(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】蓄電モジュール、バスバーおよび蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 11/76 20130101AFI20241001BHJP
H01M 50/543 20210101ALI20241001BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20241001BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20241001BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20241001BHJP
H01G 9/048 20060101ALI20241001BHJP
H01G 9/12 20060101ALI20241001BHJP
H01G 11/14 20130101ALI20241001BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20241001BHJP
【FI】
H01G11/76
H01M50/543
H01M50/20
H01M50/50
H01G9/00 030
H01G9/048 Z
H01G9/12 Z
H01G11/14
H01G11/10
(21)【出願番号】P 2020164904
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 道広
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】黒木 隆史
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-331671(JP,A)
【文献】特開2017-216095(JP,A)
【文献】特開2013-191337(JP,A)
【文献】特開2018-152238(JP,A)
【文献】実開昭50-128642(JP,U)
【文献】実開平06-062532(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/76
H01M 50/543
H01M 50/20
H01M 50/50
H01G 9/00
H01G 9/048
H01G 9/12
H01G 11/14
H01G 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部圧力の上昇により陽極側または陰極側の少なくとも一方の端子が変位する複数の蓄電セルと、
複数の前記蓄電セルの端子同士を連結させており、一方の前記蓄電セルの端子と接続する第1の接続部と、他方の前記蓄電セルの
変位しない端子と接続する第2の接続部と、
前記第1の接続部からの距離よりも前記第2の接続部に近い位置に形成され、前記第1の接続部と接続された前記蓄電セルの前記端子の変位に応じて接続部同士を変動可能に支持する変動支持部を含むバスバーと、
を備えることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項2】
前記バスバーは、前記変動支持部が前記第2の接続部との接続を維持させるとともに前記蓄電セルの内部圧力の作用方向に向けて前記第1の接続部を回動させることを特徴とする請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
2以上の蓄電セルの端子同士を連結させるバスバーにおいて、
一方の前記蓄電セルの端子と接続する第1の接続部と、
他方の前記蓄電セルの
変位しない端子と接続する第2の接続部と、
前記第1の接続部からの距離よりも前記第2の接続部に近い位置に形成され、前記第1の接続部と接続された前記蓄電セルの前記端子の変位に応じて接続部同士を変動可能に支持する変動支持部と、
を備えることを特徴とするバスバー。
【請求項4】
2以上の蓄電セルの端子同士を接続させるバスバーを備えた蓄電モジュールの製造方法であって、
内部圧力の上昇により陽極側または陰極側の少なくとも一方の端子が変位する複数の蓄電セルうち、一方の前記蓄電セルの端子を
、第1の接続部と第2の接続部と前記第1の接続部からの距離よりも前記第2の接続部に近い位置に形成された変動支持部とを含む前記バスバーの
前記第1の接続部に接続する工程と、
前記第1の接続部と接続された前記蓄電セルの前記端子の変位に応じて接続部同士を変動可能に支持する
前記変動支持部を介して形成されている
