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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】プリフォームおよびプラスチックボトル
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
B65D1/02 221
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020164178
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022056259
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 量哉
(72)【発明者】
【氏名】関根 章智
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-049779(JP,A)
【文献】特開2015-199273(JP,A)
【文献】特開2016-150516(JP,A)
【文献】特開2009-045876(JP,A)
【文献】特開2017-007264(JP,A)
【文献】特開2013-078958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0304169(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101203431(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加温プラスチックボトル用のプリフォームにおいて、
サポートリングを有する口部と、
前記口部に連結された胴部と、を備え、
前記胴部は、前記口部側のサポートリング下部と、胴中部と、前記サポートリング下部と前記胴中部との間に設けられた接続部と、前記胴中部に連結された底部を有し、
前記胴部の樹脂重量が、9.4g以上、13.5g以下であって、
前記接続部は、前記サポートリング下部側から前記胴中部側に向けて肉厚が大きくなるとともに、前記接続部の内径が前記口部側から前記胴中部側に向けて徐々に縮径する形状からなり、
前記胴中部の外径をD1とし、前記口部の内径をD2としたとき、
1>D2という関係を満たし、
前記胴中部の外径D1が24mm以上、26mm以下であり、
前記サポートリング下部の肉厚をT1とし、前記胴中部の肉厚をT2としたとき、
前記胴中部の肉厚T2は、2.7mm以上3.8mm以下であり、
2-T1の値が0.6mm以上1.2mm以下であり、
前記胴部の長さをL は、40mm以上、56mm以下であることを特徴とするプリフォーム。
【請求項2】
加温プラスチックボトルの満注容量に対する前記プリフォームの胴部の樹脂重量の値が、0.028g/ml以上0.077g/ml以下であることを特徴とする請求項1に記載のプリフォーム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリフォームを用いて作製された加温プラスチックボトルであって、
サポートリングを有する口部と、前記口部に連結された本体部と、を備え、
前記本体部は、肩部と、胴部と、底部を有し、
前記口部は、サポートリングと、首部を有し、
前記首部と前記肩部の境界T4の肉厚が0.5mm以下であることを特徴とするプラスチックボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリフォームおよびプラスチックボトルに関する。とりわけ加温用のブロー成形プラスチックボトルを成形するためのプリフォーム形状に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、射出成形またはその他の成形法により作製されたPET等からなるプリフォーム(予備成形体)を二軸延伸ブロー成形することにより、プラスチックボトルを製造することが行なわれている。このようなプラスチックボトルには各種のものが存在するが、例えば、ホットウォーマーまたは自動販売機において加温される飲料等が充填されるプラスチックボトルが挙げられる。
【0003】
このような飲料等を収容するプラスチックボトルは、近年、ボトルに使用されるプラスチック材料の使用量を減らし、軽量化することが求められている。
【0004】
