(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】回転式アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20241001BHJP
F16D 28/00 20060101ALI20241001BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20241001BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F16H1/28
F16D28/00 Z
H02K7/06 B
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2020212989
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智師
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 巧美
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-12557(JP,A)
【文献】特開平7-301288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/00
F16D 28/00
H02K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(12)と、
コイル(22)を有し前記ハウジングに固定されるステータ(21)、および、マグネット(230)が設けられ前記コイルへの通電により回転するロータ(23)を有するモータ(20)と、
前記モータのトルクを減速して出力可能な減速機(30)と、
前記減速機からトルクが入力されると前記ハウジングに対し相対回転する回転部(40)、および、前記回転部が前記ハウジングに対し相対回転すると前記ハウジングに対し軸方向に相対移動する並進部(50)を有する回転並進部(2)と、
を備え、
前記減速機は、
前記モータからのトルクが入力されるサンギヤ(31)、
前記サンギヤに噛み合いつつ自転しながら前記サンギヤの周方向に公転可能な複数のプラネタリギヤ(32)、および、
前記プラネタリギヤと噛み合い可能なリングギヤ(34、35)、
を有する遊星歯車機構であって、
前記減速機を構成する部品であって、前記マグネットを軸方向に投影したマグネット投影領域に位置している投影領域部品の少なくとも1つは、非磁性材により形成されて
おり、
前記ロータと、前記減速機を構成する回転部材との間には、他部材が配置されずに対向して配置されている回転式アクチュエータ。
【請求項2】
前記減速機は、前記プラネタリギヤを回転可能に支持する軸受(36)、ならびに、
前記軸受を保持するピン(331、371)、および、前記ピンを保持するキャリア本体(330、370)を有するキャリア(33、37)を有し、
前記プラネタリギヤ、前記軸受、前記ピンおよび前記キャリア本体のうちの少なくとも1つは、非磁性材により形成されている請求項1に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項3】
前記キャリア本体は、軸方向において、前記マグネットと前記プラネタリギヤとの間に配置され前記マグネットと対向しており、かつ、前記ステータの径方向内側であって、軸方向にて少なくとも一部が前記ステータと重複して配置されている請求項2に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項4】
前記プラネタリギヤおよび前記軸受は、軸方向において前記キャリア本体より前記マグネット側であって、前記マグネットと対向して配置されている請求項2に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項5】
前記投影領域部品の少なくとも1つは、非磁性材である非磁性ステンレス鋼により形成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項6】
前記投影領域部品の少なくとも1つは、アルミニウム材により形成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項7】
前記投影領域部品の少なくとも1つは、樹脂により形成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項8】
前記リングギヤには、前記プラネタリギヤの軸方向の一方側に噛み合う第1リングギヤ(34)、および、前記第1リングギヤとは歯数が異なっており、前記プラネタリギヤの軸方向の他方側に噛み合う第2リングギア(35)が含まれており、
前記減速機は、不思議遊星歯車機構である請求項1~7のいずれか一項に記載の回転式アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クラッチの状態を係合状態または非係合状態に変更することにより、第1伝達部と第2伝達部との間のトルクの伝達を許容または遮断するクラッチ装置が知られている。このようなクラッチ装置では、電動機のトルクを減速して出力する減速機を有する回転式アクチュエータを備えることが一般的である。
【0003】
電動機のトルクを減速して出力する減速機としては、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第110034631号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、減速機に用いられるギヤは、一般的に磁性体材料にて形成されている。磁性体材料で形成されたギヤと、電動機のマグネットとが軸方向にて対向していると、マグネットの磁力に起因する軸方向吸引力により、ギヤの回転摺動損失が増大し、伝達効率が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、体格を小型化可能な回転式アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回転式アクチュエータは、ハウジング(12)と、モータ(20)と、減速機(30)と、回転並進部(2)と、を備える。モータは、コイル(22)を有しハウジングに固定されるステータ(21)、および、マグネット(230)が設けられコイルへの通電により回転するロータ(23)を有する。減速機は、モータのトルクを減速して出力可能である。回転並進部は、減速機からトルクが入力されるとハウジングに対し相対回転する回転部(40)、および、回転部がハウジングに対して相対回転するとハウジングに対し軸方向に相対移動する並進部(50)を有する。
【0008】
減速機は、サンギヤ(31)、複数のプラネタリギヤ(32)、および、リングギヤ(34、35)を有する遊星歯車機構である。サンギヤは、モータからのトルクが入力される。プラネタリギヤは、サンギヤに噛み合いつつ、自転しながらサンギヤの周方向に公転可能である。リングギヤは、プラネタリギヤと噛み合い可能である。減速機を構成する部品であって、マグネットを軸方向に投影したマグネット投影領域に位置している投影領域部品の少なくとも1つは、非磁性材により形成されている。ロータと、減速機を構成する回転部材との間には、他部材が配置されずに対向して配置されている。これにより、減速効率の低下が抑制されるため、マグネットと減速機との軸方向における間隔の短縮が可能であり、体格を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態によるクラッチ装置を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態によるクラッチ装置の一部を示す断面図である。
