(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B65H 31/00 20060101AFI20241001BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241001BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B65H31/00 Z
B41J2/01 305
B41J2/01 303
G03G15/00 460
(21)【出願番号】P 2020144254
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】峯村 秀史
(72)【発明者】
【氏名】山田 克己
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-016480(JP,A)
【文献】特開2010-006608(JP,A)
【文献】特開2014-014957(JP,A)
【文献】特開2000-318909(JP,A)
【文献】特開2009-096573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00-31/40
B41J 2/01
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に記録を行う記録手段と、
前記記録手段により記録の行われた媒体を排出する排出ローラーと、
前記排出ローラーにより排出された媒体を受けるトレイであって、第1状態と、前記第
1状態より媒体の排出方向に変位した第2状態とに切り換え可能な媒体受けトレイと、
前記排出ローラーの動力源であるモーターと、
前記モーターから前記媒体受けトレイに前記モーターの動力を伝達する動力伝達状態と
、前記モーターから前記媒体受けトレイに前記モーターの動力を伝達しない動力非伝達状
態とに切り換え可能な動力伝達手段と、
前記動力伝達手段が前記動力非伝達状態にある際に
前記動力伝達手段に接することによ
り前記媒体受けトレイの変位を規制する規制状態と、前記動力伝達手段が前記動力伝達状
態にある際に
前記動力伝達手段から離間することにより前記規制を行わない非規制状態と
に切り換え可能な規制手段と、
を備えた記録装置。
【請求項2】
媒体に記録を行う記録手段と、
前記記録手段により記録の行われた媒体を排出する排出ローラーと、
前記排出ローラーにより排出された媒体を受けるトレイであって、第1状態と、前記第
1状態より媒体の排出方向に変位した第2状態とに切り換え可能な媒体受けトレイと、
前記排出ローラーの動力源であるモーターと、
前記モーターから前記媒体受けトレイに前記モーターの動力を伝達する動力伝達状態と
、前記モーターから前記媒体受けトレイに前記モーターの動力を伝達しない動力非伝達状
態とに切り換え可能な動力伝達手段と、
前記動力伝達手段が前記動力非伝達状態にある際に前記媒体受けトレイの変位を規制す
る規制状態と、前記動力伝達手段が前記動力伝達状態にある際に前記規制を行わない非規
制状態とに切り換え可能な規制手段と、を備え、
前記動力伝達手段は、第1動力伝達経路と、前記モーターから前記媒体受けトレイへの
動力の伝達方向において前記第1動力伝達経路よりも下流の第2動力伝達経路とを含み、
前記第1動力伝達経路と前記第2動力伝達経路とが接続することで前記動力伝達状態をと
り、前記第1動力伝達経路と前記第2動力伝達経路とが切断されることで前記動力非伝達
状態をとり、
前記規制手段は、前記第2動力伝達経路を構成する回転体に接する接触位置と前記回転
体から離間する離間位置とに変位可能な進退部材を備え、前記進退部材が前記接触位置に
位置することで前記規制状態をとり、前記進退部材が前記離間位置をとることで前記非規
制状態をとる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、前記第2動力伝達経路が備える前記回転体は第1
歯車で構成され、前記第1動力伝達経路は第2歯車を備え、
前記第2歯車は、前記第1歯車と噛み合って前記第1動力伝達経路と前記第2動力伝達
経路とを接続する噛み合い位置と、前記第1歯車から離間して前記第1動力伝達経路と前
記第2動力伝達経路とを切断する非噛み合い位置とに変位可能であり、
前記進退部材は、前記第2歯車と係わり合って前記第2歯車の変位に連動して前記第1
歯車に対して進退する様に設けられ、前記第2歯車が前記噛み合い位置にある際に前記離
間位置をとり、前記第2歯車が非噛み合い位置にある際に前記接触位置をとる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置において、前記進退部材は前記第1歯車と噛み合う歯部を有
し、前記接触位置において前記第1歯車と前記歯部とが噛み合うことにより前記規制手段
が前記規制状態をとる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の記録装置において、前記記録手段が設けられるととも
に前記第2歯車の変位方向に沿って移動可能なキャリッジを備え、
前記動力伝達手段は、前記キャリッジの移動方向に沿って変位可能であるととともに、
前記モーターの回転によって前記キャリッジの移動領域に進出する進出状態と前記キャリ
ッジの移動領域から退避する退避状態とに切り換え可能なレバー部材と、を備え、
前記レバー部材が前記第2歯車と隣接する位置に設けられ、前記レバー部材の前記移動
方向の変位によって前記第2歯車及び前記進退部材が変位する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載の記録装置において、前記第2歯車と前記レバー部材は、前記排出ロー
ラーの回転軸とは別部材である軸部材に対しスライド可能に設けられる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の記録装置において、前記キャリッジの移動方向のうち
一方向を第1方向とし、他方向を第2方向として、前記第2歯車、前記レバー部材、及び
前記進退部材が、前記第2方向に向けて押圧されており、
前記進出状態にある前記レバー部材を前記キャリッジが前記第1方向に押すことにより
、前記第2歯車が前記非噛み合い位置から前記噛み合い位置に変位し、且つ前記進退部材
が前記接触位置から前記離間位置に変位する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項7に記載の記録装置において、前記進出状態にある前記レバー部材を前記キャリ
ッジが前記第1方向に押すことにより前記第2歯車を前記非噛み合い位置から前記噛み合
い位置に変位させる際、前記キャリッジの駆動源と前記モーターを制御する制御部は、前
記キャリッジの駆動負荷が閾値を超えると前記キャリッジを停止させ、前記モーターを所
定量回転させた後に前記キャリッジを再度前記第1方向に移動させる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の記録装置において、前記キャリッジは、前記レバー部
