、角部分45の第3右内面45fに対向し、左右方向において左面48bよりも排出口43bから遠い。左面48bは、右面48aの反対側の面である。右面48a及び左面48bは、平坦である。ただし、右面48a及び左面48bは、湾曲していてもよいし、凹凸を有していてもよい。
【0055】
右面48aは、上下方向において右下端48d、及び、右下端48dよりも上にある右上端48eを有している。右下端48dは、上下方向において右上端48eよりも吸入口43aに近く、左右方向において右上端48eよりも排出口43bに近い。右下端48dは、空気流路43のうち横部分46に配置されており、横部分46内において第2下壁46b上に配置されている。フィルタ48の下面は第2下壁46bに対向している。
【0056】
右上端48eは、右下端48dよりも右であって、空気流路43の角部分45内に配置されている。右上端48eは、角部分45において、上下方向において右下端48dよりも開口部45aに近く、左右方向において右下端48dよりも第3右内面45fに近い。このため、右面48aは、右下端48dから右上端48eに向かって第3右内面45fに対して近づいていくように右上に傾斜しており、縦部分44側に向いている。
【0057】
左右方向において、右上端48eと角部分45の右端(第3右内面45f)との間隔は、右上端48eと角部分45の左端との間隔よりも狭い。例えば、右上端48eと第3右内面45fとの間隔は、角部分45の左右方向における寸法の半分以下であって、縦部分44の左右方向における寸法(第1右壁44bの第1右内面44b1と第1左壁44aの第2左内面44a1との間隔)の半分以下である。
【0058】
側面48cは、右面48aと左面48bとの間においてこれらの周縁に沿って延び、これらを接続している。側面48cは、上面、下面、前面及び後面を有している。上面は、開口部45aに対向し、左面48bの上端からフィルタ48の右上端48eに向かって下り勾配になっており、右下に傾斜している。このため、右上端48eと開口部45aの周縁部との間に間隙が空けられている。
【0059】
ホルダ49は、例えば、左保持板49a、下保持板49b、右保持板49c、被覆部49d及び把手部49eを有し、これらにより開口部45aを介して空気流路43に対して脱着可能にフィルタ48を保持している。左保持板49a、下保持板49b、右保持板49c、被覆部49d及び把手部49eは平板形状である。
【0060】
左保持板49aは、フィルタ48の左面48bに接触しこれを支持している。左保持板49aは、フィルタ48と第1ファン41との間に配置され、第1ファン41に対向する範囲に流通孔49fを有している。流通孔49fが左保持板49aを貫通しているため、フィルタ48を通過した空気は流通孔49fを通り第1ファン41へ吸入される。
【0061】
下保持板49bは、その左端が左保持板49aの下端に接続され、そこから左保持板49aに直交する方向の右側に延び、フィルタ48の下面に接触しこれを支持している。右保持板49cは、その下端が下保持板49bの右端に接続され、そこから下保持板49bに直交する方向の上側に延び、フィルタ48の右面48aに接触しこれを支持している。上下方向において、右保持板49cは、左保持板49aよりも長さが短く、流通孔49fよりも下に配置されている。これにより、左保持板49a、下保持板49b及び右保持板49cは、空気がフィルタ48及び流通孔49fを通過可能に、フィルタ48の下部を覆っている。
【0062】
被覆部49dは、その左端が左保持板49aの上端に接続され、そこから右に延びている。被覆部49dのうち左領域は、フィルタ48の上面を覆って、空気流路43の開口部45aの周縁部上に配置され、開口部45aを塞ぎ、空気流路43の上壁を構成している。
【0063】
また、被覆部49dのうち右領域は、接続板45e上に配置されている。この被覆部49dは、接続板45eの第1固定孔45gに対応する位置に第2固定孔49gを有し、第2固定孔49gは上下方向に接続板45eを貫通している。この第1固定孔45g及び第2固定孔49gにボルト49hを挿入し、ボルト49hをナット49iで締結することにより、ホルダ49が空気流路43に固定される。
【0064】
