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特許7563101剥離性接着物製造用硬化性組成物、剥離性接着物、並びに、剥離方法
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  • 特許-剥離性接着物製造用硬化性組成物、剥離性接着物、並びに、剥離方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】剥離性接着物製造用硬化性組成物、剥離性接着物、並びに、剥離方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/04 20060101AFI20241001BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241001BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20241001BHJP
   C08F 22/32 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C09J4/04
C09J11/06
C09J11/08
C08F22/32
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020173326
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064605
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】一色 絵利香
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 謙一
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 栄一
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137858(JP,A)
【文献】特開昭56-135455(JP,A)
【文献】特開平06-124931(JP,A)
【文献】特表2015-523426(JP,A)
【文献】特開昭60-110774(JP,A)
【文献】特表2012-501361(JP,A)
【文献】特開平5-140573(JP,A)
【文献】特表2019-529579(JP,A)
【文献】特開昭63-60961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C08C 19/00- 19/44
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、
下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含み、
前記硬化性組成物の硬化物の23℃における貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である
剥離性接着物製造用硬化性組成物。
【化1】

式(1)中、Lはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数2~6の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、pは3又は4を表し、Rは置換基を有してもよい、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐アルキル基、アリール基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表す。
【請求項2】
瞬間粘着剤である、請求項1に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
【請求項3】
前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度が、60℃以下である請求項1又は請求項2に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
【請求項4】
前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物のプローブタック試験におけるタック値が、0.1N/cm以上100N/cm以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
【請求項5】
前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率が、350%以上である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
【請求項6】
JIS Z 0237(2009)に準拠して測定されるガラスと易接着性ポリエチレンテレフタレート基材とを前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化させて接着した接着物の180°引きはがし粘着力が、5N/25mm以上100N/25mm以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
【請求項7】
JIS Z 0237(2009)に準拠して測定されるアルミニウム基材同士を前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化させて接着した接着物の180°引きはがし粘着力が、5N/25mm以上50N/25mm以下である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
【請求項8】
前記Lがそれぞれ独立に、-CHCH-、-CH(R)CH-又は-CHCH(R)-であり、Rが炭素数1~6のアルキル基である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
【請求項9】
前記Rが、炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
【請求項10】
前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の25℃における初期粘度が、300Pa・s以下であり、
25℃60%RHの環境下において、前記剥離性接着物製造用硬化性組成物0.1gに対し5体積%トリエタノールアミンのアセトン溶液1μL添加した時から前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下の範囲で略一定になるまでの時間が、60分以下である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
【請求項11】
粘着付与剤、可塑剤、ゴム強化剤、抗酸化剤、及び、ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を更に含む、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
【請求項12】
ラベル、シール又はステッカー製造用である、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
【請求項13】
部材、及び、
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物からなる層又は前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化してなる層を有する
剥離性接着物。
【請求項14】
剥離フィルムを更に有する、請求項13に記載の剥離性接着物。
【請求項15】
部材Aの少なくとも1つの面に、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物からなる層又は前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化してなる層を有する積層体を、部材Bに接着し剥離性接着物を得る工程、及び、
接着された前記部材Aと前記部材Bとを剥離する工程を含む
剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離性接着物製造用硬化性組成物、剥離性接着物、並びに、剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2-シアノアクリレート化合物を含有する硬化性組成物は、主成分である2-シアノアクリレート化合物が有する特異なアニオン重合性により、被着体表面に付着する僅かな水分等の微弱なアニオンによって重合を開始し、各種材料を短時間で強固に接合することができる。そのため、いわゆる、瞬間接着剤として、工業用、医療用、家庭用等の広範な分野において用いられている。
【0003】
2-シアノアクリレート化合物を含有する硬化性組成物は、その硬化物が硬く、優れたせん断接着強さを有する反面、柔軟性に欠け、剥離強度が低い短所があった。また、硬い接着剤硬化物は感圧に対して変形せず、粘着性や剥離後の再接着性を示さない。そのため、一旦接着した被着体を位置合わせ等のために剥離、再接着することは困難である。
