(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】表示制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/00 20160101AFI20241001BHJP
B60K 6/22 20071001ALI20241001BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20241001BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20241001BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20241001BHJP
【FI】
B60W20/00 ZHV
B60K6/22
B60W10/26 900
B60L50/61
B60W50/14
(21)【出願番号】P 2020144281
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】太田 仁一
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-185965(JP,A)
【文献】特開2002-171603(JP,A)
【文献】特開2002-328154(JP,A)
【文献】特開2020-023313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0218406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/00
B60K 6/22
B60W 10/26
B60L 50/61
B60W 50/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及びモータを駆動源として搭載したハイブリッド車両の出力状態を表示装置に表示させる表示制御装置であって、
前記エンジンを停止させつつ前記モータで走行しているときにバッテリから前記モータへと供給される電力に関する情報の履歴を取得する取得部と、
前記履歴に基づいて前記エンジンが始動する可能性の大きさを表す始動割合を算出する算出部と、
前記表示装置の前記出力状態に前記始動割合を反映させて表示させる制御部と、
を備え、
前記算出部が、前記バッテリから前記モータへの給電経路で発生するジュール熱が大きいほど前記始動割合を高く算出する
ことを特徴とする、表示制御装置。
【請求項2】
エンジン及びモータを駆動源として搭載したハイブリッド車両の出力状態を表示装置に表示させる表示制御装置であって、
前記エンジンを停止させつつ前記モータで走行しているときにバッテリから前記モータへと供給される電力に関する情報の履歴を取得する取得部と、
前記履歴に基づいて前記エンジンが始動する可能性の大きさを表す始動割合を算出する算出部と、
前記表示装置の前記出力状態に前記始動割合を反映させて表示させる制御部と、
を備え、
前記取得部が、現在から過去の第一所定時間内に前記バッテリから前記モータへと供給された電流の履歴を取得する
ことを特徴とする、表示制御装置。
【請求項3】
前記算出部が、前記電流の履歴に基づいて現在以降の電流予測値を算出するとともに、前記電流予測値が高いほど前記始動割合を高く算出する
ことを特徴とする、請求項
2記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記算出部が、現在から第二所定時間が経過するまで前記電流予測値が維持されるものと仮定して、現在から前記第二所定時間が経過するまでに前記バッテリから前記モータへと供給される前記電流の積算値が閾値を超える可能性の大きさを表す前記始動割合を算出する
ことを特徴とする、請求項
3記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記始動割合が以下の式1で与えられる
ことを特徴とする、請求項
4記載の表示制御装置。
【数1】
【請求項6】
エンジン及びモータを駆動源として搭載したハイブリッド車両の出力状態を表示装置に表示させる表示制御装置であって、
前記エンジンを停止させつつ前記モータで走行しているときにバッテリから前記モータへと供給される電力に関する情報の履歴を取得する取得部と、
前記履歴に基づいて前記エンジンが始動する可能性の大きさを表す始動割合を算出する算出部と、
前記表示装置の前記出力状態に前記始動割合を反映させて表示させる制御部と、
を備え、
前記算出部が、現在の電流値を現在以降の電流予測値として算出するとともに、前記電流予測値が高いほど前記始動割合を高く算出する
ことを特徴とする、表示制御装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記履歴を含む複数のパラメータに基づいてそれぞれ前記始動割合を算出する複数の始動割合算出部と、前記複数の始動割合算出部で算出された前記始動割合のうち最も大きい始動割合を選択する最大値選択部と、を有し、
前記制御部は、前記最大値選択部で選択された最も大きい前記始動割合を前記表示装置の前記出力状態に反映させて表示する
