(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】商用電動車両の運行管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241001BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241001BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20241001BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20241001BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H02J7/00 P
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/10
H02J7/00 B
H02J7/04 L
(21)【出願番号】P 2021014186
(22)【出願日】2021-02-01
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 敏之
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-056527(JP,A)
【文献】特表2014-504977(JP,A)
【文献】特開2015-011576(JP,A)
【文献】特開2013-112326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
H01M10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電動車両の運行を管理する運行管理システムであって、
前記商用電動車両が搭載した電池の充放電を制御する充放電制御部と、
外気温を取得する外気温取得部と、
取得した前記外気温が所定気温より低いとき、充電1回当たりの充電時間を、前記外気温が前記所定気温より高いときの充電時間より少ない低温時充電時間に設定する充電時間設定部と、
を有する、運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電動車両の運行を管理する運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両は、搭載した電池に電力を蓄え、この電力によりモータを駆動して走行する。電池は、その温度によって特性が変化する。電池の温度変化による特性の変化に応じて充放電の制御を変更する技術が知られている。下記特許文献1には、ハイブリッド自動車の電池の制御において、電池に対する入出力電圧の上限値および下限値を電池の温度に応じて変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池は、温度が低くなると充電時間が長くなる傾向がある。特に、路線バス、タクシー等の商用車両においては、長い充電時間は、車両の稼働率の低下を招く。
【0005】
本発明は、低温時における充電時間の短縮を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の運行管理システムは、商用電動車両の運行を管理する運行管理システムであって、商用電動車両が搭載した電池の充放電を制御する充放電制御部と、外気温を取得する外気温取得部と、取得した外気温が所定気温より低いとき、充電1回当たりの充電時間を、外気温が所定気温より高いときの充電時間より短い低温時充電時間に設定する充電時間設定部とを有する。
【0007】
蓄電量が低い状態で電池に充電を行うと、蓄電量が高い場合に比べて電池の発熱が大きく、電池の温度が上昇する。外気温が低温で電池温度が低下しがちなとき、充電1回当たりの充電時間を短くすると、蓄電量が低い状態での充電機会が増加し、電池温度を高めることができる。電池温度が高い状態では、低い状態に比べて充電効率が良く、1回当たりの充電時間の短縮により、ある期間内の充電の回数が増えても、充電の総時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る運行システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
【