しかしながら、プラスチックボトルの軽量化に伴い、プラスチックボトルが加温されて内部圧力が上昇した場合、プラスチックボトルの内圧が増加して膨張してプラスチックボトルが変形し、ボトルの外観を損ねたり、ボトルの起立性が維持できなくなるという問題が生じる。このため、一般にプラスチックボトルにおいては、ボトルの変形に対する耐久性を高めることが求められている。また、プリフォームをブロー成形してプラスチックボトルを作製する際に、ブロー成形性が良好であることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-199521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、加温適性があるプラスチックボトルをブロー成形する際の成形性を良好にすることが可能なプリフォームおよびプラスチックボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、プラスチックボトル用のプリフォームにおいて、サポートリングを有する口部と、前記口部に連結された胴部と、を備え、前記胴部は、前記口部側のサポートリング下部と、胴中部と、前記サポートリング下部と前記胴中部との間に設けられた接続部と、前記胴中部に連結された底部を有し、前記胴部の樹脂重量が、9.4g以上、13.5g以下であって、前記接続部は、前記サポートリング下部側から前記胴中部側に向けて肉厚が大きくなるとともに、前記接続部の内径が前記口部側から前記胴中部側に向けて徐々に縮径する形状からなり、前記胴中部の外径をD1とし、前記口部の内径をD2としたとき、 D1>D2という関係を満たし、前記胴中部の外径D1が24mm以上、26mm以下であることを特徴とする。
【0008】
また、本開示は、上記のプリフォームを用いて作製されたプラスチックボトルであって、サポートリングを有する口部と、前記口部に連結された本体部と、を備え、前記本体部は、肩部と、胴部と、底部を有し、前記口部は、サポートリングと、首部を有し、前記首部の外側1.5mm部分の前記肩部(以下、首部と肩部の境界と呼ぶ)の肉厚T4が0.5mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、加温適性がある軽量プラスチックボトルをブロー成形する際の成形性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の一実施の形態によるプリフォームを示す断面図。
図2図2は、本開示の一実施の形態によるプリフォームを示す断面図。
図3図3は、本開示の一実施の形態によるプリフォームにより作製されるプラスチックボトルを示す正面図。
図4図4は、図3の首部45と肩部42aの境界48部分の拡大図。
図5図5は、プリフォームが加熱されている状態を示す概略断面図。
図6図6は、実施例3における成形後のプラスチックボトルを示す部分断面写真。
図7図7は、比較例2における成形後のプラスチックボトルを示す部分断面写真。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。図1乃至図3は本開示の一実施の形態を示す図である。
【0012】
まず、図1および図2により本実施の形態によるプリフォームの概要について説明する。なお、本明細書中、「上」および「下」とは、それぞれプリフォーム10の底部30またはプラスチックボトル40の底部42cを鉛直方向下方に向けた状態(図1図3)における上方および下方のことをいう。
【0013】
図1に示すプラスチックボトル用プリフォーム10は、開口部15を有する口部11と、口部11に連結された胴部20を備えている。
【0014】
このうち口部11は、円筒状の口部本体12と、口部本体12の外周に設けられたねじ部13と、ねじ部13の下方に設けられたサポートリング14とを有している。ねじ部13は、プリフォーム10を二軸延伸ブロー成形してプラスチックボトル40(図3)を作製した後、図示しないキャップを螺合するためのものである。また、口部本体の内径は長さD2を有している。
【0015】
また、サポートリング14は、口部11の下部に設けられており、全周にわたって円環状に突設されている。サポートリング14の下方には、胴部20が連結されている。
【0016】
胴部20は、サポートリング14側のサポートリング下部21と、底部30側の胴中部23と、サポートリング下部21と胴中部23との間に設けられ、サポートリング下部21側から胴中部23側とをつなぐ接続部22と、胴中部23に連結された底部30を有し、を有している。
【0017】
サポートリング下部21は、サポートリング14の下部に連結されており、長さL2を有している。サポートリング下部21は、全体として略円筒形状であり、外径D5と内径D6、肉厚T1を有している。
