(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】回転電機のステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
H02K9/19 A ZHV
(21)【出願番号】P 2021010260
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草牧 治樹
【審査官】北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-35992(JP,A)
【文献】特開2020-22247(JP,A)
【文献】特開2018-148659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0384801(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のヨーク、前記ヨークの内周側に突出する複数のティース、および前記各ティースの間に形成された複数のスロットを有し、水平方向に軸が配置されたステータコアと、
前記ティースに対応する仕切り片、および前記スロットに対応する開口を有し、前記ステータコアの軸方向端面に取り付けられる円環状のカフサと、
前記スロットおよび前記開口を通り、前記ティースおよび前記仕切り片に巻回されたコイルと、を含み、回転電機の動作時に重力方向上側から冷媒を受けて冷却される回転電機のステータであって、
前記スロットおよび前記開口の内周端と、最も内周側の前記コイルとの間に隙間が形成されており、
前記カフサは、前記ステータコアの重力方向上部における前記各隙間の径方向内側で周方向に連なり、前記ステータコアの軸方向外方に突出する内側リブと、前記ステータコアの重力方向下部における前記各隙間の径方向外側で周方向に連なり、前記ステータコアの軸方向外方に突出する外側リブとを有する、
ことを特徴とする回転電機のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のステータ、特に、ステータコイルを冷却するための冷却路を備えたステータの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両に搭載された回転電機は、使用時に高温になるため、冷却される。水平方向に回転軸を有する回転電機がケース内に収容され、ケースの上部から冷媒が供給されて回転電機の上から下に向かって流れることで、冷媒がステータコイルに接触してそれを冷却する。
【0003】
特許文献1には、ステータコアの軸方向の端面にカフサを設置したステータに関し、カフサが、コイルエンドよりも外周側に、軸方向外側に延びる円筒状の外周側フランジを有し、外周側フランジの内周面と、コイルエンドの外周面とともに、冷媒が流れる冷媒室を構成するように外周側フランジとコイルエンドとをモールドする樹脂を設ける構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転電機の動作時に上側から冷媒が供給される回転電機のステータにおいて、冷媒により効率的にステータコイルを冷却できる構造が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、回転電機の動作時に上側から冷媒が供給される回転電機のステータにおいて、冷媒により効率的にステータコイルを冷却できる構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回転電機のステータは、円環状のヨーク、前記ヨークの内周側に突出する複数のティース、および前記各ティースの間に形成された複数のスロットを有し、水平方向に軸が配置されたステータコアと、前記ティースに対応する仕切り片、および前記スロットに対応する開口を有し、前記ステータコアの軸方向端面に取り付けられる円環状のカフサと、前記スロットおよび前記開口を通り、前記ティースおよび前記仕切り片に巻回されたコイルと、を含み、回転電機の動作時に重力方向上側から冷媒を受けて冷却される回転電機のステータであって、前記スロットおよび前記開口の内周端と、最も内周側にある前記コイルとの間に隙間が形成されており、前記カフサは、前記ステータコアの重力方向上部における前記各隙間の径方向内側で周方向に連なり、前記ステータコアの軸方向外方に突出する内側リブと、前記ステータコアの重力方向下部における前記各隙間の径方向外側で周方向に連なり、前記ステータコアの軸方向外方に突出する外側リブとを有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