【
図3】第2実施形態によるクラッチ装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による回転式アクチュエータを図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態を
図1および
図2に示す。回転式アクチュエータとしての電動クラッチアクチュエータ10は、クラッチ装置1に適用される。クラッチ装置1は、例えば車両の内燃機関と変速機との間に設けられ、内燃機関と変速機との間のトルクの伝達を許容または遮断するのに用いられる。本実施形態のクラッチ装置1が適用される車両は、内燃機関からの駆動トルクによって走行する車両であるが、モータからの駆動トルクによって走行可能な電気自動車やハイブリッド車等であってもよい。
【0012】
クラッチ装置1は、電動クラッチアクチュエータ10と、クラッチ70と、状態変更部80と、を備えている。電動クラッチアクチュエータ10は、ハウジング12と、電動機であるモータ20と、減速機30と、回転並進部としてのボールカム2と、を備える。
【0013】
また、クラッチ装置1は、制御部としての電子制御ユニット(以下、「ECU」という)90と、第1伝達部である入力軸61と、第2伝達部である出力軸62と、を備えている。
【0014】
ECU90は、演算手段としてのCPU、記憶手段としてのROM、RAM等、入出力手段としてのI/O等を有する小型のコンピュータである。ECU90は、車両の各部に設けられた各種センサからの信号等の情報に基づき、ROM等に格納されたプログラムに従い演算を実行し、車両の各種装置および機器の作動を制御する。このように、ECU90は、非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行する。このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。
【0015】
ECU90は、各種センサからの信号等の情報に基づき、内燃機関等の作動を制御可能である。また、ECU90は、後述するモータ20の作動を制御可能である。
【0016】
入力軸61は、例えば、図示しない内燃機関の駆動軸に接続され、駆動軸とともに回転可能である。つまり、入力軸61には、駆動軸からトルクが入力される。
【0017】
ハウジング12は、車両のエンジンルームに固定される固定体11の内周壁と入力軸61の外周壁との間に設けられる。固定体11と入力軸61との間にはボールベアリングが設けられており、軸受されている。ハウジング12は、ハウジング内筒部121、ハウジング板部122、ハウジング外筒部123、ハウジング小板部124、ハウジング段差面125、ハウジング小内筒部126、ハウジング側スプライン溝部127等を有している。
【0018】
ハウジング内筒部121は、略円筒状に形成されている。ハウジング小板部124は、ハウジング内筒部121の端部から径方向外側へ延びるよう環状の板状に形成されている。ハウジング小内筒部126は、ハウジング小板部124の外縁部からハウジング内筒部121とは反対側へ延びるよう略円筒状に形成されている。ハウジング板部122は、ハウジング小内筒部126のハウジング小板部124とは反対側の端部から径方向外側へ延びるよう環状の板状に形成されている。ハウジング外筒部123は、ハウジング板部122の外縁部からハウジング小内筒部126およびハウジング内筒部121と同じ側へ延びるよう略円筒状に形成されている。ここで、ハウジング内筒部121とハウジング小板部124とハウジング小内筒部126とハウジング板部122とハウジング外筒部123とは、例えば金属により一体に形成されている。
【0019】
上述のように、ハウジング12は、全体としては、中空、かつ、扁平形状に形成されている。
【0020】
ハウジング段差面125は、ハウジング小板部124のハウジング小内筒部126とは反対側の面において円環の平面状に形成されている。ハウジング側スプライン溝部127は、ハウジング内筒部121の軸方向に延びるようハウジング内筒部121の外周壁に形成されている。ハウジング側スプライン溝部127は、ハウジング内筒部121の周方向に複数形成されている。
【0021】
ハウジング12は、外壁の一部が固定体11の壁面の一部に当接するよう、図示しないボルト等により固定体11に固定される(
図2参照)。ここで、ハウジング12は、固定体11および入力軸61に対し同軸に設けられる。また、ハウジング内筒部121の内周壁と入力軸61の外周壁との間には、略円筒状の空間が形成される。
【0022】
ハウジング12は、収容空間120を有している。収容空間120は、ハウジング内筒部121とハウジング小板部124とハウジング小内筒部126とハウジング板部122とハウジング外筒部123との間に形成されている。
【0023】
モータ20は、収容空間120に収容されている。モータ20は、ステータ21、ロータ23等を有している。ステータ21は、ステータコア211、コイル22を有している。ステータコア211は、例えば積層鋼板により略円環状に形成され、ハウジング外筒部123の内側に固定される。コイル22は、ステータコア211の複数の突極のそれぞれに設けられている。
【0024】
モータ20は、マグネット230を有している。ロータ23は、例えば鉄系の金属により略円環状に形成されている。より詳細には、ロータ23は、例えば磁気特性が比較的高い純鉄により形成されている。
【0025】
マグネット230は、ロータ23の外周壁に設けられている。マグネット230は、永久磁石であって、磁極が交互になるようロータ23の周方向に等間隔で複数設けられている。
【0026】
電動クラッチアクチュエータ10は、ベアリング151を備えている。ベアリング151は、ハウジング小内筒部126の外周壁に設けられている。ベアリング151の径方向外側には、後述するサンギヤ31が設けられている。ロータ23は、サンギヤ31の径方向外側においてサンギヤ31に対し相対回転不能に設けられている。ベアリング151は、収容空間120に設けられ、サンギヤ31、ロータ23およびマグネット230を回転可能に支持している。
【0027】
ここで、ロータ23は、ステータ21のステータコア211の径方向内側において、ステータ21に対し相対回転可能に設けられている。モータ20は、インナロータタイプのブラシレス直流モータである。
【0028】
ECU90は、コイル22に供給する電力を制御することにより、モータ20の作動を制御可能である。コイル22に電力が供給されると、ステータコア211に回転磁界が生じ、ロータ23が回転する。これにより、ロータ23からトルクが出力される。このように、モータ20は、ステータ21、および、ステータ21に対し相対回転可能に設けられたロータ23を有し、電力の供給によりロータ23からトルクを出力可能である。
【0029】
本実施形態では、クラッチ装置1は、回転角センサ104を備えている。回転角センサ104は、収容空間120に設けられている。
【0030】
回転角センサ104は、ロータ23と一体に回転するセンサマグネットから発生する磁束を検出し、検出した磁束に応じた信号をECU90に出力する。これにより、ECU90は、回転角センサ104からの信号に基づき、ロータ23の回転角および回転数等を検出することができる。また、ECU90は、ロータ23の回転角および回転数等に基づき、ハウジング12および後述する従動カム50に対する駆動カム40の相対回転角度、ハウジング12および駆動カム40に対する従動カム50および状態変更部80の軸方向の相対位置等を算出することができる。
