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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 35/02 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
H02K35/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021021629
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124075
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 典隆
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-092756(JP,A)
【文献】特開平10-014199(JP,A)
【文献】実開昭51-131975(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の平面にある環に沿って延在し、前記環に沿って前記1の平面と垂直な方向に起伏することで前記1の平面の一方の面の向いた方向に凸の複数の第1の凸部と前記1の平面の他方の面が向いた方向に凸の複数の第2の凸部とが交互に設けられている筒体と、
前記筒体の内部を前記環に沿った方向に移動可能な磁石と、
前記複数の第1の凸部の各々の外周面にそれぞれ巻き付けられた複数のコイルと、
を有し、
前記筒体内の隣り合う前記第1の凸部の間にある前記第2の凸部に前記環の延在方向に垂直に形成され、当該形成された場所を跨ぐ前記磁石の前記筒体の内部での移動を阻止する非磁性体の非線形弾性体からなる仕切りが設けられ、
複数の前記磁石の各々が、複数の前記仕切りによって仕切られた前記筒体の内部空間の各々に配されていることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記磁石は、球状の永久磁石であることを特徴とする、請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記磁石は、前記筒体の前記第1の凸部の凸形状の先端側の内周面における前記環の延在方向の曲率よりも小さい曲率を有することを特徴とする、請求項に記載の発電装置。
【請求項4】
前記環は、円環であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項5】
前記コイルの両端に接続され前記コイルに発生する電流を整流して出力する整流回路を有することを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1つに記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導を用いた発電装置として、例えば、特許文献1には、蓋体で両端が封止された筒状コイルと当該筒状コイルの内部に配された磁石とから構成される発電装置が開示されている。当該発電装置は、筒状コイルが傾くことによって当該筒状コイルの内部を磁石が転動又は摺動することによって発電され得ることが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、コイルが巻き付けられた環状の筒(中空環)の内部に永久磁石が配されている電子腕時計用発電装置が開示されている。当該発電装置は、腕の振り等によって中空環の内部の永久磁石が当該中空環に巻かれたコイルを通過することによって発電され得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許2988381号公報
【文献】実開昭51-131975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示されている発電装置を用いて、例えば、湖や沿岸等におけるさざ波のように、緩やかな揺れが生じる環境において当該揺れを受けて発電させる場合を考える。
【0006】
特許文献1に開示された発電装置を用いる場合、当該発電装置が円筒形のコイルとその内部を移動する磁石であるために、例えば、その芯方向に傾き(高低差)が生じる場合にしか発電することができず、また、緩やかな揺れによって生ずるコイルに対する磁石の相対速度が小さいために、発生する起電力が小さく、効率的な発電ができないという問題点が挙げられる。
【0007】
