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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】遠隔操作システム
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/48 20060101AFI20241001BHJP
   B66C 13/40 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B66C13/48 G
B66C13/40 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021016683
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119503
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 浩嗣
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175766(JP,A)
【文献】特開2022-002989(JP,A)
【文献】特開2020-009369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/48
B66C 13/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンを遠隔操作する遠隔操作システムであって、
前記クレーンの吊り荷の移動予定経路を生成する経路生成装置と、
前記移動予定経路を承認するか否かの選択を促す複数の経路確認端末装置と、
全ての前記経路確認端末装置において前記移動予定経路の承認が選択された場合に、前記移動予定経路での移動開始を許可する施工管理装置と、を備える、遠隔操作システム。
【請求項2】
前記施工管理装置は、前記移動予定経路での移動開始を許可した場合、前記移動予定経路での移動開始の指示を前記クレーンへ送信する、請求項1に記載の遠隔操作システム。
【請求項3】
前記経路確認端末装置は、前記移動予定経路を承認する承認キーと、前記移動予定経路を否認する否認キーとを有する、請求項1又は請求項2に記載の遠隔操作システム。
【請求項4】
1以上の前記経路確認端末装置において第1所定時間内に前記移動予定経路を承認するか否かの選択操作がなかった場合、前記施工管理装置は、前記移動予定経路での移動開始を却下する、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の遠隔操作システム。
【請求項5】
前記経路確認端末装置は、前記移動予定経路を承認するか否かの選択を延期する一時待ちキーを有し、
1以上の前記経路確認端末装置において前記第1所定時間内に前記一時待ちキーが操作されると、前記施工管理装置は、前記第1所定時間より長い第2所定時間内に前記移動予定経路を承認するか否かの選択操作がなかった場合、前記移動予定経路での移動開始を却下する、請求項4に記載の遠隔操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンを遠隔操作する遠隔操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からクレーンの自動運転に関して様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、タワークレーンの運転席に設けられたタッチパネルが操作されることで吊り荷を自動で搬送する自動運転システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-112178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、操作を入力できるのはクレーンの運転席に設けられたタッチパネルのみである。この構成によれば、クレーンの運転席に座るオペレータが、周囲の安全を確認した上でタッチパネルを操作して吊り荷の自動搬送を承認することになる。しかしながら、クレーンが使用される建設現場は、資材や建設途中の建物など、吊り荷の搬送の障害物となるものが多数あり、その状況は刻々と変化するため、一人のオペレータで周囲の安全を十分に確認することは難しい。
【0005】
