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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】取得装置および情報収集システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/90 20160101AFI20241001BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20241001BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20241001BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20241001BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20241001BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H02J50/90
G08C19/00 G
G08C19/00 301B
G08C17/00 A
H02J50/10
H02J50/80
H04Q9/00 311J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020159759
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053125
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓海
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-045163(JP,A)
【文献】特開2002-039810(JP,A)
【文献】特開2017-022949(JP,A)
【文献】特開2019-128227(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0179768(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00-25/04
H02J 50/00-50/90
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得装置であって、
無人移動体から無線で送信された電力を受電する受電部と、
前記受電部で受電された電力で動作し、検出情報を取得するセンサと、
前記受電部で受電された電力で動作し、前記センサで取得された前記検出情報に基づくデータを前記無人移動体に無線で送信する送信部とを備え、
前記無人移動体は、電力を無線で送信する送電部と、前記送電部を収容する収容部と、前記収容部の下面に配置された電磁石と、前記収容部を吊り下げる吊り下げ部材とを備え、
前記取得装置は、
前記送電部と前記受電部が向かい合ったときに前記電磁石に向かい合う位置に配置された磁性部材をさらに備える、
ことを特徴とする取得装置。
【請求項2】
無人移動体から無線で送信された電力を受電する受電部と、
前記受電部で受電された電力で動作し、検出情報を取得するセンサと、
前記受電部で受電された電力で動作し、前記センサで取得された前記検出情報に基づくデータを前記無人移動体に無線で送信する送信部と、
前記受電部と、前記センサと、前記送信部とを収容する筐体と、
前記筐体をメータに固定する固定部材とを備え、
前記センサは、前記メータの表示部の画像を前記検出情報として取得するイメージセンサである、
ことを特徴とする取得装置。
【請求項3】
前記無人移動体が前記受電部に対する位置を調整するためのマークをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の取得装置。
【請求項4】
前記センサで取得された前記メータの表示部の画像から前記表示部が示す数値を特定する処理部をさらに備え、
前記送信部は、前記処理部で特定された数値のデータを送信する、
ことを特徴とする請求項に記載の取得装置。
【請求項5】
取得装置と、
前記取得装置に向かって移動する無人移動体と、
を備え、
前記取得装置は、
前記無人移動体から無線で送信された電力を受電する受電部と、
前記受電部で受電された電力で動作し、検出情報を取得するセンサと、
前記受電部で受電された電力で動作し、前記センサで取得された前記検出情報に基づくデータを前記無人移動体に無線で送信する送信部と、
を有し、
前記無人移動体は、
前記受電部に電力を無線で送信する送電部と、
前記送信部から送信されたデータを受信する受信部と、
前記送電部を収容する収容部と、
前記収容部の下面に配置された電磁石と、
前記収容部を吊り下げる吊り下げ部材と、
を有し、
前記取得装置は、
