(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体チップおよび炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241001BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241001BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241001BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20241001BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L29/78 653C
H01L29/78 652T
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652D
H01L29/78 652K
H01L29/78 652F
H01L29/78 658E
H01L29/78 658G
H01L29/78 658F
H01L29/78 655A
H01L21/28 301B
H01L21/28 301S
(21)【出願番号】P 2020572149
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2020003085
(87)【国際公開番号】W WO2020166326
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019023429
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 光彦
(72)【発明者】
【氏名】日吉 透
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-085685(JP,A)
【文献】国際公開第2011/117920(WO,A1)
【文献】特開2019-003967(JP,A)
【文献】特許第6253854(JP,B1)
【文献】特開2005-244168(JP,A)
【文献】特開2008-306022(JP,A)
【文献】特開2017-011176(JP,A)
【文献】特開2019-186458(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117248(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
H01L 29/739
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、
前記第1主面には、側面と、前記側面に連なる底面とを有するゲートトレンチが設けられており、
前記側面および前記底面の各々に接するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極上に設けられた分離絶縁膜と、
前記分離絶縁膜上に設けられた第1電極と、
前記第2主面上に設けられた第2電極とをさらに備え、
前記分離絶縁膜は、前記ゲート電極と前記第1電極とを電気的に分離し、
前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極および前記分離絶縁膜の各々と、前記第1電極の一部とは、前記ゲートトレンチの内部に設けられている、炭化珪素半導体チップと、
前記第1電極に
超音波接合された第1ワイヤーと、
前記ゲート電極に
超音波接合された第2ワイヤーとを備え、
前記炭化珪素半導体チップの主表面に対して垂直な方向から見た場合、前記第1ワイヤーは、前記炭化珪素半導体チップの<1-100>方向に沿って延在して
おり、前記ゲートトレンチは、<11-20>方向に沿って延在しており、前記ゲートトレンチの短手方向は、<1-100>方向であり、且つ、前記ゲートトレンチの長手方向は、<11-20>方向である、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記側面は、前記ゲート絶縁膜に接しかつ前記底面に連なる第1側面部と、前記分離絶縁膜に接しかつ前記第1側面部に連なる第2側面部と、前記第2側面部と前記第1主面との間に位置する第3側面部とを有し、
前記第1電極は、シリサイド膜と、前記シリサイド膜上に設けられた金属膜とを有し、
前記シリサイド膜は、前記第1主面および前記第3側面部の各々に接している、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記分離絶縁膜は、窒化珪素または酸窒化珪素を含み、
前記ゲート絶縁膜は、二酸化珪素を含む、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記分離絶縁膜は、前記底面に向かって突出するように湾曲して
おり、
前記側面は、前記底面に垂直な面に対して傾斜している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記炭化珪素基板は、
第1導電型を有する第1不純物領域と、
前記第1不純物領域上に設けられ、かつ前記第1導電型と異なる第2導電型を有する第2不純物領域と、
前記第1不純物領域から隔てられるように前記第2不純物領域上に設けられ、かつ前記第1導電型を有する第3不純物領域とを含み、
前記分離絶縁膜は、前記側面において前記第3不純物領域に接している、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、