【0031】
減速機30は、収容空間120に収容されている。減速機30は、サンギヤ31、プラネタリギヤ32、キャリア33、第1リングギヤ34、第2リングギヤ35等を有している。
【0032】
サンギヤ31は、ロータ23と同軸かつ一体回転可能に設けられている。つまり、ロータ23とサンギヤ31とは、別体に形成され、一体に回転可能なよう同軸に配置されている。
【0033】
より詳細には、サンギヤ31は、サンギヤ本体310、サンギヤ歯部311、ギヤ側スプライン溝部315を有している。サンギヤ本体310は、例えば金属により略円筒状に形成されている。ギヤ側スプライン溝部315は、サンギヤ本体310の一方の端部側の外周壁において軸方向に延びるよう形成されている。ギヤ側スプライン溝部315は、サンギヤ本体310の周方向に複数形成されている。サンギヤ本体310は、一方の端部側がベアリング151によって軸受けされている。
【0034】
ロータ23の内周壁には、ギヤ側スプライン溝部315に対応するスプライン溝部が形成されている。ロータ23は、サンギヤ31の径方向外側に位置し、スプライン溝部がギヤ側スプライン溝部315とスプライン結合するよう設けられている。これにより、ロータ23は、サンギヤ31に対し、相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能である。
【0035】
サンギヤ歯部311は、サンギヤ31の他方の端部側の外周壁に形成されている外歯である。ロータ23と一体回転するサンギヤ31には、モータ20のトルクが入力される。ここで、サンギヤ31は、減速機30の入力部といえる。本実施形態では、サンギヤ31は、例えば鉄鋼材により形成されている。
【0036】
プラネタリギヤ32は、サンギヤ31の周方向に沿って複数設けられ、サンギヤ31に噛み合いつつ自転しながらサンギヤ31の周方向に公転可能である。より詳細には、プラネタリギヤ32は、例えば金属により略円筒状に形成され、サンギヤ31の径方向外側においてサンギヤ31の周方向に等間隔で4つ設けられている。プラネタリギヤ32は、プラネタリギヤ歯部321を有している。プラネタリギヤ歯部321は、サンギヤ歯部311に噛み合い可能なようプラネタリギヤ32の外周壁に形成されている外歯である。
【0037】
キャリア33は、プラネタリギヤ32を回転可能に支持し、サンギヤ31に対し相対回転可能である。より詳細には、キャリア33は、サンギヤ31に対し径方向外側に設けられている。キャリア33は、ロータ23およびサンギヤ31に対し相対回転可能である。
【0038】
キャリア33は、キャリア本体330、ピン331を有している。キャリア本体330は、例えば金属により略円環状に形成されている。キャリア本体330は、径方向においてはサンギヤ31とコイル22との間に位置し、軸方向においてはロータ23およびマグネット230とプラネタリギヤ32との間に位置している。本実施形態では、キャリア本体330は、ステータ21の径方向内側に設けられている。なお、プラネタリギヤ32は、キャリア本体330およびコイル22に対しハウジング板部122とは反対側に位置している。
【0039】
ピン331は、接続部335、支持部336を有している。接続部335および支持部336は、それぞれ、例えば金属により円柱状に形成されている。接続部335と支持部336とは、それぞれの軸がずれて平行な状態となるよう一体に形成されている。そのため、接続部335および支持部336は、それぞれの軸を含む仮想平面による断面形状がクランク形状となる(
図1参照)。
【0040】
ピン331は、一方の端部側の部位である接続部335がキャリア本体330に接続するようにしてキャリア本体330に固定されている。ここで、支持部336は、キャリア本体330のロータ23およびマグネット230とは反対側において、接続部335の軸に対し軸がキャリア本体330の径方向外側に位置するよう設けられている(
図1参照)。ピン331は、プラネタリギヤ32の数に対応し、合計4つ設けられている。
【0041】
減速機30は、プラネタリギヤベアリング36を有している。プラネタリギヤベアリング36は、例えばニードルベアリングであり、ピン331の支持部336の外周壁とプラネタリギヤ32の内周壁との間に設けられている。これにより、プラネタリギヤ32は、プラネタリギヤベアリング36を介してピン331の支持部336により回転可能に支持されている。
【0042】
第1リングギヤ34は、プラネタリギヤ32に噛み合い可能な歯部である第1リングギヤ歯部341を有し、ハウジング12に固定されている。より詳細には、第1リングギヤ34は、例えば金属により略円環状に形成されている。第1リングギヤ34は、コイル22に対しハウジング板部122とは反対側において、外縁部がハウジング外筒部123の内周壁に嵌合するようハウジング12に固定されている。そのため、第1リングギヤ34は、ハウジング12に対し相対回転不能である。
【0043】
ここで、第1リングギヤ34は、ハウジング12、ロータ23、サンギヤ31に対し同軸に設けられている。第1リングギヤ歯部341は、プラネタリギヤ32のプラネタリギヤ歯部321の軸方向の一方の端部側に噛み合い可能なよう第1リングギヤ34の内縁部に形成されている内歯である。
【0044】
第2リングギヤ35は、プラネタリギヤ32に噛み合い可能な歯部であり第1リングギヤ歯部341とは歯数の異なる第2リングギヤ歯部351を有し、後述する駆動カム40と一体回転可能に設けられている。より詳細には、第2リングギヤ35は、例えば金属により略円環状に形成されている。第2リングギヤ35は、ギヤ内筒部355、ギヤ板部356、ギヤ外筒部357を有している。ギヤ内筒部355は、略円筒状に形成されている。ギヤ板部356は、ギヤ内筒部355の一端から径方向外側へ延びるよう環状の板状に形成されている。ギヤ外筒部357は、ギヤ板部356の外縁部からギヤ内筒部355とは反対側へ延びるよう略円筒状に形成されている。
【0045】
ここで、第2リングギヤ35は、ハウジング12、ロータ23、サンギヤ31に対し同軸に設けられている。第2リングギヤ歯部351は、プラネタリギヤ32のプラネタリギヤ歯部321の軸方向の他方の端部側に噛み合い可能なようギヤ外筒部357の内周壁に形成されている内歯である。本実施形態では、第2リングギヤ歯部351の歯数は、第1リングギヤ歯部341の歯数よりも多い。より詳細には、第2リングギヤ歯部351の歯数は、第1リングギヤ歯部341の歯数よりも、プラネタリギヤ32の個数である4に整数を乗じた数分だけ多い。
【0046】
また、プラネタリギヤ32は、同一部位において2つの異なる諸元をもつ第1リングギヤ34および第2リングギヤ35と干渉なく正常に噛み合う必要があるため、第1リングギヤ34および第2リングギヤ35の一方もしくは両方を転位させて各歯車対の中心距離を一定にする設計としている。
【0047】
上記構成により、モータ20のロータ23が回転すると、サンギヤ31が回転し、プラネタリギヤ32のプラネタリギヤ歯部321がサンギヤ歯部311と第1リングギヤ歯部341および第2リングギヤ歯部351とに噛み合いつつ自転しながらサンギヤ31の周方向に公転する。ここで、第2リングギヤ歯部351の歯数が第1リングギヤ歯部341の歯数より多いため、第2リングギヤ35は、第1リングギヤ34に対し相対回転する。そのため、第1リングギヤ34と第2リングギヤ35との間で第1リングギヤ歯部341と第2リングギヤ歯部351との歯数差に応じた微小差回転が第2リングギヤ35の回転として出力される。これにより、モータ20からのトルクは、減速機30により減速されて、第2リングギヤ35から出力される。このように、減速機30は、モータ20のトルクを減速して出力可能である。本実施形態では、減速機30は、3k型の不思議遊星歯車減速機を構成している。
