(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】搬送システム及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20241001BHJP
B25J 5/00 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
B25J5/00 A
(21)【出願番号】P 2021017625
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岩本 国大
(72)【発明者】
【氏名】糸澤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】古村 博隆
(72)【発明者】
【氏名】高木 裕太郎
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-501731(JP,A)
【文献】国際公開第2019/232652(WO,A1)
【文献】特開平11-059815(JP,A)
【文献】実開昭61-107726(JP,U)
【文献】特開平06-144509(JP,A)
【文献】特開2015-178141(JP,A)
【文献】特開2022-060104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00 - 1/20
B65G 35/00
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ロボットを用いて物体を搬送する搬送システムであって、
前記搬送ロボットは、
軸方向に伸縮可能な軸部と、前記軸部から前記軸方向とは異なる方向に延び、前記物体に形成された溝と係合する突起部と、を有するアームと、
前記軸方向を回転軸として、前記アームを回転させる駆動機構と、
前記アームの回転角度の異常を検出する検出手段と、
を備え
、
前記物体の底面に、前記物体の移動方向に並んだ複数の溝が形成され、
前記搬送ロボットは、前記物体を載置可能な天板を備え、
ラックに収容された前記物体を前記天板に移動させる場合、天板側の溝から順に前記突起部を引っ掛けることにより、前記ラックからの引き出し動作を繰り返し、
前記天板上の物体を前記ラックに移動させる場合、ラック側の溝から順に前記突起部を引っ掛けることにより、前記ラックへの押し出し動作を繰り返す
搬送システム。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記溝に前記突起部を係合させるとき、又は前記溝に前記突起部を係合させた状態で前記軸部を収縮又は伸長させるときに、前記回転角度の異常を検出する、
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記搬送ロボットは、
前記検出手段が異常を検出した場合、前記物体の引き出し動作を停止させ、又はアラームを鳴動させる、
請求項1又は2のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記検出手段は、
前記アームを回転させるモータの電流値に基づいて、前記回転角度の異常を検出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記検出手段は、
前記アームを回転させるモータに取り付けられたエンコーダの検出結果に基づいて、前記回転角度の異常を検出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項6】
搬送ロボットを用いて物体を搬送する搬送方法であって、
前記搬送ロボットは、
軸方向に伸縮可能な軸部と、前記軸部から前記軸方向とは異なる方向に延び、前記物体に形成された溝と係合する突起部とを有するアームを備え、
前記搬送方法は、
前記軸方向を回転軸として、前記アームを回転させる駆動ステップと、
前記アームの回転角度の異常を検出する検出ステップと、
を含
み、
前記物体の底面に、前記物体の移動方向に並んだ複数の溝が形成され、
前記搬送ロボットは、前記物体を載置可能な天板を備え、
ラックに収容された前記物体を前記天板に移動させる場合、天板側の溝から順に前記突起部を引っ掛けることにより、前記ラックからの引き出し動作を繰り返し、前記天板上の物体を前記ラックに移動させる場合、ラック側の溝から順に前記突起部を引っ掛けることにより、前記ラックへの押し出し動作を繰り返すステップを含む
搬送方法。
【請求項7】
前記検出ステップは、
前記溝に前記突起部を係合させるとき、又は前記溝に前記突起部を係合させた状態で前記軸部を伸縮させるときに、前記回転角度の異常を検出する、
