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特許7563170ポリオール主剤、ポリウレタン接着剤、及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ポリオール主剤、ポリウレタン接着剤、及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/08 20060101AFI20241001BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20241001BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20241001BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C09J175/08
B32B7/12
B32B27/40
C09J11/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020215683
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101229
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大島 良太
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕清
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-509316(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105255436(CN,A)
【文献】特開2006-282922(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0335046(US,A1)
【文献】特開2018-027658(JP,A)
【文献】特開2014-118503(JP,A)
【文献】特開2011-162579(JP,A)
【文献】特開2016-029186(JP,A)
【文献】特開2016-121351(JP,A)
【文献】特開2018-002776(JP,A)
【文献】特開2020-066639(JP,A)
【文献】特開2020-172669(JP,A)
【文献】特表2019-537651(JP,A)
【文献】特表2011-516634(JP,A)
【文献】精製ヒマシ油、伊藤精油株式会社ホームページ,2024年04月09日,URL:https://www.itoh-oilchem.co.jp/wp/wp-content/uploads/2020/03/%E7%B2%BE%E8%A3%BD%E3%81%B2%E3%81%BE%E3%81%97%E6%B2%B9-%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%83%AD%E3%82%AF%E3%82%99-.pdf
【文献】汎用ポリオール URIC Hシリーズ・POLYCASTOR、伊藤精油株式会社ホームページ,2024年04月09日,<URL:https://www.itoh-oilchem.co.jp/wp/wp-content/uploads/2020/03/uric.pdf>
【文献】「VORANOLTM(TM) RN 490 SH Polyol ACC」、Dowホームページ,2024年04月17日,[online]<URL:https://www.dow.com/ja-jp/pdp.voranol-rn-490-sh-polyol-acc.185645z.html#properties>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/08
B32B 7/12
B32B 27/40
C09J 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、及びフィラー(C)を含むポリウレタン接着剤であって、
前記ポリオール(A)が、植物由来ポリオール(a1)と、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールに由来する構成単位を含むポリオール(a2)とを含み、前記ポリオール(a2)が、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてなるポリエーテルウレタンポリオールであり、
前記フィラー(C)が、JIS K 5101に準拠して測定したpH値が7を超えるフィラーである、ポリウレタン接着剤。
【請求項2】
前記ポリオール(A)が、前記数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールに由来する構成単位を20~70質量%の範囲で含む、請求項1に記載のポリウレタン接着剤。
【請求項3】
前記植物由来ポリオール(a1)の酸価が、0.1~15mgKOH/gの範囲である、請求項1又は2に記載のポリウレタン接着剤。
【請求項4】
前記フィラー(C)が、水酸化アルミニウム、ゼオライト、酸化マグネシウム、及び塩基性シランカップリング剤を処理した無機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
前記フィラーの平均粒子径が1×10-4~0.1mmの範囲である、請求項1~いずれか1項に記載のポリウレタン接着剤。
【請求項5】
前記フィラー(C)を、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)との合計質量を基準として、0.1~3質量%の範囲で含む、請求項1~いずれか1項に記載のポリウレタン接着剤。
【請求項6】
70℃における溶融粘度が、50~3,000mPa・sの範囲である、請求項1~いずれか1項に記載のポリウレタン接着剤。
【請求項7】
ポリオール主剤とポリイソシアネート(B)とを含むポリウレタン接着剤を構成するポリオール主剤であって、
ポリオール(A)、及びフィラー(C)を含み、
前記ポリオール(A)が、植物由来ポリオール(a1)と、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールに由来する構成単位を含むポリオール(a2)とを含み、
前記ポリオール(a2)が、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてなるポリエーテルウレタンポリオールであり、
前記フィラー(C)が、JIS K 5101に準拠して測定したpH値が7を超えるフィラーである、ポリオール主剤。