サポートリング下部21の内径D6は、上述した口部本体12の内径D2と略同一である。なお、プリフォーム10を射出成形により作製するとき、金型から抜き取りやすくするための抜き勾配を設けるため、内径D6は、内径D2よりも若干細くなるように作られていても良い。
【0018】
接続部22は、サポートリング下部21側から胴中部23側に向けて肉厚が大きくなっている。接続部22の内径は、口部11側から胴中部23側に向けて徐々に縮径する形状からなる。接続部22は、長さL3を有している。
【0019】
胴中部23は、接続部22の下部に連結されている。胴中部23は、全体として略円筒形状である。胴中部23は、長さL4を有している。また、胴中部23における肉厚をT2は、外径D1における肉厚とする。
【0020】
胴中部23の外径D1は、口部本体の内径D2より大きく、胴中部23の外径D1が24mm以上、26mm以下である。胴中部23の外径D1は上記の範囲内であることにより、プリフォームを軽量化できると共に、ブロー成形時にプリフォーム10の底部30付近が放射方向へ適切に延伸され、すなわち底部を適切に延伸することが出来るため、加温性能に優れるボトルを得ることができる。
【0021】
胴中部23の外径D1が24mm未満であると、ブロー成形時にプリフォーム10の底部30付近が放射方向への延伸が不十分となり、ボトルの加温性能が劣る。一方、胴中部23の外径D1が26mmを越えると、樹脂体積が増えてしまい、プリフォームの軽量化することが難しくなるおそれがある。
【0022】
また、口部本体の内径D2が20.6mm以上、21.74mm以下であることが好ましい。
【0023】
胴中部23の肉厚T2は、胴中部23の上下方向にわたって略均一である。胴中部23の厚みT2は、具体的には、2.7mm以上3.8mm以下であることが好ましい。上記の範囲内であると、プリフォームを軽量化できると共に、ブロー成形時にプリフォーム10が適切に延伸することができる。
【0024】
胴中部23の肉厚T2が、2.7mm未満であると、ブロー成形時に胴中部が温められすぎて、延伸されやすくなり、結果として、プラスチックボトルの胴部の肉厚が薄くなってしまう。
【0025】
一方、胴中部23の肉厚T2が、3.8mmを越えると、プリフォームの軽量化することが難しくなるおそれがあり、また、プリフォーム10を射出成形により作製する際、溶融した合成樹脂の熱が射出成形金型に伝達するまでの距離が長くなるので、冷却時間が長くなり、成形サイクルタイムが長くなり、製造効率が低下するおそれがある。
【0026】
この場合、サポートリング下部21の肉厚をT1と、胴中部23の肉厚をT2との間には、T2-T1の値が0.6mm以上1.2mm以下という関係になることが好ましい。T2-T1の値が上記の範囲内にあることにより、プリフォームを軽量化できると共に、ブロー成形時にプリフォーム10が適切に延伸することができる。
【0027】
2-T1の値が0.6mmより小さいと、ブロー成形時にサポートリング下部21や接続部22が長手方向延伸されにくくなり、プラスチックボトルの首部45と肩部42aの境界48の肉厚が厚くなりすぎる。一方、T2-T1の値が1.2mmを越えると、ブロー成形時にサポートリング下部21や接続部22が延伸されすぎてしまい、結果として、プラスチックボトルの肩部42aの肉厚が薄くなってしまう。
【0028】
また、底部30は、胴中部23の下部に位置しており、全体として略半球形状である。また、底部30の最下部の厚みT3は、胴中部23の厚みT2よりも小さい方が好ましい。底部30の最下部の厚みT3は、胴中部23の厚みT2の60%以上、90%以下であることがプリフォーム10の製造及びブロー成形性の面で、好ましい。なお底部30は図1では略半球形状であるが、たとえば円錐形状であったり、円柱状であったり、その他の形状であっても良い。
【0029】
また、胴部20の長さL1は、サポートリング14の底面と底部30の先端部との間の距離であり、40mm以上56mm以下とすることが好ましい。L1は、上記の範囲内であると、ブロー成形時にプリフォーム10が適切に延伸され、加温性能に優れるボトルを得ることができる。
【0030】
胴部20の長さL1が40mm未満であると、プリフォーム10をブロー成形機に投入する際、プリフォーム10の上下方向を同じ方向に向けて整列することが困難となるおそれがある。
【0031】
一方、胴部20の長さL1が、56mmを越えると、プリフォームの軽量化することが難しくなるおそれがある。
【0032】
