IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-レクチファイヤの支持構造 図1
  • 特許-レクチファイヤの支持構造 図2
  • 特許-レクチファイヤの支持構造 図3
  • 特許-レクチファイヤの支持構造 図4
  • 特許-レクチファイヤの支持構造 図5
  • 特許-レクチファイヤの支持構造 図6
  • 特許-レクチファイヤの支持構造 図7
  • 特許-レクチファイヤの支持構造 図8
  • 特許-レクチファイヤの支持構造 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】レクチファイヤの支持構造
(51)【国際特許分類】
   B62J 11/00 20200101AFI20241001BHJP
   B62J 17/10 20200101ALI20241001BHJP
【FI】
B62J11/00
B62J17/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020171156
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062940
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】石井 樹
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-273082(JP,A)
【文献】特開2013-237410(JP,A)
【文献】特開2020-179722(JP,A)
【文献】特開2014-065464(JP,A)
【文献】実開昭60-055526(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 11/00
B62J 17/00
B62J 6/02
B62K 19/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームの前方にレクチファイヤを支持するレクチファイヤの支持構造であって、
前記車体フレームの前部に取り付けられた第1のブレースと、
前記第1のブレースの前部に取り付けられた第2のブレースと、を備え、
前記第1のブレースは前方に向かって開いた骨組み構造であり、
前記第2のブレースは少なくとも背面側を開口した箱状であり、
前記第1のブレース及び前記第2のブレースによって前記レクチファイヤの設置スペースが形成され、前記レクチファイヤが前記第1のブレースに取り付けられていることを特徴とするレクチファイヤの支持構造。
【請求項2】
前記レクチファイヤの一部が車体前後方向に延びる中心線に重なることを特徴とする請求項1に記載のレクチファイヤの支持構造。
【請求項3】
車体フレームの前方にレクチファイヤを支持するレクチファイヤの支持構造であって、
前記車体フレームの前部に取り付けられた第1のブレースと、
前記第1のブレースの前部に取り付けられた第2のブレースと、を備え、
前記第1のブレースは前方に向かって開いた骨組み構造であり、
前記第2のブレースは少なくとも背面側を開口した箱状であり、
前記第1のブレース及び前記第2のブレースによって前記レクチファイヤの設置スペースが形成され
前記第2のブレースは底壁部を有し、当該底壁部には下方からロアブラケットカバーがオーバラップしており、
前記底壁部と前記ロアブラケットカバーによって前記レクチファイヤの設置スペースに走行風を導く導風路が形成されていることを特徴とするレクチファイヤの支持構造。
【請求項4】
前記底壁部の左右方向中央が上方に窪んでおり、
前記底壁部の窪みが車体前後方向に延びており、当該窪みに下方から前記ロアブラケットカバーがオーバラップしていることを特徴とする請求項3に記載のレクチファイヤの支持構造。
【請求項5】
前記レクチファイヤの前端が前記ロアブラケットカバーの後端よりも前方に位置することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のレクチファイヤの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レクチファイヤの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車載部品の支持構造として、車体フレームに取り付けられたカウルブレースによって各種車載部品を支持するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカウルブレースは金属パイプ及び金属ブラケットを溶接によって一体化して形成されている。