図3】蓄電量が高い状態で充電を行ったときの蓄電量および電池温度の変化のシミュレーション結果を示す図である。
【
図4】蓄電量が低い状態で充電を行ったときの蓄電量および電池温度の変化のシミュレーション結果を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る運行管理システムの一例の機能を概略的に表すブロック図である。
【
図6】本実施形態の充電時間の設定に関連する制御フローの一例を示すチャートである。
【
図7】本実施形態に係る運行管理装置と電池制御装置の機能を表すブロック図である。
【
図8】充電時間が長いときと、短いときのそれぞれの蓄電量の変化を示す図である。
【
図9】他の本実施形態に係る運行管理装置と電池制御装置の機能を表すブロック図である。
【
図10】充電時間が長いときと、短いときのそれぞれの蓄電量の変化を示す図である。
【
図11】さらに他の本実施形態に係る運行管理システムの機能を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
図1は、路線バスの運行システム10を概略的に示す図である。路線バスの車両12は、運行計画に従って、定められた経路(路線)14に沿って走行し、経路14の途中の複数箇所には、停留所16が設けられている。運行システム10は、2つの経路14、すなわち周回経路14Aと往復経路14Bを有する。経路は、周回経路と往復経路のいずれか一方だけでもよく、またより多くの経路を有してもよい。車両12は、各停留所16に、または必要な停留所16に停車しつつ、周回経路14Aを一方向に周回し、また往復経路14Bを往復する。車両12は、搭載された電池の電力により走行する電動車両である。経路14に隣接して充電ステーション18が設けられ、車両12は、充電ステーション18にて電池の充電を行う。充電ステーション18には充電スタンド20が設置され、車両12に備えられたプラグを充電スタンド20のコンセントに接続して充電が行われる。車両12の運行は、運行管理センタ22により管理される。運行管理センタ22では、各経路14の道のりや運行計画などのあらかじめ定められている情報、ならびにその都度変化する各車両12の電池の蓄電量や乗車人員等の運行状況、および外気温や渋滞情報などの外部の状況に基づいて、それぞれの車両12を運行計画が定める各便に割り当てる。運行管理センタ22には、運行管理装置24が設置され、運行管理装置24は各車両12の運行の全てを、または一部を管理する。運行管理の一部は、運行管理センタ22内のオペレータにより実行されてもよい。運行計画は、1つの車両が充電ステーション18から出発し、再び充電ステーション18に戻るまでの運行として規定される便に関する情報(当該便の走行距離、各停留所の出発/到着時刻など)、および各便への各車両12の割り当てを含んでよい。
【0010】
図2は、車両12の概略構成を示す図である。前述のように車両12は電気モータ30により駆動される電動車両である。以下において、電気モータ30を単にモータ30と記す。車両12は、モータ30に供給される電力を蓄える電池32、さらに、電池32の制御を行う電池制御装置34が搭載されている。電池制御装置34は、要求された動力に応じて電池32からモータ30に供給される電力を制御し、またモータ30の回生電力を電池32に充電する制御を行う。また、充電時には、充電スタンド20など外部からの電力を電池32に充電する制御を行う。さらに、車両12には、外気温度を測定する外気温センサ36、および電池32の温度を測定する電池温度センサ38が備えられている。
【0011】
図3,4は、蓄電量が高い状態で充電を行った場合と、低い状態で充電を行った場合の蓄電量と電池温度のシミュレーション結果を比較して示す図である。
図3は、蓄電量が高いとき、具体的には蓄電量を40-80%の範囲で管理したときのシミュレーション結果を示す。管理範囲の上限まで充電し、下限まで消費した後、再び上限蓄電量までの充電を繰り返したときの蓄電量と電池温度の変化を示す。
図4は、蓄電量が低いとき、具体的には蓄電量を25-65%の範囲で管理したときのシミュレーション結果を示す。外気温は、冬季を想定して、最低-6℃、最高5℃とし、日ごとの変動は、各日同一としている。車両12は、73.5分間走行後に充電ステーション18に戻り、充電を行う。蓄電量が上限蓄電量に達するまで充電を行い、充電完了後、運行を再開する。この走行と充電を休みなく繰り返す。
