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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】トウプリプレグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 11/16 20060101AFI20241001BHJP
   B29K 105/10 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
B29B11/16
B29K105:10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020152695
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047005
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西野 聡
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 潔
(72)【発明者】
【氏名】永松 大介
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-081770(JP,A)
【文献】特開平08-300349(JP,A)
【文献】特開2012-167252(JP,A)
【文献】特開2016-188271(JP,A)
【文献】特開2014-188838(JP,A)
【文献】特開2017-145269(JP,A)
【文献】特開2017-074699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
B29B15/08-15/14
C08J5/04-5/10;5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維に樹脂を含浸させたトウプリプレグの製造方法であって
回転する溝付きローラの溝内部に樹脂層を形成する工程と、強化繊維を前記溝付きローラの樹脂層に接触させて、樹脂層を強化繊維に転写し、樹脂を含浸する工程とを有し
前記溝付きローラによる樹脂層の転写と樹脂の含浸とを、強化繊維の一方の面に対して行った後、第2の溝付きローラによる樹脂層の転写と樹脂の含浸とを、前記強化繊維の他方の面に対して行うものであり、
さらに前記溝付きローラの回転方向が強化繊維の走行方向と一致し、かつ溝の底面における周速が強化繊維の走行速度よりも遅く制御される、トウプリプレグの製造方法。
【請求項2】
前記溝付きローラの溝の底面における周速が、強化繊維の走行速度の3%以上50%以下である、請求項に記載のトウプリプレグの製造方法。
【請求項3】
前記溝付きローラ外周部の、溝付きローラと強化繊維が離間する位置よりも下流側かつ溝付きローラに樹脂層が形成される位置よりも上流側の区間において、溝付きローラの溝内部に残留した樹脂を除去する、請求項1または2に記載のトウプリプレグの製造方法。
【請求項4】
強化繊維の搬送経路の、前記溝付きローラよりも上流側において、強化繊維の幅を制御する、請求項1からのいずれかに記載のトウプリプレグの製造方法。
【請求項5】
前記溝付きローラ外周部の、強化繊維と樹脂層とが接触している区間において、ニップローラで強化繊維を樹脂層に押し付ける、請求項1からのいずれかに記載のトウプリプレグの製造方法。
【請求項6】
前記溝付きローラの軸方向に複数の溝があり、それぞれの溝において、溝内部への樹脂層の形成と、樹脂層の強化繊維への転写、および樹脂の含浸を行う、請求項1からのいずれかに記載のトウプリプレグの製造方法。
【請求項7】
前記溝付きローラの複数の溝に形成する樹脂層の厚みを、それぞれの溝で独立して制御する、請求項に記載のトウプリプレグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウプリプレグの製造方法に関し、特に、高粘度のマトリックス樹脂であっても強化繊維に塗液を均一に付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含むマトリックス樹脂を強化繊維で補強した強化繊維複合材料(FRP)は、航空・宇宙用材料、自動車材料、産業用材料、圧力容器、建築材料、筐体、医療用途、スポーツ用途など様々な分野で用いられている。特に高い力学特性と軽量性が必要な場合には、炭素繊維強化複合材料(CFRP)が幅広く好適に用いられている。一方、力学特性や軽量性よりもコストが優先される場合にはガラス繊維強化複合材料(GFRP)が用いられる場合がある。FRPは強化繊維束にマトリックス樹脂を含浸した中間基材(プリプレグ)を得、これを積層、成形し、さらに熱硬化樹脂を用いた場合には熱硬化させて、FRPからなる部材を製造している。