【0004】
従来の2-シアノアクリレート化合物、又は、2-シアノアクリレート化合物を含有する硬化性組成物としては、特許文献1~5に記載されたものが挙げられる。
特許文献1には、アルコキシアルキル基をエステル鎖として有する2-シアノアクリレート化合物を含む硬化性組成物が、柔軟な硬化物が得られるものとして記載されている。
【0005】
特許文献2には、重合性シアノアクリレートモノマーと、エラストマーと、揮発性液体と、を含み、前記シアノアクリレートモノマーが不揮発性部分の0.1~65重量%であり、エラストマー相中の前記エラストマーが不揮発性部分の少なくとも35重量%であり、前記揮発性液体が全組成物の少なくとも40重量%である、形状適合性コーティング組成物が記載されている。
【0006】
特許文献3には、エステル基としてハロゲン化アルコキシアルキルオキシカルボニル基を有する新規な2-シアノアクリレート化合物が記載されている。
【0007】
特許文献4には、2-シアノアクリレート及びフタル酸ジブチルからなる柔軟なシアノアクリレート系組成物が記載されている。
【0008】
特許文献5には、(a)化学式(I)の化合物から選ばれる少なくとも1つのシアノアクリレートモノマー
【0009】
【化1】
【0010】
[式中、Rは1~10個の炭素原子を含む二価の連結基であり、AはC-C50アリール基あるいはC2-C50ヘテロアリール基を表わす];および(b)少なくとも1つの(コ)ポリマーを含んでなる硬化性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特公昭61-13702号公報
【文献】特表2014-528280号公報
【文献】特開8-283225号公報
【文献】特開8-48945号公報
【文献】特表2015-523426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、柔軟性に対する記述はあるが、はく離強度試験や粘着性能の評価は実施してない。
また、特許文献2では刺激臭や白化現象がないこと、硬化物の柔軟性に関しては述べられているが、剥離強度試験や粘着性に関する記述はない。
特許文献3では、硬化物の伸びや耐久性について述べられているが、剥離強度に関する記載はない。
特許文献4では、柔軟性や脆性についての記載があるだけで、粘着性に関する記述はない。
特許文献5に記載の技術では、硬化後の組成物は、粘着性を示さず、剥離強度及び再接着性に関する記載はない。
【0013】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、得られる硬化物の再接着性に優れる剥離性接着物製造用硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 硬化性組成物であって、下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含み、前記硬化性組成物の硬化物の23℃における貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である剥離性接着物製造用硬化性組成物。
【0015】
【化2】
【0016】
式(1)中、Lはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数2~6の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、pは2~8の整数を表し、Rは置換基を有してもよい、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐アルキル基、アリール基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表す。
【0017】
<2> 瞬間粘着剤である、<1>に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
<3> 前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度が、60℃以下である<1>又は<2>に記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
<4> 前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物のプローブタック試験におけるタック値が、0.1N/cm以上100N/cm以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
<5> 前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率が、350%以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
<6> JIS Z 0237(2009)に準拠して測定されるガラスと易接着性ポリエチレンテレフタレート基材とを前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化させて接着した接着物の180°引きはがし粘着力が、5N/25mm以上100N/25mm以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
<7> JIS Z 0237(2009)に準拠して測定されるアルミニウム基材同士を前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化させて接着した接着物の180°引きはがし粘着力が、5N/25mm以上50N/25mm以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
<8> 前記Lがそれぞれ独立に、-CHCH-、-CH(R)CH-又は-CHCH(R)-であり、Rが炭素数1~6のアルキル基である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
<9> 前記pが、2~6の整数である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
<10> 前記Rが、炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
<11> 前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の25℃における初期粘度が、300Pa・s以下であり、
25℃60%RHの環境下において、前記剥離性接着物製造用硬化性組成物0.1gに対し5体積%トリエタノールアミンのアセトン溶液1μL添加した時から前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下の範囲で略一定になるまでの時間が、60分以下である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
<12> 粘着付与剤、可塑剤、ゴム強化剤、抗酸化剤、及び、ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を更に含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
<13> ラベル、シール又はステッカー製造用である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物。
<14> 部材、及び、<1>~<12>のいずれか1つに記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物からなる層又は前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化してなる層を有する剥離性接着物。
<15> 剥離フィルムを更に有する、<14>に記載の剥離性接着物。
<16> 部材Aの少なくとも1つの面に、<1>~<12>のいずれか1つに記載の剥離性接着物製造用硬化性組成物からなる層又は前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化してなる層を有する積層体を、部材Bに接着し剥離性接着物を得る工程、及び、接着された前記部材Aと前記部材Bとを剥離する工程を含む剥離方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、得られる硬化物の再接着性に優れる剥離性接着物製造用硬化性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例2~4、及び、比較例1の硬化性組成物の硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
【0021】
(剥離性接着物製造用硬化性組成物)
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物(以下、単に「硬化性組成物」ともいう。)は、下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含み、前記硬化性組成物の硬化物の23℃における貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である。
