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特許7563055ベーパーチャンバ用の中間体が多面付けされたシートの製造方法、ベーパーチャンバ用の中間体が多面付けされたシートが巻かれたロールの製造方法、ベーパーチャンバ用の中間体の製造方法、及び、ベーパーチャンバの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバ用の中間体が多面付けされたシートの製造方法、ベーパーチャンバ用の中間体が多面付けされたシートが巻かれたロールの製造方法、ベーパーチャンバ用の中間体の製造方法、及び、ベーパーチャンバの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
F28D15/02 101H
F28D15/02 L
F28D15/02 106G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020149831
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2021042952
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2019163199
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小田 和範
(72)【発明者】
【氏名】武田 利彦
(72)【発明者】
【氏名】竹松 清隆
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 輝寿
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-291241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0178784(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00 - 15/06
B21D 53/02 - 53/08
H05K 7/20
H01L 23/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベーパーチャンバのための中間体が多面付けされたシートを製造する方法であって、
第一のシートに複数のベーパーチャンバの流路のための形状を加工する工程と、
前記第一のシートと第二のシートとを接合する工程と、を含み、
前記接合する工程では、前記第一のシートと前記第二のシートの接合面のそれぞれに対して原子ビーム、イオンビーム、及びプラズマの少なくとも1つを照射した後に接合を行って前記第一のシートと前記第二のシートとの間に中空部を形成し、
前記中空部は外部と連通していない、
中間体が多面付けされたシートの製造方法。
【請求項2】
ベーパーチャンバのための中間体が多面付けされたシートが巻かれたロールを製造する方法であって、
第一のシートに複数のベーパーチャンバの流路のための形状を加工する工程と、
前記第一のシートと第二のシートとを接合する工程と、を含み、
前記接合する工程では、ロール状の前記第一のシートを巻き出すとともに、ロール状の前記第二のシートを巻き出し、それぞれの接合面に対して原子ビーム、イオンビーム、及び、プラズマの少なくとも1つを照射した後に接合を行って前記第一のシートと前記第二のシートとの間に中空部を形成し、その後、前記接合したシートを巻き取ることよりロールとし、
前記中空部は外部と連通していない、
中間体が多面付けされたシートが巻かれたロールの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載されたシート、又は、請求項2に記載されたロールを巻き出してなるシートに含まれる多面付けされた中間体から、1つの中間体を取り出す工程を含み、
前記1つの中間体でも前記中空部は外部と連通していない、
中間体の製造方法。
【請求項4】
ベーパーチャンバのための中間体を製造する方法であって、
第一のシートの表面に前記ベーパーチャンバの流路のための形状を加工する工程と、
前記第一のシートに第二のシートを接合する工程と、を含み
前記接合する工程では、
前記第一のシート及び前記第二のシートの接合面のそれぞれに対して原子ビーム、イオンビーム、及びプラズマの少なくとも1つを照射した後に接合を行って前記第一のシートと前記第二のシートとの間に中空部を形成し、
前記中空部は外部と連通していない、
中間体の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の製造方法により中間体を製造する工程と、
前記中間体に注入口を形成して前記中空部を外部と連通させる工程と、
前記注入口から作動流体を注入する工程と、
前記注入口を塞ぐ工程と、を含む、ベーパーチャンバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、封入された作動流体が相変化を伴いつつ還流することにより熱輸送を行うベーパーチャンバの製造方法、及び、そのために供されるシート、ロール、中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン並びに携帯電話及びタブレット端末等の携帯型端末に備えられているCPU(中央演算処理装置)等の電子部品からの発熱量は、情報処理能力の向上により増加する傾向にあり冷却技術が重要である。このような冷却のための手段としてヒートパイプがよく知られている。これはパイプ内に封入された作動流体により、熱源における熱を他の部位に輸送することで拡散させ、熱源を冷却するものである。
【0003】
一方、近年においては特に携帯型端末等で薄型化が顕著であり、従来のヒートパイプよりも薄型の冷却手段が必要となってきた。これに対して例えば特許文献1に記載のようなベーパーチャンバが提案されている。
【0004】
ベーパーチャンバはヒートパイプによる熱輸送の考え方を平板状の部材に展開した機器である。すなわち、ベーパーチャンバには、対向する平板の間に作動流体が封入されており、この作動流体が相変化を伴いつつ還流することで熱輸送を行い、熱源における熱を輸送及び拡散して熱源を冷却する。
【0005】
より具体的には、ベーパーチャンバの対向する平板間には蒸気用流路と凝縮液用流路とが設けられ、ここに作動流体が封入されている。このように外部から遮断された密閉した流路を形成するために、対向する平板は流路以外の部分で接合されるが、この接合は拡散接合やろう付けにより行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6057952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、高温で加熱せざるを得ない拡散接合やろう付けでは材料の物性や表面状態に変化が生じることがある。特に上記のように薄型化に伴ってこれらの問題が顕著である。
【0008】
本開示は、製造過程において材料の物性や表面状態の変化を抑制できるベーパーチャンバ用の中間体が多面付けされたシートの製造方法を提供する。また、ベーパーチャンバ用の中間体が多面付けされたシートが巻かれたロールの製造方法、ベーパーチャンバ用の中間体の製造方法、及び、ベーパーチャンバの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の1つの態様は、ベーパーチャンバのための中間体が多面付けされたシートを製造する方法であって、第一のシートに複数のベーパーチャンバの流路のための形状を加工する工程と、第一のシートと第二のシートとを接合する工程と、を含み、接合する工程では、第一のシートと第二のシートの接合面のそれぞれに対して原子ビーム、イオンビーム、及びプラズマの少なくとも1つを照射した後に接合を行う、中間体が多面付けされたシートの製造方法である。