【0003】
プリプレグには2次元のシート状物や幅の狭いテープ状物などがあるが、圧力容器などの球体部材やスポーツ用品などの複雑な形状の部材には、幅の狭いテープ状のプリプレグ(トウプリプレグ)が好適に使用されている。ここでいうトウプリプレグとは、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの未硬化の熱硬化性樹脂組成物をトウ、ヤーン、ロービング、マルチフィラメントなどの連続繊維束に対して所定の組成比で含浸したもので、通常、ボビンなどに一旦巻上げられた形で製品化されている。また、トウプリプレグを出発材料とするFRPは、通常、トウプリプレグが巻上げられたボビンを所定の本数だけクリールに仕掛けたのち、トウプリプレグを解舒しながらフィラメントワインディング装置、オートテープレイアップ装置、ドラムワインディング装置などに導き、管状、球状、シート状など任意の形態に積層、賦形したのち、これらを加熱してマトリックス樹脂を硬化させることにより成形される。
【0004】
トウプリプレグの製造方法としては、例えば特許文献1のように、円筒型のローラ表面の全面に均一な厚みの樹脂層を形成し、次にこの樹脂層に強化繊維束を接触させることで、強化繊維束に樹脂を供給する方法が開示されている。この方法は強化繊維束の糸掛けなどの作業性に優れ、またローラとブレードのクリアランスを調整することで樹脂層の厚みを制御し、トウプリプレグの樹脂含有率を調整することが可能である。しかしこの方法では強化繊維束の幅が変わると、強化繊維束と接触する樹脂の量が変わり、トウプリプレグの樹脂含有率が変動する問題がある。特許文献1では、ローラ表面の樹脂層と強化繊維束が接触する直前に、強化繊維束の幅を規制することで、樹脂含有率を均一にする方法が提案されている。しかし実際には、強化繊維束の幅はローラ表面の樹脂層と接触することでも拡幅してしまい、その拡幅の大きさは強化繊維束に付与する張力やローラ表面の樹脂層の厚み、樹脂の粘度によって変動するため、ローラ表面における強化繊維束の幅を厳密に制御することは困難である。また特許文献1の方法では、強化繊維束の走行しない部分にも樹脂層が形成されるため、強化繊維束の幅方向端部に余分な樹脂が付着し、トウプリプレグの樹脂含有率が不安定になるだけでなく、下流側の搬送ローラ等を樹脂で汚染してしまう問題が生じる。
【0005】
別のトウプリプレグの製造方法として、特許文献2には円筒型のローラに溝部を設け、溝部に供給した樹脂に強化繊維束を接触させることで含浸させる方法が開示されている。この方法ではローラ上における強化繊維束の幅を溝部によって規制できるため、強化繊維束の幅が安定化し、トウプリプレグの樹脂含有率が変動しにくい。またローラの溝部を通過することで、強化繊維束の幅方向端部に余分な樹脂が付着せず、下流側の搬送ローラ等を樹脂で汚染することもない。ここで特許文献2の方法では、円筒型ローラの表面の周速を、強化繊維束の走行速度と同じにするのが好ましいとされており、強化繊維束への樹脂の付与は主に含浸によって行われることが示唆されている。このため、樹脂が高粘度の場合や、強化繊維束の走行速度が大きい場合は、ローラ表面での含浸性が悪化し、強化繊維束とローラ表面の間に未含浸の樹脂層を残したまま強化繊維束がローラ表面を離れることになる。このとき、強化繊維束の走行速度とローラ表面の周速が同じであるため、未含浸の樹脂層は糸を引くように剥離され、強化繊維束とローラ表面の両方に付着する。その結果、トウプリプレグの樹脂含有率が不安定になるだけでなく、剥離した樹脂が飛散して周囲を汚染したり、強化繊維束の毛羽の一部がローラ表面の樹脂に取られ、強化繊維束の一部がローラに巻き付いて走行が不可能になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-148573号公報
【文献】特開平9-255799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、トウプリプレグの製造方法に関して、糸掛けなどの作業が容易で、かつ高粘度の樹脂であっても、トウプリプレグの幅および樹脂含有率を均一に維持することが可能なトウプリプレグの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決する本発明のトウプリプレグの製造方法は、回転する溝付きローラの溝内部に樹脂層を形成する工程と、強化繊維を前記溝付きローラの樹脂層に接触させて、樹脂層を強化繊維に転写し、樹脂を含浸する工程とを有し、さらに前記溝付きローラの回転方向が強化繊維の走行方向と一致し、かつ溝の底面における周速が強化繊維の走行速度よりも遅く制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトウプリプレグの製造方法によれば、溝付きローラの溝内部で強化繊維と樹脂層を接触させることで、強化繊維の幅を規制し、強化繊維への樹脂の付与量を安定化することが可能となる。