【請求項8】
請求項に記載のポリオール主剤と、ポリイソシアネート(B)とを含むポリウレタン接着剤。
【請求項9】
請求項1~及び請求項いずれか1項に記載のポリウレタン接着剤からなる接着剤層が、少なくとも2つの基材の間に配置された積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール主剤、ポリウレタン接着剤及びそれを用いた積層体に関し、より詳細には、食品、医療品、化粧品等の包装用材料として有用なポリウレタン接着剤を構成するポリオール主剤、ポリウレタン接着剤及びそれを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種プラスチックフィルム同士の貼り合わせや、プラスチックフィルムと金属蒸着フィルムや金属箔との貼り合わせは、従来、ポリオール/イソシアネート系の溶剤型接着剤を用いるドライラミネート方式により行われていた。しかし、ドライラミネート方式は有機溶剤を含有する接着剤を用いるため、排気による環境汚染、火災爆発の危険性、作業環境の衛生性阻害等、多くの問題を抱えており、労働作業環境の改善、消防法の強化、大気中へのVOC(揮発性有機化合物)の放出規制等の要求から、接着剤の脱有機溶剤化の要求が強くなり、無溶剤化の検討が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機ポリマーポリオールと有機ポリイソシアネート化合物からなる無溶剤型のラミネート用接着剤組成物が開示されている。また、特許文献2には、ポリオール成分の水酸基とポリイソシアネート成分のイソシアネート基との比率が水酸基:イソシアネート基=1:1~1:3である無溶剤型ラミネート接着剤が開示されている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の接着剤は、高いバリア性が要求される食品包装等の用途において金属蒸着フィルムを貼りあわせる場合に、接着剤の塗工時に「ゆず肌」状の模様が発生し、外観不良が生じる。特に、無地部がTD方向とMD方向に伸びている格子状の印刷柄に対しては、インキ部と無地部との間に段差が生じ、巻き圧がかからないため、外観不良が多発するという問題がある。
【0004】
外観不良を改良する方法としては、例えば特許文献3及び4には、接着剤の粘度を下げる方法が提案されている。しかしながら、特許文献3及び4に記載の方法では、巻き圧がかからないMD方向において、塗工外観を改善することはできない。さらに、接着剤の粘度を下げると樹脂の凝集力が低下し、接着性能が低下する。したがって、比較的接着が容易な延伸ポリプロピレンフィルムと無延伸ポリプロピレンフィルム等のフィルム同士の接着には適用できるが、金属蒸着フィルムや金属箔等に対しては接着性能が不足するという問題がある。
【0005】
一方、環境汚染に関する取り組みとして、近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みが行われている。
【0006】
例えば、特許文献5及び6には、高凝集力を達成する方法として、フィラーを含む接着剤が提案されている。しかしながら、特許文献5及び6に記載の接着剤は、気泡の発泡を抑制することができるが、フィラー混合により粘度が上昇し、TD方向の外観が悪化する。一方、粘度を下げるとフィラーが沈降する、という問題がある。さらに、インキ部と無地部との段差によるゆず肌発生といった問題を解決できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-60131号公報
【文献】特開2003-96428号公報
【文献】特開平8-283691号公報
【文献】特開2002-249745号公報
【文献】特開2001-162579号公報
【文献】特開2009-114258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、バイオマス原料を使用し、印刷柄に依らず「ゆず肌」様の外観不良が生じず塗工外観に優れ、金属蒸着フィルムや金属箔に対しても優れた接着性能を発揮する、ポリウレタン接着剤を構成するポリオール主剤、ポリウレタン接着剤、並びに、該ポリオール主剤及びポリウレタン接着剤を用いてなる、塗工外観及び接着性能に優れる積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るポリウレタン接着剤は、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、及びフィラー(C)を含むポリウレタン接着剤であって、ポリオール(A)が、植物由来ポリオール(a1)と、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールに由来する構成単位を含むポリオール(a2)とを含み、フィラー(C)が、JIS K 5101に準拠して測定したpH値が7を超えるフィラーであることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係るポリウレタン接着剤は、前記ポリオール(A)が、前記数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールに由来する構成単位を20~70質量%の範囲で含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係るポリウレタン接着剤は、前記植物由来ポリオール(a1)の酸価が、0.1~15mgKOH/gの範囲であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係るポリウレタン接着剤は、前記ポリオール(a2)が、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてなるポリエーテルウレタンポリオールであることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係るポリウレタン接着剤は、前記フィラー(C)が、水酸化アルミニウム、ゼオライト、酸化マグネシウム、及び塩基性シランカップリング剤を処理した無機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、前記フィラーの平均粒子径が1×10-4~0.1mmの範囲であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係るポリウレタン接着剤は、前記フィラー(C)を、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)との合計質量を基準として、0.1~3質量%の範囲で含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係るポリウレタン接着剤は、70℃における溶融粘度が、50~3,000mPa・sの範囲であることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係るポリオール主剤は、ポリオール主剤とポリイソシアネート(B)とを含むポリウレタン接着剤を構成するポリオール主剤であって、ポリオール(A)、及びフィラー(C)を含み、前記ポリオール(A)が、植物由来ポリオール(a1)と、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールに由来する構成単位を含むポリオール(a2)とを含み、前記フィラー(C)が、JIS