前記第1主面には、側面と、前記側面に連なる底面とを有するゲートトレンチが設けられており、
前記側面および前記底面の各々に接するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極上に設けられた分離絶縁膜と、
前記分離絶縁膜上に設けられた第1電極と、
前記第2主面上に設けられた第2電極とをさらに備え、
前記分離絶縁膜は、前記ゲート電極と前記第1電極とを電気的に分離し、
前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極および前記分離絶縁膜の各々と、前記第1電極の一部とは、前記ゲートトレンチの内部に設けられている、炭化珪素半導体チップと、
前記第1電極に
超音波接合された第1ワイヤーと、
前記ゲート電極に
超音波接合された第2ワイヤーとを備え、
前記第1ワイヤーの直径は400μm以上であ
り、
前記炭化珪素半導体チップの主表面に対して垂直な方向から見た場合、前記第1ワイヤーは、前記炭化珪素半導体チップの<1-100>方向に沿って延在しており、前記ゲートトレンチは、<11-20>方向に沿って延在しており、前記ゲートトレンチの短手方向は、<1-100>方向であり、且つ、前記ゲートトレンチの長手方向は、<11-20>方向である、炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記炭化珪素半導体チップの主表面に対して垂直な方向から見た場合、前記第2ワイヤーは、前記炭化珪素半導体チップの<1-100>方向に沿って延在している、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体チップおよび炭化珪素半導体装置に関する。本出願は、2019年2月13日に出願した日本特許出願である特願2019-023429号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
特開2013-115385号公報(特許文献1)には、トレンチゲート構造を有する炭化珪素半導体装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示に係る炭化珪素半導体チップは、炭化珪素基板と、第1電極と、第2電極と、ゲート絶縁膜と、ゲート電極と、分離絶縁膜とを備えている。炭化珪素基板は、第1主面と、第1主面と反対側の第2主面とを有している。第1主面には、側面と、側面に連なる底面とを有するゲートトレンチが設けられている。ゲート絶縁膜は、側面および底面の各々に接する。ゲート電極は、ゲート絶縁膜上に設けられている。分離絶縁膜は、ゲート電極上に設けられている。第1電極は、分離絶縁膜上に設けられている。第2電極は、第2主面上に設けられている。分離絶縁膜は、ゲート電極と第1電極とを電気的に分離している。ゲート絶縁膜、ゲート電極および分離絶縁膜の各々と、第1電極の一部とは、ゲートトレンチの内部に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、炭化珪素半導体装置の構造を示す側面模式図である。
【
図2】
図2は、炭化珪素半導体装置の構造を示す平面模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体チップが含むMOSFETの構成を示す断面模式図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体チップが含むMOSFETの炭化珪素基板の構成を示す平面模式図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体チップが含むMOSFETの製造方法の第1工程を示す断面模式図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体チップが含むMOSFETの製造方法の第2工程を示す断面模式図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体チップが含むMOSFETの製造方法の第3工程を示す断面模式図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体チップが含むMOSFETの製造方法の第4工程を示す断面模式図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体チップが含むMOSFETの製造方法の第5工程を示す断面模式図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体チップが含むMOSFETの構成を示す断面模式図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体チップが含むMOSFETの構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
本開示の目的は、第1電極が炭化珪素基板から剥がれることを抑制可能な炭化珪素半導体チップおよび炭化珪素半導体装置を提供することである。
[本開示の効果]
本開示によれば、第1電極が炭化珪素基板から剥がれることを抑制可能な炭化珪素半導体チップおよび炭化珪素半導体装置を提供することができる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。本明細書の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示す。結晶学上の指数が負であることは、通常、数字の上に”-”(バー)を付すことによって表現されるが、本明細書では数字の前に負の符号を付すことによって結晶学上の負の指数を表現する。
