(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】包装体、包装体付き物品および包装体付き物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20241001BHJP
G06K 19/02 20060101ALI20241001BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G06K19/077 156
G06K19/02
G06K19/07 230
G06K19/077 144
G06K19/077 280
(21)【出願番号】P 2020165344
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】近 禅
(72)【発明者】
【氏名】新井 浩次
【審査官】北村 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-155062(JP,A)
【文献】特開2006-318025(JP,A)
【文献】特開2004-020771(JP,A)
【文献】特開2008-107947(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0135501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G06K 19/00 - 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の少なくとも一部を覆う包装体であって、
第1の基材と、
前記第1の基材の少なくとも一方の面側に形成されたアンテナと、
第2の基材と、
前記第2の基材の少なくとも一方の面側に形成された配線部と、
前記配線部と電気的に接続するICチップと、を備え、
前記第2の基材は前記第1の基材に積層され、
前記第1の基材と前記第2の基材とを固定する粘着層を備え、
前記第1基材に近い側から、前記粘着層、前記ICチップ、前記配線部および前記第2の基材が、この順に重なって形成され、
前記アンテナ、前記配線部および前記ICチップは、外部機器との非接触通信が可能な通信回路を構成し、
前記第1の基材および前記第2の基材は、互いに同一材料を含む、前記包装体。
【請求項2】
前記同一材料は、PETである、請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記同一材料は、紙材である、請求項1に記載の包装体。
【請求項4】
第3の基材をさらに備え、
前記第3の基材は、前記アンテナを挟み込むように前記第1の基材に対向して積層され
る、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項5】
前記第1の基材および前記第2の基材の積層方向から平面視したとき、前記アンテナの一部と前記配線部の一部とが重複する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の包装体を前記物品に固定した、包装体付き物品。
【請求項7】
包装体を物品に固定した、包装体付き物品であって、
前記包装体は、
第1の基材と、
前記第1の基材の少なくとも一方の面側に形成されたアンテナと、
第2の基材と、
前記第2の基材の少なくとも一方の面側に形成された配線部と、
前記配線部と電気的に接続するICチップと、を備え、
前記第2の基材は前記第1の基材に積層され、
前記包装体は、前記第1の基材が、前記アンテナ、前記第2の基材、前記配線部および前記ICチップよりも外側となるように前記物品に固定され、
前記アンテナ、前記配線部および前記ICチップは、外部機器との非接触通信が可能な通信回路を構成し、
前記第1の基材および前記第2の基材は、互いに同一材料を含み、
前記物品は内側に向かう凹部を備え、
前記包装体は、前記第2の基材と前記配線部と前記ICチップとが有する凸形状部分が前記物品の前記凹部に収納される、包装体付き物品。
【請求項8】
物品の少なくとも一部を包装体が覆う、包装体付き物品を製造する方法であって、外周面に前記包装体を当接または近接させた前記物品を100℃の熱湯に10秒間浸漬させた後の収縮率の差が5%以下である、第1の基材および第2の基材を準備する工程と、
前記第1の基材の少なくとも一方の面側にアンテナを形成する工程と、
前記第2の基材の少なくとも一方の面側に配線部を形成する工程と、
前記配線部にICチップを電気的に接続する工程と、
前記第1の基材および前記第2の基材を積層して、前記アンテナ、前記配線部および前記ICチップにより構成される通信回路が外部機器との非接触通信を可能とする包装体を形成する工程と、
前記包装体を前記物品に当接または近接させてから当該包装体を加熱して熱収縮させ、当該包装体を前記物品に対して固定する工程と、を備える包装体付き物品の製造方法。
【請求項9】
前記第1の基材の延伸方向を第1の延伸方向とし、前記第2の基材の延伸方向を第2の延伸方向とするとき、第2の延伸方向が第1の延伸方向に沿うよう前記第1の基材と前記第2の基材とを積層する、請求項
8に記載の包装体付き物品の製造方法。
【請求項10】
前記包装体を形成する工程の前に行われる工程であって、
前記第1の基材および前記第2の基材に対する、外周面に前記包装体を当接または近接させた前記物品を100℃の熱湯に10秒間浸漬させた後の収縮率の差が5%以下である、第3の基材を準備する工程と、
前記第3の基材を、前記アンテナを挟み込むように前記第1の基材に対向して積層する工程と、をさらに備える、請求項
8または請求項
9に記載の包装体付き物品の製造方法。
【請求項11】
前記物品は内側に向かう凹部を備え、前記包装体は、前記第2の基材と前記配線部と前記ICチップとが有する凸形状部分が前記物品の前記凹部に収納されるように、前記包装体を前記物品に対して固定する、請求項
8から請求項
10のいずれか一項に記載の包装体付き物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触通信が可能な包装体、包装体付き物品および包装体付き物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電波等を用いた非接触の近距離通信として、RFID技術を利用したICタグが用いられている。例えば、種々の物品にICタグが貼付された状態で、当該物品が輸送や販売等の流通に供される。この場合、必要に応じて当該物品を外部機器(読み書き装置)にかざすことにより、ICタグのICチップに記録された物品情報を非接触通信により読み出すことやICチップに種々の情報を書き込むことができる。これにより、効率的な物流管理が可能となる。
【0003】
物品に貼付されるICタグは、主としてチップ部分、アンテナ部分、およびこれらを保持する支持体部分から構成される。物品の製造直後より、ICタグに紐付けた物流管理を開始するべく、物品を覆う包装材にあらかじめICタグを形成しておく方法が考えられる。しかし、このような包装材は例えばグラビア印刷機等で大量に印刷され、通常はロール状に巻き取られて保管される。ICチップ等、厚さが異なる部位が混在すると、包装材をロール状にきれいに巻くことが困難となる。また、ICチップをあらかじめ包装材に取り付けておくと、物品への梱包に失敗した不良の包装材は、ICチップとともに廃棄せざるを得なくなる。また、ICチップが包装材の運搬中等に損傷した場合も、物品への梱包後に包装材を交換しなければならず、製造コストや作業負荷の増大を招くおそれがある。
【0004】
また、物品にICタグを貼付し、これを包装材で覆うものが特許文献1や特許文献2に開示されている。しかし、ICタグの基材が包装材より硬い場合、ICタグの端面による包装材の破損や外観不良の原因となりうる。反対に、ICタグの基材が柔らかい場合、 包装材で覆う際の圧力により、ICタグの故障を招くおそれがある。特許文献3には、非接触通信が可能となるパッケージ用板紙の製造方法が開示されている。パッケージ用板紙の少なくとも2つの層の一方の層に、複数のアンテナパターンを、所定間隔を有して印刷し、2つの層の他方の層に、ICチップを実装した複数のRFIC素子を、所定間隔を有して接着する。そして、一方の層と他方の層とを貼り合わせて、RFIC素子およびアンテナパターンを一方の層と他方の層との間に挟み込み、RFIC素子とアンテナパターンとを電気的に接続する。以上により、非接触通信が可能となるパッケージ用板紙が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-49410号公報
【文献】特表2014-164317号公報
【文献】国際公開WO2018/216686号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
包装材にあらかじめアンテナ等のICタグの一部を形成しておき、これとは別に形成されたICチップを含むICタグの残りの一部を当該包装材に後から貼付することで、ICチップ不良よる物品の廃棄ロスを生じない効率的な包装材付き物品の製造が可能となる。ところで、このような包装材はその材質によっては吸湿により膨張したり、また物品に包装材をフィットさせるために熱を掛けて収縮させたりすることがある。このとき、包装材からICチップを含むICタグの残りの一部が剥がれ落ちたり変形することで、外観不良となったり十分な通信特性が得られなくなるおそれがある。
