(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】表示端末、文書データの表示システムおよび文書データの表示方法
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20241001BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20241001BHJP
G09G 5/24 20060101ALI20241001BHJP
G09G 5/10 20060101ALI20241001BHJP
G09G 5/02 20060101ALI20241001BHJP
G09G 5/22 20060101ALI20241001BHJP
G09G 5/26 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G09G5/00 550C
G06F3/01 510
G09G5/00 550B
G09G5/24 630H
G09G5/24 630B
G09G5/10 B
G09G5/02 B
G09G5/00 550X
G09G5/22 630G
G09G5/26 Z
(21)【出願番号】P 2020166566
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 健士郎
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-228490(JP,A)
【文献】特開2015-049332(JP,A)
【文献】特開2011-004036(JP,A)
【文献】特開2005-202208(JP,A)
【文献】特開2016-051449(JP,A)
【文献】特開2015-210689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00 - 5/42
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書データを表示する表示端末であって、
前記文書データを表示する表示部と、
外部環境を取得する取得部と、
前記文書データの表示形態、および前記外部環境、を対応付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部を参照して前記文書データと前記外部環境とが対応付けられた、前記表示部に表示すべき表示形態を特定する表示形態判断部と、
前記表示形態判断部により特定された表示形態にて表示する表示形態変更部と、
疲労検出部と、を備え、
前記疲労検出部は、前記表示端末における前記表示部の改頁操作の時間間隔が所定以上である疲労状態であることを検出し、
前記表示形態判断部は、前記疲労状態と対応付けられた前記表示部に表示すべき文書データの表示形態を特定することを特徴とする表示端末。
【請求項2】
文書データを表示する表示端末であって、
前記文書データを表示する表示部と、
外部環境を取得する取得部と、
前記文書データの表示形態、および前記外部環境、を対応付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部を参照して前記文書データと前記外部環境とが対応付けられた、前記表示部に表示すべき表示形態を特定する表示形態判断部と、
前記表示形態判断部により特定された表示形態にて表示する表示形態変更部と、
乱視傾向検出部と、を備え、
前記表示部は、同一太さの複数の表示線が異なる角度で配置された図形である乱視傾向確認表示を表示でき、
前記乱視傾向検出部は、ユーザが入力した、前記乱視傾向確認表示における視認が困難な前記表示線の方向を特定し、
前記表示形態判断部は、文書データを構成する線要素のうち、前記視認が困難な前記表示線の方向に沿った前記線要素の幅を大きくするように、前記表示部に表示すべき文書データの表示形態を特定することを特徴とする表示端末。
【請求項3】
前記外部環境は照度、混雑状況、混雑時間帯のいずれかを含む、請求項1
または請求項2に記載の表示端末。
【請求項4】
前記表示形態判断部により特定された前記表示部に表示すべき文書データの表示形態は、文書データのサイズ、文書データの太さ、文書データの間隔、行間隔、文書データの書体、文書データの表示部に対する角度、文書データの色彩、文書データの輝度、の少なくともいずれかを含む、請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の表示端末。
【請求項5】
ユーザの顔画像を取得可能な画像取得部と、
前記顔画像から前記ユーザと前記表示端末との距離および前記ユーザに対する前記表示端末の傾きの少なくともいずれかを算出する距離傾斜算出部と、をさらに備え、
前記表示形態判断部は前記距離傾斜算出部が算出した前記距離または前記傾きの少なくともいずれかを考慮して前記表示部に表示すべき文書データの表示形態を特定する、請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載の表示端末。
【請求項6】
移動検出部をさらに備え、
前記移動検出部は、前記距離傾斜算出部が算出した前記距離または前記傾きの所定以上の変化が、所定時間内に所定回数ある移動状態であることを検出し、
前記表示形態判断部は、前記移動状態と対応付けられた前記表示部に表示すべき文書データの表示形態を特定する、
請求項5に記載の表示端末。
【請求項7】
文書データの表示システムであって、
表示端末と、
管理サーバと、を備え、
前記表示端末は、前記文書データを表示する表示部と、
前記管理サーバと通信するための通信部と、
外部環境を取得する取得部と、を備え、
前記管理サーバは、
前記文書データの表示形態、および前記外部環境、を対応付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部を参照して前記文書データと前記外部環境とが対応付けられた、前記表示部に表示すべき表示形態を特定する表示形態判断部と、
前記表示形態判断部により特定された表示形態にて表示する表示形態変更部と、を備え、
前記表示端末は、前記取得部が取得した前記外部環境に関する情報を前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバから受信した前記表示部の表示形態を変更して表示する指示に基づき、前記表示部の表示を変更し、
前記管理サーバは、前記表示端末から前記取得部が取得した前記外部環境に関する情報を受信し、
前記表示形態変更部の前記表示部の表示形態を変更して表示する指示を前記表示端末に送信
し、
前記表示端末は、疲労検出部をさらに備え、
前記疲労検出部は、前記表示端末における前記表示部の改頁操作の時間間隔が所定以上である疲労状態であることを検出し、
前記表示形態判断部は、前記疲労状態と対応付けられた前記表示部に表示すべき文書データの表示形態を特定することを特徴とする、文書データの表示システム。
【請求項8】
文書データの表示システムであって、
表示端末と、
管理サーバと、を備え、
前記表示端末は、前記文書データを表示する表示部と、
前記管理サーバと通信するための通信部と、
外部環境を取得する取得部と、を備え、
前記管理サーバは、
前記文書データの表示形態、および前記外部環境、を対応付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部を参照して前記文書データと前記外部環境とが対応付けられた、前記表示部に表示すべき表示形態を特定する表示形態判断部と、
前記表示形態判断部により特定された表示形態にて表示する表示形態変更部と、を備え、
前記表示端末は、前記取得部が取得した前記外部環境に関する情報を前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバから受信した前記表示部の表示形態を変更して表示する指示に基づき、前記表示部の表示を変更し、
前記管理サーバは、前記表示端末から前記取得部が取得した前記外部環境に関する情報を受信し、
前記表示形態変更部の前記表示部の表示形態を変更して表示する指示を前記表示端末に送信
し、
前記表示端末は、乱視傾向検出部をさらに備え、
前記表示部は、同一太さの複数の表示線が異なる角度で配置された図形である乱視傾向確認表示を表示でき、
前記乱視傾向検出部は、ユーザが入力した、前記乱視傾向確認表示における視認が困難な前記表示線の方向を特定し、
前記表示形態判断部は、文書データを構成する線要素のうち、前記視認が困難な前記表示線の方向に沿った前記線要素の幅を大きくするように、前記表示部に表示すべき文書データの表示形態を特定することを特徴とする、文書データの表示システム。
【請求項9】
文書データを表示する方法であって、
外部環境を取得する工程と、
前記文書データの表示形態および前記外部環境、を対応付けて記憶する記憶部を参照して前記文書データと前記外部環境とが対応付けられた
、表示部に表示すべき表示形態を特定する工程と、
前記特定された表示形態にて前記文書データを表示する工程と、を備え
、
前記表示部に表示すべき表示形態を特定する工程は、前記表示部の改頁操作の時間間隔が所定以上である疲労状態であることを検出し、前記疲労状態と対応付けられた前記表示部に表示すべき文書データの表示形態を特定することを特徴とする方法。
【請求項10】
文書データを表示する方法であって、
外部環境を取得する工程と、
前記文書データの表示形態および前記外部環境、を対応付けて記憶する記憶部を参照して前記文書データと前記外部環境とが対応付けられた
、表示部に表示すべき表示形態を特定する工程と、
前記特定された表示形態にて前記文書データを表示する工程と、を備え
、
前記表示部に表示すべき表示形態を特定する工程は、同一太さの複数の表示線が異なる角度で配置された図形である乱視傾向確認表示を表示し、ユーザが入力した、前記乱視傾向確認表示における視認が困難な前記表示線の方向を特定し、文書データを構成する線要素のうち、前記視認が困難な前記表示線の方向に沿った前記線要素の幅を大きくするように、前記表示部に表示すべき文書データの表示形態を特定することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子書籍の閲覧に使用される表示端末の外部環境に応じて、文書データサイズ等の表示形態を変更することが可能な表示端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、市場ニーズや電子機器の小型化、高性能化に伴い、書籍の文書データやデザイン等の情報を電子機器のディスプレイに表示させてこれを読むことにより、紙媒体である書籍を持ち歩くことなく読書することが可能な電子書籍のシステムが普及している。電子機器としては専用の電子書籍リーダーやスマートフォン、パーソナルコンピュータ等が使用される。書籍の文書データ情報等を電子データとして当該電子機器のメモリ等にダウンロードし、これをディスプレイに表示させたり、アプリケーションサーバと通信してウェブ上で当該情報等を閲覧することができる。
【0003】
このような可搬型の電子機器による電子書籍の読書は時間と場所を問わずにできる。このため、例えば混雑した電車内でも、大きな本を広げて読むことに比べて小さいスペースで読書できる等、電子書籍の利便性は高い。一方、電車のように揺れる場所での読書時や目の疲れにより文書データが見え難くなった際の読書時には、電子機器の設定を変えることにより文書データを拡大して読み易くすることができる。電子機器の設定には、文書データサイズの他、周囲の明るさ等の外部環境も影響する。このような電子機器の手動による設定変更は作業が煩雑なため、例えば特許文献1には、最適文字サイズ算出部、表示形態変更部、視点検出部および停留検出部を有する文字サイズ変更機能を備えた電子書籍端末が記載されている。
【0004】
当該電子書籍端末では、最適文字サイズ算出部が、停留検出部で視点の停留を検出したときに、最適文字サイズを算出し、表示形態変更部が読者の視点が停留した文字記号数字情報の表示位置を変更せずに、最適文字サイズに応じて文字記号数字情報の配置を変更する。これにより、読者が手動で調整することなく、読者の読書条件に応じた最適な文字サイズに応じた文字記号数字情報に基づく電子書籍の読書が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、様々な環境における表示端末の見易さには、ユーザと電子機器の表示画面との距離だけでなく、文書データの視認中の電子機器周辺の外部環境も大きく影響する。本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、ユーザが利用する表示端末の外部環境を考慮した適切な表示形態で文書データを表示することが可能な表示端末、文書データの表示システムおよび文書データの表示方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態による表示端末は、文書データを表示する表示端末であって、前記文書データを表示する表示部と、外部環境を取得する取得部と、前記文書データの表示形態、および前記外部環境、を対応付けて記憶する記憶部と、前記記憶部を参照して前記文書データと前記外部環境とが対応付けられた、前記表示部に表示すべき表示形態を特定する表示形態判断部と、前記表示形態判断部により特定された表示形態にて表示する表示形態変更部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本実施の別の形態による表示端末において、前記外部環境は照度、混雑状況、混雑時間帯のいずれかを含んでもよい。
【0009】
また、本実施の別の形態による表示端末において、前記表示形態判断部により特定された前記表示部に表示すべき文書データの表示形態は、文書データのサイズ、文書データの太さ、文書データの間隔、行間隔、文書データの書体、文書データの表示部に対する角度、文書データの色彩、文書データの輝度、の少なくともいずれかを含んでもよい。
【0010】
また、本実施の別の形態による表示端末は、ユーザの顔画像を取得可能な画像取得部と、前記顔画像から前記ユーザと前記表示端末との距離および前記ユーザに対する前記表示端末の傾きの少なくともいずれかを算出する距離傾斜算出部と、をさらに備え、前記表示形態判断部は前記距離傾斜算出部が算出した前記距離または前記傾きの少なくともいずれかを考慮して前記表示部に表示すべき文書データの表示形態を特定してもよい。
【0011】
また、本実施の別の形態による表示端末は、移動検出部をさらに備え、前記移動検出部は、前記距離傾斜算出部が算出した前記距離または前記傾きの所定以上の変化が、所定時間内に所定回数ある移動状態であることを検出し、前記表示形態判断部は、前記移動状態と対応付けられた前記表示部に表示すべき文書データの表示形態を特定してもよい。
【0012】
また、本実施の別の形態による表示端末は、疲労検出部をさらに備え、前記疲労検出部は、前記表示端末における前記表示部の改頁操作の時間間隔が所定以上である疲労状態であることを検出し、前記表示形態判断部は、前記疲労状態と対応付けられた前記表示部に表示すべき文書データの表示形態を特定してもよい。
【0013】
また、本実施の別の形態による表示端末は、乱視傾向検出部をさらに備え、前記表示部は、同一太さの複数の表示線が異なる角度で配置された図形である乱視傾向確認表示を表示でき、前記乱視傾向検出部は、ユーザが入力した、前記乱視傾向確認表示における視認が困難な前記表示線の方向を特定し、前記表示形態判断部は、文書データを構成する線要素のうち、前記視認が困難な前記表示線の方向に沿った前記線要素の幅を大きくするように、前記表示部に表示すべき文書データの表示形態を特定してもよい。
【0014】