カウルブレースには、車体フレームのヘッドパイプから前方に張出フレームが延び、張出フレームの先端側のフロントフレームにフロントカウルやヘッドランプが取り付けられている。さらにカウルブレースには、フロントカウルの内側の車載部品が各種フレームに干渉しないように取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-193594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のカウルブレースは金属パイプや金属ブラケットを溶接して複雑な形状になっているため、車載部品の設置スペースや作業スペースをカウルブレースの内側に確保することができなかった。このため、カウルブレースの外側に車載部品が設置されて車体前部が大型化するという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、レクチファイヤの設置スペース及び作業スペースを確保しつつ、車体前部のコンパクト化を図ることができるレクチファイヤの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のレクチファイヤの支持構造は、車体フレームの前方にレクチファイヤを支持するレクチファイヤの支持構造であって、前記車体フレームの前部に取り付けられた第1のブレースと、前記第1のブレースの前部に取り付けられた第2のブレースと、を備え、前記第1のブレースは前方に向かって開いた骨組み構造であり、前記第2のブレースは少なくとも背面側を開口した箱状であり、前記第1のブレース及び前記第2のブレースによって前記レクチファイヤの設置スペースが形成され、前記レクチファイヤが前記第1のブレースに取り付けられていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のレクチファイヤの支持構造によれば、第1のブレースの骨組み構造が前方に向かって開いており、箱状の第2のブレースの背面側が開口している。このため、第1、第2のブレースの内側にレクチファイヤが設置されて、車体前部のコンパクト化を図ることができる。また、第1、第2のブレースが前後に分離するため、第1、第2のブレースに対してレクチファイヤを取り付けるための作業スペースを十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
図2】本実施例のカウルブレース周辺の斜視図である。
図3】本実施例の第1のブレースを前方から見た斜視図である。
図4】本実施例の第1のブレースを後方から見た斜視図である。
図5】本実施例の第2のブレースを前方から見た斜視図である。
図6】本実施例の第2のブレースを後方から見た斜視図である。
図7】本実施例の車載部品を取り付けたカウルブレースの上面図である。
図8】本実施例の車載部品を取り付けたカウルブレースの下面図である。
図9】本実施例のカウルブレース周辺の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の車載部品の支持構造は、骨組み構造の第1のブレースと箱状の第2のブレースによって車体フレームの前方に車載部品を支持している。第1のブレースが車体フレームの前部に取り付けられ、第2のブレースが第1のブレースの前部に取り付けられている。第1のブレースの骨組み構造が前方に向かって開いており、箱状の第2のブレースの背面側が開口している。このため、第1、第2のブレースの内側に車載部品が設置されて、車体前部のコンパクト化を図ることができる。また、第1、第2のブレースが前後に分離するため、第1、第2のブレースに対して車載部品を取り付けるための作業スペースを十分に確保することができる。
【実施例
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。図1は、本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、アルミ鋳造によって形成されるツインスパー型の車体フレーム10に、エンジン16や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10はヘッドパイプ11(図2参照)から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム12と、ヘッドパイプ11から左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム(不図示)とを有している。一対のメインフレーム12によってエンジン16の後部が支持され、一対のダウンフレームによってエンジン16の前部が支持されている。エンジン16が車体フレーム10に支持されることで、車両全体の剛性が確保されている。