また溝付きローラの溝の底面における周速を強化繊維の走行速度よりも遅く制御することで、強化繊維が溝内部の樹脂層を掻き取る効果が生じ、仮に強化繊維と溝付きローラの間に未含浸の樹脂層がある場合でも、強化繊維側に樹脂が付着して溝付きローラ側にはほとんど樹脂が残らず、溝内部に供給した樹脂の全量を強化繊維に付与することが可能となる。また溝付きローラの溝の底面と強化繊維に速度差があることで、溝付きローラ上で強化繊維が開繊し、強化繊維の幅が溝いっぱいまで拡幅するため、溝の隅に樹脂を残すこともない。その結果、トウプリプレグの幅および樹脂含有率が安定し、高品質なトウプリプレグを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るトウプリプレグの製造方法を示す概略図である。
図2】本発明に係る別の実施形態のトウプリプレグの製造方法を示す概略図である。
図3】本発明に係る別の実施形態のトウプリプレグの製造方法を示す概略図である。
図4】ガイドローラの形状の例を示す概略図である。
図5】本発明に係る別の実施形態のトウプリプレグの製造方法を示す概略図である。
図6】本発明に係る別の実施形態のトウプリプレグの製造方法を示す概略図である。
図7】本発明に係る別の実施形態のトウプリプレグの製造方法を示す概略図である。
図8】本発明に係る別の実施形態のトウプリプレグの製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の望ましい実施形態について、以下で説明する。なお、以下の説明は発明の実施形態を例示するものであり、本発明はこれに限定して解釈されるものではなく、本発明の目的・効果を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、「から」や「~」を用いて数値範囲を表す表現はその両端の数値を含むものとする。
【0012】
図1に本発明の一実施形態に係るトウプリプレグの製造方法の概略図を示す。図1は強化繊維1の幅方向、および溝付きローラ2の軸方向から見ている。溝付きローラ2の外側の実線円はローラの外周面を、内側の破線円は溝の底面を表している。また強化繊維1および溝付きローラ2は、図1の矢印の方向に走行および回転しており、溝付きローラ2の溝の底面の周速は、強化繊維1の走行速度よりも遅く制御されている。溝付きローラ2には樹脂供給のためのノズル3が設けられ、溝付きローラ2の溝内部に樹脂層4(不図示)を形成している。このとき樹脂層4の移動速度は溝付きローラ2の溝の底面の周速とほぼ同じである。次に強化繊維1が溝付きローラ2の溝内部に導かれるように搬送され、溝内部で樹脂層4と接触する。強化繊維1と樹脂層4が接触している区間Aでは、強化繊維1は樹脂層4の上を滑るように走行し、樹脂層4の樹脂の一部が強化繊維1の内部に含浸する。さらに未含浸の樹脂層は強化繊維1と樹脂層4の速度差によって強化繊維1に掻き取られ、トウプリプレグ5として下流側のワインダー等(不図示)で巻き取られる。
【0013】
ここで、強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、金属酸化物繊維、金属窒化物繊維、有機繊維(アラミド繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレン繊維など)などを例示することができるが、炭素繊維を用いることが、FRPの力学特性、軽量性の観点から好ましい。
【0014】
また強化繊維の形態としては特に限定されないが、トウ、ヤーン、ロービング、マルチフィラメントなどの連続繊維束の他、これらを一方向に面上で配列させた一方向材(UD基材)、強化繊維を多軸で配列させる、またはランダム配置してシート化した強化繊維ファブリックなどが挙げられる。強化繊維の幅や厚みも特に限定されないが、トウプリプレグとして扱いが容易な幅3mmから30mm、厚み0.1mmから0.5mmのものを用いることができる。
【0015】
本発明のトウプリプレグに用いる樹脂(以下、マトリックス樹脂ということもある)としては、用途に応じ適宜選択可能であるが、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などFRPに一般的に使用されるものを用いることができる。また、マトリックス樹脂は、加熱し溶融させた溶融樹脂でも室温で液状のものでもよい。また、溶媒を用いて溶液やワニス化したものでもよい。またトウプリプレグをボビンに巻いた際の巻き崩れ防止や、樹脂の染み出し防止、FRPの強度向上などの目的で、ポリマー粒子や無機粒子を添加してもよい。