前記第2の接続部に他方の前記蓄電セルの端子を接続する工程と、
を含むことを特長とする蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコンデンサなどの蓄電デバイスを接続する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層コンデンサや電解コンデンサなどのコンデンサ、電池などの蓄電デバイスでは、複数個を直列、並列または直並列に接続することによって機能を増強して、用途に適した接続形態がとられる。コンデンサでは、たとえば直列化で定格電圧が高められ、並列化で静電容量が高められる。電池にあっても、接続形態によって必要な出力電圧や出力電流を得ることが行われている。このような蓄電デバイスの接続には、それぞれの蓄電デバイスの端子同士を連結するバスバーが用いられる。
【0003】
このような蓄電デバイスの連結に関し、複数の蓄電デバイスを隣接して配置し、蓄電デバイスの出力端子同士をバスバーで直列接続させたモジュールが知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気二重層コンデンサや電解コンデンサなどの蓄電セルは、筐体の開口部からの異物侵入を阻止するほか電解液の流出を阻止する封止部材により封止されている。この蓄電セルは、駆動時、電解液の化学反応でガスを発生するため、このガスが筐体に充満し、長時間使用で筐体内圧を上昇させる。
このような蓄電セルでは、たとえば異常電圧等の化学反応の増大により、筐体の許容容積を超えるガスが発生する場合がある。
蓄電セルには、このようなガス発生による内部圧力の上昇により、封止部材が筐体の開口部に向けて膨張するとともに、封止部材と接触する端子部品を筐体の開口部側に変位させるものがある。これにより端子部品は、開口部側へ変位することで、筐体内部の蓄電素子との接続を遮断できる。
しかしながら、蓄電モジュールでは、電気的に接続させる蓄電セルの端子同士をバスバーで連結させている。このようなバスバーは、たとえば外圧や振動などに対抗するために、剛性の高い部品が用いられる。バスバーに接続された端子部品は、他の蓄電セルの端子部品と一体化されるため、蓄電セルの異常により内圧が上昇した場合に、他の蓄電セルが支持部となりかつバスバーの剛性によって変位が阻止されてしまい、蓄電素子との接続を遮断できなくなるおそれがある。
【0006】
本発明の発明者は、蓄電セルの内部圧力上昇により変位する端子に対して、バスバーによる支持を解除できれば、蓄電セルの内部の異常圧力発生時に端子部品と蓄電素子の遮断を阻害させないとの知見を得た。
【0007】
斯かる課題について、特許文献1には開示や示唆はなく、この特許文献1に開示された構成では斯かる課題を解決することができない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、蓄電セルの異常が発生したときに、端子部品と蓄電素子との接続を容易に遮断させることで、蓄電モジュールの安全性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本開示の蓄電モジュールの一側面は、内部圧力の上昇により陽極側または陰極側の少なくとも一方の端子が変位する複数の蓄電セルと、複数の前記蓄電セルの端子同士を連結させており、一方の前記蓄電セルの端子と接続する第1の接続部と、他方の前記蓄電セルの変位しない端子と接続する第2の接続部と、前記第1の接続部からの距離よりも前記第2の接続部に近い位置に形成され、前記第1の接続部と接続された前記蓄電セルの前記端子の変位に応じて接続部同士を変動可能に支持する変動支持部を含むバスバーとを備える。
【0010】
上記蓄電モジュールにおいて、前記バスバーは、前記変動支持部が前記第2の接続部との接続を維持させるとともに前記蓄電セルの内部圧力の作用方向に向けて前記第1の接続部を回動させてよい。
【0011】
上記目的を達成するため、本開示のバスバーの一側面は、2以上の蓄電セルの端子同士を連結させるバスバーにおいて、一方の前記蓄電セルの端子と接続する第1の接続部と、他方の前記蓄電セルの変位しない端子と接続する第2の接続部と、前記第1の接続部からの距離よりも前記第2の接続部に近い位置に形成され、前記第1の接続部と接続された前記蓄電セルの前記端子の変位に応じて接続部同士を変動可能に支持する変動支持部とを備える。
【0012】