ことを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の出力状態を表示装置に表示させる表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源としてエンジン及びモータを搭載したハイブリッド車両において、駆動源の出力状態を表示する表示装置が知られている。例えば、アクセル開度に応じた数の領域が点灯する表示領域の下方に、EVモード(モータのみが使用される走行モード)とハイブリッドモード(エンジン及びモータを併用する走行モード)との境界を表す分割線を表示する技術が知られている。このような制御により、走行モードが切り替えられるタイミングを運転者が認識しやすくなり、エンジン始動をコントロールしやすくなる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイブリッド車両の走行モードは、例えば車両の駆動源に要求される出力の大きさに応じて切り替えられうる。一方、給電経路の保護性を考慮して、バッテリからモータへと供給される電力の大きさに応じて走行モードが切り替えられることもある。例えば、駆動源に要求される出力が比較的小さい場合であっても、走行モードがEVモードからハイブリッドモードへと切り替えられることがある。このような場合、出力のみに基づいて表示装置を制御すると走行モードの切り替えのタイミングが運転者に認識されにくく、エンジン始動をコントロールしにくいという課題がある。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、走行モードの切り替えのタイミングが運転者に認識されやすくするようにしたハイブリッド車両の表示装置を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の表示制御装置は、エンジン及びモータを駆動源として搭載したハイブリッド車両の出力状態を表示装置に表示させる表示制御装置である。本表示制御装置は、エンジンを停止させつつモータで走行しているときにバッテリからモータへと供給される電力に関する情報の履歴を取得する取得部と、履歴に基づいてエンジンが始動する可能性の大きさを表す始動割合を算出する算出部と、表示装置の出力状態に始動割合を反映させて表示させる制御部とを備える。
(1)第一の表示制御装置において、前記算出部は、前記バッテリから前記モータへの給電経路で発生するジュール熱が大きいほど前記始動割合を高く算出する。
(2)第二の表示制御装置において、前記取得部は、現在から過去の第一所定時間内に前記バッテリから前記モータへと供給された電流の履歴を取得する。
(3)第三の表示制御装置において、前記算出部は、現在の電流値を現在以降の電流予測値として算出するとともに、前記電流予測値が高いほど前記始動割合を高く算出する。
【発明の効果】
【0007】
開示の表示制御装置によれば、走行モードの切り替えのタイミングが運転者に認識されやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例としての表示制御装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図2】
図1の表示装置に表示されるパワーメータの表示例である。
【
図3】
図1の算出部での処理内容を説明するためのブロック図である。
【
図4】(A)は電流の経時変化を示すグラフであり、(B)は電流積算値の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.装置構成]
図1は、実施例としての表示制御装置10の構成を説明するためのブロック図である。表示制御装置10は、エンジン1及びモータ2を駆動源として搭載したハイブリッド車両に適用されて、駆動源の出力状態を表示装置4に表示させる電子制御装置である。エンジン1は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関である。モータ2は、バッテリ3に蓄えられた電力を利用して駆動力を生成するとともに回生発電が実施可能な電動機である。尚、エンジン1に置き換えて、例えばタービンエンジンや燃料電池等を駆動源として搭載したハイブリッド車両に適用してもよい。
【0010】
上記のハイブリッド車両の走行モードには、少なくともEVモードとハイブリッドモードとが含まれる。EVモードはモータ2のみが使用される走行モードであり、ハイブリッドモードはエンジン1及びモータ2が併用される走行モードである。EVモードは、おもに低速走行時や低負荷走行時(例えば車両発進時)に設定され、ハイブリッドモードは、おもに中速~高速走行時や中負荷~高負荷走行時に設定される。なお、ハイブリッドモードには、パラレルハイブリッドモード(エンジン1及びモータ2の駆動力を併用して走行するモード)が含まれてもよいし、シリーズハイブリッドモード(エンジン1の駆動力で発電しつつモータ2の駆動力で走行するモード)が含まれてもよい。
【0011】
