IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ハイブリッド車両の制御装置 図1
  • 特許-ハイブリッド車両の制御装置 図2
  • 特許-ハイブリッド車両の制御装置 図3
  • 特許-ハイブリッド車両の制御装置 図4
  • 特許-ハイブリッド車両の制御装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/00 20060101AFI20241001BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20241001BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20241001BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20241001BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241001BHJP
   B60L 58/24 20190101ALI20241001BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20241001BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20241001BHJP
   B60W 20/16 20160101ALI20241001BHJP
   B60W 20/20 20160101ALI20241001BHJP
【FI】
B60W10/00 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/547
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/24
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/16
B60W20/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020178916
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022069948
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-08-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯野 隼人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩介
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-051676(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016087(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00
B60K 6/48
B60K 6/547
B60W 10/08
B60W 10/06
B60W 20/20
B60W 20/16
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 58/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンのみを駆動源とした走行時に前記エンジンの出力軸から出力される動力がモータの回転軸に伝達される該モータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、前記モータと前記バッテリとの間で電力の充放電を行なうインバータと、前記バッテリと前記インバータとの間を電気的に接続するオン状態と、前記バッテリと前記インバータとの間を電気的に遮断するオフ状態とのいずれか一方の状態をとるコンタクタと、前記エンジンのみを駆動源とした走行時に、前記エンジンの出力に対して前記モータで発生する逆方向のトルクを打ち消すように前記モータにトルクを発生させるゼロトルク制御を行なう制御部と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記制御部は、前記バッテリの温度が所定温度より低い場合に、前記コンタクタをオフ状態とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記バッテリの温度が所定温度よりも低い場合に、前記エンジンのみを駆動源として走行する走行モードを選択する請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記モータを駆動源として走行している際に、前記バッテリの温度が所定温度よりも低くなった場合に、前記エンジンのみを駆動源として走行する走行モードに変更した後、前記コンタクタをオフ状態とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ハイブリッド車両が走行中に前記バッテリの温度が所定温度以上となった場合に、前記ハイブリッド車両の車速が所定車速以下であることを条件として前記コンタクタをオン状態とする請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ハイブリッド車両が走行中に前記バッテリの温度が所定温度以上となった場合に、前記インバータの電圧が所定電圧以下であることを条件として前記コンタクタをオン状態とする請求項3または請求項4に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータとが機械的に直結されているハイブリッド車両では、エンジン走行時にモータの負荷により引きずりトルクが発生する。
