(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】トリガスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/14 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
H01H13/14 A
(21)【出願番号】P 2020202102
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 拓未
(72)【発明者】
【氏名】小山 泰基
(72)【発明者】
【氏名】前田 一志
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-101326(JP,A)
【文献】実開昭57-103633(JP,U)
【文献】特開平6-223674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/12 - 13/24
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押込操作を受けて移動するトリガを備えるトリガスイッチであって、
前記トリガを、押込方向の反対方向へ付勢する第1付勢部材と、
長手方向が押込方向に平行で、前記トリガに一端側が取り付けられた軸部材と、
前記軸部材の他端側に連結され、押込方向に移動可能な第1可動部材と、
前記第1可動部材の押込方向側に位置し、押込方向に移動可能な第2可動部材と、
前記第1可動部材及び前記第2可動部材の間に配置され、前記第1可動部材及び前記第2可動部材が互いに離隔する方向に付勢する第2付勢部材と、
押込方向に移動した前記第2可動部材が当接する当接部と
、
前記第1可動部材、前記第2可動部材及び前記第2付勢部材を収容する筐体と
を備え、
前記筐体は、前記軸部材を貫通させる貫通孔が開設された壁部を備え、
前記第1付勢部材及び前記第2付勢部材は、弾性体を用いて形成されており、
前記第1付勢部材は、前記軸部材を巻回し、前記筐体に開設された前記貫通孔の周囲の壁部に一端が接しており、
前記トリガが押込操作を受けた場合に、
押込操作を受けた前記トリガの移動に連動して、前記軸部材、前記第1可動部材、前記第2可動部材及び前記第2付勢部材が押込方向へ移動し、
前記第1付勢部材は、前記トリガの押込量に応じて、前記トリガを押込方向の反対方向へ付勢し、
移動した前記第2可動部材が前記当接部に当接した状態から、更に、前記トリガが押込操作を受けたとき、
押込操作を受けた前記トリガの移動に連動して、前記軸部材及び前記第1可動部材が押込方向へ移動し、
前記第2付勢部材は、前記第1可動部材及び前記第2可動部材の間隔に応じて、前記第1可動部材を押込方向の反対方向へ付勢する
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項2】
押込操作を受けて移動するトリガを備えるトリガスイッチであって、
前記トリガを、押込方向の反対方向へ付勢する第1付勢部材と、
長手方向が押込方向に平行で、前記トリガに一端側が取り付けられた軸部材と、
前記軸部材の他端側に連結され、押込方向に移動可能な第1可動部材と、
前記第1可動部材の押込方向側に位置し、押込方向に移動可能な第2可動部材と、
前記第1可動部材及び前記第2可動部材の間に配置され、前記第1可動部材及び前記第2可動部材が互いに離隔する方向に付勢する第2付勢部材と、
押込方向に移動した前記第2可動部材が当接する当接部と
を備え、
前記第2付勢部材は、前記第1付勢部材より、バネ定数が大きく、
前記トリガが押込操作を受けた場合に、
押込操作を受けた前記トリガの移動に連動して、前記軸部材、前記第1可動部材、前記第2可動部材及び前記第2付勢部材が押込方向へ移動し、
前記第1付勢部材は、前記トリガの押込量に応じて、前記トリガを押込方向の反対方向へ付勢し、
移動した前記第2可動部材が前記当接部に当接した状態から、更に、前記トリガが押込操作を受けたとき、
押込操作を受けた前記トリガの移動に連動して、前記軸部材及び前記第1可動部材が押込方向へ移動し、
前記第2付勢部材は、前記第1可動部材及び前記第2可動部材の間隔に応じて、前記第1可動部材を押込方向の反対方向へ付勢する
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載のトリガスイッチであって、