【0022】
【化3】
【0023】
式(1)中、Lはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数2~6の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、pは2~8の整数を表し、Rは置換基を有してもよい、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐アルキル基、アリール基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表す。
【0024】
本発明者らが鋭意検討した結果、前記構成をとることにより、得られる硬化物(剥離性接着物)の再接着性に優れる剥離性接着物製造用硬化性組成物を提供できることを見出した。
これによる優れた効果の作用機構は明確ではないが、以下のように推定している。
2個~8個のアルキレンオキシ構造を有する前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含み、かつ、前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物の23℃における貯蔵弾性率を上記範囲内とすることにより、硬化後であっても柔軟性を有し、得られる硬化物の表面における粘着力が適度であり、得られる硬化物の再接着性に優れると推定される。
【0025】
更に、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物は、2個~8個のアルキレンオキシ構造を有する前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含み、かつ、前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物の23℃における貯蔵弾性率を上記範囲内とすることにより、粘着力が増加する速度(硬化速度)に優れ、かつ得られる硬化物の粘着性に優れるため、剥離性接着物製造用瞬間粘着剤として好適に用いることができる。
【0026】
本発明における「剥離性接着物」とは、少なくとも2つの部材を本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物からなる硬化物により固定し、その後、剥離可能である接着物をいう。
本発明の剥離性接着物としては、例えば、接着後に再剥離可能な、ラベル、シール、ステッカー等が特に好適に挙げられる。このような接着後に再剥離可能な剥離性接着物を、例えば、再剥離ラベル、再剥離シール、再剥離ステッカー等ともいう。
【0027】
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物により接着する被接着材としては、特に制限はなく、無機化合物であっても、有機化合物であっても、無機-有機複合物であってもよく、また、形状も任意の形状であればよく、また、同じ材質であっても、異なる材質のものであってもよい。
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物は、例えば、以下のような被接着材(部材)を、同種同士又は異種同士で接着することができる。
被接着材としては、例えば、半導体ウエハ、チップ等の電子材料、レンズ、プリズム、偏光子、光ファイバ、光導波路等の光学材料、水晶振動子、圧電素子、建材、壁材、材木、木板、ベニヤ板、木工製品、ガラス窓、装飾品、センサ、研磨用定盤等の治具、教材、陶器、磁器、織布、不織布、紙、糸、繊維、インゴット、皮革製品等の各種部材が挙げられる。
また、被接着材の材質としては、特に制限はなく、金属、水晶等の鉱物、ガラス、セラミック、樹脂、低分子の有機化合物、木材、植物、皮革、コンクリート等の種々のものが挙げられる。
【0028】
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物は、空気中の水分により容易かつ迅速に硬化し、接着することができ、更に、例えば、機械的外力等により、容易に剥離することができる。
また、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物は、空気中の水分により容易かつ迅速に硬化し、接着することができ、更に、容易に剥離することができるため、固定位置の再調整が容易であり、ラベル、シール、ステッカー等に特に好適に用いることができる。
【0029】
<硬化物の23℃における貯蔵弾性率>
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物において、前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物の23℃における貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であり、得られる硬化物の粘着性の観点から、1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であることが好ましく、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であることがより好ましく、5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であることが特に好ましい。
なお、本発明における「剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物」は、前述したように粘着性を有する硬化物であれば、完全に硬化したものである必要はない。
また、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物の「硬化」とは、前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物のアニオン重合が少なくとも一部進行し、初期の組成物よりも粘度が上昇することを意味する。
【0030】
<硬化物のガラス転移温度>
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物において、前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、得られる硬化物の粘着性の観点から、60℃以下であることが好ましく、35℃以下であることがより好ましく、-20℃以上35℃以下であることが更に好ましく、-10℃以上10℃以下であることが特に好ましい。
【0031】
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物の貯蔵弾性率及びガラス転移温度(Tg)は、以下の方法により測定するものとする。
剥離性接着物製造用硬化性組成物を、トリエタノールアミンを塗布した下記動的粘弾性測定装置用の冶具間に注入後、動的粘弾性測定装置(アントンパール社製、製品名「MCR301」)を用いて、周波数1Hz、温度25℃、厚み300μmの条件下、貯蔵弾性率を測定する。なお、貯蔵弾性率の変化がなくなったことを確認したものを硬化物とする。前記硬化物を用い、周波数1Hz、昇温速度2℃/分で-50℃~100℃の範囲でずりによる貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)、損失正接(tanδ=E”/E’)を測定する。
なお、本発明において、「貯蔵弾性率の変化がなくなったこと」は、1分あたりの貯蔵弾性率変化率が、25℃における最終的な貯蔵弾性率の1%以下になったこととする。
また、前記硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、損失正接(tanδ)のピーク温度を評価指標とし、求める。貯蔵弾性率は、23℃における値を用いる。
【0032】
<硬化物のプローブタック試験におけるタック値>
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物において、前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物のプローブタック試験におけるタック値は、得られる硬化物の粘着性の観点から、0.1N/cm以上100N/cm以下であることが好ましく、1N/cm以上100N/cm以下であることがより好ましく、10N/cm以上100N/cm以下であることが更に好ましく、50N/cm以上100N/cm以下であることが特に好ましい。
【0033】
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物のプローブタック試験におけるタック値は、以下の方法により測定するものとする。