【0010】
本開示の他の態様は、ベーパーチャンバのための中間体が多面付けされたシートが巻かれたロールを製造する方法であって、第一のシートに複数のベーパーチャンバの流路のための形状を加工する工程と、第一のシートと第二のシートとを接合する工程と、を含み、接合する工程では、ロール状の第一のシートを巻き出すとともに、ロール状の第二のシートを巻き出し、それぞれの接合面に対して原子ビーム、イオンビーム、及びプラズマの少なくとも1つを照射した後に接合を行った後、接合したシートを巻き取ることよりロールとする、中間体が多面付けされたシートが巻かれたロールの製造方法である。
【0011】
本開示の他の態様は、上記した中間体が多面付けされたシート、又は、ロールを巻き出してなるシートに含まれる多面付けされた中間体から、1つの中間体を取り出す工程を含む、中間体の製造方法である。
【0012】
本開示の他の態様は、ベーパーチャンバのための中間体を製造する方法であって、第一のシートの表面にベーパーチャンバの流路のための形状を加工する工程と、第一のシートに第二のシートを接合する工程と、を含み、接合する工程では、第一のシート及び第二のシートの接合面のそれぞれに対して原子ビーム、イオンビーム、及びプラズマの少なくとも1つを照射した後に接合を行う、中間体の製造方法である。
【0013】
上記のようにして得た中間体に注入口を形成する工程と、注入口から作動流体を注入する工程と、注入口を塞ぐ工程を、を含む、ベーパーチャンバの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、材料の物性や表面状態の変化を抑制しつつベーパーチャンバを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1はベーパーチャンバの製造方法の流れを表す図である。
図2図2は工程S10の流れを表す図である。
図3図3は多面付け第一シート1の斜視図である。
図4図4は多面付け第一シート1に形成されている形状の1つを表す斜視図である。
図5図5は多面付け第一シート1に形成されている形状の1つを表す平面図である。
図6図6は多面付け第一シート1に形成されている形状の1つを表す断面図である。
図7図7図6の一部を拡大した図である。
図8図8は多面付け第一シート1に形成されている形状の1つを表す他の断面図である。
図9図9は外周液流路部14を平面視して一部を拡大した図である。
図10図10は他の例の外周液流路部14を平面視して一部を拡大した図である。
図11図11は他の例の外周液流路部を平面視して一部を拡大した図である。
図12図12は他の例の外周液流路部を平面視して一部を拡大した図である。
図13図13は他の例の外周液流路部を平面視して一部を拡大した図である。
図14図14は1つの内側液流路部15に注目した切断面である。
図15図15は内側液流路部15を平面視して一部を拡大した図である。
図16図16は接合について説明する図である。
図17図17は中間体が多面付けされたシート50、及び、中間体が多面付けされたシート50が巻かれたロール51を説明する図である。
図18図18は中間体が多面付けされたシート50の断面の一部である。
図19図19は中間体52の斜視図である。
図20図20は中間体52の平面図である。
図21図21は注入口19の形成について説明する図である。
図22図22は注入口19の形成について説明する図である。
図23図23は他の注入口19の形成について説明する図である。
図24図24は他の注入口19の形成について説明する図である。
図25図25はベーパーチャンバ53の斜視図である。
図26図26はベーパーチャンバ53の平面図である。
図27図27はベーパーチャンバ53の断面図である。
図28図28は電子機器56を説明する図である。
図29図29は作動流体の流れを説明する図である。
図30図30は他の形態にかかるベーパーチャンバを説明する図である。
図31図31は他の形態にかかるベーパーチャンバを説明する図である。
図32図32は他の形態にかかるベーパーチャンバを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を図面に示す形態に基づき説明する。なお、以下に示す図面では分かりやすさのため部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見やすさのため説明上不要な部分の図示や繰り返しとなる符号は省略することがある。
【0017】
[ベーパーチャンバの製造方法S1]
図1には1つの形態にかかるベーパーチャンバの製造方法S1(以下、「製造方法S1」と記載することがある。)の流れを示した。図1からわかるように、製造方法S1は、多面付け中間体シート・多面付け中間体ロールの製造S10、中間体の製造S20、注入口の形成S30、注液S40、及び、封止S50の各工程を含んでいる。
ベーパーチャンバ用の中間体が多面付けされたシートの製造方法、ベーパーチャンバ用の中間体が多面付けされたシートが巻かれたロールの製造方法は、多面付け中間体シート・多面付け中間体ロールの製造S10に含まれており、ベーパーチャンバ用の中間体の製造方法は、中間体の製造S20までの工程に含まれている。
なお、以下では便宜のため、「ベーパーチャンバ用の中間体が多面付けされたシート」を「多面付け中間体シート」、「ベーパーチャンバ用の中間体が多面付けされたシートが巻かれたロール」を「多面付け中間体ロール」と記載することがある。
以下に各工程について詳しく説明する。
【0018】
<材料>
製造方法S1に先立って、材料を準備する。本形態では2枚のシートを接合することによりベーパーチャンバを製造することから、2枚の材料シートを準備する。
以下で説明するように、本形態では、2枚の材料シートから枚葉でベーパーチャンバを作製する形態ではなく、帯状に長い2つの材料シートを重ね合わせて複数の中間体が配列された多面付け中間体シート、多面付け中間体ロールを作製し、その後に中間体を個別に打ち抜く等してベーパーチャンバを作製するいわゆる「多面付け」の工程を経る態様である。従って、本形態で準備する材料シートは帯状に長い2つのシートであり、通常はこの帯状のシートが巻かれたロールで提供されている。
ただし、本開示は、多面付け特有の工程を除いては枚葉で作製する中間体、及び、枚葉で作製するベーパーチャンバのそれぞれの製造方法にも適用することができる。
【0019】
材料シートを構成する材料は特に限定されることはないが、金属を用いることができる。その中でも熱伝導率が高い金属であることが好ましい。これには例えば銅、銅合金、アルミニウム等を挙げることができる。ただし、必ずしも金属材料でなくても電子ビーム等で表面を活性化することができれば用いることができ、例えばAlN、Si、又はAlなどセラミックスや、ポリイミドやエポキシなど樹脂が挙げられる。
また、1つのシートで2種類以上の材料を積層したもの(いわゆるクラッド材)を用いてもよいし、部位によって材質が異なる材料であってもよい。
【0020】
