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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】カード記録装置
(51)【国際特許分類】
   B42D 15/00 20060101AFI20241001BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20241001BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241001BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20241001BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20241001BHJP
   B41J 21/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B42D15/00 341E
G06T1/00 430J
G06T7/00 350B
G06T7/70 B
B41J29/38 601
B41J21/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020188960
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077898
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正彦
(72)【発明者】
【氏名】岸本 健秀
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-134571(JP,A)
【文献】特開2019-212194(JP,A)
【文献】特開2018-180611(JP,A)
【文献】特開2008-293062(JP,A)
【文献】特開2009-294902(JP,A)
【文献】特開2018-163474(JP,A)
【文献】特開2019-101540(JP,A)
【文献】特開2020-088770(JP,A)
【文献】特開2007-168435(JP,A)
【文献】特開2006-062321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/00-15/00
B42D 15/04-19/00
B41J 29/00-29/70
B41J 5/00- 5/52
G06T 1/00- 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードに記録を行うカード記録装置であって、
予めカードの画像につき機械学習を行うことで得られた判別式を用いて、カードを撮影した画像の特徴からカードの向きの正誤の判定を行い、
前記判定の結果、カードの向きが正しい場合に、カードに記録を行い、
前記判別式は、カードのシルエットのみを示す画像について機械学習を行うことで得られたものであり、
前記判定は、カードを撮影することにより得られたカードの前記シルエットのみを示す画像を用いて行われることを特徴とするカード記録装置。
【請求項2】
前記判別式は、カードの画像の一部について機械学習を行うことで得られたものであり、
前記判定は、カードを撮影することにより得られたカードの前記一部の画像を用いて行われることを特徴とする請求項1記載のカード記録装置。
【請求項3】
カードを挟むように配置された投光部と受光部を備え、前記投光部から照射した光を前記受光部で受光することによりカードの撮影を行うカメラを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のカード記録装置。
【請求項4】
カードを撮影した画像における顔画像の有無からカードの表裏の正誤の判定を行い、
前記判定の結果、カードの表裏と向きが正しい場合に、カードに記録を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のカード記録装置。
【請求項5】
前記カードに印刷による記録を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のカード記録装置。
【請求項6】
前記カードの向きが正しくない場合、印刷される文字の向きを修正し、前記カードに印刷を行うことを特徴とする請求項5に記載のカード記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷等による記録をカードに行うカード記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイナンバーカードや在留カードを携帯する人口が増加しつつあるが、このような本人確認のためのIDカードでは、住所など、カードの所持者(以下ユーザという)に関する情報の変更が発生するとカードの裏面に変更内容を記載し記録する規則になっている。