本発明は、クレーンを遠隔操作する遠隔操作システムにおいて、吊り荷を搬送する際の安全性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、クレーンを遠隔操作する遠隔操作システムであって、前記クレーンの吊り荷の移動予定経路を生成する経路生成装置と、前記移動予定経路を承認するか否かの選択を促す複数の経路確認端末装置と、全ての前記経路確認端末装置において前記移動予定経路の承認が選択された場合に、前記移動予定経路での移動開始を許可する施工管理装置と、を備えるものである。
【0007】
上記の構成によれば、吊り荷の自動搬送を開始するには、複数のオペレータが周囲の安全を確認し、全ての経路確認端末装置において移動予定経路の承認が選択される必要があるため、吊り荷を搬送する際の安全性を向上させることができる。
【0008】
上記の遠隔操作システムにおいて、前記施工管理装置は、前記移動予定経路での移動開始を許可した場合、前記移動予定経路での移動開始の指示を前記クレーンへ送信するようにしてもよい。
【0009】
上記の構成によれば、全ての経路確認端末装置において移動予定経路の承認が選択された場合、自動的にクレーンが吊り荷Wの自動搬送を開始する。よって、移動開始を許可する処理に要する時間を短縮することができる。
【0010】
また上記の遠隔操作システムにおいて、前記経路確認端末装置は、前記移動予定経路を承認する承認キーと、前記移動予定経路を否認する否認キーとを有するようにしてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、経路確認端末装置を容易に操作することができる。
【0012】
また上記の遠隔操作システムにおいて、1以上の前記経路確認端末装置において第1所定時間内に前記移動予定経路を承認するか否かの選択操作がなかった場合、前記施工管理装置は、前記移動予定経路での移動開始を却下するようにしてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、遠隔操作システムをスムーズに稼働させることができる。
【0014】
また上記の遠隔操作システムにおいて、前記経路確認端末装置は、前記移動予定経路を承認するか否かの選択を延期する一時待ちキーを有し、1以上の前記経路確認端末装置において前記第1所定時間内に前記一時待ちキーが操作されると、前記施工管理装置は、前記第1所定時間より長い第2所定時間内に前記移動予定経路を承認するか否かの選択操作がなかった場合、前記移動予定経路での移動開始を却下するようにしてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、経路確認端末装置における移動予定経路を承認するか否かの選択を延期しつつ、遠隔操作システムをスムーズに稼働させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、クレーンを遠隔操作する遠隔操作システムにおいて、吊り荷を搬送する際の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態の遠隔操作システムの構成を示す図である。
図2図1の遠隔操作システムの制御構成の一部を示すブロック図である。
図3図1の遠隔操作システムにおける移動予定経路の承認に関する動作を示すフローチャートである。
図4】移動予定経路及び操作キーを表示した第1経路確認端末装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[遠隔操作システムの構成]
図1及び図2に示すように、遠隔操作システム1は、無線通信によりクレーン6を遠隔操作するシステムであり、施工管理装置2と、経路生成装置3と、第1経路確認端末装置4と、第2経路確認端末装置5と、クレーン6とを含んでいる。施工管理装置2及び経路生成装置3は、建設現場の管理室又は建設現場からは離れた事務所等に設置されている。第1経路確認端末装置4と第2経路確認端末装置5とクレーン6とは、建設現場に配置されている。
【0019】
施工管理装置2はオペレータX1により操作され、第1経路確認端末装置4はオペレータX2により操作され、第2経路確認端末装置5はオペレータX3により操作され、経路生成装置3及びクレーン6は無人で動作するものとする。オペレータX2とオペレータX3とは、互いに離れた位置であって、クレーン6の動作が視認可能な位置に配置されている。
【0020】
<施工管理装置>