請求項6に記載の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送システム及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コンテナの被係合部と係合するフックを有し、フックを係合させた状態でコンテナを移動させる荷移載装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術によると、コンテナの被係合部とフックとが係合していないことに気付かずに作業を継続し、作業中に荷物を落下させるおそれがあるという問題があった。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、ラックから物体を出し入れするときに物体を落下させるリスクを低減できる搬送システム及び搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態における搬送システムは、搬送ロボットを用いて物体を搬送する搬送システムであって、
前記搬送ロボットは、
軸方向に伸縮可能な軸部と、前記軸部から前記軸方向とは異なる方向に延び、前記物体に形成された溝と係合する突起部と、を有するアームと、
前記軸方向を回転軸として、前記アームを回転させる駆動機構と、
前記アームの回転角度の異常を検出する検出手段と、
を備える。
【0007】
本実施の形態における搬送方法は、搬送ロボットを用いて物体を搬送する搬送方法であって、
前記搬送ロボットは、
軸方向に伸縮可能な軸部と、前記軸部から前記軸方向とは異なる方向に延び、前記物体に形成された溝と係合する突起部と、を有するアームを備え、
前記搬送方法は、
前記軸方向を回転軸として、前記アームを回転させる駆動ステップと、
前記アームの回転角度の異常を検出する検出ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、ラックから物体を出し入れするときに物体を落下させるリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態にかかる搬送ロボットの構成を示す斜視図である。
【
図2】実施形態にかかる搬送ロボットの構成を示す側面図である。
【
図3】実施形態にかかる搬送ロボットの機能を示すブロック図である。
【
図4】実施形態にかかる搬送ロボットがアームを収縮させた状態を示す模式平面図である。
【
図5】実施形態にかかる搬送ロボットがアームを伸長させた状態を示す模式平面図である。
【
図6】実施形態にかかる搬送ロボットがアームを伸長させた後、アームを所定量回転させた状態を示す模式平面図である。
【
図7】搬送ロボットの制御部の機能を示すブロック図である。
【
図8】搬送ロボットが搬送する物体を収容するラックの構成を示す模式図である。
【
図9】搬送ロボットが搬送する物体の形状を例示する斜視図である。
【
図10】実施形態にかかる搬送ロボットが物体を引き出す前の状態を示す模式側面図である。
【
図11】実施形態にかかる搬送ロボットが、物体に形成された溝とアームとを係合させた状態を示す模式側面図である。
【
図12】実施形態にかかる搬送ロボットが物体を引き出した後の状態を示す模式側面図である。
【
図13】物体の溝にアームの突起部が入った状態を示す模式正面図である。
【
図14】物体の溝に異物が入っている状態を示す模式正面図である。
【
図15】搬送ロボットによって搬送される物体に形成された溝を例示する底面図である。
【
図16】実施形態にかかる搬送方法の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0011】
以下、図面を参照して実施形態にかかる搬送システムについて説明する。実施形態にかかる搬送システムは、搬送ロボット10を有している。搬送システムは、搬送ロボット10が荷物等の物体を搬送する搬送システムである。
【0012】
尚、搬送システムには、搬送ロボット10の走行を制御するサーバが備えられていてもよいが、搬送ロボット10が自ら搬送ルートを生成して自律移動を行ってもよい。サーバを含まない搬送ロボット内で処理が完結したシステムも、実施形態にかかる搬送システムには含まれ得る。
【0013】
図1は、実施形態にかかる搬送システムが有する搬送ロボット10の概略的構成を示す斜視図である。
図2は、搬送ロボット10の概略的構成を示す側面図である。
図3は、搬送ロボット10の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
【0014】
搬送ロボット10は、移動可能な移動部110と、上下方向へ伸縮する伸縮部120と、載置された物体を支持するための天板130と、アーム140と、移動部110、伸縮部120及びアーム140の制御を含む、搬送ロボット10の制御を行う制御部100と、無線通信部150とを備えている。