材料シートの厚さは特に限定されることはないが、1.0mm以下であることが好ましく、0.75mm以下であってもよく、0.5mm以下であってもよい。一方、この厚さは0.02mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であってもよく、0.1mm以上であってもよい。この厚さの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、この厚さの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
これにより薄型のベーパーチャンバとして適用できる場面を多くすることができる。
【0021】
<多面付け中間体シート・多面付け中間体ロールの製造S10>
多面付け中間体シート・多面付け中間体ロールの製造S10(以下、「工程S10」と記載することがある。)は、上記した材料から多面付け中間体シート、及び/又は、多面付け中間体ロールを製造する。図2には工程S10の流れを示した。図2からわかるように、工程S10は、加工S11及び接合S12の工程を含んでいる。
【0022】
(加工S11)
加工S11は、ベーパーチャンバの流路のための形状を形成する工程である。本形態では2つの材料シートのうち一方の材料シートである多面付け第一シート1に当該形状を形成し、他方の材料シートである多面付け第二シート2は流路のための加工はすることなく利用する。図3には、加工後で形状10が付与された多面付け第一シート1を説明する図を表した。この図からわかるように、多面付け第一シート1には、ベーパーチャンバの流路のための形状10が複数配列されており、形状が多面付けされたシート1となり、このシート1が巻かれてロールとなっている。
【0023】
形状10の形成方法は特に限定されることはなく、エッチング、切削加工、及びプレス加工等を挙げることができる。この中でもエッチングによる形状の形成は他の方法に比べて効率がよく量産性が高い。この場合には、材料シートの厚さ方向に貫通することなくその途中までエッチングを行う、いわゆるハーフエッチングを適用することができる。
【0024】
ここで形状10の具体的態様は特に限定されることはないが、例えば次のような形態とすることができる。図4図15に一つの形態例を説明する図を示した。図4は、図3のうち、多面付けされた形状10のうちの1つの形状10に注目した外観斜視図である。図3図4及び以下に示す各図には必要に応じて便宜のため、方向を表す矢印(x、y、z)も合わせて表示した。ここでxy面内方向は平板状であるベーパーチャンバの板面方向であり、z方向は厚さ方向である。
図5には図4をz方向から見た(平面視した)図を表した。また、図6には図5にI-Iで示した線で切断したときの断面図を表した。
【0025】
付与される形状は、作動流体が還流するための溝、及び、この溝に作動流体を注入するための溝である。具体的には、外周液流路部14、内側液流路部15、蒸気流路溝16、及び、蒸気流路連通溝17、及び、注入溝18である。
【0026】
外周液流路部14は、液流路部として機能し、作動流体が凝縮して液化した際に通る第2流路である凝縮液流路54の一部を構成する部位である。図7には図6のうち矢印Iで示した部分、図8には図5にI-Iで示した線で切断される部位の切断面を示した。いずれの図にも外周液流路部14の断面形状が表れている。また、図9には図7に矢印Iで示した方向から見た外周液流路部14をz方向から見た(平面視した)拡大図を表した。
【0027】
これらの図からわかるように、外周液流路部14は、環状に構成される部位である。そして、外周液流路部14には、この環状方向に沿って延びる複数の溝である液流路溝14aが設けられ、複数の液流路溝14aが、該液流路溝14aが延びる方向とは異なる方向に所定の間隔で配置されている。従って、図7図8からわかるように外周液流路部14ではその断面において凹部である液流路溝14aと液流路溝14aの間である凸部14bとが凹凸を繰り返して形成されている。
【0028】
このように複数の液流路溝14aを備えることで、1つ当たりの液流路溝14aの深さ及び幅を小さくし、第2流路である凝縮液流路54(図27等参照)の流路断面積を小さくして大きな毛細管力を利用することができる。一方、液流路溝14aを複数とすることにより合計した全体としての凝縮液流路54の流路断面積は適する大きさが確保され、必要な流量の凝縮液を流すことができる。
【0029】
ここで液流路溝14aは溝であることから、その断面形状において、底部、及び底部とは向かい合わせとなる反対側に開口を備えている。本形態で液流路溝14aはその断面が半楕円形状とされている。ただし、当該断面形状は半楕円形状に限らず、円形や、長方形、正方形、台形等の四角形や、その他の多角形、他の幾何学形状、及び、これらのいずれかを組み合わせた形状であってもよい。
【0030】
本形態では、外周液流路部14において、図9からわかるように隣り合う液流路溝14aは、所定の間隔で連通開口部14cにより連通している。これにより複数の液流路溝14a間で凝縮液量の均等化が促進され、効率よく凝縮液を流すことができ、円滑な作動流体の還流が可能となる。
本形態では図9で示したように1つの液流路溝14aの該溝を挟んで該液流路溝14aが延びる方向で同じ位置に対向するように連通開口部14cが配置されている。ただしこれに限定されることはなく、例えば図10に示したように、1つの液流路溝14aが延びる方向で異なる位置に連通開口部14cが配置されてもよい。すなわち、液流路溝14aが延びる方向と直交する方向に沿って凸部14bと連通開口部14cとが交互に配置されてもよい。
【0031】
その他、例えば図11図13に記載のような形態とすることもできる。図11図13には、図9と同じ視点で、1つの凝縮液流路14aとこれを挟む2つの凸部14b、及び各凸部14bに設けられた1つの連通開口部14cを示した図を表した。これらはいずれも、当該視点(z方向から見て、平面視)で凸部14bの形状が図9の例とは異なる。
すなわち、図9に示した凸部14bでは、連通開口部14cが形成される端部においてもその幅が他の部位と同じであり一定である。これに対して図11図13に示した形状の凸部14bでは、連通開口部14cが形成される端部においてその幅が、凸部14bの最大幅よりも小さくなるように形成されている。より具体的には、図11の例では当該端部において角が円弧状となり角にRが形成されることにより端部の幅が小さくなる例、図12は端部が半円状とされることにより端部の幅が小さくなる例、図13は端部が尖るように先細りとなる例である。
【0032】
図11図13に示したように、凸部14bにおいて連通開口部14cが形成される端部でその幅が、凸部14bの最大幅よりも小さくなるように形成されていることで、連通開口部14cを作動流体が移動しやすくなり、隣り合う凝縮液流路3への作動流体の移動が容易となる。
【0033】
以上のような構成を備える外周液流路部14は、さらに次のような構成を備えることができる。
図5図8にWで示した外周液流路部14の幅(液流路部14aが配列される方向の大きさ)は、ベーパーチャンバ全体の大きさ等から適宜設定することができるが、幅Wは、3.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であってもよく、1.0mm以下であってもよい。幅Wが3mmを超えると内側の液流路や蒸気流路のための空間が十分にとれなくなる虞がある。一方、幅Wは0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であってもよく、0.4mm以上であってもよい。幅Wが0.1mmより小さいと外側を還流する液の量が十分得られない虞がある。幅Wの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Wの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0034】