また、プラスチックボトル40の満注容量に対するプリフォーム10の胴部20の樹脂重量(プリフォーム10の胴部20の樹脂重量/プラスチックボトル40の満注容量)の値は、0.028g/ml以上0.077g/ml以下であることが好ましい。上記の範囲内であると、プリフォームを軽量化できると共に、ブロー成形時にプリフォーム10が適切に延伸され、加温性能に優れるボトルを得ることができる。
0.028g/ml未満であると、ブロー成形時にプリフォーム10が適切に延伸されないおそれがある。0.077g/mlを越えると、プリフォームの軽量化することが難しくなるおそれがある。
【0033】
なお、プリフォーム10の主材料としては熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)を使用することが好ましく、植物由来のバイオマス系プラスチック、例えばPLA(ポリ乳酸)を用いることも可能である。あるいは、上述した各種樹脂をブレンドした樹脂を用いても良い。PETにおいては、メカニカルリサイクル材やケミカルリサイクル材であっても良い。また植物由来原料を用いて製造したPETやPEF(ポリエチレンフラノエート)であっても良い。また、プリフォーム10は、2層以上の多層成形プリフォームとして形成することもできる。すなわち射出成形により、例えば、中間層をMXD6、MXD6+脂肪酸塩、PGA(ポリグリコール酸)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)等のガスバリア性を有する樹脂(中間層)として3層以上からなるプリフォーム10として形成しても良い。
【0034】
次に、図3により、このようなプリフォーム10を二軸延伸ブロー成形することにより作製された、丸型のプラスチックボトルの一例について説明する。なお、上述したプリフォーム10を用いて作製されるプラスチックボトル40は、これに限定されない。
【0035】
図3において、プラスチックボトル40は、口部41と、口部41下方に設けられた本体部42とを備えている。さらに本体部42は、肩部42a、胴部42b、底部42cから構成されている。また口部41のサポートリング47下方と、肩部42aの上部の間には、首部45が形成されている。
【0036】
プラスチックボトル40の首部45はほぼ円筒形状でありサポートリング47の下方に向かってほぼ直線状に伸び、径が拡大して肩部42aとなる。なお、図4に示すように、首部45の外径から1.5mm外側に拡大した部分の肩部42a(首部45と肩部42aの境界48という)の位置の肉厚を肉厚T4とする。
【0037】
プラスチックボトル40の首部45と肩部42aの境界48の肉厚T4が0.5mm以下であることが好ましい。上記範囲内であることにより、従来よりボトルを軽量化できると共に、ボトルをブロー成形したときの後収縮による変形を小さくすることが出来る。
更に首部45と肩部42aの境界48の肉厚T4は0.15mm以上がより好ましい。
首部45と肩部42aの境界48の肉厚T4が0.5mmを越えると、ボトルを成形した後の収縮が大きくなり、ボトルの首部が傾いたり、ボトルの高さが低くなるおそれがある。境界48の肉厚T4が0.15mm未満であると、プラスチックボトル40の強度が弱くなるおそれがある。
【0038】
さらに口部41外周には、キャップを螺合するためのねじ部46(上述したプリフォーム10のねじ部13に対応する)が設けられ、口部41外周のうちねじ部46下方部分には、外方に突出する環状のサポートリング47(上述したプリフォーム10のサポートリング14に対応する)が設けられている。
【0039】
胴部42bは、略円筒状であり、周囲には複数の圧力吸収パネル43が設けられている。胴部42bの圧力吸収パネル43を有さない部分の水平断面は、略円形状である。さらに、肩部42aは、略半球形状であり、この肩部42aの水平断面は略円形状であり、その面積は、首部45側から胴部42b側へ向けて徐々に大きくなっている。
【0040】
このようなプラスチックボトル40は、容量(満柱容量)190ml~375mlのプラスチックボトルである。
【0041】
次に、このような構成からなるプラスチックボトルの製造方法について述べる。
【0042】
まず図1および図2に示すプリフォーム10を準備する。この場合、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂製ペレットを射出成形機に投入し、このペレットが射出成形機によって加熱溶融される。その後、ペレットは溶融プラスチックとなって、プリフォーム10に対応する内部形状を有する射出成形金型内に射出される。所定時間の経過後、射出成形金型内で溶融プラスチックが硬化し、プリフォーム10が形成される。その後、射出成形金型を分離し、射出成形金型内から図1および図2に示すプリフォーム10を取り出す。なお、プリフォーム10の製作は射出成形法に限定するものではなく、例えば圧縮成形法等の他の成形法であっても良い。