【0003】
特許文献1には、エンジン出力を阻害しないように、引きずりトルクを打ち消すトルクをモータから発生させるゼロトルク制御を行なう技術が開示されている。
【0004】
また、一般的に、-30℃程度の極低温状況下では、バッテリの劣化が促進され、かつバッテリの使用領域が狭くなるため、モータの出力制限を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-51676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のハイブリッド車両においては、極低温状況下でモータの出力制限を実施したとしても、ゼロトルク制御が実施されてしまい、バッテリが消費されバッテリの残量が低下してしまう。
【0007】
極低温状況下では発電も行なえないため、バッテリの残量が著しく低下してしまい、モータの機能を使用することができなくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、ゼロトルク制御を行なうハイブリッド車両において、極低温状況下でモータの機能が使用できなくなる状況を防止することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、エンジンと、前記エンジンのみを駆動源とした走行時に前記エンジンの出力軸から出力される動力がモータの回転軸に伝達される該モータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、前記モータと前記バッテリとの間で電力の充放電を行なうインバータと、前記バッテリと前記インバータとの間を電気的に接続オン状態と、前記バッテリと前記インバータとの間を電気的に遮断するオフ状態とのいずれか一方の状態をとるコンタクタと、前記エンジンのみを駆動源とした走行時に、前記エンジンの出力に対して前記モータで発生する逆方向のトルクを打ち消すように前記モータにトルクを発生させるゼロトルク制御を行なう制御部と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、前記制御部は、前記バッテリの温度が所定温度より低い場合に、前記コンタクタをオフ状態とするものである。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、ゼロトルク制御を行なうハイブリッド車両において、極低温状況下でモータの機能が使用できなくなる状況を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のモータ、インバータ、高電圧バッテリの電気回路構成図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置の車両起動時コンタクタ制御処理の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置の車両走行時コンタクタ制御処理の手順を示すフローチャートである。
図5図5は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置の車両走行時コンタクタ制御処理によるコンタクタ状態の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、エンジンと、エンジンに機械的に直結されるモータと、モータに電力を供給するバッテリと、モータとバッテリとの間で電力の充放電を行なうインバータと、バッテリとインバータとの間を電気的に接続オン状態と、バッテリとインバータとの間を電気的に遮断するオフ状態とのいずれか一方の状態をとるコンタクタと、エンジンのみを駆動源とした走行時にモータからエンジンに与える負荷をゼロにするようにモータトルクを制御するゼロトルク制御を行なう制御部と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、制御部は、バッテリの温度が所定温度より低い場合に、コンタクタをオフ状態とするよう構成されている。
【0013】
これにより、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、ゼロトルク制御を行なうハイブリッド車両において、極低温状況下でモータの機能が使用できなくなる状況を防止することができる。
【実施例
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る制御装置を搭載したハイブリッド車両について詳細に説明する。
【0015】
図1において、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両1は、内燃機関としてのエンジン2と、変速機3と、モータ4と、インバータ5と、バッテリとしての高電圧バッテリ6と、低電圧バッテリ7と、制御部8とを含んで構成される。
【0016】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行なうように構成されている。
【0017】
エンジン2には、始動装置21が連結されている。始動装置21は、図示しないベルトを介してエンジン2のクランクシャフトに連結されている。始動装置21は、電力が供給されることにより回転することでクランクシャフトを回転させて、エンジン2に始動時の回転力を与える。
【0018】
始動装置21は、スタータやISG(Integrated Starter Generator)により構成される。始動装置21として、スタータとISGの両方を備えるようにしてもよい。