把手部49eは、被覆部49dのうち接続板45eに対応する右領域に設けられており、その下端が被覆部49dの後端に接続されており、そこから上に立ち上がっている。ユーザが把手部49eを把持して、ホルダ49を開口部45aから空気流路43内に挿入することにより、ホルダ49を空気流路43内に取り付けることができる。また、ユーザが把手部49eを把持して、ホルダ49を開口部45aから空気流路43の外に引き出すことにより、ホルダ49を空気流路43から取り外すことができる。
【0065】
このようにホルダ49を脱着するためのガイド43cが、空気流路43に設けられている。ガイド43cは、空気流路43内の角部分45において、開口部45aの下であって横部分46の右に配置されている。ガイド43cは、例えば、互いに対向する第3前壁45cの内面(第3前内面)及び第3後壁45dの内面(第3後内面)のそれぞれに設けられている。ガイド43cは、第3前内面及び第3後内面のそれぞれから突出し、下に向かって左側に延びている。
【0066】
これにより、ホルダ49を開口部45aから空気流路43内に挿入すると、ホルダ49の右下角は、ガイド43cに当たり、ガイド43cに沿って横部分46の所定位置へ案内される。ホルダ49は、所定位置においてガイド43cに支持される。一方、ホルダ49を開口部45aから空気流路43外に取り出す際、ホルダ49を持ち上げると、ホルダ49の右下角がガイド43cに沿って開口部45aへ案内される。このため、ホルダ49を上下方向に移動させることにより、ホルダ49を空気流路43に対して容易に脱着することができる。
【0067】
第1ファン41は、第1回転軸41b、複数の第1羽根41c、第1吸い込み口41d及び第1吹き出し口41eを有し、これによりヘッド20から吐出された液体のミストを含む空気を空気流路43に吸入する。第1ファン41は、横部分46内に配置されている。
【0068】
第1回転軸41bは、上下方向に対して交差(例えば、直交)し、左ほど上になるように上下方向に対して傾斜している。例えば、第1回転軸41bが延びる延伸方向41b1は、定着部30の第2ファン36の第2回転軸36bが延びる延伸方向36b1に対して平行でなく、例えば、延伸方向36b1に対して交差(例えば、直交)している。第1回転軸41bは、第1ファンモータ41a(図3)に接続されており、第1ファンモータ41aの駆動により回転する。複数の第1羽根41cは、第1回転軸41bに接続されており、第1回転軸41bを中心に回る。
【0069】
第1吸い込み口41dは、ホルダ49の流通孔49fを介してフィルタ48の左面48bに対向している。第1吸い込み口41dは、第1吹き出し口41eよりも左であって、左右方向において第1回転軸41bを互いの間に挟むように配置されている。第1吹き出し口41eは、空気流路43の排出口43bよりも外側に配置されている。但し、第1吹き出し口41eは、排出口43bよりも空気流路43内に配置されていてもよい。
【0070】
<印刷処理>
このような液体吐出装置10において、図3に示すように、制御装置70が、走査モータ54を制御して、ヘッドユニット12を左右方向に移動させる移動動作を実行する。また、制御装置70は、駆動素子21を制御して、ヘッド20から液体を吐出させる吐出動作を実行する。制御装置70は、光源31を制御して、光源31から光を照射(付与)させて液体を非吐出媒体1に定着させる定着動作を実行する。さらに、制御装置70は、搬送モータ64を制御して、被吐出媒体Aを前方へ所定量ごと搬送させる搬送動作を実行する。そして、液体吐出装置10が移動処理、吐出動作及び定着動作を含む画像記録処理と、搬送処理とを交互に繰り返し、印刷処理を進めていく。
【0071】
この画像記録処理では、図4に示すように、ヘッド20が左側へ移動しながら、ヘッド20のノズル23から液体を吐出する。これにより、ヘッド20の吐出面20aに対向した、ステージ61上の被吐出媒体Aに液体が着弾する。また、定着部30がヘッド20に後続して左側へ移動しながら、光源31から光を付与する。これにより、光源31に対向した被吐出媒体A上の液体に光が付与され、この液体が光により硬化して被吐出媒体Aに定着する。このため、液体によって被吐出媒体Aに画像が形成される。
【0072】