【0007】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、効率的に生産でき、外観と通信特性とが良好な包装体、包装体付き物品および包装体付き物品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施の形態による包装体は、物品の少なくとも一部を覆う包装体であって、第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面側に形成されたアンテナと、第2の基材と、前記第2の基材の少なくとも一方の面側に形成された配線部と、前記配線部と電気的に接続するICチップと、を備え、前記第2の基材は前記第1の基材に積層され、前記アンテナ、前記配線部および前記ICチップは、外部機器との非接触通信が可能な通信回路を構成し、前記第1の基材および前記第2の基材は、互いに同一材料を含む。
【0009】
また、本実施の別の形態による包装体において、前記同一材料は、PETであってもよい。
【0010】
また、本実施の別の形態による包装体において、前記同一材料は、紙材であってもよい。
【0011】
また、本実施の別の形態による包装体において、前記ICチップは、前記第2の基材の前記第1の基材に近い側の面に配置されてもよい。
【0012】
また、本実施の別の形態による包装体は、第3の基材をさらに備え、前記第3の基材は、前記アンテナを挟み込むように前記第1の基材に対向して積層されてもよい。
【0013】
また、本実施の別の形態による包装体において、前記第1の基材および前記第2の基材の積層方向から平面視したとき、前記アンテナの一部と前記配線部の一部とが重複してもよい。
【0014】
また、本実施の別の形態による包装体付き物品は、上記の包装体を前記物品に固定したものであってもよい。
【0015】
また、本実施の別の形態による包装体付き物品において、前記物品は凹凸面を有し、前記包装体は、前記通信回路が前記物品の前記凹凸面上に配置されるように固定されていてもよい。
【0016】
本実施の形態による包装体付き物品の製造方法は、物品の少なくとも一部を包装体が覆う、包装体付き物品を製造する方法であって、
外周面に前記包装体を当接または近接させた前記物品を100℃の熱湯に10秒間浸漬させた後の収縮率の差が5%以下である、第1の基材および第2の基材を準備する工程と、前記第1の基材の少なくとも一方の面側にアンテナを形成する工程と、前記第2の基材の少なくとも一方の面側に配線部を形成する工程と、前記配線部にICチップを電気的に接続する工程と、前記第1の基材および前記第2の基材を積層して、前記アンテナ、前記配線部および前記ICチップにより構成される通信回路が外部機器との非接触通信を可能とする包装体を形成する工程と、前記包装体を前記物品に当接または近接させてから当該包装体を加熱して熱収縮させ、当該包装体を前記物品に対して固定する工程と、を備える。
【0017】
また、本実施の別の形態による包装品の製造方法において、前記第1の基材の延伸方向を第1の延伸方向とし、前記第2の基材の延伸方向を第2の延伸方向とするとき、第2の延伸方向が第1の延伸方向に沿うよう前記第1の基材と前記第2の基材とを積層するものでもよい。
【0018】
また、本実施の別の形態による包装品の製造方法において、前記包装体を形成する工程の前に行われる工程であって、前記第1の基材および前記第2の基材に対する、外周面に前記包装体を当接または近接させた前記物品を100℃の熱湯に10秒間浸漬させた後の収縮率の差が5%以下である、第3の基材を準備する工程と、
前記第3の基材を、前記アンテナを挟み込むように前記第1の基材に対向して積層する工程と、をさらに備えてもよい。
【0019】
また、本実施の別の形態による包装品の製造方法において、前記通信回路が前記物品の凹凸面上に配置されるように、前記包装体を前記物品に対して固定してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本実施の形態によれば、効率的に生産でき、外観と通信特性とが良好な包装体、包装体付き物品および包装体付き物品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の包装体および包装体付き物品の構造を説明する概略図である。
【
図2】第1実施形態の包装体を説明する平面図および断面図である。
【
図3】
図2(b)のC部の詳細を説明する拡大断面図である。
【
図4】第1実施形態の包装体の製造方法を説明する図である。
【
図5】第1実施形態の包装体の製造方法を説明する図である。
【
図6】第2実施形態の包装体を説明する断面図である。
【
図7】第3実施形態の包装体付き物品の構造を説明する概略図である。
【
図8】第4実施形態の包装体を説明する平面図である。
【
図9】第5実施形態および第6実施形態の包装体を説明する平面図である。
【
図10】第7実施形態の包装体を説明する平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面等を参照して、本開示の包装体、包装体付き物品および包装体付き物品の製造方法の一例について説明する。ただし、本開示の包装体等は、以下に説明する実施形態や実施例には限定されない。
【0023】
なお、以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略する。本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0024】
1.第1実施形態
本開示の包装体および包装体付き物品の第1実施形態について説明する。
図1(a)は、容器5に包装体1が設けられた包装体付き容器10を示す概略図である。
図1(b)は、
図1(a)の包装体付き容器10を鉛直方向であるA-A線を通り、かつ第2部分3を通る平面で切った断面を示す図である。また
図2(a)は、包装体1を説明するための平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)の図において、包装体1の長手方向に沿ったB-B線を通る包装体1の厚さ方向に平行な平面で包装体1を切ったときの断面図である。
図3は、
図2(b)のICチップ6を含むC部の拡大図である。
【0025】
ここで、説明の便宜上、容器5に取り付ける前の包装体1についてXYZ座標系を設定する。
図2(a)および
図2(b)に示すように、包装体1の第1基材4の主面に対する法線方向にZ軸をとり、Z軸上の第1基材4の主面からICチップ6に向かう方向を+Z方向または厚さ方向の上方とし、その反対方向を-Z方向または厚さ方向の下方とする。また、Z軸に沿った方向をZ方向または厚さ方向の上下方向ともいう。
【0026】
また、包装体1を+Z方向から見たとき、包装体1または第1基材4の長手方向にX軸を、短手方向にY軸をとり、
図2(a)および
図2(b)において、向かって左側を-X方向または左側とし、向かって右側を+X方向または右側とする。さらに、
図2(a)において、向かって上側を+Y方向または上方とし、向かって下側を-Y方向または下方とする。また、X軸に沿った方向をX方向または左右方向、Y軸に沿った方向をY方向または上下方向ともいう。
【0027】
(a)包装体の構成
以下、
図1~
図3を参照しながら、第1実施形態に係る包装体1および包装体付き容器10の構成を説明する。包装体1は
図1(a)および
図1(b)に示すように、例えば物品の一例である容器5を、その高さ方向の中央付近の外周を巻くように覆っており、包装体付き容器10を構成している。包装体1は、大別して容器5の周りを巻いている第1基材4と、当該第1基材4の、容器5に巻いたときの内側を向く面上に設けられる所定形状のアンテナ20と、から構成される第1部分2と、当該第1部分2の、容器5に巻いたときの内側を向く面上に設けられる、当該第1部分2よりも一回り小さい所定形状の第2部分3と、から構成される。
【0028】
一方、容器5に巻き付ける前のフラットな状態の包装体1の構成は、
図2(a)および
図2(b)に示すとおりである。第1部分2を構成するものとして、略長方形状の薄型の長尺のシートまたはフィルムである第1基材4と、これの一方の面である+Z方向側の面に所定のパターンで形成されたアンテナ20と、が挙げられる。アンテナ20は、左側に配置される第1部分アンテナ21と、右側に配置される第2部分アンテナ22とに分離した構成を有する。また、+Z側から平面視したとき、第1部分アンテナ21および第2部分アンテナ22のそれぞれの端部と重なるように、粘着層38を介して第2部分3の第2基材31が、第1基材4の+Z方向側に配置されている。
【0029】