上記目的を達成するため、本開示の蓄電モジュールの製造方法の一側面は、2以上の蓄電セルの端子同士を接続させるバスバーを備えた蓄電モジュールの製造方法であって、内部圧力の上昇により陽極側または陰極側の少なくとも一方の端子が変位する複数の蓄電セルうち、一方の前記蓄電セルの端子を、第1の接続部と第2の接続部と前記第1の接続部からの距離よりも前記第2の接続部に近い位置に形成された変動支持部とを含む前記バスバーの前記第1の接続部に接続する工程と、前記第1の接続部と接続された前記蓄電セルの前記端子の変位に応じて接続部同士を変動可能に支持する前記変動支持部を介して形成されている前記第2の接続部に他方の前記蓄電セルの端子を接続する工程とを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) 筐体内部の圧力上昇に対し、蓄電セルに形成された端子と蓄電素子との遮断機能を正常に作動させることができる。
(2) バスバーにより複数の蓄電セルの電気的な接続を維持しつつ、内部圧力が上昇した蓄電セルの端子を変位可能にすることができる。
(3) 蓄電セルの端子に対する抵抗力を低減でき、内部圧力が上昇した蓄電セルの遮断機能の動作を阻害せず、筐体の破損などによる異常状態の発生を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る蓄電モジュールの構成例を示す図である。
【
図2】Aはバスバーの正面を示す一部断面図であり、Bはバスバーの平面図である。
【
図3】Aは蓄電モジュールの正常時の状態を示す図であり、Bは蓄電セルの異常発生時の蓄電モジュールの状態例を示す図である。
【
図5】Aは正常時の蓄電セルの内部状態を示す図であり、Bは遮断機構が動作したときの蓄電セルの内部状態を示す図である。
【
図7】実施例に係る蓄電モジュールの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔一実施形態〕
図1は、一実施形態に係る蓄電モジュールの構成例を示している。
図1に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されない。
この蓄電モジュール2は、たとえば
図1に示すように、第1の蓄電セル4-1および第2の蓄電セル4-2と、同方向に向けて配置された蓄電セル4-1の端部6-1および蓄電セル4-2の端部6-2を接続するバスバー8を備える。
蓄電セル4-1、4-2は、たとえば電気二重層コンデンサや電解コンデンサ、その他の蓄電デバイスで構成される。蓄電セル4-1、4-2は、たとえば円柱状に形成されており、それぞれの端部6-1、6-2に異なる極性の電極部を備えたアキシアル構造で構成されている。この蓄電セル4-1、4-2は、たとえば端部6-1が陽極部であり、端部6-2が陰極部である。蓄電セル4-1、4-2は同一構成であってもよく、または筐体の大きさや電気的特性の異なるデバイスであってもよい。
また、蓄電セル4-1、4-2は、電解液の化学反応によって生じる内部圧力の上昇にともなって、端部6-1に圧力Fが作用する。圧力Fは、蓄電セル4-1、4-2の筐体内部から端部6-1を外部に押上げる方向に作用する。
【0016】
バスバー8は、たとえば第1の蓄電セル4-1の端部6-1に接続する接続片8-1と第2の蓄電セル4-2の端部6-2に接続する接続片8-2を備えるとともに、これらの接続片8-1、8-2との間に接続片8-1、8-2を相対的に変動可能にする変動支持部12を備える。接続片8-1、8-2および変動支持部12は、金属材料などの導通部材で構成されている。接続片8-1は、本開示の第1の接続部の一例である。接続片8-2は、本開示の第2の接続部の一例である。
蓄電セル4-1、4-2は、それぞれバスバー8の接続片8-1、8-2に対して端部6-1、6-2から突出した接続端子16-1、16-2(
図2)と接触部10で接続される。接触部10には、たとえば接触した接続片8-1、8-2と接続端子16-1、16-2をレーザー溶接やスポット溶接などの溶接により一体化させてもよく、または接続端子16-1、16-2に形成したネジ山に対して図示しないナットなどを締結することで接続片8-1、8-2と一体化させてもよい。
これにより蓄電モジュール2は、蓄電セル4-1の陽極側の端部6-1と蓄電セル4-2の陰極側の端部6-2をバスバー8で直列に連結されている。
【0017】
<変動支持機能>
バスバー8は、蓄電セル4-1の端部6-1に圧力Fが作用すると、接触部10を通じて接続片8-1が圧力Fにより押圧される。このとき接続片8-2は、接合した蓄電セル4-2と固定状態が維持されている。