図3,4のシミュレーション結果において、共にシミュレーション開始当初は、電池温度が低く、この時間帯は除外して比較、検討を行う。
【0012】
蓄電量の管理範囲を40-80%としたとき(
図3)、1回の充電時間は85~110分、電池温度の平均値は8.4℃、平均充電電力は10kWであった。これに対し、管理範囲を25-65%としたとき(
図4)、1回の充電時間は70~85分、電池温度の平均値は11℃、平均充電電力は13kWであった。このことから、蓄電量の低い状態で充電を行った方が、電池温度が高くなり、平均充電電力も大きいことが分かる。
【0013】
運行システム10は、各車両12の運行を管理する運行管理システム40を有する。
図5は、運行管理システム40の機能を示す機能ブロック図である。運行管理システム40は、電池32の充放電を制御する充放電制御部42を有する。充放電制御部42は、モータ30に供給される電力、モータ30から回生される電力を制御し、さらに外部からの電池32への充電も制御する。また、充放電制御部42は、電池32の蓄電量を、所定の上限蓄電量と下限蓄電量の間の管理範囲内に制御し、また、運行計画に基づき車両12の次の便の運行に必要な電力量の充電を行う。
【0014】
運行管理システム40は、さらに外気温取得部44を含む。外気温取得部44は、車両12に備えられた外気温センサ36からの信号に基づき、当該車両周囲の、その時点の外気温を取得する。また、外気温センサは、経路14の近傍の1箇所または複数箇所に、また運行管理センタ22に設置されてもよい。また、外気温取得部44は、気象庁など公的機関や民間のサービス機関が発信する天気情報を受信し、当該経路14を含む地域の気温を外気温として取得してもよい。車両12と運行管理センタ22の間の情報の授受は、有線または無線で行われてよい。有線で情報取得する場合は、例えば充電ステーション18で充電中に有線接続して情報を送受する。
【0015】
運行管理システム40は、さらに充電時間設定部46を含む。充電時間設定部46は、充電1回にかける時間(以下、充電時間と記す。)を設定する。1回の充電時間は、あらかじめ定められた時間としてよく、また充電後の次の便の運行に必要な電力量に基づき定めてもよい。充電時間設定部46は、運行計画に基づき次の便の走行距離を取得し、走行距離に応じた電力量を充電するのに要する時間に基づいて充電時間を設定してよい。充放電制御部42は、設定された充電時間に基づき1回の充電を行う。
【0016】
充電時間設定部46は、外気温取得部44により、外気温が所定気温より低く、低温であるとの情報がもたらされると、充電時間を、所定気温より高いとき(以下、常温時と記す。)に比べて少ない低温時充電時間に設定する。低温時充電時間は、例えば常温時に下限充電量から上限充電量に充電するのに要する時間より短い時間としてよい。また、常温時の1回当たりの充電時間が定められている場合、低温時充電時間は、この常温時の充電時間より短い時間としてよい。
【0017】
また、充電時間設定部46は、低温時に、運行計画の変更によって短くされた車両12の走行距離に対応した充電時間を設定するようにしてよい。次回の便の走行距離が常温時に比べて短くなれば、充電時間を短くすることができ、低い蓄電量の状態での充電が繰り返される。
【0018】
1回当たりの充電時間を短くすることで、電池32は、蓄電量が低い状態での使用が繰り返されることになる。これにより、発熱量の多い、蓄電量の低い状態での充電機会が増加し、電池の温度が上昇する。
【0019】
図6は、1回当たりの充電時間を外気温に応じて変更する制御に関するフローチャートの一例である。外気温Tを取得し(S100)、取得した外気温Tが所定温度(例えば5℃)を超えているかを判断する(S102)。所定温度を超えていれば、充電時間を常温時に対応して設定された長い充電時間に設定する(S104)。一方、ステップS102にて、外気温Tが所定温度以下であった場合、充電時間を低温時に対応して設定された短い充電時間、つまり常温時の充電時間より短い充電時間に設定する(S106)。
【0020】
図7は、運行管理システムのより具体的な例を示す機能ブロック図である。運行管理システム50は、運行管理装置24および電池制御装置34から構成される。運行管理装置24および電池制御装置34は、処理装置が所定のプログラムを実行することにより、所定の機能が実現されるよう構成されている。