第2部分3を構成するものとして、第2基材31と、配線部30と、ICチップ6と、が挙げられる。また、必要に応じて、第2部分3は、第2基材31と配線部30とを接着するための接着層や配線部30のICチップ6の搭載面側に形成した離型層等を含んでもよい。さらには、第2部分3は、第2基材31を第1基材4と固定するための粘着層38を含んでもよい。本実施形態では、第2部分3は、第1基材4に近い側から粘着層38、ICチップ6、配線部30および第2基材31が、この順に重なって形成されている。ここで、配線部30は、左側に配置される第1分岐部32と、右側に配置される第2分岐部33とに、一部が分離した構成を有する。ICチップ6は、配線部30の第1分岐部32と第2分岐部33とを跨ぐように配置されている。
【0030】
また、ICチップ6および配線部30は、ともに第1基材4と第2基材31との間に挟持された構成となる。その結果、包装体1を第1基材4が最も外側となるように容器5に巻き付ける場合は、外力や水分等により最も劣化しやすい配線部30やICチップ6が第1基材4と第2基材31とで保護され、包装体1としての耐久性や信頼性を向上させることができる。なお、この場合には、
図1(b)のように、容器5がその側面に内側に向かう凹部57を備えていることが好ましい。容器5がこのような形状であることにより、包装体1の特に第2部分3が有する凸形状部分が当該凹部57に収納され、包装体付き容器10における包装体1の外観が良好となるからである。ただし、必ずしも容器5がその側面に凹部を備える必要はない。
【0031】
一方、第2部分3は、後述する第7実施形態のように第1基材4に近い側から粘着層38、第2基材31、配線部30およびICチップ6が、この順に重なって形成されてもよい。このとき、容器5がその側面に凹部を備えていない場合でも、容器5に巻き付けた包装体1の外観が悪化することが回避できる。
【0032】
包装体1が上記のような構成であることにより、ICチップ6の電極の一方が第1分岐部32を経由して第1部分アンテナ21と電気的に接続し、他方が第2分岐部33を経由して第2部分アンテナ22と電気的に接続することとなる。また、アンテナ20は、ICチップ6を中心とする左右一対のダイポールアンテナを形成している。これにより、包装体1は、例えば920MHz等のUHF帯の無線信号を送受信でき、外部機器との間で非接触通信による情報伝達を行うことができる。以下、包装体1の各部の構成について説明する。
【0033】
(i)第1基材
第1基材4は、印刷等で形成されるアンテナ20を支持する部材であり、適度な可撓性を備え、外力等による変形でアンテナ20が破損、断線することを抑制できるものであることが好ましい。容器5等の物品の少なくとも一部を覆うために用いられる第1基材4には、物品に識別性や意匠性を付与し、これを長期的に維持するための印刷適性や耐久性等が求められる。さらには、物品形状にフィットさせるために、第1基材4として熱収縮するものが用いられることがある。熱収縮性のあるフィルムはシュリンクフィルムまたはシュリンクラベルとも呼ばれる。
【0034】
熱収縮性のある第1基材4としては、例えば、延伸ポリエステル系フィルム、延伸ポリスチレン系フィルム、延伸ポリオレフィン系フィルム、ポリ乳酸系フィルム、発泡ポリオレフィン系フィルム、延伸ポリエステル-ポリスチレン共押出しフィルムまたは発泡ポリスチレン系フィルム等を挙げることができる。また、不織布と前記フィルムとの積層フィルムを使用してもよい。これらの中でも、延伸ポリエステル系フィルム、延伸ポリスチレン系フィルム、延伸ポリオレフィン系フィルム、ポリ乳酸系フィルム、発泡ポリオレフィン系フィルム、発泡ポリスチレン系フィルム、不織布と収縮フィルムとのラミネートフィルム、延伸ポリエステル-ポリスチレン共押出しフィルムからなる群から選択される1種以上のフィルムが好ましい。
【0035】
第1基材4の厚さには特に制限はないが、耐熱性、剛性、機械特性、外観等を損なわない範囲で適宜選択できる。第1基材4の厚さは、例えば10μm以上、500μm以下とすることができ、好ましくは20μm以上、200μm以下とすることができる。この範囲であることにより、適度な剛性、可撓性および耐熱性を確保でき、容器等の物品に対する密着性が得られるからである。
【0036】
なお、延伸フィルムは、一軸延伸であっても二軸延伸であってもよく、一軸延伸フィルムの場合は縦一軸延伸であっても横一軸延伸であってもよい。縦一軸延伸とは、第1基材4を多数個取りする元の部材である長尺フィルムについて、長尺フィルムの流れ方向に延伸させたものを指す。この場合、通常、第1基材4の長手方向は長尺フィルムの幅方向、すなわち流れ方向に垂直な方向にあたる。一方、横一軸延伸とは、長尺フィルムの幅方向に延伸させたものを指す。よって、縦一軸延伸のときは、第1基材4は短手方向に沿って熱収縮し、横一軸延伸のときは長手方向に沿って熱収縮する。
【0037】
なお、あらかじめ第1基材4を筒状にして容器5に装着し、ついで熱収縮させる場合には、横一軸延伸フィルムを使用することが好ましい。この場合、容器5の外周方向に沿って第1基材が収縮することにより、外観が良好な状態で第1基材4を容器5に密着させることができるからである。一方、熱収縮性を必要としない第1基材4としては、例えば、上質紙、コート紙、アート紙等の紙材や合成紙、不織布、布材等を挙げることができる。なお、本実施形態では、第1基材4として熱収縮性のある延伸ポリエステル系フィルムのポリエチレンテレフタレート(PET)を使用している。
【0038】
(ii)アンテナ
アンテナ20は、第1基材4の表裏面のうち、いずれか一方の面に、または両方の面に分割して、配置される。アンテナ20は、電波の送受信を行うための所定パターンが導電部材で形成された部位である。本実施形態では、920MHz等のUHF帯で電波の送受信ができるよう、アンテナ20は一対のダイポールアンテナである第1部分アンテナ21および第2部分アンテナ22を備えている。ただし、アンテナ20はダイポールアンテナには限定されず、例えば、モノポールアンテナであってもよく、通信仕様によってはループアンテナ等でもよい。
【0039】
左側の第1部分アンテナ21は、ICチップ6の搭載位置に近い側に、当該ICチップ6との電気的接続を図るための小さな略長方形状の一部を構成する接続端21aを有し、当該第1部分アンテナ21に沿ってICチップ6から離れた末端に、接続端21aよりも大きな略長方形状の一部を構成する開放端21cを有している。また、接続端21aと開放端21cとの間は直線部21bで接続されている。同様に、右側の第2部分アンテナ22は、ICチップ6の搭載位置に近い側に、当該ICチップ6との電気的接続を図るための接続端22aを有し、当該第2部分アンテナ22に沿ってICチップ6から離れた末端に、接続端22aよりも大きな形状の開放端22cを有している。
【0040】
また、接続端22aと開放端22cとの間は直線部22bで接続されている。なお、後述する他の実施形態でも説明するが、アンテナ20は第1部分アンテナ21と第2部分アンテナ22とが連結した非分離のアンテナであってもよい。この場合、配線部30の第1分岐部32および第2分岐部33が沿う直線とアンテナ20が沿う直線とが略平行となるように第1部分2および第2部分3を配置することが好ましい。
【0041】
アンテナ20は、例えば第1基材4の少なくとも一方の面に導電インキまたは導電ペーストを印刷することによって形成できる。導電インキまたは導電ペーストは、例えば銀系の導電粒子をバインダー樹脂や溶剤の中に分散させることで得られる。導電粒子は銀系が好ましいが、これに限らず、ニッケル、金、銅、白金等の金属粉末や導電性カーボンあるいはその複合体、合金等を用いてもよい。また、導電インキまたは導電ペーストの印刷は、メッシュ地の版を用いるスクリーン印刷やフレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等を用いることができ、粘度によってはインクジェット印刷も可能である。
【0042】
なお、アンテナ20は、これ以外の方法として、打ち抜いた金属箔を、接着剤を介して第1基材4に貼る方法や、薄い金属箔に接着剤を塗付してから所定形状のホットスタンプを押し当てて第1基材4に熱転写する方法も取り得る。しかし、第1基材4はグラビア印刷機等によって高速で印刷されて巻き取られるものであるため、高速かつ低コストでアンテナ形成ができる印刷方式でアンテナ20を形成することがより好ましい。
【0043】
(iii)第2基材
第2基材31は、その一方の面に積層される配線部30や当該配線部30の上に搭載されるICチップ6を支持する部材である。よって、第2基材31は、外力等による変形で配線部30やICチップ6が破損したり、配線部30とICチップ6との断線を抑制できるものであることが好ましい。第2基材31としては、基本的に第1基材4について例示した部材を使用することができるが、本開示の包装体では第1基材4と第2基材31との間に所定の関係性を持たせることを特徴とする。
【0044】
上記特徴のひとつは、包装体1の第1基材4および第2基材31が、互いに同一材料を含むことである。例えば、本実施形態では第1基材4と第2基材31とが、ともにPETを使用している。このため、使用されるPETが特段に延伸されたものでない場合には、第1基材4および第2基材31の温湿度等の環境変化による伸縮傾向はおおむね近似する。その結果、第2基材31の伸縮度合いと第1基材4の伸縮度合いとが異なることに起因する配線部30の変形等による通信特性の変動を抑制できる。また、第2部分3の第1部分2からの脱落または位置ずれによる通信特性の変動や外観不良を抑制できる。