【0043】
次に、プリフォーム10は、加熱装置によって加熱される。このとき、プリフォーム10は、回転しながら、加熱装置によって周方向に均等に加熱される。この加熱工程におけるプリフォーム10の加熱温度は、例えば90℃~130℃としても良い。
【0044】
続いて、加熱装置によって加熱されたプリフォーム10は、ブロー成形金型に送られ、このブロー成形金型を用いてプラスチックボトル40が成形される。この場合、ブロー成形金型は互いに分割された一対の胴部金型と、底部金型とからなる。これらの金型内にプリフォーム10が装着される。次に図示しないストレッチロッドにてプリフォーム10が長手方向に伸ばされ、更にプリフォーム10内に空気が圧入され、プリフォーム10に対して二軸延伸ブロー成形が施される。
【0045】
このことにより、ブロー成形金型内でプリフォーム10からプラスチックボトル40が得られる。この間、胴部金型は20℃~75℃に温度調整され、底部金型は8℃~20℃に温度調整される。この際、ブロー成形金型内では、プリフォーム10が膨張され、ブロー成形金型の内面に対応する形状に賦形される。このようなブロー成形によって、図3に示すプラスチックボトル40が得られる。
【実施例
【0046】
次に、本実施の形態の具体的実施例を説明する。
【0047】
まず、以下に挙げる8種類のプリフォーム10(実施例1~実施例5、および比較例1~比較例3)を射出成形により作製した。各プリフォーム10の胴部20の樹脂重量、胴部20の長さL1、胴中部23の外径D1、胴中部の肉厚T2及び胴中部の肉厚T2-サポートリング下部の肉厚T1の値は、それぞれ表1に示すとおりである。なお、各プリフォーム10の口部の形状は、従来一般的なPCO1810規格に対応するものを用いた。口部の内径D2が21.74mm、サポートリング下部21の外径D5が25.8mm、サポートリング下部21の肉厚T1が2.1mmであるものを用いた。
【0048】
(実施例1)
図1に示す本実施の形態によるプリフォーム10(実施例1)を作製した。このプリフォーム10(実施例1)において、胴部20の樹脂重量を12.6gとした。胴中部23の外径D1を25.1mm、胴中部の肉厚T2を3.3mm、胴部20の長さL1を47mmとした。胴中部の肉厚T2とサポートリング下部の肉厚T1 の差(T2-T1)を1.2mmという関係を満たしている。
【0049】
(実施例2)
胴中部の肉厚T2を2.9mm、胴部20の長さL1を51mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてプリフォーム10(実施例2)を作製した。胴中部の肉厚T2とサポートリング下部の肉厚T1の差(T2-T1)を0.8mmという関係を満たしている。
【0050】
(実施例3)
胴部20の樹脂重量を10.8g、胴中部の肉厚T2を2.9mm、胴部20の長さL1を44mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてプリフォーム10(実施例3)を作製した。胴中部の肉厚T2とサポートリング下部の肉厚T1の差(T2-T1)を0.8mmという関係を満たしている。
【0051】
(実施例4)
胴部20の樹脂重量を10.0g、胴中部23の外径D1を24.0mm、胴中部の肉厚T2を3.2mm、胴部20の長さL1を40mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてプリフォーム10(実施例4)を作製した。胴中部の肉厚T2とサポートリング下部の肉厚T1の差(T2-T1)を1.1mmという関係を満たしている。
【0052】
(実施例5)
胴部20の樹脂重量を13.5g、胴中部23の外径D1を26.0mm、胴中部の肉厚T2を2.7mm、胴部20の長さL1を56mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてプリフォーム10(実施例5)を作製した。胴中部の肉厚T2とサポートリング下部の肉厚T1の差(T2-T1)を0.6mmという関係を満たしている。
【0053】
(比較例1)
比較例として、胴部20の樹脂重量を13.2g、胴中部23の外径D1を22.2mm、胴中部の肉厚T2を3.0mm、胴部20の長さL1を59mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてプリフォーム(比較例1)を作製した。胴中部の肉厚T2とサポートリング下部の肉厚T1の差(T2-T1)を0.9mmという関係を満たしている。