【0021】
電池制御装置34は、電池32の充放電を制御する充放電制御部52を有する。充放電制御部52は、モータ30に供給される電力、モータ30から回生される電力を制御し、さらに外部からの電池32への充電も制御する。また、充放電制御部52は、電池32の蓄電量を、所定の上限蓄電量と下限蓄電量の間の管理範囲内に制御する。充放電制御部52は、定められた充電時間が経過すると充電を終了するように構成されてよい。充電時間が経過する以前に上限蓄電量に達した場合は、そこで充電を終了する。車両12の運行中において、電池32の蓄電量が下限蓄電量に達すると、または下限蓄電量に近づくと、これを報知し充電を促すようにしてよい。電池32の蓄電量は、耐久性を考慮して、蓄電量が100%および0%とならないように中間的な範囲で管理され、例えば40-80%の範囲で管理される。後述するように、この車両12または電池制御装置34においては、1回の充電時間は、外気温に関する情報に応じて変更される。
【0022】
電池制御装置34は、この電池制御装置34が搭載された車両12の次回の便の走行距離に対応した充電時間を設定する走行距離対応充電時間設定部54を含む。次回の便の走行距離は、次回走行距離取得部56が運行管理装置24に記憶された運行計画64から取得する(運行計画については後述する。)。次回運行時の走行距離は、車両12が有線または無線で運行管理センタ22から取得してよい。有線で次回運行時の走行距離を取得する場合は、例えば、車両12が充電ステーション18に停車中に運行管理センタ22から取得してよい。さらに、下限蓄電量が外気温に関する情報に応じて変更されてよい。電池制御装置34は、下限蓄電量を設定する下限蓄電量設定部58を含んでよい。
【0023】
電池制御装置34は、さらに蓄電量監視部60を含む。蓄電量監視部60は、充放電制御部52が制御する蓄電量、特に充電終了時の蓄電量を監視する。
【0024】
運行管理装置24は、各経路14および各停留所16間の距離および所要時間などの経路に関する基礎情報62、また各便の運行計画64を記憶する記憶部66を含む。運行計画64は、各便の経路14、充電ステーション18の出発および到着時刻、各停留所16の出発時刻の情報を含み、さらに各便に割り当てられた車両12の個別の情報を含む。運行管理装置24は、各便に車両12を割り当てる配車部68を含む。配車部68は、基礎情報62、各車両12の状態、および外部情報に基づき、各便への車両12の割り当てを行う。
【0025】
運行管理装置24は、外気温取得部70を有する。外気温取得部70は、車両12に備えられた外気温センサ36からの信号に基づき、当該車両周囲の、その時点の外気温を取得する。また、外気温センサは、経路14の近傍の1箇所または複数箇所に、また運行管理センタ22に設置されてもよい。また、外気温取得部70は、気象庁など公的機関や民間のサービス機関が発信する天気情報を受信し、当該経路14を含む地域の気温を外気温として取得してもよい。車両12と運行管理センタ22の間の情報の授受は、有線または無線で行われてよい。有線で情報取得する場合は、例えば充電ステーション18で充電中に有線接続して情報を送受する。
【0026】
運行管理装置24は、さらに外気温予報取得部72を有する。外気温予報取得部72は、気象庁など公的機関や民間のサービス機関が発信する天気予報を取得し、所定時間内もしくは所定時間後の気温、または翌朝の最低気温を取得する。
【0027】
運行管理装置24は、運行計画変更部74を有する。運行計画変更部74は、外気温取得部70により取得された外気温に基づき運転計画を変更してよい。運行計画変更部74は、低温時には、1便の走行距離が短くなるよう、運行計画を変更する。また、運行計画変更部74は、外気温予報取得部72からの情報に基づき運行計画を変更してよい。運行計画変更部74は、今後低温となる予報を取得すると1便の走行距離が短くなるように、運行計画を変更する。運行計画は、あらかじめ記憶部66に常温時と低温時の運行計画を記憶しておき、外気温および外気温予報に基づき、いずれかを選択するようにしてよい。
【0028】
この運行管理システム50において、運行計画変更部74、次回走行距離取得部56および走行距離対応充電時間設定部54が、低温時に、充電1回当たりの充電時間を常温時の充電時間より少ない低温時充電時間に設定する充電時間設定部46として機能する。