施工管理装置2は、PC(パーソナルコンピュータ)等のコンピュータで構成される。施工管理装置2は、制御部21と、表示部22と、操作部23と、通信部24とを備えている。制御部21は、CPU等の制御装置及びRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶装置で構成されている。制御部21は、表示部22と、操作部23と、通信部24とに接続され、各部を制御するものである。
【0021】
表示部22は、液晶パネル等の表示装置で構成され、オペレータX1に対して各種情報を表示するものである。操作部23は、キーボード等で構成され、オペレータX1に操作されて各種指示が入力されるものである。
【0022】
通信部24は、アンテナ及び送受信機で構成され、情報を電波信号に変換して送り出すとともに、電波信号を受け入れて情報に復元するものである。無線通信には、インターネット網や携帯電話網を用いることができる。通信部24は、経路生成装置3と、第1経路確認端末装置4と、第2経路確認端末装置5と、クレーン6とに無線接続されている。そのため、制御部21は、通信部24を通じ、経路生成装置3と、第1経路確認端末装置4と、第2経路確認端末装置5と、クレーン6とへ情報を送信することができる。また制御部21は、通信部24を通じ、経路生成装置3と、第1経路確認端末装置4と、第2経路確認端末装置5と、クレーン6とが送信した情報を取得することができる。
【0023】
<経路生成装置>
経路生成装置3は、PC(パーソナルコンピュータ)等のコンピュータで構成される。経路生成装置3は、制御部31と、通信部32とを備えている。経路生成装置3は、表示部及び操作部を備えていてもよい。制御部31は、CPU等の制御装置及びRAMやROM等の記憶装置で構成され、記憶装置には作業可能範囲等の作業に関する性能データ等が格納されている。制御部31は、通信部32に接続され、通信部32を制御するものである。通信部32は、アンテナ及び送受信機で構成され、施工管理装置2と、第1経路確認端末装置4と、第2経路確認端末装置5と、クレーン6とに無線接続されている。
【0024】
制御部31は、経路生成部311を有している。経路生成部311は、クレーン6の吊り荷Wの移動予定経路を生成する演算装置である。移動予定経路は、吊り荷Wを現在位置から目的位置まで移動させるための経路である。移動予定経路の算出方法には特に限定はなく、例えば、クレーン6のカメラ68で撮影された画像データ、クレーン6の方位センサ69で検出された位置情報、性能データ等を用いて生成することができる。生成された移動予定経路は、通信部32を通じて第1経路確認端末装置4と、第2経路確認端末装置5と、クレーン6とへ送信される。
【0025】
<第1経路確認端末装置>
第1経路確認端末装置4は、タブレット端末やスマートフォン等の携帯端末装置で構成される。第1経路確認端末装置4は、制御部41と、表示部42と、操作部43と、通信部44とを備えている。制御部41は、CPU等の制御装置及びRAMやROM等の記憶装置で構成されている。制御部41は、表示部42と、操作部43と、通信部44とに接続され、各部を制御するものである。
【0026】
表示部42は、液晶パネル等の表示装置で構成され、オペレータX2に対して吊り荷Wの移動予定経路等の各種情報を表示するものである。操作部43は、表示部42に重畳されたタッチパネル等で構成され、オペレータX2に操作されて各種指示が入力されるものである。通信部44は、アンテナ及び送受信機で構成され、施工管理装置2と、経路生成装置3とに無線接続されている。
【0027】
<第2経路確認端末装置>
第2経路確認端末装置5は、第1経路確認端末装置4と同構成であり、制御部51と、表示部52と、操作部53と、通信部54とを備えている。
【0028】
<クレーン>
図1に示すように、クレーン6は、車両61と、クレーン装置62とを備えている。車両61は、左右一対の前輪611及び後輪612を備えている。また、車両61は、荷物Wの運搬作業を行なう際に接地させて安定を図るアウトリガ613を備えている。なお、車両61は、アクチュエータによって、その上部に支持するクレーン装置3を旋回自在としている。
【0029】
クレーン装置62は、その後部から前方へ突き出すようにブーム621を備えている。ブーム621は、図示しない旋回用油圧モータによって旋回自在に、図示しない伸縮用油圧シリンダによって伸縮自在に、図示しない起伏用油圧シリンダによって起伏自在になっている。ブーム621の旋回角度、旋回速度、伸縮長さ、伸縮速度、起伏角度、起伏速度は、図示しない複数のセンサによって検出される。