【0048】
第2リングギヤ35は、後述する駆動カム40とは別体に形成され、駆動カム40と一体回転可能に設けられている。第2リングギヤ35は、モータ20からのトルクを減速して駆動カム40に出力する。ここで、第2リングギヤ35は、減速機30の出力部といえる。
【0049】
ボールカム2は、回転部としての駆動カム40、並進部としての従動カム50、転動体であるボール3を有している。
【0050】
駆動カム40は、駆動カム本体41、駆動カム内筒部42、駆動カム板部43、駆動カム外筒部44、駆動カム溝400等を有している。駆動カム本体41は、略円環の板状に形成されている。駆動カム内筒部42は、駆動カム本体41の外縁部から軸方向に延びるよう略円筒状に形成されている。駆動カム板部43は、駆動カム内筒部42の駆動カム本体41とは反対側の端部から径方向外側へ延びるよう略円環の板状に形成されている。駆動カム板部43は、回転軸に略直交して設けられている。駆動カム外筒部44は、駆動カム板部43の外縁部から駆動カム内筒部42とは反対側へ延びるよう略円筒状に形成されている。ここで、駆動カム本体41と駆動カム内筒部42と駆動カム板部43と駆動カム外筒部44とは、例えば金属により一体に形成されている。
【0051】
駆動カム溝400は、駆動カム本体41の駆動カム内筒部42側の面から凹みつつ周方向に延びるよう形成されている。駆動カム溝400は、例えば駆動カム本体41の周方向に等間隔で5つ形成されている。駆動カム溝400は、駆動カム本体41の周方向における一端から他端に向かうに従い深さが浅くなるよう駆動カム本体41の駆動カム内筒部42側の面に対し溝底が傾斜して形成されている。
【0052】
駆動カム40は、駆動カム本体41がハウジング内筒部121の外周壁とサンギヤ31の内周壁との間に位置し、駆動カム板部43がプラネタリギヤ32に対しキャリア本体330とは反対側に位置するようハウジング内筒部121とハウジング外筒部123との間に設けられている。駆動カム40は、ハウジング12に対し相対回転可能である。
【0053】
第2リングギヤ35は、ギヤ内筒部355の内周壁が駆動カム外筒部44の外周壁に嵌合するよう駆動カム40と一体に設けられている。第2リングギヤ35は、駆動カム40に対し相対回転不能である。すなわち、第2リングギヤ35は、駆動カム40と一体回転可能に設けられている。そのため、モータ20からのトルクが、減速機30により減速されて、第2リングギヤ35から出力されると、駆動カム40は、ハウジング12に対し相対回転する。すなわち、駆動カム40は、減速機30から出力されたトルクが入力されるとハウジング12に対し相対回転する。
【0054】
従動カム50は、従動カム本体51、従動カム筒部52、カム側スプライン溝部54、従動カム溝500等を有している。従動カム本体51は、略円環の板状に形成されている。従動カム筒部52は、従動カム本体51の外縁部から軸方向に延びるよう略円筒状に形成されている。ここで、従動カム本体51と従動カム筒部52とは、例えば金属により一体に形成されている。
【0055】
カム側スプライン溝部54は、従動カム本体51の内周壁において軸方向に延びるよう形成されている。カム側スプライン溝部54は、従動カム本体51の周方向に複数形成されている。
【0056】
従動カム50は、従動カム本体51が駆動カム本体41に対しハウジング段差面125とは反対側かつ駆動カム内筒部42および駆動カム板部43の径方向内側に位置し、カム側スプライン溝部54がハウジング側スプライン溝部127とスプライン結合するよう設けられている。これにより、従動カム50は、ハウジング12に対し、相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能である。
【0057】
従動カム溝500は、従動カム本体51の駆動カム本体41側の面から凹みつつ周方向に延びるよう形成されている。従動カム溝500は、例えば従動カム本体51の周方向に等間隔で5つ形成されている。従動カム溝500は、従動カム本体51の周方向における一端から他端に向かうに従い深さが浅くなるよう従動カム本体51の駆動カム本体41側の面に対し溝底が傾斜して形成されている。
【0058】
なお、駆動カム溝400と従動カム溝500とは、それぞれ、駆動カム本体41の従動カム本体51側の面側、または、従動カム本体51の駆動カム本体41側の面側から見たとき、同一の形状となるよう形成されている。
【0059】
ボール3は、例えば金属により球状に形成されている。ボール3は、5つの駆動カム溝400と5つの従動カム溝500との間のそれぞれにおいて転動可能に設けられている。すなわち、ボール3は、合計5つ設けられている。
【0060】
このように、駆動カム40と従動カム50とボール3とは、転動体カムとしてのボールカム2を構成している。駆動カム40がハウジング12および従動カム50に対し相対回転すると、ボール3は、駆動カム溝400および従動カム溝500においてそれぞれの溝底に沿って転動する。
【0061】
ボール3は、第1リングギヤ34および第2リングギヤ35の径方向内側に設けられている。より詳細には、ボール3は、大部分が、第1リングギヤ34および第2リングギヤ35の軸方向の範囲内に設けられている。
【0062】
上述のように、駆動カム溝400は、一端から他端にかけて溝底が傾斜するよう形成されている。また、従動カム溝500は、一端から他端にかけて溝底が傾斜するよう形成されている。そのため、減速機30から出力されるトルクにより駆動カム40がハウジング12および従動カム50に対し相対回転すると、ボール3が駆動カム溝400および従動カム溝500において転動し、従動カム50は、駆動カム40およびハウジング12に対し軸方向に相対移動、すなわち、ストロークする。
【0063】
このように、従動カム50は、駆動カム40がハウジング12に対し相対回転すると駆動カム40およびハウジング12に対し軸方向に相対移動する。ここで、従動カム50は、カム側スプライン溝部54がハウジング側スプライン溝部127とスプライン結合しているため、ハウジング12に対し相対回転しない。また、駆動カム40は、ハウジング12に対し相対回転するものの、軸方向には相対移動しない。
【0064】
本実施形態では、クラッチ装置1は、リターンスプリング55、リターンスプリングリテーナ56、Cリング57を備えている。リターンスプリング55は、例えばコイルスプリングであり、従動カム本体51の駆動カム本体41とは反対側において、ハウジング内筒部121のハウジング小板部124とは反対側の端部の径方向外側に設けられている。リターンスプリング55は、一端が従動カム本体51の駆動カム本体41とは反対側の面に当接している。
【0065】
リターンスプリングリテーナ56は、例えば金属により略円環状に形成され、ハウジング内筒部121の径方向外側においてリターンスプリング55の他端に当接している。Cリング57は、リターンスプリングリテーナ56の内縁部の従動カム本体51とは反対側の面を係止するようハウジング内筒部121の外周壁に固定されている。
【0066】
リターンスプリング55は、軸方向に伸びる力を有している。そのため、従動カム50は、駆動カム40との間にボール3を挟んだ状態で、リターンスプリング55により駆動カム本体41側へ付勢されている。
【0067】