K 5101に準拠して測定したpH値が7を超えるフィラーであることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係るポリウレタン接着剤は、上述するポリオール主剤と、ポリイソシアネート(B)とを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る積層体は、上述するポリウレタン接着剤からなる接着剤層が、少なくとも2つの基材の間に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、バイオマス原料を使用し、印刷柄に依らず「ゆず肌」様の外観不良が生じず塗工外観に優れ、金属蒸着フィルムや金属箔に対しても優れた接着性能を発揮する、ポリウレタン接着剤を構成するポリオール主剤、ポリウレタン接着剤、並びに、該ポリオール主剤及びポリウレタン接着剤を用いてなる、塗工外観及び接着性能に優れる積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のポリウレタン接着剤は、ポリオール、ポリイソシアネート、及びフィラーを含み、前記ポリオールが、植物由来ポリオールと、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールに由来する構成単位を含むポリオールとを含み、前記フィラーが、JIS K 5101に準拠して測定したpH値が7を超えるフィラーであることを特徴とする。
植物由来ポリオールと、特定の数平均分子量のポリエーテルポリオール由来の構成単位を含むポリオールと、pH値が7を超えるフィラーと、を組み合わせることで、低粘度だが凝集力の高い塗膜及びフィラーの凝集による沈降防止を同時に達成でき、塗工外観及び接着性能に優れる無溶剤型の接着剤を得ることができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
【0021】
<ポリオール(A)>
本発明では、前記ポリオール(A)として、植物由来ポリオール(a1)と、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールに由来する構成単位を含むポリオール(a2)とが用いられる。
また、ポリオール(A)は、前記数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールに由来する構成単位を、20~70質量%の範囲で含むものが好ましく、より好ましくは、30~70質量%の範囲で含むものである。
【0022】
[植物由来ポリオール(a1)]
本発明における植物由来ポリオール(a1)は、ひまし油に代表される直物油の成分を使用したポリオールであり、例えば、ひまし油、ひまし油誘導体、ひまし油以外の植物油誘導体が挙げられる。
【0023】
(ひまし油)
ひまし油は、リシノール酸を主成分とする脂肪酸のグリセリドであって、例えば、リシノール酸、オレイン酸およびリノール酸を含む不飽和脂肪酸と、パルミチン酸およびステアリン酸を含む飽和脂肪酸とのグリセリドが挙げられる。
ひまし油における各成分の含有割合は、通常、リシノール酸が87~90質量%であり、オレイン酸が2.5~4質量%であり、リノール酸が4~5質量%であり、パルミチン酸が0.5~1.5質量%であり、ステアリン酸が0.5~1.5質量%である。
また、ひまし油における水酸基の平均官能基数は、例えば2~3.3程度であり、好ましくは2.5~3程度である。
また、ひまし油における水酸基価は、例えば、150~175mgKOH/gであり、好ましくは155~170mgKOH/gである。なお、水酸基価は、JIS K 1557-1(2007年)に準拠するアセチル化法やフタル化法等により求めることができる。
【0024】
ひまし油は、市販品を用いることができる。ひまし油の市販品としては、例えば、脱臭精製ヒマシ油(豊国製油社製)、精製ヒマシ油(豊国製油社製)、ELA-DR(豊国製油社製)、工業用一号ヒマシ油(豊国製油社製)、精製ひまし油特A(マルトクA)(伊藤製油社製)、精製ひまし油特A(カクトクA)(伊藤製油社製)、精製ひまし油特A(ダイヤ)(伊藤製油社製)、精製ひまし油工1(カクコウイチ)(伊藤製油社製)、精製ひまし油工1(コウイチ)(伊藤製油社製)、FSG CASTOR OIL(ROYAL CASTOR PRODUCTS社製)、COLD PRESS CASTOR OIL(ROYAL CASTOR PRODUCTS社製)が挙げられる。
【0025】
(ひまし油誘導体、ひまし油以外の植物油誘導体)
ひまし油誘導体としては、例えば、脱水ひまし油、ひまし油の水素添加物であるひまし硬化油(以下、水添ひまし油)、ひまし油のエチレンオキシド5~50モル付加体、ひまし油系ポリオールが挙げられる。
ひまし油系ポリオールとは、ひまし油を強塩基などで加水分解して得られる前記脂肪酸に、低分子ジオールや多官能アルコールを縮合させることで得られる両末端水酸基のポリオールであって、中でもリシノール酸と低分子ジオールとを組み合わせた、ひまし油系ポリオールは、1分子中の水酸基数が2であり、過剰な架橋を抑制しポットライフに優れるため好ましい。
【0026】
上記低分子ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、ダイマージオール、水添ダイマージオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の2官能アルコール若しくはそれらの混合物が挙げられる。
【0027】
上記多官能アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサトリオール、1,2,4-ブタントリオール等の3官能以上の多官能アルコール若しくはそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
