(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】糊供給装置
(51)【国際特許分類】
B31B 50/62 20170101AFI20241001BHJP
B65B 51/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B31B50/62
B65B51/02 A
(21)【出願番号】P 2020151252
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 信行
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-123622(JP,A)
【文献】特開2003-300260(JP,A)
【文献】特開2011-016324(JP,A)
【文献】実開平01-085023(JP,U)
【文献】特開2018-001046(JP,A)
【文献】特開平05-031833(JP,A)
【文献】特開2010-052742(JP,A)
【文献】特開2000-062131(JP,A)
【文献】特開平11-005296(JP,A)
【文献】特開2012-090705(JP,A)
【文献】米国特許第05613932(US,A)
【文献】中国実用新案第205631511(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 50/00
B65B 51/00
B41F 9/00
B42C 9/00
B42D 3/00
B05C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サック貼機の糊供給装置であって、糊タンクから糊を掻き上げる円形プレートと、円形プレート側面に対向して配置された側面ドクターと、側面ドクターを糊付け装置本体に固定する固定台と、円形プレート円筒面に対向して配置された円筒面ドクターとを有し、
前記側面ドクターは、前記固定台に前記円形プレート側面との間隔調整可能に取り付けられ、
前記円筒面ドクターは、前記側面ドクターに前記円形プレート円筒面との間隔調整可能に取り付けられ、
前記円筒面ドクターは、その上下、左右のうち少なくとも一つの方向で反転させて取り付け可能な形状であることを特徴とする糊供給装置。
【請求項2】
前記側面ドクターと前記円筒面ドクターは、それぞれ異なる材質からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の糊供給装置。
【請求項3】
前記側面ドクターは、前記固定台に固定ネジで取り付けられ、前記固定ネジ
を挿入
する孔に前記円形プレート側面との間隔調整代を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の糊供給装置。
【請求項4】
前記円筒面ドクターは、前記側面ドクターに固定ネジで取り付けられ、前記固定ネジ
を挿入
する孔に前記円形プレート円筒面との間隔調整代を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の糊供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙器加工におけるサック貼り機の糊供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙器加工におけるサック貼り工程のサック貼り機において、所定の厚みを有する薄い円筒状の円形プレートを用い糊タンクから糊を掻き上げ、余分な糊をドクターで掻き落して使用する構造の糊供給装置が一般的に利用されている。この糊供給装置に用いられているドクターの構造は、基本的には1つの部品から構成されている。このドクターで円形プレートの表面、すなわち側面と円筒面の余分な糊を掻き落す機能を持つ。
【0003】
図6はその一構成例を示すもので、底部側が糊32を貯蔵する糊タンクとなった本体30、紙器のブランク板31に直に接し糊32を転写する円形プレート33、円形プレート33を挟み込むように取り付けて糊量を調整するドクター34およびドクター34の位置を調整するためのドクター調整ネジ35などから構成され、円形プレート33の上部に押えコロ36が設けられている。円形プレート33は糊タンクにドブ浸けされて円形プレート33が回転することにより円形プレートの側面38や円筒面37に糊32a、32bが附着し、附着した糊の余分な部分をドクター34で掻き落とし、円形プレート33の表面の糊が所定の厚みとなる様にする。