【0012】
メインフレーム12の前側部分はエンジン16の上方に位置するタンクレール13になっており、タンクレール13によって燃料タンク17が支持されている。メインフレーム12の後側部分はエンジン16の後方に位置するボディフレーム14になっており、ボディフレーム14の上下方向の略中間位置にスイングアーム18が揺動可能に支持されている。ボディフレーム14の上部からは、シートレール(不図示)とバックステー(不図示)が後方に向かって延びている。シートレール上には、燃料タンク17の後方においてライダーシート21及びピリオンシート22が支持されている。
【0013】
ヘッドパイプ11には、ステアリングシャフト(不図示)を介して一対のフロントフォーク23が操舵可能に支持されている。フロントフォーク23の下部には前輪26が回転可能に支持されており、前輪26の上部はフロントフェンダ27に覆われている。スイングアーム18はボディフレーム14から後方に向かって延びている。スイングアーム18の後端には後輪28が回転可能に支持され、後輪28の上方はリアフェンダ29に覆われている。後輪28にはチェーンドライブ式の変速機構を介してエンジン16が連結されており、変速機構を介してエンジン16からの動力が後輪28に伝達されている。
【0014】
車体フレーム10にはカウルブレース40(図2参照)が取り付けられており、カウルブレース40に支持された各種カバーに鞍乗型車両1が覆われている。例えば、車両前部の前面側はフロントカウル31に覆われており、車両前部の側面側は一対のサイドカウル32に覆われている。また、カウルブレース40によってポジションランプ81と一対のヘッドランプ91が支持されている。フロントカウル31の中央にポジションランプ81が露出されており、ポジションランプ81を挟んで車両の左右両側に一対のヘッドランプ91が露出されている。カウルブレース40にはランプ以外の各種車載部品も支持されている。
【0015】
ところで、通常の鞍乗型車両では、フロントカウルやカウルブレースの構造が決まった後に空きスペースを利用してカウルブレースに車載部品が取り付けられる。しかしながら、一般的なカウルブレースは金属パイプや金属ブラケットを溶接した骨組み構造になっており、複雑に接合された金属パイプの間に車載部品の設置スペースや作業スペースを確保することが難しい。カウルブレースの内側に車載部品が収まらないため、カウルブレースの外側に車載部品が取り付けられて、鞍乗型車両の車体前部のコンパクト化の点で改善が求められている。
【0016】
また、車載部品としてレクチファイヤ等の重量物が左右方向の片側に寄ってカウルブレースに取り付けられると、車体の重量バランスが左右方向で不均一になって操縦安定性が悪化する。また、カウルブレースに作用する車載部品の荷重が左右方向で不均一になり、荷重に対する強度を補うために補強材を追加すると、補強材の分だけカウルブレースの重量が増加する。また、車体の重量バランスのバラツキによって車体左側と車体右側で振動特性が異なり、振動特性の差異によってフロントカウルに設けられた左右のミラーの視認性が変わってしまう。
【0017】
そこで、本実施例では、前方に向かって開いた骨組み構造の第1のブレース41と背面側を開口した箱状の第2のブレース61とを組み合わせてカウルブレース40が形成されている。カウルブレース40の内側に車載部品が収められて車体前部のコンパクト化が図られている。また、第1のブレース41と第2のブレース61が前後に分離することで、カウルブレース40に車載部品を取り付けるための作業スペースが確保される。さらに、カウルブレース40の内側に車載部品が収まることで、左右方向中央に車載部品が取り付けられて車体の重量バランスが左右方向で均一に近づけられている。
【0018】
以下、図2から図6を参照して、車載部品の支持構造としてのカウルブレースについて説明する。図2は、本実施例のカウルブレース周辺の斜視図である。図3は、本実施例の第1のブレースを前方から見た斜視図である。図4は、本実施例の第1のブレースを後方から見た斜視図である。図5は、本実施例の第2のブレースを前方から見た斜視図である。図6は、本実施例の第2のブレースを後方から見た斜視図である。
【0019】