【0029】
運行の一例を、車両12が、周回経路14Aを繰り返し周回する運行を挙げて説明する。常温時において、車両12は、充電ステーション18で上限蓄電量である80%まで充電し、その後、周回経路14Aを2周して充電ステーション18に戻り、再び充電を行う運行を繰り返す。このパターンの運行計画が、常温時運行計画として記憶部66に記憶されている。周回経路14Aを2周するとき消費する電力量を充電するのに要する時間はth1である。この時間th1を常温時充電時間th1と記す。
【0030】
外気温取得部70が取得した外気温に基づき外気温が低温であること、または外気温予報取得部72が取得した外気温予報に基づき気温が低温になることが予測されると、運行計画変更部74は、便の走行距離が短くなるよう運行計画の変更を行う。具体的には、周回経路14Aを1周するごとに充電ステーション18に戻り、充電を行う運行計画に変更する。このパターンが低温時運行計画として記憶部66に記憶されている。次回走行距離取得部56は、この車両12の充電後の便の走行距離を運行管理装置24から取得し、走行距離対応充電時間設定部54は、この走行距離に対応した充電時間tc1を設定する。この時間tc1を低温時充電時間tc1と記す。この例において、低温時充電時間tc1は、経路14Aを1周するのに必要な充電量が得られる時間である。
【0031】
図8は、上記のように周回経路14Aを繰り返し周回したときの蓄電量の変化を示す図である。常温時の変化が細線H1で示され、低温時に上限蓄電量まで充電を行った場合の変化が破線Cb1、低温時に充電時間を短縮した場合の変化が太線Ca1で示されている。低温時と常温時の境界は例えば5℃とすることができる。上限蓄電量は、例えば80%である。初期において、低温時は電池32の温度が低く充電効率が悪いが、低い蓄電量での充電を繰り返すことにより電池32の温度が上昇し、充電効率が向上する。図示されるように、低温時では、常温時に比べて蓄電量が低い状態での充電が繰り返され、電池32の発熱量が大きくなり、電池32の温度が上昇する。
【0032】
上述のように、定まった経路を複数回走行して、その後充電し、再び同じ経路を走行することを繰り返す運行において、低温時には、充電から次の充電までの走行回数を常温時に比べて減少させて、その分、充電時間を減少させることで、蓄電量が低い状態での充電の頻度を高めることができる。単一の経路を繰り返し走行する場合、この単一経路の走行距離と対応した低温時充電時間tc1をあらかじめ定めておき、低温時には、定められた低温時充電時間tc1で充電を行うようにしてよい。複数の経路を走行する可能性がある場合には、次回の走行に対応した低温時充電時間tc1を取得して、この取得した低温時充電時間tc1で充電を行うようにしてよい。低温時充電時間tc1は、走行距離との対応関係を示す対応表をあらかじめ記憶しておき、この対応表に基づき取得してよい。また、低温時充電時間tc1は、走行距離との関係をあらかじめ関数として定めておき、この関数を用いて算出して取得してもよい。
【0033】
電池32の温度によって充電効率が変化するので、低温時充電時間tc1を調整できるようにしてよい。例えば、定まった経路を繰り返し走行する場合において、蓄電量監視部60により充電終了時の蓄電量を監視し、この蓄電量が変化するようであれば、この変化を抑えるよう低温時充電時間tc1を調整してよい。例えば、充電終了時の蓄電量が上昇する傾向があるときには、低温時充電時間tc1を短縮する調整を行う。
【0034】
外気温予報取得部72は、週間天気予報などの数日間にわたる予報を取得してよい。そして、この期間の予報により低温が予想される場合は、運行計画変更部74は、この期間中、運行計画を低温時の運行計画に設定する。期間中の低温の判断は、例えば、最低気温が所定の気温を下回る日数が、期間中の所定の日数に達することをもって判断してよい。例えば、7日中3日の最低気温が所定の気温を下回る場合、この期間中、充電時間および下限蓄電量を低温時充電時間および低温時下限蓄電量に設定してよい。
【0035】
また、低温時に下限蓄電量を下げ、蓄電量がより低い状態で充電が行われるようにしてよい。下限蓄電量設定部58は、運行管理装置24から外気温が低い、またはこれから低くなるという情報を受け取ると、下限蓄電量を常温時より低い低温時下限蓄電量に設定する。下限蓄電量は例えば25%とできる。低温時下限蓄電量が設定された後、最初または初期の充電においては、充電時間を低温時充電時間tc1より短くし、次回の走行において蓄電量がより低下するようにしてよい。