【0004】
円形プレート33の円筒面37には糊の掻き上げを安定させるためにローレット加工やディンプル加工を行ったものがあり、円筒面37は必ずしも平坦ではなく凹凸が形成されている。そのためドクター34と円形プレートの円筒面37の接触部分dは側面38側よりも摩耗が進みやすく、ドクター34と円筒面37との位置関係の調整やドクター34の摩耗による交換を頻繁に行う必要があるが、特に糊の塗布量に影響するため慎重な位置調整が必要であった。
【0005】
また円形プレート33の円筒面37とドクター34の位置関係を調整しようとした場合、側面38とドクター34の位置関係も変化してしまいやすく、円筒プレートの円筒面側および側面側の両方の調整を同時に正確に行うことは熟練が必要となり、また時問がかる作業となっていた。また、調整に不備があった場合、糊付けの状態が不安定となり、品質不良を発生させる原因となる場合もあった。
【0006】
糊付けの状態を安定させるために、例えば特許文献1では、糊車周面上の糊の附着を検知するセンサーとブランク板を検知するセンサーを設け、ブランク板の糊の附着を判断する製函機の糊付け監視装置が提案されている。しかし特許文献1に記載の装置は、発光ダイオードとホトトランジスタ等の組み合わせにより、ダイオードから出された光の反射の有無により糊車周面上の糊の有無を検知するもので、糊車の周面(円筒面)に均一に糊付けされているか否かを検知するものではない。糊付け装置での糊の塗布性能は糊車の円筒面上の糊の厚みの均一性の影響が非常に大きい。また糊車は金属である為に乱反射が発生し易く光の反射で糊車周面上の糊の表面高さを検知するのは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明においては、サック貼り機による紙器成型時に用いる接着用の糊の供給装置において、円形プレートの表面の糊量を調整するドクターの位置調整が容易であり、またドクターの摩耗に伴う交換作業の負荷が少なく、交換頻度の低減も可能な糊供給装置を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、サック貼機の糊供給装置であって、糊タンクから糊を掻き上げる円形プレートと、円形プレート側面に対向して配置された側面ドクターと、側面ドクターを糊付け装置本体に固定する固定台と、円形プレート円筒面に対向して配置された円筒面ドクターとを有し、
前記側面ドクターは、前記固定台に前記円形プレート側面との間隔調整可能に取り付けられ、
前記円筒面ドクターは、前記側面ドクターに前記円形プレート円筒面との間隔調整可能に取り付けられ、
前記円筒面ドクターは、その上下、左右のうち少なくとも一つの方向で反転させて取り付け可能な形状であることを特徴とする。
【0010】
上記糊供給装置において、前記側面ドクターと前記円筒面ドクターは、それぞれ異なる材質からなるものであって良い。
【0011】
上記糊供給装置において、前記側面ドクターは、前記固定台に固定ネジで取り付けられ、前記固定ネジ挿入孔に前記円形プレート側面との間隔調整代を有していて良い。
【0012】
上記糊供給装置において、前記円筒面ドクターは、前記側面ドクターに固定ネジで取り付けられ、前記固定ネジ挿入孔に前記円形プレート円筒面との間隔調整代を有していて良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、円形プレートの円筒面側と側面側のドクターが別部材で構成され、それぞれ個別に取り付け位置調整可能としたことにより、円形プレートと各ドクターの間隔を独立して調整が可能となり、一方の調整が他方の調整に影響せず、調整作業が容易に、かつ効率的に行え、調整時問の削減を図ることができる。また部材が小型化・単純化するためコスト低減が図れる。また、円形プレートの円筒面との接触により摩耗が進みやすい円筒面ドクターを表裏、前後、左右のうち少なくとも一つの方向で反転させて取り付け可能な形状とすることで、同一部材を、取り付け方向を変えるだけで複数回使用が可能となり、予備部材数の削減が図れ、コスト低減につながる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0016】