ひまし油以外の植物油誘導体としては、例えば、エポキシ化大豆油と低分子ジオールの反応物が挙げられる。該低分子ジオールとしては、上述の低分子ジオールを用いることができる。
【0029】
植物由来ポリオールとして好ましくは、1分子中の水酸基数が2であるため過剰な架橋を抑制し接着剤の粘度を低減できる点、且つ酸価を持つため接着力に優れる点から、ひまし油系ポリオールである。
【0030】
前記植物由来ポリオール(a1)は通常、酸価を有するものであり、その酸価は、好ましくは、0.1~30mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは0.1~15mgKOH/gの範囲である。酸価が0.1~15mgKOH/gの範囲であると、特に、接着性能とポットライフに優れるため好ましい。
【0031】
[数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールに由来する構成単位を含むポリオール(a2)]
ポリオール(a2)は、分子内に、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールに由来する構成単位と、2つ以上の水酸基とを含むものであれば特に制限されない。
このようなポリオール(a2)は、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールをそのまま用いてよく、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールを含むポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてなるポリエーテルウレタンポリオールであってもよく、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールを含むポリオールと、多価カルボン酸とを反応させてなるポリエーテルエステルポリオールであってもよい。
ポリオール(a2)を構成するポリエーテルポリオールを含むポリオール、ポリイソシアネート、及び多価カルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0032】
(数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオール)
上記数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、好ましくは、200~2,500の範囲である。
【0033】
ポリオール(a2)がポリエーテルウレタンポリオールである場合、ポリオール(a2)を構成するポリオールは、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオール以外のその他ポリオールを含んでいてもよい。このようなその他ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、数平均分子量が2,500を超えるポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリヒドロキシアルカンが挙げられる。
【0034】
(ポリイソシアネート)
ポリオール(a2)がポリエーテルウレタンポリオールである場合、ポリオール(a2)を構成するポリイソシアネートは特に制限されない。
このようなポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート;m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4′-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4′,4″-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエンのような有機トリイソシアネート、4,4′-ジフェニルジメチルメタン-2,2′-5,5′-テトライソシアネートのような有機テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体;上記ポリイソシアネート単量体から誘導された、ダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネートが挙げられる。
上記ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0035】
(多価カルボン酸)
ポリオール(a2)がポリエーテルエステルポリオールである場合、ポリオール(a2)を構成する多価カルボン酸は特に制限されない。
このような多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の二塩基酸、それらのジアルキルエステル、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0036】
ポリオール(a2)として好ましくは、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてなるポリエーテルウレタンポリオールであり、より好ましくは、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールと、芳香族ポリイソシアネートとを反応させてなるポリエーテルウレタンポリオールである。
また、ポリオール(a2)の数平均分子量は、好ましくは1,000~10,000の範囲であり、より好ましくは、1,500~5,000の範囲である。
これらポリオール(a2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0037】
[その他ポリオール]
本発明におけるポリオール(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記植物由来ポリオール(a1)と、ポリオール(a2)以外の、その他ポリオールを併用してもよい。
このようなその他ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリヒドロキシアルカンが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0038】
<ポリイソシアネート(B)>
本発明におけるポリイソシアネート(B)は、分子内に2つ以上のイソシアナト基を有する化合物であればよく、特に制限されない。