また、画像記録処理では、ミスト回収部40がヘッド20に後続して左側へ移動しながら、第1ファン41が駆動する。これにより、ヘッド20から吐出された液体のミストを含む空気が、ミスト回収部40の吸入口43aから空気流路43に吸入される。この空気流路43では、空気は、縦部分44を上に流れ、角部分45で流れの方向を変え、横部分46へ流れる。この角部分45及び横部分46において空気がフィルタ48を通過し、空気に含まれているミストがフィルタ48に捕集される。そして、空気は、横部分46において第1吸い込み口41dから第1吹き出し口41eに第1ファン41を通過して、排出口43bから排出される。
【0073】
このように、ミスト回収部40が、ヘッド20からのミストをフィルタ48により回収している。また、空気は、排出口43bから定着部30の反対側に排出され、ヘッド20よりも上において定着部30から離れる方向に移動する。これにより、ミスト回収部40から、ヘッド20と被吐出媒体Aとの間に空気が流れることを低減し、ヘッド20から被吐出媒体Aに吐出される液体の着弾位置のずれを防止することができる。また、ミスト回収部40よりも移動方向の上流に配置された定着部30にミストが付着することを低減し、定着部30の光源31からの光の強度について、ミストに起因する強度の低下を抑制することができる。
【0074】
<作用、効果>
液体吐出装置10では、空気流路43は、吸入口43aが設けられ、第1方向においてヘッド20と定着部30との間に位置し、一方端と他方端を有し、吐出面20aと直交し且つ一方端から他方端に向かう第2方向に延び、第2方向において一方端が他方端よりも吐出面20aに近い第1部分43dと、第1部分43dの他方端に繋がる第2部分43eと、を有している。排出口43bは、第2部分43eにおいて、第2方向に開口せず、第1方向とは反対側の方向を方向成分として含む方向、第1方向及び第2方向と直交する第3方向、及び、第3方向とは反対側の方向のいずれかの方向に開口している。
【0075】
この構成によれば、ミスト回収部40により全てのミストが捕獲されなかった場合であっても、そのミストは空気と共に排出口43bから、定着部30側に排出されない。このため、ミストの定着部30への付着を低減することができる。
【0076】
液体吐出装置10では、排出口43bは、第1方向とは反対側の方向を方向成分として含む方向に開口している。この構成によれば、排出口43bは、定着部30から離れる方向に開口している。ミスト回収部40により捕獲されずに残ったミストは空気と共に排出口43bから、定着部30から離れる方向に排出される。このため、ミストの定着部30への付着を低減することができる。
【0077】
液体吐出装置10では、定着部30は、エネルギを発生する発生源、発生源を収容するケース35、及び、ケース35の外部から内部へ空気を流入させる流入口35aを有している。流入口35aは、定着部30のうちヘッド20側以外の範囲に設けられている。この構成によれば、ヘッド20から吐出された液体のミストが流入口35aを介して定着部30に流入して発生源に付着することを低減することができる。
【0078】
液体吐出装置10では、定着部30は、ケース35の外部から内部へ空気を流入口35aから流入させるように第1回転軸41bを中心に回転する第1ファン41を有している。ミスト回収部40は、吸入口43aから吸入された空気を排出口43bから排出するように第2回転軸36bを中心に回転する第2ファン36を有している。第1ファン41及び第2ファン36は、第1回転軸41bが延びる延伸方向41b1と第2回転軸36bが延びる延伸方向36b1とが互いに非平行になるように配置されている。
【0079】
この構成によれば、第2ファン36により排出口43bを介して排出された空気は、流入口35aから離れた方向へ流れる。このため、空気に含まれたミストが流入口35aを介して定着部30に流入して発生源に付着することを低減することができる。
【0080】
液体吐出装置10では、排出口43bの少なくとも一部が、第2方向において、流入口35aよりも吐出面20aから離れて位置している。この構成によれば、排出口43bの上端が流入口35aよりも上にあるため、排出口43bと流入口35aとの間にミスト回収部40の空気流路43が配置される。この空気流路43によってミストが排出口43bから流入口35aに移動することが抑制される。よって、排出口43bから流入口35aに流入するミストが低減され、ミストが流入口35aを介して定着部30に流入して発生源に付着することを低減することができる。
【0081】