【0030】
ブーム621には、ワイヤロープ622が架け渡されている。ブーム621の基端側には、ワイヤロープ622を巻き付けたウインチ623が配置され、ブーム621の先端側には、ワイヤロープ622によってフック624が垂下されている。ウインチ623は、図示しない巻回用油圧モータと一体的に構成されており、ワイヤロープ622の巻き入れ及び巻き出しを可能としている。フック624は、巻回用油圧モータによって昇降自在となっている。フック624の吊下長さ及び昇降速度は、図示しないセンサによって検出される。
【0031】
また、クレーン装置62は、ブーム621の側方にキャビン625を備えている。キャビン625の内部には、クレーン装置62を手動で操作するための旋回操作具、伸縮操作具、起伏操作具、巻回操作具などが設けられている。
【0032】
図2に示すように、クレーン6は、制御部63と、旋回用バルブ64と、伸縮用バルブ65と、起伏用バルブ66と、巻回用バルブ67と、カメラ68と、方位センサ69と、通信部70とを備えている。制御部63は、CPU等の制御装置及びRAMやROM等の記憶装置で構成されている。制御部63は、旋回用バルブ64と、伸縮用バルブ65と、起伏用バルブ66と、巻回用バルブ67と、カメラ68と、方位センサ69と、通信部70とに接続され、各部を制御するものである。
【0033】
旋回用バルブ64は、旋回用油圧モータを稼動させる電磁比例切換弁である。伸縮用バルブ65は、伸縮用油圧シリンダを稼動させる電磁比例切換弁である。起伏用バルブ66は、起伏用油圧シリンダを稼動させる電磁比例切換弁である。巻回用バルブ67は、巻回用油圧モータを稼動させる電磁比例切換弁である。
【0034】
カメラ68は、ブーム621の先端や車両62に複数設けられ、フック624、吊り荷W、吊り荷W周辺の地物、クレーン6の周囲等を撮影するものである。カメラ68で撮影された画像データは経路生成装置3に送信され、移動予定経路の生成に用いられる。
【0035】
方位センサ69は、ブーム621の先端に設けられ、ブーム621の先端を中心とする方位や位置等の位置情報を検出するものである。方位センサ69としては、例えば、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)を構成するGNSS受信機を用いることができる。方位センサ69で検出された位置情報は経路生成装置3に送信され、移動予定経路の生成に用いられる。
【0036】
通信部70は、アンテナ及び送受信機で構成され、施工管理装置2と、経路生成装置3とに無線接続されている。制御部63は、通信部70を通じて経路生成装置3で生成された移動予定経路を取得することで、クレーン装置62の自動運転を制御することができる。
【0037】
なお、遠隔操作システム1はクレーン6を含まない構成であってもよい。つまり、遠隔操作システム1がクレーン6と通信する構成である。また、施工管理装置2と経路生成装置3とは1つのPC等のコンピュータで構成してもよい。また、本実施形態の遠隔操作システム1では第1経路確認端末装置4及び第2経路確認端末装置5の2つの経路確認端末装置を用いているが、複数の経路確認端末装置であればよく、例えば、3つの経路確認端末装置を用いてもよい。
【0038】
[遠隔操作システムの動作]
次に、遠隔操作システム1における吊り荷Wの移動予定経路の承認に関する各装置の動作について説明する。
【0039】
図3は、遠隔操作システム1における移動予定経路の承認に関する動作を示すフローチャートである。まず、クレーン6に吊り荷Wが吊るされ、オペレータX1により施工管理装置2の操作部23が操作され、吊り荷Wの移動先である目的位置が入力されると、ステップS10において、制御部21は入力された目的位置を取得する。目的位置の入力は、例えば、表示部23に表示されるクレーン6の周囲を撮影した画像上で指定することができる。制御部21は、目的位置が入力されたことをもって吊り荷Wの移動予定経路の生成要求があったとみなし、通信部24を通じて経路生成装置3に移動予定経路の生成要求及び目的位置を送信する。
【0040】
移動予定経路の生成要求を受信した経路生成装置3の制御部31は、ステップS11において経路生成部311で吊り荷Wの移動予定経路を生成する。制御部31は、生成した移動予定経路及びクレーン6の周囲の画像を通信部32を通じて第1経路確認端末装置4及び第2経路確認端末装置5に送信する。また、制御部31は、第1経路確認端末装置4及び第2経路確認端末装置5に移動予定経路の送信が完了した旨の通知を、通信部32を通じて施工管理装置2へ送信する。