また、特許文献2に開示された発電装置を用いる場合、当該発電装置が受ける揺れが緩やかであるために、中空環の内部の永久磁石がコイルを通過できず、また、緩やかな揺れによって生ずるコイルに対する磁石の相対速度が小さいために、発生する起電力が小さく、効率的な発電ができないという問題点が挙げられる。
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、大小どのような揺れが発生する環境下においても効率的な発電を行うことができる発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1の平面にある環に沿って延在し、前記環に沿って前記1の平面と垂直な方向に起伏することで前記1の平面の一方の面の向いた方向に凸の複数の第1の凸部と前記1の平面の他方の面が向いた方向に凸の複数の第2の凸部とが交互に設けられている筒体と、前記筒体の内部を前記環に沿った方向に移動可能な磁石と、前記複数の第1の凸部の各々の外周面にそれぞれ巻き付けられた複数のコイルと、を有し、前記筒体内の隣り合う前記第1の凸部の間にある前記第2の凸部に前記環の延在方向に垂直に形成され、当該形成された場所を跨ぐ前記磁石の前記筒体の内部での移動を阻止する非磁性体の非線形弾性体からなる仕切りが設けられ、複数の前記磁石の各々が、複数の前記仕切りによって仕切られた前記筒体の内部空間の各々に配されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1に係る発電装置を模式的に示す斜視図である。
図2】実施例1に係る発電装置の側面の一部を示す図である。
図3】実施例1に係る発電装置の側面の一部を拡大した図である。
図4】実施例1に係る発電装置における整流器の回路図である。
図5】実施例1の変形例に係る発電装置の側面の一部を拡大した図である。
図6】実施例2に係る発電装置を模式的に示す斜視図である。
図7】実施例2に係る発電装置の側面の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施例を詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の符号を付している。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1に係る発電装置10を模式的に示す斜視図である。図1において、X軸、Y軸及びZ軸は、三次元直交座標系の三軸を表している。また、環CR(図中一点鎖線)は、X軸及びY軸で形成される平面内にある仮想的な円環である。
【0013】
筒体11は、環CRに沿って円環状に延在している筒体(中空円環体)である。筒体11は、Z軸方向(図中上下方向)に起伏を繰り返している。言い換えれば、当該起伏部分が連なって1つの円環状の筒体11が形成されている。筒体11は、非磁性体からなる。本実施例において、筒体11の延在方向に垂直な断面は、円環形状を有している。
【0014】
コイル13は、当該筒体11の外周面にらせん状に巻き付けられているソレノイドコイルである。具体的には、コイル13は、筒体11の起伏形状のうちの下向きに凸の部分に巻き付けられている。本実施例において、10個のコイル13が、筒体11の外周面に各々離隔して設けられている。
【0015】
磁石15は、筒体11の内部を当該筒体11の延在方向に沿って、回転しながら又は筒体11の内部表面に対して滑りながら移動可能な1つの磁石である。本実施例において、磁石15は、球状を有し、一方の半球面がN極を有し、他方の半球面がS極を有している。磁石15は、例えば、ネオジム磁石等の永久磁石である。発電装置10においては、磁石15が筒体11の中を移動し、コイル13の内部領域を通過することでコイル13に電流が生ずる。
【0016】
整流器RCTは、コイル13に接続され、コイル13と磁石15との作用によってコイル13に発生し得る交流電圧を直流電圧に変換可能な整流器である。具体的には、上述のように、磁石15は、回転しながら移動し得るため、コイル13の内側を磁石15が通過する際に互いに反対方向の電流が発生し得る。整流器RCTは、この発生した電流を所定の1方向の直流電流として整流し直流電圧として出力する。本実施例において、10個の整流器RCTの各々が、10個のコイル13の各々に接続されている(図1では模式的に1つの整流器RCTのみ示している)。
【0017】
整流器RCTには、例えば、整流された直流電圧に含まれる脈流成分を平滑にし、電圧の充放電を可能とするコンデンサや当該整流器RCTから供給される直流電力を蓄える蓄電池(二次電池)が接続されている(図示せず)。