前記送電部と前記受電部が向かい合ったときに前記電磁石に向かい合う位置に配置された磁性部材をさらに有する、
ことを特徴とする情報収集システム。
【請求項6】
取得装置と、
前記取得装置に向かって移動する無人移動体と、
を備え、
前記取得装置は、
前記無人移動体から無線で送信された電力を受電する受電部と、
前記受電部で受電された電力で動作し、検出情報を取得するセンサと、
前記受電部で受電された電力で動作し、前記センサで取得された前記検出情報に基づくデータを前記無人移動体に無線で送信する送信部と、
前記受電部と、前記センサと、前記送信部とを収容する筐体と、
前記筐体をメータに固定する固定部材と、
を有し、
前記センサは、前記メータの表示部の画像を前記検出情報として取得するイメージセンサであり、
前記無人移動体は、
前記受電部に電力を無線で送信する送電部と、
前記送信部から送信されたデータを受信する受信部と、
を有することを特徴とする情報収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの検出情報を取得する取得装置および情報収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水道メータ、ガスメータなどをスマートメータに置き換え、遠隔でメータを読み取ることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/027612号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スマートメータを利用するためには、電力供給設備とネットワーク設備が必要である。しかし、過疎地、山の中、鉱山などでは電力供給設備とネットワーク設備の少なくとも一方が利用できないまたは脆弱な場合がある。ネットワーク設備とは、無線、有線に関わらず、インターネットなどのネットワークに接続するための設備である。
【0005】
本発明の目的は、電力供給設備とネットワーク設備の少なくとも一方が存在しないまたは脆弱な環境において検出情報を遠隔で取得できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の取得装置は、無人移動体から無線で送信された電力を受電する受電部と、受電部で受電された電力で動作し、検出情報を取得するセンサと、受電部で受電された電力で動作し、センサで取得された検出情報に基づくデータを無人移動体に無線で送信する送信部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、情報収集システムである。この情報収集システムは、取得装置と、無人移動体と、を備える。取得装置は、無人移動体から無線で送信された電力を受電する受電部と、受電部で受電された電力で動作し、検出情報を取得するセンサと、受電部で受電された電力で動作し、センサで取得された検出情報に基づくデータを無人移動体に無線で送信する送信部と、を有する。無人移動体は、受電部に電力を無線で送信する送電部と、送信部から送信されたデータを受信する受信部と、を有する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電力供給設備とネットワーク設備の少なくとも一方が存在しないまたは脆弱な環境において検出情報を遠隔で取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態に係る情報収集システムの概略構成を示す斜視図である。
図2図1のメータの概略的な上面図である。
図3図1の取得装置とメータの概略的な側面図である。
図4図1の情報収集システムの機能構成を示す図である。
図5図1の取得装置の処理を示すフローチャートである。
図6】第2の実施の形態の情報収集システムの概略構成を示す斜視図である。
図7図6の収容部の概略的な下面図である。
図8図6の取得装置の概略的な上面図である。
図9図6の情報収集システムにおいて収容部を下降させて取得装置の上に載せた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る情報収集システム1の概略構成を示す斜視図である。情報収集システム1は、複数の水道メータのそれぞれから水の使用量の情報を収集する。情報収集システム1は、取得装置10と、無人移動体30とを備える。
【0012】
取得装置10は、水道メータであるメータ62に予め取り付けられている。複数のメータ62のそれぞれに取得装置10が設置され、情報収集システム1は複数の取得装置10を備えるが、図1では複数の取得装置10のうち1台の取得装置10を示す。
【0013】
図2は、図1のメータ62の概略的な上面図である。メータ62は、水道管60に接続されて水の使用量を計測し、計測した使用量を数値で表示部64に表示する機械式のアナログメータである。
【0014】