冷媒が内側リブから外側リブへと伝わり、各リブから内側リブの径方向外側および外側リブの径方向内側の各隙間(ステータコアのスロットの内周端と、最も内周側にあるコイルとの間の隙間)に流れ込むため、コイルを効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】ステータコアとカフサの軸方向端部の構造を概略的に示す図である。
【
図4】
図3のA領域の詳細構造を示す斜視図である。
【
図5】
図3のB領域の詳細構造を示す斜視図である。
【
図6】
図3のC領域の詳細構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。以下で述べる構成は、説明のための例示であって、ステータコア、コイル、カフサ等の仕様に合わせて適宜変更が可能である。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態の回転電機10を示す斜視図であり、同図においてロータ14はその外郭のみが一点鎖線で示されている。本実施形態の回転電機10は、ハイブリッド車両や電気自動車などの電動車両に搭載される。回転電機10は、力行時にはバッテリ(不図示)から供給された電力によりモータとして機能して電動車両の車輪を駆動し、制動時には発電機として機能して回生エネルギーを回収し、バッテリを充電する。
【0012】
回転電機10は、不図示のケース内に収容される。回転電機10は、ロータ14とステータ12とを備えている。ロータ14は、ケースに対して回転可能に支持されている水平方向の駆動軸(不図示)に接続され、ロータ14には複数の永久磁石(不図示)が配設されている。ステータ12は、内周側にロータ14を配置する空隙を有し、ロータ14と対向配置された状態でケースに保持される。ステータ12は、後述するようにコイル18(ステータコイルとも言う)を備えている。コイル18に駆動電流が供給され、この駆動電流によってコイル18に発生した電磁力により、ステータ12に対してロータ14が回転する。
【0013】
回転電機10は、モータまたは発電機として動作した際に高温になるため、冷媒により冷却される。ケース内にはパイプ90が配置されており、パイプ90は、回転電機10の重力方向上側でステータコア16の軸方向(本実施形態では水平方向)に延びており、複数の吐出孔92を有している。パイプ90内に供給された冷媒は、複数の吐出孔92から吐出され、冷媒は、流下しながら回転電機10に接触し、ステータコイル18を含む回転電機10の構成部品を冷却する。なお、冷媒は、例えば、ATF(Automatic Transmission Fluid)と呼ばれる冷却油である。
【0014】
次に、本実施形態の回転電機のステータ12について詳しく説明する。
図2は、本実施形態のステータ12の分解斜視図である。同図において、2つのカフサ24は、後に詳述する内周側端が一点鎖線で省略して描かれている。
図2に示すように、ステータ12は、ステータコア16と、ステータコア16の軸方向両端を覆う2つのカフサ24と、ステータコア16に巻装されるコイル18(複数のコイルセグメント70から構成される)とを備えている。なお、2つのカフサ24は、同一形状であり、ステータコア16に対して対称となるようにステータコア16に配置される。
【0015】
ステータコア16は、多数の電磁鋼板を積層して構成されている。ステータコア16は、環状のヨーク30と、ヨーク30の内周面から内方へ突出する複数のティース32とを備えている。複数のティース32はステータ周方向に互いに等間隔で配置されている。ステータ周方向に隣接するティース32の間にスロット34が形成され、複数のスロット34がステータ周方向に互いに等間隔で配置されている。各ティース32及び各スロット34は、ステータ軸方向に沿って延びている。
【0016】
ステータコア16の軸方向の一方側端面および他方側端面には、それぞれ、カフサ24が装着される。カフサ24は、絶縁性の樹脂成形部材であり、例えば、エポキシ樹脂から形成されている。カフサ24は、ステータコア16のヨーク30の軸方向端面に接する外側円環板40と、ステータコア16のティース32の内周側先端における軸方向端面に接する内側円環板46(
図4~6参照)と、外側円環板40と内側円環板46とを連結する複数の仕切り片42とを備えている。仕切り片42は、ステータコア16のティース32に対応して設けられており、ティース32と同様に周方向に互いに等間隔で配置されて、ティース32を覆っている。隣り合う仕切り片42の間には開口44が形成され、この開口44はステータコア16のスロット34の位置に対応している。