図2に示すように、出力軸62は、軸部621、板部622、筒部623、摩擦板624を有している。軸部621は、略円筒状に形成されている。板部622は、軸部621の一端から径方向外側へ環状の板状に延びるよう軸部621と一体に形成されている。筒部623は、板部622の外縁部から軸部621とは反対側へ略円筒状に延びるよう板部622と一体に形成されている。摩擦板624は、略円環の板状に形成され、板部622の筒部623側の端面に設けられている。ここで、摩擦板624は、板部622に対し相対回転不能である。筒部623の内側には、クラッチ空間620が形成されている。
【0068】
入力軸61の端部は、ハウジング内筒部121の内側を通り、従動カム50に対し駆動カム40とは反対側に位置している。出力軸62は、従動カム50に対し駆動カム40とは反対側において、入力軸61と同軸に設けられる。軸部621の内周壁と入力軸61の端部の外周壁との間には、ボールベアリング142が設けられる。これにより、出力軸62は、ボールベアリング142を介して入力軸61により軸受けされる。入力軸61および出力軸62は、ハウジング12に対し相対回転可能である。
【0069】
クラッチ70は、クラッチ空間620において入力軸61と出力軸62との間に設けられている。クラッチ70は、内側摩擦板71、外側摩擦板72、係止部701を有している。内側摩擦板71は、略円環の板状に形成され、入力軸61と出力軸62の筒部623との間において、軸方向に並ぶよう複数設けられている。内側摩擦板71は、内縁部が入力軸61の外周壁とスプライン結合するよう設けられている。そのため、内側摩擦板71は、入力軸61に対し相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能である。
【0070】
外側摩擦板72は、略円環の板状に形成され、入力軸61と出力軸62の筒部623との間において、軸方向に並ぶよう複数設けられている。ここで、内側摩擦板71と外側摩擦板72とは、入力軸61の軸方向において交互に配置されている。外側摩擦板72は、外縁部が出力軸62の筒部623の内周壁とスプライン結合するよう設けられている。そのため、外側摩擦板72は、出力軸62に対し相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能である。複数の外側摩擦板72のうち最も摩擦板624側に位置する外側摩擦板72は、摩擦板624に接触可能である。
【0071】
係止部701は、略円環状に形成され、外縁部が出力軸62の筒部623の内周壁に嵌合するよう設けられる。係止部701は、複数の外側摩擦板72のうち最も従動カム50側に位置する外側摩擦板72の外縁部を係止可能である。そのため、複数の外側摩擦板72および複数の内側摩擦板71は、筒部623の内側からの脱落が抑制される。なお、係止部701と摩擦板624との距離は、複数の外側摩擦板72および複数の内側摩擦板71の板厚の合計よりも大きい。
【0072】
複数の内側摩擦板71および複数の外側摩擦板72が互いに接触、つまり係合した状態である係合状態では、内側摩擦板71と外側摩擦板72との間に摩擦力が生じ、当該摩擦力の大きさに応じて内側摩擦板71と外側摩擦板72との相対回転が規制される。一方、複数の内側摩擦板71および複数の外側摩擦板72が互いに離間、つまり係合していない状態である非係合状態では、内側摩擦板71と外側摩擦板72との間に摩擦力は生じず、内側摩擦板71と外側摩擦板72との相対回転は規制されない。
【0073】
クラッチ70が係合状態のとき、入力軸61に入力されたトルクは、クラッチ70を経由して出力軸62に伝達される。一方、クラッチ70が非係合状態のとき、入力軸61に入力されたトルクは、出力軸62に伝達されない。
【0074】
このように、クラッチ70は、入力軸61と出力軸62との間でトルクを伝達する。クラッチ70は、係合している係合状態のとき、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達を許容し、係合していない非係合状態のとき、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達を遮断する。本実施形態では、クラッチ装置1は、通常、非係合状態となる、所謂常開式(ノーマリーオープンタイプ)のクラッチ装置である。
【0075】
図1に示すように、状態変更部80は、弾性変形部としての皿ばね81、皿ばねリテーナ82、スラストベアリング83を有している。皿ばねリテーナ82は、リテーナ筒部821、リテーナフランジ部822を有している。リテーナ筒部821は、略円筒状に形成されている。リテーナフランジ部822は、リテーナ筒部821の一端から径方向外側へ延びるよう環状の板状に形成されている。リテーナ筒部821とリテーナフランジ部822とは、例えば金属により一体に形成されている。皿ばねリテーナ82は、リテーナ筒部821の他端の外周壁が従動カム筒部52の内周壁に嵌合するよう従動カム50に固定されている。
【0076】
皿ばね81は、内縁部がリテーナ筒部821の径方向外側において、従動カム筒部52とリテーナフランジ部822との間に位置するよう設けられている。皿ばね81は、軸方向に弾性変形可能である。スラストベアリング83は、従動カム筒部52と皿ばね81との間に設けられている。
【0077】
皿ばねリテーナ82は、リテーナフランジ部822が皿ばね81の軸方向の一端すなわち内縁部を係止可能なよう従動カム50に固定されている。そのため、皿ばね81およびスラストベアリング83は、リテーナフランジ部822により、皿ばねリテーナ82からの脱落が抑制されている。
【0078】
ボール3が駆動カム溝400および従動カム溝500の一端に位置するとき、駆動カム40と従動カム50との距離は、比較的小さく、皿ばね81の軸方向の他端すなわち外縁部とクラッチ70との間には、隙間Sp1が形成されている(
図1参照)。そのため、クラッチ70は非係合状態であり、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達は遮断されている。
【0079】
ここで、ECU90の制御によりモータ20のコイル22に電力が供給されると、モータ20が回転し、減速機30からトルクが出力され、駆動カム40がハウジング12に対し相対回転する。これにより、ボール3が駆動カム溝400および従動カム溝500の一端から他端側へ転動する。そのため、従動カム50は、リターンスプリング55を圧縮しながらハウジング12に対し軸方向に相対移動、すなわち、クラッチ70側へ移動する。これにより、皿ばね81は、クラッチ70側へ移動する。
【0080】
従動カム50の軸方向の移動により皿ばね81がクラッチ70側へ移動すると、隙間Sp1が小さくなり、皿ばね81の軸方向の他端は、クラッチ70の外側摩擦板72に接触する。皿ばね81がクラッチ70に接触した後さらに従動カム50が軸方向に移動すると、皿ばね81は、軸方向に弾性変形しつつ、外側摩擦板72を摩擦板624側へ押す。これにより、複数の内側摩擦板71および複数の外側摩擦板72が互いに係合し、クラッチ70が係合状態となる。そのため、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達が許容される。
【0081】
このとき、皿ばね81は、スラストベアリング83に軸受けされながら従動カム50および皿ばねリテーナ82に対し相対回転する。このように、スラストベアリング83は、皿ばね81からスラスト方向の荷重を受けつつ、皿ばね81を軸受けする。
【0082】