【0007】
(1)本開示に係る炭化珪素半導体チップ200は、炭化珪素基板100と、第1電極60と、第2電極63と、ゲート絶縁膜71と、ゲート電極64と、分離絶縁膜72とを備えている。炭化珪素基板100は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有している。第1主面1には、側面5と、側面5に連なる底面6とを有するゲートトレンチ7が設けられている。ゲート絶縁膜71は、側面5および底面6の各々に接している。ゲート電極64は、ゲート絶縁膜71上に設けられている。分離絶縁膜72は、ゲート電極64上に設けられている。第1電極60は、分離絶縁膜72上に設けられている。第2電極63は、第2主面2上に設けられている。分離絶縁膜72は、ゲート電極64と第1電極60とを電気的に分離している。ゲート絶縁膜71、ゲート電極64および分離絶縁膜72の各々と、第1電極60の一部とは、ゲートトレンチ70の内部に設けられている。
【0008】
(2)上記(1)に係る炭化珪素半導体チップ200において、側面5は、ゲート絶縁膜71に接しかつ底面6に連なる第1側面部51と、分離絶縁膜72に接しかつ第1側面部51に連なる第2側面部52と、第2側面部52と第1主面1との間に位置する第3側面部53とを有していてもよい。第1電極60は、シリサイド膜61と、シリサイド膜61上に設けられた金属膜62とを有していてもよい。シリサイド膜61は、第1主面1および第3側面部53の各々に接していてもよい。
【0009】
(3)上記(1)または(2)に係る炭化珪素半導体チップ200において、分離絶縁膜72は、窒化珪素または酸窒化珪素を含んでいる。ゲート絶縁膜71は、二酸化珪素を含んでいてもよい。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれかに係る炭化珪素半導体チップ200において、分離絶縁膜72は、底面6に向かって突出するように湾曲していてもよい。
【0011】
(5)上記(1)~(4)のいずれかに係る炭化珪素半導体チップ200において、炭化珪素基板100は、第1導電型を有する第1不純物領域10と、第1不純物領域10上に設けられ、かつ第1導電型と異なる第2導電型を有する第2不純物領域30と、第1不純物領域10から隔てられるように第2不純物領域30上に設けられ、かつ第1導電型を有する第3不純物領域40とを含んでいてもよい。分離絶縁膜72は、側面5において第3不純物領域40に接していてもよい。
【0012】
(6)本開示に係る炭化珪素半導体装置300は、上記(1)から上記(5)のいずれかに記載の炭化珪素半導体チップ200と、第1電極60に電気的に接続された第1ワイヤー21と、ゲート電極64に電気的に接続された第2ワイヤー22とを備えている。[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態の詳細について説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0013】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置300の構成について説明する。
【0014】
図1に示されるように、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置300は、炭化珪素半導体チップ200と、リードフレーム20と、第1ワイヤー21と、第2ワイヤー22とを主に有している。炭化珪素半導体チップ200は、リードフレーム20上に設けられている。第1ワイヤー21は、後述する第1電極60(
図3参照)に電流を印加可能に構成されている。第1ワイヤー21の一端部は、炭化珪素半導体チップ200に接続されている。第1ワイヤー21の他端部は、リードフレーム20に接続されている。第2ワイヤー22は、後述するゲート電極64(
図3参照)に電流を印加可能に構成されている。第2ワイヤー22の一端部は、炭化珪素半導体チップ200に接続されている。第2ワイヤー22の他端部は、リードフレーム20に接続されている。第1ワイヤー21と第2ワイヤー22とは、電気的に絶縁されている。
【0015】
図2に示されるように、炭化珪素半導体チップ200は、第1電極60と、ゲート電極64と、パッシベーション膜67とを有している。第1ワイヤー21の一端部は、第1電極60に接している。第2ワイヤー22の一端部は、ゲート電極64に電気的に接続している。パッシベーション膜67は、第1電極60とゲート電極64との間に位置している。
図2に示されるように、炭化珪素半導体チップ200の主表面に対して垂直な方向から見た場合、第1ワイヤー21の延在方法は、たとえば第2方向102である。言い換えれば、炭化珪素半導体チップ200の主表面に対して垂直な方向から見た場合、第1ワイヤー21の長手方向は、第2方向102である。同様に、炭化珪素半導体チップ200の主表面に対して垂直な方向から見た場合、第2ワイヤー22の延在方法は、たとえば第2方向102である。言い換えれば、炭化珪素半導体チップ200の主表面に対して垂直な方向から見た場合、第2ワイヤー22の長手方向は、第2方向102である。
【0016】
第1方向101は、たとえば<11-20>方向である。第2方向102は、たとえば<1-100>方向である。第1方向101は、たとえば<11-20>方向を炭化珪素半導体チップ200の主表面に投影した方向であってもよい。第2方向102は、たとえば<1-100>方向を炭化珪素半導体チップ200の主表面に投影した方向であってもよい。なお、第1方向101が<1-100>方向であり、かつ第2方向102が<11-20>方向であってもよい。第1方向101および第2方向102の各々は、炭化珪素半導体チップ200の主表面に平行である。