【0016】
本発明に用いられる溝付きローラ2としては、形状や材質は特に限定されないが、例えばステンレス製のローラの表面に切削加工で溝を形成したものを用いることが可能である。このとき、溝の幅は強化繊維の幅と同程度とすることが好ましい。具体的には、強化繊維の幅±5mmが好ましく、より好ましくは±2mmである。溝の深さは、強化繊維が溝から逸脱しない程度であれば特に限定されないが、加工や清掃の容易さの観点から、0.5mmから5mmが好ましい。また溝の形成方法として、平滑なローラにセットカラーのようなガイド部材を複数設置し、隣り合うガイド部材の隙間を溝として使用してもよい。この方法であれば、溝幅を任意に変更することが可能であるが、ガイド部材と平滑なローラの隙間に毛羽が挟まり、強化繊維が巻き付くことがあるため、注意が必要である。強化繊維の巻き付きを防止し、トウプリプレグを安定して製造する観点では、ローラ表面に切削加工で溝を形成する方が好ましい。
【0017】
また溝の底面や壁面と強化繊維の擦過による毛羽立ちが懸念される場合は、ローラをPTFEや高分子ポリエチレンなどの摩擦係数の低い材質で製作したり、表面にDLCコーティングなどの表面処理を施してもよい。また溝の底面や壁面は平滑である方が好ましい。
【0018】
本発明に用いられるノズル3は、溝内部に樹脂層を形成できるものであれば特に限定されないが、円筒状のものやスリットダイなどを用いることが可能である。溝内部に均一な厚みの樹脂層を形成する観点から、ノズルの出口形状はスリット状であることが好ましい。またノズルの幅や先端の形状は、形成したい樹脂層の幅や厚みに応じて自由に選択してよい。次にノズル3に樹脂を供給する手段としては、特に限定されないが、一軸ねじポンプや二軸押出機、ダイヤフラムポンプ、シリンジポンプなどの定量ポンプを用いると、強化繊維に付与する樹脂量を制御することが可能となり、好ましい。なお本発明では、強化繊維が樹脂層を掻き取る効果により、溝付きローラに供給した樹脂のほぼ全量を強化繊維に付与するため、トウプリプレグの樹脂含有率を定量ポンプの供給量のみで調整することが可能であり、トウプリプレグの樹脂含有率の制御性に極めて優れている。
【0019】
本発明で形成する樹脂層4の幅は特に限定されないが、樹脂層4の幅を溝付きローラ2の溝の幅よりも少し狭くすることが好ましい。具体的には、樹脂層4の幅を溝付きローラ2の溝の幅よりも0.5mmから3mm、狭くすることが好ましい。例えば樹脂層4を溝付きローラの溝いっぱいまで形成すると、溝の隅の樹脂が強化繊維の幅方向端部からはみ出し、強化繊維の裏面に樹脂の一部が回り込み、下流側の搬送ローラ等を樹脂で汚染することがある。反対に、樹脂層4の幅を狭くしすぎると、強化繊維の幅方向端部に樹脂が付与されず、トウプリプレグの幅方向に樹脂含有率のムラが生じることがある。そこで樹脂層4の幅を溝付きローラ2の溝の幅よりも0.5mmから3mm狭くしておくと、強化繊維の裏面への樹脂の回り込みが起きず、また強化繊維の幅方向端部には、下流側におけるトウプリプレグの搬送の過程や、ワインダーでの巻取の過程において樹脂が含浸し、樹脂含有率のムラを最小限とすることが可能である。
【0020】
本発明で強化繊維1と樹脂層4が接触する区間Aの長さは特に限定されず、強化繊維による樹脂層の掻き取りの状況を鑑みて自由に決定してよい。ただし、強化繊維1と樹脂層4が接触する区間Aを長くしすぎると、強化繊維に樹脂層の樹脂がすべて含浸し、強化繊維1と溝つきローラ2の溝の底面が直接擦過して毛羽を生じることがあるため、注意が必要である。
【0021】
本発明における強化繊維1の走行速度に対する、溝付きローラ2の溝の底面の周速の比(以下、速比と呼ぶ)は、溝付きローラ表面への樹脂層の形成状況や、強化繊維による樹脂の掻き取り状況を鑑みて決定することが好ましい。具体的には、速比を3%から50%とすると、より高品質なトウプリプレグを得ることが可能である。以下にその根拠を詳述する。
【0022】
まず、一般的なトウプリプレグに付与される樹脂の厚みTは、強化繊維の内部に含浸する分を含めて30μmから100μmのものが多い。このとき、溝付きローラ2の溝内部に形成すべき樹脂層の厚みHは、樹脂層の幅と強化繊維の幅が等しい場合、T/速比で計算される。例えば、トウプリプレグに付与される樹脂の厚みTが40μmで強化繊維とローラの速比が80%の場合、溝内部に形成すべき樹脂層の厚みHは50μmとなる。ここで、ノズルを用いて高粘度の樹脂層をローラ上に形成する場合、ノズルとローラ表面のクリアランス(隙間)は、樹脂層の厚みの1倍から1.5倍に設定する必要がある。クリアランスがこれよりも大きくなると、形成される樹脂層の幅が狭くなったり、樹脂層に気泡が混入したり、最悪の場合は連続した樹脂層が形成不可能となるためである。