【0045】
特に第1基材4および第2基材31が、互いに同一材料として熱収縮性を有する樹脂を含むとき、それらの環境温度の上昇による収縮傾向は近似する。このため、第2基材31の第1基材4に対する相対的な位置関係や両基材の熱収縮量の違いによるバイメタル効果による第2基材31のひずみが抑制される。よって、第2基材31が極端にたわんだり、逆に引っ張られて配線部30が断線する等の不具合の発生を抑制できる。
【0046】
また一般的に、紙材は抄紙機で紙が流れる方向に沿って繊維が並ぶ。この繊維の配向方向を紙の目と称することがある。紙の目に沿って紙材は破れやすく、紙材が空気中の水分を吸収したときは、紙の目に沿った方向よりもこれに垂直な方向に沿って伸びやすいという性質を有する。よって、第1基材4および第2基材31の両方を紙材とする場合は、積層したときの両基材の繊維の配向方向すなわち紙の目が互いに沿うように両基材を配置することが好ましい。この場合、積層後の両基材の一定方向に沿う伸縮性は互いに近似することとなり、第1基材4および第2基材31の相対的な変形を抑制できる。
【0047】
なお、第1基材4および第2基材31が互いに同一材料を含む、とは、必ずしも両者の成分が完全に同一材料で一致していることのみを意味するものではない。例えば、第1基材4および第2基材31がともに異なる材料層による積層構造を有する場合、第1基材4および第2基材31のそれぞれの積層構造のうち、互いに同一材料で構成される層を少なくともひとつ有していればよい。また、第1基材4および第2基材31がともに異なる材料のブレンドによって構成されたアロイ構造を有する場合には、第1基材4および第2基材31のそれぞれの含有成分において、互いに同一成分を含有していればよい。
【0048】
さらには、互いに構成される同一材料の層の成分、または互いに含有する同一成分の、もとの第1基材4および第2基材31の全体に占める割合(重量パーセント)がともに50%以上であることが好ましい。このとき、第1基材4および第2基材31はともにその構成成分の半分以上が共通の同一材料で構成される。よって、両基材の環境条件による伸縮傾向をより近似させることが期待できるからである。特に、第1基材4および第2基材31がともに積層構造を有する場合、両基材が当接する面にもっとも近い各々の層部分において、その同一材料成分の上記割合が上述する条件に従うことが好ましい。第1基材4および第2基材31の当接面付近における両基材の伸縮傾向が、第2基材31の変形度合いにもっとも影響を与えるからである。
【0049】
また、これとは別の特徴として、第1基材4および第2基材31が互いに同一材料を含むか否かに関わらず、両者の熱収縮率の特性が一定の範囲であることが挙げられる。具体的には、第1基材4および第2基材31は、少なくとも一定の方向に対する、外周面に前記包装体を当接または近接させた前記物品を100℃の熱湯に10秒間浸漬させた後の収縮率の差が5%以下である。本実施形態では、
図2(a)におけるX方向に沿った収縮率において、上記を満たしている。ただし、上記条件は、X方向だけではなく、Y方向についても満たしていることがより好ましい。
【0050】
ここで、第1基材4の収縮率がα%であり、第2基材31の収縮率がβ%であることについて説明する。第1基材4と第2基材31とが互いに分離した状態において、両者が積層されたときに互いに同一方向となる一定の方向について、それぞれの基材についてあらかじめ目印を付ける等した所定区間の距離を測定しておく。第1基材4の一定方向の所定区間の距離をd10とし、第2基材31の一定方向の所定区間の距離をd20とする。分離した第1基材4と第2基材31とをそれぞれ所定条件にて加熱後、あらかじめ目印を付ける等した上記所定区間の距離を再度、測定する。加熱後の第1基材4の一定方向の上記所定区間の距離をd11とし、第2基材31の一定方向の上記所定区間の距離をd21とする。このとき、一定の方向に関する第1基材4の収縮率αは、α=(d10-d11)×100/d10であり、第2基材31の収縮率βは、β=(d20-d21)×100/d20である。
【0051】
ただし、上記収縮率は、第1基材4が容器に巻き付けられている場合は、その状態における収縮率を意味する。すなわち、第1基材4を単独で加熱した場合に予定される収縮状態に達する前に、容器に巻き付けられることによって収縮が停止し、その状態で安定する場合は、当該停止した状態における収縮率を意味するものとする。ただし、容器等に巻き付けない状態であるとの条件を付する場合はその限りではない。
【0052】
X方向について上記を満たすことにより、もっとも収縮による影響が大きく出る第2部分3の長手方向の変形が抑制されることが期待できる。これにより、配線部30の変形や、第2部分3の第1部分2からの脱落等による通信特性の変動や外観不良を抑制できる。さらに、X方向およびY方向の両方について上記を満たすことにより、第2部分3のY方向の変形も極力抑制でき、より信頼性の高い包装体1を提供できる。
【0053】
さらに別の特徴として、本実施形態では、第1基材4と第2基材31とが、ともに縦一軸延伸のPETであり、第2基材31の延伸方向は、第1基材4の延伸方向に沿っている。具体的には、
図2(a)における第1基材4の延伸方向はX方向であり、第2基材31の延伸方向もX方向である。ただし、両者の延伸方向はまったく同一方向である必要はなく、一方の延伸方向が他方の延伸方向に沿う程度でよい。
【0054】
ここで、一方の延伸方向が他方の延伸方向に沿うとは、例えば互いの方向の傾きが45°以内であることが好ましく、22.5°以内であることがより好ましい。互いの方向の傾きが45°以内であれば、例えば、第1基材4の変形方向に直交する方向の第2基材31の変形量の成分が、第1基材4の変形方向についての第2基材31の変形量の成分を超えることがなく、第1基材4に対する第2基材31の相対的な変形を抑制し得る。互いの傾きが22.5°以内であれば、この抑制効果をさらに増大することができる。
【0055】
また、例えば第1基材4が二軸延伸のフィルムであり、第2基材31が一軸延伸のフィルである場合、および、第1基材4が一軸延伸のフィルムであり、第2基材31が二軸延伸のフィルムである場合は、いずれも、第2基材31の延伸方向が、第1基材4の延伸方向に沿っていると言える。第1基材4および第2基材31がいずれも二軸延伸のフィルムである場合も同様である。一方、第1基材4と第2基材31とがともに横一軸延伸のPETである場合も、第2基材31の延伸方向が第1基材4の延伸方向に沿うべきであることは言うまでもない。
【0056】
なお、第2基材31の厚さは、例えば10μm以上、500μm以下とすることができ、好ましくは20μm以上、200μm以下とすることができる。この範囲であることにより適度な剛性、可撓性および耐熱性を確保でき、第1基材4に対する密着性が得られるからである。
【0057】
(iv)配線部
【0058】
配線部30は、第2基材31の表裏面のうち少なくとも一方の面に配置される導電性部位であり、アンテナ20と電気的に結合することにより電波の送受信を行うことができる。配線部30は、
図2(a)において左側に直線状に延びる第1分岐部32と、右側に直線状に延びる第2分岐部33と、この両分岐部と接続し閉回路を形成するループ部34と、から構成される。第1分岐部32の+X方向側の端部である接続端32aと、第2分岐部33の-X方向側の端部である接続端33aとは、互いに微小な隙間35を形成し、第2部分3を+Z方向側から平面視したときにICチップ6と重なっている。すなわち、第1分岐部32および第2分岐部33のそれぞれの一端は互いに離隔して、ICチップ6と電気的に接続している。
【0059】
また、第1分岐部32の-X方向側の端部には開放端32cが設けられ、第2分岐部33の+X方向側の端部には開放端33cが設けられている。これらは、包装体1を+Z方向側から平面視かつ透視したときに、前述したアンテナ20の端部と重なっている。すなわち、第1分岐部32の開放端32cは、第1部分アンテナ21の接続端21aと重なり、第2分岐部33の開放端33cは、第2部分アンテナ22の接続端22aと重なる。このとき、開放端32cと接続端21aとは、実際に当接していてもよく、両者が第2基材31等の他の層により離隔していてもよい。両者が離隔している場合は、交流波形の電磁波の送受信を配線部30とアンテナ20とが協働して行える程度に両者が容量結合されていればよい。このような場合も含め、配線部30とアンテナ20とは電気的に接続している、と言える。
【0060】
一方、第1分岐部32の接続端32aおよび開放端32cは直線路である直線部32bで結ばれており、第2分岐部33の接続端33aおよび開放端33cは直線路である直線部33bで結ばれている。また、ICチップ6、直線部32bの一部、およびループ部34によって囲まれる閉回路は、ICチップ6とアンテナ20および配線部30を含むアンテナ構造とのインピーダンスの共役整合を図る整合回路として機能する。なお、ループ部34は、必ずしも配線部30から分岐して形成される必要はなく、例えばアンテナ20側に形成してもよい。すなわち、一例として、第1部分アンテナ21の直線部21bおよび第2部分アンテナ22の直線部22bからそれぞれ分岐し、両者を導通させるループ部を形成してもよい。