接続片8-1、8-2の間に形成された変動支持部12は、接続片8-2に対して接続片8-1を変動可能に支持する機能部の一例である。変動支持部12は、たとえば接続片8-1、8-2と同一部材で一体に形成されてもよく、または接続片8-1、8-2を一体化するための連結部材で構成されてもよい。これによりバスバー8は、たとえば接続片8-1が圧力Fを受けると、変動支持部12が変形し、この変動支持部12を中心軸として接続片8-1が回動する。変動支持部12は、たとえば蓄電セル内に生じる圧力Fが所定値を超えたときに変形可能な剛性をそなえてもよい。これにより、蓄電セル4-1内に生じるガスの圧力値の大きさに対する蓄電素子と端子との遮断機能の動作レベルを調整できる。
【0018】
<バスバー8について>
図2は、バスバーの構成例を示している。
バスバー8は、たとえば
図2のAに示すように、所定の厚さで平板状の本体部を備えており、この本体部の長辺方向の同一線上に2つの貫通孔18(
図2のB)を備えている。バスバー8は、銅板やアルミニウム板など導電性のよい導体板で形成すればよい。貫通孔18には、蓄電セル4-1、4-2のそれぞれの接続端子16-1、16-2が挿入される。
バスバー8には、たとえば
図2のBに示すように、長辺方向に沿って本体部の中心部または接続片8-1、8-2の貫通孔18から等距離の位置にとった中心軸Oに対し、中心軸Oと重なる位置、または中心軸Oから接続片8-2側に距離L1の位置に回動溝14を備える。
この回動溝14は、本発明の変動支持部12の一例であり、少なくともバスバー8本体部に対し、蓄電セル4-1、4-2と対抗しない平面上に形成される。回動溝14は、たとえばバスバー8の本体部の短辺方向に沿って直線状であって、本体部の一部を肉薄状態として、剛性を低下させるように形成されている。回動溝14は、たとえば接続片8-2の貫通孔18からの距離よりも、接続片8-1に対する圧力Fが作用する貫通孔18の中心からの距離L2を大きくとればよい。さらに回動溝14は、たとえば変位しない端部6-2側の蓄電セル4-2のセル中心から隣接する他の蓄電セル4-1の配置方向であって、蓄電セル4-2の外径範囲内に回動溝14が重なる範囲内に形成されるのが好ましい。
回動溝14は、たとえば平板状のバスバー8を形成した後に、所定位置に対して平板面の一部に切削処理などを施すことで形成してもよい。
【0019】
蓄電モジュール2の組立て処理では、たとえば第1の蓄電セル4-1の端部6-1に対して、バスバー8の長辺側の接続片8-1に接続させたのち、第2の蓄電セル4-2の端部6-2を短辺側の接続片8-2に接続させればよい。なお、バスバー8に対する蓄電セル4-1、4-2の接続順序はこれに限らない。
【0020】
<バスバー8の変動状態について>
図3は蓄電セルの状態に対するバスバーの変動状態例を示している。
蓄電モジュール2は、たとえば
図3のAに示すように、通常動作時は蓄電セル4-1の筐体内部から圧力Fが作用せず、もしくは接続端子16-1を変動させない所定の範囲内の圧力Fが作用する。このときバスバー8は、蓄電セル4-1、4-2が直列接続による通電状態であり、接続端子16-1、16-2と接続する本体部が直線状、またはそれに近い状態を維持している。
また蓄電モジュール2は、たとえば
図3のBに示すように、蓄電セル4-1の筐体内部にガスが溜まっていき、内部圧力が上昇することで接続端子16-1が筐体の上部側に向けて変位する。つまり、蓄電モジュール内での蓄電セルの端子の位置が変わることとなる。これによりバスバー8は、たとえば蓄電セル4-1から圧力Fを受けると、本体部の上部に形成した回動溝14が収縮して、接続片8-1が蓄電セル4-1から離間する方向Rに変動する。このように蓄電モジュール2では、接続片8-1を長くするほど、蓄電セル4-1の接続端子16-1に対する回転モーメントが小さくなるため、圧力Fに対するバスバー8からの反力が小さくなり、接続片8-1が変動し易くなる。そして接続片8-1が変動し易くなることで、蓄電セル4-1の接続端子16-1が図示しない蓄電セル4-1内部の蓄電素子との接続が遮断し易くなる。
なお、接続端子16-1および集電板30(
図5)は、筐体内部の圧力上昇を受けた場合、筐体の開口部側に向けて直線状に変位する場合に限られない。接続端子16-1、および集電板30は、たとえばバスバー8との接続状態が維持される場合、接続片8-1の回動方向Rに沿った軌道で筐体内部を変位する。
【0021】
<蓄電セル4-1、4-2の構成について>
図4は蓄電セルの内部構成例を示している。
蓄電セル4-1、4-2は、たとえば
図4に示すように、筐体20の収納部22に対し開口部24から蓄電素子26が挿入され、その蓄電素子26の一端側に集電板30を接続するとともに、封口部材32によって収納部22が封止される。
