(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】自動分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
G01N35/04 G
(21)【出願番号】P 2021009266
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003993
【氏名又は名称】弁理士法人野口新生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】関 克彦
(72)【発明者】
【氏名】柴田 光
(72)【発明者】
【氏名】松本 博幸
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120509(JP,A)
【文献】特表2015-514215(JP,A)
【文献】特開昭63-188759(JP,A)
【文献】実開平03-072355(JP,U)
【文献】特開昭57-037263(JP,A)
【文献】登録実用新案第3178839(JP,U)
【文献】特開2017-096895(JP,A)
【文献】特表2019-502924(JP,A)
【文献】特開2000-121646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10,
G01N 30/16,30/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転送元装置と、
前記転送元装置に隣接して配置され、前記転送元装置側に開閉扉が設けられている転送先装置と、
サンプル容器に収容されたサンプルを前記転送元装置から前記転送先装置内へ前記開閉扉を介して転送するための転送システムと、を備え、
前記転送システムは、
先端及び基端を有し、前記先端が前記転送先装置側を向き、前記サンプル容器を着脱可能に保持するための第1のキャッチャを先端部に有するアームと、
前記転送元装置内に設けられ、前記アームを駆動して前記第1のキャッチャを前記転送元装置内の第1の位置と前記第1の位置と同一水平面内に設けられた前記転送先装置内の第2の位置との間で水平方向へのみ移動させる駆動機構と、
前記転送先装置内に設けられ、前記第1の位置から前記第2の位置に向かって水平方向へ移動してきた前記第1のキャッチャに保持されている前記サンプル容器を受動的に保持して前記第1のキャッチャとの間で前記サンプル容器の受渡しを行なうように設けられた第2のキャッチャと、を備えており、
前記転送先装置の前記開閉扉は、前記アームの前記第1のキャッチャが前記
転送先装置内にあるときは開放され、前記アームの前記第1のキャッチャが前記
転送先装置の外側にあるときは閉じられるように構成されている、自動分析システム。
【請求項2】
前記駆動機構の動作を制御し、前記第1のキャッチャから前記第2のキャッチャへ前記サンプル容器の受渡しが行われた直後に、前記第1のキャッチャを前記第1の位置へ移動させるように構成された制御部をさらに備えている、請求項1に記載の自動分析システム。
【請求項3】
前記アームは、前記第1のキャッチャによる前記サンプル容器の保持状態のロックとアンロックを行なうためのロック機構を備え、
前記制御部は、前記ロック機構を制御し、前記第1のキャッチャから前記第2のキャッチャへ前記サンプル容器の受渡しを行なう際に前記アンロックを行なうように構成されている、請求項2に記載の自動分析システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2のキャッチャから前記第1のキャッチャへの前記サンプル容器の受渡しを行なう際に前記ロックを行なうように構成されている、請求項3に記載の自動分析システム。
【請求項5】
前記ロック機構は、前記ロックと前記アンロックを切り替えるためのソレノイドを備えている、請求項3又は4に記載の自動分析システム。
【請求項6】
前記第2のキャッチャは、弾性体の弾性力によって前記サンプル容器を受動的に保持するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の自動分析システム。
【請求項7】
前記サンプル容器がセットされる容器ホルダを備え、
前記第1のキャッチャ及び前記第2のキャッチャは、前記容器ホルダにセットされた状態の前記サンプル容器を着脱可能に保持するように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の自動分析システム。
【請求項8】
前記転送システムは、前記サンプル容器がセットされる容器ホルダを備え、
前記転送元装置は、サンプルに対する所定の処理を実行し、前記所定の処理が施されたサンプルが収容されたサンプル容器を、当該転送元装置内の第1の位置において、前記転送システムの前記容器ホルダに設置するように構成された処理装置であり、