図1は、本発明の糊供給装置の概略構成図である。上図が平面図、下図が透視的に示した側面図である。糊供給装置1は、底部側が糊タンクとなって糊12が貯留された本体10と、紙器のブランク板11に直に接し糊12を転写する円形プレート13、その上部に押えコロ17、円形プレート13を挟み込むような形状の溝状部分を有し、溝状部分で側面22に対向する様に固定台16により本体に10に取り付けられた、側面の余分な糊を掻き落とす側面ドクター14、円形プレート13の円筒面に対向して取り付けられて円筒面23の余分な糊を掻き落とす円筒面ドクター15および各ドクターを固定すると共にその位置を調整するためのドクター調整ネジ18などから構成される。
【0017】
円形プレート13は駆動軸19により駆動されて白抜き矢印方向に回転可能であり、少なくとも下方の一部が糊タンクの糊12にドブ付けされているため、回転に伴って糊12を掻き上げ、側面、円筒面に糊12を付着させて掻き上げる。掻き上げられた糊のうち、側面に付着した糊12aは側面ドクター14で余分を掻き落とされ、円筒面に付着した糊12bは円筒面ドクター15で余分を掻き落とされ、円形プレート13の表面の糊が所定の量となる様にする。所定量とされた糊は、円形プレート13と押えコロ17に挟まれて搬送される紙器のブランク板11の所定位置に塗布され、ブランク板11に糊付けが行われる。
【0018】
ブランク板11に転写される糊は主として円筒面23の糊であるため、円筒面23の糊量は正確に設定される必要がある。一方、側面22の糊は直接ブランク板11に塗布されることはなく、円形プレートの乾燥を防いだり、円筒面23からの糊ダレを防いで円筒面23の糊量を安定化させるのが主な目的であるが、使用される糊の粘度、機械速度によって円形プレート13と側面22との間隔はある程度の範囲で設定が必要となる。円形プレート13の表面の糊の量を設定するため、本発明の糊供給装置においては、
図2および
図3に示す様に、側面ドクター14は矢印Aの方向に、円筒面ドクター15は矢印Bの方向に、それぞれ独立に位置の調整が可能とされている。
【0019】
側面ドクター14は、矢印Aの方向に移動させることで、側面22との間隔t1、t2が同等となる様に調整すると好ましい。間隔t1、t2は使用する糊の粘度や機械速度の影響を受けるが、概ね0mm<t1、t2≦0.5mmの範囲とすると好ましい。また円筒面ドクター15では、矢印Bの方向に移動させることで、円筒面23との間隔sをブランク板11に塗布する糊量に応じて設定する。間隔sは間隔t1、t2と同様、使用する糊の粘度や機械速度の影響を受けるが、概ね0mm≦s≦0.5mmの範囲とすると好ましい。
【0020】
円形プレート13の円筒面23には、前述したように糊の掻き上げを安定させるためにローレット加工やディンプル加工を行ったものがあり、円筒面23は必ずしも平坦ではなく凹凸が形成されている。円形プレート13の円筒面23と円筒面ドクター15の間隔は糊の塗布量に応じて任意に設定され得るが、実質的に接触する状態とされることがあり、従って間隔sは0mmとされることがある。間隔sが0mmの場合はローレットやディンプルのパターン内に入り込んだ糊がブランク板11に塗布される。
【0021】
円筒面23と円筒面ドクター15は接触した状態とされることがあるため、円筒面ドクター15の円筒面23との接触部分pは側面ドクター14よりも摩耗が進みやすい。円筒面の糊量を一定に維持するためには円筒面ドクター15と円筒面23との位置関係の調整や円筒面ドクター15の摩耗による交換を頻繁に行う必要があるが、このときには円筒面ドクター15上のドクター調整ネジ18を緩めるなどして交換または調整をすればよく、側面ドクター14は固定したままで良いので調整が容易となる。また交換を行う場合も小型の形状の円筒面ドクター15のみの交換で良く、交換が容易でコスト面でも有利である
。
【0022】
側面ドクター14と円筒面ドクター15は上述の様に摩耗の度合いが異なるので、それぞれを異なる材質の部材で構成することもできる。摩耗の度合いが少ない側面ドクター14を構成する材料としては、例えば「ステンレス鋼材」などが例示でき、摩耗の度合いが大きい円筒面ドクター15を構成する材料としては、例えば「真鍮」などが例示できる。
【0023】
側面ドクター14と円筒面ドクター15の位置調整が行えるようにするには、例えば