図3は、図1の取得装置10とメータ62の概略的な側面図である。取得装置10は、筐体24と、固定部材28とを有する。固定部材28は、メータ62の縁部に沿って設けられ、筐体24をメータ62に固定する。固定部材28は、任意でよく、接着剤、粘着剤、ネジで固定する部材などであってよい。これにより、既存のメータ62を交換せずに、取得装置10を容易に取り付けられる。
【0015】
取得装置10は、メータ62における表示部64の画像を撮影可能である。取得装置10は、無人移動体30から供給される電力によって動作する。
【0016】
固定部材28は、筐体24とメータ62との間の空間を実質的に密閉する。そのため、メータ62の表示部64に水滴や汚れが付きにくくなり、取得装置10をメータ62に取り付けた後、定期的に表示部64を清掃する必要がなく、表示部64の画像を鮮明に撮影できる。
【0017】
メータ62は、流体または気体などの使用量または流量を計測する機械式メータであってよく、水道メータに限らず、ガスメータなどであってもよく、工場などのプラント内に設置されたメータであってもよい。メータ62は、数値を直接表示するものに限らず、指針により数値を示すものでもよい。
【0018】
図1に戻る。無人移動体30は、例えば、ドローンである無人飛行体である。取得装置10が設置された場所に応じて、無人移動体30は、無人走行体、船型ロボット、水中ロボットなどであってもよい。無人移動体30は、操縦者により無線で遠隔操縦されてもよいし、自律操縦されてもよいし、両者を組み合わせてもよい。自律操縦の場合、無人移動体30は、複数の取得装置10の位置情報を予め保持しており、保持した位置情報と、GPSで導出される自身の位置情報と、図示しないカメラで撮影された周囲の画像などにもとづいて、周知の技術を用いて自律的に移動する。
【0019】
無人移動体30は、複数のメータ62を検針するとき、それぞれのメータ62の取得装置10の位置に順番に移動して、それぞれの取得装置10から情報を収集する。無人移動体30は、情報収集装置ともよべる。無人移動体30は、対象の取得装置10に接近するか、または、取得装置10の筐体24の上面24aに着地して、取得装置10に対してワイヤレス給電を行い、給電された電力を用いて取得装置10がメータ62の表示部64の画像から取得した水の使用量のデータを取得装置10から受信し、受信したデータを記憶する。データを受信した無人移動体30は、離陸し、次の取得装置10に向かって移動する。
【0020】
取得装置10は、筐体24の上面に配置されたマーク26を有する。マーク26は、無人移動体30が受電部12に対する位置を調整するためのものであり、任意の形状でよく、例えば数cm角の正方形であってよい。
【0021】
無人移動体30は、取得装置10に接近または着地するとき、カメラで撮影された取得装置10のマーク26の画像を基準として受電部12に対する位置を調整する。たとえば、無人移動体30は、撮影した画像内のマーク26の画素数と位置を導出し、マーク26の画素数により取得装置10までの距離を導出し、マーク26の画像内の位置により平面内の位置ずれを導出できる。これにより、無人移動体30と受電部12の位置関係を調整できる。無人移動体30は、撮影した画像内のマーク26に基づいて取得装置10までの距離を導出すればよく、明るさ、カラー、ボケ形状など、画素数(画像サイズ)以外の情報を用いて距離を導出してもよい。
【0022】
無人移動体30は、予め定められた複数の取得装置10からデータを収集した後、操縦者または作業者が待機する基地などの所定の場所に移動する。所定の場所において、操縦者または作業者は、無人移動体30に記憶された数値データを取得する。
【0023】
図4は、図1の情報収集システム1の機能構成を示す。取得装置10は、受電部12、蓄電部14、電源部16、センサ18、CPU20および送信部22を有する。無人移動体30は、制御部32、バッテリ34、スイッチ部36、送電部38、受信部40、CPU42および記憶部44を有する。なお、無人移動体30は、無人移動体30自体の駆動用バッテリと、情報収集システム1への給電用バッテリとを、バッテリ34で共用してもよいし、異なるバッテリとして保持してもよい。
【0024】
無人移動体30において、制御部32は、周知の技術を用いてモータ(図示せず)などの駆動を制御し、無人移動体30の移動を制御する。バッテリ34は、制御部32、受信部40、CPU42、記憶部44、モータなどに電力を供給する。バッテリ34は、スイッチ部36が導通状態であるときに送電部38に電力を供給する。バッテリ34は、スイッチ部36が非導通状態であるときに送電部38への電力供給を遮断する。スイッチ部36は、たとえば電子スイッチであり、CPU42の制御に応じて、導通状態または非導通状態に切り替わる。CPU42は、無人移動体30と取得装置10が所定の位置関係になった場合、または、操縦者から無線により指示があった場合、スイッチ部36を導通させる。
【0025】