また、本実施の形態による文書データの表示システムは、表示端末と、管理サーバと、を備え、前記表示端末は、前記文書データを表示する表示部と、前記管理サーバと通信するための通信部と、外部環境を取得する取得部と、を備え、前記管理サーバは、前記文書データの表示形態、および前記外部環境、を対応付けて記憶する記憶部と、前記記憶部を参照して前記文書データと前記外部環境とが対応付けられた、前記表示部に表示すべき表示形態を特定する表示形態判断部と、前記表示形態判断部により特定された表示形態にて表示する表示形態変更部と、を備え、前記表示端末は、前記取得部が取得した前記外部環境に関する情報を前記管理サーバに送信し、前記管理サーバから受信した前記表示部の表示形態を変更して表示する指示に基づき、前記表示部の表示を変更し、前記管理サーバは、前記表示端末から前記取得部が取得した前記外部環境に関する情報を受信し、前記表示形態変更部の前記表示部の表示形態を変更して表示する指示を前記表示端末に送信することを特徴とする。
【0015】
また、本実施の形態による文書データを表示する方法は、外部環境を取得する工程と、 前記文書データの表示形態および前記外部環境、を対応付けて記憶する記憶部を参照して前記文書データと前記外部環境とが対応付けられた、前記表示部に表示すべき表示形態を特定する工程と、前記特定された表示形態にて前記文書データを表示する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本実施の形態によれば、ユーザが利用する表示端末の外部環境を考慮した適切な表示形態で電子書籍の文書データを表示することが可能な表示端末、文書データの表示システムおよび文書データの表示方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る表示端末の構成図である。
【
図2】表示端末の画素および照度について説明する図である。
【
図3】表示部への文書データの表示形態を説明する図である。
【
図4】表示部への文章の表示形態を説明する図である。
【
図5】第1実施形態に係る文書データ表示形態の変更を説明するフロー図である。
【
図7】第2実施形態に係る表示端末の構成図である。
【
図8】ユーザと表示端末との距離について説明する図である。
【
図9】ユーザと表示端末との傾きについて説明する図である。
【
図10】ユーザと表示端末との傾きについて説明する図である。
【
図11】第2実施形態に係る文書データ表示形態の変更を説明するフロー図である。
【
図14】第3実施形態に係る表示端末の構成図である。
【
図15】第3実施形態に係る文書データ表示形態の変更を説明するフロー図である。
【
図16】第4実施形態に係る表示端末の構成図である。
【
図17】第4実施形態に係る文書データ表示形態の変更を説明するフロー図である。
【
図19】第5実施形態に係る表示端末の構成図である。
【
図20】乱視傾向確認表示の例および表示部への文書データの表示形態を説明する図である。
【
図21】第6実施形態に係る文書データの表示システムの構成図である。
【
図22】第6実施形態に係る文書データの表示システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面等を参照して、本開示の表示端末の一例について説明する。ただし、本開示の表示端末は、以下に説明する実施形態や実施例には限定されない。
【0019】
なお、以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略する。本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0020】
1.第1実施形態
本開示の表示端末の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係る表示端末1は電子書籍や新聞等を閲覧可能な電子機器である。これは主として制御部3、表示部4、記憶部5、通信部6操作部7、画像取得部2および電源部8を備える。特に表示部4、並びに制御部3に含まれる外部環境取得部37、表示形態判断部32および表示形態変更部33が表示端末1としての必須の構成要素である。
【0021】
表示端末1は専用の電子書籍リーダーであってもよく、スマートフォンやパーソナルコンピュータ等であってもよい。表示端末1は通信部6を介してネットワークに接続でき、このネットワークを通じてあらかじめ契約されたアプリケーションサーバ等から所望の電子書籍データをダウンロードし、これを記憶部5に保存する。これにより、ユーザは任意の場所やタイミングで、ダウンロードした電子書籍の文書データの情報を表示端末1の操作部7の操作により表示部4に表示させ、読書することができる。
【0022】
表示端末1の制御部3に含まれる外部環境取得部37は、表示端末1の周囲の照度を測定する照度測定部38からの測定データを取得する機能を有する。照度測定部38は、表示端末1の外面のいずれかに配置されていればよく、その位置や大きさに制限はない。照度測定部38は、周囲の明るさ、すなわち照度を測定するものである。照度は単位面積に入射する光束量を示すもので、単位はルクス(lux)である。照度測定部38を構成する照度センサとして、フォトトランジスタを使用するもの、フォトダイオードを使用するもの、フォトダイオードの出力をアンプ回路により増幅するもの等が用いられる。表示端末1がスマートフォンである場合、当該スマートフォンにはこのような照度センサを備え、周囲の明るさに応じて自身の表示部の輝度を自動的に調整するものも存在する。
【0023】
また、表示端末1は、前述した画像取得部2が取得したユーザの顔画像を画像処理部30で加工編集し、さらに外部環境取得部37にて顔画像の階調値等の輝度関連データを抽出して顔画像の明るさを判定し、これを表示端末1の周囲の照度に代わる指標として算出するものとしてもよい。表示端末1が照度測定部38を備える場合、または上記のような画像処理部30および外部環境取得部37にて照度と相関性のある指標が算出できる場合、上述した表示形態判断部32は、この情報をもとに適切な文書データの表示形態を特定することができる。外部環境取得部37は、例えば照度測定部38より連続的にまたは所定時間間隔ごとにユーザが使用している表示端末1の周囲の照度値を取得する。表示形態判断部32はこの照度値と対応付けられた表示部4に表示すべき文書データの表示形態をあらかじめ記憶部5に記憶されたテーブル等を参照して特定する。
【0024】
その後、表示形態変更部33は表示形態判断部32により特定された表示部4に表示すべき文書データの表示形態が、表示部4に現在表示されている文書データの表示形態と異なる場合に、特定された表示部4に表示すべき文書データの表示形態に基づいて、表示部4の文書データを変更して表示する。例えば、表示部4に現在表示されている文書データのサイズが10ポイントであり、特定された表示部4に表示すべき文書データのサイズが12ポイントであれば、表示される文書データのサイズは10ポイントから12ポイントに変更される。
【0025】
このような構成により、表示端末1の表示部4の外部環境である照度が変動した場合、その照度に対応した適切な文書データの表示形態が選択され、適宜変更され得ることとなる。よって、ユーザが自分で操作することを必要とせず、表示端末1の周囲の照度を考慮した適切な表示形態で電子書籍等の文書データを表示することができる。また、ユーザが余計な操作を手動で行うといった作業負荷が軽減でき、文書データが表示部4の周囲の照度状態に対して不適切な表示形態のまま読書し続けることによるユーザの疲労を軽減させ、快適な読書が可能となる。以下に、表示端末1の各構成の詳細を説明する。なお、文書データとは電子書籍で表示情報として使用され得る文書データ、英数字、記号等やこれらの集合体である文章等の文書情報を総称するものである。
【0026】
(a)表示端末の構成
(i)表示部および操作部
図2(a)に記載されるように、表示端末1は、当該端末の外形寸法よりも一回り小さい略矩形領域である表示部4を備えている。表示部4は液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、電子ペーパー等により構成される。表示部4は文書データの情報や文章情報等を制御部3からの指示に基づき、ユーザに視認できるように画面上に表示させる機能を有している。また、表示部4には、各種操作を受け付けるためのメニュー画面を表示させることができ、表示部4を構成するタッチパネルをユーザ100の指で触ることにより様々な操作入力が行える。
【0027】
タッチパネルは静電容量方式、電磁誘導方式、赤外線方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式等の公知の技術により形成できる。よって、タッチパネルを通じて操作を行う場合、表示部4がその一部として操作部7の機能を兼ね備える。ただし、表示端末1は表示部4のタッチパネルではなく、あるいはタッチパネルの機能に加えて別個にプッシュボタンや切り替えスイッチ等の操作部7を備えてもよい。
【0028】
図2(a)の表示端末1の表示部4のうち、丸で囲ったB部を拡大した拡大図を
図2(b)に示す。表示部4が一般的なドットマトリックス型の液晶ディスプレイである場合、表示部4は赤色(R)、緑色(G)および青色(B)を発色する縦長の副画素161、162および163が互いに隣接してひとつの略正方形の画素160を構成する。この画素160が縦横にマトリックス状に連続的に配置されて表示部4が構成される。
【0029】
赤色(R)、緑色(G)および青色(B)を発色する副画素161、162および163は、それぞれ明るさまたは輝きのレベルすなわち輝度のレベルを最小値0から最大値255までの256段階の階調として各々別個に有している。その結果、各副画素161、162および163が、それぞれ0から255までのいずれかの階調を有する状態でこれらが加色混合された一つの色および輝度を有する画素として、ユーザに認識される。
【0030】
輝度は、ユーザが表示部4の画像を見たときの明るさを表す指標であり、面光源を観測点から見た時、観測点を通過する単位面積かつ単位立体角から放射される光束量で定義される。輝度の単位はカンデラ毎平方メートルである。表示部4に表示された画像の正確な輝度は市販の輝度計を用いて測定することも可能であるが、通常は上述する赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の副画素161、162および163の各階調の値を利用して輝度の大小を判断する。副画素161、162および163の各階調値は輝度との線形または非線形の相関関係を有する。すなわち、副画素161、162および163のいずれかの副画素において階調値が1以上大きくなれば、増加の割合は一定ではないものの画素160の輝度も大きくなる関係にある。
【0031】
このように、所定場所のある値の大小の変化に応じて、当該所定場所の輝度も所定の大小の変化を来す関係がある場合、このある値を輝度に関連付けられた特性値と呼ぶことにする。例えば各画素の輝度階調値の平均値を第1の特性値と規定した場合、第1の特性値CVpは一例として副画素161、162および163の各階調値をR0、G0およびB0として、CVp=(R0+G0+B0)/3として算出することができる。また、RGB各色のユーザに与える明るさの印象には差があることから、各画素の輝度階調値の加重平均値を第1の特性値と規定し、R0、G0およびB0のそれぞれに所定の係数を乗じた加重平均としてもよい。例えばCIE XYZ表色系におけるYを輝度に相当する尺度と解釈し、CVp=Y=0.298912×R0+0.586611×G0+0.114478×B0とする変換式が多用される。ただし、他の変換式を用いてもよい。
【0032】
一方、表示端末1には図示しない照度測定部38がその外面上に配置される。例えば
図2(a)は、表示端末1の周囲の明るさが適切に維持され、表示部4全体の視認性が良好な状態である。このとき、表示部4に表示された文書データ131は、明確に視認できる。一方、外部環境の一つである表示端末1の周囲の明るさが低下した場合、表示部4の輝度が適切に高まらない場合は、
図2(c)のように表示部4全体の視認性が低下し、表示部4に表示された文書データ132は、視認が困難となる場合がある。このとき、表示部4の輝度を高くする方法が考えられるが、それ以外の方法として、
図2(d)に示すように、表示部4に表示された文書データのサイズを大きくすることで視認性を向上させることができる。すなわち、文書データ133は、文書データ132よりもサイズが大きいため、ユーザから見えやすくなる。
【0033】
(ii)画像取得部
画像取得部2は、表示端末1の表示部4に表示された文書データを読むユーザの顔画像を撮影、取得する機能を有する。画像取得部2は、通常のデジタルカメラ等の構成と同様に、レンズ、絞り、シャッターおよびCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子等から構成される。被写体からの反射光がレンズを通じて入光し、縦横のマトリックス状に配置された各々の撮像素子に当たることによって、当該撮像素子は受光強度をRGB3色の256諧調の輝度値のデジタルデータに変換して外部に出力する。
【0034】
これにより、画像取得部2は、制御部3からの指示により所定のタイミングでユーザの顔画像を撮影、取得することができる。表示端末1が画像取得部2を備えることにより、画像取得部2がユーザの顔画像を取得することで、ユーザが文書データを閲覧中であるかを後述する画像処理部30が判断できる。これによって、外部環境取得部37や、表示形態判断部32、表示形態変更部33は、ユーザが文書データを閲覧中である場合に限って動作できるように設定でき、これらが非閲覧中に作動してしまう等の無駄を抑制できる。
【0035】
(iii)通信部
通信部6は、表示端末1がインターネットや携帯電話網、LAN等の広域通信網と接続して各種サーバから電子書籍データをダウンロードしたり、各種サーバが提供するウェブ画面を通じて電子書籍を閲覧するための通信機能を有している。通信部6は無線通信のためのアンテナやA/DおよびD/A変換器等の通信インターフェースを備え、制御部3からデータバスを通じて送信された指示信号に従い送信用データを所定の交流波形の電波に変換して出力する。
【0036】
また、外部から送信された電波を受信しこれをデジタルデータとしてデータバスを通じて制御部3に送信する。出力された電波および情報は付近に設置されたWi-Fi(登録商標)のアクセスポイントやLTE(Long Term Evolution)の基地局等を中継して広域通信網に伝達される。なお、表示端末1が、文書データをUSBメモリや通信ケーブルを接続してダウンロードできる構成であれば、表示端末1は通信部6を備えていなくてもよい。
【0037】
(iv)記憶部
記憶部5は、各種データを記憶する機能を有し、固定データを記憶するROMや一時的な記憶のためのRAM、および可変情報であるアプリケーションデータやパラメータを記憶するフラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリ等から構成される。記憶部5のうち、電子書籍に関係するデータとして、例えば文書データ51、文書データアプリ52および表示属性データ53等が記憶されている。
【0038】
文書データ51は、表示端末1が上述の広域通信網を経由して各種サーバからダウンロードした電子書籍のコンテンツデータであり、表示端末1は、操作部7の操作により記憶部5から文書データ51を読み出して、これを頁単位等で表示部4に表示させることができる。ただし、表示端末1が各種サーバの提供するウェブ画面を通じて電子書籍を閲覧する方式を採用している場合は、文書データ51を記憶部5に格納する必要はない。
【0039】