前記第1付勢部材及び前記第2付勢部材は、弾性体を用いて形成されている
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項4】
請求項3に記載のトリガスイッチであって、
前記第1可動部材、前記第2可動部材及び前記第2付勢部材を収容する筐体を備え、
前記筐体は、前記軸部材を貫通させる貫通孔が開設された壁部を備え、
前記第1付勢部材は、前記軸部材を巻回し、前記筐体に開設された前記貫通孔の周囲の壁部に一端が接している
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項5】
請求項1乃至
請求項4のいずれか1項に記載のトリガスイッチであって、
前記第1可動部材及び前記第2可動部材は、所定の間隔以上に離隔しないよう係合している
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項6】
請求項1乃至
請求項5のいずれか1項に記載のトリガスイッチであって、
前記トリガの押込量に応じた駆動速度で駆動部を駆動させる駆動信号を出力する制御部を備え、
押込量の変化に対する駆動速度の上昇率は、前記第2可動部材が前記当接部に当接するまでと前記当接部に当接してからとで異なる
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガの押込操作を受けて、駆動部を駆動させるトリガスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具の動作を制御するトリガスイッチの一種として、モータの回転速度を変更可能なトリガスイッチが、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたトリガスイッチは、トリガを押圧していくと、モータへの電源がオンとなり、更にトリガを押圧するとモータへの供給電圧が上昇し、モータの回転速度が上がる。また、モータの回転速度の上限を調整するための調速ダイヤルがトリガに組み込まれている。
【0003】
特許文献1に例示するように、トリガのストロークに応じてモータの回転速度が上昇する様々なトリガスイッチが提案されている。このようなトリガスイッチでは、トリガの押込操作の開始から引き切りまでの途中でモータの回転速度の上昇率が変化する変曲点を有するトリガスイッチも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、押込操作の途中で変曲点を有するトリガスイッチでは、変曲点を感得できる機能が必要となる。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、押込操作中に変化を感得することが可能なトリガスイッチの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願記載のトリガスイッチは、押込操作を受けて移動するトリガを備えるトリガスイッチであって、前記トリガを、押込方向の反対方向へ付勢する第1付勢部材と、長手方向が押込方向に平行で、前記トリガに一端側が取り付けられた軸部材と、前記軸部材の他端側に連結され、押込方向に移動可能な第1可動部材と、前記第1可動部材の押込方向側に位置し、押込方向に移動可能な第2可動部材と、前記第1可動部材及び前記第2可動部材の間に配置され、前記第1可動部材及び前記第2可動部材が互いに離隔する方向に付勢する第2付勢部材と、押込方向に移動した前記第2可動部材が当接する当接部とを備え、前記トリガが押込操作を受けた場合に、押込操作を受けた前記トリガの移動に連動して、前記軸部材、前記第1可動部材、前記第2可動部材及び前記第2付勢部材が押込方向へ移動し、前記第1付勢部材は、前記トリガの押込量に応じて、前記トリガを押込方向の反対方向へ付勢し、移動した前記第2可動部材が前記当接部に当接した状態から、更に、前記トリガが押込操作を受けたとき、押込操作を受けた前記トリガの移動に連動して、前記軸部材及び前記第1可動部材が押込方向へ移動し、前記第2付勢部材は、前記第1可動部材及び前記第2可動部材の間隔に応じて、前記第1可動部材を押込方向の反対方向へ付勢することを特徴とする。
【0008】