前記転送先装置は、前記転送システムによって前記転送元装置から当該転送先装置内へ転送された前記サンプル容器からサンプルを採取し、採取したサンプルの分析を実行するように構成された分析装置である、請求項1に記載の自動分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転送システム及び自動分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
全血、血清、血漿、尿などのサンプルの前処理を実行する前処理装置と、前処理装置において所定の前処理が施されたサンプルの分析を実行する液体クロマトグラフなどの分析装置とが組み合わせられ、サンプルの前処理から分析までの一連の動作を全自動で実行する自動分析システムが構築される場合がある(特許文献1参照。)。
【0003】
上記のような自動分析システムには、前処理装置において前処理が施されたサンプルを分析装置へ転送する転送システムが必要である。転送システムは、サンプルを収容するサンプル容器を保持して搬送するアームを備え、アームによって分析装置のオートサンプラ内の所定位置へサンプル容器を配置するように構成されている。分析装置のオートサンプラは、転送システムのアームによって所定位置に配置されたサンプル容器からニードルを用いてサンプルを採取する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分析装置のオートサンプラは、サンプルの温度を一定に維持するために内部空間が密閉されて外気と熱的に遮断されていることが望ましい。一方で、転送システムによる前処理装置からオートサンプラへのサンプル容器の転送を可能とするためには、転送システムのアームが前処理装置からオートサンプラへアクセスできるようになっている必要がある。そのため、オートサンプラの側面には、転送システムのアームがサンプル容器をオートサンプラ内へ移動させている間だけ開放状態とされる開閉扉が設けられる。
【0006】
オートサンプラにおいてサンプル容器からのサンプルの採取が行われている間は、サンプル容器を保持した転送装置のアームがオートサンプラの内部空間へアクセスした状態で待機することになる。その間、オートサンプラの開閉扉は開放されているため、オートサンプラの内部空間が外気に暴露され、オートサンプラの内部空間の温度が変動して結露が発生したり消費電力が増加したりするという問題がある。また、転送装置のアームがオートサンプラ内にアクセスしていると、オートサンプラの機構にアームが干渉し、オートサンプラの動作を阻害することも考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、転送システムのアームが転送先装置内へアクセスしている時間を短縮することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る転送システムは、サンプルを収容するサンプル容器を、転送元装置から前記転送元装置に隣接して配置された転送先装置へ転送するための転送システムであって、先端及び基端を有し、前記先端が前記転送先装置側を向き、前記サンプル容器を着脱可能に保持するための第1のキャッチャを先端部に有するアームと、前記転送元装置内に設けられ、前記アームを駆動して前記第1のキャッチャを前記転送元装置内の第1の位置と前記転送先装置内の第2の位置との間で移動させる駆動機構と、前記転送先装置内に設けられ、前記第1のキャッチャが前記第2の位置にきたときに、前記第1のキャッチャとの間で前記サンプル容器の受渡しを行なうように設けられた第2のキャッチャと、を備えている。
【0009】
本発明に係る自動分析システムは、転送元装置と、前記転送元装置に隣接して配置された転送先装置と、サンプルを収容するサンプル容器を前記転送元装置と前記転送先装置との間で転送するための上述の転送システムと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る転送システムでは、サンプル容器をアームの先端に設けられた第1のキャッチャが着脱可能に保持するように構成されており、アームが転送先装置内の第2の位置まできたときに、アームの先端の第1のキャッチャと転送先装置内に設けられた第2のキャッチャとの間でサンプル容器の受渡しを行なうように構成されている。このような構成により、第1のキャッチャから第2のキャッチャへサンプル容器の受渡しを行なった後、転送先装置内にサンプル容器を残置した状態でアームを転送元装置側へ引き戻すことができ、転送システムのアームが転送先装置内へアクセスしている時間を短縮することができる。
【0011】
本発明に係る分析システムでは、転送元装置と転送先装置との間でサンプル容器の転送を行なうための転送システムとして上述の転送システムを採用しているので、転送システムのアームが転送先装置内へアクセスしている時間を短縮することができる。これにより、転送システムのアームが転送元装置側へ引き戻された後は転送先装置の内部空間を密閉状態にすることができ、転送先装置の内部空間が外気に暴露される時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】自動分析システムに組み込まれた転送システムの一実施例を示す、上方から見た概略構成図である。
【
図2】同実施例における容器ホルダの正面図である。