材と当接するレバー当接部を備え、
前記レバー当接部は、前記モーターの回転方向に拘わらず前記レバー部材が前記レバー
当接部に当接した状態を保持する壁を有する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の記録装置において、前記動力伝達手段は
、前記第2歯車を前記非噛み合い位置に向けて押圧する第1押圧部材を備え、
前記規制手段は、前記第1押圧部材とは別部材であって、前記進退部材を前記接触位置
に向けて押圧する第2押圧部材を備える、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の記録装置において、前記第2歯車が前
記噛み合い位置にあるとともに前記進退部材が前記離間位置にある状態において、前記退
避状態にある前記レバー部材の前記第2方向への変位を止めるストッパーを備える、
ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンター等に代表される記録装置においては、記録が行われて排出される媒体を受ける媒体受けトレイを備えるものがある。またこの様な媒体受けトレイは、特許文献1に示される様にモーターによって収納状態と展開状態とを切り換え可能に構成されるものがある。特許文献1記載の記録装置は、媒体受けトレイとしての排出トレイに対して排出ローラーから動力が伝達され、排出トレイが変位する。
【0003】
特許文献1記載の構成において、排出ローラーには動力を伝達する為の歯車が設けられており、この歯車はトリガーアウトプットギアと称されている。トリガーアウトプットギアはキャリッジの動作によって排出ローラーの軸線方向に移動可能に設けられており、キャリッジの動作によってインプットギアと称される歯車と噛み合う位置と、インプットギアと噛み合わない位置とに変位できる。そしてトリガーアプトプットギアとインプットギアとが噛み合う状態で排出ローラーが回転することにより、排出ローラーから排出トレイに動力が伝達され、排出ローラーが変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
媒体受けトレイをモーターにより駆動する構成、特に上記特許文献1記載の記録装置の様に他の構成を駆動する為のモーターから媒体受けトレイに動力を伝達する構成にあっては、以下の点において更に改良の余地がある。
第1に、モーターから媒体受けトレイへ動力を伝達しない動力非伝達状態とした場合、媒体受けトレイは自由に動ける為、装置を傾けた際などに意図せず媒体受けトレイが動いてしまう虞があり、この点に配慮された構成とすることが望まれる。第2に、モーターから媒体受けトレイへ動力を伝達する動力伝達状態とした場合、モーターに掛かる負荷を極力抑制することが電力消費抑制等の観点において好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の記録装置は、媒体に記録を行う記録手段と、前記記録手段により記録の行われた媒体を排出する排出ローラーと、前記排出ローラーにより排出された媒体を受けるトレイであって、第1状態と、前記第1状態より媒体の排出方向に変位した第2状態とに切り換え可能な媒体受けトレイと、前記排出ローラーの動力源であるモーターと、前記モーターから前記媒体受けトレイに前記モーターの動力を伝達する動力伝達状態と、前記モーターから前記媒体受けトレイに前記モーターの動力を伝達しない動力非伝達状態とに切り換え可能な動力伝達手段と、前記動力伝達手段が前記動力非伝達状態にある際に前記媒体受けトレイの変位を規制する規制状態と、前記動力伝達手段が前記動力伝達状態にある際に前記規制を解除する非規制状態とに切り換え可能な規制手段とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】プリンターの用紙搬送経路と制御系統を示す図。
【
図4】動力非伝達状態にある動力伝達手段の要部斜視図。
【
図5】動力伝達状態にある動力伝達手段の要部斜視図。
【
図6】動力非伝達状態にある動力伝達手段の要部断面図。
【
図7】動力伝達状態にある動力伝達手段の要部断面図。
【
図8】キャリッジに設けられたレバー当接部の斜視図。
【
図10】他の実施形態に係るフレームの要部を示す斜視図。
【
図11】他の実施形態に係るフレームの要部を示す斜視図。
【
図12】キャリッジに設けられたレバー当接部とストッパーとの関係を示す斜視図。
【
図13】キャリッジに設けられたレバー当接部の斜視図。
【
図14】用紙受けトレイを第1状態から第2状態に切り換える際の制御を示すフローチャート。
【
図15】用紙受けトレイを第2状態から第1状態に切り換える際の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について概略的に説明する。
第1の態様に係る記録装置は、媒体に記録を行う記録手段と、前記記録手段により記録の行われた媒体を排出する排出ローラーと、前記排出ローラーにより排出された媒体を受けるトレイであって、第1状態と、前記第1状態より媒体の排出方向に変位した第2状態とに切り換え可能な媒体受けトレイと、前記排出ローラーの動力源であるモーターと、前記モーターから前記媒体受けトレイに前記モーターの動力を伝達する動力伝達状態と、前記モーターから前記媒体受けトレイに前記モーターの動力を伝達しない動力非伝達状態とに切り換え可能な動力伝達手段と、前記動力伝達手段が前記動力非伝達状態にある際に前記媒体受けトレイの変位を規制する規制状態と、前記動力伝達手段が前記動力伝達状態にある際に前記規制を行わない非規制状態とに切り換え可能な規制手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、前記媒体受けトレイが前記排出ローラーの動力源であるモーターにより駆動される構成において、前記動力伝達手段が前記動力非伝達状態にある際に前記媒体受けトレイの変位を規制する規制状態と、前記動力伝達手段が前記動力伝達状態にある際に前記規制を行わない非規制状態とに切り換え可能な規制手段を備えるので、前記動力非伝達状態において前記媒体受けトレイの変位が規制され、装置を傾けた際などに意図せず前記媒体受けトレイが動いてしまう不具合を抑制できる。
そして前記動力伝達状態では、前記規制手段は前記媒体受けトレイの変位の規制を行わない非規制状態となるので、前記規制手段が前記モーターに負荷を与えることがなく、或いは負荷を与えたとしてもそれを小さくできる。
【0010】
第2の態様は、第1の態様において、前記動力伝達手段は、第1動力伝達経路と、前記モーターから前記媒体受けトレイへの動力の伝達方向において前記第1動力伝達経路よりも下流の第2動力伝達経路とを含み、前記第1動力伝達経路と前記第2動力伝達経路とが接続することで前記動力伝達状態をとり、前記第1動力伝達経路と前記第2動力伝達経路とが切断されることで前記動力非伝達状態をとり、前記規制手段は、前記第2動力伝達経路を構成する回転体に接する接触位置と前記回転体から離間する離間位置とに変位可能な進退部材を備え、前記進退部材が前記接触位置に位置することで前記規制状態をとり、前記進退部材が前記離間位置をとることで前記非規制状態をとることを特徴とする。