文書データアプリ52は、ダウンロードした文書データ51を、ユーザが表示端末1の表示部4に文書データの情報として表示し、読書や各種操作ができるようにするためのアプリケーションプログラムや各種パラメータから構成される。ただし、表示端末1が各種サーバの提供するウェブ画面を通じて電子書籍を閲覧する方式を採用している場合は、文書データアプリ52の代わりに閲覧用のウェブブラウザを有してもよい。
【0040】
表示属性データ53は、広い意味では文書データアプリ52に含まれてもよいが、電子書籍の文書データや文章等の属性情報、すなわち書体情報や文書データサイズ情報、文書データの間隔情報、行間隔情報、文書データ色と背景色、背景デザイン等の各種情報を示す。なお、表示属性データ53には、後述する文書データの表示形態を参照するための各種の文書データの表示形態仕様テーブルを格納してもよい。
【0041】
(v)制御部
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって構成され、表示端末1の各部からの情報収集や各種判断、各部への動作指示等を行う。また、表示端末1の各部との信号入出力のためのインターフェースを備える。制御部3はこのように様々な制御機能を有しているが、特に電子書籍に関係するものとして、例えば画像処理部30、外部環境取得部37および表示形態変更部33を備えている。
【0042】
画像処理部30は、前述した画像取得部2が取得した画像データに各種の加工編集を施して所望の特徴量を抽出する機能を含む。例えば、画像取得部2の取得画像がユーザの顔画像を含む場合に、顔画像の特徴部分の位置を特定、抽出することにより、ユーザが電子書籍を読書中であるかを判断できる。また、取得した画像全体における顔画像の位置や傾きを推定することができるが、この点は後述する。
【0043】
外部環境取得部37は、制御部3に設けられ、表示端末1に配置された照度測定部38による照度測定値を取得する。外部環境取得部37が取得した当該照度値情報は、後述する表示形態判断部32に伝達され、実際に表示部4に文書データの表示がされる前に、必要な文書データの表示形態の変更の有無を判断することができる。
【0044】
次に、上記により得られた表示端末1の周囲の照度値の情報から、当てはめるべき条件を所定の参照テーブルに基づいて特定し、必要があると判断した場合には、文書データや文章等の適切な表示形態を所定の参照テーブルに基づいて特定する表示形態判断部32について説明する。
【0045】
本来は、照度低下により、表示端末1の表示部4の文書データの表示がユーザにとって見辛い場合、ユーザが手に持った表示端末1の輝度を調整したり、周囲の照明を調整したり、文書データのサイズを大きくする等して、文書データを読み易くすることが望ましいとも考えられる。しかし、例えば混雑した電車内等では、表示端末1の設定を手動操作で自由に調整できない場合が多く、見辛い環境に拘束される場合もある。また、ユーザが無意識に見辛い環境のまま文書データを閲覧し続けることで負担や疲労が増加することもある。よって、ユーザへの負担を掛けずに、周囲の照度に応じて表示端末1が表示部4への文書データの表示形態を自動的に変更する意義は大きい。
【0046】
ここで、ユーザの文書データの視認困難性を緩和する方法として、文書データのサイズを拡大することが考えられる。この点を、
図3(a)に記載する文書データ201である「A」を例に説明する。単に文書データのサイズの拡大という場合は、「A」の横幅Wc11や高さHc11、文書データの線幅である「A」の左の斜め方向の線要素の幅であるLw11や「A」の横方向の線要素の縦幅であるLh11等が、おおむね等倍率で拡大されることを意味する。ただし、書体の体裁を整えたり、表示上の都合により、若干の倍率の不整合が生じる場合も含まれる。このような文書データのサイズの拡大は、上述の距離の増加や傾きの増加のいずれの場合にも、視認困難性の緩和に有効である。
【0047】
また、文書データの太さを変更することも考えられる。これは、
図3(a)の文書データ201を
図3(d)の文書データ204に変更することとして例示できる。文書データ204は、文書データ201に対して文書データの各線要素の線幅が各々太くなっている。つまり、「A」のLw11やLh11等が、おおむね等倍率で太くされたLw12やLh12に変更される。ただし、「A」全体の文書データの大きさは大きく変化しない。このような文書データの太さの増加は、上述の距離の増加や傾きの増加のいずれの場合にも、視認困難性の緩和に有効である。
【0048】
一方、
図3(b)の文書データ202や、
図3(c)の文書データ203のように、文書データの高さまたは横幅のみを引き延ばすこともできる。文書データ202は、文書データ201の「A」の横幅はWc11のままとし、高さHc11をこれよりも大きいHc12に変更したものである。また、文書データ203は、文書データ201の「A」の高さはHc11のままとし、横幅Wc11をこれよりも大きいWc12に変更したものである。
【0049】
さらに、ユーザの文書データの視認困難性を緩和する方法は、各々の文書データを変更することに加えて文章のレイアウトを変更することによっても可能である。
図4(a)に表示部4に表示された元の文章301の表示を示す。これのレイアウトや文書データのサイズを変更した文章302の表示を
図4(b)に示す。文章302は、文章301の文書データのサイズを拡大した上、文書データ間隔Sh1および行間隔Sw1のそれぞれを、より大きい値であるSh2およびSw2に拡大している。このように、一般的に文書データのサイズを拡大した場合は、文書データ間隔および行間隔のいずれかまたは両方を拡大することにより、より視認性を高めることができる。
【0050】
また、
図4(c)に表示部4に表示された元の文章303の表示を示す。これのレイアウトを変更した文章304の表示を
図4(d)に示す。文章304は、文章303の文書データのサイズは変えないが、文章のレイアウトとして段組を2段組に変更しており、文章304は表示部4の上下方向の略中央に空白部分としての段組境界部320を有している。段組は2段に限らず、3段以上の段組としてもよい。このように、一般的に文章を複数段に分離して段組を設けることにより、文章の読みやすさを向上させることができる。
【0051】
ここで、文書データのサイズを例にとった場合、当該文書データのサイズと、照度と関連付けられる特性値との関連付けは任意に定めることができる。例えば、文書データのサイズと特性値との関係を
図4(e)に示すように比例関係とすることができる。あるいは、当該文書データのサイズと当該距離との関係は、
図4(f)に示すように非線形な対応関係とすることもできる。
【0052】
このとき、当該文書データのサイズの増加分に対する当該特性値の減少分の割合を当該文書データのサイズが大きくなるにつれて大きくする
図4(f)の一点鎖線のカーブとすることもできる。また、その逆に当該文書データのサイズの増加分に対する当該距離の減少分の割合を当該文書データのサイズが大きくなるにつれて小さくする実線のカーブとすることもできる。また、当該文書データのサイズと当該特性値との関係は直線または曲線の関係である場合の他、一方に対して他方が段階的に変化する関係であってもよい。
【0053】
次に、表示形態判断部32により特定された文書データや文章等の適切な表示形態を、表示部4に表示される具体的な文書データや文章等に反映させる表示形態変更部33について説明する。表示形態変更部33は、表示形態判断部32により特定された新たな文書データの表示形態が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と同一かどうかを確認する。そして、当該特定された文書データの表示形態の仕様が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と全く同一の場合は、表示形態の仕様を変更する実益がないため、表示変更を行わない。
【0054】
一方、特定された文書データの表示形態の仕様のうち、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と部分的に同一である場合は、同一仕様の部分は変更せず、両者で異なる仕様についてのみ、特定された文書データの表示形態の仕様に変更して表示する。この点の詳細についてはは後述する。これにより、表示端末1の輝度に関連付けられる特性値の変化に応じた適切な文書データの表示形態について、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と異なる部分についてのみ変更して表示させることができる。
【0055】
したがって、文書データの表示形態の変更に係る表示の切り替えを迅速かつ的確に行い、ユーザの視認性や文書データの閲覧効率の低下を抑制できる。ただし、表示形態変更部33は、特定された文書データの表示形態の仕様が、部分的に現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様の同一であるか否かに関わらず、特定された文書データの表示形態への変更を行ってもよい。
【0056】
(vi)電源部
表示端末1は、さらに各部を駆動するための電力を供給するために電源部8を有する。電源部8は、例えばリチウムイオン二次電池や二次固体電池等、繰り返し充電できるものであることが好ましい。
【0057】
(b)文書データの表示形態の変更方法
次に、本実施形態に係る表示端末1を使用した場合の、文書データの表示形態の変更方法について主として
図5、
図6および
図7に基づいて説明する。まず、ユーザは、表示端末1の電源を入れたり所定の設定をすることで、表示端末1を文書データの閲覧が可能な状態にする。このとき、表示端末1は、操作部7からの入力に基づく制御部3の指示により、例えば記憶部5から文書データ51を読み出して表示部4に表示させる。これによりユーザ100が文書データ情報を閲覧できる状態に遷移する。
【0058】
続いて、表示端末1は、自動的に、あるいは、あらかじめユーザが設定した時間間隔で、外部環境取得部37が、表示端末1の周囲の照度値を取得する(ステップS401)。
【0059】
ここで、表示形態判断部32は、表示端末1の記憶部5に表示属性データ53の一部を構成する所定の表示形態仕様テーブルを参照することにより、外部環境取得部37が取得した照度値がこれらの参照テーブルに定めたどの範囲の条件に該当するかを特定する(ステップS402)。そして、当該特性値が、直前に表示部4に表示された文書データの表示形態に適用された条件と同一の範囲内に入っているか否かを判断する(ステップS403)。
【0060】
表示端末1の記憶部5には、表示属性データ53の一部として
図6や
図7に示す表示形態仕様テーブルが格納されている。例えば、
図6(a)に示すテーブル501は、「照度条件ID」、「ユーザID」、特性値である「照度比」、「書体」、「文書データサイズ」、「文書データ太さ」、「文書データ間隔」、「行間隔」および「段組」に関する情報を互いに関連付けた参照テーブルである。「照度条件ID」は、これらの様々な条件の組み合わせの一つを一義的に特定するための識別コードである。「ユーザID」により、1台の表示端末1を異なるユーザが共有する場合に、どのユーザが表示端末1を使用しているかによって、各種条件の適用を変えることができる。すなわち「ユーザID」は、ユーザを一義的に特定するための識別コードである。
【0061】
一般的に、文書データの閲覧に最も適した表示端末1の表示部4の照度条件に対応する文書データのサイズ等の表示形態仕様の関係については個人差がある。例えば近視を有するユーザ、遠視を有するユーザ、老眼であるユーザ、色弱を有するユーザではその関係は大きく変わり得る。また、同一ユーザであっても、経時的な視力の変化や色弱の進行、周囲の環境の変化によってもその関係が変動する。よって、必要な文書データの表示形態に関する条件は、このようなテーブルに格納しておき、必要に応じて権限を有するユーザが書き換えられるようにしておくことが便宜である。さらに、同一ユーザであっても、例えば「ユーザID」を複数有することにより、ユーザや環境の変化に応じてあてはめるべき文書データの表示形態に関する条件を使い分けることもできる。
【0062】
「照度比」は、外部環境取得部37が取得した照度値がどの範囲に当てはまるかを基準となる照度値との比で示す。例えば、基準となる照度値がある単位で150である場合、算出された特性値が120であれば当該「照度比」は「0.8」である。よってこれは「001」の「ユーザID」であるユーザについて、「照度条件ID」が「0002」の条件に当てはまる。「書体」は、ゴシック体や明朝体等の書体を特定する情報である。「文書データサイズ」は、文書データのサイズを規定する情報であり、ポイント数で指定する。「文書データ太さ」は書体や文書データのサイズに関わらず、文書データを構成する線要素の太さを全体的に太くするか細くするかの指定であり、標準の太さに対する比で指定する。「文書データ間隔」および「行間隔」は前述の通り、文章の文書データの間隔および行同士の間隔を規定する。段組は文章の1段、2段、3段等の段組数を指定する。
【0063】
上記のテーブル501以外の別のテーブルや、計算式等のアルゴリズムをあてはめてもよい。例えばテーブル501の条件のみを適用する場合は、上記のように、「001」の「ユーザID」であるユーザについて「照度条件ID」が「0002」の条件が当てはまると表示形態判断部32が判断した場合、適用すべき文書データの表示形態の仕様は次のようになる。すなわち、「書体」が「ゴシック」、「文書データサイズ」が「11ポイント」、「文書データ太さ」が基準の太さの「1.0倍」、「文書データ間隔」が「2.5mm」、「行間隔」が「3.5mmm」、および「段組」が「1段」である。
【0064】
ここで、表示形態判断部32は、表示部4に表示された直前の文書データの表示形態が、当該特定した特性値である「照度比」に対応する「照度条件ID」と同一条件に基づいて特定されたものであるか否かを確認する。そして、同一条件に基づいて特定されたと確認した場合は、当該「照度条件ID」に対応する適用すべき文書データの表示形態の各種条件を特定しない。この場合はステップS401に戻る。
【0065】
一方、表示部4に表示された直前の文書データの表示形態が、当該特定した「照度条件ID」とは異なる条件に基づいて特定されたと確認した場合は、当該「照度条件ID」に対応する適用すべき文書データの表示形態の各種条件を特定する(ステップS404)。
【0066】
次に、表示形態変更部33は、表示形態判断部32が上記の各種テーブルの参照等によって特定した文書データの表示形態の仕様が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と同一かどうかを確認する(ステップS405)。具体的には、各種テーブルの参照等によって特定された文書データの表示形態の仕様が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と全く同一の場合は表示変更を行わない。
【0067】
一方、特定された文書データの表示形態の仕様のうち、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と部分的に同一である場合は、同一仕様の部分は変更せず、両者で異なる仕様についてのみ、特定された文書データの表示形態の仕様に変更して表示する(ステップS406)。例えば、現在、表示部4に「文書データサイズ」が「12ポイント」で「文書データ太さ(比)」が「1.2」の表示形態仕様で文書データが表示されているとする。ここで、表示形態判断部32がテーブル501の「照度条件ID」が「0004」である条件を特定した場合、表示形態変更部33は「文書データサイズ」を「14ポイント」に変更するだけで、「文書データ太さ」の変更は行わない。