【
図3】同実施例において、サンプル容器を分析装置へ転送している状態を示す図である。
【
図4】同実施例において、サンプル容器を分析装置へ転送した後の状態を示す図である。
【
図5】同実施例におけるロック機構の構造を説明するための図であって、第1のキャッチャによる容器ホルダの保持がロックされている状態を示す図である。
【
図6】同実施例におけるロック機構の構造を説明するための図であって、第1のキャッチャによる容器ホルダの保持がアンロックされている状態を示す図である。
【
図7】同実施例における、前処理装置から分析装置へのサンプルの転送動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る転送システム及び自動分析システムの一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1に示されているように、互いに隣接して配置された前処理装置100及び分析装置200によって自動分析システムが構築されている。前処理装置100は、分析対象のサンプルの前処理を実行する装置であり、国際公開第2016/017042号に開示されている前処理装置と同等の構成を有するものであってよい。分析装置200は、前処理装置100において前処理が施されたサンプルの分析を実行する装置であり、液体クロマトグラフなどであってよい。
【0015】
自動分析システムには、前処理装置100(転送元装置)から分析装置200(転送先装置)へ前処理済みのサンプルを転送するための転送システム1が組み込まれている。前処理済みのサンプルはサンプル容器S(
図3等参照)に収容された状態で分析装置200へ転送される。分析装置200では、転送システム1によって転送されてきたサンプル容器S内のサンプルがニードル等によって採取され、分析に供される。
【0016】
転送システム1は、主に、アーム2、第1のキャッチャ4、容器ホルダ6、ソレノイド10、リニアガイド12、モータ14、第2のキャッチャ16及び制御部22を備えている。
【0017】
アーム2は略水平方向へ伸びるように設けられており、先端が分析装置200へ向いている。アーム2の先端に第1のキャッチャ4が設けられている。第1のキャッチャ4は、分析装置200に向かって伸びるように設けられた2本の爪4aによって容器ホルダ6を着脱可能に保持することができる。
【0018】
図2に示されているように、容器ホルダ6は、上方が開口した穴8を有し、サンプル容器Sが穴8に嵌め込まれることによりセットされる。容器ホルダ6は側面上部から略水平方向へ突出したフランジ部6aを備えている。第1のキャッチャ4が容器ホルダ6を保持する際は、第1のキャッチャ4の爪4aがフランジ部6aの下に入り込み、フランジ部6aの下面を支持する。ソレノイド10は、第1のキャッチャ4による容器ホルダ6の保持状態のロック/アンロックを行なうロック機構を構成するものである。ロック機構については後述する。
【0019】
図1に戻って説明を続ける。リニアガイド12は、アーム2を軸方向(図において左右方向)へスライドさせるためのものであって、前処理装置100内において略水平に伸びるように設けられている。モータ14は、アーム2に設けられたラックギア(図示は省略)と噛合するピニオンギア15(
図3参照)を回転させることによってアーム2を移動させるためのものである。リニアガイド12及びモータ14は、アーム2を軸方向へ移動させるための駆動機構を構成している。
【0020】
アーム2は、モータ14が駆動されることによって、第1のキャッチャ4を前処理装置100内の第1の位置に配置した状態と、第1のキャッチャ4を分析装置200内の第2の位置に配置した状態となる。すなわち、アーム2は、第1のキャッチャ4が前処理装置100内の第1の位置と分析装置200内の第2の位置との間で移動するように軸方向に駆動される。
図1は第1のキャッチャ4が第1の位置に配置されている状態を示しており、
図3は第1のキャッチャ4が第2の位置に配置されている状態を示している。
【0021】
第2のキャッチャ16は分析装置200内に設けられている。第2のキャッチャ16は、アーム2の第1のキャッチャ4が第2の位置まできたときに、容器ホルダ6を第1のキャッチャ4から受け取って着脱可能に保持するように構成されている。第2のキャッチャ16は、容器ホルダ6の外面を弾性力によって保持するための板バネ等の弾性体18を備えている。第2のキャッチャ16は、容器ホルダ6が弾性体18の内側へ挿し込まれることによって保持し、保持している容器ホルダ6が前処理装置100側へ引き抜かれることによって容器ホルダ6を開放する。すなわち、第2のキャッチャ16は、容器ホルダ6の保持及び開放を受動的に行なうものである。
【0022】
この実施例では、第2のキャッチャ16は、分析装置200の構成要素であるオートサンプラ内に設けられたサンプルラック20の端部に設けられている。サンプルラック20は、分析対象のサンプルを収容する複数のサンプル容器がセットされるラックである。また、分析装置200のオートサンプラの前処理装置100側の壁面には、アーム2を通過させるための開閉扉202が設けられている。開閉扉202は、転送システム1のアーム2が第2のキャッチャ16に向かって移動するときにアーム2によって押し開けられるものであり、アーム2が第1の状態(