本態様によれば、前記進退部材の変位によって前記規制手段が前記規制状態と前記非規制状態とを切り換える構成であるので、前記規制手段を簡単な構造で構成できる。
【0011】
第3の態様は、第2の態様において、前記第2動力伝達経路が備える前記回転体は第1歯車で構成され、前記第1動力伝達経路は第2歯車を備え、前記第2歯車は、前記第1歯車と噛み合って前記第1動力伝達経路と前記第2動力伝達経路とを接続する噛み合い位置と、前記第1歯車から離間して前記第1動力伝達経路と前記第2動力伝達経路とを切断する非噛み合い位置とに変位可能であり、前記進退部材は、前記第2歯車と係わり合って前記第2歯車の変位に連動して前記第1歯車に対して進退する様に設けられ、前記第2歯車が前記噛み合い位置にある際に前記離間位置をとり、前記第2歯車が非噛み合い位置にある際に前記接触位置をとることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記進退部材は、前記第2歯車と係わり合って前記第2歯車の変位に連動して前記第1歯車に対して進退する様に設けられるので、前記進退部材を変位させる専用の動力源が不要となり、装置のコストを抑制できる。
【0013】
第4の態様は、第3の態様において、前記進退部材は前記第1歯車と噛み合う歯部を有し、前記接触位置において前記第1歯車と前記歯部とが噛み合うことにより前記規制手段が前記規制状態をとることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記進退部材は前記第1歯車と噛み合う歯部を有し、前記接触位置において前記第1歯車と前記歯部とが噛み合うことにより前記規制手段が前記規制状態をとる構成であるので、前記媒体受けトレイの変位を確実に規制することができる。
【0015】
第5の態様は、第3のまたは第4の態様において、前記記録手段が設けられるとともに前記第2歯車の変位方向に沿って移動可能なキャリッジを備え、前記動力伝達手段は、前記キャリッジの移動方向に沿って変位可能であるととともに、前記モーターの回転によって前記キャリッジの移動領域に進出する進出状態と前記キャリッジの移動領域から退避する退避状態とに切り換え可能なレバー部材と、を備え、前記レバー部材が前記第2歯車と隣接する位置に設けられ、前記レバー部材の前記移動方向の変位によって前記第2歯車及び前記進退部材が変位することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記キャリッジが前記レバー部材を押すことにより前記第2歯車及び前記進退部材が変位する構成において、前記レバー部材が前記第2歯車と隣接する位置に設けられているので、前記第2歯車が前記キャリッジに近い位置で前記レバー部材を介して前記キャリッジから外力を受けることとなり、前記第2歯車を応答性良好に変位させることができる。
【0017】
第6の態様は、第5の態様において、前記第2歯車と前記レバー部材は、前記排出ローラーの回転軸とは別部材である軸部材に対しスライド可能に設けられることを特徴とする。
本態様によれば、前記第2歯車と前記レバー部材は、前記排出ローラーの回転軸とは別部材である軸部材に対しスライド可能に設けられるので、前記第2歯車及び前記レバー部材の配置の自由度が向上する。
【0018】
第7の態様は、第5のまたは第6の態様において、前記キャリッジの移動方向のうち一方向を第1方向とし、他方向を第2方向として、前記第2歯車、前記レバー部材、及び前記進退部材が、前記第2方向に向けて押圧されており、前記進出状態にある前記レバー部材を前記キャリッジが前記第1方向に押すことにより、前記第2歯車が前記非噛み合い位置から前記噛み合い位置に変位し、且つ前記進退部材が前記接触位置から前記離間位置に変位することを特徴とする。
【0019】
第8の態様は、第7の態様において、前記進出状態にある前記レバー部材を前記キャリッジが前記第1方向に押すことにより前記第2歯車を前記非噛み合い位置から前記噛み合い位置に変位させる際、前記キャリッジの駆動源と前記モーターを制御する制御部は、前記キャリッジの駆動負荷が閾値を超えると前記キャリッジを停止させ、前記モーターを所定量回転させた後に前記キャリッジを再度前記第1方向に移動させることを特徴とする。
【0020】
前記進出状態にある前記レバー部材を前記キャリッジが前記第1方向に押すことにより前記第2歯車を前記非噛み合い位置から前記噛み合い位置に変位させる際、前記第2歯車の歯と前記第1歯車の歯とが衝突し、前記第1歯車と前記第2歯車とが噛み合わない場合がある。この様な場合は前記キャリッジの駆動負荷が閾値を超えるが、この際に前記制御部が前記キャリッジを停止させ、前記モーターを所定量回転させた後に前記キャリッジを再度前記第1方向に移動させるので、前記第1歯車と前記第2歯車とが適切に噛み合うことが期待できる。
【0021】
第9の態様は、第7のまたは第8の態様において、前記キャリッジは、前記レバー部材と当接するレバー当接部を備え、前記レバー当接部は、前記モーターの回転に拘わらず前記レバー部材が前記レバー当接部に当接した状態を保持する壁を有することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、前記モーターの回転方向に拘わらず前記レバー部材が前記レバー当接部に当接した状態が保持されるので、前記動力伝達手段が前記動力伝達状態にある際に、前記媒体受けトレイを前記第1状態から前記第2状態に向かう方向とその逆方向に自在に駆動することができる。
【0023】
第10の態様は、第7から第9の態様のいずれかにおいて、前記動力伝達手段は、前記第2歯車を前記非噛み合い位置に向けて押圧する第1押圧部材を備え、前記規制手段は、前記第1押圧部材とは別部材であって、前記進退部材を前記接触位置に向けて押圧する第2押圧部材を備えることを特徴とする。
前記第2歯車を押圧する押圧力と前記進退部材を押圧する押圧力との双方を、適切な大きさに設定することができる。
【0024】
第11の態様は、第7から第10の態様のいずれかにおいて、前記第2歯車が前記噛み合い位置にあるとともに前記進退部材が前記離間位置にある状態において、前記退避状態にある前記レバー部材の前記第2方向への変位を止めるストッパーを備えることを特徴とする。
本態様によれば、前記第2歯車が前記噛み合い位置にあるとともに前記進退部材が前記離間位置にある状態において、前記退避状態にある前記レバー部材の前記第2方向への変位を止めるストッパーを備えるので、前記キャリッジが前記レバー部材から離間しても、前記第2歯車が前記非噛み合い位置に戻ることを防止でき、また、前記進退部材が前記接触位置に戻ることを防止できる。つまり、前記キャリッジが前記レバー部材から離れていても、前記動力伝達手段が前記動力伝達状態を維持できるので、前記キャリッジの制御の自由度が向上する。
【0025】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では記録装置の一例としてインクジェットプリンター1について説明する。以下、インクジェットプリンター1を単にプリンター1という。