【0023】
前記の速比80%の例の場合、溝付きローラの溝内部に厚み50μmの樹脂層を形成するためには、ノズルと溝つきローラのクリアランスを50μmから75μmに設定する必要があるが、このようにクリアランスが狭い場合、作業者の設定誤差(10μmから30μm程度)や溝付きローラの偏心(10μmから50μm程度)の影響が大きくなり、溝付きローラに形成される樹脂層の厚みにムラを生じる。その結果、トウプリプレグの樹脂含有率にも長手方向のムラを生じ、トウプリプレグの品質が低下する。これを回避するためには、ノズルと溝付きローラのクリアランスを測定する機器や、偏心の小さい高精度な溝付きローラを用いる必要があり、設備費が大きくなってしまう。
【0024】
そこで、例えば強化繊維とローラの速比を20%とした場合、トウプリプレグに付与される樹脂の厚みTが40μmのとき、溝内部に形成すべき樹脂層の厚みHは200μmとなり、ノズルと溝付きローラのクリアランスを200μmから300μmまで広げることができる。このようにクリアランスが広い場合、作業者の設定誤差や溝付きローラの偏心の影響が相対的に小さくなり、溝付きローラに均一な厚みの樹脂層を形成することが可能となる。その結果、より高品質のトウプリプレグを得ることが可能となる。
【0025】
反対に、強化繊維とローラの速比が小さすぎる場合、溝付きローラに形成される樹脂層の厚みHが非常に大きくなり、樹脂層が重力で垂れ落ちたり、強化繊維が樹脂層に乗り上げた際に樹脂が強化繊維の幅方向に動き、強化繊維の幅方向端部から染み出したりすることがある。具体的には、溝付きローラに形成される樹脂層の厚みHが1mmを超えると、前記の現象が発生しやすい。その結果、トウプリプレグの幅方向端部に過剰な樹脂が付着して、下流側の搬送ローラ等を樹脂で汚染してしまう。
【0026】
以上のことから、溝付きローラの溝内部に形成される樹脂層の厚みHは200μmから1mmが好ましく、一般的なトウプリプレグに含まれる樹脂の厚みTが30μmから100μmであることを鑑みると、強化繊維とローラの速比は3%から50%が好ましい。
【0027】
またノズル3から供給される樹脂の粘度が高すぎる場合、溝付きローラ2の溝内部における強化繊維1による樹脂層4の掻き取りが完了しないことがある。この場合、樹脂層4を加熱して粘度を下げると、強化繊維1による樹脂層4の掻き取りが促進され、好ましい。なお、樹脂層4の加熱方法は特に限定されないが、樹脂層4に熱風を当てるなどして直接加熱してもよいし、溝付きローラ2を加熱してもよいし、ノズル3から供給される樹脂を予熱しておいてもよい。
【0028】
図2は本発明に係る別の実施形態のトウプリプレグの製造方法を示す概略図である。図2の実施形態では、溝付きローラ2と強化繊維1が離間する位置よりも下流側、かつ溝付きローラ2に樹脂層4を形成するノズル3よりも上流側の区間において、溝付きローラの溝内部の残留した樹脂をブレード6で除去している。本発明の趣旨は溝付きローラ2に供給した樹脂の全量を強化繊維1が掻き取ることであるが、ごく稀に強化繊維1に撚りが入るなどして強化繊維の幅が大幅に狭くなると、樹脂層4の一部が強化繊維に掻き取られず、溝付きローラの溝内部に残留することがある。残留した樹脂は溝付きローラによって一周し、ノズル3による次の樹脂層の形成や、次の強化繊維による樹脂層の掻き取りを乱すことがある。そこでブレード6により残留した樹脂を除去しておくと、次の樹脂層の形成や強化繊維による樹脂層の掻き取りを阻害せず、好ましい。またトウプリプレグを長時間製造すると溝付きローラ2の溝内部に毛羽が堆積することがあり、この毛羽を除去する観点からも、ブレード6を設置することが好ましい。なお、ブレード6の材質は特に限定されず、樹脂製や金属製のものを使用することができる。
【0029】
図3は本発明に係る別の実施形態のトウプリプレグの製造方法を示す概略図である。図3の実施形態では、強化繊維の搬送経路の溝付きローラ2よりも上流側にガイドローラ7を設け、強化繊維1の蛇行や幅の変化を規制している。本発明のトウプリプレグの製造方法では、溝付きローラ2の溝内部に形成した樹脂層4と同じ位置に強化繊維1を安定して導くことが重要であり、図3の実施形態のように、強化繊維の搬送経路の溝付きローラよりも上流側で、強化繊維の蛇行を抑制することが好ましい。また強化繊維1の幅と溝付きローラ2の溝の幅が大幅に異なる場合、溝付きローラの溝内部で強化繊維の幅方向端部に折れが生じたり、樹脂層4の掻き取り残しが生じることがある。これらを防止する観点から、図3の実施形態のように、強化繊維の搬送経路の溝付きローラよりも上流側で、強化繊維の幅を予め制御することが好ましい。ここで、強化繊維1の蛇行や幅の変化を規制するガイドローラ7の形状としては、例えば図4(A)に示すつば付きローラや、図4(B)に示す鼓ローラを使用することができる。