【0018】
図2は、実施例1に係る発電装置10の側面の一部を示す図である。図2において、図中上下方向が発電装置10の上下方向である。筒体11には、下方向に凸の複数の第1の凸部である谷部11Vと、上方向に凸の複数の第2の凸部である山部11Mとが交互に設けられている。
【0019】
コイル13は、筒体11の延在方向に直交するように筒体11の谷部11Vの外周に巻き付けられている。本実施例において、複数のコイル13の各々は、複数の谷部11Vの各々に単層巻として巻き付けられている。
【0020】
ここで、図2を用いて発電装置10の発電の仕組みについて詳述する。
【0021】
本実施例の発電装置10は、例えば、水温や水質をモニタリングする環境測定機器において、水温を計測するセンサや、当該計測したデータを他の機器へ送信する送信機器に給電するための発電装置として、当該環境測定機器に組み込まれ得る。この環境測定機器は、水に浮く浮きに取り付けられるか、又は当該環境測定機器の筐体自体が浮きとなるように構成され、例えば、湖や沿岸などのさざ波のような緩やかな揺れが生じ得る水面に浮かべられて使用される。
【0022】
発電装置10は、静止状態(波が無い状態)において、上記環CRが水平となるように環境測定機器が取り付けられた浮き又は環境測定機器自体に設置される。また、発電装置10は、静止状態において、磁石15が、筒体11の谷部11Vにおいて静止した状態となるように配される。言い換えれば、発電装置10は、谷部11Vが鉛直方向下向きに凸となるような姿勢で配される。
【0023】
筒体11が上記した緩やかな揺れを受けた場合、筒体11の内部の磁石15は、谷部11Vにおいて静止状態から筒体11の延在方向のどちらか一方向に転動し得る。すなわち、磁石15は、谷部11Vから山部11Mの頂点に向かって当該山部11Mを登るように転動していく。磁石15は、谷部11Vから山部11Mの頂点に至るまでの間で停止し、重力によって当該谷部11Vの頂点に向かって転動する。
【0024】
磁石15が谷部11Vを通過することによって、当該谷部11Vに巻き付けられたコイル13を貫く磁束が変化する。すなわち、電磁誘導現象によってコイル13に誘導起電力が発生する。
【0025】
磁石15の上記した動作は、筒体11が緩やかに揺れることによって、谷部11Vにおいて振り子運動のように繰り返し行われる。すなわち、磁石15は、谷部11Vに対して筒体11の延在方向に(図中矢印方向に)繰り返し通過していく。従って、磁石15が谷部11Vを通過する度に当該谷部11Vに巻き付けられたコイル13の磁束が変化することで、当該コイル13に誘導起電力が発生する。
【0026】
電磁誘導の原理より、コイル13を通過する磁石15の速度が大きいほど当該コイル13に発生する誘導起電力は大きくなる。磁石15は、上記したように谷部11Vを繰り返し移動する。磁石15は、谷部11Vの頂点(最下点)に向かって移動する際に加速して、当該頂点を通過する際に最高速度となる。従って、発電装置10のコイル13に発生し得る誘導起電力は、磁石15が谷部11Vの頂点を通過する際に最も大きくなる。
【0027】
例えば、発電装置10と、発電装置10と同様であるが磁石15が収容されている筒体が起伏の無い単なる円環状である発電装置とを比較した場合、同じ緩やかな揺れを受けた際に、発電装置10の方が上記した起伏構造故に磁石15の速度のピーク値が大きくなることによって誘導起電力のピークも大きくなる。
【0028】
例えば、コイル13に発生した電力を蓄電するためには、コイル13から所定の電圧を超える出力を保つ必要がある。本実施例の発電装置10は、上記したように得られる誘導起電力のピークが大きくなることによって、蓄電可能となる所定の電圧を超えることが可能となり得るため、小さな波による揺動でも効率の良い発電ができる。
【0029】
よって、発電装置10は、さざ波のような緩やかな揺れが生じた場合において、当該緩やかな揺れを利用した電磁誘導現象によって、効率的な発電を行うことが可能となっている。
【0030】
また、例えば、発電装置10がさざ波よりも生じる揺れの程度が大きい波を受けた場合、磁石15は、谷部11Vから山部11Mを越えて隣り合う谷部11Vに向かって転動する。この時、磁石15は、山部11Mの頂点から谷部11Vに向かって加速していく。すなわち、磁石15は、コイル13に対する相対速度が大きな状態で谷部11Vを通過する。従って、発電装置10は、緩やかな揺れを受けた際よりも大きな誘導起電力を発生させることができる。