【0061】
配線部30は、公知のエッチングプロセスにより形成することができる。すなわち、まず真空環境下で第2基材31の一方の面に蒸着プロセスにより金属層を生成する。使用する金属は例えば銅であるが、アルミ、ニッケル、クロム、チタン、金、銀、錫、インジウム等の導電性を有する金属を使用できる。このときの蒸着による金属層の厚さは、0.1μm以上、10.0μm以下とすることができる。なお、10.0μmを超える厚さとするときは、例えば第2基材31に接着剤を介して薄い金属箔を一面に貼り込む方法を選択できる。
【0062】
次に、金属層の面上にフォトレジストのドライフィルムをラミネートし、その上に配線部30の所定パターンのみが光を透過するように作製された原版を重ね、UV等の所定波長の光を照射する。これにより、原版で遮光されなかった配線部30の所定パターン部分のフォトレジストが感光、硬化し、それ以外の部分が未感光、未硬化となる。その後、未感光のレジストを除去し、アルカリ剥離液を吹き付けることによって配線部30の所定パターン部分を残して不要部分の金属箔がエッチング除去され、第2基材31上に所望の配線部30が形成された積層物を得る。
【0063】
(v)ICチップおよび導電接着剤
ICチップ6は、シリコン等の半導体基板に各種の回路素子が形成された集積回路であり、比較的薄い略直方体状の構造を有する。ICチップ6は、例えばその一方の面に各種回路が形成されているとともに、アンテナとの電気的な接続端子である第1接続パッド62および第2接続パッド63を備えている。なお、ICチップ6の接続パッドは3個以上あってもよい。
【0064】
ICチップ6は、第1接続パッド62および第2接続パッド63が配線部30の第1分岐部32の接続端32aおよび第2分岐部33の接続端33aと電気的に接続することにより、種々の機能を果たす。例えば、外部から所定周波数の電波を受信した、アンテナ20、配線部30およびICチップ6から構成される通信回路から、ICチップ6の動作用電力を取り出し、CPUを駆動させる。また、受信電波から所定情報を解読し、各種演算をしたり、記憶部から情報を読み出したり、書き込んだりする。また、必要に応じて、アンテナ20等を介して送信情報を所定周波数の電波に変換して送信する機能等を有している。
【0065】
ICチップ6は、その必要とされる機能や回路線幅等によって種々の大きさとなり得るが、通常は、平面視したときの外形の略矩形状部分の1辺の長さが0.3mm以上、1.0mm以下程度である。また、
図2(b)や
図3に示すように、第1分岐部32の右端と、第2分岐部33の左端とに跨るようにICチップ6が搭載され、その間の空隙に導電接着剤61が充填されている。導電接着剤61は、例えば異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive FilmまたはACF)であってもよく、異方性導電ペースト(ACP)であってもよい。ACFまたはACPは、エポキシ樹脂等から構成されるバインダー61aの中に、球状樹脂粒子の周りがニッケル、金等でメッキされた導電粒子61bが分散した構造を有する。
【0066】
この導電接着剤61を、
図3のように、第2基材31および配線部30の積層体の配線部30側の表面に、貼付または塗付し、その上からICチップ6を下方に向けて熱圧により押し付ける。これによって、ICチップ6の下方に設けられた第1接続パッド62および第2接続パッド63と、第1分岐部32および第2分岐部33との隙間に存在するACFまたはACP内部の導電粒子61bが第2基材31の厚さ方向に直列的に並んで互いに接合し合う。その結果、当該導電粒子61bを介して第1接続パッド62と第1分岐部32とが電気的に接続される。また、同様に第2接続パッド63と第2分岐部33とが電気的に接続される。一方、熱圧によってバインダー61aが硬化するため、ICチップ6は、配線部30に対して機械的にも密着することとなる。なお、ICチップ6の第1接続パッド62および第2接続パッド63にはあらかじめ金バンプを形成しておくことが好ましい。これにより、ICチップ6と配線部30との電気的な接続信頼性の向上が図れる。
【0067】
なお、導電接着剤61は、ACFやACPに限らず、例えばエポキシ樹脂中に銀粒子をフィラーとして分散した、いわゆる導電ペースト等を使用してもよい。ただし、この場合には、第1接続パッド62および第2接続パッド63の短絡を防止するため、第1接続パッド62および第2接続パッド63に対する導電ペーストの塗付領域がそれぞれ分離するように塗付すべきことに留意する。なお、ICチップ6の接続パッドに金バンプを形成している場合は、上記のよう導電接着剤61を介さずに、直接ICチップ6に熱圧を掛けて配線部30と接続してもよい。
【0068】
(vi)接着層
図2(b)や
図3に示すように、配線部30は、第2基材31の表裏面のうち、少なくとも一方の面に配置される。上述のエッチング方式以外で配線部30を形成する場合には、接着層が適宜用いられる。例えば、金属箔が形成された接着剤付きのフィルムからホットスタンプにより熱圧で所定パターンの配線部30を第2基材31上に形成する場合、あるいは、あらかじめ所定パターンの形状に打ち抜いた金属箔を第2基材31上に貼り付ける場合等が考えられる。
【0069】
接着層として、絶縁性の種々の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができる。なお、第2基材31として熱可塑性樹脂基材等を使用する場合は、接着層3あらためて設けなくても、例えば熱転写等によって、金属箔層を第2基材31の表面に転写する場合には、当該第2基材31自体が金属箔層と融着して接着効果を得ることができる。
【0070】
(vii)粘着層
さらに、
図2(b)や
図3に示すように、第2基材31の第1基材4を向く面には、粘着層38が設けられている。これは、後述するように、第2部分3を第1部分2に固定するためである。粘着層38としては、一般的なラベルに用いられる各種材料が使用でき、例えば天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤、ウレタン樹脂系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤等を使用することができる。
【0071】
また、粘着層38には、必要に応じて粘着付与剤、填料、軟化剤、老化防止剤、あるいは染料、顔料等の着色剤等を配合することもできる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が挙げられる。また、填料としてはシリカ、タルク、炭酸カルシウム、クレイ等が挙げられる。軟化剤としては可塑剤等が挙げられる。また、粘着層38の厚さについて特に限定はないが、例えば0.01mm以上、5.0mm以下程度としてもよい。
【0072】
第2基材31と第1基材4とがいずれも熱可塑性樹脂基材から形成されている場合は、粘着層38をあらためて設けなくてもよい。この場合は、第1部分2と第2部分3とを加熱した状態で第2部分3の第2基材31を第1部分2の第1基材4に当接させることにより、第2基材31と第1基材4とが自己融着して一体化するからである。さらに、第2部分に粘着層38を設けた状態で、第1基材4とは接着させず、第2部分3として一時保管する場合は、第2部分3の粘着層38の表面には図示しない剥離紙を設けることができる。剥離紙は、第2部分3を部分的に保管する際に粘着層38の粘着力を維持すべく用いられる。剥離紙の材料として、粘着層38の粘着力を阻害しないで当該粘着層38に付着できるものであれば特に制限はなく、各種樹脂フィルムやコート紙、あるいはそれらの複合材料にシリコーン等の離型剤を塗布したもの等を使用することができる。
【0073】
(b)包装体付き物品
次に、上述した構成の包装体1が、容器5の外表面に設けられた、包装体付き容器10について、
図1(a)および
図1(b)に基づき説明する。容器5は物品の一例であり、包装体付き容器10は包装体付き物品の一例である。容器5は、中央と下方が略円筒形で上方が先細りし、かつ上方に飲み口を備えたボトル51と、飲み口を塞ぐキャップ52と、から構成される。容器5は、キャップ52を閉めている状態において、液体を収納可能な密閉空間である内部53を有する。
【0074】
包装体1は、容器5の略円筒状の外周に沿って、容器5の少なくとも一部を覆うように巻き付けられて固定される。包装体1を容器5に対して固定する方法として、包装体1の容器5との当接箇所の一部に接着剤を塗付し、さらに、巻き付けられた包装体1の両端部を、接着剤を介して接合してリング状に仕上げる方法が考えられる。また、包装体1の第1基材4が熱収縮する部材である場合には、容器5の周囲に包装体1を巻き付けて、その両端部を、接着剤を介して接合した後、包装体1の全体を所定温度に加熱する方法が考えられる。この場合は、包装体1は容器5に当接または近接した位置に配置される。その後、包装体1を加熱することにより、第1基材4の熱収縮で包装体1と容器5との間の隙間が埋まるため、包装体1を容器5の形状にフィットして固定することができる。