尚、各図において示すX-Y-Z座標系は、X軸方向がキャリッジ11の移動方向であり、-X方向が第1方向、+X方向が第2方向となる。キャリッジ11のホームポジションは、-X方向の端部に設定されている。またX軸方向は、記録が行われる記録用紙の幅方向となり、また装置幅方向となる。
Y軸方向は装置奥行方向であり、記録時の用紙搬送方向に沿う方向であり、また後述する用紙受けトレイ17の変位方向である。+Y方向は装置背面から前面に向かう方向であり、-Y方向は装置前面から背面に向かう方向である。
Z軸方向は鉛直方向に沿う方向であり、装置高さ方向である。+Z方向が鉛直上方向であり、-Z方向が鉛直下方向である。
【0026】
図1においてプリンター1は、媒体の一例としての記録用紙にインクジェット記録を行う装置本体2を備えている。
図1は、装置本体2を覆う不図示の筐体を取り外した状態を示している。装置本体2には、記録ヘッド12(
図2参照)を備えるキャリッジ11がX軸方向に移動可能に設けられている。
図1において符号Caで示す範囲はキャリッジ11の移動範囲であり、キャリッジ11のX軸方向における中心位置を基準としてキャリッジ11の移動範囲を示している。符号X1はキャリッジ11の移動範囲Caのうち最も-X方向の位置であり、符号X2は移動範囲Caのうち最も+X方向の位置である。また
図1において符号Bcはキャリッジ11の移動領域を示している。
【0027】
装置本体2には、記録が行われて+Y方向に排出される記録用紙を受ける媒体受けトレイとしての用紙受けトレイ17が設けられている。用紙受けトレイ17は、搬送モーター28から動力を受け、Y軸方向に沿って変位する様に設けられている。
用紙受けトレイ17に対し+X方向には、搬送モーター28と、搬送モーター28から用紙受けトレイ17に動力を伝達する動力伝達手段50が設けられている。用紙受けトレイ17及び動力伝達手段50については後に詳しく説明する。
【0028】
続いて、主として
図2を参照してプリンター1の用紙搬送経路と制御系統について説明する。プリンター1は、装置底部の給紙カセット3から記録用紙を給送する第1用紙給送経路T1と、装置後方の傾斜支持部6から記録用紙を給送する第2用紙給送経路T2とを有している。
【0029】
第1用紙給送経路T1では、給紙カセット3に収容された記録用紙が、第1給送ローラー4によって下流に送られる。第1給送ローラー4は、給紙カセット3に対して進退可能に設けられているとともに、給送モーター26から動力を受けて回転する。
図2において符号Pは、給紙カセット3に収容された記録用紙を示している。
【0030】
第1給送ローラー4によって給紙カセット3から送り出された記録用紙は、第1給送ローラー4より上方に位置する反転ローラー5に達する。反転ローラー5は給送モーター26から動力を受けて回転する。給紙カセット3から送り出された記録用紙は、反転ローラー5によって湾曲反転させられ、+Y方向に向かう。
【0031】
第2用紙給送経路T2では、傾斜支持部6によって支持された記録用紙が、第2給送ローラー7によって下流に送られる。第2給送ローラー7は、給送モーター26から動力を受けて回転する。傾斜支持部6は、不図示の揺動軸を中心に揺動することにより、支持した記録用紙を第2給送ローラー7に押し当てる。
第2給送ローラー7によって給紙カセット3から送り出された記録用紙は反転ローラー5に達し、反転ローラー5に+Y方向に向かう。
【0032】
反転ローラー5より下流に位置する搬送ローラー8は、搬送駆動ローラー9と、搬送従動ローラー10とを備えて構成される。搬送駆動ローラー9は、搬送モーター28から動力を受けて回転する。搬送従動ローラー10は、搬送駆動ローラー9或いは搬送される記録用紙に接して従動回転する。
搬送駆動ローラー9は、
図1及び
図3に示す様にX軸方向に延びる軸体により構成され、搬送従動ローラー10は、
図1に示す様にX軸方向に沿って間隔を空けて複数配置される。
【0033】
搬送ローラー8の下流には、記録手段の一例である記録ヘッド12が設けられている。記録ヘッド12は、本実施形態ではX軸方向に移動しながら記録を行うインクジェット式記録ヘッドとして構成されている。記録ヘッド12が設けられたキャリッジ11は、駆動源であるキャリッジモーター25から動力を得て、X軸方向に移動する。
【0034】
記録ヘッド12の下流には、排出ローラー14が設けられている。排出ローラー14は、排出駆動ローラー15と、排出従動ローラー16とを備えて構成される。排出駆動ローラー15は、搬送モーター28から動力を受けて回転する。排出従動ローラー16は、排出駆動ローラー15或いは搬送される記録用紙に接して従動回転する。記録の行われた記録用紙は、排出ローラー14によって用紙受けトレイ17に向けて排出される。
尚、排出駆動ローラー15は
図3に示す様にX軸方向に沿って延びる回転軸15aに対しX軸方向に沿って間隔を空けて複数配置される。排出従動ローラー16は、図示を省略するが複数の排出駆動ローラー15に対応する様に、X軸方向に沿って間隔を空けて複数配置される。
【0035】
図2に戻り、用紙受けトレイ17は搬送モーター28から動力を受けて、第1状態と、第1状態よりも+Y方向即ち用紙排出方向に変位した第2状態とを切り換え可能である。
図2において符号17-1及び実線で示す用紙受けトレイ17は第1状態を示し、符号17-2及び二点鎖線で示す用紙受けトレイ17は第2状態を示している。
【0036】
続いてプリンター1における制御系統について説明する。
プリンター1が備える制御部20には、操作部35或いは外部コンピューター100から情報が入力され、制御部20は操作部35或いは外部コンピューター100から受信した情報に基づきプリンター1の各種制御を行う。
【0037】
制御部20は、キャリッジモーター25、給送モーター26、及び搬送モーター28のこれらモーターを制御する。本実施形態では各モーターはDCモーターである。
制御部20には、第1用紙検出部30、第2用紙検出部31、回転検出部32、及びキャリッジ位置検出部33のこれら検出部からの検出信号も入力される。
【0038】
制御部20は、CPU21、フラッシュROM22、及びRAM23を備えている。CPU21はフラッシュROM22に格納されたプログラムに従って各種演算処理を行い、プリンター1全体の動作を制御する。各モーターを制御する為のプログラムも、フラッシュROM22に格納されている。フラッシュROM22は読み出し及び書き込みが可能な不揮発性メモリである。RAM23には、一時的に各種情報が格納される。
また制御部20はインターフェース24を備えており、このインターフェース24を介して外部コンピューター100との通信が可能となっている。
【0039】
続いて各検出部について説明する。
キャリッジ位置検出部33はリニアエンコーダーであり、キャリッジ11のX軸方向における位置を検出する為の検出部である。キャリッジ位置検出部33は、X軸方向に沿って設けられた不図示のリニアスケールと、前記リニアスケールを検出する、キャリッジ11に設けられた不図示の検出部とを備えて構成される。
【0040】