【0068】
なお、上述した文書データの表示形態の変更手法は、元の標準となる文書データの書式に対して、特定のアルゴリズムによる変形を施すことによって得ることができる。また、あらかじめ想定される変形後の書式を複数種類作成、登録しておき、必要に応じて使用する書式を選択することで実現してもよい。特定のアルゴリズムを使用する方法のうち、元の書式の文書データの太さを太くしたり、細くすることに関しては、例えば特許第3035141号公報に記載される方法等の公知の技術を使用することができる。また、元の書式の文書データの高さのみまたは横幅のみを拡大または縮小することに関しては、例えば特許第3815412号公報や特許第4251565号公報に記載される方法等の公知の技術を使用することができる。
【0069】
(c)第1実施形態に係る表示端末の作用
以上、説明したように、第1実施形態に係る表示端末1は、文書データを画面に表示する表示部4と、表示端末1の周囲の照度を取得する外部環境取得部37と、を備える。また、表示端末1は、当てはめるべき条件を所定の参照テーブルに基づいて特定し、必要があると判断した場合には、上記照度値と対応付けられた表示部4に表示すべき文書データの表示形態を特定する表示形態判断部32を備える。さらには、表示形態判断部32により特定された表示部4に表示すべき文書データの表示形態が、表示部4に現在表示されている文書データの表示形態と異なる場合に、当該特定された表示部4に表示すべき文書データの表示形態に基づいて、表示部4の文書データを変更して表示する表示形態変更部33を備える。
【0070】
このような構成により、第1実施形態に係る表示端末1では、表示端末1の周囲の明るさである照度がどのように変動しても、これに対応付けられた、より適切な表示形態で電子書籍の文書データを表示させることが可能となる。したがって、ユーザは表示端末1の周囲の照度条件に応じた手動操作による文書データの表示形態の調整に煩わされることなく、快適な視認性を確保した上で、表示端末1による読書を継続することができる。
【0071】
なお、外部環境取得部37が取得する外部環境情報は、照度に限らず、例えば、周囲の混雑状況に関する情報であってもよい。周囲の混雑状況は、表示端末1がさらに公知の加速度センサを備える場合は、加速度センサによる振動の大きさや振動の周波数等のデータからユーザの周囲が混雑しているか否かを判定してもよい。また、表示端末1が備える時計機能を用いて、朝夕の通勤時間帯等、所定の時間帯をユーザの周囲が混雑する混雑時間帯として設定し、当該時間帯の間、自動的に文書データの表示形態を変更するように表示形態判断部32が指示を出してもよい。
【0072】
さらに、表示形態判断部32により特定された前記表示部に表示すべき文書データの表示形態は、文書データのサイズ、文書データの太さ、文書データの間隔、行間隔、文書データの書体、文書データの表示部に対する角度、の他、文書データの色彩、文書データの輝度であってもよい。個人差はあるが、周囲の明るさが変化した場合、または混雑した環境にいる場合、文章データの形状だけでなく、その色彩が寒色系および暖色系の一方から他方に変化することで、表示が見やすくなる場合がある。また、その色彩の濃度が薄い状態および濃い状態の一方から他方に変化することで、表示が見やすくなる場合がある。さらには、表示部4全体の輝度や背景領域に対する文書データ領域の輝度のコントラストを変えることでも表示が見やすくなる場合がある。特に、周囲の明るさが低下した場合、文書データ領域の輝度を大きくすること、および背景領域に対する文書データ領域の輝度のコントラストを大きくすることは視認性向上に寄与する。
【0073】
2.第2実施形態
本開示の表示端末の第2実施形態について説明する。
図8に示すように、第2実施形態に係る表示端末1Aは、主として制御部3A、通信部6、記憶部5、表示部4、操作部7、画像取得部2および電源部8を備える。特に画像取得部2、表示部4、並びに制御部3Aに含まれる距離傾斜算出部31、外部環境取得部37、表示形態判断部32および表示形態変更部33が表示端末1としての必須の構成要素である。
【0074】
表示端末1Aが備える画像取得部2は、連続的にまたは所定時間間隔ごとにユーザの顔画像を撮影し取得している。この取得された顔画像は制御部3Aの画像処理部30において画像処理がなされ、所定の特徴量等が抽出される。その後、この特徴量に基づき、距離傾斜算出部31がユーザと表示端末1との距離およびユーザに対する表示端末1の傾きを算出する。その後、表示形態判断部32が、上記所定の距離および傾きに対応する表示部4に表示すべき適切な文書データの表示形態を特定する。そして、表示形態変更部33が、表示形態判断部32により特定された表示部4に表示すべき文書データの表示形態が表示部4に現在表示されている文書データの表示形態と異なる場合に、特定された表示部4に表示すべき文書データの表示形態に基づいて、表示部4の文書データを変更して表示する。
【0075】
ここで、ユーザと表示端末1Aとの位置関係、すなわち距離や傾きが所定以上に変動して、記憶部5に記憶されたテーブル等を参照した結果、直前に適用された条件とは異なる条件を満たしたとする。この場合、文書データを、当該文書データの表示形態を新たな表示形態で表示部4に表示させる。すなわち、新たな表示形態のうち、直前の表示形態とは異なる部分については新たな表示形態となるように表示が変更される。例えば、直前の表示形態の文書データのサイズが10ポイントであり、新たな表示形態の文書データのサイズが12ポイントであれば、表示される文書データのサイズは10ポイントから12ポイントに変更される。
【0076】
このような構成により、ユーザと表示端末1Aとの距離および傾きの位置関係が変動した場合、その位置関係に対応した適切な文書データの表示形態が選択され、適宜変更され得ることとなる。よって、ユーザが自分で操作することを必要とせず、ユーザと電子機器との位置関係を考慮した適切な表示形態で電子書籍の文書データを表示することができる。また、ユーザが余計な操作を手動で行うといった作業負荷が軽減でき、文書データが不適切な表示形態のまま読書し続けることによるユーザの疲労を軽減させ、快適な読書が可能となる。表示端末1Aは、第1実施形態の表示端末1の外部環境取得部37に基づく機能をすべて包含するが、第1実施形態との相違点を中心として、以下に表示端末1Aの各構成の詳細を説明する。
【0077】
(a)表示端末の構成
(i)制御部
制御部3Aは様々な制御機能を有しているが、特に文書データに関係するものとして、例えば画像処理部30、外部環境取得部37、距離傾斜算出部31および表示形態変更部33を備えている。
【0078】
画像処理部30は、画像取得部2が取得した画像データに各種の加工編集を施して所望の特徴量を抽出する機能を含む。例えば、画像取得部2の取得画像がユーザの顔画像を含む場合に、顔画像の特徴部分の位置を特定、抽出することにより、取得した画像全体における顔画像の位置や大きさを推定することができる。
【0079】
図8(a)は、ユーザ100と表示端末1Aとの位置関係、特に両者の距離の違いを示す図であり、
図8(b)、(c)は、
図8(a)の両者の距離の違いによる、画像取得部2が取得した画像の違いを示す図である。また、
図8(d)、(e)は、文書データの大きさと、ユーザ100および表示端末1Aの距離との関係を示す模式的なグラフである。
【0080】
ここで、ユーザ100と表示端末1Aとの位置関係の説明の便宜を図るため、XYZの直交座標系を設ける。まずユーザ100は直立して視線を水平方向に向けているものと仮定する。このとき、直立している上下方向にZ軸をとり、上方側を+Z方向、下方側を-Z方向とする。また、ユーザ100と表示端末1Aとを結ぶ水平方向にY軸をとり、ユーザ100から表示端末1Aに向かう方向を+Y方向、その逆方向を-Y方向とする。さらに、Y軸と直交する水平方向にX軸をとり、ユーザ100から見て表示端末1Aの左側から右側に向かう方向を+X方向、その逆方向を-X方向とする。X軸に沿った方向を左右方向、+X方向を右側、-X方向を左側と呼ぶこともある。
【0081】
図8(a)に示すように、ユーザ100から表示端末1Aまでの距離がDuc1である場合と、Duc2である場合とでは、画像取得部2が取得した画像のうちの顔画像の大きさが変わる。すなわち、
図8(b)の顔画像111は上記距離がDuc1のときのものであり、
図8(c)の顔画像112は上記距離がDuc2のときのものである。顔画像112の大きさは、これよりも距離が小さいときの顔画像111と比べて小さくなっている。
なお、このとき表示端末1Aの表示部4の主面がXZ平面に沿う位置にあり、かつ、表示部4の上下方向がZ軸に沿う位置にある。これをユーザ100および表示端末1Aの基準位置とする。
【0082】
ここで、ユーザ100から表示端末1Aまでの距離とは、ユーザ100の眼球部101から表示端末1Aの表示部4の特定部分、例えば表示部4の上下および左右方向の中心部までの最短距離を示す。ただし、当該距離はこれに限定せず、ユーザ100の眼球部101から表示端末1Aの表示部4の特定文書データ部分までの最短距離を示すものとしてもよい。また、これ以外の定義であっても、ユーザ100と表示端末1Aとの距離を概ね正しく代表できるものであればよい。
【0083】
画像処理部30は、画像取得部2が取得した顔画像111や112の画像全体の中での位置や大きさが把握できるような特徴量を抽出するための加工編集を適宜行うことができる。例えば、画像処理部30はアンシャープマスク処理を行うことで顔画像111や112の輪郭部分を強調し、エッジ検出等により顔画像の輪郭形状や顔画像の面積、位置を算出することができる。また、同様に、エッジ検出等によって、眼球位置を特定することもできる。これにより、
図8(b)や
図2(c)に示すように、顔画像111のユーザ100の眼球間距離De1や顔画像112のユーザ100の眼球間距離De2を算出することができる。また、眼球間距離に代えて顔画像111や112の顔の幅を算出してもよい。
【0084】
次に、画像処理部30で算出された眼球間距離De1やDe2に基づいて、ユーザ100から表示端末1Aまでの距離を算出する機能を含む距離傾斜算出部31を説明する。距離傾斜算出部31は、例えば眼球間距離からユーザ100および表示端末1Aを結ぶ距離を算出するためのアルゴリズムまたは参照テーブルを備えている。ここで、眼球間距離がDe1であるときのユーザ100から表示端末1Aまでの距離であるDuc1があらかじめ分かっているものとする。すなわち、De1およびDuc1の組み合わせを基準値としてあらかじめ表示端末1Aに登録する。これによって、距離傾斜算出部31が、この情報に基づき、眼球間距離とユーザ100から表示端末1Aまでの距離との対応関係を導出できるようにする。
【0085】
画像取得部2が取得した顔画像112の情報からこのときの眼球間距離がDe2であることが算出されれば、これをもとにユーザ100から表示端末1Aまでの距離であるDuc2を容易に求めることができる。De1、De2、Duc1およびDuc2の間には、Duc2=(De2/De1)×Duc1の関係が成り立つからである。ただし、顔画像の情報からユーザおよび表示端末までの距離を求める方法はこれに限定されず他の公知の方法を用いてもよい。
【0086】
次に、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾きの算出について説明する。
図9は、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾きを示す図であり、
図9(a)は、直立したユーザ100から見たときの左右方向であるX軸回りに表示端末1Aが角度α1だけ傾いた位置にあることを示す図である。このとき、表示端末1Aが前述の基準位置にあるときを傾き角0とし、実際の表示端末1Aが+X方向側から見て時計回りにどれだけ傾いているかを測定することにより、傾き角α1を特定している。
【0087】
また、
図9(b)は、直立したユーザ100から見たときの上下方向であるZ軸回りに表示端末1Aが角度β1だけ傾いた位置にあることを示す図である。このとき、表示端末1Aが基準位置にあるときを傾き角0とし、実際の表示端末1Aが-Z方向側から見て時計回りにどれだけ傾いているかを測定することにより、傾き角β1を特定している。
【0088】
さらに、
図9(c)は、直立したユーザ100が紙面の手前側におり、表示端末1Aが紙面の奥にあることを前提として、ユーザ100から見たときの上下方向の軸および左右方向の軸に直交するY軸回りに表示端末1Aが角度γ1だけ傾いた位置にあることを示す図である。このとき、表示端末1Aが基準位置にあるときを傾き角0とし、実際の表示端末1Aが-Y方向側から見て時計回りにどれだけ傾いているかを測定することにより、傾き角γ1を特定している。
【0089】
図10は、
図9のようにユーザ100に対する表示端末1Aの傾きがある場合に、画像取得部2が取得し得る顔画像を表示端末1Aの表示部4に表示させた状態を示す図である。
図10(a)は、
図9(a)のように、ユーザ100に対して表示端末1Aが角度α1だけ傾いているときの、画像取得部2が取得した顔画像114を示す。
図10(b)は、
図9(b)のように、ユーザ100に対して表示端末1Aが角度β1だけ傾いているときの、画像取得部2が取得した顔画像115を示す。また、
図10(c)は、
図9(c)のように、ユーザ100に対して表示端末1Aが角度γ1だけ傾いているときの、画像取得部2が取得した顔画像116を示す。
【0090】
このように、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾き角α1、β1、およびγ1があるとき、その程度に応じて画像取得部2が取得する画像中における、顔画像の位置が変移する。例えば、傾き角α1のときは、
図10(a)に示すように、基準位置における顔画像113に対して、実際の顔画像114は表示部4の下方に距離Dh1だけ変移している。同様に、傾き角β1のときは、
図10(b)に示すように、基準位置における顔画像113に対して、実際の顔画像115は表示部4の右方向に距離Dw1だけ変移している。さらに、傾き角γ1のときは、
図10(c)に示すように、基準位置における顔画像113に対して、実際の顔画像116は時計回りに角度γ1だけ回転変移している。
【0091】
あらかじめ、基準位置における顔画像113に対して、傾き角α1、β1、およびγ1に対応する3種類の傾き度合い、すなわち傾き角と、画像取得部2が取得した画像中における顔画像の位置の変移量との相関関係を調べておく。そして、当該変移量から傾き角を算出するためのアルゴリズムまたは参照テーブルを備えることにより、画像取得部2が取得した画像から、容易にユーザ100に対する表示端末1Aの各方向の傾き量を算出することができる。
【0092】
実際には、ユーザ100および表示端末1Aの位置関係は、両者の距離とユーザ100に対する表示端末1Aの各方向の傾き角とが様々に複合したものとなる。したがって、上記の基準位置に対する画像取得部2が取得した画像中における顔画像の位置の変移量と各方向の傾き角の算出のためのアルゴリズムや参照テーブルは、ユーザ100から表示端末1Aまでの距離に応じて各々用意する必要がある。
【0093】
次に、上記により得られたユーザ100および表示端末1Aを結ぶ距離の情報と、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾きの情報とから、当てはめるべき条件を所定の参照テーブルに基づいて特定し、必要があると判断した場合には、文書データや文章等の適切な表示形態を所定の参照テーブルに基づいて特定する表示形態判断部32について説明する。一般的に、ユーザ100から表示端末1Aまでの距離が長くなればなるほど、ユーザ100が表示端末1Aの表示部4に表示された文書データを視認することが困難となる。また、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾きの度合いが基準位置に対して大きくなればなるほど、ユーザ100が表示端末1Aの表示部4に表示された文書データを視認することが困難となる。