抜き枠のある、厚さ38μmのスペーサー(離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」))を、厚さ125μmの易接着PETフィルム(東レ(株)製、製品名「ルミラー125U34」)上に乗せ、スペーサー枠内に前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を滴下した。その上に、トリエタノールアミンを塗布した、別の離型PETフィルムを被せて貼り合わせ、室温(25℃、以下同様)で24時間静置し、完全に硬化させる。硬化後、幅15mm、長さ15mmに切断し、離型PETフィルムを剥離して、試験片とする。この試験片について、ASTM D2979:2016(一部準拠)、日本薬局方6.12.(3.4.):第十七改正「プローブタック試験法」に準拠し、プローブタック試験機(テスター産業(株)製、製品名「TE-6002」)を用いて測定し、タック値(単位:N/cm)を算出する。
【0034】
<硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率>
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物において、前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率は、得られる硬化物の粘着性及び柔軟性の観点から、350%以上であることが好ましく、500%以上であることがより好ましく、750%以上であることが更に好ましく、900%以上であることが特に好ましい。また、上限値は、10,000%以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率は、以下の方法により測定するものとする。
剥離性接着物製造用硬化性組成物1gに、トリエタノールアミンを1μL添加し撹拌した後、離型PETフィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」)に置いた、厚さ1mmのシリコーンゴムの型枠内に流し込む。上に離型フィルムを被せてガラス板で挟み込んで室温で24時間静置し、完全に硬化させる。硬化後、型枠及び離型フィルムを取り除いて、幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を作製した。引張試験機((株)東洋精機製作所製、製品名「ストログラフV20-C」)を用いて、この硬化物の応力-ひずみ曲線を測定し、伸び率を算出する。
【0036】
<接着物の180°引きはがし粘着力>
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物のJIS Z 0237(2009)に準拠して測定されるガラスと易接着性ポリエチレンテレフタレート(PET)基材とを前記硬化性組成物を硬化させて接着した接着物の180°引きはがし粘着力は、以下の方法により測定するものとする。
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物において、JIS Z 0237(2009)に準拠して測定されるガラスと易接着性PET基材とを前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化させて接着した接着物の180°引きはがし粘着力は、得られる硬化物の粘着性及び柔軟性の観点から、5N/25mm以上100N/25mm以下であることが好ましく、10N/25mm以上50N/25mm以上であることがより好ましく、10N/25mm以上35N/25mm以下であることが更に好ましく、10N/25mm以上25N/25mm以下であることが特に好ましい。
また、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物において、JIS Z 0237(2009)に準拠して測定されるアルミニウム基材同士を前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化させて接着した接着物の180°引きはがし粘着力は、得られる硬化物の粘着性及び柔軟性の観点から、5N/25mm以上50N/25mm以下であることが好ましく、5N/25mm以上35N/25mm以上であることがより好ましく、5N/25mm以上25N/25mm以下であることが特に好ましい。
【0037】
本発明における「易接着性」とは、硬化性組成物により接着しやすく、かつ、接着した後には、剥がれが生じにくい性質を意味する。
【0038】
-ガラスと易接着性PET基材との接着物の作製-
幅25mm、長さ150mmの抜き枠のある、厚さ38μmのスペーサー(離型PETフィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」)を厚さ1mmのガラス板(AGCファブリテック(株)製、製品名「FL11AK」)に乗せ、スペーサー枠内のガラス上に、得られた硬化性組成物を滴下する。その上に、トリエタノールアミンを塗布した、厚さ125μmの易接着性PETフィルム(東レ(株)製、製品名「ルミラー125U34」)を被せて貼り合わせ、室温で24時間静置し、完全に硬化させる。硬化後、スペーサーを取り除き、厚さ38μm、幅25mm、長さ150mmの接着剤層を有する、片面がガラス基材、もう片面が易接着PET基材である試験片を作製する。
【0039】
-アルミニウム基材同士の接着物の作製-
幅90mm、長さ150mmの抜き枠のある、厚さ38μmのスペーサー(離型PETフィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」))を、厚さ0.1mmのアルミニウム板(JIS A6061Pに規定された材質)に乗せ、スペーサー枠内のアルミニウム板上に、前記接着剤組成物を滴下する。その上に、トリエタノールアミンを塗布した、厚さ1mmのアルミニウム板を被せて貼り合わせ、室温で24時間静置し、完全に硬化させる。硬化後、スペーサーを取り除き、幅25mmに切断し、厚さ38μm、幅25mm、長さ150mmの接着剤層を有する、両面がアルミニウム基材である試験片を作製する。
【0040】
-剥離強度測定-
前記条件で作製した試験片について、片側の基材(ガラスと易接着PET基材との接着物の場合は易接着PET基材)の端を、アルミニウム基材同士は50mm/分の速度で、ガラスと易接着性PET基材は100mm/分の速度で、180°の剥離方向へ剥離し、その時の被着体に対する粘着力(抵抗力)(単位:N/25mm)を測定する。
【0041】
<硬化性組成物の粘度>
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物の25℃における粘度は、塗布性、及び、得られる硬化物の粘着性の観点から、300Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましく、50Pa・s以下であることが更に好ましく、10Pa・s以上で50Pa・s以下であることが特に好ましい。
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物の粘度は、(株)トキメック製E型粘度計を用い、25℃、100rpmの条件下にて測定するものとする。
【0042】
<硬化時間>
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物において、25℃60%RHの環境下において、前記剥離性接着物製造用硬化性組成物0.1gに対し5体積%トリエタノールアミンのアセトン溶液1μL添加した時から前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下の範囲で略一定になるまでの時間は、塗布性、及び、得られる硬化物の粘着性の観点から、60分以下であることが好ましく、30分以下であることがより好ましく、20分以下であることが更に好ましく、10分以下であることが特に好ましい。
なお、前記硬化物の貯蔵弾性率が略一定になるまでとは、1分あたりの貯蔵弾性率変化率が、25℃における最終的な貯蔵弾性率の1%以下になることとする。
また、硬化物の貯蔵弾性率の測定方法は、前述した通りである。
【0043】
<式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物>
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物は、前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含む。
式(1)におけるLが有していてもよい置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリーロキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基が挙げられる。
式(1)におけるLはそれぞれ独立に、得られる硬化物の粘着性及び再接着性の観点から、-CHCH-、-CH(R)CH-又は-CHCH(R)-であることが好ましく、-CH(R)CH-又は-CHCH(R)-であることがより好ましい。
前記Rは、炭素数1~6のアルキル基を表し、得られる硬化物の粘着性及び再接着性の観点から、炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
また、式(1)における全てのRは、同じ基であることが好ましい。
また、式(1)におけるLとして具体的には、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、2,3-プロピレン基、1,2-ブチレン基、1,3-ブチレン基、1,4-ブチレン基、2,3-ブチレン基、2,4-ブチレン基、3,4-ブチレン基、1,2-ペンチレン基、1,3-ペンチレン基、1,4-ペンチレン基、2,3-ペンチレン基、2,4-ペンチレン基、2,5-ペンチレン基、3,4-ペンチレン基、3,5-ペンチレン基、4,5-ペンチレン基等が挙げられる。