【0017】
次に、第1実施形態に係る炭化珪素半導体チップ200の構成について説明する。
第1実施形態に係る炭化珪素半導体チップ200は、たとえばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を含んでいる。
図3に示されるように、MOSFET150は、炭化珪素基板100と、ゲート電極64と、ゲート絶縁膜71と、分離絶縁膜72と、ソース電極60(第1電極60)と、ドレイン電極63(第2電極63)とを主に有している。炭化珪素基板100は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有している。炭化珪素基板100は、炭化珪素単結晶基板4と、炭化珪素単結晶基板4上に設けられた炭化珪素エピタキシャル層3とを含んでいる。炭化珪素単結晶基板4は、第2主面2を構成している。炭化珪素エピタキシャル層3は、第1主面1を構成している。
【0018】
炭化珪素基板100の第1主面1は、たとえば{0001}面または{0001}面に対して8°以下オフした面である。具体的には、第1主面1は、たとえば(0001)面または(0001)面に対して8°以下オフした面である。第1主面1は、たとえば(000-1)面または(000-1)面に対して8°以下オフした面であってもよい。炭化珪素単結晶基板4は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素単結晶基板4の厚みは、たとえば350μm、あるいは500μm以下である。
【0019】
炭化珪素エピタキシャル層3は、ドリフト領域10(第1不純物領域10)と、ボディ領域30(第2不純物領域30)と、ソース領域40(第3不純物領域40)と、コンタクト領域8とを主に有している。ドリフト領域10は、炭化珪素単結晶基板4上に設けられている。ドリフト領域10は、たとえば窒素(N)などのn型不純物を含み、n型の導電型(第1導電型)を有している。ドリフト領域10のn型不純物の濃度は、炭化珪素単結晶基板4のn型不純物の濃度よりも低くてもよい。
【0020】
ボディ領域30はドリフト領域10上に設けられている。ボディ領域30は、たとえばアルミニウム(Al)などのp型不純物を含み、n型とは異なるp型の導電型(第2導電型)を有する。ボディ領域30のp型不純物の濃度は、ドリフト領域10のn型不純物の濃度よりも高くてもよい。ボディ領域30は、第1主面1および第2主面2の各々から離間している。
【0021】
ソース領域40は、ボディ領域30によってドリフト領域10から隔てられるようにボディ領域30上に設けられている。ソース領域40は、たとえば窒素またはリン(P)などのn型不純物を含んでおり、n型の導電型を有する。ソース領域40は、第1主面1の一部を構成している。ソース領域40のn型不純物の濃度は、ボディ領域30のp型不純物の濃度よりも高くてもよい。ソース領域40のn型不純物の濃度は、たとえば1×1019cm-3程度である。
【0022】
コンタクト領域8は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含んでおり、p型の導電型を有する。コンタクト領域8のp型不純物の濃度は、ボディ領域30のp型不純物の濃度よりも高くてもよい。コンタクト領域8は、ソース領域40を貫通し、ボディ領域30に接していてもよい。コンタクト領域8は、第1主面1の一部を構成する。コンタクト領域8のp型不純物の濃度は、たとえば1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0023】
図3に示されるように、第1主面1には、ゲートトレンチ7が設けられている。ゲートトレンチ7は、側面5と、底面6とを有している。底面6は、側面5に連なっている。側面5は、第1主面1に連なっている。側面5は、第1側面部51と、第2側面部52と、第3側面部53とを有している。第1側面部51は、ゲート絶縁膜71に接している。第1側面部51は、底面6に連なっている。第1側面部51は、第1不純物領域10と、第2不純物領域30と、第3不純物領域40とにより構成されている。
【0024】
第2側面部52は、分離絶縁膜72に接している。第2側面部52は、第1側面部51に連なっている。第2側面部52は、第1側面部51と第3側面部53との間に位置している。第3側面部53は、第2側面部52と第1主面1との間に位置している。第3側面部53は、第2側面部52および第1主面1の各々に連なっている。第2側面部52および第3側面部53の各々は、第3不純物領域40により構成されている。
【0025】
ゲート絶縁膜71は、たとえば二酸化珪素(SiO2)を含んでいる。ゲート絶縁膜71は、側面5および底面6の各々に接している。ゲート絶縁膜71は、側面5において、第1不純物領域10、第2不純物領域30および第3不純物領域40の各々に接している。ゲート絶縁膜71は、底面6において、第1不純物領域10に接している。ゲート絶縁膜71に接する第2不純物領域30には、チャネルが形成可能に構成されている。ゲート絶縁膜71の厚みは、たとえば40nm以上150nm以下である。
【0026】
ゲート電極64は、ゲート絶縁膜71上に設けられている。ゲート電極64は、ゲート絶縁膜71に接して配置されている。ゲート電極64は、ゲート絶縁膜71により形成される溝を埋めるように設けられている。ゲート電極64は、たとえば不純物がドーピングされたポリシリコンなどの導電体から構成されている。
【0027】