【0094】
本来は、表示端末1Aの表示部4の文書データの表示がユーザ100にとって見辛い場合、ユーザ100が手に持った表示端末1Aの位置を変えることで表示端末1Aまでの距離や表示端末1Aの傾きを調整することができる。これにより、ユーザ100自身によって、電子書籍を読み易くすることが望ましいとも考えられる。しかし、例えば混雑した電車内等では、当該距離や当該傾きを自由に調整できない場合が多く、見辛い環境に拘束される場合もある。また、ユーザ100が無意識に見辛い環境のまま読書し続けることでユーザ100の負担や疲労が増加することもある。よって、ユーザ100への負担を掛けずにユーザ100および表示端末1Aの位置関係に応じて表示端末1Aが表示部4への文書データの表示形態を自動的に変更する意義は大きい。
【0095】
ここで、ユーザ100の文書データの視認困難性を緩和する方法として、文書データのサイズを拡大することや文書データの太さを変更することが考えられるが、これは前述したとおりである。
一方、
図3(b)の文書データ202や、
図3(c)の文書データ203のように、文書データの高さまたは横幅のみを引き延ばすことも前述のとおりである。
【0096】
文書データの高さを拡大する変更は、上述の傾きの増加のうち、角度α1に対応する傾き、すなわち左右方向であるX軸回りの表示端末1Aの傾きの場合の視認困難性の緩和に特に有効である。また、文書データの横幅を拡大する変更は、角度β1に対応する傾き、すなわち上下方向であるZ軸回りの表示端末1Aの傾きの場合の視認困難性の緩和に特に有効である。角度α1に対応する傾きの場合、文書データは高さ方向が圧縮されて視認される傾向にあり、角度β1に対応する傾きの場合、文書データは横幅方向が圧縮されて視認される傾向にある。したがって、文書データをこれらの圧縮方向に沿って引き延ばすことで視認性を向上できるからである。
【0097】
さらに、ユーザ100の文書データの視認困難性を緩和する方法は、各々の文書データを変更することに加えて文章のレイアウトを変更することによっても可能である。これについては
図4により例示したとおり、元の文章に対してサイズを拡大する他、文書データ間隔や行間隔を拡大することが可能である。このように一般的に文書データのサイズを拡大した場合は、文書データ間隔および行間隔のいずれかまたは両方を拡大することにより、より視認性を高めることができる。
【0098】
一方、
図9(c)に示すように、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾きが角度γ1である場合、
図4(c)の表示部4に表示される元の文章303の表示を、
図10(d)に示すように傾斜を付けて表示してもよい。傾きが角度γ1であるとは、ユーザ100と表示端末1Aとを結ぶY軸回りの表示端末1Aの傾きを指す。
【0099】
図10(d)の文章305は、文章303の各文書データおよび各行について、表示部4の上下方向に対して反時計回りに角度θ1だけ傾けて表示したものである。θ1は基本的にγ1と回転方向が反対で角度の絶対値が同一であることが好ましいが、θ1がγ1よりも多少大きい値または小さい値であってもよい。こうすることで、ユーザ100が表示端末1Aと相対的にY軸回りに傾いた配置にあったとしても、ユーザ100は、傾きが軽減された状態で表示端末1Aの表示部4に表示された文書データを閲覧することができる。
【0100】
なお、文章305の各行の上端および下端は、表示部4の上端部および下端部とほぼ同様の間隔を開けて配置される。言い換えると、各行の上端および下端は、表示部4の上端部および下端部の左右を結ぶ直線と略平行に揃えられる。こうすることで、表示部4における文書データや文章の表示スペースが大幅に減少することが抑制できる。また、表示部4に表示された元の文章303はゴシック体で表示されているが、これを例えば明朝体等の書体変更した文章に変更してもよい。このように、人による個人差はあるが、書体を変更することによってもユーザ100の文書データの視認困難性を緩和できる場合がある。
【0101】
ここで、文書データのサイズを例にとった場合、当該文書データのサイズと、ユーザ100および表示端末1Aを結ぶ距離およびユーザ100に対する表示端末1Aの傾きとの関連付けは任意に定めることができる。例えば、文書データのサイズとユーザ100および表示端末1Aを結ぶ距離との関係を
図8(d)に示すように比例関係とすることができる。ただし、当該距離がある程度近づいた場合は、必要以上に文書データのサイズを小さくしても無意味なため、文書データのサイズの下限が定められることが望ましい。
【0102】
あるいは、当該文書データのサイズと当該距離との関係は、
図8(e)に示すように非線形な対応関係とすることもできる。このとき、当該文書データのサイズの増加分に対する当該距離の増加分の割合を当該文書データのサイズが大きくなるにつれて大きくする
図8(e)の実線のカーブとすることもできる。その逆に当該文書データのサイズの増加分に対する当該距離の増加分の割合を当該文書データのサイズが大きくなるにつれて小さくする一点鎖線のカーブとすることもできる。また、当該文書データのサイズと当該距離との関係は直線または曲線の関係である場合の他、一方に対して他方が段階的に変化する関係であってもよい。
【0103】
なお、文書データのサイズと、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾きとの関係についても同様のことが言える。例えば、
図8(d)、(e)と同様に、文書データのサイズと当該傾きを表すα1およびβ1に対応する角度との関係を比例関係または非線形な対応関係とすることができ、一方に対して他方が段階的に変化する関係としてもよい。文書データのサイズ以外の要素についても、同様に考えることができる。
【0104】
次に、表示形態判断部32により特定された文書データや文章等の適切な表示形態を、表示部4に表示される具体的な文書データや文章等に反映させる表示形態変更部33について説明する。表示形態変更部33は、表示形態判断部32により特定された新たな文書データの表示形態が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と同一かどうかを確認する。そして、当該特定された文書データの表示形態の仕様が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と全く同一の場合は、表示形態の仕様を変更する実益がないため、表示変更を行わない。
【0105】
一方、特定された文書データの表示形態の仕様のうち、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と部分的に同一である場合は、同一仕様の部分は変更せず、両者で異なる仕様についてのみ、特定された文書データの表示形態の仕様に変更して表示する。この点の詳細についてはは後述する。これにより、ユーザ100と表示端末1Aとの位置関係の変化に応じた適切な文書データの表示形態について、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と異なる部分についてのみ変更して表示させることができる。
【0106】
よって、文書データの表示形態の変更に係る表示の切り替えを迅速かつ的確に行い、ユーザ100の視認性や読書効率の低下を抑制できる。ただし、表示形態変更部33は、特定された文書データの表示形態の仕様が、部分的に現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様の同一であるか否かに関わらず、特定された文書データの表示形態への変更を行ってもよい。
【0107】
(b)文書データの表示形態の変更方法
次に、本実施形態に係る表示端末1Aを使用した場合の、文書データの表示形態の変更方法について主として
図11、
図12および
図13に基づいて説明する。まず、ユーザ100は、表示端末1Aの電源を入れたり所定の設定をすることで、表示端末1Aを文書データの閲覧が可能な状態にする。このとき、表示端末1Aは、操作部7からの入力に基づく制御部3Aの指示により、例えば記憶部5から文書データ51を読み出して表示部4に表示させる。これによりユーザ100が文書データ情報を視認できる状態に遷移する。
【0108】
続いて、表示端末1Aは、自動的に、あるいは、あらかじめユーザ100が設定した時間間隔でユーザ100の顔画像を画像取得部2により撮影、取得する(
図11のステップS421)。画像取得部2が取得した顔画像情報は画像処理部30に引き渡され、特徴抽出処理等の加工編集がされる。これにより画像全体に対する顔画像の位置や大きさ、眼球間距離等の所定の特徴量が抽出される。さらに、これらの特徴量をもとに、距離傾斜算出部31が、ユーザ100から表示端末1Aまでの距離を算出する(ステップS422)。また、距離傾斜算出部31は、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾き角α1、β1、およびγ1に対応する傾きを算出する(ステップS423)。
【0109】
ここで、表示形態判断部32は、表示端末1の記憶部5に表示属性データ53の一部を構成する所定の表示形態仕様テーブルを参照することにより、距離傾斜算出部31が算出した当該距離や当該傾きがこれらの参照テーブルに定めたどの範囲の条件に該当するかを特定する(ステップS424)。そして、当該距離や当該傾きが、直前に表示部4に表示された文書データの表示形態に適用された条件と同一の範囲内に入っているか否かを判断する(ステップS425)。
【0110】
表示端末1の記憶部5には、表示属性データ53の一部として
図12や
図13に示す表示形態仕様テーブルが格納されている。例えば、
図12(a)に示すテーブル504は、「距離条件ID」、「ユーザID」、「距離条件」、「書体」、「文書データサイズ」、「文書データ太さ」、「文書データ間隔」、「行間隔」および「段組」に関する情報を互いに関連付けた参照テーブルである。「距離条件ID」は、これらの様々な条件の組み合わせの一つを一義的に特定するための識別コードである。「ユーザID」により、1台の表示端末1Aを異なるユーザ100が共有する場合に、どのユーザ100が表示端末1Aを使用しているかによって、各種条件の適用を変えることができる。すなわち「ユーザID」は、ユーザ100を一義的に特定するための識別コードである。
【0111】
一般的に、文書データの閲覧に最も適したユーザ100から表示端末1Aまでの距離については個人差がある。例えば近視を有するユーザ、遠視を有するユーザ、老眼であるユーザでは、その距離は大きく変わり得る。また、同一ユーザ100であっても、経時的な視力の変化や周囲の環境の変化によっても当該距離が変動する。よって、必要な文書データの表示形態に関する条件は、このようなテーブルに格納しておき、必要に応じて権限を有するユーザ100が書き換えられるようにしておくことが便宜である。さらに、同一ユーザ100であっても、例えば「ユーザID」を複数有することにより、ユーザ100や環境の変化に応じてあてはめるべき文書データの表示形態に関する条件を使い分けることもできる。
【0112】
「距離条件」は、距離傾斜算出部31が算出した距離がどの範囲に当てはまるかを示す。例えば、「距離条件」が「0.1mm以上、0.2mm未満」である場合、算出された距離が0.14mmであれば当該「距離条件」に当てはまる。「書体」は、ゴシック体や明朝体等の書体を特定する情報である。「文書データサイズ」は、文書データのサイズを規定する情報であり、ポイント数で指定する。「文書データ太さ」は書体や文書データのサイズに関わらず、文書データを構成する線要素の太さを全体的に太くするか細くするかの指定であり、標準の太さに対する比で指定する。「文書データ間隔」および「行間隔」は前述の通り、文章の文書データの間隔および行同士の間隔を規定する。段組は前述のとおり、1段、2段、3段等の段組数を指定する。
【0113】
例えば「ユーザID」が「001」のユーザ100が表示端末1Aを利用しているときに、表示端末1Aの距離傾斜算出部31が算出したユーザ100から表示端末1Aまでの距離が0.31mであったとする。表示形態判断部32はテーブル504を参照して、この場合に適用すべき各種条件が、「0044」を「距離条件ID」とする欄に記載された条件となることを特定する。表示形態判断部32は、表示部4に表示された直前の文書データの表示形態が、当該特定した「距離条件ID」と同一条件に基づいて特定されたものであるか否かを確認し、同一条件に基づいて特定されたと確認した場合は、当該「距離条件ID」に対応する適用すべき文書データの表示形態の各種条件を特定しない。
【0114】
一方、表示部4に表示された直前の文書データの表示形態が、当該特定した「距離条件ID」と異なる条件に基づいて特定されたと確認した場合は、当該「距離条件ID」に対応する適用すべき文書データの表示形態の各種条件を特定する。これらは、以降に説明する「傾き条件ID」についても同様である。
【0115】
また、
図12(b)のテーブル505は、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾きのうち、角度α1に対応する傾き、すなわち左右方向であるX軸回りの表示端末1Aの傾きに対応した表示形態仕様テーブルである。「傾き条件ID」や「ユーザID」は、上述の「距離条件ID」や「ユーザID」に対応するものである。「傾き条件」は、距離傾斜算出部31が算出した角度α1がどの範囲に当てはまるかを示すものである。例えば、「傾き条件」が「10°以上、20°未満」である場合、算出された角度が13°であれば当該「傾き条件」に当てはまることになる。
【0116】
また、「文書データ高さ」は、
図3(b)の文書データ202について説明したとおり、文書データの横幅を変えずに高さだけを伸縮させる処理であり、標準に対する比で指定する。例えば「ユーザID」が「001」のユーザ100が表示端末1Aを利用しているときに表示端末1Aの距離傾斜算出部31が算出したユーザ100に対する表示端末1Aのα1に対応する傾きが角度31°であったとする。この場合、表示形態判断部32はテーブル505を参照して、この場合に適用すべき各種条件が、「0064」を「傾き条件ID」とする欄に記載された条件となることを特定する。このとき「文書データ高さ」の比は「1.3」、「行間隔」は「4.5mm」となる。
【0117】
また、
図13のテーブル506は、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾きのうち、角度β1に対応する傾き、すなわち上下方向であるZ軸回りの表示端末1Aの傾きに対応した表示形態仕様テーブルである。「傾き条件」は、距離傾斜算出部31が算出した角度β1がどの範囲に当てはまるかを示すものである。「文書データ幅」は、
図3(c)の文書データ203について説明したとおり、文書データの高さを変えずに横幅だけを伸縮させる処理であり標準に対する比で指定する。
【0118】
例えば「ユーザID」が「002」のユーザ100が表示端末1Aを利用しているときに表示端末1Aの距離傾斜算出部31が算出したユーザ100に対する表示端末1Aのβ1に対応する傾きが角度8°であったとする。この場合、表示形態判断部32は表示属性データ53に格納されるテーブル506を参照して、この場合に適用すべき各種条件が、「0181」を「傾き条件ID」とする欄に記載された条件となることを特定する。このとき「文書データ幅」の比は「1.0」、「文書データ間隔」は「2.4mm」となる。