ECU90は、クラッチ伝達トルクがクラッチ要求トルク容量に達すると、モータ20の回転を停止させる。これにより、クラッチ70は、クラッチ伝達トルクがクラッチ要求トルク容量に維持された係合保持状態となる。このように、状態変更部80の皿ばね81は、従動カム50から軸方向の力を受け、ハウジング12および駆動カム40に対する従動カム50の軸方向の相対位置に応じてクラッチ70の状態を係合状態または非係合状態に変更可能である。
【0083】
出力軸62は、軸部621の板部622とは反対側の端部が、図示しない変速機の入力軸に接続され、当該入力軸とともに回転可能である。つまり、変速機の入力軸には、出力軸62から出力されたトルクが入力される。変速機に入力されたトルクは、変速機で変速され、駆動トルクとして車両の駆動輪に出力される。これにより、車両が走行する。
【0084】
次に、本実施形態の減速機30が採用する3k型の不思議遊星歯車減速機について説明する。
【0085】
本実施形態のような電動のクラッチ装置では、クラッチとアクチュエータとの初期隙間(隙間Sp1に相当)を詰める初期応答に要する時間を短くすることが求められる。初期応答を速くするには、回転運動方程式から、入力軸周りの慣性モーメントを小さくすればよいことがわかる。入力軸が中実円筒部材の場合の慣性モーメントは、長さと密度一定で比較したとき、外径の4乗に比例して大きくなる。本実施形態のクラッチ装置1では、ここでいう「入力軸」に対応するサンギヤ31は中空円筒部材であるが、この傾向は変わらない。
【0086】
また、電動のクラッチ装置では必要荷重が数千~10数千Nと非常に大きく、高応答と高荷重を両立させるためには、減速機の減速比を大きくとる必要がある。本実施形態では、減速機30は、サンギヤ31を入力要素、第2リングギヤ35を出力要素、第1リングギヤ34を固定要素とする3k型の不思議遊星歯車減速機である。そのため、サンギヤ31周りの慣性モーメントを小さくできるとともに、減速機30の減速比を大きくすることができる。したがって、クラッチ装置1において高応答と高荷重を両立させることができる。
【0087】
また、3k型の場合、キャリア33は、プラネタリギヤ32を、サンギヤ31と第1リングギヤ34および第2リングギヤ35とに対して適正な位置に保持する機能のみを有するため、プラネタリギヤ32の回転支持軸(すなわちピン331)とキャリア本体330との間に働く曲げモーメントは小さい。
【0088】
そのため、本実施形態では、減速機30を高応答、高荷重の3k型の不思議遊星歯車減速機とすることにより、クラッチ装置1の応答性および耐久性を損なうことなく、キャリア本体330およびピン331によって、プラネタリギヤ32を軸方向の一方側から支持する構成、すなわち片持ち支持とすることができる。
【0089】
また本実施形態では、状態変更部80が弾性変形部としての皿ばね81を有している。皿ばね81にてクラッチ70を押す構成とすることで、剛体でクラッチ70を押す構成とするよりも、合成ばね定数を低減できるため、アクチュエータ起因の従動カム50のストロークのばらつきに対する荷重のばらつきを低減することができる。これにより、従動カム50のストロークのばらつきに対する荷重のばらつきを低減でき、クラッチ70に狙い荷重を容易に作用させることができる。
【0090】
クラッチ装置1は、オイル供給部5を備えている。オイル供給部5は、一端がクラッチ空間620に露出するよう、出力軸62において通路状に形成されている。オイル供給部5の他端は、図示しないオイル供給源に接続される。これにより、オイル供給部5の一端からクラッチ空間620のクラッチ70にオイルが供給される。
【0091】
ECU90は、オイル供給部5からクラッチ70に供給するオイルの量を制御する。クラッチ70に供給されたオイルは、クラッチ70を潤滑および冷却可能である。すなわち、本実施形態のクラッチ70は、湿式クラッチであり、オイルにより冷却され得る。
【0092】
本実施形態では、駆動カム40および第2リングギヤ35とハウジング12との間に収容空間120を形成している。ここで、収容空間120は、駆動カム40および第2リングギヤ35に対しクラッチ70とは反対側においてハウジング12の内側に形成されている。モータ20および減速機30は、収容空間120に設けられている。クラッチ70は、駆動カム40に対し収容空間120とは反対側の空間であるクラッチ空間620に設けられている。
【0093】
クラッチ装置1は、スラストベアリング161、スラストベアリングワッシャ162を備えている。スラストベアリングワッシャ162は、例えば金属により略円環の板状に形成され、一方の面がハウジング段差面125に当接するよう設けられている。スラストベアリング161は、スラストベアリングワッシャ162の他方の面と駆動カム本体41の従動カム50とは反対側の面との間に設けられている。スラストベアリング161は、駆動カム40からスラスト方向の荷重を受けつつ駆動カム40を軸受けする。本実施形態では、クラッチ70側から従動カム50を経由して駆動カム40に作用するスラスト方向の荷重は、スラストベアリング161およびスラストベアリングワッシャ162を経由してハウジング段差面125に作用する。そのため、ハウジング段差面125により駆動カム40を安定して軸受けできる。
【0094】
クラッチ装置1は、内側シール部材401、外側シール部材402を備えている。内側シール部材401、外側シール部材402は、例えばゴム等の弾性材料および金属環により環状に形成されたオイルシールである。内側シール部材401の内径および外径は、外側シール部材402の内径および外径より小さい。また、外側シール部材402は、内側シール部材401の軸方向から見たとき、内側シール部材401の径方向外側に位置するよう設けられている。
【0095】
内側シール部材401は、径方向においてはハウジング内筒部121とスラストベアリング161との間に位置し、軸方向においてはスラストベアリングワッシャ162と駆動カム本体41との間に位置するよう設けられている。内側シール部材401は、ハウジング内筒部121に固定され、駆動カム40に対し相対回転可能である。
【0096】
外側シール部材402は、第2リングギヤ35のギヤ内筒部355とハウジング外筒部123のクラッチ70側の端部との間に設けられている。外側シール部材402は、ハウジング外筒部123に固定され、第2リングギヤ35に対し相対回転可能である。
【0097】
駆動カム本体41のスラストベアリングワッシャ162側の面は、内側シール部材401のシールリップ部と摺動可能である。すなわち、内側シール部材401は、駆動カム40に接触するよう設けられている。内側シール部材401は、駆動カム本体41とスラストベアリングワッシャ162との間を気密または液密にシールしている。
【0098】
第2リングギヤ35のギヤ内筒部355の外周壁は、外側シール部材402の内縁部であるシールリップ部と摺動可能である。すなわち、外側シール部材402は、駆動カム40の径方向外側において、駆動カム40と一体回転する第2リングギヤ35に接触するよう設けられている。外側シール部材402は、ギヤ内筒部355の外周壁とハウジング外筒部123の内周壁との間を気密または液密にシールしている。
【0099】
上述のように設けられた内側シール部材401、および、外側シール部材402により、モータ20および減速機30を収容する収容空間120と、クラッチ70が設けられたクラッチ空間620との間を気密または液密に保持可能である。これにより、例えばクラッチ70において摩耗粉等の異物が発生したとしても、当該異物がクラッチ空間620から収容空間120へ侵入するのを抑制できる。そのため、異物によるモータ20または減速機30の作動不良を抑制できる。