【0036】
図9は、運行管理システムの他の具体例を示す機能ブロック図である。運行管理システム80は、運行管理装置82および電池制御装置84から構成される。運行管理装置82は、前述の運行管理装置24に替えて運行管理センタ22に備えられる。また、電池制御装置84は、前述の電池制御装置34に替えて車両12に搭載される。運行管理装置82および電池制御装置84は、処理装置が所定のプログラムを実行することにより、所定の機能が実現されるよう構成されている。
【0037】
運行管理システム80において、前述の運行管理システム50と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。運行管理システム80の電池制御装置84は、常温時の1回当たりの充電時間th2(常温時充電時間th2)と、低温時の1回当たりの充電時間tc2(低温時充電時間tc2)を設定する充電時間設定部86を含む。低温時充電時間tc2は、常温時充電時間th2より短い。充電時間設定部86は、外気温取得部70により取得された外気温に基づき、充電時間を、常温時充電時間th2と低温時充電時間tc2のいずれかに設定する。また、充電時間設定部86は、外気温予報取得部72により取得された外気温予報に基づき、充電時間を常温時充電時間th2と低温時充電時間tc2のいずれかに設定する。外気温取得部70と外気温予報取得部72は、電池制御装置84に備えられてよく、また前述の運行管理システム50のように運行管理装置82に備えられてもよい。
【0038】
常温時には、充電時間設定部86は充電時間を常温時充電時間th2に設定し、これに従い充放電制御部52は1回の充電時間を常温時充電時間th2として充電を制御する。外気温が低温になると、または低温になると予想されると、充電時間設定部86は、充電時間を低温時充電時間tc2に設定し、これに従い充放電制御部52は1回の充電時間を低温時充電時間tc2として充電を制御する。低温時において、充電時間が短くなり、電池32の発熱量が多い、蓄電量が低い状態での充電機会が増え、電池32の温度が上昇する。
【0039】
充電後の走行距離によって、次回の充電開始時の蓄電量が変動するため、充電時間を固定した場合、充電時間終了時の蓄電量が変動する。この変動によって蓄電量が増加すると、蓄電量が低い状態での充電ができなくなる。これを抑制するために、蓄電量監視部60は、充電終了時の蓄電量を監視し、充電終了時の蓄電量が増加傾向にあるとき、または所定値に達したら、充電時間設定部86は、低温時充電時間tc2を短くする調整を行う。
【0040】
運行管理装置82は、常温時充電時間th2、低温時充電時間tc2に応じた運行計画を採用し、これに応じた配車を行う。低温時充電時間tc2は、常温時充電時間th2より短時間であるので、その後の走行距離は、常温時よりも短くなる。記憶部66には、この走行距離を考慮した常温時用、低温時用のそれぞれの運行計画が記憶されている。運行計画変更部88は、充電時間設定部86の設定した充電時間に応じて運行計画を変更し、配車部68はこれに応じて配車を行う。
【0041】
図10は、蓄電量の変化を示す図であり、下限蓄電量から所定時間充電して、その後走行し、蓄電量が下限蓄電量まで低下すると再び所定時間充電を行うよう使用したときの蓄電量の変化を示している。細線H2は、外気温が常温時の蓄電量の変化を示し、太線Ca2は外気温が低温時の蓄電量の変化を示す。低温時と常温時の境界は例えば5℃とすることができる。下限蓄電量は、例えば40%である。
【0042】
充電時間設定部86は、常温時における充電時間をth2に設定し、充放電制御部52は、充電開始から充電時間が常温時充電時間th2に達すると、充電を終了する。常温時においては、
図10の細線H2で示すように、下限蓄電量の状態から常温時充電時間th2だけ充電を行い、その後走行し、蓄電量が下限蓄電量まで低下すると再び常温時充電時間th2、充電を行う。
【0043】
外気温が低下し、電池32の温度も低下すると、充電効率が悪くなり、常温時充電時間th2、充電を行っても充電終了時の充電量が低下する。このときの充電量の変化が破線Cb2で示されている。外気温取得部70が取得した外気温に基づき外気温が低温であること、または外気温予報取得部72が取得した外気温予報に基づき気温が低温になることが予測されると、充電時間設定部86は、充電時間を、常温時充電時間th2より短い低温時充電時間tc2に設定する。低温時においては、