回転検出部32はロータリーエンコーダーであり、搬送モーター28によって駆動される構成部位の回転量及び回転速度を検出する為の検出部である。回転検出部32は、
図1に示す様に搬送駆動ローラー9の+X方向の軸端に設けられたロータリースケール32bと、ロータリースケール32bを検出する検出部32aとを備えて構成される。
【0041】
図2に戻り、第1用紙検出部30は搬送ローラー8の上流近傍に設けられ、記録用紙の先端及び後端の通過を検出する。第1用紙検出部30は、非接触式の光学センサーで構成される。制御部20は、第1用紙検出部30の検出情報に基づき記録用紙の位置を把握することができる。
【0042】
第2用紙検出部31はキャリッジ11の底面において記録用紙と対向する位置に設けられた光学センサーであり、記録用紙に向けて検出光を発する不図示の発光部と、記録用紙からの反射光を受光する不図示の受光部とを備えて構成される。制御部20は、第2用紙検出部31と対向する位置に記録用紙が存在する状態でキャリッジ11を動作し、その際の第2用紙検出部31の検出信号の変化に基づき、記録用紙の幅方向のエッジ位置を検出できる。またキャリッジ11が印字領域に位置する状態では、第2用紙検出部31の検出信号の変化に基づき、記録用紙の先端や後端の通過も検出できる。
【0043】
続いて搬送モーター28から用紙受けトレイ17へ動力を伝達する動力伝達手段50について説明する。
図3において動力伝達手段50は、搬送モーター28から用紙受けトレイ17へ動力を伝達する。動力伝達手段50は、第1動力伝達経路50aと、搬送モーター28から用紙受けトレイ17への動力伝達方向において第1動力伝達経路50aより下流の第2動力伝達経路50bとを有している。尚、以下では搬送モーター28から用紙受けトレイ17への動力伝達方向を単に「動力伝達方向」と称する。また、以下では動力伝達方向に沿った方向を「下流」と称する。
【0044】
第1動力伝達経路50aは、動力伝達方向の下流に向かって順に歯車52、歯車53、歯車54、歯車55、伝達軸60、及び第2歯車61を備えている。歯車52は歯車53と噛み合い、歯車53は歯車54と噛み合い、歯車54は歯車55と噛み合っている。歯車55は伝達軸60を介して第2歯車61に動力を伝達する。
【0045】
第2動力伝達経路50bは、動力伝達方向の下流に向かって順に第1歯車64、歯車65、歯車70、歯車71、歯車77、トレイ駆動軸76、及びピニオン歯車78を備えている。第1歯車64は、回転体の一例である。第1歯車64と歯車65は摩擦クラッチ63を構成し、第1歯車64は摩擦力を介して歯車65に動力を伝達する。符号66は摩擦クラッチ63を構成するコイルばねであり、第1歯車64と歯車65とがコイルばね66の押圧力により接することで第1歯車64と歯車65との間で摩擦力が生じる。この摩擦力により、第1歯車64から歯車65に動力が伝達される。従って例えば用紙受けトレイ17が+Y方向に突出する際、用紙受けトレイ17が何らかの障害物に当接すると、第1歯車64と歯車65との間で空転できる様になっている。
また後述する規制手段82によって第1歯車64の回転が規制される場合があるが、この場合でも第1歯車64と歯車65は相対的に回転することができるので、ユーザーが用紙受けトレイ17を手動でY軸方向に沿って動かすことができる。
【0046】
歯車65は歯車70と噛み合い、歯車70は歯車71と噛み合い、歯車71は歯車77と噛み合っている。歯車77はトレイ駆動軸76に固定され、トレイ駆動軸76を介してピニオン歯車78に動力を伝達する。
ピニオン歯車78はトレイ駆動軸76に固定されているとともに、用紙受けトレイ17においてY軸方向に沿って形成されたラック部17aと噛み合い、ラックピニオン機構を構成する。
尚、動力伝達手段50を構成する全ての回転する部材、具体的には歯車と軸は、その軸中心線がX軸に平行となるように、フレーム85(
図1参照)或いは図示を省略するその他のフレームに支持されている。
【0047】
本実施形態では、上述の様に動力伝達手段50は歯車の噛み合いによって搬送モーター28の動力を用紙受けトレイ17に伝達する構成であるが、一部にベルト駆動によって動力を伝達する部位を採用することも可能である。
【0048】
以上の構成により、搬送モーター28の動力が用紙受けトレイ17に伝達され、搬送モーター28の回転方向に応じて用紙受けトレイ17が+Y方向或いは-Y方向に変位する。尚、搬送モーター28は、歯車40を介して搬送駆動ローラー9の+X方向の端部に設けられた歯車41に動力を伝達し、搬送駆動ローラー9を回転させる。また第1動力伝達経路50aを構成する歯車54は、排出駆動ローラー15が設けられる回転軸15aの+X方向端部に設けられており、これにより搬送モーター28は排出駆動ローラー15を回転させる。
【0049】
搬送モーター28が正転すると、搬送駆動ローラー9と排出駆動ローラー15は記録用紙を下流に送る方向、即ち正転方向に回転する。また搬送モーター28が逆転すると、搬送駆動ローラー9と排出駆動ローラー15は記録用紙を上流に戻す方向、即ち逆転方向に回転する。
また動力伝達手段50が搬送モーター28から用紙受けトレイ17へ動力を伝達する動力伝達状態において、搬送モーター28が正転すると用紙受けトレイ17は+Y方向に変位し、搬送モーター28が逆転すると用紙受けトレイ17は-Y方向に変位する。
【0050】
以上の動力伝達手段50は、搬送モーター28から用紙受けトレイ17へ動力を伝達する動力伝達状態と、搬送モーター28から用紙受けトレイ17へ動力を伝達しない動力非伝達状態とを切り換え可能に構成されている。以下、この切り換えを行う為の構成について説明する。
図4、
図6は動力伝達手段50の動力非伝達状態を示し、
図5、
図7は動力伝達手段50の動力伝達状態を示している。尚、
図5においてスライド部材80は一部断面を示している。また、
図6及び
図7は断面位置の関係で
図4及び
図5に示す第1歯車64は表れていない。また、
図4及び
図5では歯車65より下流の歯車は図示を省略している。
【0051】
図4~
図7において、歯車55には伝達軸60が歯車55と一体に回転する様に設けられている。伝達軸60にはフランジ部60aが形成されており、フランジ部60aに対して-X方向には第1軸部60bが形成され、更に第1軸部60bに対して-X方向には第2軸部60cが形成されている。
第1軸部60bには、円筒状のスライド部材80が挿入され、第2軸部60cには、第2歯車61が挿入されている。
【0052】
スライド部材80は、第1軸部60bに対して相対的に回転できる様に、且つ、第1軸部60bに対してX軸方向にスライド可能に挿入されている。スライド部材80にはレバー部材81が一体的に形成されている。
第2歯車61は、第2軸部60cと一体に回転できる様に第2軸部60cに対して回転止めされ、且つ、第2軸部60cに対してX軸方向にスライド可能に挿入されている。第2歯車61は、詳しくは後述するがX軸方向にスライドすることで第1歯車64と噛み合う噛み合い位置と、第1歯車64と噛み合わない非噛み合い位置とを変位する。
【0053】