【0075】
(c)包装体および包装体付き物品の製造方法
次に、本実施形態に係る包装体および包装体付き物品の製造方法について説明する。
図4および
図5は、第1実施形態の包装体1を構成する第1部分2に第2部分3を取り付けて包装体1とし、これを容器5に巻き付けて包装体付き容器10を製造する一連の製造方法を説明する図である。
【0076】
まず、
図4(a)に示すように、ロール状に巻かれた長尺の第1基材4を準備する。これに、グラビア印刷等によって、例えば銀系の導電粒子をバインダー樹脂や溶剤の中に分散させることで得られる導電インクを用いてアンテナ20を形成する。その後、乾燥炉等を通過させて導電インクの溶剤を揮発させ、乾燥させる。次に、
図4(b)に示すように、長尺の第1基材4を一定の長さに切断し、その後、第1部分2である第1基材4に形成されたアンテナ20の第1部分アンテナ21と第2部分アンテナ22とを跨ぐように第2部分3を搭載し固定する。
【0077】
これにより、切断された第1基材4には、互いに接合された第1部分2および第3部分3から構成された包装体1が形成される。第2部分を製造する方法、すなわち、第2基材31に配線部30を形成してさらにその上にICチップ6を搭載して固定する方法は前述したとおりである。なお、長尺の第1基材4の切断は、第1基材4のアンテナ20の上に第2部分3を搭載した後に行ってもよい。
【0078】
その後、
図4(c)に示すように、包装体1は容器5のボトル51の上下方向中央付近の外周に巻き付けられ、両端部どうしがホットメルト等の接着剤により接合される。これにより、包装体1は、容器5の上下方向の中心付近の外周にリング状に巻き付けられた状態となる。なお、包装体1の内側面とボトル51の外表面とが接着剤で接合されてもよい。これにより、包装体1をシュリンク加工しない場合でも、当該包装体1が容器5に対して上下方向にずれてしまうことが抑制できる。このようにして包装体付き容器10を得る。
【0079】
ところで、第2部分3を第1部分2に取り付ける工程では、製造ラインにおいて容器5の搬送動作を所定時間だけ停止させる必要がある。第2部分3を第1部分2に取り付ける工程と、包装体1を容器5に巻き付けて固定する工程とを同時に平行して行う場合は、両工程の処理能力を揃える必要があるからである。この場合、包装体1を容器5に巻き付けて固定する工程では、包装体1の巻き付け対象となる容器5を完全な静止状態にして、その外周に沿って第1部分2を巻き付けてもよい。
【0080】
あるいは、容器5を自身の略円筒形の中心軸に沿って回転させ、その間に、固定配置された包装体1を、接着剤を介して回転中の容器5に巻き付けてもよい。いずれにせよ、容器5に包装体1を巻き付けている間は、当該容器5を搬送方向に対して停止させる必要があり、その間、前後の容器5を同様に停止させても上述の理由から特段の工程律速要因にはならない。
【0081】
換言すれば、下流側にある容器5について、包装体1を当該容器5の周囲に取り付ける工程を実施する際の搬送動作が停止する時間帯を第1の時間帯とし、その上流側にある容器5について、第1部分2の外表面に第2部分3を積層する工程を実施する際の搬送動作が停止する時間帯を第2の時間帯とする。このとき、第1の時間帯と第2の時間帯の少なくとも一部が互いに重複するようにする。これにより、一連の工程の時間的ロスが軽減され、作業効率を向上させることができる。
【0082】
包装体1の第1基材4および第2基材31が熱収縮性を有し、包装体1をできる限り容器5の形状にフィットさせたい場合は、上記の包装体付き容器10を、
図5に示すように所定の乾燥炉304の中に通過させる。これにより、両基材を熱収縮させるシュリンク処理がさらに行われ、見栄えの良い包装体付き容器10とすることができる。ここで、第1基材4および第2基材31が、上述した熱収縮率の関係を有することにより、両基材の相対的な変形が極力抑えられ、外観上も通信特性上も良好な包装体付き容器10を得ることができる。
【0083】
(d)第1実施形態の包装体および包装体付き物品のまとめ
以上のとおり、第1実施形態の包装体1は、容器5に例示される物品の少なくとも一部を覆う。当該包装体1は、第1基材4と、これの少なくとも一方の面側に形成されたアンテナ20と、第2基材31と、これの少なくとも一方の面側に形成された配線部30と、を備える。また、配線部30と電気的に接続するICチップ6と、をさらに備える。第2基材31は第1基材4に積層され、アンテナ20、配線部30およびICチップ6は、外部機器との非接触通信が可能な通信回路を構成する。
【0084】
本実施形態の包装体1や包装体付き容器10が上記の構成を備えることに加えて、包装体1の第1基材4および第2基材31が、互いに同一材料を含むことができ、同一材料として例えばPETや紙材が例示できる。このとき、第1基材4および第2基材31の温湿度等の環境変化による伸縮傾向はおおむね近似する。その結果、第2基材31の伸縮度合いと第1基材4の伸縮度合いとが異なることに起因する、第2基材31の配線部30の変形等による通信特性の変動や、第2部分3の第1部分2からの脱落、位置ずれ等による通信特性の変動や外観不良を抑制することができる。
【0085】
また、第1基材4および第2基材31が互いに同一材料を含むか否かに関わらず、両者の熱収縮率の特性が一定の範囲であってもよい。具体的には、第1基材4および第2基材31は、外周面に前記包装体を当接または近接させた物品を100℃の熱湯に10秒間浸漬させた後の収縮率の差が5%以下である。両基材がこの条件を満たすことにより、もっとも収縮による影響が大きく出る第2部分3の長手方向の変形が抑制されることが期待でき、配線部30の変形、第2部分3の第1部分2からの脱落等による通信特性の変動や外観不良を抑制できる。
【0086】
さらに、第1基材4の延伸方向を第1延伸方向とし、第2基材31の延伸方向を第2延伸方向とするとき、第2延伸方向が第1延伸方向に沿うよう第1基材4と第2基材31とを積層してもよい。ここで、第1延伸方向と第2延伸方向との互いの傾きが45°以内であることが好ましく、22.5°以内であることがより好ましい。これにより、第1基材4の変形方向に直交する方向の第2基材31の変形量の成分が、第1基材4の変形方向についての第2基材31の変形量の成分を超えることがなく、第1基材4に対する第2基材31の相対的な変形を抑制するからである。
【0087】
2.第2実施形態
次に、本開示の包装体の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図6は、第2実施形態に係る包装体1aの構成を示す、
図2(b)と同様の断面図である。包装体1aは、第1部分2aの構造が第1実施形態の第1部分2と異なる。すなわち、第1部分2aは、第1基材4aの一方の面に形成されたアンテナ20を挟んで、第1基材4aと対向するように第3基材4bがさらに積層された構造を有する。第3基材4bの第1基材4aとは反対側の面に第2部分3が配置される。第3基材4bは、第1基材4aと同一材料で構成されてもよく、第1基材4として例示した、第1基材4aとは異なる材料で構成されていてもよい。ただし、環境変化による第1基材4aおよび第3基材4bの伸縮傾向の違いにより、いずれかにひずみや変形が偏って生じることを抑制する観点からは、伸縮傾向を揃えるべく、両基材を、同一材料を含むように構成することが好ましい。また、両基材の厚さについてもそれぞれ任意に決めることができる。
【0088】
第1部分2aをこのような構成にすることにより、印刷等で形成されるアンテナ20を、第1基材4aおよび第3基材4bで挟むことができる。これによって、第1部分2aのハンドリングや第1部分2aの容器5への取り付け等の加工時におけるアンテナ20の損傷等を抑制することができる。
【0089】
なお、第3基材4bを付加することにより、アンテナ20と第2部分3の配線部30との間には、第3基材4bが存在することとなる。これらは一般的に絶縁体であるので、各層の誘電率を適切に選択することにより、+Z方向側から包装体1aを平面視したときにアンテナ20と配線部30との重なる部分が容量結合する。したがって、配線部30とアンテナ20とが協働することにより、包装体1aは交流波形の電磁波の送受信を良好に行うことができる。
【0090】
本実施形態の第1部分2aの製造方法が、第1実施形態の第1部分2のそれと異なるのは、以下の点である。すなわち、第1基材4aの少なくとも一方の面にアンテナ20を形成した後、これに第3基材4bをアンテナ20が間に挟まれるように第1基材4aに対向配置させて、第3基材4bおよび第1基材4aの隙間に溶融樹脂を流し込み、両者を貼り合わせて接着させる工程がさらに追加される。ただし、第1基材4aおよび第3基材4bが加熱による自己融着性を有する場合は、接着剤を介さずに両基材の加熱だけで互いを接着させることができる。
【0091】
3.第3実施形態
次に、本開示の包装体付き物品の第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図7(a)は、容器5aに包装体1が設けられた包装体付き容器11を示す概略図である。
図7(b)は、