図2に示すように、カウルブレース40は、フロントカウル31(図1参照)の内側で、車体フレーム10の前方に車載部品を支持している。カウルブレース40は、ヘッドパイプ11に取り付けられた金属製の第1のブレース41と、第1のブレース41の前部に取り付けられた樹脂製の第2のブレース61とを備えている。第1のブレース41は、金属ブラケットや金属パイプ等から成り、カウルブレース40の基端側の骨格を形成している。第2のブレース61は背面側を開口した箱状に形成されており、第2のブレース61の外面には各種車載部品が取り付けられている。
【0020】
例えば、第2のブレース61の前面には正面視V字状のポジションランプ81が取り付けられ、このポジションランプ81の下方に一対のヘッドランプ91が取り付けられている。第2のブレース61において、ポジションランプ81の後方にETC(Electronic Toll Collection)アンテナ97が取り付けられている。また、第2のブレース61において、ETCアンテナ97の後方にLIN(Local Interconnect Network)コントローラ98が取り付けられ、LINコントローラ98の上方にリレー99a、99bが取り付けられている。これら車載部品の取付箇所の詳細については後述する。
【0021】
図3及び図4に示すように、第1のブレース41は前方に向かって開いた骨組み構造を有している。第1のブレース41の後側の枠状フレーム42は、左右方向で対向した一対の枠板43と、一対の枠板43の前縁を連結した前板44と、一対の枠板43の下縁を連結した下板45とを有している。一対の枠板43の後枠はヘッドパイプ11を挟み込む挟持板になっている。一対の枠板43の上縁にはT字ブラケット46が固定されており、T字ブラケット46の前後に長い縦板によって一対の枠板43の上面が覆われている。T字ブラケット46の先端側は左右に長い横板になっており、T字ブラケット46の横板を介して一対の枠板43の前部にU字状のアッパアーム47が固定されている。
【0022】
T字ブラケット46の横板からアッパアーム47が延出し、アッパアーム47の延出部分は前方に向かって左右方向に広がるように湾曲している。アッパアーム47の両端にはフロントカウル31(図1参照)用の一対の取付ブラケット51aが固定されている。アッパアーム47の一対の取付ブラケット51a付近は逆U字状のブリッジ48を介して連結されている。ブリッジ48の背面側にはメータユニット(不図示)用の一対の取付ブラケット51bが所定間隔を空けて固定され、ブリッジ48の前面側には第2のブレース61用の一対の取付ブラケット51cが所定間隔を空けて固定されている。
【0023】
枠状フレーム42の下板45から前方に向かってロアアーム49が延びており、ロアアーム49の先端には第2のブレース61用の取付ブラケット51dが固定されている。取付ブラケット51dには左右方向に長い取付面が形成されている。枠状フレーム42の下板45には、ロアアーム49の下面を支える側面視三角形状の補強ブラケット52が固定されている。また、第1のブレース41の前板44及び下板45にはレクチファイヤ100(図9参照)用の支持部53a、53bが設けられている。第1のブレース41のアッパアーム47とロアアーム49の間はレクチファイヤ100の設置スペースとして利用される。
【0024】
図5及び図6に示すように、第2のブレース61は、前後抜きの型を用いて、第1のブレース41(図4参照)よりも軽量かつ振動減衰率の高い樹脂材料で成形されている。第2のブレース61は、左右方向に広がった前壁部62と、前壁部62の上縁から後方に延びる上壁部63と、前壁部62の側縁から後方に延びる一対の側壁部64と、前壁部62の下縁から後方に延びる底壁部65とで背面を開口した箱状に形成されている。第2のブレース61が軽量化されると共に第2のブレース61の剛性が向上される。また、第2のブレース61の背面側に周辺部品や配線の設置スペースが確保される。
【0025】
前壁部62は、左右両側に位置する一対の両側前壁部66と、一対の両側前壁部66よりも前方に突出した中央前壁部67とを有している。一対の両側前壁部66の上半部はポジションランプ81(図2参照)の両端側の取付面になっており、これら上半部の取付面にはポジションランプ81用の取付穴68aが形成されている。一対の両側前壁部66の下半部は一対のヘッドランプ91(図2参照)の取付面になっており、これら下半部の取付面にはヘッドランプ91用の取付穴68bが形成されている。一対の両側前壁部66の下半部は中央前壁部67よりも下方に突出している。
【0026】