液流路溝14aについて、図7図9にWで示した溝幅(液流路溝14aが配列される方向の大きさ、溝の開口面における幅)は1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。一方、幅Wは20μm以上であることが好ましく、45μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。幅Wの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Wの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0035】
また、図7図8にDで示した溝の深さは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。一方、深さDは5μm以上であることが好ましく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。深さDの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さDの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
以上のように構成することにより、還流に必要な凝縮液流路の毛細管力をより強く発揮することができる。
【0036】
凝縮液流路の毛細管力をより強く発揮する観点から、溝幅Wを深さDで割った値で表される流路断面におけるアスペクト比(縦横比)は、1.0よりも大きいことが好ましい。この比は1.5以上でもよく、2.0以上であってもよい。または、アスペクト比は1.0より小さくてもよい。この比は0.75以下であってもよく、0.5以下であってもよい。
その中でもWはDより大きくすることができる。これにより、生産性が高まることに加え、後述するように接合S12のときに照射される原子ビーム、イオンビーム、及び/又はプラズマにより溝の内面の広い範囲が改質されやすくなり、いわゆる濡れ性が向上して熱的性能を向上させることが可能である。具体的にはアスペクト比は1.3より大きくすることができる。
【0037】
また、複数の液流路溝14aにおける隣り合う液流路溝14aのピッチは1100μm以下であることが好ましく、550μm以下であってもよく、220μm以下であってもよい。一方、ピッチは30μm以上であることが好ましく、55μm以上であってもよく、70μm以上であってもよい。このピッチの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、ピッチの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
これにより、凝縮液流路の密度を上げつつ、接合時や組み立て時に変形して凝縮液流路が潰れることを抑制することができる。
【0038】
凸部14bについて、図7図9にWで示した凸部14bの幅(凸部が延びる方向に直交する方向、複数の凸部14bが配列される方向における大きさ)は400μm以下であることが好ましく、300μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。一方、幅Wは10μm以上であることが好ましく、20μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。この幅Wの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Wの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0039】
連通開口部14cについて、図9にLで示した液流路溝14aが延びる方向に沿った開口部の大きさは1100μm以下であることが好ましく、550μm以下であってもよく、220μm以下であってもよい。一方、大きさLは30μm以上であることが好ましく、55μm以上であってもよく、70μm以上であってもよい。大きさLの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、大きさLの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0040】
また、図9にLで示した液流路溝14aが延びる方向における隣り合う連通開口部14cのピッチは2700μm以下であることが好ましく、1800μm以下であってもよく、900μm以下であってもよい。一方、このピッチLは60μm以上であることが好ましく、110μm以上であってもよく、140μm以上であってもよい。このピッチの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、ピッチの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0041】
図4図6に戻って内側液流路部15について説明する。内側液流路部15も液流路部として機能し、作動流体が凝縮して液化した際に通る第2流路である凝縮液流路3の一部を構成する部位である。図14には図6のうち矢印Iで示した部分を示した。この図にも内側液流路部15の断面形状が表れている。また、図15には図14に矢印Iで示した方向から見た内側液流路部15をz方向から見た拡大図を示した。
【0042】
これらの図からわかるように、内側液流路部15は、外周液流路部14の環状である環の内側に形成されている。本形態の内側液流路部15は、図4図5からわかるように、x方向に延びる壁であり、複数(本形態では3つ)の内側液流路当該延びる方向に直交する方向(y方向)に所定の間隔で配列されている。
各内側液流路部15には、内側液流路部15が延びる方向に平行な溝である液流路溝15aが形成され、複数の液流路溝15aが、該液流路溝15aが延びる方向とは異なる方向に所定の間隔で配置されている。従って、図6図14からわかるように内側液流路部15ではその断面において、凹部である液流路溝15aと液流路溝15aの間である凸部15bによる凸条とが凹凸を繰り返して形成されている。
【0043】
このように複数の液流路溝15aを備えることで、1つ当たりの液流路溝15aの深さ及び幅を小さくし、第2流路としての凝縮液流路54(図27等参照)の流路断面積を小さくして大きな毛細管力を利用することができる。一方、液流路溝15aを複数とすることにより合計した全体としての凝縮液流路3の流路断面積は適する大きさが確保され、必要な流量の凝縮液を流すことができる。
【0044】
ここで液流路溝15aは溝であることから、その断面形状において、底部、及び底部とは向かい合わせとなる反対側の開口を備えている。
本形態で液流路溝15aはその断面が半楕円形状とされている。ただし、当該断面形状は半楕円形状に限らず、円形や、長方形、正方形、台形等の四角形や、その他の多角形、他の幾何学形状、及び、これらのいずれか複数を組み合わせた形態であってもよい。
【0045】
さらに、図15からわかるように隣り合う液流路溝15aは、所定の間隔で連通開口部15cにより連通している。これにより複数の液流路溝15a間で凝縮液量の均等化が促進され、効率よく凝縮液を流すことができるため、円滑な作動流体の還流が可能となる。
この連通開口部15cについても、連通開口部14cと同様に、図10に示した例に倣って、液流路溝15aが延びる方向と直交する方向に沿って凸部15bと連通開口部15cとが交互に配置されてもよい。また、図11図13の例に倣って連通開口部15c及び凸部15bの形状としてもよい。