分離絶縁膜72は、ゲート電極64上に設けられている。分離絶縁膜72は、第1電極60とゲート電極64とを電気的に分離している。分離絶縁膜72は、第1電極60とゲート電極64との間に配置されている。分離絶縁膜72は、ゲート電極64を覆うように設けられている。分離絶縁膜72は、ゲート電極64およびゲート絶縁膜71の各々に接している。分離絶縁膜72は、たとえば窒化珪素(SiN)または酸窒化珪素(SiON)、もしくは不純物を含んだ二酸化珪素(SiO2)で構成されている。分離絶縁膜72は、側面5において第3不純物領域40に接していてもよい。分離絶縁膜72の厚み(第2厚みT2)は、たとえば0.2μmである。第2厚みT2は、たとえば0.1μm以上0.3μm以下であってもよい。
【0028】
ゲート絶縁膜71、ゲート電極64および分離絶縁膜72の各々は、ゲートトレンチ7の内部に設けられている。別の観点から言えば、第2主面2に対して垂直な方向において、ゲート絶縁膜71、ゲート電極64および分離絶縁膜72の各々は、第2主面2と第1主面1との間に位置している。第2主面2に対して垂直な方向において、ゲート絶縁膜71、ゲート電極64および分離絶縁膜72の各々は、第1主面1よりも第2主面2側に設けられている。
【0029】
第1電極60は、第1主面1上に設けられている。第1電極60は、第1主面1において、第3不純物領域40と接している。第1電極60は、第1主面1において、コンタクト領域8と接していてもよい。第1電極60は、分離絶縁膜72上に設けられている。第1電極60の一部は、ゲートトレンチ7の内部に設けられている。第1電極60の一部は、ゲートトレンチ7の内部に入り込んでいる。ゲートトレンチ7の内部に入り込んでいる第1電極60の厚み(第1厚みT1)は、たとえば0.1μmである。第1厚みT1は、たとえば0.05μm以上0.3μm以下であってもよい。第1電極60は、ゲートトレンチ7の内部において、分離絶縁膜72に接している。
【0030】
第1電極60は、たとえばソース電極である。第1電極60は、シリサイド膜61と、金属膜62とを有している。金属膜62は、シリサイド膜61上に設けられている。シリサイド膜61は、たとえばニッケルシリサイド(NiSi)またはチタンアルミニウムシリサイド(TiAlSi)を含む。シリサイド膜61は、第1主面1および第3側面部53の各々に接している。シリサイド膜61は、第1主面1において、第3不純物領域40に接している。シリサイド膜61は、第1主面1において、コンタクト領域8に接していてもよい。シリサイド膜61は、第3側面部53において、第3不純物領域40に接していてもよい。
【0031】
金属膜62は、ソース配線である。金属膜62は、たとえばアルミニウム(Al)を含む。金属膜62は、銅(Cu)を含んでいてもよい。シリサイド膜61および金属膜62の各々は、ゲートトレンチ7の内部において、分離絶縁膜72に接していてもよい。
【0032】
第2電極63は、第2主面2上に設けられている。第2電極63は、ドレイン電極である。第2電極63は、第2主面2において、炭化珪素単結晶基板4に接している。第2電極63は、第2主面2側において、第1不純物領域10と電気的に接続されている。第2電極63は、たとえばNiSi(ニッケルシリサイド)など、n型の炭化珪素単結晶基板4とオーミック接合可能な材料から構成されている。第2電極63は、炭化珪素単結晶基板4と電気的に接続されている。
【0033】
図4に示されるように、第1主面1に対して垂直な方向から見て、ゲートトレンチ7は、実質的に長方形状であってもよい。ゲートトレンチ7は、第1方向101に沿って延在している。第1方向101は、ゲートトレンチ7の長手方向である。第2方向102は、ゲートトレンチ7の短手方向である。複数のゲートトレンチ7は、第2方向102に沿って並列している。なお、
図3の断面は、
図4のIII-III線に沿った断面に対応する。
【0034】
次に、本実施形態に係るMOSFET150の動作について説明する。ゲート電極64に印加された電圧が閾値電圧未満の状態、すなわちオフ状態では、ソース電極60とドレイン電極63との間に電圧が印加されても、第2不純物領域30と第1不純物領域10との間のpn接合が逆バイアスとなり、非導通状態となる。一方、ゲート電極64に閾値電圧以上の電圧が印加されると、第2不純物領域30のゲート絶縁膜71と接触する付近であるチャネル領域において反転層が形成される。その結果、第2不純物領域30と第1不純物領域10とが電気的に接続され、ソース電極60とドレイン電極63との間に電流が流れる。以上のようにして、MOSFET150は動作する。
【0035】
次に、本実施形態に係るMOSFET150の製造方法について説明する。
まず、炭化珪素基板100を準備する工程が実施される。たとえば昇華法によって製造された炭化珪素インゴット(図示せず)がスライスされることにより、炭化珪素単結晶基板4が準備される。炭化珪素単結晶基板4の最大径は、たとえば100mm以上であり、好ましくは150mm以上である。
【0036】
次に、炭化珪素エピタキシャル層3を形成する工程が実施される。たとえば原料ガスとしてシラン(SiH
4)とプロパン(C
3H
8)との混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素(H
2)を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、炭化珪素単結晶基板4上に炭化珪素エピタキシャル層3がエピタキシャル成長により形成される(
図5参照)。エピタキシャル成長の際、たとえば窒素などのn型不純物が炭化珪素エピタキシャル層3に導入される。
【0037】