図1の状態)にあるときは、分析装置200のオートサンプラの内部空間が密閉されている。
図3では、開閉扉202がアーム2によって押し開けられていることを表すために、開閉扉202が破線で示されている。
【0023】
アーム2が容器ホルダ6を搬送する際は、ソレノイド10を含むロック機構によって、容器ホルダ6が第1のキャッチャ4に保持された状態でロックされる。アーム2によって容器ホルダ6が
図3に示す第2の位置まで搬送されると、容器ホルダ6が第1のキャッチャ4に保持された状態がアンロックされる。その状態でアーム2を前処理装置100側へ引き戻すと、
図4に示されているように、容器ホルダ6は第2のキャッチャ16に保持された状態で分析装置200内に残置される。これにより、分析装置200内においてサンプル容器Sからサンプルの採取が行われている間に、アーム2を前処理装置100内へ引き戻し、それによって開閉扉202が閉じられた状態にすることができる。
【0024】
第1のキャッチャ4による容器ホルダ6の保持のロック/アンロックを行なうロック機構は、
図5及び
図6に示されているように、ソレノイド10、バー24、軸26、ロックピン28及び固定用金具30によって構成されている。バー24は軸26によって回動可能に支持されている。ソレノイド10は、オン時にバー24の一端を押圧するように設けられ、ソレノイド10のオン時とオフ時でバー24の他端の位置が変位するようになっている。バー24の一端にロックピン28が取り付けられている。固定用金具30は、容器ホルダ6の背面(アーム2の基端側を向く面)に取り付けられている。固定用金具30は容器ホルダ6の平面から略水平に伸びている。固定用金具30には、バー24のロックピン26を挿し込むための貫通穴30aが設けられている。
【0025】
図5に示されているように、第1のキャッチャ4に容器ホルダ6が保持された状態でソレノイド10がオフにされると、ロックピン28が固定用金具30の貫通穴30aに挿し込まれ、容器ホルダ6が第1のキャッチャ4に固定された状態でロックされる。そして、ソレノイド10がオンにされると、
図6に示されているように、ロックピン28が固定用金具30の貫通穴30aから引き抜かれ、容器ホルダ6が第1のキャッチャ4に固定された状態がアンロックされる。この状態は、容器ホルダ6が第1のキャッチャ4から離脱可能な状態である。
【0026】
駆動機構を構成するモータ14及びロック機構を構成するソレノイド10の動作は、制御部22によって制御される。制御部22は、CPU等を備えた電子回路によって実現されるものである。そのような電子回路は、前処理装置100内に設けられて前処理装置100の各構成要素の動作制御を行なう電子回路によって実現されてもよい。なお、ロック機構の構成は、ここで説明したものに限定されず、他の機械的又は電磁的な構成を有するものであってもよい。
【0027】
制御部22によって実現される、前処理装置100から分析装置200へのサンプルの転送動作の一例を、
図1、
図3、
図4とともに
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0028】
前処理装置100において分析対象のサンプルの前処理が終了すると、前処理済みのサンプルがサンプル容器Sに収容された状態で、第1の位置に待機している第1のキャッチャ4に保持された容器ホルダ6にセットされる。容器ホルダ6にサンプル容器Sがセットされると、制御部22は、第1のキャッチャ4が分析装置200内の第2の位置に到達するまで、アーム2を分析装置200側へ移動させる(ステップ101、102)。
【0029】
第1のキャッチャ4が分析装置200内の第2の位置に到達すると、容器ホルダ6は第2のキャッチャ16によって保持される(
図3参照)。この状態で、制御部22は、第1のキャッチャ4による容器ホルダ6の保持をアンロックし(ステップ103)、アーム2を前処理装置100へ引き戻す(ステップ104)。容器ホルダ6に保持されたサンプル容器Sは容器ホルダ6とともに分析装置200内に残置される(
図4参照)。分析装置200では、ニードルを用いてサンプル容器S内のサンプルの採取が行われる。制御部22は、分析装置200におけるサンプル容器Sからのサンプルの採取が終了するまで、アーム2を前処理装置100内で待機させる(ステップ105)。分析装置200におけるサンプル容器Sからのサンプルの採取が終了したか否かは、前処理装置100及び分析装置200を統括的に管理しているコントローラ(図示されていない)からの信号に基づいて検知することができる。
【0030】
分析装置200におけるサンプル容器Sからのサンプルの採取が終了すると、制御部22は、再び、第1のキャッチャ4が分析装置200内の第2の位置に到達するまで、アーム2を分析装置200側へ移動させる(ステップ106、107)。第1のキャッチャ4が分析装置200内の第2の位置に到達すると、容器ホルダ6は第1のキャッチャ6によって保持される(