送電部38は、バッテリ34から供給された電力を無線で送電する。無線送電の規格は特に限定されず、例えばQi(チー)規格に準拠していてもよい。Qi規格の場合、送電部38と受電部12の距離と平面方向の位置ずれは数cm以下になる必要があるため、無人移動体30は、送電部38と受電部12が向かい合うように取得装置10上に着地することが好ましい。送電部38と受電部12の位置関係を送電可能な位置関係に保つことができれば、着地しなくてもよい。なお、無線送電の方式は、電磁誘導、磁界共振、電磁波放射でもよい。電磁波放射方式は、例えばマイクロ波給電である。
【0026】
取得装置10において、受電部12は、送電部38から無線で送信された電力を受電し、受電した電力を蓄電部14に供給する。蓄電部14は、例えばコンデンサまたはバッテリであり、受電部12から供給された電力を蓄電する。電源部16は、蓄電部14に蓄電された電力(Wh)が所定のしきい値に達した場合、蓄電部14に蓄電された電力をセンサ18、CPU20、送信部22に供給する。センサ18、CPU20、送信部22は、受電部12で受電された電力で動作する。しきい値は、センサ18、CPU20、送信部22が後述する一連の処理を実行できるよう、実験やシミュレーションにより適宜定めることができる。電源部16は、送電部38が電力の送信を開始してから所定時間(例えば1分)が経過したら充電を完了させてもよい。蓄電部14は、後述する一連の処理を実行できる所定の容量(Wh)を備えており、電源部16は、蓄電部14が満充電となった場合に充電を完了させてもよい。
【0027】
CPU20は、電力が供給されると起動し、充電完了を示す情報を送信部22に送信させる。送信部22は、充電完了を示す情報を無人移動体30に送信する。通信規格は特に限定されないが、Bluetooth(登録商標)またはBluetooth Low Energy(以下、BLEと呼ぶ)などの近距離無線通信規格であってよい。
【0028】
無人移動体30において、受信部40は、送信部22から送信された充電完了を示す情報を受信し、その情報をCPU42に出力する。CPU42は、充電完了を示す情報が供給されると、スイッチ部36を非導通状態に制御し、送電を停止する。これにより、バッテリ34の電力を節約できる。
【0029】
取得装置10において、CPU20は、起動すると、イメージセンサであるセンサ18に画像を取得させる。センサ18は、メータ62の表示部64に向かい合って配置されている。センサ18は、CPU20の指示に応じて、メータ62の表示部64の画像を取得し、取得した画像のデータをCPU20に供給する。この画像は、検出情報に相当する。
【0030】
CPU20は、センサ18から供給された画像データをもとに画像解析を行い、メータ62の表示部64に表示された数値を特定する。数値の特定は、周知の技術を用いて実行でき、例えば、機械学習により生成された文字認識モデルを用いて特定してもよい。この場合、取得装置10はエッジAI(Artificial Intelligence)カメラとも呼べる。
【0031】
CPU20は、特定した数値データを送信部22に送信させる。CPU20は、送信対象の数値データに対して、その数値を取得したメータ62を識別するための識別情報を添付する。送信部22は、識別情報が添付された数値データを無人移動体30に送信する。数値データを送信するので、BLEのような小容量データの通信に適した低消費電力の通信規格を利用できる。
【0032】
CPU20のこれらの処理は、CPU20上で動作するプログラムにより実行される。CPU20は、処理部に相当する。
【0033】
無人移動体30において、受信部40は、送信部22から送信された数値データを受信し、その数値データをCPU42に出力する。CPU42は、受信部40から出力された数値データを記憶部44に記憶させる。CPU42のこれらの処理は、CPU42上で動作するプログラムにより実行される。
【0034】
次に、以上の構成による取得装置10の全体的な動作を説明する。図5は、図1の取得装置10の処理を示すフローチャートである。この処理は、無人移動体30が取得装置10に近づくか着地して、送電を開始すると実行される。
【0035】
受電部12は、無線で受電を開始し(S12)、しきい値以上の電力が確保されなければ(S12のN)、S12に戻り、しきい値以上の電力が確保されれば(S12のY)、電源部16は、センサ18などの周辺回路に電源を供給する(S14)。送信部22は、無人移動体30に充電完了を通知し(S16)、センサ18はメータ62の表示部64の画像を取得し(S18)、CPU20は、画像におけるメータ62の数値の特定を開始する(S20)。特定が完了しなければ(S22のN)、S22に戻り、特定が完了すれば(S22のY)、送信部22は、無人移動体30に数値のデータを送信し(S24)、処理を終了する。
【0036】