【0041】
移動予定経路及びクレーン6の周囲の画像を受信した第1経路確認端末装置4の制御部41は、ステップS12において、図4に示すように、移動予定経路81を重畳したクレーン6の周囲の画像82と、各種操作キーのアイコンとを表示部42に表示させる。操作キーはアイコン上のタッチパネルを操作することで選択操作できる操作部43であり、承認キー83と、否認キー84と、一時待ちキー85と、メンテナンスキー86とで構成される。
【0042】
承認キー83は、「OK」のアイコンで示され、表示されている移動予定経路81を承認するキーである。否認キー84は、「NG」のアイコンで表示され、表示されている移動予定経路81を否認するキーである。一時待ちキー85は、「Wait」のアイコンで表示され、移動予定経路81を承認するか否認するかの選択を延期するキーである。メンテナンスキー86は、スパナ形状のアイコンで表示され、実際のクレーン6周囲の障害物の状況や実際のクレーン6の設置位置が表示されている画像82と異なる場合に操作されるキーである。なお、操作キーとしては、少なくとも承認キー83と否認キー84とを有していればよい。
【0043】
オペレータX2は、表示部42に表示された移動予定経路81を確認し、周囲の安全に問題がなければ承認キー83を選択操作し、問題があれば状況に応じて否認キー84、一時待ちキー85、メンテナンスキー86の何れかを選択操作する。
【0044】
同様に、移動予定経路及びクレーン6の周囲の画像を受信した第2経路確認端末装置5の制御部51は、ステップS13において、表示部52に図4の画像を表示させる。そして、オペレータX3は、表示部52に表示された移動予定経路81を確認し、操作キーの何れかを選択操作する。
【0045】
第1経路確認端末装置4及び第2経路確認端末装置5の操作キーの操作結果は、それぞれの通信部44、54を通じて施工管理装置2へ送信される。操作結果を受信した施工管理装置2の制御部21は、ステップS14において、操作結果に基づく処理を実行する。この処理は操作結果に応じて後述する第1処理から第4処理がある。
【0046】
一方、施工管理装置2の制御部21は、経路生成装置3から第1経路確認端末装置4及び第2経路確認端末装置5に移動予定経路の送信が完了した旨の通知を受信した時点から計時を開始し、第1所定時間内(例えば、2分間)に第1経路確認端末装置4及び第2経路確認端末装置5から操作キーの操作結果を受信しなかった場合、移動予定経路81での移動開始を却下する処理を実行する。
【0047】
移動開始を却下する処理とは、例えば、表示部22に「操作結果を受信できなかったため移動予定経路81を却下しました」等のメッセージを表示し、移動予定経路81での移動開始の指示をクレーン6へ送信しない処理である。移動開始が却下された後は、新たな移動予定経路を生成するため、図3の最初の動作に戻り、制御部21は再度、移動予定経路の生成要求を送信する。
【0048】
第1処理は、全ての経路確認端末装置において移動予定経路の承認が選択された場合、つまり、第1経路確認端末装置4及び第2経路確認端末装置5の両方において承認キー83が選択操作された場合に、制御部21が移動予定経路81での移動開始を許可する処理である。
【0049】
移動開始を許可する処理とは、例えば、表示部22に「移動開始します」等のメッセージと、それを承認するための「OK」等の選択可能な承認キーと、否認するための「NG」等の選択可能な否認キーとを表示させてオペレータX1に選択操作を促す処理とすることができる。そして、オペレータX1により承認キーが選択操作された場合に、制御部21は移動予定経路81での移動開始の指示をクレーン6へ送信する。これにより、クレーン6は経路生成装置3から移動予定経路81を取得し、吊り荷Wの自動搬送を開始する。
【0050】
また、移動開始を許可する処理とは、例えば、制御部21が移動予定経路81での移動開始の指示をクレーン6へ送信する処理であってもよい。これによれば、第1経路確認端末装置4及び第2経路確認端末装置5の両方において承認キー83が選択操作された場合、オペレータX1による承認の操作なしで自動的にクレーン6が吊り荷Wの自動搬送を開始する。よって、移動開始を許可する処理に要する時間を短縮することができる。
【0051】