次に、イオン注入工程が実施される。たとえばアルミニウムなどのp型不純物が炭化珪素エピタキシャル層3に対してイオン注入される。これにより、ボディ領域30が形成される。次に、たとえばリンなどのn型不純物がボディ領域30に対してイオン注入される。これにより、ソース領域40が形成される。次に、コンタクト領域8が形成される領域上に開口部を有するマスク層(図示せず)が形成される。次に、たとえばアルミニウムなどのp型不純物がソース領域40に注入される。これによりソース領域40およびボディ領域30の各々と接するコンタクト領域8が形成される(
図6参照)。
【0038】
次に、炭化珪素基板100に注入された不純物イオンを活性化するために活性化アニールが実施される。活性化アニールの温度は、好ましくは1500℃以上1900℃以下であり、たとえば1700℃程度である。活性化アニールの時間は、たとえば30分程度である。活性化アニールの雰囲気は、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、たとえばAr雰囲気である。以上により、炭化珪素基板100が準備される。炭化珪素基板100は、第1主面1と、第2主面2とを有する。ソース領域40およびコンタクト領域8は、第1主面1を構成している。
【0039】
次に、ゲートトレンチ7を形成する工程が実施される。まず、マスク層31が第1主面1上に形成された状態で、炭化珪素基板100がエッチングされる。具体的には、たとえばソース領域40の一部と、ボディ領域30の一部とがエッチングにより除去される。エッチングの方法としては、たとえば反応性イオンエッチング、特に誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。たとえば反応ガスとして六フッ化硫黄(SF6)またはSF6と酸素(O2)との混合ガスを用いた誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。エッチングにより、ゲートトレンチ7が形成されるべき領域に、第1主面1に対してほぼ垂直な側部と、側部と連続的に設けられ、かつ第1主面1とほぼ平行な底とを有する凹部が形成される。
【0040】
次に、凹部において熱エッチングが行われる。熱エッチングは、第1主面1上にマスク層31が形成された状態で、少なくとも1種類以上のハロゲン原子を有する反応性ガスを含む雰囲気中での加熱によって行い得る。少なくとも1種類以上のハロゲン原子は、塩素(Cl)原子およびフッ素(F)原子の少なくともいずれかを含む。当該雰囲気は、たとえば、塩素(Cl
2)、三塩化ホウ素(BCl
3)、SF
6または四フッ化炭素(CF
4)を含む。たとえば、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスを反応ガスとして用い、熱処理温度を、たとえば800℃以上900℃以下として、熱エッチングが行われる。なお、反応ガスは、上述した塩素ガスと酸素ガスとに加えて、キャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、たとえば窒素ガス、アルゴンガスまたはヘリウムガスなどを用いることができる。熱エッチングにより、炭化珪素基板100の第1主面1にゲートトレンチ7が形成される(
図7参照)。
【0041】
側面5は、ソース領域40およびボディ領域30を貫通してドリフト領域10に至っている。別の観点から言えば、側面5は、ソース領域40と、ボディ領域30と、ドリフト領域10とによって構成されている。底面6は、ドリフト領域10に位置している。別の観点から言えば、底面6は、ドリフト領域10によって構成されている。底面6は、たとえば第2主面2と平行な平面である。
図7に示されるように、ゲートトレンチ7の長手方向に対して垂直な断面において、ゲートトレンチ7の幅は、底面6から第1主面1に向かうにつれて拡がっている。
【0042】
次に、ゲート絶縁膜71を形成する工程が実施される。たとえば炭化珪素基板100を熱酸化することにより、ソース領域40と、ボディ領域30と、ドリフト領域10と、コンタクト領域8と、第1主面1とに接するゲート絶縁膜71が形成される。具体的には、炭化珪素基板100が、酸素を含む雰囲気中において、たとえば1300℃以上1400℃以下の温度で加熱される。これにより、ゲートトレンチ7に接するゲート絶縁膜71が形成される。
【0043】
次に、一酸化窒素(NO)ガス雰囲気中において炭化珪素基板100に対して熱処理(NOアニール)が行われてもよい。NOアニールにおいて、炭化珪素基板100が、たとえば1100℃以上1400℃以下の条件下で1時間程度保持される。これにより、ゲート絶縁膜71とボディ領域30との界面領域に窒素原子が導入される。その結果、界面領域における界面準位の形成が抑制されることで、チャネル移動度を向上させることができる。
【0044】
NOアニール後、雰囲気ガスとしてアルゴン(Ar)を用いるArアニールが行われてもよい。Arアニールの加熱温度は、たとえば上記NOアニールの加熱温度以上である。Arアニールの時間は、たとえば1時間程度である。これにより、ゲート絶縁膜71とボディ領域30との界面領域における界面準位の形成がさらに抑制される。なお、雰囲気ガスとして、Arガスに代えて窒素ガスなどの他の不活性ガスが用いられてもよい。
【0045】
次に、ゲート電極64を形成する工程が実施される。ゲート電極64は、ゲート絶縁膜71上に形成される。ゲート電極64は、たとえばLP-CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により形成される。ゲート電極64は、ゲート絶縁膜71により形成された溝を埋めるように形成される。ゲート電極64は、ソース領域40と、ボディ領域30と、ドリフト領域10との各々に対面するように形成される(