本実施の形態によれば、無人移動体30から無線で送信された電力により、取得装置10がメータ62の画像を取得し、その画像から導出されたメータ62が示す数値のデータを無人移動体30に送信するので、電力供給設備とネットワーク設備の少なくとも一方が存在しないまたは脆弱な環境においてメータ62の値を遠隔で取得できる。
【0037】
また、既存のメータ62に取得装置10を取り付ければよいため、メータ62を交換する必要がなく、各種のメータに容易に対応することができる。電力供給設備とネットワーク設備を新たに設置する必要もない。よって、情報収集システム1の導入が容易であり、情報収集システム1を低コスト化することもできる。
【0038】
また、複数のメータ62が離れて点在する過疎地などであっても、検針の度に人がメータ62を巡回して値を読み取る時間と労力を低減でき、コストも低減できる。人がメータ62の値を読み取る場合、人によっては小数点以下を読まない場合などのばらつきが生じ得るため、データ全体としての精度が低下する可能性もあるが、実施の形態では取得された値の精度が一定となることから、データ全体としての精度を高めやすい。
【0039】
ここで、比較例として、無人移動体のカメラで既存の水道メータなどの表示部の数値を読み取る技術が考えられるが、メータの表示部に水滴や汚れが付かないように蓋が設けられている場合、無人移動体が蓋を開くことは容易ではない。予め蓋を開いておく場合や蓋がない場合には、水滴や汚れで数値の読み取りが困難になり得る。これに対して実施の形態では、筐体24と固定部材28によりメータ62の表示部64が覆われており、表示部64に水滴や汚れが付きにくいため、表示部64の数値を正確に取得しやすい。
【0040】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、取得装置10が海上に浮くブイに取り付けられ、海水の水素イオン濃度(pH)などの検出情報を取得することが第1の実施の形態と異なる。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0041】
図6は、第2の実施の形態の情報収集システム1の概略構成を示す斜視図である。取得装置10は、海上に浮くブイ70の上に取り付けられている。センサ18は、ブイ70の周囲の環境情報を検知するセンサであり、例えば、pHセンサ、塩分濃度センサ、温度センサ、湿度センサ、風速センサなどの少なくともいずれかを含む。図示する例では、センサ18は、海水に関する情報を取得するセンサであり、筐体24から吊されて海中に位置する。空気の温度、湿度、風速などを検知するセンサ18の場合、空中に位置する。複数のブイ70のそれぞれに取得装置10が設置され、情報収集システム1は複数の取得装置10を備えるが、図6では複数の取得装置10のうち1台の取得装置10を示す。
【0042】
無人移動体30は、それぞれの取得装置10の位置に順番に移動して、それぞれの取得装置10から情報を収集する。
【0043】
無人移動体30は、第1の実施の形態の構成に加え、収容部50と、吊り下げ部材52と、昇降駆動部54とをさらに有する。
【0044】
収容部50は、送電部38を収容する。吊り下げ部材52は、可撓性を有するワイヤまたは鎖などの索状体であり、収容部50を吊り下げる。昇降駆動部54は、吊り下げ部材52を巻き取ることで収容部50を上昇させ、吊り下げ部材52を繰り出すことで収容部50を下降させる。図示しないが、収容部50内の送電部38に電力を供給するためのケーブルが、吊り下げ部材52に沿って無人移動体30の本体に接続される。
【0045】
図7は、図6の収容部50の概略的な下面図である。無人移動体30は、収容部50の下面50aに配置された3つの電磁石54a,54b,54cを有する。電磁石54a,54b,54cは、送電部38に重ならず、送電部38の周囲に配置される。電磁石54a,54b,54cの数は特に限定されないが、複数であることが好ましい。図示しないが、電磁石54a,54b,54cに電力を供給するためのケーブルが、吊り下げ部材52に沿って無人移動体30の本体に接続される。
【0046】
図8は、図6の取得装置10の概略的な上面図である。取得装置10は、電磁石54a,54b,54cと同数の3つの磁性部材80a,80b,80cをさらに備える。磁性部材80a,80b,80cは、受電部12に重ならず、受電部12の周囲に配置される。それぞれの磁性部材80a,80b,80cは、取得装置10の上面24aに収容部50が載り送電部38と受電部12が向かい合ったときに、電磁石54a,54b,54cのうち対応するものに向かい合う位置に配置されている。電磁石54aは磁性部材80aに向かい合い、電磁石54bは磁性部材80bに向かい合い、電磁石54cは磁性部材80cに向かい合う。磁性部材80a,80b,80cは、磁石または磁性体である。
【0047】