【0019】
変速機3は、エンジン2から出力された回転を変速し、駆動軸11を介して駆動輪10を駆動する。変速機3は、平行軸歯車機構からなる常時噛合式の図示しない変速機構と、図示しないアクチュエータとを備えている。
【0020】
エンジン2と変速機3の間には、乾式単板式のクラッチ31が設けられており、クラッチ31は、エンジン2と変速機3との間の動力伝達を接続または切断する。
【0021】
変速機3は、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)として構成されており、図示しないアクチュエータにより変速機構における変速段の切替えとクラッチ31の断接が行なわれる。
【0022】
変速機3と駆動輪10の間にはディファレンシャル機構32が設けられている。ディファレンシャル機構32と駆動輪10は駆動軸11により連結されている。
【0023】
モータ4は、ディファレンシャル機構32に対して、チェーン等の図示しない減速機を介して連結されている。モータ4は、電動機として機能する。モータ4は、発電機としても機能し、ハイブリッド車両1の走行によって発電を行なう。
【0024】
モータ4には、モータ4の温度を検出する温度センサ41が設けられている。温度センサ41は、制御部8に接続されている。
【0025】
インバータ5は、制御部8の制御により、高電圧バッテリ6などから供給された直流の電力を、三相の交流電力に変換してモータ4に供給する。
【0026】
インバータ5は、制御部8の制御により、モータ4によって生成された三相の交流電力を直流の電力に変換する。この直流の電力は、例えば、高電圧バッテリ6を充電する。制御部8は、インバータ5に印加される電圧であるインバータ電圧を検出できるようになっている。
【0027】
高電圧バッテリ6は、例えばリチウムイオン蓄電池で構成されている。高電圧バッテリ6は、インバータ5に電力を供給する。
【0028】
高電圧バッテリ6には、バッテリ状態センサ61が設けられている。バッテリ状態センサ61は、高電圧バッテリ6の充放電電流、電圧及びバッテリ温度を検出する。バッテリ状態センサ61は、制御部8に接続されている。制御部8は、バッテリ状態センサ61の出力により高電圧バッテリ6の充電量を検知できるようになっている。
【0029】
低電圧バッテリ7は、例えば鉛電池で構成されている。低電圧バッテリ7は、始動装置21などのハイブリッド車両1の電気負荷に電力を供給する。
【0030】
このように、ハイブリッド車両1は、エンジン2とモータ4の両方の動力を車両の駆動に用いることが可能なパラレルハイブリッドシステムを構成しており、エンジン2及びモータ4の少なくとも一方が出力する動力により走行するようになっている。
【0031】
制御部8は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0032】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部8として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0033】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例における制御部8として機能する。
【0034】
制御部8の入力ポートには、上述の温度センサ41、バッテリ状態センサ61に加え、アクセル開度センサ81、車速センサ82、イグニッションスイッチ83を含む各種センサ類が接続されている。
【0035】
アクセル開度センサ81は、図示しないアクセルペダルの操作量をアクセル開度として検出する。車速センサ82は、ハイブリッド車両1の速度を検出する。イグニッションスイッチ83は、ハイブリッド車両1のシステムの起動操作の有無と、エンジン2の始動操作の有無を検出する。
【0036】
一方、制御部8の出力ポートには、上述の始動装置21、変速機3のアクチュエータ、インバータ5に加え、図示しないインジェクタを含む各種制御対象類が接続されている。
【0037】
本実施例において、制御部8は、アクセル開度などに基づいて、ドライバの要求するドライバ要求トルクを算出する。制御部8は、ドライバ要求トルクが駆動輪10に出力されるようエンジン2、変速機3、クラッチ31、モータ4を制御する。
【0038】
また、制御部8は、ハイブリッド車両1の走行モードを切り替えるようになっている。本実施例における走行モードとしては、EVモードとHEVモードとEGモードが設定されている。
【0039】
EVモードは、クラッチ31を解放状態とし、モータ4の動力によりハイブリッド車両1を走行させる走行モードである。HEVモードは、クラッチ31を係合状態とし、エンジン2、又はエンジン2及びモータ4の動力によりハイブリッド車両1を走行させる制御モードである。EGモードは、クラッチ31を係合状態とし、エンジン2の動力によりハイブリッド車両1を走行させる走行モードである。
【0040】
モータ4、インバータ5、高電圧バッテリ6の電気回路構成を図2に示す。
図2に示すように、インバータ5は、インバータ回路51と、平滑コンデンサ52とを含んで構成される。
【0041】
平滑コンデンサ52は、正極と負極との間に生じた直流電力の電圧を平滑化するようになっている。
【0042】
インバータ回路51は、平滑コンデンサ52によって平滑化された直流電力を交流電力に変換する。
【0043】
インバータ5と高電圧バッテリ6の間にはコンタクタ62が設けられている。コンタクタ62は、制御部8の制御に応じて、インバータ5と高電圧バッテリ6とを電気的に接続するオン状態と、インバータ5と高電圧バッテリ6とを電気的に遮断するオフ状態とのいずれか一方の状態をとるようになっている。