中央前壁部67は角錐台状の有底筒状に形成されている。中央前壁部67の前面はポジションランプ81の中央の取付面になっており、前面の取付面にはポジションランプ81用の取付穴68cが形成されている。中央前壁部67の上面は上面視矩形状に僅かに窪んでおり、僅かな窪みによってETCアンテナ97(図2参照)の取付面69が形成されている。底壁部65の中央は上方に窪んで一対の両側前壁部66の下半部を下方に突出させており、中央の窪み70によって後述するヘッドランプコントローラ96(図8参照)と底壁部65の干渉が回避されている。
【0027】
上壁部63の左右両側から一対の延出部71が上方に延びている。一対の延出部71の前面は凹状に湾曲しており、一対の延出部71の前面の上端側には第1のブレース41の一対の取付ブラケット51c(図3参照)に対応したブレース取付部72aが形成されている。一対の延出部71の左右方向外側の側面は一対の側壁部64に連なっており、一対の延出部71の左右方向内側の側面は連結板73を介して互いに連結されている。一対の延出部71の間には、LINコントローラ98(図2参照)及びリレー99a、99b(図2参照)の設置スペースが形成されている。
【0028】
この場合、連結板73の下方において、一対の延出部71の車幅方向内側の側面から前方にLINコントローラ98用の一対の取付片74aが突出している。連結板73の前面側にLINコントローラ98の設置スペースが確保される。連結板73の上縁から上方にリレー99a、99b用の一対の取付片74b、74cが突出している。連結板73は前方に迫り出しており、連結板73の背面側にリレー99a、99bの設置スペースが確保される。上壁部63の中央は切り欠かれており、この切り欠き75を通じてETCアンテナ97及びLINコントローラ98の配線が第2のブレース61の背面側に引き込まれる。
【0029】
第2のブレース61の背面側には複数の隔壁によって仕切られている。各両側前壁部66の裏面側は第1の隔壁部76aによって上下に仕切られており、各両側前壁部66と中央前壁部67の裏面側は第2の隔壁部76bによって左右に仕切られている。第1、第2の隔壁部76a、76bによって第2のブレース61の剛性が向上されている。第1、第2の隔壁部76a、76bは底壁部65側で集合しており、第1、第2の隔壁部76a、76bの集合箇所には第1のブレース41の取付ブラケット51d(図3参照)に対応した一対のブレース取付部72bが形成されている。
【0030】
このように、第2のブレース61にはアンダーカットがないため、シンプルな前後抜きの型によって第2のブレース61を容易に樹脂成形することができる。第2のブレース61の背面側が中空の箱状に形成されて軽量化が図られている。よって、第1のブレース41に第2のブレース61を取り付けてカウルブレース40の前後長を大きくしても、カウルブレース40全体の重量が過剰に増加することがない。さらに、第2のブレース61が振動減衰率の高い樹脂材料で形成されているため、第2のブレース61に取り付けられた車載部品の振動が効果的に抑えられている。
【0031】
図7から図9を参照して、車載部品の取付状態について説明する。図7は、本実施例の車載部品を取り付けたカウルブレースの上面図である。図8は、本実施例の車載部品を取り付けたカウルブレースの下面図である。図9は、本実施例のカウルブレース周辺の縦断面図である。
【0032】
図2図7図8に示すように、第1のブレース41の一対の取付ブラケット51cに第2のブレース61の一対のブレース取付部72aが位置合わせされ、ボルトによって一対の取付ブラケット51cとブレース取付部72aが固定されている。第1のブレース41の取付ブラケット51dに第2のブレース61の一対のブレース取付部72b(図6参照)が位置合わせされ、ボルトによって取付ブラケット51dの両端と一対のブレース取付部72bが固定されている。金属製の第1のブレース41と樹脂製の第2のブレース61が連結されて、フロントカウル31及び車載部品を支持するカウルブレース40が形成されている。
【0033】
ポジションランプ81は、上面視にて左右方向中央から左右方向外側に向かって後方に延びている。ポジションランプ81は、ポジションランプケース82の前面の開口にレンズカバー83が装着されている。ポジションランプケース82には、ポジションランプ81をフロントカウル31に取り付けるための複数の取付ブラケット84が設けられている。ポジションランプケース82の背面側には、第2のブレース61の一対の両側前壁部66に対向する一対の取付面85aが形成されており、第2のブレース61の中央前壁部67に対向する取付面85bが形成されている。