【0003】
最近では、変更内容の記録に特許文献1等のようなカードプリンタを使用することが一般的であり、役所等に設置されたカードプリンタにカードを挿入し、カードプリンタ内の印刷部にてカードに変更内容を印刷することができる。
【0004】
カードプリンタで変更内容の印刷を正しく行うには、印刷部等の構成に応じた正しい配置でカードがカードプリンタに挿入され、印刷部まで搬送される必要がある。
【0005】
例えばユーザがカードを誤った向きでカードプリンタに挿入すると、カードプリンタで正しく印刷できない可能性があり、カードプリンタでは、カードの向きが正しくない場合に、これを誤りとして検出し、適切な処理を行う必要がある。例えば特許文献2には、反射型の光センサーによりカードの表裏と前後を光学的に検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-262420号公報
【文献】特開2010-134571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のように反射型の光センサーを用いる場合、券面汚れの程度等により安定して高い精度で正誤検出を行うことは難しい。また検出光の当たる位置がずれた場合に正誤が検出できないこともある。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、カードの向きの正誤を精度良く検出できるカード記録装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための本発明は、カードに記録を行うカード記録装置であって、予めカードの画像につき機械学習を行うことで得られた判別式を用いて、カードを撮影した画像の特徴からカードの向きの正誤の判定を行い、前記判定の結果、カードの向きが正しい場合に、カードに記録を行い、前記判別式は、カードのシルエットのみを示す画像について機械学習を行うことで得られたものであり、前記判定は、カードを撮影することにより得られたカードの前記シルエットのみを示す画像を用いて行われることを特徴とするカード記録装置である。
【0010】
本発明では、予め機械学習を行うことで得られた判別式を用い、カードを撮影した画像の特徴からカードの向きの正誤を判定し、カードの向きが正しい場合に、カードに記録を行う。このように、機械学習により得られた判別式を用いることで、カードの向きの正誤を精度良く検出することができる。
【0011】
前記判別式は、カードの一部の画像について機械学習を行うことで得られたものであり、前記判定は、カードを撮影することにより得られたカードの前記一部の画像を用いて行われてもよい。
これにより、正誤検出に用いる画像のサイズを小さくし、カメラの小型化、撮像時間の短縮が可能になる。
【0012】
本発明において、前記判別式は、カードのシルエットのみを示す画像について機械学習を行うことで得られたものであり、前記判定は、カードを撮影することにより得られたカードの前記シルエットのみを示す画像を用いて行われ本発明のカード記録装置は、例えば、カードを挟むように配置された投光部と受光部を備え、前記投光部から照射した光を前記受光部で受光することによりカードの撮影を行うカメラを有する。
形状に特徴のあるカードの場合は、このようにシルエット(輪郭)の画像から正誤検出を行うこともでき、券面の画像情報に左右されない精度の高い判定が可能になる。またシルエットの位置・角度・明度のばらつき、シルエットの歪みがあっても、正誤検出を好適に行うことができる。
【0013】
カードを撮影した画像における顔画像の有無からカードの表裏の正誤の判定を行い、前記判定の結果、カードの表裏と向きが正しい場合に、カードに記録を行うことも望ましい。
これにより、カードの向きだけでなくカードの表裏の正誤の判定も行うことができる。またカードの表裏の正誤検出は顔画像の有無により行うので、機械学習はカードの向きに関してのみ行えば良く、判別式作成の負担が増加することもない。
【0014】
前記カード記録装置は、例えば前記カードに印刷による記録を行うものである。
カード記録装置は例えば前記のカードプリンタのようにカードに印刷による記録を行うものであり、前記の正誤検出処理を行うことで誤った位置に印刷を行うことがなくなる。
【0015】
前記カード記録装置は、前記カードの向きが正しくない場合、印刷される文字の向きを修正し、前記カードに印刷を行うことも望ましい。