また、前記トリガスイッチにおいて、前記第1付勢部材及び前記第2付勢部材は、弾性体を用いて形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記トリガスイッチにおいて、前記第1可動部材、前記第2可動部材及び前記第2付勢部材を収容する筐体を備え、前記筐体は、前記軸部材を貫通させる貫通孔が開設された壁部を備え、前記第1付勢部材は、前記軸部材を巻回し、前記筐体に開設された前記貫通孔の周囲の壁部に一端が接していることを特徴とする。
【0010】
また、前記トリガスイッチにおいて、前記第1可動部材及び前記第2可動部材は、所定の間隔以上に離隔しないよう係合していることを特徴とする。
【0011】
また、前記トリガスイッチにおいて、前記トリガの押込量に応じた駆動速度で駆動部を駆動させる駆動信号を出力する制御部を備え、押込量の変化に対する駆動速度の上昇率は、前記第2可動部材が前記当接部に当接するまでと前記当接部に当接してからとで異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に斯かるトリガスイッチは、複数の付勢部材を用いることにより、押込操作中に操作荷重の変化を感得することが可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本願記載のトリガスイッチの外観の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】本願記載のトリガスイッチの要部の一例を示す概略斜視図である。
【
図3】本願記載のトリガスイッチの要部の内部構成の一例を示す概略分解斜視図である。
【
図4】本願記載のトリガスイッチの要部の一例を一部破断状態で示す概略斜視図である。
【
図5】本願記載のトリガスイッチの要部の一例を一部破断状態で示す概略側面図である。
【
図6】本願記載のトリガスイッチの要部の一例を一部破断状態で示す概略側面図である。
【
図7】本願記載のトリガスイッチの要部の一例を一部破断状態で示す概略側面図である。
【
図8】本願記載のトリガスイッチの要部の一例を一部破断状態で示す概略側面図である。
【
図9】本願記載のトリガスイッチにおける押込量と操作荷重との関係を示すグラフである。
【
図10】本願記載のトリガスイッチを組み込んだ電動装置が備える制御構成の一部の例を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
<適用例>
本願記載のトリガスイッチは、モータ等の駆動部を備える電動ドリル、電動ノコギリ、電動ドライバ、電動レンチ、電動グラインダ等の電動工具をはじめとする様々な電動装置に適用される。以下の実施形態では、図面を参照しながら、このようなトリガスイッチTSを例示して説明する。
【0016】
<実施形態>
図1は、本願記載のトリガスイッチTSの外観の一例を示す概略斜視図である。
図1は、電動工具等の様々な電動装置ET(
図10参照)に組込可能なトリガスイッチTSの外観を示している。トリガスイッチTSは、電動装置ETの操作者が操作するスイッチであり、操作者がトリガスイッチTSのトリガ1を押し込む押込操作をすることにより、電動装置ETに内蔵された電動モータ等の駆動部M(
図10参照)が駆動する。トリガスイッチTSは、電動装置ETに組み込まれる略直方体状の筐体2と、操作者が押込可能なトリガ1とを備えている。また、トリガスイッチTSは、駆動部Mの駆動方向、例えば、電動ドライバの回転方向の正逆を切り替える切替レバー3を備えている。なお、以降の説明において、トリガスイッチTSの方向については、トリガ1が取り付けられた方を前、筐体2側を後とし、適宜、後方を押込方向として表現するが、説明の便宜上の方向であり、トリガスイッチTSの使用の際の方向を限定するものではない。
【0017】
トリガスイッチTSの内部構成について説明する。
図2は、本願記載のトリガスイッチTSの要部の一例を示す概略斜視図である。