【0034】
ポジションランプケース82の一対の取付面85aにはそれぞれネジ穴が形成されている。一対の両側前壁部66の取付穴68a(図5参照)にゴムブッシュ88aが装着され、ゴムブッシュ88aの内側に差し込まれたボルトが取付面85aのネジ穴に固定される。ポジションランプケース82の取付面85bには突起が形成されている。中央前壁部67の取付穴68c(図5参照)にゴムブッシュ88cが装着され、ゴムブッシュ88cの内側に取付面85bの突起が差し込まれることで固定される。ゴムブッシュ88a、88cの一部が一対の両側前壁部66及び中央前壁部67の前面から突出しているため、ポジションランプケース82と第2のブレース61に隙間が形成されている。
【0035】
一対のヘッドランプ91は、ポジションランプ81の下方において左右方向外側に位置付けられている。各ヘッドランプ91は、ヘッドランプケース92の前面の開口にレンズカバー93が装着されている。一対のヘッドランプ91の下部は板状連結部94によって連結されている。板状連結部94は第2のブレース61の角錐台状の中央前壁部67の下方に位置しており、板状連結部94の下面中央には一対のヘッドランプ91を制御するヘッドランプコントローラ96が取り付けられている。ヘッドランプコントローラ96は第2のブレース61の底壁部65の窪み70に収容されている。
【0036】
板状連結部94の背面側には、第2のブレース61の一対の両側前壁部66に対向する一対の取付面95が形成されている。板状連結部94の一対の取付面95にはネジ穴が形成されている。一対の両側前壁部66の取付穴68b(図5参照)にゴムブッシュ88bが装着され、ゴムブッシュ88bの内側に差し込まれたボルトが取付面95のネジ穴に固定される。ゴムブッシュ88bの一部が一対の両側前壁部66の前面から突出しているため、板状連結部94と第2のブレース61に隙間が形成されている。このように、第2のブレース61には、ゴムブッシュ88a-88cを介してポジションランプ81及び一対のヘッドランプ91が浮動支持されている。
【0037】
角錐台状の中央前壁部67の上面の取付面69には、路側アンテナと料金情報を送受信するETCアンテナ97が取り付けられている。ETCアンテナ97が第2のブレース61の先端側に取り付けられることで、鞍乗型車両1の走行方向の前側で料金情報を送受信してスムーズに料金ゲートを通過することができる。ETCアンテナ97の後方の一対の取付片74a(図5参照)には、LIN通信を制御するLINコントローラ98が取り付けられている。ETCアンテナ97及びLINコントローラ98の配線は第2のブレース61の切り欠き75を通じて背面側に引き込まれている。
【0038】
LINコントローラ98の後方には連結板73が位置しており、連結板73上の一対の取付片74b、74c(図5参照)にはリレー99a、99bが取り付けられている。リレー99a、99bの本体部分は連結板73の背面側に収容されている。このように、第2のブレース61には、ポジションランプ81、一対のヘッドランプ91、ヘッドランプコントローラ96、ETCアンテナ97、LINコントローラ98、リレー99a、99b等の車載部品が取り付けられている。よって、エンジン16の振動が第1のブレース41に伝わっても、第2のブレース61及びゴムブッシュ88a-88cによって振動が減衰されて車載部品の振動が抑えられる。
【0039】
カウルブレース40の車体前後方向に延びる中心線L上に、ポジションランプ81、ヘッドランプコントローラ96、ETCアンテナ97、LINコントローラ98が設けられている。また、一対のヘッドランプ91、リレー99a、99bは中心線Lを挟んで対称位置に設けられている。さらに、重量物であるレクチファイヤ100は、レクチファイヤ100の一部が中心線Lに重なるように第1のブレース41に取り付けられている。複数の車載部品が車体の左右方向の重量バランスを考慮してカウルブレース40に取り付けられている。
【0040】
このように、ポジションランプ81や一対のヘッドランプ91以外の車載部品についても、カウルブレース40に取り付けたときの重量バランスが考慮されるため、車体の重量バランスが左右方向で均一に近づけられて操縦安定性が向上される。車体の振動特性も左右方向で均一に近づけられて、フロントカウル31(図1参照)に取り付けられた左右のミラー(不図示)の視認性が向上される。カウルブレース40に作用する複数の車載部品の荷重バランスも左右方向で均一に近づけられて、カウルブレース40に対する補強が不要になって軽量化が図られる。