図9は、図6の情報収集システム1において収容部50を下降させて取得装置10の上に載せた状態を示す斜視図である。無人移動体30のCPU42は、無人移動体30と取得装置10が図6に示すような所定の位置関係になった場合、または、操縦者から無線により指示があった場合、昇降駆動部54を制御して収容部50を下降させ、バッテリ34から電磁石54a,54b,54cに電力を供給して磁力を発生させ、収容部50を取得装置10の上面24aに載せる。
【0048】
電磁石54a,54b,54cと磁性部材80a,80b,80cとの間に磁気吸引力が働くため、電磁石54aと磁性部材80aが引き寄せられ、電磁石54bと磁性部材80bが引き寄せられ、電磁石54cと磁性部材80cが引き寄せられやすくなる。そのため、送電部38と受電部12が正確に重なりやすくなる。
【0049】
CPU42は、収容部50が取得装置10の上面24aに載った場合、または、操縦者から無線により指示があった場合、昇降駆動部54を停止させる。吊り下げ部材52をたるませた状態で昇降駆動部54を停止させることが好ましい。
【0050】
ブイ70は風または波の影響で揺れ動き、無人移動体30も風の影響を受けるため、無人移動体30が取得装置10に着地することは困難である。このような場合であっても、送電部38と受電部12の位置関係を送電可能な位置関係に保つように送電部38を受電部12に重ねて固定できるので、安定して給電できる。無人移動体30と取得装置10の少なくとも一方が揺れ動いても、たるんでいる吊り下げ部材52と磁気吸引力により、送電部38と受電部12の位置関係が変化しないようにできる。
【0051】
よって、電力供給設備とネットワーク設備が存在しない海上において環境情報を遠隔で取得できる。
【0052】
無人移動体30が取得装置10からデータを受信した場合、CPU42は、電磁石54a,54b,54cへの電力供給を停止し、昇降駆動部54に収容部50を上昇させる。
【0053】
なお、無人移動体30の受信部40も収容部50に収容してもよい。
【0054】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0055】
例えば、第1の実施の形態では、取得装置10が画像をもとに数値データを取得し、その数値データを無人移動体30に送信したが、取得装置10は、センサ18で取得された画像データに識別情報を添付して無人移動体30に送信してもよい。この場合、画像データを通信可能な無線通信規格を採用すればよい。無人移動体30のCPU42は、無人移動体30が飛行している間に画像解析して数値データを取得してもよい。あるいは、無人移動体30が基地などの所定の場所に到着してから、コンピュータに画像データを移し、そのコンピュータで画像解析して数値データを取得してもよいし、コンピュータで画像解析せず、表示された複数の画像から操縦者または作業者が数値を読み取ってもよい。この変形例では、取得装置10のCPU20の処理を簡素化でき、取得装置10を低コスト化できる。
【0056】
第1の実施の形態において、センサ18はメータ62の画像を取得せず、既存の機械式のメータ62を改造するか置き換えることでメータ62にセンサ18を組み込み、センサ18がメータ62の値を検出情報として直接取得してもよい。この変形例では、取得装置10の構成の自由度を向上できる。取得装置10のCPU20の処理を簡素化することもできる。
【0057】
第1の実施の形態において、第2の実施の形態の無人移動体30を利用してもよい。この変形例では、風の影響で無人移動体30が取得装置10に着地できない場合であっても、安定して給電できる。
【0058】
第1の実施の形態において、センサ18として、イメージセンサに替えて第2の実施の形態の周囲の環境情報を検知する温度センサ、湿度センサなどを用いてもよい。取得装置10は、百葉箱などが設置された気象観測地点に設置されてもよい。この変形例では、電力供給設備とネットワーク設備の少なくとも一方が存在しないまたは脆弱な環境において、環境情報を遠隔で取得できる。
【0059】
送電部38と受電部12が、マイクロ波などを用いることでQi規格より長距離の例えば数メートル程度で給電できるように構成されていれば、無人移動体30は、給電可能な距離まで取得装置10に近づいた状態で送電およびデータの受信を実行してもよい。この場合、第2の実施の形態においても第1の実施の形態の無人移動体30を利用してよい。この変形例では、無人移動体30の着地や高精度な位置制御が不要であるため、より短時間でデータを収集できる。
【符号の説明】
【0060】
1…情報収集システム、10…取得装置、12…受電部、18…センサ、22…送信部、24…筐体、26…マーク、28…固定部材、30…無人移動体、38…送電部、40…受信部、50…収容部、50a…下面、52…部材、54a,54b,54c…電磁石、62…メータ、64…表示部、80a,80b,80c…磁性部材。
図1
図2
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図9