図8参照)。
【0046】
次に、ゲート絶縁膜71およびゲート電極64の各々の一部が除去される。具体的には、第1主面1上のゲート絶縁膜71およびゲート電極64の各々と、ゲートトレンチ7内に設けられていたゲート絶縁膜71およびゲート電極64の各々の一部が、たとえばドライエッチングにより除去される。これにより、第1主面1および側面5の一部が、ゲート絶縁膜71から露出する。
【0047】
次に、分離絶縁膜72を形成する工程が実施される。具体的には、ゲートトレンチ7内において、ゲート電極64を覆うように分離絶縁膜72が形成される。分離絶縁膜72は、たとえば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される。分離絶縁膜72は、常圧CVD法により形成されてもよいし、プラズマCVD法により形成されてもよいし、低圧CVD法により形成されてもよい。分離絶縁膜72は、たとえば二酸化珪素を含む材料である。分離絶縁膜72は、ゲートトレンチ7内において、ゲート電極64およびゲート絶縁膜71の各々に接している。
【0048】
次に、第1電極60を形成する工程が実施される。たとえば、第1主面1においてソース領域40およびコンタクト領域8の各々に接し、かつ側面5においてソース領域40に接する電極膜61が形成される。電極膜61は、たとえばスパッタリング法により形成される。電極膜61は、たとえばTi、AlおよびSiを含む材料から構成される。
【0049】
次に、電極膜61が、たとえば900℃以上1100℃以下の温度で5分程度保持される。これにより、電極膜61の少なくとも一部が、炭化珪素基板100が含む珪素と反応してシリサイド化する。これにより、ソース領域40とオーミック接合する電極膜61が形成される。電極膜61は、コンタクト領域8とオーミック接合してもよい。これにより、第1主面1および側面5の各々に接するシリサイド膜61が形成される。次に、金属膜62が形成される。金属膜62は、シリサイド膜61および分離絶縁膜72の各々の上に形成される。金属膜62は、たとえばアルミニウムを含む。金属膜62は、銅を含んでいてもよい。金属膜62の一部は、ゲートトレンチ7の内部に入り込むように形成される。以上により、シリサイド膜61と金属膜62とを含む第1電極60が形成される(
図9参照)。
【0050】
次に、炭化珪素基板100の第2主面2において、裏面研磨が行われる。これにより、炭化珪素基板100の厚みが低減される。次に、第2電極63を形成する工程が実施される。たとえばスパッタリング法により、第2主面2と接する第2電極63が形成される。第2電極63は、たとえばNiSiまたはTiAlSiを含む材料から構成されている。以上により、本実施形態に係るMOSFET150(
図3)が完成する。
【0051】
上記実施の形態では、n型を第1導電型とし、かつp型を第2導電型して説明したが、p型を第1導電型とし、かつn型を第2導電型としてもよい。また上記実施の形態では、炭化珪素半導体チップ200が含むトランジスタとして、MOSFETを例に挙げて説明したが、炭化珪素半導体チップ200が含むトランジスタは、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などであってもよい。炭化珪素半導体チップ200が含むトランジスタがIGBTの場合、第1電極はエミッタ電極に対応し、第2電極はコレクタ電極に対応する。p型領域とn型領域との境界面(つまりPN界面)の位置は、たとえばSCM(Scanning Capacitance Microscope)により特定することができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る炭化珪素半導体チップ200が含むMOSFET150の構成について説明する。第2実施形態に係るMOSFET150は、主に分離絶縁膜72が底面6に向かって突出するように湾曲していている構成において、第1実施形態に係るMOSFET150と異なっており、他の構成については、第1実施形態に係るMOSFET150と同様である。以下、第1実施形態に係るMOSFET150と異なる構成を中心に説明する。
【0053】
図10に示されるように、第2実施形態に係るMOSFET150において、分離絶縁膜72は、底面6に向かって突出するように湾曲していている。第1電極60は、分離絶縁膜72に接する接触面9を有している。接触面9は、底面6に向かって突出するように湾曲していてもよい。接触面9は、たとえば電極膜61によって構成されている。分離絶縁膜72は、第3主面82と、第4主面81とを有している。第4主面81は、第3主面82の反対側にある。第3主面82は、第1電極60に接している。第4主面81は、ゲート絶縁膜71およびゲート電極64の各々に接している。第3主面82は、凹状である。第3主面82は、底面6に向かって凹むように湾曲している。第4主面81は、凸状である。第4主面81は、底面6に向かって突出するように湾曲している。ゲート電極64は、第5主面83を有している。第5主面83は、分離絶縁膜72に接している。第5主面83は、凹状である。第5主面83は、底面6に向かって凹むように湾曲している。
【0054】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る炭化珪素半導体チップ200が含むMOSFET150の構成について説明する。第3実施形態に係るMOSFET150は、主に第1電極60は、シリサイド膜61と、金属膜62と、チタン膜65と、窒化チタン膜66とを有している構成において、第1実施形態に係るMOSFET150と異なっており、他の構成については、第1実施形態に係るMOSFET150と同様である。以下、第1実施形態に係るMOSFET150と異なる構成を中心に説明する。