中でも、得られる硬化物の粘着性及び再接着性の観点から、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、2,3-プロピレン基、1,2-ブチレン基、1,3-ブチレン基、1,4-ブチレン基、2,3-ブチレン基、2,4-ブチレン基又は3,4-ブチレン基であることが好ましく、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、2,3-プロピレン基又は1,2-ブチレン基であることがより好ましく、1,2-プロピレン基又は2,3-プロピレン基であることが特に好ましい。
【0044】
式(1)におけるRが有していてもよい置換基は、Lが有していてもよい置換基と同様である。
式(1)におけるRとしては、得られる硬化物の粘着性及び再接着性の観点から、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~8の直鎖若しくは分岐アルケニル基、又は、炭素数2~8のアルキニル基であることが好ましく、炭素数1~8の直鎖又は分岐アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基であることが特に好ましい。また、前記アルキル基は、直鎖アルキル基であることが好ましい。
式(1)におけるRとして具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-オクチル基、2-オクチル基、アリル基、フェニル基、ベンジル基が挙げられる。
中でも、得られる硬化物の粘着性及び再接着性の観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、又は、n-ヘキシル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又は、n-ブチル基であることがより好ましい。
【0045】
式(1)におけるpは、得られる硬化物の粘着性及び再接着性の観点から、2~6の整数であることが好ましく、2~4の整数であることがより好ましく、3又は4であることが更に好ましく、3であることが特に好ましい。また、pは、得られる硬化物の粘着性、柔軟性及び再接着性の観点から、3以上であることが好ましい。
【0046】
前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物として、具体的には例えば、2-シアノアクリル酸の2-(2-メトキシエトキシ)エチル、2-(2-エトキシエトキシ)エチル、2-(2-プロピルオキシエトキシ)エチル、2-(2-ブトキシエトキシ)エチル、2-(2-ペンチルオキシエトキシ)エチル、2-(2-ヘキシルオキシエトキシ)エチル、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-プロピルオキシエトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-ブチルオキシエトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-ペンチルオキシエトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-ヘキシルオキシエトキシ)エトキシ]エチル、1-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、
【0047】
1-[2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、2-[2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、1-[2-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、2-[2-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、1-[2-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、2-[2-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、
【0048】
1-[2-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、2-[2-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、1-[2-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、2-[2-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノペンチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル等のエステルが好適に挙げられる。
【0049】
本発明の硬化性組成物に用いられる前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の硬化性組成物における前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物の含有量は、水易解体性、接着性、硬化性及び再接着性の観点から、硬化性組成物の全質量に対し、40質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上99.5質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上90質量%以下であることが更に好ましく、70質量%以上85質量%以下であることが特に好ましい。
【0050】
<その他の成分>
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物は、前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、従来、2-シアノアクリレート化合物を含有する硬化性組成物に配合して用いられている安定剤、硬化促進剤、光重合開始剤、可塑剤、増粘剤、粒子、着色剤、香料、溶剤、強度向上剤、ゴム強化剤、抗酸化剤、ポリマー等を、目的に応じて、硬化性組成物の硬化性及び得られる硬化物の粘着性等を損なわない範囲で適量配合することができる。
その他の成分の含有量は、2-シアノアクリレート化合物の含有量未満であることが好ましく、また、硬化性組成物の全質量に対し、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物以外の2-シアノアクリレート化合物として、得られる化合物の粘着性を調整し、再接着性及び接着物残り(糊残り)抑制性を向上させる観点から、多官能シアノアクリレート化合物を含むことが好ましい。
多官能シアノアクリレート化合物としては、ヘキサンジオールビスシアノアクリレート、オクタンジオールビスシアノアクリレート、デカンジオールビスシアノアクリレート、ドデカンジオールビスシアノアクリレート等の多官能アルキルシアノアクリレート、ポリプロピレングリコールビスシアノアクリレート等の多官能ポリアルキレングリコールシアノアクリレート、1,3-ビス(4-シアノアクリロイルオキシブチル)テトラメチルジシロキサン等のシラン又はシロキサン化合物からなる多官能シアノアクリレート等が好ましく挙げられる。
中でも、本発明の硬化性組成物は、その他の成分として、粘着付与剤、可塑剤、ゴム強化剤、抗酸化剤、及び、ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を更に含むことが好ましい。
【0051】
粘着付与剤としては、ロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステル等のロジン誘導体;テルペンフェノール樹脂、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等を主体とするテルペン系樹脂;(水添)石油樹脂;クマロン-インデン系樹脂;水素化芳香族コポリマー;スチレン系樹脂;キシレン系樹脂;(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。
【0052】