【0015】
移動部110は、ロボット本体111と、ロボット本体111に回転可能に設けられた左右一対の駆動車輪112及び前後一対の従動車輪113と、各駆動車輪112を回転駆動する一対のモータ114と、を有している。各モータ114は、減速機などを介して、各駆動車輪112を回転させる。各モータ114は、制御部100からの制御信号に応じて、各駆動車輪112を回転させることで、ロボット本体111の前進移動、後進移動、及び回転を可能にする。これにより、ロボット本体111を任意の位置に移動させることができる。尚、上記移動部110の構成は一例であり、これに限定されない。例えば、移動部110の駆動車輪112及び従動車輪113の数は任意でよく、ロボット本体111を任意の位置に移動させることができれば任意の構成が適用可能である。
【0016】
伸縮部120は、上下方向へ伸縮する伸縮機構である。伸縮部120は、テレスコピック型の伸縮機構として構成されていてもよい。伸縮部120の上端部には、天板130が設けられており、伸縮部120の動作により、天板130が上昇又は下降する。伸縮部120は、モータなどの第1駆動装置121を備えており、第1駆動装置121の駆動により伸縮する。すなわち、第1駆動装置121の駆動により、天板130が上昇又は下降する。第1駆動装置121は、制御部100からの制御信号に応じて駆動する。尚、搬送ロボット10において、伸縮部120の代わりに、天板130の高さを制御する公知の任意の機構が用いられてもよい。
【0017】
天板130は、伸縮部120の上部(先端)に設けられている。天板130は、モータなどの駆動装置により昇降し、実施の形態では、天板130は、搬送ロボット10により搬送される物体を載せるために使用される。搬送のため、搬送ロボット10は、物体を天板130で支持したまま、物体とともに移動する。これにより、搬送ロボット10は、物体を搬送する。
【0018】
天板130は、例えば、上面となる板材と下面となる板材とで構成されており、上面と下面との間に、アーム140を収める空間を有していてもよい。実施の形態では、この板材の形状、すなわち、天板130の形状は、例えば、平らな円盤状であるが、他の任意の形状であってもよい。また、天板130には、アーム140の動線に沿って切り欠きが設けられていてもよい。
【0019】
天板130には、水平方向に伸縮するアーム140が取り付けられている。アーム140は、軸方向(軸部141に沿った方向、さらに換言するとアームの長手方向)に伸縮可能な軸部141と、突起部142とを有している。突起部142は、軸部141から軸方向とは異なる方向に延び、搬送される物体に形成された溝と係合する。ここで、突起部142は、軸部141の先端で当該軸部と垂直方向に延びていてもよい。すなわち、アーム140は、L字形状であってもよい。
【0020】
また、天板130には、制御部100からの制御信号に応じて、軸部141の伸縮、及びアーム140の回転を行う第2駆動装置143が設けられている。第2駆動装置143は、駆動機構とも称される。第2駆動装置143は、例えば、モータ及びリニアガイドを含み、軸部141の伸縮、及びアーム140の回転を行うが、第2駆動装置143として、これらの動作を行うための公知の任意の機構が用いられてもよい。軸部141の伸縮に用いられる機構は、ガイドレール機構には限られない。
【0021】
ここで、アーム140の移動について
図4~6に示す。
図4は、アーム140の軸部141を収縮させた状態を示す模式平面図である。
図5は、アーム140の軸部141を伸長させた状態を示す模式平面図である。
図6は、アーム140の軸部141を伸長させた後、アーム140を所定量回転させて突起部142を上向きにした状態を示す模式平面図である。
【0022】
このように、アーム140は、水平方向に伸縮可能であるとともに、アーム140の回転に伴い突起部142を回転可能である。すなわち、軸部141を回転軸として、突起部142が回転可能である。後述するように、搬送ロボット10は、アーム140の回転角度の異常を検出することが可能である。
【0023】
図1~3に戻って、無線通信部150は、必要に応じてサーバ又は他のロボットなどと通信するために、無線通信する回路であり、例えば、無線送受信回路及びアンテナを含む。尚、搬送ロボット10が他の機器と通信を行わない場合には、無線通信部150が省略されてもよい。
【0024】
制御部100は、搬送ロボット10を制御する装置であり、プロセッサ1001、メモリ1002、及びインタフェース(IF)1003を備える。プロセッサ1001、メモリ1002、及びインタフェース1003は、データバスなどを介して相互に接続されている。
【0025】