図10の太線Ca2で示すように、下限蓄電量の状態から低温時充電時間tc2だけ充電を行い、その後走行し、蓄電量が下限蓄電量まで低下すると再び低温時充電時間tc2、充電を行う。充電時間を短くすることで、発熱量が多い蓄電量が低い状態で充電する機会が増加することになり、電池32の温度が上昇する。温度が高い状態で充電することにより、充電効率が向上し、ある期間における総充電時間を短縮することができる。
【0044】
外気温予報取得部72は、週間天気予報などの数日間にわたる予報を取得してよい。この期間の予報により低温が予想される場合は、運行計画変更部88は、この期間中、運行計画を低温時の運行計画に設定する。期間中の低温の判断は、例えば、最低気温が所定の気温を下回る日数が、期間中の所定の日数に達することをもって判断してよい。例えば、7日中3日の最低気温が所定の気温を下回る場合、この期間中、充電時間および下限蓄電量を低温時充電時間および低温時下限蓄電量に設定してよい。
【0045】
また、低温時に下限蓄電量を下げ、蓄電量がより低い状態で充電が行われるようにしてよい。下限蓄電量設定部58は、外気温取得部70から、または外気温予報取得部72から、外気温が低い、またはこれから低くなるという情報を受け取ると、下限蓄電量を常温時より低い低温時下限蓄電量に設定する。下限蓄電量は例えば25%とできる。低温時下限蓄電量が設定された後、最初または初期の充電においては、充電時間を低温時充電時間tc2より短くし、次回の走行において蓄電量がより低下するようにしてよい。
【0046】
電池制御装置84は、充電終了時の蓄電量を監視し、この蓄電量が上昇傾向にある場合は、低温時充電時間tc2を更に短く設定してよい。蓄電量監視部60は、低温時において、充電終了時の蓄電量を監視する。充電終了時の蓄電量は、充放電制御部52から取得することができる。蓄電量監視部60は、充電終了時の蓄電量が、前回の充電終了時に比べて、所定量増加していることが所定回数続くと、蓄電量が上昇傾向にあると判断する。蓄電量が上昇するということは、1回の充電によって蓄えられた電力が、その後の走行により消費しきれず残ったことを示している。つまり、より短距離の走行を繰り返していることが分かり、充電時間を短縮する余地がある。蓄電量監視部60により蓄電量の上昇傾向が判断されると、充電時間設定部86は、低温時充電時間tc2をさらに短縮する。これにより、蓄電量が低い状態における充電機会が増加し、電池32の温度が上昇する。
【0047】
上述した電池制御装置84および運行管理装置82の機能の一部は、車両12に搭乗するオペレータまたは運行管理センタ22に居るオペレータが実行してもよい。例えば、車両12に外気温を表示するモニタを設け、オペレータは、モニタに表示された外気温が低くなったとき、充電時間を手動で変更するようにしてもよい。また、運行管理センタ22のオペレータが遠隔で充電時間を変更するようにしてもよい。
【0048】
図11は、さらに他の実施形態を示す図であり、運行管理システム90の機能を示すブロック図である。運行システム10の全体構成、車両12の構成については、
図1,2に示す実施形態と同様とすることができる。運行管理システム90は、電池32の充放電を制御する充放電制御部42を有する。充放電制御部42については、すでに説明されているので、説明は省略する。
【0049】
運行管理システム90は、季節に応じて、特に冬季において1回の充電時間を、他の季節のときの充電時間より短く設定し、蓄電量が低いときの充電機会を増やして電池温度を高く維持するようにする。電池温度が高いときは充電効率がよく、低温による充電時間の増加を抑制することができる。充電時間設定部92は、冬季に用いる冬季充電時間と、冬季以外に用いる夏季充電時間を選択的に設定する。冬季充電時間は、夏季充電時間より短い。充放電制御部42は、冬季においては、1回の充電時間を冬季充電時間として電池32の充電を制御する。冬季以外においては、1回の充電時間を夏季充電時間として電池32の充電を制御する。充電時間は時季設定指令94に基づき設定される。
【0050】