【0041】
図9に示すように、第1のブレース41のアッパアーム47は枠状フレーム42から前方に向かって斜め上方に延び、第1のブレース41のロアアーム49は枠状フレーム42から前方に向かって斜め下方に延びている。第1のブレース41の前方の第2のブレース61の背面側は開口している。このため、アッパアーム47とロアアーム49の間で第2のブレース61の後方には、オルターネーター(不図示)で生成された交流電力を直流電力に整流するレクチファイヤ100用の設置スペースが形成される。これにより、カウルブレース40の内側にレクチファイヤ100が収められて車体前部のコンパクト化が実現される。
【0042】
この場合、レクチファイヤ100は、取付ブラケット51eを介して枠状フレーム42の支持部53a、53bに取り付けられている。カウルブレース40の第1のブレース41と第2のブレース61が前後に分離可能に形成されている。第1のブレース41から第2のブレース61が取り外された状態で、第1のブレース41に対してレクチファイヤ100を取り付けるための十分な作業スペースが確保される。よって、レクチファイヤ100のような大型部品であっても、カウルブレース40の内側に容易に取り付けることができる。
【0043】
上記したように、第2のブレース61の底壁部65の左右方向中央が上方に窪んでおり、この底壁部65の窪み70が車体前後方向に延びている。底壁部65の窪み70に対して下方からオーバラップするように、フロントフォーク23にはロアブラケット24を覆うロアブラケットカバー25が取り付けられている。底壁部65の窪み70とロアブラケットカバー25に隙間Cが形成されており、隙間Cによってカウルブレース40の内側に走行風を取り込む導風路が形成されている。隙間Cから導風路に走行風が入り込み、走行風が導風路を後方に流れることで、ヘッドランプ91やレクチファイヤ100等による熱の籠りが緩和される。
【0044】
より詳細には、底壁部65の窪み70によって導風路の上面及び両側面が形成され、ロアブラケットカバー25によって導風路の底面が形成されている。導風路はレクチファイヤ100の設置スペースに走行風を導くように延在している。また、走行風をレクチファイヤ100の設置スペースに確実に導くように、レクチファイヤ100の前端はロアブラケットカバー25の後端よりも前方に位置している。このため、車体前側の隙間Cから導風路に走行風が入り込み、導風路によってレクチファイヤ100の設置スペースに走行風が効果的に導かれる。走行風によって設置スペースに籠った熱気が押し流されてレクチファイヤ100の放熱性が向上される。
【0045】
以上、本実施例によれば、第1のブレース41の骨組み構造が前方に向かって開いており、箱状の第2のブレース61の背面側が開口している。このため、カウルブレース40の内側にレクチファイヤ100が設置されて、車体前部のコンパクト化を図ることができる。また、第1、第2のブレース41、61が前後に分離するため、カウルブレース40に対してレクチファイヤ100を取り付けるための作業スペースを十分に確保することができる。
【0046】
なお、本実施例では、第2のブレースに取り付けられる車載部品として、ポジションランプ、ヘッドランプ、ヘッドランプコントローラ、ETCアンテナ、LINコントローラ、リレーを例示したが、当該車載部品は特に限定されない。例えば、車載部品が車両コントローラであってもよい。また、車載部品は電装部品に限定されず、車載部品はサイドミラーのステーでもよい。また、第1のブレースに取り付けられる車載部品としてレクチファイヤを例示したが、当該車載部品は特に限定されない。
【0047】
また、本実施例では、第2のブレースの前壁部にポジションランプが取り付けられたが、第2のブレースの前壁部にポジションランプが取り付けられない場合には、車体前方の物体を検知するレーダー等の物体検知器が取り付けられていてもよい。
【0048】
また、本実施例では、第1のブレースにレクチファイヤが取り付けられたが、第2のブレースの背面側にレクチファイヤが取り付けられてもよい。
【0049】
また、本実施例では、ポジションランプが左右方向に長く形成されているが、ポジションランプが左側と右側に分離されていてもよい。
【0050】
また、本実施例では、一対のヘッドランプが板状連結部を介して一体化されているが、一対のヘッドランプが分離されていてもよい。
【0051】