筐体20は、たとえば一端側に底部を有し、他端側に開口部24を有しており、その断面が円形または多角形状となっている所謂有底筒状に形成されている。この筐体20は、たとえば内部に充填されている電解液や外気との接触に対する耐腐食性を有するとともに、外部から一部を加締めることで変形可能な柔軟性をもった材料として、アルミニウムなどの金属のほか、マンガンやマグネシウムが添加されたアルミニウム合金などを含む硬質材料が利用される。また筐体20の底部側の外装面には、接続端子16-2が形成されている。この接続端子16-2は、たとえば収納部22内に収納された蓄電素子26の底部側に形成したタブ28-2と底部が接触することで接続されており、蓄電セル4-1、4-2の陰極端子として機能する。
【0022】
蓄電素子26は、セパレータを介して積層された陽極箔および陰極箔が巻回され、円柱状に形成されている。この蓄電素子26は、巻回された一端面側に積層された陽極箔の一部を突出させたタブ28-1が形成されるとともに、他端面側に積層された陰極箔の一部を突出させたタブ28-2が形成されている。これらのタブ28-1、28-2は、たとえば巻回前の帯状に形成された陽極箔および陰極箔の一端側の長辺部に突出部を形成しておき、巻回によって積層されることで、所定の形状に重なるようにすればよい。蓄電素子26は、たとえば積層された各電極箔の突出部をそれぞれ所定方向に折曲げてタブ28-1、28-2を形成する。
集電板30は、たとえば陽極側のタブ28-1の端面と電気的に接触させる接続部を備えている。集電板30は、たとえばアルミニウム合金などが用いられる。集電板30の接続部は、たとえば単一の平板形状であってもよく、または接続するタブ28-1の形状に合わせて幅や高さの異なる複数の領域が形成されてもよい。集電板30とタブ28-1との接続には、たとえば平板面状に複数箇所の溶接を行うほか、集電板30の側面側から接続部とタブ28-1に対して溶接処理を行ってもよい。そのほか、集電板30には、接続端子16-1が形成されている。
またタブ28-2は、筐体20の収納部22に挿入されたときに、底部と接触させたのち、筐体20の外部から底面部に対して溶接処理を施すことで、筐体20の底部とタブ28-2とが電気的に接続する。
【0023】
封口部材32は、筐体20の収納部22を封止する手段の一例である。この封口部材32は、たとえば絶縁性のゴムやその他のゴム材、樹脂材料で形成されており、収納部22内に蓄電素子26とともに封入される図示しない電解液などが外部に流出するのを阻止するとともに外部から収納部22内に異物が混入するのを阻止する。また封口部材32は、たとえば収納部22内の圧力調整などの目的で、化学反応もしくは温度により気化した電解液を収納部22の外部に蒸散させる機能を備えてもよい。この封口部材32は、外形形状が収納部22同等の形状であり、たとえば円形、楕円形、もしくは多角形形状に形成されている。また封口部材32には、たとえば平板面の一部に集電板30に形成された接続端子16-1を外部に突出させる貫通孔34を備える。
【0024】
<接続端子16-1の変位について>
図5は、動作時における蓄電セルの内部構成例を示している。
蓄電セル4-1、4-2は、たとえば
図5のAに示すように、駆動前もしくは正常状態で動作している場合、蓄電素子26の陽極側のタブ28-1に対して集電板30の一面が接触状態となっており、所定の電力が接続端子16-1に流れる。このとき収納部22の内部には、電解液の化学反応によるガスが発生していないか、または図示しないガス放出手段を通じて外部に放出されている。これにより蓄電セル4-1、4-2では、正常状態の封口部材32Aによって開口部24が封止されている。また蓄電セル4-1、4-2は、端部6-1側にある接続端子16-1は初期位置に配置されている。蓄電素子26の端部6-2には、陰極側のタブ28-2が筐体20の底部に接触状態が維持されている。
【0025】
また、蓄電セル4-1、4-2は、たとえば
図5のBに示すように、内部異常により図示しないガスが筐体20の収納部22内に充満することで圧力Fが上昇する。このとき筐体20は、たとえば剛性が小さい開口部24側に対してガスが流れようとし、収納部22内から強い圧力Fを受けたことで膨張や押圧により変形状態の封口部材32Bとなる。このとき、集電板30は、収納部22内から受けた圧力Fにより、封口部材32Bの変形に伴って開口部24側に変位する。接続端子16-1は、一体化した集電板30とともに開口部24に向けて変位する。蓄電素子26は、たとえば収納部22内に充填される電解液の含浸により膨張し、または筐体20の一部が外部から加締められることで、収納部22内の所定位置に保持されている。また蓄電セル4-1、4-2では、収納部22内の圧力上昇によって集電板30が開口部24に変位するのに対し、蓄電素子26が所定位置に保持されることで、タブ28-1と集電板30との接続を解除させることができる。