【0046】
以上のような構成を備える内側液流路部15は、さらに次のような構成を備えることができる。
図5図6図14にWで示した内側液流路部15の幅(内側液流路部15と蒸気流路溝16が配列される方向の大きさ)は、3000μm以下であることが好ましく、1500μm以下であってもよく、1000μm以下であってもよい。一方、この幅Wは100μm以上であることが好ましく、200μm以上であってもよく、400μm以上であってもよい。この幅Wの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Wの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0047】
また、複数の内側液流路部15のピッチは、4000μm以下であることが好ましく、3000μm以下であってもよく、2000μm以下であってもよい。一方、このピッチは200μm以上であることが好ましく、400μm以上であってもよく、800μm以上であってもよい。このピッチの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、ピッチの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
これにより蒸気流路の流路抵抗を下げ、蒸気の移動と、凝縮液の還流とをバランスよく行うことができる。
【0048】
液流路溝15aについて、図14図15にWで示した溝幅(液流路溝15aが配列される方向の大きさで、溝の開口面における幅)は1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。一方、この幅Wは20μm以上であることが好ましく、45μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。この幅Wの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Wの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
また、図14にDで示した溝の深さは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。一方、この深さDは5μm以上であることが好ましく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。この深さDの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さDの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
これにより還流に必要な凝縮液流路の毛管力を強く発揮することができる。
【0049】
流路の毛細管力をより強く発揮する観点から、溝幅Wを深さDで割った値で表される流路断面におけるアスペクト比(縦横比)は、1.0よりも大きいことが好ましい。1.5以上であってもよいし、2.0以上であってもよい。又は1.0よりも小さくてもよく、0.75以下でもよく0.5以下でもよい。
その中でも溝幅Wは深さDよりも大きくすることができる。これにより、生産性が高まることに加え、後述するように接合S12のときに照射される原子ビーム、イオンビーム、及び/又はプラズマにより溝の内面の広い範囲が改質されやすくなり、いわゆる濡れ性が向上して熱的性能を向上させることが可能である。具体的にはアスペクト比は1.3より大きくすることができる。
【0050】
また、複数の液流路溝15aにおける隣り合う液流路溝15aのピッチは、1100μm以下であることが好ましく、550μm以下であってもよく、220μm以下であってもよい。一方、このピッチは30μm以上であることが好ましく、55μm以上であってもよく、70μm以上であってもよい。このピッチの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、ピッチの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
これにより凝縮液流路の密度を上げつつ、接合時や組み立て時に変形して流路が潰れることを抑制することができる。
【0051】
凸部15bについて、図14図15にWで示した凸部14bの幅(凸部が延びる方向に直交する方向、複数の凸部14bが配列される方向における大きさ)は400μm以下であることが好ましく、300μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。一方、幅Wは10μm以上であることが好ましく、20μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。この幅Wの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Wの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0052】
さらに、連通開口部15cについて、図15にLで示した液流路溝15aが延びる方向に沿った開口部の大きさは、1100μm以下であることが好ましく、550μm以下であってもよく、220μm以下であってもよい。一方、この大きさLは30μm以上であることが好ましく、55μm以上であってもよく、70μm以上であってもよい。この大きさLの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、大きさLの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0053】
また、図15にLで示した、液流路溝15aが延びる方向における隣り合う連通開口部15cのピッチは、2700μm以下であることが好ましく、1800μm以下であってもよく、900μm以下であってもよい。一方、このピッチLは60μm以上であることが好ましく、110μm以上であってもよく、140μm以上であってもよい。このピッチLの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、このピッチLの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0054】
上記した本形態の液流路溝14a及び液流路溝15aは等間隔に離間して互いに平行に配置されているが、これに限られることは無く、毛細管作用を奏することができれば溝同士のピッチがばらついても良く、また溝同士が平行でなくても良い。
【0055】
次に蒸気流路溝16について説明する。蒸気流路溝16は作動流体が蒸発して気化した蒸気が通る部位で、第1流路である蒸気流路55(図27等参照)の一部を構成する。図5にはz方向から見た蒸気流路溝16の形状、図6には蒸気流路溝16の断面形状がそれぞれ表れている。
【0056】
これらの図からもわかるように、蒸気流路溝16は外周液流路部14の環状である環の内側に形成された溝により構成されている。詳しくは本形態の蒸気流路溝16は、隣り合う内側液流路部15の間、及び、外周液流路部14と内側液流路部15との間に形成され、内側液流路部15が延びる方向(x方向)に延びた溝である。そして、複数(本形態では4つ)の蒸気流路溝16が当該延びる方向に直交する方向(y方向)に配列されている。従って、図6からわかるように、y方向において、外周液流路部14及び内側液流路部15の凸条、蒸気流路溝16を凹条とした凹凸が繰り返された形状を備えている。