図2は、トリガスイッチTSの内部に組み込まれた機構を、簡略化した要部として示している。要部として示す機構は、トリガ1を外し、トリガ1にて覆っていた軸部材10を露出させ、筐体2のうちトリガ1の押込操作に関する部分を筐体要部20として取り出して示している。軸部材10は、前部となる一端側にトリガ1が取り付けられており、他端側は、筐体要部20の前面の壁部21に開設された貫通孔21aを貫通して筐体要部20の内部に収容されている。軸部材10の一端側の先端は、径方向に張り出した取付部10aとなっている。軸部材10には、圧縮コイルバネ等の第1付勢部材11が巻回されている。第1付勢部材11の前端は、張り出した取付部10aの後端に接し、第1付勢部材11の後端は、筐体要部20の壁部21に開設された貫通孔21aの周囲の壁部21に接している。後端が筐体要部20の外壁に接した第1付勢部材11は、前端で軸部材10を前方へ向けて付勢している。トリガ1が押込操作を受けた場合、トリガ1と共に軸部材10が後方へ移動する。押込操作が解除された場合、第1付勢部材11がトリガ1の押込方向の反対方向となる前方へ向けて付勢しているため、トリガ1は軸部材10と共に前方へ移動する。
【0018】
図3は、本願記載のトリガスイッチTSの要部の内部構成の一例を示す概略分解斜視図である。
図4は、本願記載のトリガスイッチTSの要部の一例を一部破断状態で示す概略斜視図である。
図5は、本願記載のトリガスイッチTSの要部の一例を一部破断状態で示す概略側面図である。
図4及び
図5は、トリガスイッチTSの要部を、
図2に示すA-Bを通る垂直面で切断し、内部を視認可能とした一部破断図である。筐体要部20内には、軸部材10の後部となる他端側の他、第1可動部材22、第2可動部材23、第2付勢部材24等の各種部材が収容されている。
【0019】
第1可動部材22及び第2可動部材23は、略直方体形状をなしており、筐体要部20内に形成された前後方向(トリガ1の押込方向)に延びる案内路20aに沿って、それぞれ前後に移動可能に配置されている。前方には第1可動部材22が配置されており、後方には第2可動部材23が配置されている。後方に配置された第2可動部材23は、案内路20aの後端となる当接部20bに当接するまで移動可能である。軸部材10の後端部近傍には、外周面を周回する係止溝10bが周方向に刻設されている。第1可動部材22の前面には、軸部材10の係止溝10bを差し込んで第1可動部材22を係止する係止部22aが形成されている。軸部材10の係止溝10bを、第1可動部材22の係止部22aにて係止することにより、軸部材10の後端は、第1可動部材22の前面に連結される。
【0020】
第1可動部材22の後部には、係合メス部22bが形成されており、第2可動部材23の前部には、係合オス部23aが形成されている。第1可動部材22の係合メス部22bは、第2可動部材23の係合オス部23aを挿入可能な凹部が形成されており、凹部の先端は、内側へ鉤状に屈曲している。第2可動部材23の係合オス部23aは、第1可動部材22の係合メス部22bに挿入可能な凸部が形成されており、凸部の先端は、外側へ張り出している。第1可動部材22の係合メス部22bに、第2可動部材23の係合オス部23aが移動可能な状態で挿入されている。第1可動部材22及び第2可動部材23は、前後方向にそれぞれ独立して移動可能であるが、第1可動部材22の係合メス部22bの先端及び第2可動部材23の係合オス部23aの先端が係合することにより、所定の間隔以上に離隔しないように組み合わされている。
【0021】
第2付勢部材24は、例えば、圧縮コイルバネを用いて形成されている。第2付勢部材24は、第1可動部材22及び第2可動部材23の間に配置されており、互いに離隔する方向に付勢する。第2付勢部材24のバネ定数と第1付勢部材11のバネ定数は異なっている。具体的には、第2付勢部材24は、第1付勢部材11よりバネ定数が大きい圧縮コイルバネが用いられており、第2付勢部材24の圧縮には、第1付勢部材11より大きい力が必要である。
【0022】
次に、本願記載のトリガスイッチTSの操作及び動作について説明する。
図6は、本願記載のトリガスイッチTSの要部の一例を一部破断状態で示す概略側面図である。
図6は、トリガ1を押圧する操作を受けていない状態である。
図6に例示する状態において、第1付勢部材11に付勢されて、軸部材10は前方側に移動している。なお、
図6では例示していないが、軸部材10の前端に取り付けられたトリガ1は、移動範囲の前端まで移動している状態である。前方に移動した軸部材10の後端に連結された第1可動部材22は、移動範囲の前端に位置している。第2可動部材23は、第2付勢部材24に付勢されて、第1可動部材22から後端側へ所定の間隔まで離隔した位置で第1可動部材22と係合している。
【0023】
図7は、本願記載のトリガスイッチTSの要部の一例を一部破断状態で示す概略側面図である。
図7は、