また、本実施例では、第1のブレースは枠状フレームからアッパアームが前方に向かって斜め上方に延び、枠状フレームからロアアームが前方に向かって斜め下方に延びた骨組み構造に形成されたが、第1のブレースはこの骨組み構造に限定されない。第1のブレースは、前方に向かって開いた骨組み構造であればよい。
【0052】
また、本実施例では、第2のブレースは前壁部、上壁部、一対の側壁部、底壁部を有する箱状に形成されたが、第2のブレースはこの形状に限定されない。第2のブレースは少なくとも背面側が開口された箱状に形成されていればよく、例えば、第2のブレースが底壁部を有さなくてもよい。
【0053】
また、本実施例では、第1、第2のブレースの内側に車載部品の設置スペースが形成されたが、第1、第2のブレースによってレクチファイヤの設置スペースが形成される構成であれば、例えば、第1のブレースの内側にだけレクチファイヤの設置スペースが形成されてもよい。
【0054】
また、本実施例では、第2のブレースの底壁に窪みが形成されたが、第2のブレースの底壁に窪みが形成されていなくてもよい。底壁部に窪みが形成されていなくても、底壁部に対してロアブラケットカバーがオーバラップすることで、底壁部とロアブラケットカバーによってレクチファイヤの設置スペースに走行風を導く導風路を形成することができる。
【0055】
第1のブレースが金属材料によって形成され、第2のブレースが樹脂材料によって形成されたが、第1、第2のブレースの材料は特に限定されない。第2のブレースは第1のブレースよりも比重が小さいものが用いられていればよい。
【0056】
また、本実施例の車載部品の支持構造は、図示の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0057】
以上の通り、本実施例の車載部品の支持構造(カウルブレース40)は、車体フレーム(10)の前方に車載部品を支持する車載部品の支持構造であって、車体フレームの前部に取り付けられた第1のブレース(41)と、第1のブレースの前部に取り付けられた第2のブレース(61)と、を備え、第1のブレースは前方に向かって開いた骨組み構造であり、第2のブレースは少なくとも背面側を開口した箱状であり、第1のブレース及び第2のブレースによって車載部品(レクチファイヤ100)の設置スペースが形成される。この構成によれば、第1のブレースの骨組み構造が前方に向かって開いており、箱状の第2のブレースの背面側が開口している。このため、第1、第2のブレースの内側に車載部品が設置されて、車体前部のコンパクト化を図ることができる。また、第1、第2のブレースが前後に分離するため、第1、第2のブレースに対して車載部品を取り付けるための作業スペースを十分に確保することができる。
【0058】
また、本実施例の車載部品の支持構造において、車載部品の一部が車体前後方向に延びる中心線(L)に重なる。この構成によれば、車体の重量バランスが左右方向で均一に近づけられて操縦安定性が向上する。
【0059】
また、本実施例の車載部品の支持構造において、第2のブレースは底壁部(65)を有し、当該底壁部には下方から車体外装部品(ロアブラケットカバー25)がオーバラップしており、底壁部と車体外装部品によって車載部品の設置スペースに走行風を導く導風路が形成されている。この構成によれば、車体前側から導風路に走行風が入り込み、走行風が導風路を流れることで車載部品による設置スペースの熱の籠りが緩和される。
【0060】
また、本実施例の車載部品の支持構造において、底壁部の左右方向中央が上方に窪んでおり、底壁部の窪み(70)が車体前後方向に延びており、当該窪みに下方から車体外装部品がオーバラップしている。この構成によれば、底壁部の窪みと車体外装部品に形成された導風路によって、車載部品の設置スペースに向けて効果的に走行風が導かれる。
【0061】
また、本実施例の車載部品の支持構造において、車載部品の前端が車体外装部品の後端よりも前方に位置する。この構成によれば、導風路によって車載部品の設置スペースに確実に走行風が導かれる。
【0062】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0063】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0064】
10 :車体フレーム
25 :ロアブラケットカバー(車体外装部品)
40 :カウルブレース(車載部品の支持構造)
41 :第1のブレース
61 :第2のブレース
65 :底壁部
70 :窪み
100:レクチファイヤ(車載部品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9