【0119】
このようにして、距離傾斜算出部31が算出したユーザ100から表示端末1Aまでの距離およびユーザ100に対する表示端末1Aの傾きから、表示形態判断部32はテーブル504、505および506を参照して、変換すべき文書データの仕様を特定する(ステップS425)。説明を省略するが、実際には前述の外部環境取得部37の算出した特性値に基づくテーブル501や502の参照を併せて行い、変換すべき文書データの仕様を特定する。
【0120】
ここで、例えば「001」の「ユーザID」を有するユーザ100が、「距離条件ID」を「0044」とし、α1についての「傾き条件ID」を「0063」とし、β1についての「傾き条件ID」を「0082」とする条件を満たすとする。このとき、テーブル504、505および506を参照すると、「距離条件ID」が「0044」であるときの「文書データ間隔」が「3.5mm」であるのに対して「傾き条件ID」が「0082」であるときの「文書データ間隔」が「2.5mm」となる。また、「距離条件ID」が「0044」であるときの「行間隔」が「4.5mm」であるのに対して「傾き条件ID」が「0063」であるときの「行間隔」が「4.0mm」となる。
【0121】
このように同一項目で異なるパラメータが指定されるとき、種々の対応策が考えられる。例えば、異なるパラメータのうち、ユーザの文書データに対する視認困難性を緩和することにもっとも寄与するパラメータを選択することが考えられる。すなわち、文書データ間隔や行間隔等は、もっとも間隔が広いパラメータを採用することができる。他の項目についても同様の処置をとり得る。なお、「距離条件」、「傾き条件」(α1、β1の2種)の組み合わせごとに一つの条件が一義的に定まるようにテーブルを一本化してもよい。
【0122】
表示形態判断部32は、このように、表示部4に表示された直前の文書データの表示形態が、各種参照テーブルに基づいて特定した各種条件と同一条件に基づいて特定されたものであるか否かを確認する。そして、同一条件に基づいて特定されたものであると確認した場合は、今回適用すべき文書データの表示形態の特定を行わずに、ステップS422に戻る。一方、異なる条件に基づいて特定されたものであると確認した場合は、今回適用すべき文書データの表示形態の特定を行い、その情報を表示形態変更部33に引き渡す(ステップS426)。
【0123】
次に、表示形態変更部33は、表示形態判断部32が上記の各種テーブルの参照等によって特定された文書データの表示形態の仕様が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と同一かどうかを確認する(ステップS426)。具体的には、各種テーブルの参照等によって特定された文書データの表示形態の仕様が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と全く同一の場合は表示変更を行わない。
【0124】
一方、特定された文書データの表示形態の仕様のうち、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と部分的に同一である場合は、同一仕様の部分は変更せず、両者で異なる仕様についてのみ、特定された文書データの表示形態の仕様に変更して表示する(ステップS428)。例えば、現在、表示部4に「文書データ高さ」の比が「1.0」で「行間隔」が「3.5mm」の表示形態仕様で文書データが表示されているとする。ここで、表示形態判断部32がテーブル502の「傾き条件ID」が「0062」である条件を特定した場合、表示形態変更部33は「文書データ高さ」の比を「1.1」に変更するだけで、「行間隔」の変更は行わない。
【0125】
ここで、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾きが角度γ1に対応するものである場合については、特にテーブル等での例示はしていない。しかし、この傾きについてもテーブルに組み込めることは言うまでもない。これに対応する文書データの表示形態の仕様は、例えば
図10(d)に例示した、文章の各文書データおよび各行の傾斜によるものとしてもよい。
【0126】
なお、上述した文書データの表示形態の変更手法は、元の標準となる文書データの書式に対して、特定のアルゴリズムによる変形を施すことによって得ることができる。また、あらかじめ想定される変形後の書式を複数種類作成、登録しておき、必要に応じて使用する書式を選択することで実現してもよい。
【0127】
(c)第2実施形態に係る表示端末の作用
以上、説明したように、第2実施形態に係る表示端末1Aは、文書データを画面に表示する表示部4と、ユーザ100の顔画像を取得可能な画像取得部2と、顔画像からユーザ100と表示端末1Aとの距離およびユーザ100に対する表示端末1Aの傾きを算出する距離傾斜算出部31と、を備える。
【0128】
また、表示端末1Aは、外部環境取得部37と、当てはめるべき条件を所定の参照テーブルに基づいて特定し、必要があると判断した場合には、上記距離および傾きと対応付けられた表示部4に表示すべき文書データの表示形態を特定する表示形態判断部32と、を備える。さらには、表示形態判断部32により特定された表示部4に表示すべき文書データの表示形態が、表示部4に現在表示されている文書データの表示形態と異なる場合に、当該特定された表示部4に表示すべき文書データの表示形態に基づいて、表示部4の文書データを変更して表示する表示形態変更部33を備える。
【0129】
このような構成により、第2実施形態に係る表示端末1Aでは、照度を考慮する他、ユーザ100と表示端末1Aとの位置関係を考慮する。この位置関係についてはユーザ100から表示端末1Aまでの距離だけではなく、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾きをも考慮して、より適切な表示形態で文書データを表示させることが可能となる。したがって、ユーザ100は、表示端末1Aとの位置関係に応じた手動操作による文書データの表示形態の調整に煩わされることなく、快適な視認性を確保した上で、表示端末1Aによる読書を継続することができる。
【0130】
なお、本実施形態は、距離傾斜算出部31が、ユーザ100から表示端末1Aまでの距離およびユーザ100に対する表示端末1Aの傾きの両方を算出するものとして例示したが、距離傾斜算出部31は上記のいずれか一方のみを算出する構成であってもよい。
【0131】
このような自動調整の対象となり得る文書データの表示形態として、例えば文書データのサイズ、文書データの太さ、文書データの間隔、行間隔、文書データの書体、文書データの表示部に対する角度が挙げられる。これらはいずれも、ユーザ100から表示端末1Aまでの距離、および、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾きによる、ユーザ100の文書データの視認困難性に大きく影響するパラメータである。必要に応じてこれらのパラメータを変更することにより、適切にユーザ100の文書データの視認困難性の緩和が図れる。
【0132】
また、表示端末1Aの当該傾きは、直立したユーザ100から見たときの左右方向のX軸回りに沿った第1の傾き、直立したユーザ100から見たときの上下方向のZ軸回りに沿った第2の傾き、並びに直立したユーザ100から見たときの左右方向の軸および上下方向の軸に直交するY軸回りに沿った第3の傾き、のいずれかを含む。
【0133】
このように、ユーザ100に対する表示端末1Aの傾きの要素を細かく分解することにより、きめ細かい文書データの表示形態の変更が可能となる。例えば第1の傾きが顕著に見られるとき、表示部4に表示された文書データは表示部4の上下方向に圧縮されたように見えるため、視認性が低下する。よって、この場合は単なる文書データのサイズの拡大だけではなく、当該文書データの横幅寸法に対する高さ寸法の拡張度合いを引き上げ、文書データを高さ方向に引き伸ばすことが視認性の改善に有効である。
【0134】
また、同様に、第2の傾きが顕著に見られるとき、表示部4に表示された文書データは表示部4の左右方向に圧縮されたように見えるため、当該文書データの高さ寸法に対する横幅寸法の拡張度合いを引き上げ、文書データを横方向に引き伸ばすことが視認性の改善に有効である。
【0135】
3.第3実施形態
次に、本開示の表示端末の第3実施形態について説明する。
図14に示すように、第3実施形態に係る表示端末1Bは、第1実施形態に係る表示端末1に対して、制御部3Bが移動検出部34をさらに備える点が異なる。表示端末1Bはこのように、表示端末1が有する機能をすべて包含するとともに、移動検出部34が付加されることによる追加的な機能を備えている。以下に、表示端末1Bの構成等について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0136】
(a)表示端末の構成
(i)移動検出部
移動検出部34は、画像取得部2が取得した画像を画像処理部30が加工編集して抽出した特徴量をもとに、ユーザ100と表示端末1Bとの位置関係の所定時間内の変動度合いを算出する。そして、両者の相対的な変動が大きくユーザが移動中であると判断される場合に、表示形態判断部32に文書データの表示形態の仕様を特定するよう指示する機能を有する。
【0137】
例えば、混雑した電車等に乗車している間に文書データを閲覧する場合、電車自体の揺れや、周囲の人との接触等による揺れが合成され、ユーザ100と表示端末1Bとの位置関係が複雑かつ頻繁に変動し得る。この場合、ユーザ100と表示端末1Bとの位置関係は、短時間のうちに大きく変動する可能性がある。この場合は、ユーザ100から表示端末1Bまでの距離と、ユーザ100に対する表示端末1Bの傾きとを参照テーブルに当てはめることに加えて、移動検出部34に基づく追加の処理を行うことが好ましい。
【0138】
すなわち、本実施形態では、移動検出部34がユーザ100と表示端末1Bとの位置関係の所定時間内の変動度合いを算出する。そこで両者の相対的な変動が大きいと判断される場合にユーザが移動状態である旨を表示形態判断部32に伝達する。表示形態判断部32はこれに従い、文書データの表示形態の仕様を特定する。一例として、表示端末1Bの記憶部5等に
図18(a)に示す表示形態仕様テーブルが格納されているものとする。このテーブル507は、「移動条件ID」、「ユーザID」、「測定時間」、「回数」、「移動距離」、「角度変化(α1)」、「角度変化(β1)」、「文書データサイズ」、「文書データ間隔」および「行間隔」に関する情報を互いに関連付けた参照テーブルである。「移動条件ID」は、これらの様々な条件の組み合わせの一つを一義的に特定するための識別コードである。
【0139】
「測定時間」は、対象とするユーザ100と表示端末1Bとの位置関係の変動を測定する時間間隔を示す。例えば「測定時間」が「10秒」であれば、10秒間の間に所定の変動があったかなかったかを測定する。「回数」は、「測定時間」における所定の変動が発生した回数を示す。「移動距離」は、距離傾斜算出部31が複数回算出したユーザ100から表示端末1Bまでの距離の相対的な変化量を示す。「角度変化(α1)」および「角度変化(β1)」は、距離傾斜算出部31が複数回算出したユーザ100に対する表示端末1Aのα1に対応する傾き角度およびβ1に対応する傾き角度の相対的な変化量を示す。
【0140】
例えば、当該条件が「001」の「ユーザID」を有するユーザ100が使用する表示端末1Aにおいて、移動検出部34が、距離傾斜算出部31の算出値から「測定時間」である10秒間の間に以下を導出したとする。すなわち「移動距離」において「10mm以上」の変動の「回数」が「2回」あり、「角度変化(α1)」において「5°以上」の変動の「回数」が「4回」あり、「角度変化(β1)」において「5°以上」の変動の「回数」が「2回」あった旨についてである。
【0141】
この場合、移動検出部34は、テーブル507を参照して、「移動距離」、「角度変化(α1)」および「角度変化(β1)」のうち、もっとも「回数」条件が多い分類に着目する。すなわち「角度変化(α1)」が「5°以上」の変動の「回数」が「4回」であることに基づき、当該変動に対応する「移動条件」が「0202」に該当することを特定する。ただし、「移動距離」「角度変化」の程度をあらかじめ順番付けしておき、これらの程度が大きい分類に着目して「移動条件」を特定してもよい。
【0142】
これより、移動検出部34は、当該条件に該当する「文書データサイズ」が「11ポイント」、「文書データ間隔」が「2.5mm」および「行間隔」が「3.5mm」となるような文書データの表示形態の変更を表示形態変更部33に指示する。
【0143】
(b)文書データの表示形態の変更方法
次に、本実施形態に係る表示端末1Bを使用した場合の、文書データの表示形態の変更方法について主として
図15に基づいて説明する。まず、ユーザ100は、表示端末1Bを文書データの閲覧が可能な状態にする。続いて、表示端末1Bは、自動的に、あるいは、あらかじめユーザ100が設定した時間間隔でユーザ100の顔画像を画像取得部2により撮影、取得する(
図15のステップS441)。
【0144】
画像取得部2が取得した顔画像情報は画像処理部30に引き渡され、所定の特徴量が特定される。さらに、これらの特徴量をもとに、距離傾斜算出部31がユーザ100から表示端末1までの距離を算出する。また、距離傾斜算出部31はユーザ100に対する表示端末1の傾き角α1、β1、およびγ1に対応する傾きを算出する(ステップ442)。
【0145】
次に、移動検出部34は、所定の測定時間内に当該距離や当該傾きが所定以上に変化し、かつ、それが所定回数あったか否かを判断する(ステップS443)。一例として、上述したような
図18(a)に示すテーブル507を参照してこれを判断してもよい。その結果、移動検出部34は、所定の測定時間内に当該距離や当該傾きが所定以上に変化し、かつ、それが所定回数あった場合に、当該ユーザ100が移動状態であると判断する(ステップS444)。移動検出部34は当該情報を表示形態判断部32に伝達する。
【0146】
その後、表示形態判断部32は、表示属性データ53として格納された上記のテーブル参照等によって適切な文書データの表示形態の仕様を特定する(ステップS445)。さらに、表示形態変更部33は、表示形態判断部32によって特定された文書データの表示形態の仕様が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と同一かどうかを確認する(ステップS446)。具体的には、上記テーブルの参照等によって特定された文書データの表示形態の仕様が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と全く同一の場合は表示変更を行わない。
【0147】
一方、特定された文書データの表示形態の仕様のうち、一部の項目が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様の同一項目と同一パラメータである場合は、当該項目は変更しない。両者で異なるパラメータの項目についてのみ、特定された文書データの表示形態の仕様のパラメータに変更して表示する(ステップS447)。なお、ユーザ100に対する表示端末1Bの傾きが角度γ1に対応するものである場合の対応は第2実施形態と同様である。
【0148】
(c)第3実施形態に係る表示端末の作用
以上、説明したように、第3実施形態に係る表示端末1Bは、移動検出部34をさらに備える。移動検出部34は、距離傾斜算出部31が算出した所定の距離および所定の傾きの所定以上の変化が、所定時間内に所定回数ある移動状態であることを検出し、表示形態判断部32は、移動状態と対応付けられた表示部4に表示すべき文書データの表示形態を特定する。