インタフェース1003は、移動部110、伸縮部120、アーム140、無線通信部150などの他の装置と通信するために使用される入出力回路である。
【0026】
メモリ1002は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリは、プロセッサにより実行される、1以上の命令を含むソフトウェア(コンピュータプログラム)、及び搬送ロボットの各種処理に用いるデータなどを格納するために使用される。
【0027】
プロセッサ1001は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processor Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などであってもよい。プロセッサ1001は、複数のプロセッサを含んでもよい。このように、制御部100は、コンピュータとして機能する装置である。
【0028】
なお、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0029】
次に、制御部100の処理について説明する。
図7は、制御部100の機能構成を示すブロック図である。制御部100は、駆動制御部101と、検出部102とを備えている。駆動制御部101は、移動部110の各モータ114に制御信号を送信することで、各駆動車輪112の回転を制御し、ロボット本体111を任意の位置に移動させることができる。また、駆動制御部101は、第1駆動装置121に対して制御信号を送信することで、天板130の高さを制御することができる。
【0030】
尚、駆動制御部101は、駆動車輪112に設けられた回転センサにより検出された駆動車輪112の回転情報などに基づいて、フィードバック制御、ロバスト制御等の周知の制御を行うことで、搬送ロボット10の移動を制御してもよい。また、駆動制御部101は、搬送ロボット10に設けられたカメラや超音波センサなどの距離センサにより検出された距離情報、移動環境の地図情報に基づいて、移動部110を制御することで、搬送ロボット10を自律的に移動させてもよい。
【0031】
また、駆動制御部101は、第2駆動装置143に対して制御信号を送信することで、軸部141の伸縮、及びアーム140の回転角度を制御する。例えば、駆動制御部101は、軸部141を伸長させた後、突起部142が上向きになるようにアーム140を回転させる。駆動制御部101が第2駆動装置143に対して制御信号を送信することにより、後述するラックに対する物体の引き出し動作、及び押し入れ動作が実行される。駆動制御部101は、検出部102によってアーム140の回転角度の異常が検出された場合、アラームを鳴動させたり、物体90の引き出し動作を停止したり、リトライ動作を行ったりしてもよい。
【0032】
検出部102は、アーム140の回転角度の異常を検出する。例えば、検出部102は、第2駆動装置143が備える、アーム140を回転させるモータの電流値に基づいて、回転角度の異常を検出してもよい。検出部102は、例えば、電流値が閾値以上である場合、アーム140の回転角度の異常を検出する。尚、検出部102は、電流以外の物理量、例えば、インピーダンスやトルク等に基づいて、アーム140の回転角度の異常を検出してもよい。
【0033】
また、検出部102は、アーム140を回転させるモータに取り付けられたエンコーダの検出結果に基づいて、回転角度の異常を検出してもよい。検出部102は、例えば、指令された位置と、エンコーダの検出結果に基づく位置との差分(位置偏差)が閾値を超えているか否かに基づいて、回転角度の異常を検出してもよい。
【0034】
回転角度の異常が検出された場合、駆動制御部101は、アーム140による物体90の引き出し動作や、押し入れ動作を停止してもよい。検出部102は、物体90に形成された溝に突起部142を係合させるときに回転角度の異常を検出してもよく、突起部142を溝に係合させた状態で軸部141を収縮又は伸長させるとき、回転角度の異常を検出してもよい。
【0035】
ここで、搬送ロボット10が搬送対象とする物体について具体的に説明する。
図8は、ラック80と、ラック80に収納された搬送対象の物体90とを示す模式図である。尚、
図8では、ラック80の正面に位置する搬送ロボット10も図示されている。また、
図9は、物体90の正面、底面、及び側面を示す斜視図である。
図8に示された様に、搬送ロボット10は、物体90を天板130に移す際、又は、天板130に置かれた物体90をラック80に移す際、ラック80に近接した位置に移動する。例えば、搬送ロボット10は、ラック80の正面、かつ、ラック80の対のレール81a、81bの中間地点に移動する。
【0036】