このようなポリイソシアネート(B)としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート;m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4′-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4′,4″-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエンのような有機トリイソシアネート、4,4′-ジフェニルジメチルメタン-2,2′-5,5′-テトライソシアネートのような有機テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体;上記ポリイソシアネート単量体から誘導された、ダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネートが挙げられる。
【0039】
中でも、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,4-ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物または4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットの混合物が、急速な増粘を起こさず、ポットライフや塗工外観の観点から、好適に用いられる。
【0040】
ポリイソシアネート(B)は、上述のジイソシアネートやポリイソシアネート単量体に、グリコールを付加した付加体(以下、ポリウレタンポリイソシアネート)であってもよい。
上記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3′-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子ポリオール、或いは、分子量200~20,000のポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオールが挙げられる。
上記グリコールは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0041】
ポリイソシアネート(B)として好ましくは、ポリウレタンポリイソシアネートであり、より好ましくは、芳香族ポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物であり、さらに好ましくは、芳香族ポリイソシアネートと、ポリプロピレングリコール及びポリエステルポリオールを含むポリオールとの反応生成物である。
ポリイソシアネート(B)が芳香族骨格を含むことにより熱耐性が向上し、ヒートシール部折り曲げによる浮き発生を抑制することができる。ポリエステルポリオールに由来する構造を有することで、金属蒸着フィルムや金属箔等への接着強度が向上する。ポリプロピレングリコールの数平均分子量は、好ましくは200~3,000である。
上記ポリイソシアネート(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0042】
<フィラー(C)>
本発明で用いるフィラー(C)は、JIS K 5101に準拠して測定したpH値が、7を超えることが重要である。表面のpH値が7以下の場合は、酸価を有する植物由来ポリオール(a1)との相互作用が小さく、フィラーが均一な分散状態を維持することができず、フィラーが凝集してしまう。
一方、pH値が7を超えるフィラー(C)を用いることで、酸価を有する植物由来ポリオール(a1)と相互作用し、フィラーが均一な分散状態を維持することができる。そして、特に、無溶剤型の接着剤として使用した場合において、優れた塗工外観及び良好な接着性能を発揮する。フィラー(C)を含有する接着剤は、チクソトロピックな流動特性を示し、塗工する際の塗工ロール上で強い剪断力を受け低粘度となり、ロールから基材へ転移する。基材へ転移した接着剤は急速に構造粘性を発揮し、素早く基材へ定着する。これにより、良好な外観を得ることができる。
【0043】
フィラー(C)としては、pH値が7を超えるものであれば特に制限されず、無機化合物又は有機化合物のいずれも用いることができる。これらフィラー(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0044】
無機化合物のフィラーとしては、例えば、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナホワイト、硫酸カリウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、活性炭、カオリン、タルク、ロウ石クレー、けい石、マイカ、グラファイト、セリサイト、モンモリロナイト、セリサイト、セピオライト、ベントナイト、パーライト、ゼオライト、ワラストナイト、蛍石、ドロマイトが挙げられる。また、上記無機化合物に塩基性のシランカップリング剤で処理したものを用いてもよい。中でも、水酸化アルミニウム、ゼオライト、酸化マグネシウムが、pHの観点から好ましい。
【0045】
有機化合物のフィラーとしては、例えば、ベンゾグアナミン樹脂、シリコン系樹脂、スチレン樹脂、架橋ポリスチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル共重合系樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ナイロン6、ナイロン12、セルロース、アクリル樹脂、メタクリル樹脂が挙げられる。
【0046】
フィラー(C)として好ましくは、無機化合物であり、より好ましくは、アルミナ、ゼオライト、酸化マグネシウム、及び塩基性シランカップリング剤を処理した無機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。
【0047】
フィラー(C)の平均粒子径は、通常、1×10-5~0.2mmの範囲であり、好ましくは1×10-4~0.1mmの範囲である。平均粒子径が0.2mm以下であると、塗工後の塗膜外観に優れる。1×10-5mm以上であると、接着剤の流動特性に優れ、塗工外観の透明性に優れるため好ましい。本明細書における平均粒子径は、平均体積径であり、レーザー光散乱法により求めた値である。
【0048】
本発明の接着剤におけるフィラー(C)の含有率は、要求性能、接着方法等によって適宜選択されるが、好ましくは、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との合計質量を基準として、0.1~3質量%の範囲であり、より好ましくは0.5~2質量%の範囲である。
前記フィラー(C)の含有率が0.1質量%以上であると、接着剤の流動特性に優れる。3質量%以下であると、塗工外観の透明性に優れるため好ましい。