冬季の期間が指定された年間スケジュールを記憶しておき、冬季の開始日になると、冬季充電時間、冬季下限蓄電量および冬季上限蓄電量を設定する時季設定指令94が発せられ、冬季の終了日を過ぎると夏季充電時間、夏季下限蓄電量および夏季上限蓄電量を設定する時季設定指令94が発生される。冬季は、例えば12月1日から2月末日と定めることができ、この場合、12月1日に冬季充電時間、冬季下限蓄電量および冬季上限蓄電量が設定され、3月1日に夏季充電時間、夏季下限蓄電量および夏季上限蓄電量が設定される。年間スケジュールは、運行管理システム90に備わる記憶部に格納されてよく、年間スケジュールに基づき各車両12に時季設定指令94を発するようにしてよい。また、車両12にて年間スケジュールを記憶してもよい。また、運行管理センタ22のオペレータ、車両12に搭乗したオペレータ、または車両12の整備員などが時季設定の操作を手動で行ってもよい。この操作に基づき指令が発せられ、冬季充電時間および夏季充電時間が設定される。
【0051】
運行管理システム90において、冬季に用いる冬季下限蓄電量と、冬季以外に用いる夏季下限蓄電量を選択的に設定するようにしてよい。冬季下限蓄電量は、夏季下限蓄電量より低い値であり、例えば夏季下限蓄電量を40%、冬季下限蓄電量を25%とすることができる。また、充電終了時の蓄電量が増加傾向にある場合、冬季充電時間をより短くするようにしてよい。
【0052】
運行システム10において、充電ステーション18は、1箇所のみ設けられているが、複数箇所に設けてもよい。例えば、往復経路14Bの終端地点に更に設けてよい。
【0053】
また、ある車両について、稼動しない時間が長くなる場合、例えば、利用者が減少する深夜から早朝にかけて運行しない車両については、低温時においても、充電時間の制限をせず、フル充電(100%)を行うようにしてもよい。
【0054】
また、上述の実施形態においては、経路が定まっている路線バスについて説明したが、走行経路が定まっていないタクシーやハイヤーについても、本発明に従って充電時間を短く設定することで、蓄電量が低い状態で充電が行われるようにして総充電時間を短縮することができる。
【0055】
本発明に係る他の態様を以下に記す。
(1)
商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御方法であって、外気温が所定気温より低いとき、1回の充電時間を、外気温が所定気温より高いときの充電時間より短い低温時充電時間として充電を行う電池制御方法。
(2)
商用電動車両の運行を管理する運行管理システムであって、
前記商用電動車両が搭載した電池の充放電を制御する充放電制御部と、
外気温を取得する外気温取得部と、
取得した前記外気温が所定気温より低いとき、前記商用電動車両の1つの便の走行距離を、前記外気温が前記所定気温より高いときの走行距離より短い低温時走行距離に設定する走行距離設定部と、
前記低温時走行距離が設定されたとき、当該低温時走行距離を走行可能な電力量を充電するに要する低温時充電時間を設定する充電時間設定部と、
を有する、運行管理システム。
(3)
定まった経路の所定回数の走行と充電を繰り返す商用電動車両の運行を管理する運行管理方法であって、外気温が所定気温より低いとき、前記商用電動車両の前記定まった経路の走行回数を、前記外気温が前記所定気温より高いときの走行回数より減少させ、前記外気温が前記所定気温より低いときの充電において、次の走行回数に対応する充電時間で充電を行う、運行管理方法。
(4)
商用電動車両の運行を管理する運行管理方法であって、冬季の所定期間において、前記商用電動車両の1つの便の走行距離を、前記冬季の所定期間以外の期間の1つの便の走行距離より短くし、1回の充電時間を短くされた前記走行距離に対応した充電時間とする、運行管理方法。
【符号の説明】
【0056】
10 運行システム、12 車両、14 経路、18 充電ステーション、22 運行管理センタ、24,82 運行管理装置、32 電池、34,88 電池制御装置、36 外気温センサ、40,50,80,90 運行管理システム、42,52 充放電制御部、44,70 外気温取得部、46,86、92 充電時間設定部、54 走行距離対応充電時間設定部、56 次回走行距離取得部、58 下限蓄電量設定部、60 蓄電量監視部、62 基礎情報、64 運行計画、66 記憶部、68 配車部、72 外気温予報取得部、74,88 運行計画変更部、th 常温時充電時間、tc 低温時充電時間。