【0100】
本実施形態では、内側シール部材401、外側シール部材402により、収容空間120とクラッチ空間620との間が気密または液密に保持されているため、クラッチ70に供給されたオイル中に摩耗粉等の異物が含まれていても、当該異物を含むオイルがクラッチ空間620から収容空間120へ流れ込むのを抑制できる。
【0101】
本実施形態では、ハウジング12は、外側シール部材402の径方向外側に対応する部位から内側シール部材401の径方向内側に対応する部位まで閉じた形状となるよう形成されている。
【0102】
本実施形態では、ハウジング12との間で収容空間120を形成する駆動カム40および第2リングギヤ35は、ハウジング12に対し相対回転するものの、ハウジング12に対し軸方向には相対移動しない。そのため、クラッチ装置1の作動時、収容空間120の容積の変化を抑制でき、収容空間120に負圧が発生するのを抑制できる。これにより、異物を含むオイル等がクラッチ空間620側から収容空間120へ吸い込まれるのを抑制できる。
【0103】
また、駆動カム40の内縁部に接触する内側シール部材401は、駆動カム40と周方向において摺動するものの、軸方向においては摺動しない。また、第2リングギヤ35のギヤ内筒部355の外周壁に接触する外側シール部材402は、第2リングギヤ35と周方向において摺動するものの、軸方向においては摺動しない。
【0104】
図1に示すように、駆動カム本体41は、駆動カム外筒部44よりもクラッチ70とは反対側に位置している。すなわち、駆動カム40は、軸方向に屈曲することで、駆動カム40の内縁部である駆動カム本体41と、駆動カム40の外縁部である駆動カム外筒部44とが軸方向において異なる位置となるよう形成されている。
【0105】
従動カム本体51は、駆動カム本体41のクラッチ70側において駆動カム内筒部42の径方向内側に位置するよう設けられている。すなわち、駆動カム40と従動カム50とは、軸方向において、入れ子状に設けられている。
【0106】
より詳細には、従動カム本体51は、第2リングギヤ35のギヤ板部356、ギヤ外筒部357、駆動カム板部43および駆動カム内筒部42の径方向内側に位置している。さらに、サンギヤ31のサンギヤ歯部311、キャリア33およびプラネタリギヤ32は、駆動カム本体41および従動カム本体51の径方向外側に位置している。これにより、減速機30およびボールカム2を含むクラッチ装置1の軸方向の体格を大幅に小さくできる。
【0107】
また、本実施形態では、
図1に示すように、駆動カム本体41の軸方向において、駆動カム本体41とサンギヤ31とキャリア33とコイル22とは、一部が重複するよう配置されている。言い換えると、コイル22は、一部が、駆動カム本体41、サンギヤ31およびキャリア33の軸方向の一部の径方向外側に位置するよう設けられている。これにより、クラッチ装置1の軸方向の体格をさらに小さくできる。
【0108】
ところで、本実施形態では、マグネット230を有するロータ23と、減速機30とが近接配置されている。なおここでいう「近接配置」とは、マグネット230と減速機30を構成する部品との間にハウジング等の他部材が配置されずに対向しており、減速機30が、ロータマグネットの磁気的吸引力が作用する範囲内に配置されていることとする。また、マグネット230と不思議遊星歯車機構である減速機30とが軸方向に直列されている、と捉えることもできる。
【0109】
ここで、マグネット230に対向するプラネタリギヤ32やキャリア33が磁性体で形成されている場合、マグネット230の磁力に起因した軸方向吸引力により、回転摺動損失が増大するため、伝達効率が低下する虞がある。また、減速機30とロータ23との間に隔壁を設けたり、マグネット230の磁力が作用しない程度離間させたりする場合、軸方向体格が大型化する。
【0110】
そこで本実施形態では、減速機30を構成する部材のうち、マグネット230を軸方向に投影したロータマグネット投影領域内にある部材の少なくとも一部を非磁性材で形成する。本実施形態では、ロータ23と対向しており、かつ、ロータマグネット投影領域内にあるキャリア本体330およびピン331を非磁性材とする。すなわち、例えば、サンギヤ31、プラネタリギヤ32およびリングギヤ34、35は磁性材で形成し、キャリア33を非磁性材で形成する、といった具合に、減速機30を構成する部品において、磁性材で形成されるものと、非磁性材で形成されるものとが混在している。
【0111】
キャリア本体330およびピン331を非磁性材とすることで、モータ20の磁力が距離によらず作用しないため、減速効率の低下を抑制することができる。また、マグネット230と、減速機30(具体的には、キャリア33)との軸方向隙間を短縮することができる。また、ロータマグネット投影領域にて、ロータ23と近接配置可能となるため、径方向の設計自由度が増し、クラッチ装置1を小型化することができる。
【0112】
以上説明したように、本実施形態のクラッチ装置1は、ハウジング12と、モータ20と、減速機30と、ボールカム2と、を備える。モータ20は、コイル22を有しハウジング12に固定されるステータ21、および、マグネット230が設けられコイル22への通電により回転するロータ23を有する。減速機30は、モータ20のトルクを減速して出力可能である。ボールカム2は、減速機30からトルクが入力されるとハウジング12に対し相対回転する駆動カム40、および、駆動カム40がハウジング12に対し相対回転するとハウジング12に対して軸方向に相対移動する従動カム50を有する。
【0113】
減速機30は、サンギヤ31、複数のプラネタリギヤ32、および、リングギヤ34、35を有する遊星歯車機構である。サンギヤ31は、モータ20からのトルクが入力される。プラネタリギヤ32は、サンギヤ31に噛み合いつつ自転しながらサンギヤの周方向に公転可能である。リングギヤ34、35は、プラネタリギヤ32と噛み合い可能である。本実施形態では、リングギヤには、プラネタリギヤ32の軸方向の一方側に噛み合う第1リングギヤ34、および、第1リングギヤ34とは歯数が異なっており、プラネタリギヤ32の軸方向の他方側に噛み合う第2リングギヤ35を含んでおり、減速機30は、不思議遊星歯車機構を構成している。
【0114】
本実施形態では、減速機30を構成する部品であって、マグネット230を軸方向に投影したマグネット投影領域に位置している投影領域部品の少なくとも1つは、非磁性材により形成されている。投影領域部品の少なくとも1つを非磁性材とすることで、減速機30における減速効率の低下を抑制することができる。また、マグネット230と投影領域部品との軸方向隙間を短縮可能であるとともに、径方向の設計自由度が高まるため、クラッチ装置1の小型化に寄与する。
【0115】
減速機30は、プラネタリギヤ32を回転可能に支持するプラネタリギヤベアリング36、および、キャリア33を有する。キャリア33は、プラネタリギヤベアリング36を保持するピン331、および、ピンを保持するキャリア本体330を有する。プラネタリギヤ32、プラネタリギヤベアリング36、ピン331、および、キャリア本体330の少なくとも1つは、非磁性材により形成されている。
【0116】
本実施形態では、キャリア本体330は、軸方向において、マグネット230とプラネタリギヤ32との間に配置され、マグネット230と対向している。また、キャリア本体330は、ステータ21の径方向内側であって、軸方向にて少なくとも一部がステータ21と重複して配置されている。換言すると、キャリア本体330がステータ21の径方向内側の空間に少なくとも一部が入り込んでおり、軸方向において、入れ子状に設けられている。このように配置されている場合、少なくともキャリア本体330およびピン331を非磁性材で形成することが望ましい。これにより、減速効率の低下を抑制しつつ、クラッチ装置1の体格を小型化することができる。