【0026】
<一実施形態の効果>
斯かる構成によれば、次のような効果が得られる。
(1) バスバー8の剛性などによって、内部圧力の上昇による接続端子16-1の変位を阻害するのを防止できる。
(2) 接続端子16-1の変位を可能にすることで、異常状態となった蓄電セル4-1内部の電流を遮断し、筐体20の破裂を防止することができる。
(3) 変動支持部12の形成位置に応じて接続片8-1の長さが設定され、これにより蓄電セル4-1内部の圧力Fに対するバスバー8の回動性を調整でき、蓄電セル4-1、4-2の遮断機能の発動が制御可能となる。
【0027】
(実施例1)
図6は、3つ以上の蓄電セルを用いる蓄電モジュールの構成例を示している。
図6に示す構成は一例である。
この蓄電モジュール40は、たとえば
図6に示すように、6つの蓄電セル4を直列接続させる場合を示している。蓄電セル4は、たとえば隣り合う2本を1組みとし、一方方向に交互に極性の異なる端部6-1、6-2が同一方向に向くように配置させている。そして蓄電モジュール40では、異なる端子同士を1つのバスバー8で連結していく。さらに蓄電モジュール40には、たとえば両端側の蓄電セル4の組合せのない端部6-1、6-2に対し、それぞれ図示しないケースなどに固定させるためのバスバー42、44が接続される。このバスバー42は、たとえば蓄電セル4の陽極側の接続端子16-1に接続させるため、接続片8-1とともに回動溝14が形成されている。また他のバスバー44は、たとえば蓄電セル4の陰極側の接続端子16-2に接続させるため、固定部品の一部に接続片8-2が形成されている。
【0028】
(実施例2)
図7は、実施例2に係る蓄電モジュールの構成例を示している。
この蓄電モジュール2には、さらにバスバー8で連結された1組もしくは2組以上の蓄電セル4-1、4-2を内部に収納する収納空間を形成するモジュール筐体50を備える。このモジュール筐体50は、たとえば蓄電モジュールの全周、もしくは一部の周囲を覆うケース部材であり、複数の蓄電セル4-1、4-2の配置位置を固定するほか、図示しない外部の機器と蓄電セル4-1、4-2との接触を防止させている。
さらにモジュール筐体50は、少なくとも並列に接続された蓄電セル4-1、4-2の両側の端部6-1、6-2に対して平行またはそれに近い角度で覆うように配置されている。このモジュール筐体50の収納部内には、たとえば蓄電セル4-1、4-2との間に所定幅L3以上離間した空間部52が形成されている。この空間部52の幅L3は、たとえば蓄電セル4-1の変位側の端部6-1に接触させず、もしくは所定の距離まで接続片8-1が回動可能な距離がとられている。これにより蓄電モジュール2は、モジュール筐体50を備えた場合でも、接続端子と蓄電素子との接続を遮断する遮断機能の動作を阻害することがない。
【0029】
さらにモジュール筐体50には、たとえば内部に配置された蓄電セル4-1、4-2の端部68-1、8-2と対抗する面の一部であって、かつバスバー8に形成された回動溝14と平行に、図示しない変動凸部が形成されてもよい。この変動凸部は、モジュール筐体50の内壁面上であって、たとえばバスバー8の回動溝14の上面またはその近傍に形成されている。そして蓄電モジュール2は、蓄電セル4-1の内部で圧力が上昇し、封口部材32の変位により第1の接続片8-1が変動した場合に変動凸部がバスバー8の回動溝14やその他の位置に接触する。これによりバスバー8は、上面側から変動凸部と接触して押圧されるため、接続片8-1側の変動を補助することができる。
この変動凸部は、少なくとも回動溝14から、変動しない第2の接続片8-2の間のいずれかの位置に対向する位置に形成されてよい。
【0030】
〔他の実施形態〕
【0031】
(1) 上記実施形態および実施例では、回動溝14は、たとえばバスバー8の一面であって、蓄電セル4-1、4-2と対抗しない面側にのみ形成する場合に限られない。回動溝14は、たとえば平板面の両面に形成してもよい。この場合、たとえばバスバー8の接続片8-1が蓄電セル4-1から離間する方向に変形し易い形状として、本体部の厚さ中心に向けて狭小となるように成形すればよい。
【0032】
(2) 上記実施形態および実施例では、変動支持部12として回動溝14がバスバー8の一部に形成される場合を示したがこれに限らない。変動支持部12は、たとえば接続片8-1、8-2と電気的に接続され、かつ接続片8-2に対して接続片8-1を回動可能に支持する連結部品を利用してもよい。この連結部品は、たとえば接続片8-1、8-2の一部に接続した蝶番などを用いてもよい。
【0033】