図3参照)。この状態で、制御部22は、第1のキャッチャ4による容器ホルダ6の保持をロックし(ステップ108)、アーム2を前処理装置100へ引き戻す(ステップ109)。これにより、第1のキャッチャ4に保持された容器ホルダ6は第2のキャッチャ16から離脱し、サンプル容器Sとともに前処理装置100に戻される。これにより、前処理装置100から分析装置200へのサンプルの転送が完了する。その後、前処理装置100に戻された使用済みのサンプル容器Sは、前処理装置100内に設けられている別の搬送機構によって廃棄ポートへ搬送され、廃棄される。
【0031】
なお、以上において説明した実施例は、本発明に係る転送システム及び自動分析システムの実施形態の一例を示したに過ぎない。本発明に係る転送システム及び自動分析システムの実施形態は以下のとおりである。
【0032】
本発明に係る転送システムの一実施形態では、サンプルを収容するサンプル容器を、転送元装置から前記転送元装置に隣接して配置された転送先装置へ転送するための転送システムであって、先端及び基端を有し、前記先端が前記転送先装置側を向き、前記サンプル容器を着脱可能に保持するための第1のキャッチャを先端部に有するアームと、前記転送元装置内に設けられ、前記アームを駆動して前記第1のキャッチャを前記転送元装置内の第1の位置と前記転送先装置内の第2の位置との間で移動させる駆動機構と、前記転送先装置内に設けられ、前記第1のキャッチャが前記第2の位置にきたときに、前記第1のキャッチャとの間で前記サンプル容器の受渡しを行なうように設けられた第2のキャッチャと、を備えている。
【0033】
転送システムの上記一実施形態の第1態様では、前記駆動機構の動作を制御し、前記第1のキャッチャから前記第2のキャッチャへ前記サンプル容器の受渡しが行われた直後に、前記第1のキャッチャを前記第1の位置へ移動させるように構成された制御部をさらに備えている。このような態様により、アームが転送先装置内へアクセスしている時間が短縮される。
【0034】
上記第1態様において、前記アームは、前記第1のキャッチャによる前記サンプル容器の保持状態のロックとアンロックを行なうためのロック機構を備えることができ、前記制御部は、前記ロック機構を制御し、前記第1のキャッチャから前記第2のキャッチャへ前記サンプル容器の受渡しを行なう際に前記アンロックを行なうように構成することができる。
【0035】
上記の場合、前記制御部は、前記第2のキャッチャから前記第1のキャッチャへの前記サンプル容器の受渡しを行なう際に前記ロックを行なうように構成することができる。
【0036】
上記ロック機構としては、前記ロックと前記アンロックを切り替えるためのソレノイドを備えたものであってもよい。
【0037】
また、転送システムの上記一実施形態の第2態様では、前記第2のキャッチャは、弾性体の弾性力によって前記サンプル容器を受動的に保持するように構成されている。このような態様により、第2のキャッチャの構造が簡単なものとなり、転送システムにかかるコストの低減を図ることができる。この第2態様は、上記第1態様と組み合わせることができる。
【0038】
また、転送システムの上記一実施形態の第3態様では、前記サンプル容器がセットされる容器ホルダを備え、前記第1のキャッチャ及び前記第2のキャッチャは、前記容器ホルダにセットされた状態の前記サンプル容器を着脱可能に保持するように構成されている。このように、転送先装置内に、サンプル容器がセットされる容器ホルダごと残置する態様とすることで、転送元装置から転送先装置へサンプル容器を転送する際に、容器ホルダからサンプル容器を取り出す必要がないので、システム構成が簡略化され、コストの低減を図ることができる。
【0039】
本発明に係る自動分析システムの一実施形態では、転送元装置と、前記転送元装置に隣接して配置された転送先装置と、サンプルを収容するサンプル容器を前記転送元装置から前記転送先装置へ転送するための、上述の転送システムと、を備えている。
【0040】
自動分析システムの上記一実施形態において、前記転送システムは、前記サンプル容器がセットされる容器ホルダを備えることができ、前記転送元装置は、サンプルに対する所定の処理を実行し、前記所定の処理が施されたサンプルが収容されたサンプル容器を、当該転送元装置内の第1の位置において、前記転送システムの前記容器ホルダに設置するように構成された処理装置であってもよく、前記転送先装置は、前記転送システムによって前記転送元装置から当該転送先装置内へ転送された前記サンプル容器からサンプルを採取し、採取したサンプルの分析を実行するように構成された分析装置であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 転送システム
2 アーム
4 第1のキャッチャ
4a 爪
6 容器ホルダ
6a フランジ部
8 穴
10 ソレノイド
12 リニアガイド
14 モータ
15 ピニオンギア
16 第2のキャッチャ
18 弾性体
20 サンプルラック
22 制御部
24 バー
26 軸
28 ロックピン
30 固定用金具
30a 貫通穴
100 前処理装置(搬送元装置)
200 分析装置(搬送先装置)
202 開閉扉
S サンプル容器