このような第1処理によれば、複数のオペレータが周囲の安全を確認し、全ての経路確認端末装置において移動予定経路の承認が選択された場合に吊り荷Wの自動搬送が開始されるため、吊り荷Wを搬送する際の安全性を向上させることができる。
【0052】
第2処理は、少なくとも1つの経路確認端末装置において移動予定経路の否認が選択された場合、つまり、第1経路確認端末装置4及び第2経路確認端末装置5の一方又は両方において否認キー84が選択操作された場合に、制御部21が移動予定経路81での移動開始を却下する処理である。ここでの移動開始を却下する処理とは、例えば、表示部22に「経路確認端末装置により移動予定経路81が却下されました」等のメッセージを表示し、移動予定経路81での移動開始の指示をクレーン6へ送信しない処理である。移動開始が却下された後は、新たな移動予定経路を生成するため、図3の最初の動作に戻り、制御部21は再度、移動予定経路の生成要求を送信する。
【0053】
このような第2処理によれば、複数のオペレータが周囲の安全を確認し、少なくとも1つの経路確認端末装置において移動予定経路の否認が選択された場合に吊り荷Wの自動搬送の開始が却下されるため、吊り荷Wを搬送する際の安全性を向上させることができる。
【0054】
第3処理は、少なくとも1つの経路確認端末装置において一時待ちキー85が選択操作された場合に、制御部21が移動予定経路81での移動開始を却下する処理を実行するまでの時間を第1所定時間から第2所定時間(例えば5分間)に変更する処理である。第2所定時間は第1所定時間よりも長い時間である。なお、第1所定時間及び第2所定時間は施工管理装置2において所望の時間に設定可能である。
【0055】
このような第3処理によれば、第1経路確認端末装置4及び第2経路確認端末装置5における移動予定経路を承認するか否かの選択を延期しつつ、遠隔操作システムをスムーズに稼働させることができる。
【0056】
第4処理は、少なくとも1つの経路確認端末装置においてメンテナンスキー86が選択操作された場合に、制御部21が移動予定経路81での移動開始を却下する処理である。ここでの移動開始を却下する処理とは、例えば、表示部22に「現場確認が必要なため移動予定経路81を却下しました」等のメッセージを表示し、移動予定経路81での移動開始の指示をクレーン6へ送信しない処理である。移動開始が却下された後は何らかの入力操作を待つ待機状態に移行する。その後、現場確認が済むと、オペレータX1は再度、施工管理装置2の操作部23で吊り荷Wの目的位置を入力する。これにより、図3の最初の動作に戻り、制御部21は再度、移動予定経路の生成要求を送信する。
【0057】
このような第4処理によれば、オペレータX2、X3は、実際のクレーン6周囲の障害物の状況や実際のクレーン6の設置位置が表示されている画像82と異なる場合に、移動予定経路81での移動開始を却下して現場確認することを指示できる。
【0058】
なお、第2処理から第4処理の何れの処理を実行するかの優先順位は、優先順位の高い方から順に第2処理、第4処理、第3処理とすることができる。
【0059】
また、クレーン6での自動搬送中は、第1経路確認端末装置4又は第2経路確認端末装置5の図示しない停止キーが操作されることにより、第1経路確認端末装置4又は第2経路確認端末装置5から施工管理装置2を介してクレーン6へ搬送の即時停止指示が送信され、自動搬送は即時停止する。なお、即時停止指示は施工管理装置2を介さずに第1経路確認端末装置4又は第2経路確認端末装置5からクレーン6へ直接送信されるようにしてもよい。この場合、自動搬送の停止後にクレーン6から施工管理装置2へ即時停止指示により停止した旨の情報が送信される。
【0060】
また、上記の遠隔操作システム1において、各装置から他の装置へ送信される情報には送信した装置の識別子が含まれている。よって、情報を受信した装置はどの装置から受信したかを判別することができる。これにより、例えば、施工管理装置2が移動予定経路の否認を受信したとき、どの経路確認端末装置から受信したかを判別でき、表示部22に移動予定経路81が却下された旨のメッセージとともに経路確認端末装置名を表示させることもできる。
【符号の説明】
【0061】
1 遠隔操作システム
2 施工管理装置
3 経路生成装置
4 第1経路確認端末装置(経路確認端末装置)
5 第2経路確認端末装置(経路確認端末装置)
6 クレーン
81 移動予定経路
83 承認キー
84 否認キー
85 一時待ちキー
W 吊り荷
図1
図2
図3
図4