第2歯車61とフレーム85との間には、第1押圧部材としての第1押圧ばね87が設けられており、第2歯車61は第1押圧ばね87によって+X方向に押圧されている。この第1押圧ばね87の押圧力は、第2歯車61を介してスライド部材80に作用し、即ち第2歯車61とスライド部材80とが+X方向に押圧された状態となっている。尚、スライド部材80に対し+X方向にはフランジ部60aが形成されているので、第1押圧ばね87の押圧力により、スライド部材80がフランジ部60aに押し当たった状態となる。これによりフランジ部60aとスライド部材80との間に摩擦力が生じる。そして伝達軸60が回転すると回転トルクがスライド部材80及び第2歯車61に伝達される。
【0054】
また第2歯車61には、進退部材83が+X方向に押圧されている。進退部材83は、フレーム85に形成された軸部85aに挿入され、X軸方向にスライド可能となっている。進退部材83は、詳しくは後述するがX軸方向にスライドすることで第1歯車64に接する接触位置と、第1歯車64から離間する離間位置とをとることができる。
【0055】
進退部材83とフレーム85との間には第2押圧部材としての第2押圧ばね88が設けられており、第2押圧ばね88によって進退部材83が+X方向に押圧され、そして進退部材83が第2歯車61に対し+X方向に押し当たっている。
尚、進退部材83はフレーム85に形成された不図示の回転規制部によって軸部85aまわりには回転しないように設けられている。
進退部材83と第2押圧ばね88は、規制手段82を構成する。この規制手段82については、動力伝達手段50の状態切り換えについて説明した後に、改めて説明する。
【0056】
図4及び
図6に示す動力伝達手段50の動力非伝達状態では、第2歯車61と第1歯車64とがX軸方向にずれた位置にあり、従ってこの状態では、第1動力伝達経路50aと第2動力伝達経路50bとが切断され、搬送モーター28の動力は用紙受けトレイ17には伝達されない。
これに対し
図5及び
図7に示す動力伝達手段50の動力伝達状態では、第2歯車61が第1歯車64と噛み合う位置まで-X方向に変位している。従ってこの状態では、第1動力伝達経路50aと第2動力伝達経路50bとが接続され、搬送モーター28の動力が用紙受けトレイ17に伝達される。
【0057】
次にレバー部材81は、搬送モーター28の回転によって
図4の実線及び符号81-1で示す進出状態と、二点鎖線及び符号81-2で示す退避状態とを取り得る。レバー部材81の進出状態では、レバー部材81がキャリッジ11の移動領域Bc(
図1参照)に進出し、キャリッジ11に形成されたレバー当接部45(
図8参照)と当接可能となる。レバー部材81の退避状態では、レバー部材81はキャリッジ11の移動領域Bc(
図1参照)から退避し、キャリッジ11に形成されたレバー当接部45(
図8参照)とは当接しない。
【0058】
レバー部材81は、搬送モーター28の逆転によって退避状態から進出状態に切り換わり、搬送モーター28の正転によって進出状態から退避状態に切り換わる。搬送モーター28が正転した場合と逆転した場合のレバー部材81の回転限度は、フレーム85に形成された不図示の規制部によって規制される。レバー部材81の回転が規制された後に更に搬送モーター28が回転した場合、レバー部材81は回転を停止したまま、伝達軸60が回転することとなる。
【0059】
以下、用紙受けトレイ17の第1状態から第2状態への切り換え、つまり用紙受けトレイ17を+Y方向に突出させる際の制御について
図14及び適宜その他を参照して説明する。
印刷待機状態では、レバー部材81は退避状態にある。制御部20(
図2参照)は、記録データを受信すると(ステップS101においてYes)、キャリッジ11を+X方向に移動させて(ステップS102)、レバー当接部45の位置をレバー部材81よりも+X方向に位置させる。次いで搬送モーター28を逆転させて(ステップS103)、レバー部材81を退避状態から進出状態に切り換える。
これによりキャリッジ11のレバー当接部45が、レバー部材81を-X方向に向けて押すことができる状態となる。
【0060】
次いでキャリッジ11を-X方向に移動させ(ステップS104)、レバー当接部45によってレバー部材81を-X方向に移動させる。これにより第2歯車61が第1歯車64と噛合し、動力伝達手段50は動力伝達状態となる。このときの状態が
図5に示す状態である。
【0061】
尚、ステップS104においてキャリッジ11を-X方向に移動させる際、第2歯車61の歯と第1歯車64の歯とが衝突し、噛み合わない虞がある。この場合、キャリッジ11を目標位置に到達させる前にキャリッジモーター25(
図2参照)の駆動電流値が閾値を超える。従ってこの場合、制御部20(
図2参照)は、キャリッジモーター25を一旦停止させ、搬送モーター28を所定量回転させる。尚この搬送モーター28の回転は、正転であっても良いし、逆転であっても良いし、正転と逆転を交互に行っても良い。またその回転量は、歯車の1歯分に相当する回転量と等しくならない様にすることが好適である。これにより第2歯車61の位相が変化し、再度キャリッジモーター25を移動させると、第2歯車61と第1歯車64とを噛合わせることができる。
【0062】
尚、レバー当接部45には
図8に示す様に+Y方向に壁45aが形成され、-Y方向に壁45bが形成されている。そしてレバー部材81がレバー当接部45に当接した際、レバー部材81に対し+Y方向に壁45aが位置し、-Y方向に壁45bが位置する状態となり、即ちレバー部材81がいずれの方向にも回転しない様に保持された状態となる。これにより、搬送モーター28を正転方向及び逆転方向のいずれの方向に回転させても、レバー部材81がレバー当接部45から外れることがなく、搬送モーター28を自在に制御できる。
【0063】
ステップS104の実行によって動力伝達手段50が動力伝達状態となるので、次いで搬送モーター28を正転させて用紙受けトレイ17を+Y方向に変位させ、第2状態に切り換える(ステップS105)。
その後、キャリッジ11を+X方向に移動させ(ステップS106)、レバー当接部45をレバー部材81から+X方向に離間させる。これにより第2歯車61、スライド部材80、及びレバー部材81は、第1押圧ばね87のばね力によって+X方向に移動し、特に第2歯車61は第1歯車64から離れて噛み合わなくなる。これにより第1動力伝達経路50aと第2動力伝達経路50bとが切断され、動力伝達手段50は動力非伝達状態となる。次いで搬送モーター28を正転させて、レバー部材81を進出状態から退避状態に切り換える(ステップS107)。
【0064】
逆に用紙受けトレイ17の第2状態から第1状態への切り換え、即ち-Y方向への移動は、
図15に示す様に、先ずキャリッジ11を+X方向に移動させ(ステップS201)、レバー当接部45をレバー部材81より+X方向に位置させる。次いで搬送モーター28を逆転させて(ステップS202)、レバー部材81を退避状態から進出状態に切り換える。
次いでキャリッジ11を-X方向に移動させ(ステップS203)、レバー当接部45によってレバー部材81を-X方向に移動させる。これにより第2歯車61が第1歯車64と噛み合い、動力伝達手段50は動力伝達状態に切り換わる。
【0065】