カードの向きが正しくない場合、印刷される文字の向きを修正し、カードに印刷を行うことで、カードの向きが誤っていた場合にも正しく印刷を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、カードの向きの正誤を精度良く検出できるカード記録装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】プリントシステム10の概略構成を示す図。
図2】制御装置11のハードウェア構成を示す図。
図3】コンピュータ2のハードウェア構成を示す図。
図4】カード3を示す図。
図5】カードプリンタ1の動作を示すフローチャート。
図6】カード3の画像100の例。
図7】機械学習について説明する図。
図8】変更内容C等を180°回転する例。
図9】カード3の一部の画像100による正誤検出について説明する図。
図10】シルエットの画像100による正誤検出について説明する図。
図11】カードプリンタ1の動作を示すフローチャート。
図12】機械学習について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
(1.プリントシステム10)
図1は、本発明の実施形態に係るカードプリンタ1を有するプリントシステム10の概略構成を示す図である。図1に示すように、プリントシステム10はカードプリンタ1とコンピュータ2を有する。
【0020】
カードプリンタ1は、印刷による記録をカード3に行うカード記録装置である。カード3は例えば在留カード、マイナンバーカード、特別永住者カード、運転免許証など、カード3を所持するユーザの本人確認に用いられるIDカード(本人確認証)である。本実施形態のカードプリンタ1は、住所など、ユーザに関する情報(以下ユーザ情報という)に変更があった場合に、その変更内容をカード3の裏面に印刷するものであり、例えば役所等に設けられる。
【0021】
カードプリンタ1は、制御装置11、カメラ12、印刷部13、搬送部14等を筐体15内に有する。
【0022】
制御装置11はカードプリンタ1の各部を制御するものである。図2は制御装置11のハードウェア構成を示す図であり、制御装置11は制御部111、記憶部112、通信部113等をバスを介して接続した構成を有する。しかしながら、制御装置11の構成がこれに限ることはない。
【0023】
制御部111はCPU、ROM、RAMなどから構成される。CPUは、記憶部112、ROMなどの記憶媒体に格納された制御装置11の処理に係るプログラムをRAM上のワークエリアに呼び出して実行する。ROMは不揮発性メモリであり、ブートプログラムやBIOSなどのプログラム、データなどを恒久的に保持している。RAMは揮発性メモリであり、記憶部112、ROMなどからロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部111が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0024】
記憶部112はハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリ等であり、制御装置11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OSなどが格納される。これらのプログラムやデータは、制御部111により必要に応じて読み出され実行される。
【0025】
通信部113は通信を媒介する通信インタフェースであり、カードプリンタ1の各部やコンピュータ2等との間で通信を行う。
【0026】
図1の説明に戻る。カメラ12はカード3を撮影するものであり、例えば光学レンズ、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子、A/D(Analog/Digital)変換部等から構成されるエリアカメラが用いられる。
【0027】
印刷部13はカード3に印刷を行うものであり、例えば既知の熱転写プリンタが用いられる。ただし、印刷部13がこれに限ることはない。
【0028】
搬送部14は、筐体15の挿入口16から筐体15内に挿入されたカード3を筐体15内で搬送するものである。
【0029】
図中符号aは筐体15内でのカード3の搬送経路を示したものであり、搬送部14では、ローラー141、142がカード3を上下に挟持しつつ回転することで、搬送経路aに沿ってカード3が搬送される。本実施形態では、ローラー141、142が正逆回転することでカード3が上記搬送経路aを往復し、挿入口16から挿入されたカード3が印刷後に挿入口16から排出される。ただし搬送部14はこれに限らない。例えば搬送部14は搬送爪でカード3を掴んで搬送するものであってもよい。
【0030】
コンピュータ2はユーザ情報の変更内容の入力を受付けるものである。図3はコンピュータ2のハードウェア構成を示す図であり、コンピュータ2は制御部21、記憶部22、表示部23、入力部24、通信部25等をバスを介して接続した構成を有する。しかしながら、コンピュータ2の構成がこれに限ることはない。