【0031】
磁石15は、緩やかな揺れよりも大きい揺れを受けて谷部11Vから隣接する谷部11Vに移動した後に、再びさざ波のような緩やかな揺れを受けた場合であっても、当該谷部11Vにおいて再び振り子運動のように谷部11Vを転動し得る。従って、磁石15が谷部11Vを通過する度にコイル13の磁束が変化することで、当該コイル13に誘導起電力が発生する。
【0032】
上記したように、発電装置10は、緩やかな揺れが生じた際のみならず、その揺れよりも大きな揺れが生じた際においても、コイル13に誘導起電力が発生することによって効率的な発電を行うことができる。
【0033】
また、筒体11が起伏を有しながら環状に形成されていることによって、当該筒体11に対して緩やかな又はそれよりも大きな揺れがどの方向から発生した場合であっても、磁石15は、当該揺れを受けて谷部11Vを転動し得る。従って、発電装置10は、あらゆる方向から大小どのような揺れが生じた場合であっても効率的に発電を行うことができる。
【0034】
図3は、図2において磁石15が谷部11Vを筒体11の延在方向に沿って通過する際の谷部11Vの拡大図である。図3において、図の煩雑さを避けるためにコイル13を省略している。また、谷部11Vを筒体11の延在方向に垂直に通る中心線を中心線CLとして示している。
【0035】
谷部11Vの内周面において、当該谷部11Vの頂点11VPの曲率は、当該頂点11VPを通過する磁石15の曲率よりも小さく構成されている。言い換えれば、谷部11Vの頂点11VPにおける曲率半径は、磁石15の曲率半径よりも大きくなるように構成されている。
【0036】
上記したように、磁石15は、さざ波のような緩やかな揺れを受けることで谷部11Vを繰り返し通過する。従って、谷部11Vの内周面における頂点11VPの曲率が磁石15の曲率よりも小さく構成されることで、磁石15は、当該谷部11Vに留まることなく滑らかに移動することができる。
【0037】
図4は、コイル13に接続された整流器RCTの回路図である。コイル13の各々における2つの端子は、図4に示すように、整流器RCTの単相のブリッジダイオードBDの各々に接続されている。このブリッジダイオードBDの各々は直列に接続され、その出力端は、抵抗負荷LDの端子に接続されている。
【0038】
上述のように、磁石15は、転動しながら谷部11Vを通過し得る。そのため、コイル13には、その内側を磁石15が通過する際に互いに反対方向の電流が発生し得る。整流器RCTは、この発生した電流を所定の1方向の直流電流として整流し直流電圧として出力することが可能となっている。
【0039】
以上、実施例1に係る発電装置10について説明したが、当該発電装置10の筒体11は、磁石15が谷部11Vを繰り返し通過可能となるような起伏を有して環状に形成されていればよく、谷部11V及び山部11Mの形成される数に限定されない。
【0040】
また、筒体11は、あらゆる方向からの大小の揺れに対応可能なように環状に形成されていればよく、例えば、楕円環状であってもよい。また、筒体11の延在方向に垂直な断面の形状は、磁石15が通過可能な形状であればよく、円形のほかに楕円や長方形等でもよい。
【0041】
また、筒体11は、当該筒体11の内周面に磁石15が吸着しないように非磁性体であればよく、プラスチック等の絶縁体や、コイル13との間において絶縁処理が施されたアルミや銅などの非磁性金属から構成されてもよい。
【0042】
筒体11の厚みは、磁石15とコイル13との電磁誘導現象に影響を与えることのないように、例えば、数ミリ程度以下であることが好ましい。また、磁石15と筒体11の内面との間隙は、上記理由により磁石15とコイル13の間隙が極力少なくなることが好ましく、例えば、数ミリ程度以下であることが好ましい。
【0043】
コイル13は、筒体11内を通過する磁石15によって発電可能なように谷部11Vに巻き付けられていればよく、その巻数や長さに限定されない。例えば、コイル13は、単層巻のほか、二層巻、三層巻と多層として重ねても良く、重ねるほどコイル13に発生する誘導起電力を大きくすることができる。また、例えば、コイル13は、筒体11全体に単一のコイル13として巻き付けられていてもよい。すなわち、1つのコイル13が、山部11M及び谷部11Vの各々に亘って設けられていてもよい。
【0044】