ここで蒸気流路溝16は溝であることから、その断面形状において、底部、及び、底部とは向かい合わせとなる反対側に開口を備えている。
【0057】
このような構成を備える蒸気流路溝16は、さらに次のような構成を備えることができる。
図5図6にWで示した蒸気流路溝16の幅(内側液流路部15と蒸気流路溝16が配列される方向の大きさで、溝の開口面における幅)は、少なくとも上記した液流路溝14a、液流路溝15aの幅W、幅Wより大きく形成され、2000μm以下であることが好ましく、1500μm以下であってもよく、1000μm以下であってもよい。一方、この幅Wは100μm以上であることが好ましく、200μm以上であってもよく、400μm以上であってもよい。この幅Wの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Wの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
蒸気流路溝16のピッチは、内側液流路部15のピッチにより決まるのが通常である。
【0058】
一方、図6にDで示した蒸気流路溝16の深さは、少なくとも上記した液流路溝14a、液流路溝15aの深さD、深さDより大きく形成され、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。一方、この深さDは10μm以上であることが好ましく、25μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。この深さDの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さDの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
このように、蒸気流路溝の流路断面積を液流路溝よりも大きくすることにより、作動流体の性質上、凝縮液よりも体積が大きくなる蒸気を円滑に還流することができる。
【0059】
本形態では蒸気流路溝16の断面形状は半楕円形であるが、これに限らず長方形、正方形、台形等の四角形、三角形、半円形、底部が半円形、底部が半楕円形、又はこれらのいずれか複数を組み合わせた形状であってもよい。蒸気流路は蒸気の流動抵抗を小さくすることにより、作動流体の円滑な還流させることができるので、かかる観点から流路断面の形状を決定することもできる。
【0060】
本形態では隣り合う内側液流路部15の間に1つの蒸気流路溝16が形成された例を説明したが、これに限らず、隣り合う内側液流路部の間に2つ以上の蒸気流路溝が並べて配置される形態であってもよい。
【0061】
蒸気流路連通溝17は、複数の蒸気流路溝16を連通させる溝である。これにより、複数の蒸気流路溝16内の蒸気の均等化が図られたり、蒸気がより広い範囲に運ばれ、多くの凝縮液流路54を効率よく利用できるようになったりするため、作動流体の還流をより円滑にすることが可能となる。
【0062】
本形態の蒸気流路連通溝17は、図4図5からわかるように、内側液流路部15、蒸気流路溝16が延びる方向の両端部と、外周液流路部14との間に形成されている。また、図8図5にI-Iで示した線に沿った切断面で、蒸気流路連通溝17の連通方向に直交する断面が表れている。
図5では、わかり易さのため蒸気流路溝16と蒸気流路連通溝17との境界となるべき部分に点線を付した。ただしこの線は必ずしも形状により表れる線ではなくわかり易さのために付した仮想の線である。
【0063】
蒸気流路連通溝17は、隣り合う蒸気流路溝16を連通させるように形成されていればよく、その形状は特に限定されることはないが、例えば次のような構成を備えることができる。
図5図8にWで示した蒸気流路連通溝17の幅(連通方向に直交する方向の大きさで、溝の開口面における幅)は、1000μm以下であることが好ましく、750μm以下であってもよく、500μm以下であってもよい。一方、この幅Wは100μm以上であることが好ましく、150μm以上であってもよく、200μm以上であってもよい。この幅Wの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Wの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
また、図8にDで示した蒸気流路連通溝17の深さは、300μm以下であることが好ましく、225μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。一方、この深さDは10μm以上であることが好ましく、25μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。この深さDの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さDの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0064】
本形態で蒸気流路連通溝17の断面形状は半楕円形であるが、これに限らず、長方形、正方形、台形等の四角形、三角形、半円形、底部が半円形、底部が半楕円形又は、これらのいずれか複数の組み合わせであってもよい。
蒸気流路連通溝は蒸気の流動抵抗を小さくすることにより作動流体の円滑な還流をさせることができるので、かかる観点から流路断面の形状を決定することもできる。
【0065】
注入溝18は、作動流体を蒸気流路溝16に注入させる溝である。図4図5からわかるように、本形態で注入溝18は、外周液流路部14を横切るようにして蒸気流路連通溝17に連結した溝である。
注入溝18が配置される位置は特に限定されることはなく、作動流体の注入の観点から適切な位置が選択される。
【0066】
(接合S12)
図2に示した接合S12では、上記のように加工S11で準備した多面付け第一シート1と多面付け第二シート2とを重ね合せて接合し、多面付け中間体シート50、及び、これを巻いてなる多面付け中間体ロール51を製造する。図16に説明のための図を示した。例えば次のように接合を行う。なお、本形態ではこれらの各工程はいずれも不図示の真空ポンプに接続された真空槽60の中で行われる。
【0067】
多面付け第一シート1、及び、多面付け第二シート2がそれぞれロールから巻き出される。
【0068】
次いで、巻き出された多面付け第一シート1のうち、上記した形状10が形成された側の面に対して、照射装置61から、原子ビーム、イオンビーム、及びプラズマの少なくとも1つを照射する。
ここで、照射する原子ビームは中性原子の集団を一定の進行方向に細い線束として走らせたもの、イオンビームはイオンを電界で加速したもの、プラズマは気体を構成する分子が電離し陽イオンと電子に分かれて運動している状態をそれぞれ意味する。
これにより、多面付け第一シート1のうち照射が行われた面の酸化膜が除去される。
【0069】
同様に、巻き出された多面付け第二シート2のうち、多面付け第一シート1に重ねる側の面に対して、照射装置62から、原子ビーム、イオンビーム、及びプラズマの少なくとも1つを照射する。
これにより、多面付け第二シート2のうち照射が行われた面の酸化膜が除去される。
【0070】
以上のようにして照射が行われた多面付け第一シート1の面と多面付け第二シート2の面とを重ね合せて押圧ロール63により押圧する。これにより多面付第一シート1と多面付け第二シート2とが接合され、多面付け中間体シート50となる。そしてこの多面付け中間体シート50が巻き取られて多面付け中間体ロール51となる。
【0071】