図7(a)の包装体付き容器11を鉛直方向であるE-E線を通る平面で切った断面を示す図である。容器5aは物品の一例であり、包装体付き容器11は包装体付き物品の一例である。
【0092】
容器5aが第1実施形態の容器5と異なるのは、容器5aの略円筒形の外表面に、上下向に沿って連続した凹凸部54が設けられていることである。容器5aを上下方向に垂直な平面で切ったときの外周部の断面形状は、鉛直軸に沿って順次一方向に進むにつれ、直径が小さい略円形から直径が大きい略円形へと順次変化する。その後、当該断面形状は、直径が大きい略円形から直径が小さい略円形へと順次変化する。さらに、当該断面形状は、この変化を繰り返すものとなる。容器5aがこのような形状であることにより、包装体1の特に第2部分3が有する凸形状部分が凹凸部54のいずれかの凹部58に収納され、包装体付き容器11における包装体1の外観が良好となるからである。
【0093】
ただし、容器5aが有する凹凸部54の形状は、このようなものには限定されず、容器5aの鉛直方向と垂直な平面内の外周に沿って凹凸が形成されていてもよく、不規則な凹凸パターンであってもよい。
【0094】
一方、包装体付き容器11の包装体1は、第1実施形態のものと同様である。よって、容器5aの形状が異なる以外は、包装体付き容器11の構成や製造方法は第1実施形態の包装体1および包装体付き容器10と同様である。ここで、
図7(b)に示すように、容器5aのボトル51aは所定の厚さを有し、ボトル51aは、内部53を向く内面55と、外部から視認できる外表面56とを備えている。容器5aの内部53に入れた液体は、ボトル51aの内面55と接する。
【0095】
これより、ボトル51aの外表面56に沿って巻き付けられた包装体1の当該外表面56と当接する面と、内面55との最短距離をDSとするとき、DSの値は0.5mm以上であることが好ましく、2.0mm以上であることがさらに好ましい。DSの値は通常、包装体1のアンテナ20が形成された第1基材4の主面の法線方向に沿った、外表面56のもっとも外側の部分と、内面55のもっとも外側すなわち外表面56に近い部分との距離となる。一般的に非接触通信の通信回路を構成するアンテナが水分に近づくほど、電波の進行が阻害され、通信可能距離が短くなる傾向がある。このため、容器5aに入れる内容物の主成分が水である場合、包装体1bのアンテナ20を内容物からできるだけ遠ざけることにより、包装体1bの外部機器との通信阻害を抑制することができる。
【0096】
一方、包装体1の第1基材4がシュリンクフィルムのように熱収縮する基材である場合は、第1基材4は、ボトル51aの外表面56に沿った形状に固定される。このため、上述のDSは、ボトル51aの外表面56のもっとも内側すなわち内面55に近い部分と、内面55のもっとも外側に近い部分との最短距離であるDTに置き換える必要がある。この場合、DTの値が0.5mm以上であることが好ましく、4.0mm以上であることがさらに好ましい。
【0097】
4.第4実施形態
次に、本開示の包装体の第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図8は、第4実施形態に係る包装体1cの構成を示す、
図2(a)に対応する平面図である。包装体1cは、第1実施形態と同様の構成の第2部分3を備えている。また、第1部分2bは、アンテナ20aを備えている。アンテナ20aは、一対となる第1部分アンテナ23および第2部分アンテナ24を備えている。
【0098】
左側の第1部分アンテナ23は、ICチップ6の搭載位置に近い側に、当該ICチップ6との電気的接続を図るための接続端23aを有し、当該第1部分アンテナ23に沿ってICチップ6から離れた末端に開放端23cを有している。また、接続端23aと開放端23cとの間は、第1実施形態のような直線部21bとは異なり、ジグザグ形状のメアンダ部23dで接続されている。同様に、右側の第2部分アンテナ24は、ICチップ6の搭載位置に近い側に、当該ICチップ6との電気的接続を図るための接続端24aを有し、当該第2部分アンテナ22に沿ってICチップ6から離れた末端に開放端24cを有している。また、接続端24aと開放端24cとの間は、第1部分アンテナ23と対称的にメアンダ部24dで接続されている。
【0099】
アンテナ20aはダイポールアンテナであるため、第1部分アンテナ23の開放端23cから第2部分アンテナ24の開放端24cまでの電気長が、通信電波の1/2波長となる必要がある。例えばUHF帯の920MHzで通信する場合は、上記電気長が約160mmとなる必要がある。よって、本実施形態のようにアンテナ20aをメアンダ形状とすることにより、アンテナ形状を横広がりの直線状とする場合に比べて、アンテナの左右幅を一層小さくすることができる。その結果、第1基材4へのアンテナ20aの形成領域を小さくでき、材料コストの低減が図れるとともに、アンテナ20aを見えにくくすることによる意匠性およびセキュリティ性の向上が図れる。
【0100】
5.第5実施形態
次に、本開示の包装体の第5実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図9(a)は、第5実施形態に係る包装体1dの構成を示す、
図2(a)に対応する平面図である。包装体1dは、第1実施形態とは異なる構成の第1部分2cおよび第2部分3bを備えている。
【0101】
第1部分2cは、アンテナ25を備えているが、第1実施形態のアンテナ20のように、二つの部分アンテナには分離しておらず、左右が連結したひとつのアンテナを構成する。ただし、アンテナ25は、アンテナ20のように左右に分離していてもよい。アンテナ25の左側のICチップ6から離れた末端に略長方形状の一部を形成する開放端25cを有している。これとは対称的に、アンテナ25の右側のICチップ6から離れた末端に略長方形状の一部を形成する開放端25dを有している。また、開放端25cと25dとの間には接続端がなく互いに直線部25bで接続されている。
【0102】
一方、第2部分3bは、+Z方向側から平面視かつ透視したときにアンテナ25の直線部25bと一部が重複する直線部39と、その両端に形成される開放端39cおよび39dとを有する配線部30aを備えている。また、配線部30aは、直線部39から2箇所で分岐し、ICチップ6と電気的に接続する接続端34cおよび34dまでの経路を形成するループ部第1分岐部34aおよびループ部第2分岐部34bをさらに備える。ループ部第1分岐部34aおよびループ部第2分岐部34bがループ部34を構成する。ループ部第1分岐部34aの接続端34cと、ループ部第2分岐部34bの接続端34dとは、第2部分3bを+Z方向側から平面視かつ透視したときにICチップ6と重なっている。すなわち、ループ部第1分岐部34aおよびループ部第2分岐部34bのそれぞれの一端はICチップ6と電気的に接続している。
【0103】
アンテナ25の直線部25bと配線部30aの直線部39とは、実際に当接していてもよく、両者が他の層により離隔していてもよい。両者が離隔している場合は、交流波形の電磁波の送受信を配線部30aとアンテナ25とが協働して行える程度に両者が容量結合できていればよい。一方、ICチップ6、ループ部第1分岐部34a、ループ部第2分岐部34b、および直線部39によって囲まれる閉回路は、ICチップ6とアンテナ25および配線部30aを含むアンテナ構造とのインピーダンスの共役整合を図る整合回路として機能する。
【0104】
本実施形態の第1部分2c、第2部分3b、および包装体1d付き容器の製造方法は、第1実施形態の対応するそれぞれの製造方法と同様である。本実施形態の包装体1dがこのような構成であることにより、アンテナ25の直線部25bと配線部30aの直線部39との+Z方向側から平面視かつ透視したときの重複部分の面積を大きくとることができる。これにより、第2部分3bの第1部分2cに対する積層位置が多少ずれても、両者の容量結合が良好に得られるため、包装体1bの製造負荷が軽減され、歩留まり向上等が期待できる。
【0105】
6.第6実施形態
続いて、本開示の包装体の第6実施形態について、第5実施形態との相違点を中心に説明する。
図9(b)は、第6実施形態に係る包装体1eの構成を示す、
図9(a)に対応する平面図である。包装体1eは、第5実施形態とは異なる構成の第2部分3cを備えている。
【0106】
本実施形態では、第2部分3cの配線部30bは、開放端を有さず、+Z方向側から平面視かつ透視したときに、配線部30bの一部は第1部分2cのアンテナ25と重複していない。第2部分3cの配線部30aは、直線部34eの両端からそれぞれICチップ6と電気的に接続するための接続端34cおよび34dまでの経路を形成するループ部第1分岐部34aおよびループ部第2分岐部34bを備える。直線部34e、ループ部第1分岐部34aおよびループ部第2分岐部34bがループ部34を構成する。接続端34cと34dとは、第2部分3cを+Z方向側から平面視かつ透視したときにICチップ6と重なっている。すなわち、ループ部第1分岐部34aおよびループ部第2分岐部34bのそれぞれの一端はICチップ6と電気的に接続している。
【0107】