次いで搬送モーター28を逆転させて用紙受けトレイ17を-Y方向に変位させ、第1状態に切り換える(ステップS204)。その後、キャリッジ11を+X方向に移動させ(ステップS205)、レバー当接部45をレバー部材81から+X方向に離間させる。これにより第2歯車61は第1歯車64から離れて噛み合わなくなり、動力伝達手段50は動力非伝達状態となる。次いで搬送モーター28を正転させて、レバー部材81を進出状態から退避状態に切り換える(ステップS206)。
【0066】
続いて規制手段82について説明する。規制手段82を構成する進退部材83は、第1歯車64に対して進退可能に設けられている。動力伝達手段50が
図4、
図6の動力非伝達状態にある際、規制手段82を構成する進退部材83は、第2押圧ばね88の押圧力によって第1歯車64に進出し、第1歯車64に接している。この状態が、規制手段82の規制状態となる。
【0067】
図9は動力伝達手段50が
図4、
図6の動力非伝達状態にある際の、進退部材83と第1歯車64の正面図であり、図示する様に進退部材83には歯部83a、83b、83c、83dが形成され、進退部材83が第1歯車64に進出した状態で各歯部が第1歯車64の歯に噛み合う様になっている。
進退部材83は回転できない様に設けられているため、進退部材83が第1歯車64に進出して接触した状態では、第1歯車64も回転できない。このため、用紙受けトレイ17の変位が規制され、意図しない用紙受けトレイ17の変位が抑制される。
【0068】
そして動力伝達手段50が
図5、
図7の動力伝達状態に切り換わる際、進退部材83は第2歯車61によって-X方向に押され、第1歯車64から離間する。即ち規制手段82は、用紙受けトレイ17の変位を規制しない非規制状態となる。従って規制手段82の影響を受けることなく、搬送モーター28によって用紙受けトレイ17を駆動することができる。
【0069】
以上の通りプリンター1は、搬送モーター28から用紙受けトレイ17に搬送モーター28の動力を伝達する動力伝達状態と、搬送モーター28から用紙受けトレイ17に搬送モーター28の動力を伝達しない動力非伝達状態とに切り換え可能な動力伝達手段50と、動力伝達手段50が動力非伝達状態にある際に用紙受けトレイ17の変位を規制する規制状態と、動力伝達手段50が動力伝達状態にある際に規制を行わない非規制状態とに切り換え可能な規制手段82とを備えている。
これにより動力伝達手段50が動力非伝達状態にある際に用紙受けトレイ17の変位が規制され、装置を傾けた際などに意図せず用紙受けトレイ17が動いてしまう不具合を抑制できる。
そして動力伝達手段50の動力伝達状態では、規制手段82は用紙受けトレイ17の変位の規制を行わない非規制状態となるので、規制手段82が搬送モーター28に負荷を与えることがない。これにより、搬送ローラー8や排出ローラー14を回転させて記録用紙を搬送させる際の搬送精度を確保でき、また、電力消費を抑制することができる。
【0070】
また本実施形態において動力伝達手段50は、第1動力伝達経路50aと、搬送モーター28から用紙受けトレイ17への動力の伝達方向において第1動力伝達経路50aよりも下流の第2動力伝達経路50bとを含み、第1動力伝達経路50aと第2動力伝達経路50bとが接続することで動力伝達状態をとり、第1動力伝達経路50aと第2動力伝達経路50bとが切断されることで動力非伝達状態をとる。
そして規制手段82は、第2動力伝達経路50bを構成する回転体としての第1歯車64に接する接触位置(
図6参照)と第1歯車64から離間する離間位置(
図7参照)とに変位可能な進退部材83を備え、進退部材83が接触位置に位置することで規制状態をとり、進退部材83が離間位置をとることで非規制状態をとる構成である。これにより、規制手段82を簡単な構造で構成できる。
【0071】
また第2動力伝達経路50bは第1歯車64を備え、第1動力伝達経路50aは第2歯車61を備えている。第2歯車61は、第1歯車64と噛み合って第1動力伝達経路50aと第2動力伝達経路50bとを接続する噛み合い位置(
図5、
図7参照)と、第1歯車64から離間して第1動力伝達経路50aと第2動力伝達経路50bとを切断する非噛み合い位置(
図4、
図6参照)とに変位可能である。そして進退部材83は、第2歯車61と係わり合って第2歯車61の変位に連動して第1歯車64に対して進退する様に設けられ、第2歯車61が噛み合い位置にある際に離間位置をとり(
図7参照)、第2歯車61が非噛み合い位置にある際に接触位置をとる(
図6参照)。
この様に進退部材83は、第2歯車61と係わり合って第2歯車61の変位に連動して第1歯車64に対して進退する様に設けられるので、進退部材83を変位させる専用の動力源が不要となり、装置のコストを抑制できる。
但し、進退部材83を例えばソレノイド等の駆動手段によって変位させる様に構成しても良いことは勿論である。
【0072】
また進退部材83は第1歯車64と噛み合う歯部83a、83b、83c、83dを有し(
図9参照)、進退部材83が第1歯車64に接する接触位置において第1歯車64と歯部83a、83b、83c、83dとが噛み合うことにより規制手段82が規制状態をとる。これにより、用紙受けトレイ17の変位を確実に規制することができる。
但し、歯部83a、83b、83c、83dを設けることに代えて、例えば進退部材83において第1歯車64と接する面にゴムなどの高摩擦材を設け、摩擦力によって第1歯車64の回転を規制する様に構成しても良い。
【0073】
また動力伝達手段50は、キャリッジ11の移動方向に沿って変位可能であるととともに、搬送モーター28の回転によってキャリッジ11の移動領域に進出する進出状態とキャリッジ11の移動領域から退避する退避状態とに切り換え可能なレバー部材81を備えている。レバー部材81は第2歯車61と隣接する位置に設けられ、レバー部材81の変位によって第2歯車61及び進退部材83が変位する構成である。
これにより、第2歯車61がキャリッジ11に近い位置でレバー部材81を介してキャリッジ11から外力を受けることとなり、第2歯車61を応答性良好に変位させることができる。
【0074】
また第2歯車61とレバー部材81は、排出駆動ローラー15の回転軸15aとは別部材である軸部材としての伝達軸60に対しスライド可能に設けられるので、第2歯車61及びレバー部材81の配置の自由度が向上する。
【0075】
また第2歯車61、レバー部材81、及び進退部材83が、第2方向としての+X方向に向けて押圧されており、進出状態にあるレバー部材81をキャリッジ11が第1方向としての-X方向に押すことにより、第2歯車61が非噛み合い位置から噛み合い位置に変位し、且つ進退部材83が接触位置から離間位置に変位する構成である。
【0076】
また進出状態にあるレバー部材81をキャリッジ11が-X方向に押すことにより第2歯車61を非噛み合い位置から噛み合い位置に変位させる際、制御部20は、キャリッジ11の駆動負荷即ちキャリッジモーター25の駆動負荷が閾値を超えるとキャリッジ11を停止させ、搬送モーター28を所定量回転させた後にキャリッジ11を再度-X方向に移動させる。これにより、第1歯車64と第2歯車61とが噛み合わなかった場合でも、第1歯車64と第2歯車61とが適切に噛み合うことが期待できる。