液体吐出装置10では、ヘッド20、定着部30及びミスト回収部40を収容し、上部に開閉可能な蓋14を有する筐体11を備えている。ミスト回収部40は、排出口43bを覆うフィルタ48、及び、フィルタ48を保持し上下方向に着脱可能なホルダ49を有している。
【0082】
この構成によれば、筐体11において蓋14を本体13に対して上げて、本体13の上部開口13aを開ける。上部開口13aは、開口部45aに対向しているため、ユーザはホルダ49を上部開口13a及び開口部45aを介して上下方向に移動させることにより、ホルダ49を容易にミスト回収部40に脱着することができる。また、ホルダ49をミスト回収部40に取り付けることにより、ホルダ49に保持されたフィルタ48によって排出口43bから排出されるミストを低減し、ミストの定着部30への付着を低減することができる。さらに、ホルダ49をミスト回収部40から取り外すことにより、ホルダ49に保持されたフィルタ48を取り替え、液体がフィルタ48に充満しフィルタ48から漏れることを抑制することができる。
【0083】
液体吐出装置10では、被吐出媒体Aを搬送する搬送装置60を備えている。吸入口43aは、搬送装置60に搬送される被吐出媒体Aと対向可能に位置する。この構成によれば、ミストがヘッド20から被吐出媒体Aに付着する前に、ミスト回収部40は吸入口43aからミストを回収し、被吐出媒体Aに付着するミストを低減することができる。
【0084】
<変形例1>
変形例1に係る液体吐出装置10は、上記実施の形態に係る液体吐出装置10において、ヘッド20、定着部30及びミスト回収部40を収容し、外部の空気を取り込む取込口13d2を有する筐体11を備えている。ヘッド20は、第2方向において吐出面20a、及び、吐出面20aの反対側の端面(上端面20b)を有している。取込口13d2は、第2方向において端面(上端面20b)よりも吐出面20a側の反対側に配置されている。
【0085】
具体的には、図2に示すように、筐体11の第1壁13dには、前口13d1に加えて、1つ又は複数の取込口13d2が開口している。前口13d1は、ヘッド20の吐出面20aよりも下に配置されている。取込口13d2は、前口13d1よりも上であって、ヘッド20の上端面20bよりも吐出面20a側の反対側(上)に設けられている。取込口13d2は、その周囲を取り囲む周縁が吐出面20aに対して交差(例えば、直交)し、前後方向に対して交差(例えば、直交)している。複数の取込口13d2は、左右方向において間隔を空けながら並んでいる。
【0086】
このような構成によれば、第1ファン41及び第2ファン36が駆動すると、筐体11の外部から内部に取込口13d2を介して空気が流入する。空気は、取込口13d2からヘッド20の上端面20bよりも上を流れる。よって、取込口13d2から流入する空気によって、ヘッド20と被吐出媒体Aとの間に空気が流れることを低減する。これにより、ヘッド20から被吐出媒体Aに吐出される液体の着弾位置のずれを防止しつつ、ミストが拡散されて定着部30にミストが付着することを低減することができる。
【0087】
<変形例2>
変形例2に係る液体吐出装置10は、変形例1に係る液体吐出装置10において、筐体11は、取込口13d2が設けられた第1壁13d、及び、ヘッド20、定着部30及びミスト回収部40を挟んで第1壁13dの反対側に位置する第2壁13eを有している。第2壁13eには、外部へ空気を放出する放出口13e2を有している。放出口13e2から空気を放出するための第3ファン15を備えている。
【0088】
具体的には、図2に示すように、第2壁13eは、第1壁13dよりも後であって、第2壁13eに平行に配置されている。前後方向において、第1壁13dと第2壁13eとの間にヘッド20、定着部30及びミスト回収部40が配置されている。第2壁13eには、後口13e1に加えて、放出口13e2が開口している。後口13e1は、ヘッド20の吐出面20aよりも下に配置されている。放出口13e2は、後口13e1よりも上であって、ヘッド20の上端面20bよりも吐出面20a側の反対側(上)に設けられている。後から前を見たとき、放出口13e2は取込口13d2と重なるように配置されている。放出口13e2は、その周囲を取り囲む周縁が吐出面20aに対して交差(例えば、直交)し、前後方向に対して交差(例えば、直交)している。複数の放出口13e2は、左右方向において間隔を空けながら並んでいる。
【0089】