【0031】
制御部21、記憶部22、通信部25は前記した制御部111、記憶部112、通信部113と略同様の構成を有する。表示部23は液晶ディスプレイ等を備える。入力部24はコンピュータ2に各種の入力を行うものであり、例えば表示部23の液晶ディスプレイに設けられたタッチパネルが用いられる。
【0032】
(2.カード3)
図4(a)はカード3の表面の一例を模式的に示したものである。カード3は、略矩形状のカード基材に、カード3の名称、発行番号、ユーザの顔画像31、カード3の発行者印などを印刷したものである。
【0033】
図4(b)はカード3の裏面の一例を模式的に示したものである。カード3の裏面にはユーザの氏名、住所等が印刷される。またカード3の裏面には、ユーザ情報の変更内容の記入欄32も所定位置に形成される。カードプリンタ1は、ユーザ情報の変更内容として、例えばユーザの住所の変更内容を記入欄32に印刷して記録する。
【0034】
ここで、図1に示すようにカードプリンタ1のカメラ12、印刷部13は搬送経路aの上方に設置されており、ユーザ情報の変更内容は上記のようにカード3の裏面に印刷する。従って、カード3は図4(b)に示す裏面を上にして挿入口16から挿入される。本実施形態では、この時のカード3の正しい向きを図4(b)に示す向きとし、例えばこれを平面において180°回転させた向きでカード3が挿入口16に挿入されると、変更内容をカード3の裏面の正しい位置に印刷することができない。
【0035】
そこで、本実施形態では以下に示す処理により、カードプリンタ1に挿入されたカード3の向きが正しくない場合に、これを誤りとして検出する。その検出結果に応じて適切な処理を行うことで、ユーザ情報の変更内容をカード3の裏面の記入欄32に正しく印刷し、記録することができる。
【0036】
(3.カードプリンタ1が行う処理)
図5はユーザ情報の変更内容を記録する際にカードプリンタ1が行う処理を示すフローチャートである。図5の各ステップは、カードプリンタ1の制御装置11がカードプリンタ1の各部を制御することで実行する。
【0037】
カードプリンタ1は、カード3が挿入口16から筐体15内に挿入されると、カード3をカメラ12の位置まで搬送し、カメラ12によりカード3を上方から撮影してその画像を取得する(S1)。図6はカード3が正しく挿入された場合の画像100を示したものであり、正しい向きで配置されたカード3の裏面が撮影されている。
【0038】
カードプリンタ1は、この画像100の特徴を示す特徴量を算出し(S2)、カード3が正しい向きで挿入されたか否かを、予め機械学習を行って得られた上記特徴量についての判別式を用いて判定する(S3)。
【0039】
機械学習は既知の処理であり詳細な説明は省略するが、簡単に説明すると、図7(a)に示すように、カード3の向きの正誤の情報が紐づいた多数の画像200をコンピュータに入力し、これらの正誤を切り分けることのできる画像200の特徴量についての判別式を求めるものである。コンピュータは、例えば図7(b)に示すように、カード3の向きの正誤を切り分けるのに適した特徴量X、Yと、これらの特徴量X、Yを用いてカード3の向きが正しい画像200とカード3の向きが誤っている画像200を切り分ける境界式aX+bY=Z(a、bは定数)を機械学習により求めることができる。
【0040】
S3では、上式の左辺aX+bYを判別式とし、S2で算出された画像100の特徴量X、Yの値X1、Y1を当該判別式に代入し、判別式の値がカード3の正しい向きを示すかどうかを判定する。図7(b)の例では、判別式の値がZより大きければカード3の向きが正しいとし(S4;YES)、ユーザ情報の変更内容を印刷するための処理に移行する。
【0041】
ここで、カードプリンタ1は先程撮影した画像100をコンピュータ2に送信し(S5)、コンピュータ2は編集画面(不図示)の一部として画像100を表示部23に表示する。コンピュータ2は編集画面において、ユーザ情報の変更内容の入力と、当該変更内容の印刷領域の設定を受付け、変更内容とその印刷領域の情報(変更内容等という)をカードプリンタ1に送信する。カードプリンタ1は、変更内容等を受信する(S6)と、カード3を印刷部13まで搬送し、変更内容をカード3の裏面の記入欄32の上記印刷領域に印刷し(S7)、印刷後のカード3を挿入口16に排出する(S8)。
【0042】
一方、判別式の値がカード3の正しい向きを示すものでない場合、例えば図7(b)の例では判別式の値がZより小さい場合、カードプリンタ1は、カード3の向きを誤り(エラー)とし(S4;NO)、印刷部13での印刷を行わず、そのままカード3を挿入口16から排出(S8)して処理を終了する。この際、「カードを正しく挿入してください」などのメッセージをカードプリンタ1のモニターやスピーカー(不図示)で出力することも可能である。