【0054】
(比較例2)
比較例として、胴部20の樹脂重量を10.8g、胴中部の肉厚T2を2.6mm、胴部20の長さL1を47mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてプリフォーム(比較例2)を作製した。胴中部の肉厚T2とサポートリング下部の肉厚T1の差(T2-T1)は0.5mmであった。
【0055】
(比較例3)
比較例として、胴部20の樹脂重量を16.4g、胴中部23の外径D1を22.2mm、胴中部の肉厚T2を3.5mm、胴部20の長さL1を64mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてプリフォーム(比較例3)を作製した。胴中部の肉厚T2とサポートリング下部の肉厚T1の差(T2-T1)は1.4mmであった。
【0056】
以下の結果をまとめて表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
〔軽量化〕
実施例1~実施例5、比較例1~比較例3のそれぞれのプリフォーム10の各々について軽量化の評価がなされた。表1には、各プリフォーム10の軽量化の評価の結果が示され、良:13.5g未満、不可:13.5g以上で表記されている。
【0059】
〔ブロー成形性〕
次に、各プリフォーム10について、ブロー成形性を評価した。具体的には、6種類のプリフォーム10(実施例1~実施例5、および比較例1~比較例3)をブロー成形することにより、内容量280ml用円筒形状のプラスチックボトル40(図3参照)を作製した。このプラスチックボトル40は、高さが132mm、最大胴径が66mm、満注容量295mlであった。
【0060】
この場合、1個取りのブロー成形機(ドイツ国、KHS Corpoplast社製、LB01)を使用した。各プリフォーム10をブロー成形機に設けられた複数の棒状のヒーターL1~L4で114℃にて加熱した。なおヒーターL1~L4は、図5に示すようにプリフォーム10の高さ方向に沿って間隔を空けて配置されていた。ヒーターL1~L5の出力は、3500Wである。
【0061】
上述した実施例1~5および比較例1~3に係るプリフォームについて、ブロー成形性の結果をまとめると、表2のとおりであった。
【0062】
【表2】
【0063】
比較例2のプリフォームのサポートリング下の部分(丸で囲った部分)が厚肉となった(図7参照)。これは、比較例2のプリフォームのサポートリング下の部分が軸方向に延伸しにくかったことが原因であった。比較例2以外はブロー成形性の評価基準を満たし、実施例1~実施例5及び比較例1~比較例3は、良好な結果となった(実施例3の図6参照)。
【0064】
〔加温耐性〕
実施例1~実施例5、および比較例1~比較例3について、内容液として水を充填した後密栓した後、それぞれ75℃の湯に容器の底面から首部45の位置まで浸漬し、ボトルの起立姿勢を保持できなくなるまでの時間を計測した。このときの計測結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
上述をまとめると、実施例1~実施例5は、胴中部23の外径をD1と、口部11の内径をD2との間で、D1>D2という関係を満たし、胴中部の外径D1が24mm以上、26mm以下の範囲内にあり、ブロー成形性および加温適性が良好な結果となったと言えた。また、胴中部の肉厚T2とサポートリング下部の肉厚T1の差(T2-T1)が0.6mm以上、1.2mm以下であるため、ボトルの首部と肩部のブロー成形性が良好な結果となった。
【0067】
〔ボトル高さ〕
実施例3および比較例2のプラスチックボトル40の高さを計測した。このときの計測結果を表4に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
実施例3プラスチックボトル40については、首部45と肩部42aの境界48の肉厚T4が0.5mm以下の範囲内にあった。比較例2は、首部45と肩部42aの境界48の肉厚T4が0.5mmより厚いため、実施例3と比べて成形後の収縮が大きく、ボトル高さが低くなった。
【符号の説明】
【0070】
10 プリフォーム
11、41 口部
12 口部本体
13 ねじ部
14、47 サポートリング
15 開口部
20 胴部
21 サポートリング下部
22 接続部
23 胴中部
30 底部
40 プラスチックボトル
42 本体部
42a 肩部
42b 胴部
42c 底部
45 首部
48 首部と肩部の境界
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7