【0077】
またキャリッジ11は、レバー部材81と当接するレバー当接部45を備え、レバー当接部45は、搬送モーター28の回転に拘わらずレバー部材81がレバー当接部45に当接した状態を保持する壁を有することを特徴とする。
【0078】
本態様によれば、搬送モーター28の回転方向に拘わらずレバー部材81がレバー当接部45に当接した状態が保持されるので、動力伝達手段50が動力伝達状態にある際に、用紙受けトレイ17を第1状態から第2状態に向かう方向とその逆方向に自在に駆動することができる。
【0079】
また動力伝達手段50は、第2歯車61を非噛み合い位置に向けて押圧する第1押圧ばね87を備え、規制手段82は、進退部材83を接触位置に向けて押圧する、第1押圧ばね87とは別部材である第2押圧ばね88を備える。これにより第2歯車61を押圧する押圧力と進退部材83を押圧する押圧力との双方を、適切な大きさに設定することができる。
【0080】
続いて
図10~
図13を参照して他の実施形態について説明する。
以降説明する実施形態において上述した実施形態と異なるのは、レバー部材81の近傍にストッパー85dが設けられている点、及びキャリッジ11に設けられたレバー当接部に壁部45b(
図8参照)が設けられていない点である。
【0081】
図10及び
図11においてフレーム85Aには、ストッパー85dが設けられており、ストッパー85dに対して+X方向にレバー部材81が入り込んで保持される第1保持部85eが形成され、ストッパー85dに対して-X方向にレバー部材81が入り込んで保持される第2保持部85fが形成されている。
二点鎖線及び符号81-2で示すレバー部材81は、退避状態にあり、且つ、第1保持部85eに保持された様子を示している。この状態では、第2歯車61は第1歯車64から離間しており、動力伝達手段50は動力非伝達状態にある。
また実線及び符号81-4で示すレバー部材81は、退避状態にあり、且つ、第2保持部85fに保持された様子を示している。この状態では、第2歯車61は第1歯車64と噛み合っており、動力伝達手段50は動力伝達状態にある。
【0082】
レバー部材81を二点鎖線及び符号81-2で示す状態から実線及び符号81-4で示す状態に切り換える為には、キャリッジ11のレバー当接部45Aがレバー部材81よりも+X方向に位置する状態で、搬送モーター28を逆転させる。これによりレバー部材81が退避状態から進出状態に切り換わるので、キャリッジ11を-X方向に移動させる。これにより、
図11に示す状態となる。
【0083】
ここでキャリッジ11が備えるレバー当接部45Aには、
図13に示す様に+Y方向に壁部45aが形成されているものの、-Y方向に壁部は形成されていない。そして
図12において範囲d1で示す様に、ストッパー85dとレバー当接部45AとはY軸方向でオーバーラップしている。これにより、
図11に示す状態から搬送モーター28を正転させると、レバー部材81はストッパー85dに引っ掛かることなく、円滑に第2保持部85fに入り込むことができる。尚、
図11に示す状態から搬送モーター28が逆転した際は、レバー部材81はレバー当接部45Aに形成された壁部45a(
図13参照)に当接する為、レバー部材81がレバー当接部45Aから外れることはない。
【0084】
レバー部材81が
図12の実線及び符号81-4で示す状態になると、第1押圧ばね87(
図7参照)の押圧力が第2歯車61に対し+X方向に作用しているものの、ストッパー85dによってレバー部材81の+X方向への移動が規制される。これにより第2歯車61は第1歯車64との噛み合った状態を維持できる。即ちキャリッジ11がレバー部材81から離れても、動力伝達手段50は動力伝達状態を維持できる。またこれにより、進退部材83も第1歯車64から離間した離間位置を維持できる。
【0085】
この様に第2歯車61が第1歯車64に噛み合う噛み合い位置にあるとともに進退部材83が離間位置にある状態において、退避状態にあるレバー部材81の+X方向への変位を止めるストッパー85dを備える。従ってキャリッジ11がレバー部材81から離間しても、第2歯車61が非噛み合い位置に戻ることを防止でき、また、進退部材83が接触位置に戻ることを防止できる。つまり、キャリッジ11がレバー部材81から離れていても、動力伝達手段50が動力伝達状態を維持できるので、キャリッジ11の制御の自由度が向上する。
【0086】
例えば、
図14のステップS105による用紙受けトレイ17の+Y方向への変位動作と、キャリッジ11の移動動作とを並行して行うことができる。この場合のキャリッジ11の動作としては、例えば-X方向の端部に位置する、記録ヘッド12をメンテナンスする為のメンテナンス部に記録ヘッド12を移動させ、記録ヘッド12をメンテナンスする動作が挙げられる。記録ヘッド12のメンテナンスには、ヘッド面の払拭や、インクを吐出するフラッシング動作が含まれる。
また或いは、用紙受けトレイ17の+Y方向への変位動作と並行して行う動作として、キャリッジ11に設けられた第2用紙検出部31(
図2参照)により記録用紙のエッジを検出する動作が挙げられる。即ち、用紙受けトレイ17の+Y方向への変位動作と並行して、記録用紙の給紙動作を行うことができる。
【0087】
また本発明は上記において説明した各実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0088】
1…インクジェットプリンター、2…装置本体、3…給紙カセット、4…第1給送ローラー、5…反転ローラー、6…傾斜支持部、7…第2給送ローラー、8…搬送ローラー、9…搬送駆動ローラー、10…搬送従動ローラー、11…キャリッジ、12…記録ヘッド、14…排出ローラー、15…排出駆動ローラー、15a…回転軸、16…排出従動ローラー、17…用紙受けトレイ、17a…ラック部、20…制御部、21…CPU、22…フラッシュROM、23…RAM、24…インターフェース、25…キャリッジモーター、26…給送モーター、28…搬送モーター、30…第1用紙検出部、31…第2用紙検出部、32…回転検出部、32a…検出部、32b…ロータリースケール、33…キャリッジ位置検出部、35…操作部、40…歯車、41…歯車、45、45A…レバー当接部、45a、45b…壁部、50…動力伝達手段、50a…第1動力伝達経路、50b…第2動力伝達経路、52…歯車、53…歯車、54…歯車、55…歯車、60…伝達軸、60a…フランジ部、60b…第1軸部、60c…第2軸部、61…第2歯車、63…摩擦クラッチ、64…第1歯車、65…歯車、66…コイルばね、70…歯車、71…歯車、76…トレイ駆動軸、77…歯車、78…ピニオン歯車、80…スライド部材、81…レバー部材、82…規制手段、83…進退部材、83a、83b、83c、83d…歯部、85、85A…フレーム、85a…軸部、85d…ストッパー、85e…第1保持部、85f…第2保持部、87…第1押圧ばね、88…第2押圧ばね、T1…第1用紙給送経路、T2…第1用紙給送経路、Bc…移動領域、Ca…移動範囲