ラック80は、物体90の両サイドを支持する対のレール81a、81bを有する。対のレール81a、81bは、同じ高さに平行に設けられている。ラック80に収納された物体90は、一方のサイドがレール81aにより支持され、他方のサイドがレール81bに支持される。レール81a及び81bは、いずれも、ラック80の正面から背面にわたって設けられている。
【0037】
物体90の両サイドには、例えば、
図9に示すようにつば91が設けられており、つば91がレール81a、81bに下から支持されることにより、ラック80において物体90が支持される。尚、つば91は、物体90の両サイドに正面から背面にわたって設けられている。
図9に示した例では、つば91は、物体90のサイドの上部に設けられているが、例えば下部に設けられてもよく、必ずしも上部でなくてもよい。また、物体90の底面をレール81a、81bが支持する場合には、必ずしもつば91が物体90に設けられていなくてもよい。
【0038】
このように、ラック80は、物体90の両サイドをレール81a、81bにより下から支持する。そして、物体90は、レール81a、81bに沿って、ラック80内で、前後方向に移動可能である。すなわち、物体90をラック80の背面に向かって押し入れることにより、物体90はラック80に収容される。逆に、物体90をラック80の正面に向かって引き出すことにより、物体90をラック80から取り出すことができる。
【0039】
図9に示すように、物体90の底面には、アーム140の突起部142を引っ掛けるための溝92が所定の位置に形成されている。溝92は、例えば、物体90の引き出し方向を軸方向とする半円筒形状であってもよい。尚、物体90は、例えば、直方体形状の容器であるが、これに限らず任意の物体でよい。容器としての物体90の中には、他の任意の物体を収納することができる。
【0040】
搬送ロボット10の制御部100は、アーム140を操作することにより、ラック80から天板130へ物体90を移動させ、又は、天板130からラック80へ物体90を移動させる。
図10から
図12は、ラック80に収容された物体90を天板130に載せる動作を示す模式側面図である。
【0041】
まず、制御部100は、アーム140を所定の長さ分だけ伸長させることにより、物体90に形成された溝92へとアーム140の突起部142を移動する(
図10参照)。尚、搬送ロボット10は、物体90の溝92の位置を検知するカメラなどのセンサを備え、センサによる検出結果に基づいて、アーム140を伸長させる長さを決定してもよい。
【0042】
ここで、突起部142の突起の方向は、水平方向となっている。したがって、搬送対象の物体90の底面側の狭い空間(例えば、搬送対象の物体90と、一段下に収容されている物体90との狭い隙間)にアーム140を挿入することができる。
【0043】
アーム140を伸長させた後、
図11に示すように、制御部100は、アーム140の軸部141を回転軸としてアーム140を所定量回転させる。具体的には、制御部100は、突起部142が上側を向くようにアーム140を90°回転させる。これにより、突起部142が、物体90に形成された溝92に入る。
図13は、アーム140の突起部142が物体90の溝92に入った状態を示す模式正面図である。尚、アーム140を回転させる前の突起部142の状態を点線で示している。
【0044】
ここで、突起部142が十分に回転しなかった場合、検出部102は、アーム140の回転角度の異常を検出する。
図14は、溝92に異物921が詰まっているときに、アーム140を回転させた状態を示す模式正面図である。このような場合、アーム140を回転させても、突起部142を上向きにすることはできない。このような状態で引き出し動作を継続すると、物体90を落下させてしまうおそれがある。アーム140を回転させるモータの電流値が大きくなっていることや、アーム140の回転角度の位置偏差が大きくなっていることから、回転角度の異常を検出することが可能である。
【0045】
アーム140の回転角度の異常を検出した場合、搬送ロボット10は、物体90の引き出し動作を停止する。一方、回転角度の異常が検出されなかった場合、搬送ロボット10は、
図12に示すように、溝92に引っかかったアーム140を収縮させる。これにより、物体90が、ラック80から引き出され、天板130へと移動する。
【0046】
一方、制御部100は、天板130上に載置された物体90の溝92に引っかかったアーム140をラック80に押し入れることにより、天板130上の物体90をラック80に格納することができる。検出部102は、天板130上の物体90の溝92にアーム140を係合させるとき、アーム140の回転角度の異常を検出してもよい。
【0047】
ところで、物体90の溝92の数は、
図9に示したように、一つであってもよいが、
図15に示すように複数であってもよい。