【0017】
コイル18は、複数のコイルセグメント70から構成される。
図2には、2つのコイルセグメント70しか示されていないが、多数のコイルセグメント70が存在し、それらがステータコア16の全てのスロット34に挿入される。コイルセグメント70はU字形状であり、2つの直線状の脚72とこれらを連結する湾曲部71とを備えている。コイルセグメント70の脚72を、一方側(
図2の右側)のカフサ24の開口44、ステータコア16のスロット34、および他方側(
図2の左側)のカフサ24の開口44に挿入し、他方側(
図2の左側)のカフサ24の開口44から突出した脚72の部分は折り曲げられ、他のコイルセグメント70の脚72と接合される。これにより、コイル18が形成されている。
【0018】
図3は、ステータコア16とカフサ24の軸方向端部の構造を概略的に示す図であり、
図4は、
図3のA領域の詳細構造を示す斜視図であり、
図5は、
図3のB領域の詳細構造を示す斜視図であり、
図6は、
図3のC領域の詳細構造を示す斜視図である。
図3~6では、コイル18に関し、コイルエンドが省略されており、ステータコア16のスロット34の軸方向端部におけるコイル18断面が示されている。なお、以下では、
図3~6を用いて、ステータコア16の軸方向の一方側端部について説明するが、ステータコア16の軸方向の他方側端部についても同様の構造を有している。
【0019】
図3に示すように、スロット34および開口44の内周端と、最も内周側にあるコイル18との間に隙間26(先端隙26とも言う)が形成されている。先端隙26は、ステータコア16の軸方向に沿って延びている。カフサ24は、ステータコア16の重力方向上部における各隙間26の径方向内側に、周方向に連なる内側リブ48を有している。
図4、5に示すように、内側リブ48は、カフサ24の内側円環板46からステータコア16の軸方向外方に突出している。本実施形態では、ステータコア16の重力方向の上半分に内側リブ48が設けられている。
【0020】
また、カフサ24は、ステータコア16の重力方向下部における各隙間26の径方向外側に、周方向に連なる外側リブ50を有している。
図5、6に示すように、外側リブ50は、カフサ24の内側円環板46よりも外周側にある複数の仕切り片42および複数の開口44を繋ぐように周方向に延びて、ステータコア16の軸方向外方に突出している。本実施形態では、ステータコア16の重力方向の下半分に外側リブ50が設けられている。
【0021】
なお、本実施形態では、内側円環板46をカフサ24の全周に設けているが、外側リブ50の内周側にある内側円環板46を省略してもよい。このようにすると、冷媒が、内側円環板46に邪魔されることなく、外側リブ50の内周側にある先端隙26に入り込み易くなる。
【0022】
次に、本実施形態の回転電機のステータ12の作用効果について説明する。
【0023】
図3に示すように、回転電機の動作時には、パイプ90の吐出孔92から冷媒が突出され、回転電機は、重力方向上側から冷媒を受けて冷却される。
図3には、冷媒の流れが破線で示されている。冷媒は、カフサ24のステータ軸方向の端部において、内側リブ48の上側を流れていく。この際、内側リブ48の外周側にある各先端隙26に冷媒が流れ込み、冷媒は、ステータコア16の軸方向に沿って進んでいく。そのため、ステータ12の重力方向上部のコイル18(特に最も内周側にはあるコイル18)を効率よく冷却することができる。そして、冷媒は、重力方向の下側に向かっていき、内側リブ48から、外側リブ50の上側に流れ込む。この際、外側リブ50の内周側にある各先端隙26に冷媒が流れ込み、冷媒は、ステータコア16の軸方向に沿って進んでいく。そのため、ステータ12の重力方向下部のコイル18(特に最も内周側にはあるコイル18)を効率よく冷却することができる。
【0024】
なお、以上説明した実施形態では、内側リブ48から外側リブ50に変化する位置がステータコア16の重力方向の中心であったが、同位置は、冷媒を内側リブ48から外側リブ50に流れ込ませることができる限り、適宜、変更してもよい。また、ステータコア16の周方向において、内側リブ48と外側リブ50の間に間隔を設け、それらのリブが設けられない領域があってもよい。
【符号の説明】
【0025】
10 回転電機、12 ステータ、14 ロータ、16 ステータコア、18 コイル、24 カフサ、26 隙間(先端隙)、30 ヨーク、32 ティース、34 スロット、40 外側円環板、42 仕切り片、44 開口、46 内側円環板、48 内側リブ、50 外側リブ、70 コイルセグメント、71 湾曲部、72 脚、90 パイプ、92 吐出孔。