【0117】
本実施形態では、マグネット230と対向するキャリア本体330およびピン331が非磁性材である非磁性ステンレス鋼(SUS)で形成されている。これにより、部品の強度を確保しつつ、クラッチ装置1を小型化可能である。また、非磁性材として、アルミニウム材や樹脂を用いてもよい。これにより、部品の回転慣性モーメントを下げることができ、応答性向上および軽量化が可能である。
【0118】
(第2実施形態)
第2実施形態を
図3に基づいて説明する。本実施形態では、おもにキャリア37が上記実施形態と異なっているので、この点を中心に説明する。
図3は
図1に対応する図であって、
図1における紙面下半分側の記載を省略した。
【0119】
キャリア37は、キャリア本体370、ピン371を有している。キャリア本体370は、軸方向において、プラネタリギヤ32に対し、ハウジング板部122とは反対側に設けられている。すなわち、上記実施形態では、軸方向において、ロータ23、キャリア本体330、プラネタリギヤ32の順で配列されていたのに対し、本実施形態では、ロータ23、プラネタリギヤ32、キャリア本体370の順で配列されている。
【0120】
本実施形態では、プラネタリギヤ32とキャリア本体370とが同軸に配置されており、ピン371はストレート形状となっている。
【0121】
駆動カム45は、駆動カム本体41、駆動カム内筒部42、駆動カム板部46、駆動カム外筒部47、駆動カム溝400等を有している。駆動カム板部46は、傾斜部461および板状部462を有している。傾斜部461は、駆動カム内筒部42側に設けられ、径方向外側が径方向内側よりもハウジング板部122から離間するように傾斜して形成されている。板状部462は、概ね回転軸に直交するように、傾斜部461から径方向外側に延びて形成される。駆動カム外筒部47は、駆動カム板部46の外縁部から略円筒状に形成されている。駆動カム板部46の外縁部は、駆動カム外筒部47の軸方向における略中央に位置している。駆動カム外筒部47の外周壁には、第2リングギヤ35が嵌合する。
【0122】
キャリア本体370は、プラネタリギヤ32と駆動カム板部46との間に形成される空間に配置されている。本実施形態では、ロータ23と対向しており、かつ、ロータマグネット投影領域内にあるプラネタリギヤ32およびプラネタリギヤベアリング36を非磁性材で形成する。
【0123】
本実施形態では、プラネタリギヤ32およびプラネタリギヤベアリング36は、軸方向においてキャリア本体330よりマグネット230側であって、マグネット230と対向して配置されている。このように配置されている場合、少なくともプラネタリギヤ32およびプラネタリギヤベアリング36を非磁性材で形成することが望ましい。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0124】
実施形態において、ボールカム2が「回転並進部」、駆動カム40が「回転部」、従動カム50が「並進部」、プラネタリギヤベアリング36が「軸受」に対応する。
【0125】
(他の実施形態)
上記実施形態では、キャリアの少なくとも一部が、ステータの径方向内側に位置するよう設けられている。他の実施形態では、キャリアの少なくとも一部が、ステータの径方向外側に位置するように設けられていてもよい。また、他の実施形態では、キャリアがステータに対してクラッチ側に位置するように設けられていてもよい。
【0126】
第1実施形態では、キャリア本体およびピンが非磁性材で形成されており、第2実施形態では、プラネタリギヤおよびプラネタリギヤベアリングが非磁性材で形成されている。他の実施形態では、プラネタリギヤ、プラネタリギヤベアリング、キャリア本体およびピンの1つ以上が非磁性材で形成されていればよく、例えば第1実施形態の構成において、キャリア本体およびピンに加え、プラネタリギヤおよびプラネタリギヤベアリングの少なくとも一方を非磁性材で形成してもよいし、第2実施形態の構成において、プラネタリギヤおよびプラネタリギヤベアリングに加え、キャリア本体およびピンの少なくとも一方を非磁性材で形成してもよい。
【0127】
上記実施形態では、減速機は、不思議遊星歯車機構である。他の実施形態では、減速機は、複数遊星歯車機構、または、遊星歯車機構であってもよい。
【0128】
上記実施形態では、回転並進部の少なくとも一部が、サンギヤの径方向内側に位置するように設けられている。他の実施形態では、回転並進部がサンギヤの径方向内側に位置していなくてもよい。すなわち、回転並進部は、例えばサンギヤに対してクラッチ側に位置するように設けられていてもよい。
【0129】
上記実施形態では、キャリアを構成するピンについて、プラネタリギヤを支持する支持部は、キャリア本体と接続される接続部よりも径方向外側に設けられている。他の実施形態では、支持部が、接続部よりも径方向内側となるように設けられていてもよい。また、ピンの接続部と支持部とが同軸となるように設けられていてもよい。すなわち、ピンを、断面視クランク形状に替えて、ストレート形状としてもよく、これによりピンを単純な形状することができる。
【0130】
他の実施形態では、回転部としての駆動カムは、減速機の第2リングギヤを一体に形成されていてもよい。さらにまた、他の実施形態では、収容空間とクラッチ空間との間を気密または液密に保持するシール部材を備えていなくてもよい。
【0131】
上記実施形態では、回転並進部が、駆動カム、従動カムおよび転動体を有する転動体カムである例を示した。これに対し、他の実施形態では、回転並進部は、ハウジングに対し相対回転する回転部、および、回転部がハウジングに対し相対回転するとハウジングに対し軸方向に相対移動する並進部を有するのであれば、例えば、「すべりねじ」または「ボールねじ」等により構成されていてもよい。
【0132】
上記実施形態では、弾性変形部は、皿ばねで構成されている。他の実施形態では、弾性変形部は、軸方向に弾性変形可能であれば、例えばコイルスプリングまたはゴム等であってもよい。また、他の実施形態では、状態変更部は、弾性変形部を有さず、剛体のみで構成されていてもよい。
【0133】
上記実施形態では、駆動カム溝、従動カム溝およびボールは、それぞれ5つずつ設けられる。他の実施形態では、駆動カム溝、従動カム溝およびボール3つ以上であれば、5つに限らず、いくつ設けられていてもよい。
【0134】
また、他の実施形態では、第2伝達部からトルクを入力し、クラッチを経由して第1伝達部からトルクを出力することとしてもよい。また、例えば、第1伝達部または第2伝達部の一方を回転不能に固定した場合、クラッチを係合状態にすることにより、第1伝達部または第2伝達部の他方の回転を止めることができる。この場合、クラッチ装置をブレーキ装置として用いることができる。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0135】
1・・・クラッチ装置 2・・・ボールカム(回転並進部)
10・・・回転式アクチュエータ
12・・・ハウジング 20・・・モータ
30・・・減速機 31・・・サンギヤ
32・・・プラネタリギヤ 33、37・・・キャリア
330、370・・・キャリア本体 331、371・・・ピン
34・・・第1リングギヤ(リングギヤ)
35・・・第2リングギヤ(リングギヤ)
36・・・プラネタリギヤベアリング(軸受)
40・・・駆動カム(回転部) 50・・・従動カム(並進部)