図15は、物体90の底面図である。具体的には、垂直な方向、すなわち物体90の移動方向に並んだ複数の溝92を有している。この場合、搬送ロボット10の制御部100は、ラック80に収容された物体90を天板130に移動させる場合、天板130側の溝92から順にアーム140の突起部142を引っ掛けることにより、ラック80からの引き出し動作を繰り返してもよい。同様に、搬送ロボット10の制御部100は、天板130上の物体90をラック80に移動させる場合、ラック80側の溝から順にアーム140の先端を引っ掛けることにより、ラック80への押し入れ動作を繰り返してもよい。
【0048】
複数の溝92のいずれかが異物等により破損している場合、搬送ロボット10は、物体90をラック80に出し入れするときに落下させてしまう可能性がある。搬送ロボット10は、アーム140の回転角度の異常を検出し、物体90の引き出し動作、又は押し入れ動作を停止することにより、物体90を落下させるリスクを低減することができる。
【0049】
次に、搬送ロボット10がラック80から物体90を引き出す動作について、フローチャートを参照して説明する。
図16は、搬送ロボット10が、ラック80から天板130へ物体90を移動させる動作を例示するフローチャートである。尚、搬送ロボット10は、ラック80の正面の所定位置に予め移動しているものとする。
【0050】
ステップS100において、制御部100は、所定の距離だけアーム140を伸長させて、物体90の底面の溝92へとアーム140の先端を移動する(ステップS100)。次に、ステップS101において、制御部100は、アーム140を所定量回転させる(ステップS101)。すなわち、制御部100は、アーム140の突起部142が上を向くようにアーム140を回転させる。
【0051】
次に、ステップS102において、制御部100は、アーム140の回転角度が異常であるか否かを判定する(ステップS102)。アーム140の回転角度が正常である場合(ステップS102のNo)、制御部100は、物体90の引き出し動作を継続し、溝92に引っかかったアーム140を収縮させて天板130に物体90を載置する(ステップS103)。
【0052】
一方、アーム140の回転角度が異常である場合(ステップS102のYes)、制御部100は、ステップS103の処理を行わずに処理を停止する。つまり、アーム140の回転角度が異常の場合、制御部100は、物体90の引き出し動作を停止する。処理を停止した後、制御部100は、アラームを鳴動させたり、リトライ動作を試みたりしてもよい。制御部100は、例えば、突起部142が水平方向を向くようにアーム140を回転させた後、アーム140を収縮させ、ステップS100の処理に戻ってもよい。
【0053】
なお、搬送ロボット10は、物体90の押し入れ動作において上述した異常の検知を行ってもよい。つまり、天板130上の物体90の溝92と、突起部142とを係合させるときに上述した処理を行ってもよい。溝92と突起部142とが十分に係合していない状態で物体90をラック80に押し入れて、物体90を落下させるリスクを低減することができる。
【0054】
また、制御部100は、ステップS103の処理を行う過程において、アーム140の回転角度の異常を検出してもよい。搬送ロボット10は、物体90をラック80から引き出しているときに、物体90に外力が加えられた場合、引き出し動作を停止して物体90を落下させるリスクを低減したり、アラームを鳴動させて警告を行ったりすることができる。
【0055】
最後に、実施形態にかかる搬送システムが奏する効果について詳細に説明する。突起部を有するアームを用いて、溝が形成された物体を、ラックに出し入れする場合がある。ここで、溝が破損している場合や、溝に異物が入っている場合には、物体の出し入れを正常に完了することができないおそれがあった。つまり、物体に形成された溝に突起部が入っていない状態で、物体の引き出し等の作業を継続すると、物体を落下させてしまうおそれがあった。
【0056】
実施形態にかかる搬送ロボットは、突起部を有するアームの回転角度の異常を検出することができるため、アームと物体とが未係合の状態で作業を継続することを防ぎ、物体を落下させるリスクを低減することができる。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 搬送ロボット
100 制御部
1001 プロセッサ
1002 メモリ
1003 インタフェース
101 駆動制御部
102 検出部
110 移動部
111 ロボット本体
112 駆動車輪
113 従動車輪
114 モータ
120 伸縮部
121 第1駆動装置
130 天板
140 アーム
141 軸部
142 突起部
143 第2駆動装置
150 無線通信部
80 ラック
81a、81b レール
90 物体
92 溝
921 異物