【0030】
図5は本発明に係る別の実施形態のトウプリプレグの製造方法を示す概略図である。図5の実施形態では、溝付きローラ2およびノズル3による樹脂層4の形成と樹脂の転写、含浸を、強化繊維1の一方の面(図5では下面)に行った後、第2の溝付きローラ12および第2のノズル13による第2の樹脂層14の形成と樹脂の転写、含浸を、強化繊維1の他方の面(図5では上面)に行っている。このように、樹脂の転写を強化繊維1の両面から行うことで、トウプリプレグ5に含まれる樹脂の厚み方向の分布が均一になり、より高品質なトウプリプレグを得ることが可能となる。さらに、溝付きローラ1つあたりから強化繊維1に供給される樹脂量が少ないため、強化繊維による樹脂の掻き取りがスムーズに完了し、溝付きローラへの樹脂の掻き取り残しが発生せず、トウプリプレグ5の樹脂含有率を長手方向により均一化することが可能である。また、樹脂の含浸を強化繊維1の両面から行うことで、強化繊維に樹脂が含浸しやすくなり、内部に空気(ボイド)を含まないトウプリプレグ5を得ることが可能となる。図5の実施形態において、トウプリプレグ5に含まれる樹脂の厚み方向の分布を均一化する観点から、ノズル3および第2のノズル13から供給される樹脂量を等しくすることが好ましい。ただし、トウプリプレグの特性を一方の面と他方の面で変化させるため、一方の面に樹脂を多く付着させたい場合は、一方のノズルから供給する樹脂量を多くしてもよい。またトウプリプレグの一方の面と他方の面で特性を変化させるため、ノズル3と第2のノズル13からそれぞれ異なる組成の樹脂を供給してもよい。
【0031】
図6は本発明に係る別の実施形態のトウプリプレグの製造方法を示す概略図である。図6の実施形態では、溝付きローラ2の溝内部において、強化繊維1と樹脂層4が接触する区間Aにニップローラ8を設けている。これにより、強化繊維1への樹脂の含浸を促進し、内部に空気を含まないトウプリプレグ5を得ることが可能となる。またニップローラ8により、溝付きローラ2の溝内部で強化繊維1が押し広げられることで、強化繊維の幅が溝いっぱいまで拡幅し、安定した幅のトウプリプレグ5を得ることが可能となる。なお、ニップローラ8は強化繊維1と樹脂層4が接触する区間Aのどこに設けてもよい。
【0032】
図7は本発明に係る別の実施形態のトウプリプレグの製造方法を示す概略図である。図7の実施形態では、溝付きローラ2よりも下流側においてトウプリプレグ5の目付を目付測定装置20で測定している。さらに目付測定装置20により測定された測定値を、制御装置21により、ポンプ22の吐出量にフィードバックしている。図7の実施形態では、例えばトウプリプレグ5の目付が規格値よりも大きい場合、目付測定装置20でこれを検知し、ポンプ22の吐出量を下げてトウプリプレグの目付を下げるフィードバック制御を行う。これにより、全長に渡って均一な目付のトウプリプレグ5を得ることが可能となる。
【0033】
図8は本発明に係る別の実施形態のトウプリプレグの製造方法を示す概略図である。図8の実施形態では、複数の溝を有する複数溝付きローラ9に複数の強化繊維1を通過させ、それぞれの溝内部にノズル3で樹脂層4を形成して、強化繊維への樹脂の転写と含浸を行っている。これにより、複数のトウプリプレグ5を同時に製造することが可能となり、トウプリプレグの生産性が大幅に向上する。ここで図8では、複数溝付きローラ9のそれぞれの溝への樹脂層の形成を複数のノズル3で行っているが、これに限定されず、例えば1つのノズル3からストライプ状に樹脂を供給して樹脂層を形成してもよい。
【0034】
また、複数溝付きローラ9のそれぞれの溝の樹脂層の厚みを、溝ごとに独立して制御可能としておくと、複数の強化繊維1に重さのバラツキがある場合でも、ボビン間で均一な目付または樹脂含有率のトウプリプレグを得ることが可能となり、好ましい。樹脂層の厚みを溝ごとに独立して制御可能な方法として、例えば複数のノズル3に対して複数のポンプを用いて樹脂を供給してもよいし、複数のノズル3に対して1つのポンプで樹脂を分割供給しつつ、それぞれのノズル3の圧力損失を変更し、樹脂の分割比率を変更してもよい。ノズル3の圧力損失の変更方法としては、例えばノズル3の出口形状を変形させたり、ノズル3とポンプを連通する配管を変形させたりしてもよい。
【実施例
【0035】
続いて、本発明の具体的な実施態様の例について、参考例を示しつつ説明する。しかし、本発明は以下に示す参考例に限定して解釈されるものではない。
【0036】