(3) 上記実施形態および実施例では、蓄電セル4-1の内部圧力の上昇による接続端子16-1の変位に対して、接続片8-1を回動可能にする場合を示したが、これに限らない。変動支持部12は、変位した接続端子16-1の変位に対して所定位置までは接続片8-1を回動させるとともに、それ以上の変位が生じた場合に、接続片8-1を接続片8-2から分離させるようにしてもよい。これにより、異常状態となった蓄電セル4-1と他の蓄電セル4-2との電気的な接続を解除させることができる。
【0034】
(4) 上記実施形態および実施例では、バスバー8に対し、極性の異なる蓄電セル4-1の陽極側の端部6-1と蓄電セル4-2の陰極側の端部6-2を接続させる場合を示したがこれに限らない。蓄電モジュール2は、たとえば蓄電セル4-1、4-2の陽極側の端部6-1同士、または陰極側の端部6-2同士を連結させてもよい。これによりバスバー8を介して同極同士が連結された蓄電モジュール2は、図示しない他の蓄電モジュールや基盤、その他の電子機器に対して並列接続させてもよい。
【0035】
(5) 上記実施形態および実施例では、蓄電セル4-1、4-2の陽極側の端部6-1側のみが収納部22内の圧力上昇によって開口部24側に変位する場合を示したがこれに限らない。蓄電セル4-1、4-2は、収納部22内の圧力上昇に対し、端部6-2側が変位するものであってもよく、または端部6-1、6-2の両方が変位可能にしてもよい。このように両方の端部6-1、6-2を変位可能にした蓄電セル4-1、4-2は、たとえば両方の端部6-1、6-2が変位する場合やいずれか一方のみが変位する場合を含んでよい。この蓄電セル4-1、4-2は、たとえば筐体20の開口部24側に陰極側の端部6-2を構成するものや、端部6-1、6-2を配置する両端に開口部を備える筒状の筐体20を用いればよい。
【0036】
(6) さらに、両側の端部6-1、6-2が変位可能な蓄電セル4-1、4-2を用いた蓄電モジュール2では、たとえばバスバー8の接続片8-1のみを変動可能にする場合に限られず、端部6-2が接続される接続片8-2が変動可能にしてもよい。またバスバー8は、たとえば接続片8-1、または接続片8-2のいずれか一方のみが変動可能な構成とする場合、筐体20内部の圧力によって変位する端部6-1、6-2を変動可能な接続片側に接続させればよい。
【0037】
(7) 上記実施形態および実施例では、変位した端部6-1に接続された接続片8-1が端部6-1とともに変位する場合を示したがこれに限らない。蓄電モジュール2は、たとえば蓄電セル4-1の端部6-1の変位に対し、蓄電セル4-1の端部6-2に接続したバスバー8の接続片を変動させてもよい。
つまり蓄電モジュール2は、たとえば
図6および
図7に示すように、蓄電セル4-1、4-2の両端部にそれぞれ異なるバスバー8が接続されている。そして蓄電モジュール2では、たとえば蓄電セル4-1内の圧力が上昇し、封口部材32が膨張し、それに伴って集電板30および接続端子16-1が開口部24側に圧力Fを受ける。この筐体20は、圧力Fによって開口部24の端部に形成された縦加締部が変形して開放状態となる。
さらに、端部6-1が接続されたバスバー8の接続片8-1は、蓄電セル4-1側からの圧力Fに対抗し、変動しないように形成されている。
これにより蓄電セル4-1は、接続端子16-1との接続状態が維持されるとともにバスバー8からの反力を受ける。このとき端部6-2と接続するバスバー8には、変動支持部12を備えることで、筐体20とともに端部6-2側が変位可能となる。
斯かる構成によっても、蓄電モジュール2は、上記実施形態や実施例と同様の効果を得ることができる。
【0038】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施形態について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の蓄電モジュール、バスバーおよび蓄電モジュールの製造方法は、複数の蓄電セルをバスバーで連結しても、内部異常の発生に対して接続端子と蓄電素子との接続を遮断する遮断機能の動作を正常に動作させることができ、有用である。
【符号の説明】
【0040】
2、40 蓄電モジュール
4、4-1、4-2 蓄電セル
6-1、6-2 端部
8、42、44 バスバー
8-1、8-2 接続片
10 接触部
12 変動支持部
14 回動溝
16-1、16-2 接続端子
18 貫通孔
20 筐体
22 収納部
24 開口部
26 蓄電素子
28-1、28-2 タブ
30 集電板
32、32A、32B 封口部材
34 貫通孔
50 モジュール筐体
52 空間部