このようにして、接合するシートの接合面に対して上記のような照射を行ってから接合を行うと、酸化膜が除去されており、例えば拡散接合のような強い力、高い温度による接合を行う必要がないため、材料の変質を抑制することができる。特に、ベーパーチャンバが薄くなることに伴い、このような材料の変質は例えば作動流体の封止不良等の問題を引き起こしやすくするため、このような問題の発生を抑制することができる。
また、接合面における酸化膜の除去だけでなく、液流路溝14a、液流路溝15a、蒸気流路溝16、蒸気流路連通溝17の内側の酸化膜も除去できるため、その内面の濡れ性が高まり、ベーパーチャンバの熱的性能も向上させることができる。
【0072】
図17には多面付け中間体シート50、及び、多面付け中間体ロール51の外観を示した。図17では、形状10は多面付け第一シート1と多面付け第二シートとの間に配置され外部からは見えないで点線で表している。
図18には、多面付け中間体シート50の多面付けした形状10のうちの1つの形状10にかかる部位の断面を表している。この断面は図6と同様の視点による図である。
【0073】
これら図からわかるように、多面付け中間体シート50、及び、多面付け中間体ロール51では、液流路溝14a、液流路溝15a、蒸気流路溝16、蒸気流路連通溝17の開口が多面付け第二シート2により閉鎖されており、それ中空部を形成している。
そして上記のように接合S12は真空槽60内でおこなわれているため、この中空部内も真空状態であり、この真空状態が維持される。
これによれば、多面付け中間体シート50、多面付け中間体ロール51を保管、搬送する等、すぐにはベーパーチャンバへの加工はしないときであっても、中空部の内側を真空状態に維持することができるため、中空部の内面の酸化膜の生成を抑制することができる。従って、その後この多面付け中間体シート50を用いてベーパーチャンバを作製しても内面に酸化膜が少なく、熱的性能が良好なベーパーチャンバとすることが可能である。
【0074】
本形態では、多面付け中間体シート50、多面付け中間体ロール51の中空部が真空である例を説明したが、真空とする代わりに不活性ガスで満たしてもよい。これによっても中空部内面の酸化を抑制することができる。
また、この中空部内を空気としても、この中空部が外部から遮断されており、空気の入れ替わりが無ければ、酸化膜の生成は抑制されるため、中空部が外部から遮断されて閉塞されていればよい。
【0075】
<中間体の製造S20>
図1に示した中間体の製造S20では、多面付け中間体シート50、多面付け中間体ロール51から、中間体52を製造する過程である。具体的には、中間体52は、中間体52が多面付けされた多面付け中間体シート50から個別の中間体52を打ち抜き等の公知の方法を用いて取り出す。
図19には中間体52の外観斜視図、図20には中間体52をz方向からみた(平面視した)図を表した。図20には中間体52の内部に形成された中空部の形態を点線で表している。
【0076】
図19図20からわかるように中間体52でも、中空部が外部から遮断されて閉塞されるようにする。これにより、中間体52の状態でも中空部の内面における酸化膜の生成が抑制される。
【0077】
図20にWで示した接合部の幅は必要に応じて適宜設定することができるが、この幅Wは、3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であってもよく、2.0mm以下であってもよい。幅Wが3mmより大きくなると、作動流体のための空間の内容積が小さくなり蒸気流路や凝縮液流路が十分確保できなくなる虞がある。一方、幅Wは0.2mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であってもよく、0.8mm以上であってもよい。幅Wが0.2mmより小さくなると第一シートと第二シートとの接合時における位置ずれが生じた際に接合面積が不足する虞がある。幅Wの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅Wの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0078】
<注入口の形成S30>
図1に示した注入口の形成S30では、中空部に作動流体を注入するための開口を形成する。従って、本形態では外部から注入溝18に連通する開口を形成する。図21図22には1つの例にかかる注入口19、及び、図23図24には他の例にかかる注入口19を示した。
【0079】
図21図22に示した例では、中間体52に対してz方向から穴を開けることにより注入口19を形成して、注入溝18と外部とを連通する。
図23図24に示した例では、中間体52の端面を除去することにより注入口19を形成して、注入溝18と外部とを連通する。
【0080】
<注液S40>
図1に示した注液S40では、形成した注入口19を利用して中空部に対して作動流体を注入する。注入の方法は特に限定されることはなく、公知の方法を適用することができる。
【0081】
作動流体の種類は特に限定されることはないが、純水、エタノール、メタノール、アセトン、及びそれらの混合物等、通常のベーパーチャンバに用いられる作動流体を用いることができる。
【0082】
<封止S50>
封止S50では作動流体が注入された状態で注入溝18を閉じる。閉じるための方法は特に限定されることはないが、かしめや溶接等を挙げることができる。
【0083】
[ベーパーチャンバ]
以上のようにして製造されたベーパーチャンバ53は次のような構成を有する。図25図27に説明のための図を示した。図25はベーパーチャンバ53の外観斜視図、図26はベーパーチャンバ53をz方向から見た図、図27図26にI-Iで示した線に沿った断面図である。図26では、その内側の構造を点線で表している。
【0084】
ベーパーチャンバ53の内部は、中間体52の中空部に作動流体が封入されることで密閉空間とされている。
具体的にはこの密閉空間は、液流路溝14a及び液流路溝15aにより作動流体が凝縮して液化した状態である凝縮液が流れる第2流路である凝縮液流路54、並びに、蒸気流路溝16により作動流体が凝縮して気化した状態である蒸気が流れる第1流路である蒸気流路55を具備する。さらにこの密閉空間は、蒸気流路連通溝17により蒸気流路溝16を連通する流路も備える。
このように凝縮液流路54は第1流路である蒸気流路55とは分離されて形成されているため、作動流体の循環を円滑にさせることができる。また、凝縮液流路54を断面においてその四方を壁で囲まれた細い流路を形成することにより強い毛細管力で凝縮液を移動させ、円滑な循環が可能となる。
【0085】
ここで、第2流路である凝縮液流路54の流路断面積は、当該第1流路である蒸気流路55の流路断面積より小さくされている。より具体的には、隣り合う2つの蒸気流路55(本形態では1つの蒸気流路溝16により形成される蒸気流路55)の平均の流路断面積をAとし、隣り合う2つの蒸気流路55の間に配置される複数の凝縮液流路54(本形態では1つの内側液流路部15により形成される複数の凝縮液流路54)の平均の流路断面積をAとしたとき、凝縮液流路54と蒸気流路55とは、AがAの0.5倍以下の関係にあるものとし、好ましくは0.25倍以下である。これにより作動流体はその相態様(気相、液相)によって第1流路と第2流路とを選択的に通り易くなる。
この関係はベーパーチャンバ全体のうち少なくとも一部において満たせばよく、ベーパーチャンバの全部でこれを満たせばさらに好ましい。
【0086】