図4に示したような構造とすればよい。すなわち、側面ドクター14には、固定台16に固定するためのドクター調整ネジ18を挿入する孔20が設けられるが、その孔20の形状を長孔として矢印Aの方向に調整可能な様にしておく。長孔の長径は調整範囲に合わせ適宜設定すれば良い。また孔20を設ける位置や数は、
図4の例に限らず適宜設定して良い。側面ドクター14にはまた、円筒面ドクター15のドクター調整ネジ18が嵌入して固定されるネジ孔21aが設けられる。
【0024】
円筒面ドクター15には、側面ドクター14に固定するためのドクター調整ネジ18を挿入する孔21が設けられるが、その孔21の形状を長孔として矢印Bの方向に調整可能な様にしておく。長孔の長径は調整範囲に合わせ適宜設定すれば良い。また孔21を設ける位置や数は、
図4の例に限らず適宜設定可能である。
【0025】
上記の位置調整のための構造は一例であり、これ以外の構造や機構を採用しても良いことは言うまでもない。例えば、円筒面ドクター15を位置決め調節ねじとして知られているねじの先端で位置決めを行うようにし、調節ねじを回してねじ軸方向の位置決めポイントを調節できるような機構を設ければ、より精密な位置決めが可能である。
【0026】
円筒面ドクター15はまた、その形状において以下の様な特徴を有している。円筒面ドクター15と円筒面との接触部分pは、側面視した
図5(a)での辺p1で示した部位となる。すなわち
図5(b)のように平面視したときの辺p1である。このような態様で円筒面ドクター15を側面ドクター14に装着して使用していると、辺p1の部位が次第に摩耗してくるため、上述の様に位置調整をすることで糊の塗布量が一定となる様に調整するが、摩耗が進むと辺p1の形状も変化してくるため、位置調整だけでは塗布が不安定になってくる。この様な場合、従来は新たなドクター部材を用意して交換していたが、本発明の円筒面ドクター15は、孔21も含め上下、左右方向で線対称な形状であり、従って上下、左右の方向で反転させて取り付け可能となっている。
【0027】
図5(b)で示した向きで取り付けられていた円筒面ドクター15を上下方向で反転し、すなわち裏返すと、
図5(c)のように接触部分pは辺p2の部位となる。円筒面ドクター15は上下方向で反転しても、孔21も含め位置関係が変わらないため、側面ドクター14に支障なく装着して使用することができる。辺p2の部位が摩耗したら、同様にして
図5(b)で示した向きから左右方向を反転した
図5(d)の向きとし、辺p3を接触部分pとする。この場合も側面ドクター14に支障なく装着して使用することができる。同様に辺p3の部位が摩耗したら、
図5(b)で示した向きから上下、左右方向を反転した向きとして辺p4を接触部分pとすることができる。
【0028】
この様に、一つの円筒面ドクター15の4辺をドクターとして使用でき、かつ、向きを変えるだけで支障なく取り付けることができるため、交換作業が容易であり、また交換用の部材が少なくて済み、管理の手間が省け、コスト的にも有利である。
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、従来一体で構成されていたドクターを2つの部材からなる構造とし、一つは円形プレートの側面の糊を掻き落す側面ドクターとし、もう
一つは円筒プレートの円筒面の糊を掻き落す円筒面ドクターとしたことで、摩耗が進みやすい円筒面ドクターと円筒面の位置調整やドクターの摩耗による交換を頻繁に行う必要があったところ、特に糊の塗布量に影響するため慎重なクリアランス調整が必要な円筒面ドクターの調整が単独でできるようになり、調整を正確に、短時間で、かつ調整スキルをそれ程必要とせず容易に行うことができるようになった。
【0030】
また交換が必要な円筒面ドクターを小型化、単純化、対称化することで、部品のコストも大きく低減することができた。また、その取り付けは位置調整ねじで側面ドクターに簡単に固定でき、この2つの部品を一体化させ運用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・糊供給装置
10・・・本体
11・・・ブランク板
12・・・糊
13・・・円形プレート
14・・・側面ドクター
15・・・円筒面ドクター
16・・・固定台
17・・・押えコロ
18・・・ドクター調整ネジ
19・・・駆動軸
20、21・・・孔(長孔)
22・・・側面
23・・・円筒面