表示装置4は、乗員に視覚情報を提供する表示画面を表示するものであり、例えば指針を用いたアナログのディスプレイや液晶ディスプレイ,有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ,ヘッドアップディスプレイ(プロジェクタ)などである。表示装置4は、車室内における任意の位置に配置され、好ましくは運転者から見やすい位置(例えばステアリングの前方)に表示画面が配置される。表示画面には、少なくともパワーメータ5が表示され、好ましくはパワーメータ5とスピードメータ6とが表示される。パワーメータ5には駆動源の出力状態が表示され、スピードメータ6には走行速度(車速)が表示される。
【0012】
表示制御装置10は、車両に搭載される電子制御装置(ECU,Electronic Control Unit)の一つであり、プロセッサとメモリとを搭載した電子デバイスである。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processing Unit)などのマイクロプロセッサであり、メモリは、例えばROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory),不揮発メモリなどである。表示制御装置10で実施される制御の内容は、ファームウェアやアプリケーションプログラムとしてメモリに記録,保存されており、プログラムの実行時にはプログラムの内容がメモリ空間内に展開されて、プロセッサによって実行される。
【0013】
表示制御装置10には、例えば電流センサ21,電圧センサ22,温度センサ23が接続される。これらのセンサ21~23は、表示制御装置10に直接的に接続されてもよいし、図示しない車載通信網を介して接続されてもよいし、表示制御装置10と通信可能な他の電子制御装置を介して間接的に接続されてもよい。電流センサ21は、バッテリ3からモータ2への給電経路を流れる電流を検出するセンサであり、電圧センサ22はバッテリ3の電圧を検出するセンサである。温度センサ23は、バッテリ3の温度(例えばセル温度やケース内温度)を検出するセンサである。また、表示制御装置10には、図示しないアクセル開度センサや車速センサ,エンジン回転速度センサ,モータ回転速度センサなども接続されうる。
【0014】
図2は、
図1の表示装置4に表示されるパワーメータ5の表示例である。パワーメータ5には、回転可能な軸状の部材として描画される指針30と、指針30の先端位置を示すために指針30の回転中心と同心の円周に沿って描画される目盛とが含まれる。この目盛には、最大回生位置31と中立位置32と十二時位置33と一時位置34と最大出力位置35とが含まれる。
【0015】
最大回生位置31は、モータ2の回生発電量が最大となる状態であることを示す位置である。中立位置32は、モータ2の出力が力行側にも回生側にもゼロであるときに指針30が指し示す位置である。最大回生位置31から中立位置32までの範囲は、EVモードでモータ2の回生電力量を表す回生領域36と呼ばれる。また、十二時位置33は、モータ2の力行側の出力が所定値であるときに指針30が指し示す位置である。さらに、一時位置34は、モータ2の力行側の出力が所定値よりも大きい第二所定値であるときに指針30が指し示す位置である。中立位置32から一時位置34までの範囲は、EVモードでモータ2の力行電力量を表すEV領域37と呼ばれる。
【0016】
指針30が中立位置32から十二時位置33までの範囲内にあるときには、EVモードが維持される可能性が高く、すなわちエンジン1が始動する可能性が低い。一方、十二時位置33から一時位置34までの範囲は、EVモードでエンジン1が始動する可能性の高い始動領域38と呼ばれる。指針30が始動領域38にあるときには走行モードがEVモードからハイブリッドモードへと移行する可能性があり、エンジン1が始動する可能性がある。また、指針30の位置が一時位置34に近いほど、その可能性が高いことを意味する。
【0017】
なお、エンジン1が始動する100%の可能性を一時位置34が意味するわけではないし、エンジン1が始動する0%の可能性を十二時位置33が意味するわけでもない。例えば、指針30がEV領域37を指し示す状態であっても、車両の走行状態や冷暖房の使用状況などによりエンジン1が始動し、ハイブリッドモードへ移行する場合がある。また、指針30が始動領域38や一時位置34を指し示す状態であっても、直ちにエンジン1が始動してハイブリッドモードへ移行するとは限らない。
【0018】
最大出力位置35は、エンジン1が最大出力であるときに指針30が指し示す位置である。一時位置34から最大出力位置35までの範囲は、ハイブリッドモードでのエンジン1の出力の大きさを表すエンジン出力領域39と呼ばれる。本実施例では、EVモード時に指針30が指し示す範囲は回生領域36,EV領域37,始動領域38のいずれかとなる。また、ハイブリッドモード時に指針30が指し示す範囲はエンジン出力領域39となる。なお、エンジン1及びモータ2が作動していないときには、指針30は回生領域36より外側(最大回生位置31から反時計回りに移動した指針30が示す位置)に設定される図示しないオフ位置を指し示す。
【0019】
[2.制御]