図6に例示する状態から、トリガ1を後方へ移動させる押込操作を行い、第2可動部材23の後端が筐体要部20の後方の内壁となる当接部20bに当接するまで、操作者が、トリガ1を押し込んだ状態を示している。第2可動部材23の後端が筐体要部20の当接部20bに当接するまで、操作者は、第1付勢部材11の付勢力に抗してトリガ1を押し込むことになる。トリガ1が取り付けられた軸部材10は、トリガ1の移動に連動して後方へ移動し、第1付勢部材11は、押込量に応じて圧縮される。第1付勢部材11は、トリガ1の押込量に応じて圧縮されながら押込方向の反対方向となる前方へトリガ1を付勢する。軸部材10の後端に連結された第1可動部材22及び第2可動部材23は、第2付勢部材24に付勢されて所定の間隔を維持した状態で、トリガ1の移動に連動して案内路20aを後方へ移動する。
【0024】
図8は、本願記載のトリガスイッチTSの要部の一例を一部破断状態で示す概略側面図である。
図8は、
図7に例示する状態から、更にトリガ1を後方へ移動させる押込操作を行い、押込範囲の限界まで押し込んだ状態を示している。
図6に例示した第2可動部材23の後端が筐体要部20の当接部20bに当接した状態から、トリガ1を更に押し込んだ場合、操作者は、第1付勢部材11及び第2付勢部材24の付勢力に抗してトリガ1を押し込むことになる。トリガ1が取り付けられた軸部材10は、トリガ1の移動に連動して更に後方へ移動し、第1付勢部材11は、押込量に応じて更に圧縮される。第1付勢部材11は、トリガ1の押込量に応じて圧縮されながら前方へトリガ1を付勢する。軸部材10の後端に連結された第1可動部材22は、トリガ1の移動に連動して案内路20aを後方へ移動する。第2可動部材23は、当接部20bに当接した状態から後方へ移動することができないため、第1可動部材22は、第2付勢部材24の付勢力に抗して後方へ移動し、第2付勢部材24は、押込量に応じて圧縮される。
【0025】
以上のように、トリガスイッチTSのトリガ1が押し込まれた場合、第2可動部材23が当接部20bに当接するまでは、操作者は、第1付勢部材11の付勢力に抗して、トリガ1を押し込むことになる。更に、トリガ1が押し込まれた場合、操作者は、第1付勢部材11及び第2付勢部材24の付勢力に抗して、トリガ1を押し込むことになる。
【0026】
操作者がトリガ1の押込操作を解除すると、第1付勢部材11及び第2付勢部材24の付勢力により、
図6に例示した状態に復帰する。
【0027】
次に、本願記載のトリガスイッチTSの操作特性として、操作者がトリガ1に対して押込操作を行う場合の押込量と、押込操作に必要な負荷となる操作荷重との関係を説明する。
図9は、本願記載のトリガスイッチTSにおける押込量と操作荷重との関係を示すグラフである。
図9では、横軸にトリガ1の押込量を、ストロークとしてとり、縦軸にトリガ1の操作に要する荷重をとって、その関係を示している。トリガ1を押込始めた場合、最初はほぼ加重がない状態、所謂遊びが設定されている。遊び以上にトリガ1を押し込むと、トリガ1を第1付勢部材11の付勢力に抗して押し込むことになるため、ストローク量に応じて加重が増大する。ストロークに対する加重の傾きは、第1付勢部材11のバネ定数に依存する。グラフ中、TT1として示した位置が、第2可動部材23が当接部20bに当接する位置であり、その時の加重がTTF1である。
【0028】
TT1として示す位置から更にトリガ1を押し込むと、第1付勢部材11及び第2付勢部材24の合力に抗して押し込むことになるため、加重はOF1まで上昇し、更に、ストローク量に応じて加重が増大する。ストロークに対する加重の傾きは、第1付勢部材11及び第2付勢部材24のバネ定数に依存する。
図9では、押込範囲の限界となるTT2までトリガ1を押し込んだ場合、加重がTTF2になることを示している。
【0029】
図9に例示するような操作特性を有する本願記載のトリガスイッチTSは、TT1の位置に、駆動部M、例えば、モータの回転速度の上昇率の変曲点を合わせることにより、操作者は、上昇率の変曲点を操作荷重の変化として感得することが可能となる。例えば、TT1までは、押込量に応じて回転速度が緩やかに上昇し、TT1を超えると押込量に応じて回転速度が急激に上昇するように設計した場合、操作者は、操作荷重の変化により、回転速度の上昇率の変曲点を感得することができるという効果が得られる。また、TT1までは、押込量に応じて回転速度が急激に上昇し、TT1を超えると回転速度が緩やかに上昇するような設計でも同様の効果が得られる。更に、TT1までは、押込量にかかわらず回転速度が一定で、TT1を超えると押込量に応じて回転速度が上昇するような設計、TT1までは回転速度が上昇し、TT1を超えると回転速度が一定となる設計等の設計でも同様の効果が得られる。