【0049】
フィラー(C)は、ポリオール(A)に配合して、ポリオール主剤として用いてもよい。該ポリオール主剤に、さらにポリイソシアネート(B)を配合することで、本願発明のポリウレタン接着剤とすることができる。
また、フィラー(C)は、ポリイソシアネート(B)に配合して、ポリオール硬化剤として用いてもよい。該ポリイソシアネート硬化剤に、さらにポリオール(A)を配合することで、本願発明のポリウレタン接着剤とすることができる。
また、フィラー(C)は、ポリオール(A)及びポリイソシアネート(C)の両方に配合してもよく、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを混合する際に配合してもよい。
【0050】
本発明のポリウレタン接着剤は、前記ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、及びフィラー(C)を混合した後の、70℃における初期の溶融粘度が、好ましくは50~3,000mPa・sの範囲であり、より好ましくは100~1,000mPa・sの範囲である。
本明細書において、初期の混合粘度における初期とは、混合後5分以内を意味する。また、溶融粘度はB型粘度計により求めた値を表す。
70℃における溶融粘度が、3,000mPa・s以下であると、100℃未満での塗工性が良好であり、フィルムの伸びによる印刷柄のピッチずれが発生せず、作業性に優れる。溶融粘度が50mPa・s以上であると、十分な初期凝集力が発現し、接着性能に優れる。また、塗工時の厚みが均一となり、外観不良や反りが発生し難くなり好ましい。
【0051】
<その他成分>
本発明のポリウレタン接着剤は、更に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防徽剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤、顔料、充填剤等の添加剤を必要に応じて含有してもよい。また、接着性能を更に高めるために、シランカップリング剤、リン酸、リン酸誘導体、酸無水物、粘着性樹脂等の接着助剤を含有してもよい。また、硬化反応を調節するため公知の触媒、添加剤等を含有してもよい。
これらのその他成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
<積層体>
本発明の積層体は、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)及びフィラー(C)を混合してなるポリウレタン接着剤からなる接着剤層が、少なくとも2つの基材の間に積層されたものである。該積層体は、例えば、ポリウレタン接着剤を第1の基材に塗布した後に、第2の基材を貼り合わせ、両基材の間に位置する前記接着剤層を、常温又は加温下で硬化して形成することができるが、この構成に限定されない。
本発明の積層体は、さらに接着剤層等を介して別の層が配置されていてもよい。
接着剤の塗布量は、基材の種類や塗工条件等に応じて適宜選択されるが、通常、1.0~5.0g/mであり、好ましくは1.5~4.5g/mである。
また、積層体の厚みは、包装材としての強度や耐久性の観点から、好ましくは10μm以上である。
【0053】
[基材]
基材は特に制限されず、包装体用途に一般的に使用される、プラスチックフィルム、紙、ガスバリア基材、シーラント等が挙げられ、2つの基材は同種であってもよく、異種であってもよい。
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が用いられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
プラスチックフィルムは、好ましくは5~50μm、より好ましくは10~30μmの厚さを有するものである。
【0054】
紙としては、天然紙や合成紙等が挙げられる。
ガスバリア基材としては、アルミニウム箔の他、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層を有するプラスチックフィルムが好ましい。例えばアルミニウム箔の場合は、経済的な面から3~50μmの範囲の厚みが好ましい。
【0055】
シーラントとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。中でもレトルト時の耐熱性の観点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、ヒートシール性の観点から未延伸ポリプロピレンが特に好ましい。
シーラントの厚みは特に限定されないが、包装体への加工性やヒートシール性等を考慮して10~60μmの範囲が好ましく、15~40μmの範囲がより好ましい。また、シーラントに高低差5~20μmの凸凹を設けることで、シーラントに滑り性や包装体の引き裂き性を付与することが可能である。
また、各種シーラントはアルミニウム箔の他、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層を有していてもよい。
【0056】
基材は、基材上に印刷層を有していてもよい。印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、印刷層の形成方法は特に限定されない。
一般的には、印刷層は、顔料や染料等の着色剤を含む印刷インキを用いて形成される。印刷インキの塗工方法は特に限定されず、グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の方法により塗布することができる。これを放置するか、必要により送風、加熱、減圧乾燥、紫外線照射等を行うことにより印刷層を形成することができる。
印刷層は、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは1~5μm、さらに好ましくは1~3μmの厚さを有するものである。
【実施例
【0057】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0058】
ポリオールの数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算した値を算出した。
70℃における溶融粘度は、B型粘度計により求めた。
【0059】
<植物由来ポリオールの製造>
(ひまし油系ポリオールB)
ひまし油系ポリオールA(豊国製油株式会社製、商品名:HS 2G-270B、酸価0.4mgKOH/g)85部、ジメチロールブタン酸3部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート12部を反応容器に仕込んだ。窒素ガス気流下で撹拌しながら100℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、数平均分子量1,000の、ひまし油系ポリオールBを得た。ひまし油系ポリオールBの酸価は、13mgKOH/gであった。