表示制御装置10は、ハイブリッド車両の走行状態に応じてパワーメータ5及びスピードメータ6の表示内容を随時更新する制御を実施する。スピードメータ6の表示内容は、おもに図示しない車速センサで検出された車速信号に基づいて更新される。また、パワーメータ5の表示内容は、エンジン1及びモータ2の作動状態に基づいて更新される。
【0020】
本実施形態の表示制御装置10は、EVモード時にエンジン1が始動する可能性の大きさを指針30の位置に反映させる制御を実施する。この制御を実施するための要素として、表示制御装置10には、
図1に示すように、取得部11,算出部12,制御部13が設けられる。これらの要素は、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、表示制御装置10内のROMや補助記憶装置に記録,保存されるソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいは機能の一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0021】
取得部11は、エンジン1を停止させつつモータ2で走行しているEVモードにおいて、バッテリ3からモータ2へと供給される電力に関する情報の履歴を取得するものである。ここでいう「電力に関する情報」には、バッテリ3からモータ2への給電経路を流れる電流の情報,モータ2に入力される電流の情報,バッテリ3から出力される電流の情報,モータ2の作動電圧の情報,バッテリ3の内部抵抗の情報などが含まれる。
【0022】
好ましくは、バッテリ3からモータ2への給電経路で発生するジュール熱の大きさを算出するためのパラメータが取得される。ジュール熱の大きさは、給電経路を流れる電流の二乗と給電経路の抵抗と時間との積に比例する。したがって、給電経路の抵抗が既知である場合には、給電経路を流れる電流とその経過時間とに基づいてジュール熱の大きさを算出することができる。
【0023】
また、ここでいう「情報の履歴」には、上記の電力に関する情報に関して、過去のある時点から現在までの変化を把握するための情報が含まれ、複数の時刻で取得された情報が含まれる。例えば、過去の所定時刻における電流の情報と現在時刻の電流の情報とが含まれる。ここで取得された履歴の情報は、少なくともしばらくの間は表示制御装置10のメモリや記憶装置に記憶される。
【0024】
算出部12は、取得部11で取得された情報の履歴に基づき、エンジン1が始動する可能性の大きさを表す始動割合を算出するものである。始動割合とは、EVモードでエンジン1が始動する可能性(すなわち、EVモードからハイブリッドモードへと走行モードが移行する可能性)の大きさを表すパラメータであり、その値が大きいほどエンジン1が始動する可能性が高いことを表す。
【0025】
始動割合の値は、エンジン1が始動する可能性の大小を運転者や乗員にわかりやすく伝えるための便宜的な指標値である。例えば、エンジン1が始動する可能性が低い場合には0に近い値の始動割合が算出され、エンジン1が始動する可能性が高い場合には1に近い値(あるいは1を超える値)の始動割合が算出される。ただし、始動割合の値が0であることは、必ずしもエンジン1が確実に始動しないことを意味しない。同様に、始動割合の値が1であることは、必ずしもエンジン1が確実に始動することを意味せず、1を超える値の始動割合も算出されうる。
【0026】
図3は、算出部12の内部構成を例示するブロック図である。この算出部12には、複数種類の始動割合を算出するための複数の算出部14~17(第一始動割合算出部14,第二始動割合算出部15,第三始動割合算出部16,ハーネス保護始動割合算出部17)と、各算出部14~17で算出された始動割合のうち最も値が大きいものを選択するための最大値選択部18とが設けられる。
【0027】
第一始動割合算出部14は、車速に基づく始動割合を算出するものである。ここでは、基準となる車速に対する現在の車速の割合(例えば、現在の車速/所定車速)が第一始動割合として算出される。例えば、基準となる車速が80[km/h]であって、現在の車速が50[km/h]である場合には、第一始動割合が0.625となる。なお、現在の車速の値は最新の瞬時値であってもよいし、移動平均値であってもよい。また、基準となる車速の値は予め設定された固定値であってもよいし、車両の走行状況に応じて変化する可変値であってもよい。
【0028】
第二始動割合算出部15は、アクセル開度に基づく始動割合を算出するものである。ここでは、基準となるアクセル開度に対する現在のアクセル開度の割合(例えば、現在のアクセル開度/所定アクセル開度)が第二始動割合として算出される。例えば、基準となるアクセル開度が60[%]であって、現在のアクセル開度が45[%]である場合には、第二始動割合が0.750となる。なお、現在のアクセル開度の値は最新の瞬時値であってもよいし、移動平均値であってもよい。また、基準となるアクセル開度の値は予め設定された固定値であってもよいし、車両の走行状況に応じて変化する可変値であってもよい。
【0029】