【0030】
次に、本願記載のトリガスイッチTSを組み込んだ電動装置ETの構成例について説明する。
図10は、本願記載のトリガスイッチTSを組み込んだ電動装置ETが備える制御構成の一部の例を示す概略ブロック図である。電動工具等の電動装置ETは、本体装置MUにトリガスイッチTSを組み込んで形成されている。本体装置MUは、モータ等の駆動部Mを備えている。トリガスイッチTSは、トリガ1の押込量を検出する押込量検出部4と、押込量に応じて本体装置MUへ駆動信号を出力する制御部5とを備えている。
【0031】
押込量検出部4は、接触又は非接触で押込量を検出する機構である。例えば、接触検出としては、筐体要部20と第1可動部材22とに電極を取り付け、電極の接触面積で変化する抵抗値に基づいて押込量を検出する方法を例示することができる。また、非接触検出としては、電界の変化を検出する近接センサ等の非接触センサを用いて押込量を検出する方法を例示することができる。
【0032】
トリガスイッチTSの制御部5は、例えば、プリント配線された基板、並びに基板上に配置された各種LSI、VLSI等の集積回路を用いたマイクロコンピュータ、電子素子及び各種端子を用いて構成された回路である。制御部5は、押込量検出部4の検出結果を入力として受け付け、検出結果に基づいて各種処理を実行し、電動装置ETの本体装置MUが備えるモータ等の駆動部Mを駆動させる駆動信号を、本体装置MUへ出力する。電動装置ETは、本体装置MUに入力された駆動信号に基づいて駆動部Mを駆動する。
【0033】
以上のように本願記載のトリガスイッチTSは、第1付勢部材11及び第2付勢部材24並びに第1可動部材22及び第2可動部材23を備え、これらの部材を連携させることにより、トリガ1の押込途中で荷重を変化させることができる。これにより、例えば、押込量に対して駆動部Mの駆動速度の上昇率の変曲点を有する電動装置ETに適用した場合、変曲点の位置を操作荷重の変化として感得することが可能となる等、優れた効果を奏する。
【0034】
本発明は、以上説明したそれぞれの実施形態に限定されるものではなく、他の様々な形態で実施することが可能である。そのため、上述した実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の技術範囲は、請求の範囲によって説明するものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形及び変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0035】
例えば、前記実施形態では、第1付勢部材11及び第2付勢部材24として、圧縮コイルバネを用いた形態を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、同等の機能を有する他の弾性体を用いることが可能である。例えば、第1付勢部材11及び第2付勢部材24の一方又は双方に板バネ等の弾性体を用いることが可能である。また、前記実施形態では、第1付勢部材11より第2付勢部材24の方が、バネ定数が大きい形態を例示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、第1付勢部材11及び第2付勢部材24のバネ定数が略同等であってもよく、更には、第1付勢部材11の方が、バネ定数が大きくなるように構成してもよい。
【0036】
また、例えば、前記実施形態では、制御部5が筐体2内に収容されている形態を示したが、本発明はこれに限らず、制御部5を、筐体2の外に出して、本体装置MU内に収容する形態等、様々な形態に展開することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
TS トリガスイッチ
1 トリガ
10 軸部材
11 第1付勢部材
2 筐体
20 筐体要部
20b 当接部
21 壁部
21a 貫通孔
22 第1可動部材
23 第2可動部材
24 第2付勢部材
5 制御部
ET 電動装置
MU 本体装置
M 駆動部