図3に示すように、制御装置70は、第3ファン駆動回路16を介して第3ファンモータ15aに接続され、第3ファンモータ15aの駆動を制御する。
【0090】
第3ファン15は、図2に示すように、第3回転軸15b、複数の第3羽根15c、第3吸い込み口15d及び第3吹き出し口15eを有している。第3回転軸15bは、前後方向に延び、第3ファンモータ15a(図3)に接続されており、第3ファンモータ15aの駆動により回転する。複数の第3羽根15cは、第3回転軸15bに接続されており、第3回転軸15bを中心に回る。
【0091】
第3ファン15は、第3吹き出し口15eが筐体11の外側に向き、第3吸い込み口15dが筐体11の内側を向くように配置されている。第3ファン15は、第3吸い込み口15dから筐体11内の空気を吸い込んで、第3吹き出し口15eから取込口13d2を介して筐体11の外へ吹き出す。なお、第3吸い込み口15dを覆うフィルタが設けられていてもよい。
【0092】
このような構成によれば、第3ファン15が駆動すると、筐体11の内部から外部に放出口13e2を介して空気が放出され、筐体11の空気に含まれるミストが排出される。これにより、ミストの被吐出媒体A及び定着部30への付着を防止することができる。また、この空気は、筐体内において取込口13d2からヘッド20の上端面20bよりも上を流れるため、ヘッド20から被吐出媒体Aに吐出される液体の着弾位置のずれを防止することができる。
【0093】
<その他の変形例>
上記実施の形態では、定着部30は、液体を被吐出媒体Aに定着させるエネルギを発生する発生源として光源31を用いたが、発生源はこれに限定されない。例えば、発生源として、熱等のエネルギを付与するヒータが用いられてもよい。ヒータとして、輻射式のヒータ、温風ヒータ及び接触式ヒータ等が例示される。例えば、接触式ヒータは、ローラに設けられる。接触式ヒータにより加熱されたローラは、被吐出媒体Aの裏面に接触し、被吐出媒体Aの表面上の液体にエネルギを付与して、被吐出媒体Aに液体を定着させる。
【0094】
この場合、ヘッド20から吐出される液体は、熱等のエネルギにより被吐出媒体Aに定着される液体であって、例えば、ラテックスインクが用いられる。また、定着部30にはカバー33が備えられていなくてもよい。
【0095】
また、例えば、発生源として、マイクロウェーブ等の電波を発生するエネルギ発生装置が用いられてもよい。この場合、ヘッド20から吐出される液体は、マイクロウェーブ等のエネルギにより被吐出媒体Aに定着される液体である。
【0096】
上記実施の形態では、空気流路43は縦部分44、角部分45及び横部分46を有していたが、横部分46を有さずに縦部分44及び角部分45を有していてもよい。この場合、排出口43bは、第2部分43eである角部分45の左端開口に設けられ、左右方向における定着部30側の反対側(左側)に配置され、定着部30から離れる方向に開口している。このため、ミストは排出口43bから、定着部30側の反対側に排出され、定着部30から離れる方向に移動するため、ミストの定着部30への付着を低減することができる。
【0097】
なお、上記実施の形態では、横部分46は、角部分45から左方向に延びていたが、延びる方向はこれに限定されない。横部分46は、角部分45から、左方向を方向成分として含む方向、前方向及び後方向のいずれかの方向に延びていてもよい。
【0098】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の液体吐出装置及びヘッドユニットは、ミストの定着部への付着を低減することができる液体吐出装置及びヘッドユニット等として有用である。
【符号の説明】
【0100】
10 :液体吐出装置
11 :筐体
12 :ヘッドユニット
13d :第1壁
13d2 :取込口
13e :第2壁
13e2 :放出口
14 :蓋
15 :第3ファン
20 :ヘッド
20a :吐出面
23 :ノズル
23a :ノズル孔
30 :定着部
31 :光源(発生源)
35 :ケース
35a :流入口
36 :第2ファン
36b :第2回転軸
40 :ミスト回収部
41 :第1ファン
41b :第1回転軸
43 :空気流路
43a :吸入口
43b :排出口
43d :第1部分
43e :第2部分
48 :フィルタ
49 :ホルダ
60 :搬送装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7