また、可塑剤としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジペンタデシル、テレフタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジイソノニル、トルイル酸デシル、ショウノウ酸ビス(2-エチルヘキシル)、2-エチルヘキシルシクロヘキシルカルボキシレート、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、カプロン酸トリグリセライド、安息香酸2-エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、2-シアノアクリレート化合物との相溶性がよく、かつ可塑化効率が高いという点から、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、安息香酸2-エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエートが好ましい。これらの可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ゴム強化剤としては、公知のゴム強化剤を用いることができ、中でも、エチレンアクリル酸エラストマーが好ましく挙げられる。エチレンアクリル酸エラストマーとしては、例えば、Dupont社製VAMACエラストマーを用いることができる。
ゴム強化剤は、硬化性組成物の全質量に対し、1.5質量%~20質量%であることが好ましく、5質量%~15質量%であることがより好ましく、8質量%~10質量%であることが特に好ましい。
【0054】
抗酸化剤として、公知の抗酸化剤を用いることができ、中でも、ヒンダードフェノール化合物が好ましく挙げられる。
【0055】
ポリマーとしては、ホモポリマー(単独重合体)であっても、コポリマー(共重合体)であってもよいが、コポリマーが好ましく挙げられる。
ポリマーとして具体的には、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルエーテル、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ブタジエンアクリロニトリルポリマー、熱可塑性エラストマー、スチレン-イソプレン、スチレンイソプレン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー、スチレン‐ブタジエンポリマー、ポリ-α‐オレフィン、シリコーン、エチレン含有コポリマー、エチレンビニルアセテート、及び、それらの組み合わせよりなる群から選択されるポリマーが挙げられる。中でも、ポリ(メタ)アクリレート、又は、エチレンビニルアセテート共重合体であることが好ましい。
【0056】
安定剤としては、(1)二酸化硫黄及びメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、三弗化ホウ素メタノール、三弗化ホウ素ジエチルエーテル等の三弗化ホウ素錯体、HBF、トリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤、(2)ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、カテコール及びピロガロール等のラジカル重合禁止剤などが挙げられる。これらの安定剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
硬化促進剤は、2-シアノアクリレート系硬化性組成物のアニオン重合を促進するものであれば、いずれも使用することができる。硬化促進剤としては、例えば、ポリエーテル化合物、カリックスアレン類、チアカリックスアレン類、ピロガロールアレン類、及びオニウム塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとの共重合体、メタクリル酸メチルとその他のメタクリル酸エステルとの共重合体、アクリルゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル-2-シアノアクリル酸エステル及びエチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
硬化性組成物に配合してもよい粒子は、硬化性組成物を使用した際の接着剤層の厚さを調整するためのものである。
前記粒子の平均粒子径は、10μm~200μmであることが好ましく、15μm~200μmであることがより好ましく、15μm~150μmであることが更に好ましい。
粒子の材質は、使用する2-シアノアクリレート化合物に不溶であり、重合等の変質を引き起こさないものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体、ジビニルベンゼン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体等の架橋樹脂;球状シリカ、ガラスビーズ、ガラスファイバー等の無機化合物;シリコーン化合物;有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格を含んでなる有機無機複合粒子等が挙げられる。
また、粒子の含有量は特に限定されないが、2-シアノアクリレート化合物の含有量を100質量部とした場合に、0.1質量部~10質量部であることが好ましく、1質量部~5質量部であることがより好ましく、1質量部~3質量部であることが更に好ましい。前記0.1質量部~10質量部の範囲であると、硬化速度や接着強さに与える影響を少なくすることができる。
本発明における粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した体積基準の平均値である。
【0060】
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物は、特に制限はなく、種々の用途に用いることができる。
中でも、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物は、接着した箇所の剥離性接着物製造用硬化性組成物又は不要な箇所に付着し硬化した硬化性組成物を、機械的外力、又は、水により簡便に剥離又は除去することができるため、例えば、教材用硬化性組成物として好適に用いることができる。本発明の仮固定用硬化性組成物が硬化した硬化物は、例えば、常温(15℃~25℃)からぬるま湯程度の温度(30℃~45℃)範囲の水に浸漬等することにより、剥離又は除去することが可能であるため、例えば、本発明の仮固定用硬化性組成物が手指などの不要な箇所に付着し硬化しても、水により容易に剥離又は除去することができる。また、常温からぬるま湯程度の温度範囲の水により、剥離又は除去することが可能であるため、工業的用途の仮固定に用いた場合には、剥離に必要な熱量を低減することができ、コストを削減することができる。
また、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物により接着する被着材としては、特に制限はなく、無機化合物であっても、有機化合物であっても、無機-有機複合物であってもよく、また、同じ材質であっても、異なる材質のものであってもよい。また、本発明の硬化性組成物は、固体状の任意の形状のものを接着することができる。
【0061】
<剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化方法>
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化方法は、2-シアノアクリレート化合物による重合硬化が可能であれば、特に制限はなく、湿気等の水分により硬化させても、光により硬化させてもよいが、湿気等の水分により硬化させることが好ましい。
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物を光により硬化させる場合は、光重合開始剤を配合し、高圧水銀灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LED(発光ダイオード)ランプ、太陽光等を利用して、紫外線や可視光線を照射することにより硬化させることができる。
【0062】
(剥離性接着物)
本発明の剥離性接着物は、部材、及び、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物からなる層又は前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化してなる層を有する。
部材の種類及び材質としては、前述した部材の種類及び材質が好適に挙げられる。
また、部材の形状は、特に制限はなく、所望に応じ、適宜選択することができる。
また、前記層の厚さは、特に制限はないが、例えば、0.1μm~2mmが好ましく挙げられる。
【0063】
また、本発明の剥離性接着物は、剥離フィルムを更に有することが好ましく、部材、及び、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物からなる層又は前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化してなる層、剥離フィルムをこの順に有することがより好ましい。
剥離フィルムとしては、特に制限はなく、公知の剥離フィルムを用いることができる。
剥離フィルムとしては、例えば、樹脂フィルム(易接着性フィルム等)、剥離紙等が挙げられる。
また、剥離フィルムの厚さは、特に制限はなく、所望に応じ、適宜選択することができる。
【0064】
本発明の剥離性接着物は、ラベル、シール又はステッカーが好ましく挙げられ、接着後再剥離可能な、再剥離ラベル、再剥離シール又は再剥離ステッカーがより好ましく挙げられる。