【0149】
なお、本実施形態では、移動検出部34がユーザ100の顔画像情報をもとに所定の距離や傾きの変動度合いを判断するものとして説明した。しかし、ユーザ100が移動状態であるとの判断は必ずしもこの方式には限定されない。これに代わるものとして、例えば表示端末1Bは加速度センサをさらに備えていてもよい。加速度センサは表示端末1Bの重力や移動、振動、衝撃等を検出するもので、その方式として静電容量式、ピエゾ抵抗式、圧電式、周波数変化式等の公知の技術を使用できる。
【0150】
このような加速度センサを使用する場合には、例えば移動検出部34が、所定時間内に所定以上の加速度検知が所定回数あった場合にユーザ100が移動状態であると判断してもよい。また、上述の方法に加速度センサによる検知を加味して、ユーザ100の移動判断を行ってもよい。ユーザ100の顔画像情報に基づく移動判断と加速度センサの検知に基づく移動判断を兼ね合わせることにより、ユーザ100が移動状態か否かをより高精度に行うことができるからである。
【0151】
このような構成により、第2実施形態に係る表示端末1Bでは、ユーザ100と表示端末1Bとの位置関係そのものだけではなく、当該位置関係の所定時間内の変動を加味して、より適切な表示形態で文書データを表示することが可能となる。これにより、混雑した電車内等の頻繁にユーザ100と表示端末1Bとの位置関係の変動が起こりうる環境でも、文書データの表示形態の変更追従性の遅延や表示形態の変更が頻繁に起きることによる視認性の悪化等が抑制できる。これにより、ユーザ100は周囲環境に関わらず、快適な視認性を確保した上で表示端末1Bによる文書データの閲覧を継続することができる。
【0152】
4.第4実施形態
次に、本開示の表示端末の第4実施形態について説明する。
図16に示すように、第4実施形態に係る表示端末1Cは、第1実施形態に係る表示端末1に対して、制御部3Cが疲労検出部35をさらに備える点が異なる。表示端末1Cは、表示端末1が有する機能をすべて包含するとともに、疲労検出部35による追加的な機能を備えている。以下に、表示端末1Cの構成等について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0153】
(a)表示端末の構成
(i)疲労検出部
疲労検出部35は、画像取得部2が取得した画像により、ユーザ100が文書データを閲覧中であることを確認する。その上で、操作部7の操作により表示部4の文書データの所定の頁を次の頁にめくる動作、すなわち改頁動作を行う際の時間間隔を測定する。当該測定は、疲労検出部35または他の制御部3Cが備えるタイマー機能を用いて行う。当該間隔の所定の平均値に対する比が所定以上大きくなった場合、疲労検出部35は、ユーザ100の読書スピードが低下傾向にあり、ユーザ100の疲労度合いが増しているものと判断する。この場合に、疲労検出部35は、ユーザ100の疲労状態の情報を表示形態判断部32に伝達し、これを受けた表示形態判断部32は、文書データの表示形態をより読み易いものへと変更する指示を表示形態変更部33に対して行う。
【0154】
例えば、一般的にユーザ100が疲労を感じたとき、集中力が欠如する等の要因で読書スピードは低下する。このとき、表示端末1Cまたは文書データの種類によって二つのタイプが存在する。一つは、表示部4に表示された所定の頁を読み終えた後、通常の書籍と同様に次の頁がめくられ、すなわち次の頁の文章全体が新たに表示部4に表示されるタイプである。また、別の一つは、表示された所定の頁の所定領域の文章を読み終えた後、表示画面を一部スクロールして、続きの文章を表示部4に表示させ、閲覧を継続できるタイプである。以降の説明は前者のタイプについて行うが、本実施形態は後者の場合でも同様に適用され得る。
【0155】
本実施形態では、ユーザ100が文書データを閲覧中であることを前提として、疲労検出部35が前回の改頁操作から次回の改頁操作までの時間間隔を測定する。疲労検出部35は、この時間間隔の測定データを蓄積することによって、ユーザ100の固有の改頁時間間隔の平均時間を算出できる。読書時間はユーザ100によって異なるため、あらかじめこのような改頁時間間隔の平均時間を把握することが重要となる。改頁時間間隔の平均時間は、同一のユーザ100であっても、閲覧中の文書データの種類に依存するため、できるだけ同一文書データに基づいて計算することが好ましい。ただし、まだ特定の文書データの閲覧を始めて十分なデータが蓄積されていない場合は、過去の別の文書データの情報を加味して計算してもよい。
【0156】
疲労検出部35は、読書中のユーザ100の改頁時間間隔を測定し続け、これをこれまで蓄積した情報から算出した平均値と比較する。そして、改頁時間間隔の測定結果と、平均値との差分が所定以上となった場合に、疲労検出部35はユーザ100が疲労状態にあると判断し、この情報が伝達された表示形態判断部32は、文書データの表示形態を変更すべきとの判断を行う。
【0157】
一例として、表示端末1Cの記憶部5等に
図18(b)に示す表示形態仕様テーブルが格納されているものとする。このテーブル508は、「疲労条件ID」、「ユーザID」、「改頁時間間隔の平均値に対する比」、「文書データサイズ」、「文書データ間隔」、「行間隔」、「書体」および「段組」に関する情報を互いに関連付けた参照テーブルである。「疲労条件ID」は、これらの様々な条件の組み合わせの一つを一義的に特定するための識別コードである。
【0158】
「改頁時間間隔の平均値に対する比」は、前述のとおり、対象とするユーザ100がこれまで読書をしてきた中での改頁時間間隔の平均時間を1としたときに、実際に疲労検出部35が測定した改頁時間間隔の比を示す。比が大きくなるほど、平均値に対する現在の改頁時間間隔が大きくなっていることが分かる。また、ユーザ100が疲労を感じているときの文書データの視認困難性の緩和には、「書体」や「段組」の変更も有効である。
【0159】
ここで、例えば、当該条件が、「001」の「ユーザID」を有するユーザ100が使用する表示端末1Cにおいて、当該文書データの改頁時間間隔の平均値が110秒であったとする。また、疲労検出部35が、現在、ユーザ100が当該文書データの閲覧をしている最中に測定した改頁時間間隔が155秒であったとする。このとき、ユーザ100の現在の改頁時間間隔の平均値に対する比は約1.4であるため、疲労検出部35は、当該状況について「疲労条件」が「0222」に該当することを特定する。
【0160】
これより、疲労検出部35は、当該条件に該当する「文書データサイズ」が「11ポイント」、「文書データ間隔」が「2.5mm」および「行間隔」が「3.5mm」となり、「書体」が「ゴシック体」であり、「段組」が「1段」となるような文書データの表示形態の変更を表示形態変更部33に指示することとなる。
【0161】
(b)文書データの表示形態の変更方法
次に、本実施形態に係る表示端末1Cを使用した場合の、文書データの表示形態の変更方法について主として
図17に基づいて説明する。まず、ユーザ100は、表示端末1Cを文書データの閲覧が可能な状態にする。続いて、表示端末1Cは、自動的に、あるいは、あらかじめユーザ100が設定した時間間隔でユーザ100の顔画像を画像取得部2により撮影、取得する(
図17のステップS461)。
【0162】
画像取得部2が取得した顔画像情報は画像処理部30に引き渡され、ユーザ100の顔画像の特徴情報が抽出できることによって、ユーザ100が文書データの閲覧中であることが判断される(ステップS462)。
【0163】
このようにユーザ100が閲覧中であることの確認後、疲労検出部35は当該文書データの改頁時間間隔の平均値の情報を記憶部5等から読み出す。一方、疲労検出部35は、現在、ユーザ100が当該文書データの閲覧をしている間も、随時、改頁時間間隔を測定する。ここで、疲労検出部35はユーザ100の現在の改頁時間間隔の平均値に対する比が所定以上大きいか否かを判断する(ステップS463)。一例として、上述したような
図18(b)に示すテーブル508を参照してこれを判断してもよい。このようにして、ユーザ100の現在の改頁時間間隔の平均値に対する比が所定以上大きい場合には、当該ユーザ100が疲労状態であると判断する(ステップS464)。疲労検出部35は当該情報を表示形態判断部32に伝達する。
【0164】
その後、表示形態判断部32は、表示属性データ53として格納された上記のテーブル参照等によって適切な文書データの表示形態の仕様を特定する(ステップS465)。さらに、表示形態変更部33は、表示形態判断部32によって特定された文書データの表示形態の仕様が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と同一かどうかを確認する(ステップS466)。具体的には、上記テーブルの参照等によって特定された文書データの表示形態の仕様が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と全く同一の場合は表示変更を行わない。
【0165】
一方、特定された文書データの表示形態の仕様のうち、一部の項目が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様の同一項目と同一パラメータである場合は、当該項目は変更しない。両者で異なるパラメータの項目についてのみ、特定された文書データの表示形態の仕様のパラメータに変更して表示する(ステップS467)。
【0166】
(c)第4実施形態に係る表示端末の作用
以上、説明したように、第4実施形態に係る表示端末1Cは、疲労検出部35をさらに備える。疲労検出部35は、表示端末1Cにおける表示部4の改頁操作の時間間隔が所定以上である疲労状態であることを検出し、表示形態判断部32は、疲労状態と対応付けられた表示部4に表示すべき文書データの表示形態を特定する。なお、本実施形態は、「改頁操作の時間間隔」とある部分について、改頁操作ではなくスクロール操作を行う表示端末1Cに対しては、「スクロール操作の時間間隔」に置き換えることで同様に成立する。
【0167】
また、表示端末1Cが以下に説明する視点検出センサをさらに備えている場合には、ユーザ100の視点が表示部4に表示された文書中の特定文書データにおいて所定時間留まっているかどうかを測定し、その結果を疲労検出部35が確認するという構成であってもよい。すなわち、本実施形態の「改頁操作の時間間隔」とある部分について、「視点検出センサにより測定された視点位置が変動せず、特定位置に連続的に留まった時間」に置き換えてもよい。
【0168】
ユーザ100の視点の位置を検出する視点検出センサには、例えば角膜反射方式のものが考えられる。この場合、視点検出センサはユーザ100の眼球の黒目と白目の反射率の違いを利用して視点の位置を検出する。角膜反射方式で用いられるセンサは発光素子と受光素子を有し、発光素子から赤外光をユーザの眼球に照射し、眼球からの反射光を受光素子で受光する。ここで、眼球の白目の部分は黒目の部分よりも反射率が高いため、受光素子をユーザ100の眼球配列に沿って左右方向に2個設ければ、それぞれの受光素子の受光反射率の違いから眼球の上下、左右の移動を検出できる。例えば、黒目が右側の受光素子側に移動した場合、右側の受光素子が受光する反射光の光量は左側の受光素子が受光する反射光の光量よりも少なくなる。
【0169】
また、眼球が上下に移動した場合も、発光素子と眼球との高低差によって、左右2個の受光素子の反射光の光量の和が増減するため、その増減量により、眼球が上下いずれに移動したかを検出できる。ここで、視点検出センサが測定した読書中のユーザ100の視点位置の情報が随時、疲労検出部35に伝達される。疲労検出部35は、視点位置が変動せず、特定位置に留まった場合にその時間を計測する。そして、疲労検出部35は、あらかじめ設定した所定時間の間、視点位置が変動せず、特定位置に留まった場合には、ユーザ100が疲労状態であると判断する。このように、上述の運用を置き換えても第4実施形態に係る表示端末1Cとして上述したものと同様の作用を得ることができる。
【0170】
このような構成により、第4実施形態に係る表示端末1Cでは、ユーザ100と表示端末1Cとの位置関係そのものだけではなく、ユーザ100の疲労度合いに応じて、より適切な表示形態で文書データを表示することが可能となる。これにより、疲労により読書スピードが低下しているユーザ100に対して、より読み易い文書データの表示形態を提供でき、疲労の蓄積による視認性の悪化等が抑制できる。その結果、ユーザ100は疲労度合いに関わらず、快適な視認性を確保した上で表示端末1Cによる文書データの閲覧を継続することができる。
【0171】
5.第5実施形態
次に、本開示の表示端末の第5実施形態について説明する。
図19に示すように、第5実施形態に係る表示端末1Dは、第1実施形態に係る表示端末1に対して、制御部3Dが乱視傾向検出部36をさらに備える点が異なる。表示端末1Dは、表示端末1が有する機能をすべて包含するとともに、乱視傾向検出部36による追加的な機能を備えている。
【0172】
乱視とは、目の角膜や水晶体の曲率が方向によって異なる等により、屈折力が縦横、斜めにおいて異なり、その結果、焦点を一点に合わせることができない状態を指す。特に正乱視の場合は、特定の一方向の線のみが明確に視認でき、他の方向の線がぼやけて見える等の症状を有することがある。このような乱視を有する場合は、眼鏡やコンタクトレンズによって矯正するか、屈折矯正手術によって治療することが有効と考えられる。
【0173】
ところで、軽度の乱視の場合には特段の処置を取らなくても日常生活に支障を来さない場合も多い。しかし、特定の一方向の線のみが視認困難であるような場合には、長時間の読書によって眼精疲労等を蓄積させ、ユーザ100の疲労を通常以上に増大させてしまうおそれがある。このようなユーザ100に対してできる限り快適な文書データの閲覧を提供できるように、乱視傾向検出部36が、ユーザ100の状態に合わせた適切な文書データの表示形態を選択することを本実施形態の目的としている。以下に、表示端末1Dの構成等について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0174】
(a)表示端末の構成
(i)乱視傾向検出部
乱視傾向検出部36は、ユーザ100が特定角度の線形状に対して視認困難性を有するなど、いわゆる乱視傾向を有する場合等であっても、文書データの閲覧における文書データの視認性を向上させるように、表示形態判断部32に必要な情報を提供する。これに基づいて表示形態判断部32が、適切な文書データの表示形態の変更を表示形態変更部33に指示する。
【0175】
乱視傾向検出部36は、ユーザ100からの表示端末1Dの操作部7に対する明示的な操作に対して起動する。乱視傾向検出部36は、ユーザ100からの要求を受けて、
図20(a)に示すような乱視傾向確認表示330を表示部4に表示する。乱視傾向確認表示330は、同一幅かつ同一長さを有する複数の線分が表示線として放射状に配列された表である。
【0176】
乱視傾向がまったくないユーザ100は乱視傾向確認表示330の放射状に配列された各表示線が同一幅かつ同一長さのものとして視認できる。一方、乱視傾向を有する一部のユーザ100については、乱視傾向確認表示330の放射状に配列された各表示線のうち、少なくとも一部の特定方向に配列された表示線が他の表示線に対して視認し難い傾向を有する場合がある。
【0177】
乱視傾向検出部36は、ユーザ100に対して、乱視傾向確認表示330の放射状に配列された各表示線のうち、他の表示線に対して視認し難い表示線を選択する操作を要求する。これは、表示部4の乱視傾向確認表示330の特定の表示線に直接触れることでタッチパネルを通じた入力が行えるものとしてもよく、乱視傾向確認表示330の表示とは別に、これの特定表示線を識別する番号等を入力するものとしてもよい。