第三始動割合算出部16は、モータ2の出力に基づく始動割合を算出するものである。ここでは、基準となるモータ出力に対する現在のモータ出力の割合(例えば、現在のモータ出力/所定モータ出力)が第三始動割合として算出される。例えば、基準となるモータ出力が100[kW]であって、現在のモータ出力が80[kW]である場合には、第三始動割合が0.800となる。なお、現在のモータ出力の値は最新の瞬時値であってもよいし、移動平均値であってもよい。また、基準となるモータ出力の値は予め設定された固定値であってもよいし、車両の走行状況に応じて変化する可変値であってもよい。
【0030】
ハーネス保護始動割合算出部17は、取得部11で取得された情報の履歴に基づく第四始動割合Rを算出するものである。ここでは、バッテリ3からモータ2への電力の供給状態が現在のまま維持された場合にエンジン1が始動する可能性の大きさが算出される。ここで、取得部11で取得された情報がバッテリ3からモータ2へと供給された電流の履歴である場合について詳述する。
【0031】
例えば、現在から過去の第一所定時間T
1内にバッテリ3からモータ2へと供給された電流の履歴が取得部11で取得され、その履歴に基づいてハーネス保護始動割合算出部17が現在以降の電流予測値I
nを算出する。電流予測値I
nは、例えば現在の電流値とされる。なお、現在から過去の第一所定時間T
1内に検出された電流の相加平均値や相乗平均値,最大値,最小値,中央値などに基づいて電流予測値I
nを算出してもよい。この場合、
図4(A)に示すように、電流予測値I
nは必ずしも現在の電流値には一致しない。しかし、過去の情報のみを電流予測値I
nに反映させたのでは、直近のドライバー操作が指針挙動に反映されにくくなる。したがって、電流予測値I
nには少なくとも現在の電流値を反映させることが好ましい。本実施例では、現在の電流値を電流予測値I
nとし、現在の電流値がそのまま維持された場合にエンジン1が始動する可能性の大きさを表す第四始動割合Rを算出する。
【0032】
また、ハーネス保護始動割合算出部17は、電流予測値Inが高いほど第四始動割合Rを高く算出する。例えば、現在から第二所定時間T2が経過するまで電流予測値Inが維持されるものと仮定して、現在から第二所定時間T2が経過するまでにバッテリ3からモータ2へと供給される電流の積算値が所定の閾値を超える可能性の大きさを表す第四始動割合Rを算出する。
【0033】
例えば
図4(B)に示すように、電流積算値の閾値がXであり、現在時刻t
nの電流積算値がYであって、現在時刻t
nから第二所定時間T
2が経過した時刻t
2における電流積算値がZであるとする。このとき、第四始動割合Rは閾値Xから電流積算値Yを減じたものに対する、第二所定時間T
2後の電流積算値Zの増分(電流積算値Zから電流積算値Yを減じたもの)の割合として算出される。また、第二所定時間T
2後の電流積算値Zの増分は、電流予測値I
nと第二所定時間T
2との積で表現されうる。したがって、第四始動割合Rは以下の式1で算出できる。
【0034】
【0035】
最大値選択部18は、上記の第一始動割合,第二始動割合,第三始動割合,第四始動割合Rのうち、最も値が大きいものを選択するものである。ここで選択された始動割合の情報は、制御部13に伝達される。また、制御部13は、EVモード時に最大値選択部18で選択された始動割合をパワーメータ5に表示される出力状態に反映させるものである。例えば、始動割合が0であるときに指針30が中立位置32を指し示し、始動割合が大きいほど指針30によって指し示される位置が一時位置34に近づくように、パワーメータ5の描画内容が制御される。
【0036】
なお、始動割合が0であるときに指針30が指し示す位置は、中立位置32の近傍(中立位置32からずれた位置)であってもよい。また、始動割合が1であるときに指針30が指し示す位置は、十二時位置33であってもよいし一時位置34でもよく、始動領域38に含まれる任意の位置であってもよい。少なくとも始動割合に対応するように指針30の位置を制御することで、走行モードがEVモードからハイブリッドモードへと切り替えられる可能性の大きさを運転者が認識しやすくなる。
【0037】
[3.効果]
(1)上記の実施例では、EVモード時にバッテリ3からモータ2へと供給される電力に関する情報の履歴が取得部11に取得され、その履歴に基づいて算出部12が第四始動割合Rを算出する。また、制御部13は第四始動割合Rを表示装置4のパワーメータ5に反映させて表示させる制御を実施する。このような制御構成により、走行モードの切り替えのタイミングが運転者に認識されやすくなる。
【0038】
例えば、ハイブリッド車両の駆動源に要求される出力が比較的小さい場合に、給電経路の保護性を考慮して、走行モードがEVモードからハイブリッドモードへと切り替えられることがある。このような場合、駆動源に要求される出力のみに基づいてパワーメータ5の表示内容を制御すると、走行モードの切り替えのタイミングを運転者が認識できなくなってしまう。一方、上記の実施例ではモータ2に供給される電力に関する情報の履歴から第四始動割合Rが算出され、その値がパワーメータ5の表示内容に反映される。これにより、運転者は走行モードが切り替えられる可能性の大きさを予め把握することができ、運転者にとって不意に走行モードが変化するようなことがなくなる。したがって、走行モードの切り替えのタイミングが運転者に認識されやすくなる。