なお、この凝縮液流路54についても流路の毛細管力をより強く発揮する観点から、流路幅を流路高さで割った値で表される流路断面におけるアスペクト比(縦横比)は、1.0よりも大きいことが好ましい。この比は1.5以上でもよく、2.0以上であってもよい。または、アスペクト比は1.0より小さくてもよい。この比は0.75以下であってもよく、0.5以下であってもよい。
その中でも製造の観点から流路幅が流路高さより大きいことが好ましく、かかる観点からアスペクト比は1.3より大きいことが好ましい。
【0087】
次にベーパーチャンバ53の作用について説明する。図28には電子機器の一形態である携帯型端末56の内側にベーパーチャンバ53が配置された状態を模式的に表した。また、図29には作動流体の流れを説明する図を表した。説明のし易さのため、この図ではベーパーチャンバ53の内部構造を実線で表している。
【0088】
ベーパーチャンバ53は携帯型端末56の筐体57の内側に配置されているため点線で表している。このような携帯型端末56は、各種電子部品を内包する筐体57及び筐体57の開口部を通して外部に画像が見えるように露出したディスプレイユニット58を備えて構成されている。そしてこれら電子部品の1つとして、ベーパーチャンバ53により冷却すべき電子部品59が筐体57内に配置されている。
【0089】
ベーパーチャンバ53は携帯型端末等の筐体内に設置され、CPU等の冷却すべき対象物である電子部品59に取り付けられる。電子部品59はベーパーチャンバ53の外面に直接、又は、熱伝導性の高い粘着剤、シート、テープ等の他の部材を介して取り付けられる。外面のうちどの位置に電子部品59が取り付けられるかは特に限定されることはなく、携帯型端末等において他の部材の配置との関係により適宜設定される。本形態では図29に点線で示したように、冷却すべき熱源である電子部品59を外面の中央に配置した。
【0090】
電子部品59が発熱すると、その熱が伝わり、密閉空間内における電子部品59に近い位置に存在する凝縮液が熱を受ける。この熱を受けた凝縮液は熱を吸収し蒸発し気化する。これにより電子部品59が冷却される。
【0091】
気化した作動流体は蒸気となって図29に実線の直線矢印で示したように蒸気流路55を流れて移動する。この流れは電子部品59から離隔する方向に生じるため、蒸気は電子部品59から離れる方向に移動する。
蒸気流路55内の蒸気は熱源である電子部品59から離れ、比較的温度が低いベーパーチャンバ1の外周部に移動し、当該移動の際に順次熱を奪われながら冷却される。その熱はベーパーチャンバ53の外面に接触した携帯型端末装置の筐体等に熱を伝え、最終的に熱は外気に放出される。
【0092】
蒸気流路55を移動しつつ熱を奪われた作動流体は凝縮して液化する。この凝縮液は蒸気流路55の壁面に付着する。一方で蒸気流路55には連続して蒸気が流れているので、凝縮液は蒸気で押し込まれるようにして凝縮液流路54に移動する。本形態の凝縮液流路54は連通開口部14c、連通開口部15cを備えているので、凝縮液はこの連通開口部14c、連通開口部15cを通って複数の凝縮液流路54に分配される。
本形態では凝縮液流路54と蒸気流路55とを分離して構成しているので作動流体が円滑に還流する。
【0093】
凝縮液流路3に入った凝縮液は、凝縮液流路による毛細管現象、及び、蒸気からの押圧により、図29に点線の直線矢印で表したように熱源である電子部品59に近づくように移動する。
このとき、凝縮液流路54は断面においてその四方が壁となり、毛細管力を高めることができる。これにより円滑な凝縮液の移動が可能とされている。
そして再度熱源である電子部品59からの熱により気化して上記を繰り返す。
【0094】
また、上記したように、本形態では接合S21のときに原子ビーム、イオンビーム、及びプラズマの少なくとも1つの照射により酸化膜が除去されるとともに、製造過程で、多面付け中間体シート50、多面付け中間体ロール51、及び中間体52において、中空部(凝縮液流路54、蒸気流路55)の内面に酸化膜が生じ難い状態が維持されているので、凝縮液流路54、蒸気流路55の内面の濡れ性がよく、作動流体の円滑な流動及び熱移動を高めることができる。
【0095】
上記形態では、多面付け第一シート1のみに液流路溝14a、液流路溝15a、蒸気流路溝16が設けられた例を示したが、図30に示したように多面付け第二シート2にも蒸気流路溝26が設けられてもよく、図31に示したように多面付け第二シート2にも液流路溝24a、液流路溝25a、蒸気流路溝26が設けられてもよい。
この例でも本開示の多面付け中間体シート、多面付け中間体ロール、中間体及びベーパーチャンバとすることができる。
【0096】
また、2つの多面付けシートからなることに限られることはなく、図32に示したように3つの多面付けシートによる多面付け中間体シート、多面付け中間体ロール、並びにここから製造される中間体、及びベーパーチャンバであってもよい。
【0097】
図32に示した多面付け中間体シートは、多面付け第一シート1、多面付け第二シート2、及び、多面付け中間シート3(多面付け第三シート3)の積層体である。
多面付け第一シート1と多面付け第二シート2との間に挟まれるように多面付け中間シート3が配置され、それぞれが上記した例に倣って接合されている。多面付け中間シート3についてはその両面に原子ビーム、イオンビーム、及びプラズマの少なくとも1つが照射される。
【0098】
この例では多面付け第一シート1、及び、多面付け第二シート2はその両面が平坦である。
この時の、多面付け第一シート1及び多面付け第二シート2の厚さは、1.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であってもよく、0.1mm以下であってもよい。一方、この厚さ0.005mm以上であることが好ましく、0.015mm以上であってもよく、0.030mm以上であってもよい。この厚さの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、この厚さの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つの組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0099】
多面付け中間シート3には、蒸気流路溝36、外周液流路部34、内側液流路部35、液流路溝34a、液流路部35aが備えられている。
蒸気流路溝36は、多面付け中間シート3を厚さ方向に貫通した溝であり、上記した蒸気流路溝16により第1流路である蒸気流路55を構成する溝と同様の溝であり、これに相当する形態で配置される。
外周液流路部34及び液流路溝34aは、上記した外周液流路部14及び液流路溝14aと同様に考えることができ、外周液流路部35及び液流路溝35aは、上記した外周液流路部15及び液流路溝15aと同様に考えることができる。
【0100】
本開示の上記各形態の例はそのままに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の形態とすることができる。各形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 多面付け第一シート
2 多面付け第二シート
50 多面付け中間体シート
51 多面付け中間体ロール
52 中間体
53 ベーパーチャンバ
S1 ベーパーチャンバの製造方法
S10 多面付け中間体シート・多面付け中間体ロールの製造
S11 加工
S12 接合
S20 中間体の製造
S30 注入口の形成
S40 注液
S50 封止
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