【0060】
(ひまし油系ポリオールC)
ひまし油系ポリオールA(豊国製油株式会社製、商品名:HS 2G-270B)84部、ジメチロールブタン酸5部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート11部を反応容器に仕込んだ。窒素ガス気流下で撹拌しながら100℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、数平均分子量800の、ひまし油系ポリオールCを得た。ひまし油系ポリオールCの酸価は、18mgKOH/gであった。
【0061】
<数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールに由来する構成単位を含むポリオール(a2)の製造>
(合成例1)ポリオール(a2-1)
グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した分子量約400のトリオール20部、分子量約2,000のポリプロピレングリコール38部、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート5部、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート5部を反応容器に仕込んだ。窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、数平均分子量3,000の両末端に水酸基を有するポリエーテルウレタンポリオールであるポリオール(a2-1)を得た。
【0062】
(合成例2~8)ポリオール(a2-2~a2-8)
表1に示す配合処方に変更した以外は、合成例1と同様に操作してポリオール(a2-2)~(a2-6)を得た。得られた樹脂のMnの結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1中の略称を以下に示す。
PPG400(3f):グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した分子量約400のトリオール(株式会社アデカ製、商品名:アデカポリエーテルG-400)
PPG2000:分子量約2,000のポリプロピレングリコール(株式会社アデカ製、商品名:アデカポリエーテルP-2000)
ポリエステル樹脂1:アジピン酸とプロピレングリコールを主成分とする分子量約2000のポリエステルポリオール(株式会社アデカ製、商品名:アデカニューエースF7-67)
ポリエステル樹脂2:アジピン酸とブタンジオールを主成分とする分子量約1,000のポリエステルポリオール(昭和電工株式会社製、商品名:テスラック2464)
4,4′-MDI:4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート
2,4-MDI:2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート
【0065】
<ポリオール主剤の製造>
(実施例1)ポリオール主剤(S1)
合成例1で得られたポリエーテルポリオール(a2-1)68部を、70℃窒素ガス気流下で撹拌しながら、平均粒子径2.0×10-3mmのゼオライトフィラー(水澤化学工業株式会社製、商品名:シルトンJC-20)2部、及びひまし油ポリオールA(豊国製油株式会社製、商品名:HS 2G-270B)30部を加えて1時間撹拌し、ポリオール(A)とフィラー(C)とを含むポリオール主剤(S1)を得た。
【0066】
(実施例2~16、比較例1~5)ポリオール主剤(S2~S21)
表2に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様に操作してポリオール主剤(S2~S21)を得た。
【0067】
【表2】
【0068】
表2中の略称を以下に示す。
ひまし油:豊国製油株式会社製、商品名:工業用一号ヒマシ油
ひまし油系ポリオールA:豊国製油株式会社製、商品名:HS 2G-270B
酸性樹脂:トーヨーケム株式会社製、商品名:NS-5
PPG2000:分子量約2,000のポリプロピレングリコール(株式会社アデカ製、商品名:アデカポリエーテルP-2000)
PPG4000(3f):3官能アルコールにポリプロピレングリコールを付加した分子量約4000のトリオール(三井化学株式会社製、商品名:アクトコールT-4000)
ゼオライト:pH値9、平均粒子径2.0×10-3mmのゼオライトフィラー(水澤化学工業株式会社製、商品名:シルトンJC-20)
アルミナ1:pH値8、平均粒子径0.105mmのアルミナフィラー(日本軽金属株式会社製、商品名:SA11)
アルミナ2:pH値8、平均粒子径3.4×10-5mmのアルミナフィラー(CIKナノテック株式会社製、商品名:ナノテックパウダー)
アルミナ3:pH値8、平均粒子径2.0×10-4mmのアルミナフィラー(昭和電工株式会社製、商品名:アルナビーズCB-02P)
酸化マグネシウム:pH値10、平均粒子径5.4×10-4mmの酸化マグネシウムフィラー(協和化学工業株式会社製、商品名:キョーワマグMF30)
処理シリカ:pH値11、シリカ(ミズカシルP-707)に対して、インテグラルブレンド法を用いて、アミノシランカップリング剤(エボニック・ジャパン株式会社製、商品名:DYNASYLAN AMMO)でアミノシラン処理したもの
タルク:pH値9、平均粒子径5.0×10-3mmのタルクフィラー(日本タルク株式会社製、商品名:ミクロエースL-1)
シリカ:pH値6、平均粒子径4.0×10-3mmのシリカフィラー(水澤化学工業株式会社製、商品名:ミズカシルP-707)
【0069】
<ポリイソシアネート(B)の製造>
(ポリイソシアネート(B1))
分子量約2,000のポリプロピレングリコール50部、アジピン酸とプロピレングリコールを主成分とする分子量約2,000のポリエステルポリオール(株式会社アデカ製、商品名:アデカニューエースF7-67)10部、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート20部、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート20部を反応容器に仕込んだ。窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、数平均分子量2,500の両末端にイソシアナト基を有するポリウレタンポリイソシアネート樹脂であるポリイソシアネート(B1)を得た。