【0055】
図11に示されるように、第3実施形態に係るMOSFET150おいて、第1電極60は、シリサイド膜61と、金属膜62と、チタン膜65と、窒化チタン膜66とを有している。チタン膜65は、シリサイド膜61上に設けられている。チタン膜65は、シリサイド膜61に接している。チタン膜65は、ゲートトレンチ7の内部に配置されていてもよい。チタン膜65は、ゲートトレンチ7の内部において、分離絶縁膜72およびシリサイド膜61の各々に接していてもよい。
【0056】
窒化チタン膜66は、チタン膜65上に設けられている。窒化チタン膜66は、チタン膜65に接している。窒化チタン膜66は、ゲートトレンチ7の内部に配置されていてもよい。窒化チタン膜66は、ゲートトレンチ7の内部において、チタン膜65に接していてもよい。金属膜62は、窒化チタン膜66上に設けられている。金属膜62は、窒化チタン膜66に接している。金属膜62は、ゲートトレンチ7の内部に配置されていてもよい。金属膜62は、ゲートトレンチ7の内部において、窒化チタン膜66に接していてもよい。
【0057】
次に、上記実施形態に係る炭化珪素半導体チップ200および炭化珪素半導体装置300の作用効果について説明する。
【0058】
炭化珪素半導体装置300においては、一般的にワイヤーボンディングによって炭化珪素半導体チップ200とリードフレーム20とが電気的に接続される。具体的には、ソースワイヤー(第1ワイヤー21)は、ソース電極(第1電極60)に接続される。第1ワイヤー21を第1電極60に接続する際、第1ワイヤー21に対して超音波が印加される。超音波の主な振動方向は、第3方向103(
図1および
図2参照)である。第3方向103は、第1主面1に平行であり、かつ第1主面1に対して垂直な方向から見て、第1ワイヤー21が延在する方向である(
図2参照)。
【0059】
第1ワイヤー21が第1電極60にワイヤーボンディングによって接続される際、第1電極60に対しても第3方向103の振動が加えられる。その際、第1電極60が炭化珪素基板100から剥がれる場合があった。特に、パワーデバイスの性能が向上し、第1電極60に対して大電流を流すことができるようになると、第1ワイヤー21の直径も大きくする必要がある。たとえば第1ワイヤー21の直径が400μm以上程度に大きくなると、ワイヤーボンディングの際に第1ワイヤー21に印加される荷重、超音波の出力、周波数等も大きくなる。結果として、第1電極60に対して印加される振動も大きくなり、第1電極60が炭化珪素基板100から剥がれやすくなる。また、荷重、超音波の出力、周波数を抑えると、第1ワイヤー21と第1電極60との間の接合強度が弱くなり、この界面での剥がれが発生してしまう。
【0060】
上記実施形態に係る炭化珪素半導体装置300によれば、第1電極60は、分離絶縁膜72上に設けられ、かつ第1電極60の一部はゲートトレンチ7の内部に設けられている。これにより、第1電極60の一部は、ゲートトレンチ7の内部に埋め込まれているため、ゲートトレンチ7の内部に保持される(アンカー効果)。そのため、ワイヤーボンディングの際に第1電極60に振動が印加された場合であっても、第1電極60が炭化珪素基板100から剥がれることを抑制することができる。
【0061】
また上記実施形態に係る炭化珪素半導体装置300によれば、シリサイド膜61は、第1主面1および第3側面部53の各々に接している。そのため、シリサイド膜61が第1主面1のみに接している場合と比較して、シリサイド膜61と炭化珪素基板100との接触抵抗を低減することができる。
【0062】
さらに上記実施形態に係る炭化珪素半導体装置300によれば、分離絶縁膜72は、窒化珪素または酸窒化珪素を含んでいてもよい。ゲート絶縁膜71は、二酸化珪素を含んでいてもよい。窒化珪素および酸窒化珪素の各々は、二酸化珪素と比較して絶縁性能が高い。そのため、第1電極60とゲート電極64との間の絶縁性を向上することができる。
【0063】
さらに上記実施形態に係る炭化珪素半導体装置300によれば、分離絶縁膜72は、底面6に向かって突出するように湾曲していてもよい。これにより、第1電極60は、分離絶縁膜72の凹みに埋め込まれる。そのため、第1電極60が炭化珪素基板100から剥がれることをさらに抑制することができる。
【0064】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 第1主面、2 第2主面、3 炭化珪素エピタキシャル層、4 炭化珪素単結晶基板、5 側面、6 底面、7 ゲートトレンチ、8 コンタクト領域、9 接触面、10 第1不純物領域(ドリフト領域)、20 リードフレーム、21 第1ワイヤー、22 第2ワイヤー、30 第2不純物領域(ボディ領域)、31 マスク層、40 第3不純物領域(ソース領域)、51 第1側面部、52 第2側面部、53 第3側面部、60 第1電極(ソース電極)、61 シリサイド膜(電極膜)、62 金属膜、63 第2電極(ドレイン電極)、64 ゲート電極、65 チタン膜、66 窒化チタン膜、67 パッシベーション膜、71 ゲート絶縁膜、72 分離絶縁膜、81 第4主面、82 第3主面、83 第5主面、100 炭化珪素基板、101 第1方向、102 第2方向、103 第3方向、150 MOSFET、200 炭化珪素半導体チップ、300 炭化珪素半導体装置、T1 第1厚み、T2 第2厚み。