ラベル、シール又はステッカーとしては、例えば、商標ラベル、品質表示ラベル、内容表示ラベル、リターナブルラベル、ネームプレート等の商品表示用、計量ラベル、ハンドラベル、値札・正札等の価格表示用ラベル、取扱説明ラベル、検査証ラベル、保証ラベル、改ざん防止用ラベル、配電図ラベル、目盛板ラベル、PL法警告ラベル等の説明・保証用ラベル、ステッカー(ウインドー用、車輌用、店頭用等)、マーク・装飾用ラベル、スタンプ、シール、ワッペン、ポスター、多層ラベル等の宣伝・販促用ラベル、帳票ラベル、電算機用ラベル、POS用ラベル、工程・在庫管理ラベル等の管理用ラベル、両面・片面荷札ラベル、宛名ラベル、宅配用伝票ラベル等の荷札・宛名用ラベル、封緘用シール、キャップシール等の封緘用、案内標識ラベル、交通標識ラベル、施設標識ラベル等の案内・標識用、トイレタリー関連ラベル、家電用ラベル、OA機器用ラベル等のリサイクルラベル、その他インデックスラベル(文具用、ブルーレイディスク用等)、カラーサンプルラベル、玩具(シール)用ラベル、教材用ラベル、ネームプレートテープ、金属建材用テープ、自動車用テープ等の表面保護用テープ、半導体製造工程用テープ、電子部品の搬送用テープ、保護・マスキング用テープ、固定・接着用テープ、壁面等へのフック固定用テープ、電気絶縁用テープ、結束・補修用テープ、導電性テープ等の電気・電子機器用テープ、EPS(発泡ポリスチレンビーズ融着製品)ケース類への表示・封緘用テープ、塗装マスキングテープ、養生マスキングテープ等の一般マスキング用、段ボール包装テープ等の封緘・包装用テープ、事務用テープ、その他自動車装飾用テープ、写真製版用テープ、スプライシングテープ、両面テープ、セロハンテープ、OPPテープ、屋外広告フィルム、自動車用ストライプ、マーキングフィルム等の屋外耐久用フィルム、ポスター、インテリアフィルム、内装材等の一般壁装用フィルム、エレベーター内装フィルム、カウンター装飾フィルム、家具装飾フィルム、車輌内装フィルム、自販機装飾フィルム、キャッシュコーナー装飾フィルム、テーブル装飾フィルム等の内装化粧用フィルム、ウインドディスプレイフィルム、ステッカー、マーキングフィルム等の短期装飾用フィルム、屋外耐久性フィルム等の内照看板用フィルム、建物用日射遮蔽及び飛散防止フィルム、保安用反射フィルム(自動車用、靴用、ヘルメット用等)、自動車用フィルム、水又は石鹸水で濡らしながら貼るウインドウフィルム、プリズムフィルム、ホログラムフィルム、畜光フィルム、発光フィルム等が挙げられる。
【0065】
本発明の剥離性接着物は、再剥離用途として好ましく使用することができる。
再剥離用途の具体的な例としては、繰り返して貼付することができるラベル用として、付箋、表示用ラベル、リユースラベル、ウィンドウステッカー、POP(Point of purchase advertising)・アイキャッチラベル、オフィスユース及び商品等の物流管理ラベル等が挙げられる。
本発明の剥離性接着物は、再剥離した後、再度接着させて利用してもよい。また、用途に応じ、繰り返し剥離及び接着を行ってもよい。
【0066】
(剥離方法)
本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物、及び、本発明の剥離性接着物は、剥離方法にも好適に用いることができる。
即ち、本発明の剥離方法は、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物を用いる剥離方法であれば、特に制限はないが、
部材Aの少なくとも1つの面に、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物からなる層又は前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化してなる層を有する積層体を、部材Bに接着し剥離性接着物を得る工程(以下、「接着工程」ともいう。)、及び、
接着された前記部材Aと前記部材Bとを剥離する工程(以下、「剥離工程」ともいう。)を含むことが好ましい。
また、本発明の剥離方法は、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物を作製する工程(以下、「硬化性組成物作製工程」ともいう。)を含んでいてもよい。
以下、本発明の剥離方法が有する各工程について説明する。
【0067】
硬化性組成物作製工程は、2-シアノアクリレート化合物と、必要に応じ、他の成分とを混合し、本発明に係る剥離性接着物製造用硬化性組成物を作製する工程であることが好ましい。
本工程に用いることができる2-シアノアクリレート化合物については前記した通りである。
本工程において、2-シアノアクリレートと、必要に応じ、他の成分とを混合、撹拌し、均一液を得ることで、剥離性接着物製造用硬化性組成物を作製することができる。2-シアノアクリレートと水溶性化合物とを混合する方法は特に限定されないが、室温から60℃以下の温度で、混合液を放置するか、撹拌機等を使って混合することによって作製することができる。
【0068】
また、本発明の剥離方法は、部材Aの少なくとも1つの面に、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物からなる層又は前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化してなる層を有する積層体を作製する工程を含んでいてもよい。
本発明の剥離方法における積層体としては、本発明の剥離性接着物が好適に挙げられ、好ましい態様も同様である。
なお、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物からなる層又は前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化してなる層の部材Aへの形成は、部材Aの1つの面の一部であっても、面全体であってもよいし、2以上の面であってもよい。
【0069】
接着工程は、例えば、部材Aの被着面に剥離性接着物製造用硬化性組成物を塗布し、該塗布した箇所に部材Bを重ねる工程とすることができる。本形態において、塗布するためには、使用する部材の形状に合わせて、ディスペンサー、コーター、ロール、はけ、へら、スプレー、塗布冶具等を用いてもよい。あるいは、予め積層した被接着材を剥離性接着物製造用硬化性組成物に浸し、被着体の隙間に硬化性組成物を浸み込ませる方法も挙げられる。使用する部材としては、剥離性接着物製造用硬化性組成物及び常温から60℃程度の温度の水で変質しないものであることが好ましく、上述した被接着材を好適に用いることができる。
【0070】
また、本発明の剥離方法においては、前記接着工程において、部材Aの少なくとも1つの面に、本発明の剥離性接着物製造用硬化性組成物からなる層を有する積層体を使用し、接着工程後に、前記層を硬化させる工程を含むことが好ましい。
前記層の硬化方法は、特に制限はなく、例えば、前記剥離性接着物製造用硬化性組成物は、僅かな湿気で瞬間的に硬化可能であるため、特別な装置や特殊な条件を設ける必要なく硬化させることができる。硬化反応を促進するために、部材A及びB等に影響がない範囲、例えば40℃から60℃程度に加熱して硬化を行ってもよい。
【0071】
剥離工程は、接着された前記部材Aと前記部材Bとを剥離する工程である。
前記剥離性接着物製造用硬化性組成物の硬化物は、適度な粘着性を有するため、前記部材A及び前記部材Bを十分固定できるだけでなく、例えば、前記部材A及び前記部材Bの少なくとも一方に機械的な外力を加えたり、超音波を照射したり、前記硬化物と水を含む組成物とを接触させたりすることにより、容易に分離することできる。
剥離工程においては、例えば、前記部材A及び前記部材Bの少なくとも一方に機械的な外力を加える方法、超音波を照射する方法、前記硬化物と水を含む組成物とを接触させる方法、及び、これらを組み合わせる方法等が挙げられる。
水を含む組成物に硬化物を接触させる方法としては、前記硬化物を、水を含む組成物に浸漬する、流水に曝す、前記硬化物に水を含む組成物を噴霧する方法などが挙げられる。処理時間は、水を含む組成物の接触方法や加熱温度にもよるが、例えば、10秒~12時間の範囲であることが好ましく、10秒~30分の範囲であることがより好ましい。また、仮固定された部材と常温から60℃程度の温度の水とが接触する時、前記部材A及び前記部材Bの少なくとも一方に機械的な外力を加えたり、超音波を照射したりして、分離を促進することも好ましい。
【0072】
本発明の剥離方法は、剥離され前記剥離性接着物製造用硬化性組成物を硬化してなる層を有する部材A又は部材Bを部材Cと再接着する工程を更に有していてもよい。
部材Cは、部材A及び部材Bとは異なる部材であっても、剥離工程において剥離した他方の部材A又は部材Bであってもよい。
また、本発明の剥離方法は、前記再接着する工程により得られた部材A又は部材Bと部材Cとが接着された接着物から、接着された前記部材A又は前記部材Bと前記部材Cとを剥離する工程を更に有していてもよい。
更に、本発明の剥離方法は、これらの工程を繰り返してもよい。
【実施例
【0073】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0074】
(実施例1~5、及び、比較例1)
表1~表3に記載の2-シアノアクリレート化合物を、又は、表3に記載の2-シアノアクリレート化合物及び多官能シアノアクリレート化合物を表3に記載の質量比で混合して、剥離性接着物製造用硬化性組成物とした。