以下の参考例、および比較例に共通する実施条件として、強化繊維として炭素繊維(東レ製、“トレカ(登録商標)”T700SC(24K))を使用し、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂(比重1.2、常温20℃で粘度50Pa・s)を使用した。ボビンから巻き出した直後の炭素繊維の幅は10mmであった。
【0037】
表1は、本発明に係る参考例1と、本発明とは異なる比較例1~3のそれぞれの実施条件においてトウプリプレグを製造し、強化繊維への樹脂の転写状態を確認した結果である。
【0038】
参考例1]
図1の実施形態のトウプリプレグの製造装置を用いて、トウプリプレグの製造を行った。溝付きローラ2の材質はステンレス、溝の底面の直径は100mm、溝の幅は11mm、溝の深さは2mmとした。溝付きローラ2に樹脂を供給するノズル3の出口形状は、幅8mm、高さ2mmのスリット状とした。ノズル3に樹脂を供給する定量ポンプとして、兵神装備製の“モーノポンプ(登録商標)”(一軸ねじポンプ)を使用した。強化繊維1の搬送速度は30m/分、溝付きローラ2の回転方向は強化繊維1の走行方向と同じ(正回転)とし、溝付きローラの溝の底面の周速を3m/分(速比10%)とした。溝付きローラ2と強化繊維の抱き角は45゜とした。またこのとき強化繊維1と溝付きローラ2が接触する区間Aの長さは約40mmであった。定量ポンプから供給する樹脂量は16g/分とし、また溝付きローラ2の溝内部に形成される樹脂層4の幅が8mmになるよう、ノズル3と溝付きローラ2のクリアランスを調整した。このときの樹脂層4の厚みは、約560μmと計算される。
【0039】
評価方法として、トウプリプレグ5が離間した後の溝付きローラ2の溝の内部を目視で確認し、樹脂層が残っていないものを樹脂全量転写「可」、樹脂層の残りが確認できるものや、トウプリプレグの製造中に溝付きローラの溝から樹脂がはみ出し、溝付きローラから垂れ落ちたものを樹脂全量転写「不可」とした。
【0040】
その結果、参考例1ではトウプリプレグ5が離間した後の溝付きローラ2の溝内部には樹脂層が残っておらず、樹脂全量転写「可」であった。また得られたトウプリプレグ5をボビンに巻き取った後、手で巻き出して状態を確認したところ、トウプリプレグの全幅に樹脂が含浸していた。
【0041】
[比較例1]
参考例1の実施条件から、溝付きローラを溝のないローラに変更してトウプリプレグの製造を行った。溝のないローラの直径は100mm、溝表面の周速は3m/分(速比10%)とした。その他の実施条件、および評価方法は参考例1と同じとした。
【0042】
その結果、比較例1ではローラ上の樹脂層4に乗り上げた強化繊維1が、強化繊維と樹脂層が接触する区間Aの途中で強化繊維の幅方向に蛇行して樹脂層から脱落し、樹脂層の一部が強化繊維により掻き取られない状態となった。トウプリプレグ5が離間した後のローラに樹脂層が残っていたことから、樹脂全量転写「不可」であった。またローラに残留する樹脂層の量は、強化繊維1の蛇行と連動して変化していた。また得られたトウプリプレグ5の状態を確認したところ、長手方向に樹脂の含浸している部分と含浸していない部分が混在していた。
【0043】
[比較例2]
参考例1の実施条件から、溝付きローラ2の回転方向を強化繊維1の走行方向と反対(逆回転)に変更して、トウプリプレグの製造を行った。溝表面の周速は3m/分(速比10%)とした。その他の実施条件、および評価方法は参考例1と同じとした。
【0044】
その結果、比較例2ではトウプリプレグ5が溝付きローラ2から離間する位置において、トウプリプレグと溝付きローラの間に樹脂溜りが形成した。樹脂溜りは内部に渦流れを生じながら、時間とともに成長して溝付きローラの溝からはみ出し、最終的には溝付きローラから樹脂の一部が床に垂れ落ちた。トウプリプレグは樹脂溜りから樹脂の一部を持ち出していたが、溝付きローラに供給した樹脂の多くが床に垂れ落ちており、樹脂全量転写「不可」であった。また走行するトウプリプレグ5の幅方向両端部には不連続に樹脂の塊が付着しており、下流側のローラを樹脂で汚染していた。
【0045】
[比較例3]
参考例1の実施条件から、溝付きローラ2の溝の表面の周速を30m/分(速比100%)に変更して、トウプリプレグの製造を行った。その他の実施条件、および評価方法は参考例1と同じとした。
【0046】
その結果、比較例3ではトウプリプレグ5が溝付きローラ2から離間する際、トウプリプレグと溝付きローラの間に樹脂の糸引きが確認され、トウプリプレグが離間した後の溝付きローラの溝内部には樹脂層の一部が残っていたため、樹脂全量転写「不可」であった。また得られたトウプリプレグ5の状態を確認すると、参考例1と比較して樹脂の含浸量が少なかった。
【0047】
【表1】
【0048】