磁石15は、当該磁石15が筒体11の延在方向に沿って移動可能であればよく、自身が転動しなくてもよい。例えば、筒体11の内部には、磁石15を搬送可能な移動手段が設けられていてもよい。当該移動手段として、例えば、筒体11の内部において磁石15の下に複数配置され、磁石15と筒体11との内周面との摩擦による運動エネルギーの損失を抑えるボールベアリング等の回転体が設けられていてもよい。
【0045】
また、磁石15は、磁石15自身に車輪等の回転体が設けられている構成としてもよい。なお、磁石15は、上記したような移動手段を用いて筒体11内部を移動する場合、その形状にとらわれない。例えば、磁石15は、球状のほかに円柱状や直方体状を有していてもよい。
【0046】
整流器RCTは、コイル13の各々に接続され、当該コイル13に発生し得る交流電圧を整流可能な構成であればよく、その回路構成にとらわれない。例えば、ブリッジダイオードBDの出力は、隣接するブリッジダイオードBDに結線されていなくてもよく、ブリッジダイオードBDの各々が並列に抵抗負荷LDに接続されていてもよい。この構成により、隣接するブリッジダイオードBDを通過することによる抵抗分の損失を抑えることができる。
【0047】
[変形例]
ここで、図5を用いて実施例1の変形例について説明する。図5は、実施例1の変形例に係る発電装置の側面図であり、上記実施例の説明における図2の谷部11Vを拡大したものである。変形例の発電装置は、実施例1に係る発電装置10と筒体11及び磁石15の形状が異なっており、それ以外の点で発電装置10と同様の構成を有する。
【0048】
本変形例において、筒体11内部の下面側には、筒体11の延在方向に沿ってギア部11Aが形成されている。また、磁石15には、その周方向に沿って筒体11内部の複数のギア部11Aと噛合可能なギア部15Aが形成されている。すなわち、本変形例において、筒体11の内部及び磁石15は、磁石15がピニオンギアとなり、筒体11の内部表面をラックギアとなるラックアンドピニオンの機構をなしている。
【0049】
磁石15は、筒体11が緩やかな揺れを受けた際に、当該磁石15のギア部15Aが筒体11内部のギア部11Aと互いに連続して噛み合うことによって、筒体11の内部を移動し得る。言い換えれば、磁石15は、筒体11の内部を移動する際に、滑り無く回転しながら移動する。
【0050】
本変形例において、ギア部11A及びギア部15Aは、磁石15が谷部11Vを通り抜ける際に所定の連続した姿勢を取りつつ移動するように構成される。具体的には、例えば、本変形例において、ギア部11A及びギア部15Aは、磁石15が谷部11Vを通り抜ける際に、コイル13に一定方向の電流しか流れないような姿勢で磁石15が移動するように構成される。このようにすることで、当該コイル13から得られる電流は常に同符号となり、常に半波整流状の電圧を得ることができる。
【0051】
本変形例の発電装置によれば、上記のように常に同符号の電流を得ることができるため、実施例1のようにコイル13に整流器を設ける必要がなくなる。従って、コイル13に接続され得る回路の簡略化が見込まれる。
【実施例2】
【0052】
図6は、実施例2に係る発電装置20の斜視図である。発電装置20は、実施例1に係る発電装置10と筒体11の内部構成が異なっており、それ以外の点で発電装置10と同様の構成を有する。
【0053】
仕切り17は、筒体11の内部においてその延在方向に垂直に設けられている複数の仕切りである。仕切り17は、筒体11の延在方向に垂直な断面の形状と同様の形状を有する。仕切り17は、例えば、ゴム板等の非磁性体の非線形弾性体からなる。本実施例において、仕切り17は、筒体11の内部において10個設けられている。
【0054】
磁石15は、筒体11の内部を当該筒体11の延在方向に沿って移動可能な複数の球状の磁石である。本実施例において、磁石15は、筒体11の内部において10個配されている。
【0055】
図7は、実施例2に係る発電装置20の側面図のうちの一部を示す図である。複数の仕切り17の各々は、筒体11の山部11Mの各々の頂点に設けられている。言い換えれば、仕切り17は、隣り合う谷部11Vの間に設けられている。筒体11は、複数の仕切り17によって谷部11Vを含む複数の内部空間を形成している。
【0056】
仕切り17は、異なる磁極を有する磁石の間においてその磁石同士が磁力によって引き付けられることを防ぐことが可能な仕切りである。仕切り17は、例えば、ロウ付け、圧着、固相接合又は融着等によって筒体11内部に接合されている。
【0057】
複数の磁石15の各々は、仕切り17によって仕切られた筒体11の複数の内部空間の各々にそれぞれ1つずつ配されている。すなわち、複数の磁石15の各々は、仕切り17によって形成された筒体11の内部空間のみを移動可能であり、それ以外の筒体11の延在方向の移動が当該仕切り17に阻止されている。