【0043】
なお、カード3の向きが誤っていた場合に、印刷を行わずに排出するのではなく、その向きに合わせた処理を行ったうえで、カード3上の適切な位置に印刷を行うこともできる。例えば、前記のS5~S6の処理を行い、図8に示すように、S6で受信した変更内容Cとその印刷領域Dをカード3の中央に当たる位置を回転中心として180°回転させることで、図4(b)に示す記入欄32の位置に印刷を行うことができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、予め機械学習を行うことで得られた判別式を用い、カード3を撮影した画像100の特徴からカード3の向きの正誤を判定し、カード3の向きが正しい場合に、カード3に記録を行う。このように、機械学習により得られた判別式を用いることで、カード3の向きの正誤を精度良く検出することができ、これにより誤った位置に印刷することが無くなる。
【0045】
またカード3の向きが正しくない場合に、図8のように変更内容Cとして印刷される文字の向きを修正し、カード3に印刷を行うことで、カード3の向きが誤っていた場合にも正しく印刷を行うことができる。
【0046】
しかしながら、本発明が以上の実施形態に限られることはない。例えば、本実施形態ではカード3の裏面全体の画像100からカード3の向きの正誤の判定を行っているが、図9(a)に示すように、カード3の裏面の一部の画像100からカード3の向きの正誤を判定することもでき、正誤検出に用いる画像100のサイズを小さくすることで、カメラ12の小型化、撮像時間の短縮が可能になる。この場合、S3(図5参照)で用いる判別式についても、図9(b)に示すようにカード3の上記一部に対応する範囲の画像200を用いて作成する。
【0047】
また、カード3の向きの判定に用いる画像100は、その券面が現れたものに限らず、図10(a)に示すように、カード3のシルエット(輪郭)のみを示す画像100であってもよい。当該画像100を撮影するカメラ12としては図10(b)に示すように投光部121から照射した光bを受光部122で受光するものを用いることができ、図中矢印cに示す方向に搬送されるカード3が当該光bを遮ることで、カード3のシルエットの画像100が得られる。
【0048】
この場合、S3(図5参照)で用いる判別式についても、図10(c)に示すようにカード3のシルエットの画像200を用いて作成する。これらの画像200には、画像200内でのシルエットの位置・角度・明度のばらつき、歪みがあるものが含まれる。
【0049】
形状に特徴のあるカード3の場合は、このようにシルエットの画像100から正誤検出を行うこともでき、券面の画像情報に左右されない精度の高い判定が可能になる。また機械学習により得られた判別式を用いることで、カメラ12で撮影した画像100内でのシルエットの位置・角度・明度のばらつき、歪みがあっても、正誤検出を好適に行うことができる。なお、図9の例と同様、シルエットの一部の画像を用いてカード3の向きの正誤を検出することも可能である。
【0050】
また本実施形態では、カード3の正誤の情報が紐づいた画像200を用い、教師ありの機械学習を行って判別式を得ているが、ディープラーニングの手法を用いることにより、当該情報の紐付きのない画像200から教師なしの機械学習を行って判別式を得ることもできる。
【0051】
また本実施形態のカードプリンタ1はユーザ情報の変更内容をカード3の裏面に印刷して記録するものであるが、記録する内容やこれを記録する面は上記に限ることはなく、記録方法も印刷に限ることはない。例えばカード3が有する接触式のICチップに記録を行う場合も、前記と同様の手順で正誤検出を行い、その結果を用いて正しく記録を行うことができる。
【0052】
また本実施形態では、カード3の裏面の画像100から正誤検出を行っているが、カード3の表面の画像から正誤検出を同様に行うことも可能である。またカード3も前記したIDカードに限らない。
【0053】
また本実施形態のカードプリンタ1は役所等に設置される小型のものであり、IDカードのユーザ情報の変更内容を記録するものであるが、本実施形態のカードプリンタ1の構成は、カード3を新規発行する際に工場で用いる大型のカードプリンタなどにも適用でき、ユーザの氏名などの情報をカード3の正しい位置に印刷するのに役立つ。
【0054】
またカードプリンタ1の構成も特に限定されず、例えば印刷部13がカード3の搬送経路aの下方にある場合もある。カード3の向きが正しいかどうかは、このようなカードプリンタ1の構成に応じて異なる。
【0055】
以下、本発明の別の例を第2の実施形態として説明する。第2の実施形態は第1の実施形態と異なる点について説明し、第1の実施形態と同様の点については説明を省略する。