【0178】
乱視傾向検出部36は、ユーザ100の入力情報から当該ユーザ100が視認し難い方向を特定する。例えば、ユーザ100が
図20(a)の乱視傾向確認表示330において、上下表示線333および334を選択したとする。この場合、乱視傾向検出部36は当該ユーザ100の視認し難い方向は表示部4の上下方向であると特定する。そこで、乱視傾向検出部36は、ユーザ100の視認し難い方向に関する情報を表示形態判断部32に伝達する。表示形態判断部32は、これを受けて文書データの表示形態を当該文書データの上下に延びる線要素の幅のみを拡大するように変更する。そしてこの内容で表示部4に表示するよう表示形態変更部33に指示する。
【0179】
具体的には、例えば
図20(b)に示す文書データ211である「F」について例示する。乱視傾向検出部36は、上記を踏まえて文書データ211を
図20(c)の文書データ212に変更する。文書データ212は、文書データ211に対して全体のサイズや「F」の横方向に延びる2箇所の線要素の太さであるLh21は変更しないが、「F」の上下方向に延びる線要素の太さであるLw21のみを、これよりも太いLw22に変更する。
【0180】
また、ユーザ100が乱視傾向確認表示330において、水平表示線331および332を選択した場合は、乱視傾向検出部36は当該ユーザ100の視認し難い方向は表示部4の左右方向であると特定する。この場合、乱視傾向検出部36は、文書データの表示形態を、当該文書データの左右に延びる線要素の幅のみを拡大するように変更する。そしてこの内容で表示部4に表示するよう表示形態変更部33に指示する。
【0181】
具体的には、乱視傾向検出部36は、上述の文書データ211を
図20(d)の文書データ213に変更する。文書データ213は、文書データ211に対して全体のサイズや「F」の上下方向に延びる線要素の太さであるLw21は変更しないが、「F」の横方向に延びる2箇所の線要素の太さであるLh21のみを、これよりも太いLh22に変更する。
【0182】
さらに、ユーザ100が乱視傾向確認表示330において、斜め表示線335および336を選択した場合は、乱視傾向検出部36は当該ユーザ100の視認し難い方向は表示部4の当該斜め方向であると特定する。そして、文書データの表示形態を、当該文書データの当該斜め方向に延びる線要素の幅のみを拡大するように変更する。そしてこの内容で表示部4に表示するよう表示形態変更部33に指示する。
【0183】
具体的には、乱視傾向検出部36は、前述した
図3(a)の文書データ201の「A」を
図20(e)の文書データ205に変更する。文書データ205は、文書データ201に対して全体のサイズは変更しないが、斜め表示線335および336に近似する方向に沿う「A」の左側の斜めの線要素の太さであるLw11のみを、これよりも太いLw12に変更する。
【0184】
上述した文書データの特定方向に沿った線幅のみを拡大する表示形態の変更手法は、元の標準となる文書データの書式に対して、特定のアルゴリズムによる変形を施すことによって得ることができる。また、あらかじめ想定される変形後の書式を複数種類作成、登録しておき、必要に応じて使用する書式を選択することで実現してもよい。特定のアルゴリズムを使用する方法のうち、横線の線幅のみを拡大したり、縦線の線幅のみを拡大することに関しては、例えば特許第5492911号公報に記載される方法等の公知の技術を使用することができる。
【0185】
(b)第5実施形態に係る表示端末の作用
以上、説明したように、第5実施形態に係る表示端末1Dは、乱視傾向検出部36をさらに備える。表示部4は、同一太さの複数の表示線が異なる角度で配置された図形である乱視傾向確認表示330を表示できる。乱視傾向検出部36は、ユーザ100が入力した、乱視傾向確認表示330における視認が困難な表示線の方向を特定し、表示形態判断部32は、文書データを構成する線要素のうち、視認が困難な当該表示線の方向に沿った線要素の幅を大きくするように、表示部4に表示すべき文書データの表示形態を特定する。
【0186】
このような構成により、第5実施形態に係る表示端末1Dでは、ユーザ100が特定の一方向の線のみが視認困難であるような視認性の特徴を有する場合に、長時間の読書によって、眼精疲労等を蓄積させたり、ユーザ100の疲労を増大させてしまうことを抑制できる。このようなユーザ100に対して、できる限り快適な読書をし得るように、乱視傾向検出部36が、ユーザ100の状態に合わせた適切な文書データの表示形態を選択することができるからである。
【0187】
6.第6実施形態
次に、本開示の表示端末を用いた文書データの表示システムに係る第6実施形態について説明する。
図21および
図22図に示すように、第6実施形態に係る文書データの表示システム10は、複数台の表示端末1E、1Fおよび1Gが、ネットワーク20を介して管理サーバ11と通信可能に接続されて構成される。本実施形態は、例えば第1実施形態と比べた場合、表示端末1E等が表示形態判断部32や表示形態変更部33を備えていない点が異なっている。一方、これらの機能は、管理サーバ11の本体部に表示形態判断部12aおよび表示形態変更部12bが備えられることにより代替される。なお、
図21で表示端末を3台接続しているのは単なる例示であり、ネットワーク20に接続できる表示端末の台数は任意である。
【0188】
(a)管理サーバの構成
管理サーバ11は、例えば
図22に示すように本体部12、記憶部14および通信部13を備える。通信部13は管理サーバ11をネットワーク接続するための手段に過ぎず、必須の構成要素ではない。本体部12は表示形態判断部12aおよび表示形態変更部12bを備えており、第1実施形態等の表示形態判断部32や表示形態変更部33と同様の機能を果たす。また、表示形態判断部12aおよび表示形態変更部12bが、適切な文書データの表示形態の仕様を選択するための参照テーブルを格納するものとして、記憶部14には表示属性データ14aが格納されている。これも第1実施形態等の記憶部5に設けられる表示属性データ53と同様のものである。
【0189】
管理サーバ11は、これ以外にも、表示端末1E等に文書データを送信したり、ウェブブラウザを介して表示端末1E等から文書データを閲覧させる機能を有してもよい。また、このような機能を管理サーバ11とは別個のアプリケーションサーバに設けてもよい。
【0190】
(b)表示端末の構成
一方、表示端末1E、1Fおよび1Gは、主として制御部3E、通信部6、記憶部5A、表示部4、操作部7、画像取得部2および電源部8を備える。ただし、表示端末1E等は、上述のとおり、制御部3Eに表示形態判断部や表示形態変更部を備えていない。また、記憶部5Aに設けられた表示属性データ53aには、文書データの表示形態を特定するための各種のテーブルは格納されなくてもよい。後述するように、文書データの表示形態の変更の指示は管理サーバ11から行うことができるからである。
【0191】
(c)文書データの表示形態の変更方法
本実施形態に係る表示端末1E等を含む文書データの表示システム10を利用した場合の文書データの表示形態の変更方法について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。まず、ユーザ100は表示端末1Eを文書データの閲覧が可能な状態にする。続いて、表示端末1Eは、自動的に、あるいは、あらかじめユーザが設定した時間間隔で、外部環境取得部37が、表示端末1の周囲の照度値を取得する。
【0192】
次に、表示端末1Eは、これらの外部環境取得部37が、算出した特性値に関する情報を、通信部6を介して管理サーバ11に送信する。表示端末1Eは、これらの情報に加えて、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態に関する情報を併せて管理サーバ11に送信することが好ましい。管理サーバ11は、これらの情報を受信した場合、本体部12の表示形態判断部12aにおいて、記憶部14の表示属性データ14aとして格納された前述のテーブル参照等によって適切な文書データの表示形態の仕様を特定する。
【0193】
さらに、本体部12の表示形態変更部12bは、表示形態判断部12aによって特定された文書データの表示形態の仕様が、現在、表示端末1Eの表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と同一かどうかを確認する。具体的には、上記テーブルの参照等によって特定された文書データの表示形態の仕様が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様と全く同一の場合は表示変更を行わない。
【0194】
一方、特定された文書データの表示形態の仕様のうち、一部の項目が、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態の仕様の同一項目と同一パラメータである場合は、当該項目は変更しない。両者で異なるパラメータの項目についてのみ、特定された文書データの表示形態の仕様のパラメータに変更して表示することを特定する。表示形態変更部12bは、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態を変更する場合、その変更すべき文書データの表示形態に関する情報を管理サーバ11の通信部13からネットワークを介して、表示端末1Eに送信する。この情報を受信した表示端末1Eは、その指示に従い表示部4の文書データの表示を変更する。
【0195】
なお、表示端末1Eが、所定の距離や傾きに関する情報に加えて、現在、表示部4に表示されている文書データの表示形態に関する情報を併せて送信しない場合には、以下のようにしてもよい。すなわち、表示形態変更部12bは、表示端末1Eの現在の表示部4に表示されている現在の文書データの表示形態に関わらず、所定の文書データの表示形態の変更の指示を表示端末1Eに行ってもよい。
【0196】
(d)第6実施形態に係る文書データの表示システムの作用
以上、説明したように、第6実施形態に係る文書データの表示システム10は、表示端末1E等と、管理サーバ11と、を備える。表示端末1E等は、電子書籍の文書データを画面に表示する表示部4と、管理サーバ11と通信するための通信部6と、周囲の照度を取得する外部環境取得部37と、を備える。
【0197】
一方、管理サーバ11は、外部環境取得部37が取得した照度値と対応付けられた表示部4に表示すべき文書データの表示形態を特定する表示形態判断部12aを有する。さらには、表示形態判断部12aにより特定された表示部4に表示すべき文書データの表示形態が、表示部4に現在表示されている文書データの表示形態と異なる場合に、上記特定された表示部4に表示すべき文書データの表示形態に基づいて、表示部4の文書データを変更する表示形態変更部12bを備える。
【0198】
表示端末1Eは、外部環境取得部37が算出した特性値の情報を管理サーバ11に送信する。そして、管理サーバ11から受信した表示部4の文書データを変更して表示する指示に基づき、表示部4の表示を変更する。また、管理サーバ11は、表示端末1E等から外部環境取得部37の算出した特性値の情報を受信し、表示形態変更部12bの表示部4の文書データを変更して表示する指示を表示端末1E等に送信する。
【0199】
このような構成により、第6実施形態に係る文書データの表示システム10では、照度と、これに対応づけられる適切な文書データの表示形態に関する情報を、各々の表示端末1E等の記憶部等に直接格納することが不要となる。これらの情報は、管理サーバ11側に格納されるので、表示端末1E等の機種ごとのメモリ容量や読み出し速度等による制限を受けにくくできる。また、ユーザ100が、表示端末の機種を交換したり、複数台の表示端末を併用する場合等に、必要な文書データの表示形態に関する情報が管理サーバ11側で一元管理されることにより、各々の表示端末に情報を入力し直す等の手間が掛からず、快適な電子書籍の読書を行うことができる。
【0200】
なお、本開示の第6実施形態に係る文書データの表示システム10は、第1実施形態から第5実施形態までに係る表示端末およびこれらの一部または全部の機能を組み合わせた実施形態に係る表示端末についても適用可能であることはいうまでもない。いずれの場合においても、対象とする表示端末から表示形態判断部および表示形態変更部の機能を削除したものを想定すれば、本実施形態と同様の作用が得られるからである。
【0201】
また、第1実施形態における外部環境取得部37、第2実施形態における外部環境取得部37および距離傾斜算出部31、第3実施形態における外部環境取得部37および移動検出部34、第4実施形態における外部環境取得部37および疲労検出部35、並びに第5実施形態における外部環境取得部37および乱視傾向検出部36の各機能を、対象とする表示端末から削除し、当該機能を管理サーバに付加する実施形態としてもよい。こうすることで、表示端末の機能に依存せず、高速かつ効率的に表示端末の文書データの表示形態の変更が行える。
【0202】
なお、上述する第1実施形態から第6実施形態までの各実施形態における文書データの表示形態には、以下に説明する読書アシスト表示を付加してもよい。読書アシスト表示は、例えば非特許文献である「読みを速くする日本語文章レイアウトシステムの研究開発(ユニシス技報、2020年3月第143号)」に詳細の記載がある技術である。
【0203】
本表示は、文章の改行場所を文節の間に調節した文節間改行方式、隔行単位で背景色を付与したストライプ型背景色方式、文書データのベースラインを文節単位で階段状に下げていく階段状ベースライン方式、冒頭文書データを階段状に字下げする表示方式等の一部または全部を実施する。これにより、ユーザの視点移動が無駄なくできる文章表記とし、スムーズな読書を実現するものである。このような読書アシスト表示を、前述した文書データのサイズや文書データの間隔、行間隔、段組等の表示形態の要素に加えることにより、一層、ユーザによる電子書籍の文書データの視認性の向上や、疲労の軽減を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0204】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G 表示端末
2 画像取得部
3、3A、3B、3C、3D、3E 制御部
4 表示部
5 記憶部
6 通信部
7 操作部
8 電源部
10 文書データの表示システム
11 管理サーバ
12 本体部
12a 表示形態判断部
12b 表示形態変更部
13 通信部
14 記憶部
14a 表示属性データ
20 ネットワーク
30 画像処理部
31 距離傾斜算出部
32 表示形態判断部
33 表示形態変更部
34 移動検出部
35 疲労検出部
36 乱視傾向検出部
37 外部環境取得部
38 照度算出部
51 文書データ
52 文書データアプリ
53、53a 表示属性データ
100 ユーザ
101 眼球部
111、112、113、114、115、116、117、118 顔画像
121、122、123 全体画像
131、132、133 文書データ画像
141、142 背景画像
151、152 全体画像
160 画素
161、162、163 部分画素
201、202、203、204、205、211、212、213 文書データ
301、302、303、304、305、306 文章
320 段組境界部
330 乱視傾向確認表示
331、332 水平表示線
333、334 垂直表示線
335、336 斜め表示線
501、502、503、504、505、506、507、508 テーブル