【0058】
実施例1と同様に、筒体11がさざ波のような緩やかな揺れを受けた場合、当該筒体11の谷部11Vにある磁石15は、谷部11Vを筒体11の延在方向に(図中矢印方向に)繰り返し転動し得る。磁石15は、谷部11Vの頂点(最下点)に向かって移動する際に加速して、当該頂点を通過する際に最高速度となる。従って、発電装置10のコイル13に発生し得る誘導起電力は、磁石15が谷部11Vの頂点を通過する際に最も大きくなる。
【0059】
上記に加えて、本実施例に係る発電装置20は、複数の磁石15を用いて発電を行うことが可能となっている。すなわち、上記したように、さざ波のような緩やかな揺れが生じた際に、筒体11の複数の内部空間の各々に配された複数の磁石15の各々が、複数のコイル13の各々を通過することによって、発電装置10よりも大きな発電量を得ることができる。
【0060】
また、上記した緩やかな揺れよりも大きな揺れが生じた場合、筒体11の複数の内部空間の各々に配された複数の磁石15の各々は、谷部11Vから山部11Mの頂点へ転動し、非線形弾性体である仕切り17の各々に弾き返されて、谷部11Vを通過していく。従って、本実施例において、大きな揺れが生じた際に仕切り17に弾き返された磁石15の各々は、コイル13に対する相対速度が大きな状態で谷部11Vの各々を通過することで、発電装置10よりも大きな発電量を得ることができる。
【0061】
上述したように、整流器RCTの各々は、コイル13の各々に接続されている。磁石15の各々が筒体11の谷部11Vの各々を繰り返し通過する場合、コイル13に発生する誘導起電力は、正負が入れ替わる交流電圧となるため、当該コイル13の各々から集約された電圧である合成電圧は、弱まって出力される可能性がある。本実施例によれば、整流器RCTがコイル13の各々に接続されることで当該発生した交流電圧を直流電圧として整流することによって、発電装置20は、整流器RCTを使用しない場合よりも大きな合成電圧を得ることが可能となる。
【0062】
なお、磁石15の各々は、そのN極とS極とが入れ替わりながら谷部11V各々を通過し得るため、コイル13の各々に発生する電圧は、磁石15の一度の通過においても交流電圧となり得る。この場合においても、整流器RCTがコイル13に接続されることで交流電圧を直流電圧として整流することによって、発電装置20は、整流器RCTを使用しない場合よりも大きな合成電圧を得ることが可能となる。
【0063】
以上、実施例2に係る発電装置20について説明したが、仕切り17は、異なる磁極を有する磁石の間においてその磁石同士が磁力によって引き付けられることを防ぐことができればよく、その厚みや設置位置は限定されない。なお、仕切り17は、高反発性を有し、谷部11Vから転動した磁石15を谷部11Vへ弾き返す弾性力を有していることが好ましい。
【0064】
また、仕切り17によって仕切られた筒体11の内部空間には、谷部11Vが2つ以上含まれていてもよい。例えば、2つの仕切り17によって仕切られた筒体11の2つの内部空間において、谷部11Vがそれぞれ5つずつ含まれていてもよく、当該内部空間の各々に磁石15が1つずつ配されるように構成されていてもよい。
【0065】
実施例1及び2において、発電装置10及び20は、湖や沿岸などの緩やかな揺れが発生し得る環境において使用される場合について説明したが、当該緩やかな揺れが発生し得る環境であればよく、発電装置10及び20が組み込まれる機器はこれに限定されない。例えば、発電装置10及び20は、緩やかな風力を受けて揺れが生じるように吊り下げられて使用されてもよく、継続的又は断続的に揺動が発生し得る環境に設置されてもよい。
【0066】
なお、上記した変形例の筒体11の内部と磁石15の表面とでラックアンドピニオンを形成する構成は、実施例2の発電装置にも適用可能である。当該変形例の構成を適用することで、実施例2の発電装置においても整流器を省略して、回路を簡略化することが可能となる。
【0067】
本発明に係る発電装置10及び20における各部分の形状、寸法又は構成は、上述した実施例に限られるものではなく、用途等に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
10、20 発電装置
11 筒体
13 コイル
15 磁石
17 仕切り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7