実施例1~4及び比較例1において、得られた剥離性接着物製造用硬化性組成物を用い、以下の物性値測定、及び、評価を行った。評価結果を表1又は表2に示す。
【0075】
<硬化物のガラス転移温度及び貯蔵弾性率の測定>
硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)及び貯蔵弾性率を以下の方法により測定した。
硬化性組成物を、トリエタノールアミンを塗布した下記動的粘弾性測定装置用の冶具間に注入後、動的粘弾性測定装置(アントンパール社製、製品名「MCR301」)を用いて、周波数1Hz、温度25℃、厚み300μmの条件下、貯蔵弾性率を測定した。なお、貯蔵弾性率の変化がなくなったことを確認したものを硬化物とした。前記硬化物を用い、周波数1Hz、昇温速度2℃/分で-50℃~100℃の範囲でずりによる貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)、損失正接(tanδ=E”/E’)を測定した。ガラス転移温度(Tg)は、損失正接(tanδ)のピーク温度を評価指標とし、求めた。貯蔵弾性率は、23℃における値を用いた。
【0076】
<硬化物のプローブタック試験におけるタック値の測定>
抜き枠のある、厚さ38μmのスペーサー(離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」))を、厚さ125μmの易接着PETフィルム(東レ(株)製、製品名「ルミラー125U34」)上に乗せ、スペーサー枠内に前記接着剤組成物を滴下した。その上に、トリエタノールアミンを塗布した、別の離型PETフィルムを被せて張り合わせ、室温(25℃、以下同様)で24時間静置し、完全に硬化させた。硬化後、幅15mm、長さ15mmに切断し、離型PETフィルムを剥離して、試験片とした。この試験片について、ASTM D2979:2016(一部準拠)、日本薬局方 6.12.(3.4.): 第十七改正「プローブタック試験法」に準拠し、プローブタック試験機(テスター産業(株)製、製品名「TE-6002」)を用いて測定し、タック値(単位:N/cm)を算出した。
【0077】
<硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率の測定>
硬化性組成物1gに、トリエタノールアミンを1μL添加し撹拌した後、離型PETフィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」)に置いた、厚さ1mmのシリコーンゴムの型枠内に流し込んだ。上に離型フィルムを被せてガラス板で挟み込んで室温で24時間静置し、完全に硬化させた。硬化後、型枠及び離型フィルムを取り除いて、幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を作製した。引張試験機((株)東洋精機製作所製、製品名「ストログラフV20-C」)を用いて、この硬化物の応力-ひずみ曲線を測定し、伸び率を算出した。
【0078】
<硬化性組成物の粘度>
(株)トキメック製E型粘度計を用い、25℃、100rpmの条件下にて測定した。
【0079】
<接着物の180°剥離強度試験>
-ガラスと易接着PET基材との接着物の作製-
幅25mm、長さ150mmの抜き枠のある、厚さ38μmのスペーサー(離型PETフィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」))を厚さ1mmのガラス板(AGCファブリテック(株)製、製品名「FL11AK」)に乗せ、スペーサー枠内のガラス上に、得られた硬化性組成物を滴下した。その上に、トリエタノールアミンを塗布した、厚さ125μmの易接着PETフィルム(東レ(株)製、製品名「ルミラー125U34」)を被せて貼り合わせ、室温で24時間静置し、完全に硬化させた。硬化後、スペーサーを取り除き、厚さ38μm、幅25mm、長さ150mmの接着剤層を有する、片面がガラス基材、もう片面が易接着PET基材である試験片を作製した。
【0080】
-アルミニウム基材同士の接着物の作製-
幅90mm、長さ150mmの抜き枠のある、厚さ38μmのスペーサー(離型PETフィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」))を、厚さ0.1mmのアルミニウム板(JIS A6061Pに規定された材質)に乗せ、スペーサー枠内のアルミニウム板上に、前記接着剤組成物を滴下した。その上に、トリエタノールアミンを塗布した、厚さ1mmのアルミニウム板を被せて貼り合わせ、室温で24時間静置し、完全に硬化させた。硬化後、スペーサーを取り除き、幅25mmに切断し、厚さ38μm、幅25mm、長さ150mmの接着剤層を有する、両面がアルミニウム基材である試験片を作製した。
【0081】
-剥離強度測定-
前記条件で作製した試験片について、片側の基材(ガラスと易接着PET基材との接着物の場合は易接着PET基材)の端を、アルミニウム基材同士は50mm/分の速度で、ガラスと易接着性PET基材は100mm/分の速度で、180°の剥離方向へ剥離し、その時の被着体に対する粘着力(抵抗力)(単位:N/25mm)を測定した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
なお、表1及び表2の化学構造式において、Meは、メチル基を表し、Buは、n-ブチル基を表し、COは、-CH(CH)CHO-及び-CHCH(CH)O-が混合した基を表す。実施例1で使用した2-シアノアクリレート化合物は、位置及び光学異性体の混合物となる。
また、図1は、実施例2~4、及び、比較例1の硬化性組成物の硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率を示す。
図1の縦軸は、stress(応力、単位:N/mm)を表し、横軸は、strain(ひずみ=伸び率、単位:%)を表す。
また、図1における略号の詳細は、以下の通りである
ME3CA:メトキシエトキシエトキシエチルシアノアクリレート(実施例2)
MEECA:メトキシエトキシエチルシアノアクリレート(実施例3)
BEECA:ブトキシエトキシエチルシアノアクリレート(実施例4)
EECA:エトキシエチルシアノアクリレート(比較例1)
【0085】
表1に示すように、実施例1~4の剥離性接着物製造用硬化性組成物は、比較例1の剥離性接着物製造用硬化性組成物に比べ、得られる硬化物の粘着性に優れる。
また、表1及び表2に示すように、実施例1~4の剥離性接着物製造用硬化性組成物は、硬化速度にも優れ、また、得られる硬化物の柔軟性にも優れるものであった。
【0086】
実施例1~5及び比較例1において、得られた剥離性接着物製造用硬化性組成物を用い、以下の物性値測定、及び、評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0087】
<再剥離ラベルの作製、及び、剥離後再接着試験>
幅25mm、長さ50mm、厚さ125μmの易接着PETフィルム(東レ(株)製、製品名「ルミラー125U34」)上に得られた硬化性組成物を滴下した。これを、トリエタノールアミンを塗布した、厚さ1mmのガラス板(AGCファブリテック(株)製、製品名「FL11AK」)の上に被せて貼り合わせ、室温で24時間静置し、完全に硬化させた。易接着PETフィルムをガラス板から一度剥離した後、再度ガラス上に手の力で10秒間押し付けた結果、易接着PETフィルムがガラスに固定された場合はA、固定されなかった場合はFで示した。
【0088】
<糊残り評価(剥離後、及び、再剥離後)>
上記再剥離ラベルの作製、及び、剥離後再接着試験において、剥離後のガラス板を目視により観察し、ガラス板上に硬化性組成物の硬化物が全くない場合をA、ガラス板上に硬化性組成物の硬化物が残留している場合をBとして、評価した(剥離後糊残り評価)。
更に、上記再剥離ラベルの作製、及び、剥離後再接着試験において、易接着PETフィルムをガラス板から一度剥離した後、再度ガラス上に手の力で10秒間押し付けた後、再度、易接着PETフィルムをガラス板から剥離し、剥離後のガラス板を目視により観察し、ガラス板上に硬化性組成物の硬化物が全くない場合をA、ガラス板上に硬化性組成物の硬化物が残留している場合をBとして、評価した(再剥離後糊残り評価)。
【0089】
【表3】
【0090】
表3に示すように、実施例1~4の剥離性接着物製造用硬化性組成物は、比較例1の剥離性接着物製造用硬化性組成物に比べ、得られる硬化物の再接着性に優れる。
また、表3に示すように、特に、実施例2~4の剥離性接着物製造用硬化性組成物は、剥離後及び再剥離後における接着剤残り(糊残り)抑制性にも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の剥離性接着物製造用接着組成物は、2-シアノアクリレート化合物を含有し、剥離性接着物製造用の瞬間粘着剤として一般家庭用、教材用、建材用、医療分野等の他、各種産業界などの広範な製品、技術分野において利用することができる。
また、本発明の剥離性接着物製造用接着組成物は、同種の被接着材間だけでなく、特に異種の被接着材間(例えば、金属と樹脂との間)の接着に好適に使用することができる。
更に、本発明の剥離性接着物製造用接着組成物は、再剥離用途(例えば、再剥離ラベル、再剥離シール、再剥離ステッカー等)に好適である。
図1