【0044】
コンタクタ62と並列に、プリチャージリレー63と抵抗64が直列に接続された回路が接続されている。プリチャージリレー63は、制御部8の制御に応じて、抵抗64をコンタクタ62に並列に接続するオン状態と、抵抗64をコンタクタ62から電気的に遮断するオフ状態とのいずれか一方の状態をとるようになっている。
【0045】
例えば、プリチャージリレー63は、モータ4が作動する前にオン状態をとり、コンタクタ62がオン状態をとったあとにオフ状態をとるように制御部8により制御される。
【0046】
制御部8は、コンタクタ62をオン状態とすることで、高電圧バッテリ6からインバータ5に直流電力を供給させてモータ4を駆動させる。
【0047】
制御部8は、走行モードがEGモードのときに、モータ4による引きずりトルクを打ち消すためのトルクをモータ4に発生させるゼロトルク制御を実行する。
【0048】
制御部8は、高電圧バッテリ6の温度が所定温度よりも低い場合には、コンタクタ62をオフ状態にする。
【0049】
制御部8は、高電圧バッテリ6の温度が所定温度よりも低い場合には、走行モードとしてEGモードを選択する。
【0050】
制御部8は、モータ4を駆動源として走行を行なっている際に高電圧バッテリ6の温度が所定温度よりも低くなった場合には、走行モードをEGモードに切り替えた後、コンタクタ62をオフ状態にする。
【0051】
制御部8は、ハイブリッド車両1の走行中に高電圧バッテリ6の温度が所定温度以上となった場合には、ハイブリッド車両1の車速が所定車速以下であることを条件としてコンタクタ62をオン状態にする。
【0052】
制御部8は、ハイブリッド車両1の走行中に高電圧バッテリ6の温度が所定温度以上となった場合には、インバータ5の電圧が所定電圧以下であることを条件としてコンタクタ62をオン状態にする。
【0053】
以上のように構成された本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置による車両起動時コンタクタ制御処理について、図3を参照して説明する。なお、以下に説明する車両起動時コンタクタ制御処理は、イグニッションスイッチ83がオフされると開始し、予め設定された時間間隔で実行される。
【0054】
ステップS101において、制御部8は、イグニッションスイッチ83がオンされたか否かを判定する。イグニッションスイッチ83がオンされたと判定した場合には、制御部8は、ステップS102の処理を実行する。
【0055】
イグニッションスイッチ83がオンされていないと判定した場合には、制御部8は、車両起動時コンタクタ制御処理を終了する。
【0056】
ステップS102において、制御部8は、高電圧バッテリ6に異常がないか否かを判定する。高電圧バッテリ6に異常がないと判定した場合には、制御部8は、ステップS103の処理を実行する。
【0057】
高電圧バッテリ6に異常があると判定した場合には、制御部8は、車両起動時コンタクタ制御処理を終了する。
【0058】
ステップS103において、制御部8は、高電圧バッテリ6の温度が所定温度以上であるか否かを判定する。高電圧バッテリ6の温度が所定温度以上であると判定した場合には、制御部8は、ステップS104の処理を実行する。
【0059】
高電圧バッテリ6の温度が所定温度以上でないと判定した場合には、制御部8は、車両起動時コンタクタ制御処理を終了する。
【0060】
ステップS104において、制御部8は、コンタクタ62をオン状態とする。ステップS104の処理を実行した後、制御部8は、車両起動時コンタクタ制御処理を終了する。
【0061】
このように、ハイブリッド車両1の起動時に、高電圧バッテリ6の温度が所定温度より低い場合には、コンタクタ62はオフ状態のままとなり、モータ4は使用されず、エンジン2の駆動力のみによりハイブリッド車両1は駆動される。
【0062】
高電圧バッテリ6の温度が所定温度より低い場合、コンタクタ62の使用範囲温度外となり、またモータ4の出力も制限される。コンタクタ62を使用範囲温度外で使用すると部品劣化を促進してしまい、またコンタクタ機能が不安定になってしまう。
【0063】
また、モータ4の出力が制限されている状態でコンタクタ62をオン状態にすると、例えモータ4のトルク指令を0Nmとしても、エンジン2の駆動力により走行し、車速が出ることによりモータ4に起電力が発生し、高電圧バッテリ6の残量が低下する。
【0064】
本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置による車両走行時コンタクタ制御処理について、図4を参照して説明する。なお、以下に説明する車両走行時コンタクタ制御処理は、走行モードがEGモードに移行すると開始し、予め設定された時間間隔で実行される。
【0065】
ステップS201において、制御部8は、高電圧バッテリ6の温度が所定温度以上であるか否かを判定する。高電圧バッテリ6の温度が所定温度以上であると判定した場合には、制御部8は、ステップS202の処理を実行する。
【0066】
高電圧バッテリ6の温度が所定温度以上でないと判定した場合には、制御部8は、車両走行時コンタクタ制御処理を終了する。
【0067】
ステップS202において、制御部8は、ハイブリッド車両1の車速が所定車速以下であるか否かを判定する。ハイブリッド車両1の車速が所定車速以下であると判定した場合には、制御部8は、ステップS203の処理を実行する。
【0068】
ハイブリッド車両1の車速が所定車速以下ではないと判定した場合には、制御部8は、車両走行時コンタクタ制御処理を終了する。
【0069】
ステップS203において、制御部8は、インバータ5の電圧が所定電圧以下であるか否かを判定する。インバータ5の電圧が所定電圧以下であると判定した場合には、制御部8は、ステップS204の処理を実行する。