表2は、本発明に係る参考例1~4のそれぞれの実施条件においてトウプリプレグを製造し、強化繊維への樹脂の転写状態および溝付きローラ2の溝内部に形成される樹脂層4の幅を確認した結果である。樹脂層4の幅は溝付きローラ2にスケールを当て、溝付きローラが1回転する間の樹脂層の幅の変動を目視で確認した。
【0049】
参考例2]
参考例1の実施条件から、溝付きローラ2の溝表面の周速を6m/分(速比20%)に変更して、トウプリプレグの製造を行った。その他の実施条件、および評価方法は参考例1と同じとした。
【0050】
その結果、参考例2ではトウプリプレグ5が溝付きローラ2から離間した後、溝付きローラの溝内部に樹脂が残っておらず、樹脂全量転写「可」であった。また樹脂層4の幅は8mmで安定していた。
【0051】
参考例3]
参考例1の実施条件から、溝付きローラ2の溝表面の周速を15m/分(速比50%)に変更して、トウプリプレグの製造を行った。その他の実施条件、および評価方法は参考例1と同じとした。
【0052】
その結果、参考例3ではトウプリプレグ5が溝付きローラ2から離間した後、溝付きローラの溝内部に樹脂が残っておらず、樹脂全量転写「可」であった。また樹脂層4の幅は8mmで安定していた。
【0053】
参考例4]
参考例1の実施条件から、溝付きローラ2の溝表面の周速を21m/分(速比70%)に変更して、トウプリプレグの製造を行った。その他の実施条件、および評価方法は参考例1と同じとした。
【0054】
その結果、参考例4ではトウプリプレグ5が溝付きローラ2から離間した後、溝付きローラの溝内部に樹脂が残っておらず、樹脂全量転写「可」であった。しかし樹脂層4の幅は溝付きローラ2が1回転する間に、6mmから8mmまで変動し、不安定であった。このときの樹脂層4の厚みは約70μmから90μmと計算される。
【0055】
【表2】
【0056】
表3は、本発明に係る参考例1および5のそれぞれの実施条件においてトウプリプレグを製造し、得られたトウプリプレグ5の樹脂含有率、および樹脂含有率のバラツキを測定した結果である。
【0057】
評価方法として、まず樹脂を付与していない強化繊維1をボビンから巻き出し、長さ600mmごとに10本切断して質量を測定し、10本の平均値を強化繊維の平均質量Wfとした。次に得られたトウプリプレグ5をボビンから巻き出し、長さ600mmごとに切断してトウプリプレグの質量Wtを測定した。トウプリプレグ5の質量Wtから強化繊維の平均質量Wfを差し引いたものを樹脂の質量Wr=Wt-Wfとし、トウプリプレグの樹脂含有率をWr/Wt(%)で計算した。それぞれの参考例について、トウプリプレグ10本の樹脂含有率を求め、その平均値を平均樹脂含有率として計算した。またトウプリプレグ10本の樹脂含有率のバラツキを、(最大値-最小値)/2(%)で計算した。
【0058】
参考例1で得られたトウプリプレグ5の平均樹脂含有率は26%、樹脂含有率のバラツキは±2.5%であった。
【0059】
参考例5]
図5の実施形態のトウプリプレグの製造装置を用いて、トウプリプレグの製造を行った。参考例5では、第2の溝付きローラ12を使用して強化繊維の両面に樹脂を付与している。ノズル3およびノズル13に供給する樹脂量は合計16g/分とし、ノズル3およびノズル13に至る樹脂供給配管の圧力損失を統一して、概ね半分ずつの樹脂が供給されるよう調整した。それ以外の実施条件は参考例1と同じとした。
【0060】
その結果、参考例5で得られたトウプリプレグ5の平均樹脂含有率は25%、樹脂含有率のバラツキは±1.5%であり、片面付与(参考例1)の場合に比べて樹脂含有率のバラツキが小さくなった。
【0061】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の製造方法で得られるトウプリプレグは、CFRPに代表されるFRPとして、航空・宇宙用途や自動車・列車・船舶などの構造材や内装材、圧力容器、産業資材用途、スポーツ材料用途、医療機器用途、筐体用途、土木・建築用途など広く適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 強化繊維
2 溝付きローラ
3 ノズル
4 樹脂層
5 トウプリプレグ
6 ブレード
7 ガイドローラ
8 ニップローラ
9 複数溝付きローラ
12 第2の溝付きローラ
13 第2のノズル
14 第2の樹脂層
20 目付測定装置
21 制御装置
22 ポンプ
A 強化繊維と樹脂層が接触する区間の長さ
H 溝つきローラの溝内部に形成すべき樹脂層の厚み
T トウプリプレグに付与される樹脂層の実質的な厚み
Wf 強化繊維の平均質量
Wt トウプリプレグの質量
Wr 樹脂の質量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8