【0039】
(2)上記の実施例における算出部12は、履歴を含む複数のパラメータに基づいてそれぞれ始動割合を算出する複数の始動割合算出部14~17と最大値選択部18とを有している。また、制御部13は、最大値選択部18で選択された最も大きい始動割合を表示装置4の出力状態に反映させて表示する。例えば、
図3に示す始動割合算出部14~16で第一始動割合,第二始動割合,第三始動割合が算出されるとともに、ハーネス保護始動割合算出部17で第四始動割合Rが算出される。これらの始動割合のうち最も値が大きいものが、パワーメータ5の出力状態に反映される。このような制御により、バッテリ3からモータ2への電力の供給状態だけでなく、車速やアクセル開度やモータ出力の状態をパワーメータ5の表示内容に反映させることができる。したがって、走行モードの切り替えのタイミングが運転者に認識されやすくなる。
【0040】
(3)上記の実施例では、算出部12により、バッテリ3からモータ2への給電経路で発生するジュール熱が大きいほど第四始動割合Rが高く算出されうる。つまり、給電経路で発生するジュール熱の大きさを算出するためのパラメータが取得される。このような制御構成により、給電経路の保護性を高めつつ、走行モードの切り替えのタイミングをわかりやすく運転者に認識させることができる。
【0041】
(4)上記の実施例では、取得部11が、現在から過去の第一所定時間T1内にバッテリ3からモータ2へと供給された電流の履歴を取得しうる。つまり、第四始動割合Rの算定に際し、過去の第一所定時間T1内における電流の履歴が参照される。このような制御構成により、給電経路の発熱やモータ2及びインバータに作用する熱的負荷の影響が考慮された第四始動割合Rを精度よく算出することができる。したがって、走行モードの切り替えのタイミングが運転者に認識されやすくなる。
【0042】
(5)上記の実施例では、算出部12が現在の電流値を電流予測値Inに反映させて、電流予測値Inが高いほど始動割合を高く算出している。このような制御構成により、直近の給電状態を精度よく第四始動割合Rに反映させることができる。したがって、走行モードの切り替えのタイミングが運転者に認識されやすくなる。
【0043】
(6)なお、電流の履歴に基づいて現在以降の電流予測値Inを算出し、電流予測値Inが高いほど始動割合を高く算出してもよい。この場合、例えば現在の電流値のみを参照して始動割合を算出した場合と比較して、将来の給電状態を精度よく推定することができる。したがって、不意に走行モードが変化するおそれを小さくすることができる。
【0044】
(7)上記の実施例では、
図4(A),(B)に示すように、第四始動割合Rの算定に際して算出部12が現在から第二所定時間T
2が経過するまで電流予測値I
nが維持されるものと仮定される。また、現在から第二所定時間T
2が経過するまでにバッテリ3からモータ2へと供給される電流の積算値Zが閾値Xを超える可能性の大きさを表す第四始動割合Rが算出される。このような制御構成により、将来の走行モードの変化を精度よく予測することができる。
【0045】
(8)上記の実施例では、式1に基づいて第四始動割合Rが算出されている。すなわち、第四始動割合Rは、閾値Xから電流積算値Yを減じたものに対する、電流予測値Inと第二所定時間T2との積の割合として算出されている。このような簡素な演算構成により、第四始動割合Rを迅速かつ正確に算出することができる。
【0046】
[4.変形例]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、本実施例の各構成は、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0047】
例えば上述の実施例では、電流の履歴に基づいて第四始動割合Rを算出する制御について詳述したが、電流の代わりにモータ2の電圧及び抵抗を用いて第四始動割合Rを算出してもよい。あるいは、バッテリ3からモータ2への給電経路(給電回路)における発熱量に対応する回路温度を検出し、その回路温度に基づいて第四始動割合Rを算出してもよい(回路温度を用いる場合、現在時刻tnの温度上昇速度を電流予測値Inの代わりに用いてもよい)。少なくともバッテリ3からモータ2へと供給される電力に関する情報の履歴を用いることで、上記の実施例と同様の作用,効果を獲得することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 エンジン
2 モータ
3 バッテリ
4 表示装置
5 パワーメータ
6 スピードメータ
10 表示制御装置
11 取得部
12 算出部
13 制御部
14 第一始動割合算出部
15 第二始動割合算出部
16 第三始動割合算出部
17 ハーネス保護始動割合算出部
18 最大値選択部
21 電流センサ
22 電圧センサ
23 温度センサ
30 指針
31 最大回生位置
32 中立位置
33 十二時位置
34 一時位置
35 最大出力位置
36 回生領域
37 EV領域
38 始動領域
39 エンジン出力領域