【0056】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、カード3の向きだけでなく、カード3の表裏の正誤も判定する例である。すなわち、前記したように、カードプリンタ1がカード3の裏面を上にして挿入するものである場合、カード3の表面を上にして挿入された時にこれをエラーとして検出する。
【0057】
図11は、第2の実施形態において、ユーザ情報の変更内容を記録する際にカードプリンタ1が行う処理を示すフローチャートである。図11の各ステップは、カードプリンタ1の制御装置11がカードプリンタ1の各部を制御することで実行する。
【0058】
本実施形態でも、カードプリンタ1は、カード3が挿入口16から筐体15内に挿入されると、カード3をカメラ12の位置まで搬送し、カメラ12によりカード3を上方から撮影してその画像100を取得する(S11)。そして、前記と同様に画像100の特徴量を算出する(S12)。
【0059】
さらに、カードプリンタ1は、この画像100について顔画像31を検出し(S13)、S12で算出した特徴量の値と、S13での顔画像31の検出結果に応じて、カード3の表裏と向きの正誤を判定する(S14)。
【0060】
本実施形態では、図4(b)に示すようにカード3の裏面に顔画像31が無いので、画像100から顔画像31が検出されなければカード3の表裏を正(裏面が上になっている)とし、顔画像31が検出されればカード3の表裏が誤りとする。
【0061】
カード3の向きの正誤については、第1の実施形態と同様、予め機械学習を行って得られた上記特徴量についての判別式を用いて行うことができる。
【0062】
カードプリンタ1は、カード3の表裏と向きが正(S15;YES)の場合、ユーザ情報の変更内容を印刷するための処理S16~S18を行い、印刷後のカード3を挿入口16に排出する(S19)。S16~S18の処理は、第1の実施形態で説明したS5~S7(図5参照)の処理と同様なので、説明を省略する。
【0063】
一方、カードプリンタ1は、カード3の表裏と向きのいずれかが誤りの場合(S15;NO)、印刷部13での印刷を行わず、そのままカード3を挿入口16から排出(S19)して処理を終了する。前記と同様、「カードを正しく挿入してください」などのメッセージをカードプリンタ1のモニターやスピーカー(不図示)で出力することも可能である。
【0064】
なお、カード3の表裏が誤っていた場合に、印刷を行わずに排出するのではなく、その表裏に合わせた処理を行ったうえで、カード3上の適切な位置に印刷を行うこともできる。例えばカード3の向きが正でありカード3の表裏のみ誤っていた場合、S16~S17の処理を行ったうえで、カードプリンタ1内に設けたカード3の表裏の反転機構(不図示)によりカード3の表裏を反転することで、カード3の裏面の記入欄32に正しく印刷を行うことができる。カード3の表裏と向きの双方が誤っていた場合は、さらに図8で説明した処理を行うことで、カード3の記入欄32の位置に正しく印刷を行うことができる。
【0065】
また、機械学習により得られた判別式を用い、カード3の画像100の特徴量からカード3の向きだけでなくカード3の表裏の正誤の判定を行うことも可能である。この場合、図12に示すように、カード3の表裏と向きの正誤の情報が紐づいた多数の画像200をコンピュータに入力し、機械学習を行うことで、これらの正誤を切り分けることのできる画像200の特徴量についての判別式を求めればよい。
【0066】
ただしこの場合、判別式作成のためにカード3の表面の画像と裏面の画像を用意する必要があり、手間がかかる。一方、図11の例ではカード3の表裏の正誤検出を顔画像31の有無により行うので、機械学習はカード3の向きに関してのみ行えば良く、判別式作成の負担が増加することもない。
【0067】
その他、機械学習により得られた判別式を用い、カード3の画像100の特徴量から、在留カード、マイナンバーカード、特別永住者カード、運転免許証などカード3の種類の正誤の判定を行うことも可能であり、カードプリンタ1に挿入されたカード3が正しい種類のカードでない場合に、印刷を行わずに排出することも可能である。
【0068】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0069】
1:カードプリンタ
2:コンピュータ
3:カード
10:プリントシステム
11:制御装置
12:カメラ
13:印刷部
14:搬送部
15:筐体
16:挿入口
31:顔画像
32:記入欄
100、200:画像
図1
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図10
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図12