【0070】
(ポリイソシアネート(B2))
分子量約2,000のポリプロピレングリコール40部、アジピン酸とプロピレングリコールを主成分とする分子量約2,000のポリエステルポリオール(株式会社アデカ製、商品名:アデカニューエースF7-67)10部、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート20部、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート20部、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体10部を反応容器に仕込んだ。窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、数平均分子量3,000の両末端にイソシアナト基を有するポリウレタンポリイソシアネート樹脂であるポリイソシアネート(B2)を得た。
【0071】
(ポリイソシアネート(B3))
4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート50部、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体50部を反応容器に仕込んだ。窒素ガス気流下で撹拌し、ポリイソシアネート(B3)を得た。
【0072】
<ポリウレタン接着剤の製造>
(実施例17)
ポリオール主剤(S1)を100部反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら50℃~70℃で50分加熱して溶解した。次いで、ポリイソシアネート(B1)100部を80℃で混合して、無溶剤型のポリウレタン接着剤を得た。
【0073】
(実施例18~34、比較例6~10)
ポリオール主剤及びポリイソシアネート(B)の配合組成を、表3に示す内容に変更した以外は、実施例17と同様にして、無溶剤型のポリウレタン接着剤を得た。
【0074】
<ポリオール主剤、ポリウレタン接着剤の評価>
得られたポリオール主剤、ポリウレタン接着剤を用いて以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0075】
[ポリオール主剤のフィラー凝集物の確認]
得られたポリオール主剤を、直径60mmの透明なガラス瓶に液面の高さが70mmになるように採取し、密閉した後、室温で1か月静置した。保管後の上澄みの観察と瓶底の沈降物とを観察し、保管前の状況と比較した際の上澄みと沈降物の変化の程度により以下の基準で評価した。
◎:上澄みや及び沈殿物が確認されない(非常に良好)
○:上澄みの厚みが1mm未満、且つ沈降物の厚みが1mm未満(良好)
△:上澄みの厚みが3mm未満、且つ沈降物の厚みが3mm未満(使用可能)
×:上澄みの厚み又は沈降物の厚みのいずれかが3mm以上(使用不可)
【0076】
[初期溶融粘度]
ポリウレタン接着剤を混合して2分経過した後、速やかに、70℃における溶融粘度をB型粘度系で測定した。
【0077】
[ポットライフ]
ポリウレタン接着剤を混合してから40℃で30分間経過した後の、70℃における溶融粘度を、上記と同様にして測定し、以下の基準で評価した。
◎:溶融粘度が4000mPa・s未満(非常に良好)
○:溶融粘度が4000mPa・s以上、6000mPa・s未満(良好)
△:溶融粘度が6000mPa・s以上、8000mPa・s未満(使用可能)
×:溶融粘度が8000mPa・s以上(使用不可)
【0078】
[積層体の作製]
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(東洋紡株式会社製、商品名:E5100)フィルム上に、印刷インキ(東洋インキ株式会社製、リオアルファR631白)を用いて、10cm×10cmの正方形が幅2.5cmの無地部を介して並んだ格子状の印刷柄を印刷した。印刷層の厚みは1μmとした。
次いで、得られた接着剤を70℃に調整し、上記積層体の印刷層上に、無溶剤テストコーターで塗布した。接着剤の塗布量は、2.0g/mとした。
次いで、接着剤塗布面に、厚み25μmのアルミニウム蒸着無延伸ポリプロピレン(VMCPP)フィルムを貼り合わせた。
得られた積層体を40℃の恒温槽に2日間入れて接着剤を硬化させた。得られた積層体について、塗工外観及び接着力を下記の通り評価した。
【0079】
[塗工外観(MD、TD方向)]
得られた積層体の塗工外観を、PETフィルム側から目視で観察し、以下の基準で評価した。目視箇所はフィルムの流れに対し平行に伸びた無地部(MD方向)、及びフィルムの流れに対し垂直に伸びた無地部(TD方向)で行った。
◎:MD方向の無地部10cm×2.5cm、及びTD方向の無地部10cm×2.5cmに、ゆず肌状の模様又は小さな斑点状の模様が確認されない(非常に良好)
○:MD方向の無地部10cm×2.5cm、及びTD方向の無地部10cm×2.5cmにおいて、各々、ゆず肌状の模様又は小さな斑点状の模様の数が1以上10未満(良好)
△:MD方向の無地部10cm×2.5cm、及びTD方向の無地部10cm×2.5cmにおいて、各々ゆず肌状の模様又は小さな斑点状の模様の数が10以上30未満(使用可能)
×:MD方向の無地部10cm×2.5cm、及びTD方向の無地部10cm×2.5cmの少なくとも一方において、ゆず肌状の模様又は小さな斑点状の模様の数が30以上(使用不可)
【0080】
[接着力]
積層体から、MD方向の無地部の領域を長さ300mm、幅15mmに切り取り、試験片とした。インストロン型引張試験機を使用し、剥離速度300mm/分の剥離速度で引張り、PET/VMCPP間のT型剥離強度(N/15mm)を測定した。この試験を5回行い、その平均値を求め、以下の基準で評価した。
◎:剥離強度が1.3N/15mm以上(非常に良好)
○:剥離強度が1.0N/15mm以上、1.3N/15mm未満(良好)
△:剥離強度が0.7N/15mm以上、1.0N/15mm未満(使用可能)
×:剥離強度が0.7N/15mm未満(使用不可)
【0081】
【表3】
【0082】
表3より、本発明のポリウレタン接着剤は、フィラーが凝集せず安定性に優れ、ポットライフが良好であった。また、本発明のポリウレタン接着剤を用いた塗工物は、TD方向・MD方向に伸びる無地柄での外観が良好であり、かつラミネート強度に優れていた。
これは、植物由来ポリオールとフィラーとの相互作用による分散安定化及び高凝集力、並びに、数平均分子量が50~2,500の範囲であるポリエーテルポリオールに起因する低粘度化による塗膜の濡れ広がり性が向上したためである。