アンテナ25の直線部25bと配線部30aの直線部34eとは、+Z方向側から平面視かつ透視したときに重複していないため、両者が重複している構成と比べて、容量結合の度合いが小さい。しかしながら、元々の両者の容量結合が弱いことから、第2部分3cの第1部分2cに対する積層位置が多少ずれても、両者の容量結合に大きな変動は生じにくい。よって積層位置の位置ずれが包装体1eの通信特性にさほど影響を与えることがないので、製造工程のばらつきに関わらず、常に安定した包装体1eの通信性能が確保できる。
【0108】
7.第7実施形態
次に、本開示の包装体の第7実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図10(a)は、包装体1fを説明するための
図2(a)に対応する平面図であり、
図10(b)は、
図10(a)の図において、包装体1fの長手方向に沿ったF-F線を通る包装体1fの厚さ方向に平行な平面で包装体1fを切ったときの断面図である。
【0109】
包装体1fは、第2部分3dの第1部分2に対する配置が第1実施形態の第2部分3と異なる。第2部分3dには、第1基材4に近い側から順に、粘着層38、第2基材31、配線部30およびICチップ6が配置されている。すなわち、第2部分3dは第1実施形態の第2部分3に対して、第2基材31からICチップ6に至る配置が逆転する。
【0110】
包装体1fをこのような構成としたとき、包装体1fの容器5への巻き付け方は2通りある。第1の巻き付け方は、第1基材4が最外周となるように巻き付ける方法であり、第2の巻き付け方は、ICチップ6が最外周となるように巻き付ける方法である。第1の巻き付け方では、外力や環境変化で劣化しやすいICチップ6が第1基材4で保護されることとなり、包装体1fとしての耐久性や信頼性が向上する。一方、第2の巻き付け方は、容器5の側面に凹部がなく、ICチップ6を収納する隙間が設けられない場合に、第1基材4に皺を作ることなくまっすぐ容器5の外周に巻ける点において有利である。
【0111】
なお、第2実施形態から第6実施形態に至る一連の包装体は、その断面を見たときに、 第1基材4または4bに近い側から順に、粘着層38、ICチップ6、配線部30および第2基材31が配置される構成である。しかし、これらはいずれも本実施形態のように、第1基材4または4bに近い側から順に、粘着層38、第2基材31、配線部30およびICチップ6が配置される構成に置き換えた実施形態としてもよい。この場合、いずれの実施形態においても上述の効果が得られることは言うまでもない。
【実施例】
【0112】
8.実施例
以下のとおり、本開示に関する実施例について説明する。ただし本開示の内容は当該実施例に限定されない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0113】
(a)実施例および比較例のサンプル作製
(i)実施例1
まず、第1基材として、厚さ30μmの透明なPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製ヒシペット(登録商標)LX-18S)を用いて、当該フィルムの巻き付け時に容器側を向く面に、所望のデザインおよびアンテナを多数列が繰り返す多面付けでグラビア印刷した。これにより、第1基材にアンテナが形成された第1部分が完成した。また、第2基材として、厚さ25μmの透明なPETフィルム(東レ株式会社製ルミラー(登録商標))を用いて、第1基材と同種類のPETフィルムに銅を真空蒸着し、90℃でアニール処理した後、フォトリソグラフィ法により所望の配線部を作製した。さらに、この配線部に対してICチップのパッドが配線部と電気的に接続できるように、あらかじめパッドに金バンプを形成したICチップを配線部に対して熱圧着して接合した。これにより、第2基材に配線部およびICチップが設けられた第2部分が完成した。
【0114】
第2部分を、縦10mm、横30mmに切断加工して、ロール状の第1部分の巻き付け時に内側となるアンテナ上の所定の位置に接着した。第2部分は、その配線部とICチップとが第1部分に挟まれるような向きで第1部分に対して接着した。その後、長尺の第1部分を所定長さにカットした。これで第1部分と第2部分とを備える短冊状の実施例に係る包装体を得た。包装体の寸法は長手方向側を230mm、短手方向側を160mmとした。これを最大周径228mm、最小周径185mmの側面に凹凸を有するボトルに巻き付けた。このような実施例1に係る包装体付き容器のサンプルのひとつについて、100℃の熱湯に10秒間浸漬させたのち、包装体を切断して容器から取り外し、さらに第1基材と第2基材に分離し、各寸法を測定し収縮率を求めた。この結果、ボトルに巻き付けない状態での第1基材の収縮率は76%であったが、ボトルに巻き付けた状態ではボトルの外形にならうため、実際の第1基材の収縮率はこれよりも小さいものとなり、本実施例では、最大周径228mmの部分では第1基材の収縮率が1.0%、最小周径185mmの部分では19%であった。一方、第2基材の収縮率は0.5%であった。なお、第2基材は第1基材に対して最大周径の部分で接着されており、第1基材の最小周径の部分には第2基材が接着していない。
【0115】
(ii)実施例2
最大周径216mm、最小周径172mmの側面に凹凸を有するボトルに巻き付けたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る包装体付き容器のサンプルを作製した。このような包装体付き容器のサンプルのひとつについて、実験例1と同様に100℃の熱湯に10秒間浸漬させたのち、包装体を切断して容器から取り外し、さらに第1基材と第2基材に分離し、各寸法を測定し収縮率を求めた。この結果、最大周径216mmの部分では第1基材の収縮率が6%、最小周径172mmの部分では25%であった。一方、第2基材の収縮率は実施例1と同様に0.5%であった。
【0116】
(iii)比較例
最大周径207mm、最小周径163mmの側面に凹凸を有するボトルに巻き付けたこと以外は、実施例1と同様にして比較例に係る包装体付き容器のサンプルを作製した。このような包装体付き容器のサンプルのひとつについて、実験例1と同様に100℃の熱湯に10秒間浸漬させたのち、包装体を切断して容器から取り外し、さらに第1基材と第2基材に分離し、各寸法を測定し収縮率を求めた。この結果、最大周径207mmの部分では第1基材の収縮率が10%、最小周径163mmの部分では29%であった。一方、第2基材の収縮率は実施例1と同様に0.5%であった。
【0117】
(b)実験内容と結果
上記の実施例および比較例の包装体付き容器の各サンプルのうち、100℃の熱湯への浸漬を行わなかったものについて、スチーム式加熱収縮装置に85 ~95℃で通過させてラベルを容器形状にフィットさせ、熱収縮後の包装体付き容器を得た。これらのサンプルに対して、(1)外観確認、(2)非接触通信確認を行った。それぞれの確認結果について下記記号を記入した。
(1)外観確認
〇:外観は良好であった。
△:外観はやや悪いが製品として出荷可能なレベルであった。
×:しわや亀裂の発生等が著しく、外観は不良であった。
(2)非接触通信確認
〇:良好に通信できた。
△:通信感度が低下したが、製品として出荷可能なレベルであった。
×:通信できないか、または通信感度が著しく低下した。
【0118】
【0119】
上記試験結果を表1に示す。第1基材および第2基材の最大周径の部分における、100℃の熱湯に10秒間浸漬させた後の収縮率の差が0.5%または5.5%である実施例1、2は外観、非接触通信性能に問題がなかった。その反面、第1基材および第2基材の最大周径の部分における、100℃の熱湯に10秒間浸漬させた後の収縮率の差が9.5%である比較例は少なくとも外観において問題があることが分かった。
【符号の説明】
【0120】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f 包装体
2、2a、2b、2c 第1部分
3、3a、3c、3d 第2部分
4、4a 第1基材
4b 第3基材
5、5a 容器
6 ICチップ
9 アンテナ積層体
10、11 包装体付き容器
20、20a、25 アンテナ
21、23 第1部分アンテナ
21a、23a 接続端
21b 直線部
21c、23c 開放端
22、24 第2部分アンテナ
22a、24a 接続端
22b 直線部
22c、24c 開放端
23d、24d メアンダ部
25b 直線部
25c、25d 開放端
30、30a 配線部
31 第2基材
32 第1分岐部
32a 接続端
32b 直線部
32c 開放端
33 第2分岐部
33a 接続端
33b 直線部
33c 開放端
34 ループ部
34a ループ部第1分岐部
34b ループ部第2分岐部
34c、34d 接続端
34e 直線部
35 隙間
38 粘着層
39 直線部
39c、39d 開放端
51、51a ボトル
52 キャップ
53 内部
54 凹凸部
55 内面
56 外表面
57、58 凹部
61 導電接着剤
61a バインダー
61b 導電粒子
62 第1接続パッド
63 第2接続パッド
200 転写箔フィルム
200A 転写箔フィルムカス
201 支持基材
202 金属箔層
302 ホットスタンプ治具
303 切欠き
304 ヒーター