【0070】
インバータ5の電圧が所定電圧以下でないと判定した場合には、制御部8は、車両走行時コンタクタ制御処理を終了する。
【0071】
ステップS204において、制御部8は、コンタクタ62をオン状態とする。ステップS204の処理を実行した後、制御部8は、車両走行時コンタクタ制御処理を終了する。
【0072】
ハイブリッド車両1の車速が所定車速以下である場合にコンタクタ62をオン状態とするのは、エンジン2の駆動力のみによりハイブリッド車両1が駆動されていて、車速が高いときはモータ4に起電力が発生する状態となるため、この状態でコンタクタ62をオン状態とすると、高電圧バッテリ6の上限電圧よりも電圧が高い状態で高電圧バッテリ6とインバータ5が接続され、高電圧バッテリ6が故障してしまう可能性があるためである。
【0073】
また、インバータ5の電圧が所定電圧以下である場合にコンタクタ62をオン状態とするのは、例え車速が低い状態であっても、直前に高車速で走行していた場合にはモータ4に起電力が発生していて、その起電力によって発生し平滑コンデンサ52に蓄えられた電圧が下がるのに一定時間を要するためである。
【0074】
このような車両走行時コンタクタ制御処理による動作について図5を参照して説明する。
【0075】
時刻t1において、高電圧バッテリ6の温度が所定温度より低くなると、走行モードがEGモードに切り替えられ、コンタクタ62がオフ状態とされる。
【0076】
その後、高電圧バッテリ6の温度が所定温度以上となり、ハイブリッド車両1の車速が所定車速以下となり、インバータ電圧が所定電圧以下となる時刻t2において、コンタクタ62がオン状態とされ、時刻t3において走行モードがEVモードに切り替えられ、ハイブリッド車両1は発進する。なお、時刻t3においてHEV走行条件が成立している場合には、HEVモードに切り替わることもある。
【0077】
このように、本実施例では、制御部8は、高電圧バッテリ6の温度が所定温度よりも低い場合には、コンタクタ62をオフ状態にする。
【0078】
高電圧バッテリ6の温度が所定温度よりも低い場合には、インバータ5と高電圧バッテリ6とを電気的に遮断することで、極低温時にゼロトルク制御を行なわず、高電圧バッテリ6の消費量を抑えられるため、モータ4の機能が使用できなくなる状況を防止することができる。
【0079】
また、制御部8は、高電圧バッテリ6の温度が所定温度よりも低い場合には、エンジン2のみを駆動源として走行するEGモードを選択する。
【0080】
高電圧バッテリ6の温度が所定温度よりも低い場合、モータ4に通電を行なうことができないため、走行モードにEGモードを選択して走行を行なう。これにより、極低温状況下でもモータ4の機能が使用できなくなる状況を防止することができる。
【0081】
また、制御部8は、モータ4を駆動源として走行を行なっている際に高電圧バッテリ6の温度が所定温度よりも低くなった場合には、走行モードをEGモードに切り替えた後、コンタクタ62をオフ状態にする。
【0082】
モータ4を駆動源として走行を行なっている際に、高電圧バッテリ6の温度が所定温度よりも低くなりコンタクタ62がオフ状態となると、走行を維持することができなくなる。そのため、走行モードをEGモードに変更した後にコンタクタ62をオフ状態とすることで走行を維持することができ、極低温状況下でもモータ4の機能が使用できなくなる状況を防止することができる。
【0083】
また、制御部8は、ハイブリッド車両1の走行中に高電圧バッテリ6の温度が所定温度以上となった場合には、ハイブリッド車両1の車速が所定車速以下であることを条件としてコンタクタ62をオン状態にする。
【0084】
高電圧バッテリ6の温度が所定温度以上となった場合、モータ4を使用することが可能になるが、車速が大きい場合、モータ4によって起電力が発生してしまう。この状態でコンタクタ62をオン状態にすると、高電圧バッテリ6の上限電圧よりも電圧が高い状態でインバータ5が接続され、高電圧バッテリ6が故障してしまう可能性が考えられる。そのため、車速が所定車速以下であることを条件としてコンタクタ62をオン状態にすることで、モータ4の機能が使用できなくなる状況を防止することができる。
【0085】
また、制御部8は、ハイブリッド車両1の走行中に高電圧バッテリ6の温度が所定温度以上となった場合には、インバータ5の電圧が所定電圧以下であることを条件としてコンタクタ62をオン状態にする。
【0086】
車速が低い状態であっても、直前に高車速で走行していた場合には、モータ4によって起電力が発生し、インバータ5に電力が蓄えられていることが考えられる。そのため、インバータ5の電圧が所定電圧以下であることを条件としてコンタクタ62をオン状態にすることで、モータ4の機能が使用できなくなる状況を防止することができる。
【0087】
本実施例では、各種センサ情報に基づき制御部8が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、ハイブリッド車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0088】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0089】
1 ハイブリッド車両
2 エンジン
4 モータ
5 インバータ
6 高電圧バッテリ(バッテリ)
8 制御部
41 温度センサ
51 インバータ回路
52 平滑コンデンサ
61 バッテリ状態センサ
62 コンタクタ
82 車速センサ
83 イグニッションスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5