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特許7563225ロータの製造装置、ロータの製造方法及びロータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ロータの製造装置、ロータの製造方法及びロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20241001BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20241001BHJP
【FI】
H02K15/03 H
H02K1/276
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021023504
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2021164402
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2020060871
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】原田 優
(72)【発明者】
【氏名】平松 律郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 智裕
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-082778(JP,A)
【文献】特開2007-074888(JP,A)
【文献】特開平08-130862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/17
1/27-1/2798
15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコア(22)の磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石(23)を有するロータ(20)において、埋込状態にある前記永久磁石に対して前記ロータの外部から着磁を行う着磁装置(30)を含むロータの製造装置であって、
前記着磁装置は、前記ロータの外周面(22a)との対向部位(32a)を有する第1ヨーク部(32)と、前記第1ヨーク部と磁路を構成するとともに回転軸(21)の嵌挿前の前記ロータの軸嵌挿孔(22b)に挿入される挿入部位(34d,42d)若しくは前記ロータの軸嵌挿孔に嵌挿された回転軸と磁気的に連結するための連結部位(34e,42e)を有する第2ヨーク部(34,42)と、前記第1及び第2ヨーク部の磁路上に設けられる着磁用コイル(33,35,43)とを含み、
前記着磁用コイルへの通電に基づき、前記ロータの径方向に対向する関係にある前記第1ヨーク部の対向部位と前記第2ヨーク部の挿入部位若しくは前記回転軸との間で少なくとも前記ロータの内部に着磁磁束を流して、埋設状態の前記永久磁石に対する着磁を行うように構成された、ロータの製造装置。
【請求項2】
前記着磁用コイルは、前記第1ヨーク部の対向部位に巻装の着磁用第1コイル(33)と、前記第2ヨーク部の挿入部位若しくは前記連結部位の近傍に巻装の着磁用第2コイル(35,43)とを備え、
前記着磁用第1及び第2コイルで協働して着磁磁束を生じさせるように構成された、請求項1に記載のロータの製造装置。
【請求項3】
前記着磁用第1コイルは、前記ロータの周方向に複数設けられ前記永久磁石を含むロータ磁極部(26)に対応して設けられるのに対し、前記着磁用第2コイルは、前記ロータ磁極部の異なる極に対して共用で設けられ、
前記着磁用第2コイルは、前記永久磁石の着磁する極毎に通電態様を切り替えて着磁磁束の向きを切り替えるように構成された、請求項2に記載のロータの製造装置。
【請求項4】
前記第2ヨーク部及び前記着磁用第2コイルは、着磁対象の前記ロータの軸方向一方側と他方側とで一対対称的に設けられて構成された、請求項2又は請求項3に記載のロータの製造装置。
【請求項5】
前記第2ヨーク部の挿入部位である挿入突部(34d,42d)の先端部は、先細形状とするテーパ部(34x,42x)を含んで構成された、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のロータの製造装置。
【請求項6】
前記第2ヨーク部の挿入部位である挿入突部(34d,42d)は、前記着磁装置の可動部(41)と据置部(31)とのそれぞれに設けられるものであり、
前記可動部に設けられる挿入突部(42d)は、自身の突出長さ(L2)が前記据置部に設けられる挿入突部(34d)の突出長さ(L1)よりも短い設定にて構成された、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のロータの製造装置。
【請求項7】
前記着磁装置は、着磁対象の前記ロータを設置するためのロータ設置空間(30x)において、前記ロータとの間に生じ得る隙間を埋めるように設置される磁性材料よりなるスペーサ(51)が用いられる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のロータの製造装置。
【請求項8】
前記着磁装置は、前記着磁用コイルの変形及び移動を規制する規制部材(36,37,38,39,44,45,46)が設けられて構成された、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のロータの製造装置。
【請求項9】
ロータコア(22)の磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石(23)を有するロータ(20)において、着磁装置(30)を用いて埋込状態にある前記永久磁石に対して前記ロータの外部から着磁を行うロータの製造方法であって、
前記着磁装置は、前記ロータの外周面(22a)との対向部位(32a)を有する第1ヨーク部(32)と、前記第1ヨーク部と磁路を構成するとともに回転軸(21)の嵌挿前の前記ロータの軸嵌挿孔(22b)に挿入される挿入部位(34d,42d)若しくは前記ロータの軸嵌挿孔に嵌挿された回転軸と磁気的に連結するための連結部位(34e,42e)を有する第2ヨーク部(34,42)と、前記第1及び第2ヨーク部の磁路上に設けられる着磁用コイル(33,35,43)とを含む構成のものを用い、
前記着磁用コイルへの通電に基づき、前記ロータの径方向に対向する関係にある前記第1ヨーク部の対向部位と前記第2ヨーク部の挿入部位若しくは前記回転軸との間で少なくとも前記ロータの内部に着磁磁束を流して、埋設状態の前記永久磁石に対する着磁を行う、ロータの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のロータの製造方法により製造されたロータであって、
前記ロータコア(22)の前記磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす前記永久磁石(23)を有し、前記着磁装置(30)を用いて埋込状態にある前記永久磁石に対して外部から着磁が行われて構成されるものであり、
前記ロータコアの外周面(22a)において折返し形状の前記永久磁石の内側面の延長線間を磁極ピッチ(Lp)、前記永久磁石の周方向中心線(Ls)上において前記ロータコアの外周面から前記永久磁石の屈曲部(23b)の内側面までを埋込深さ(Lm)とすると、前記永久磁石は、前記磁極ピッチより前記埋込深さが大となるような深い折返し形状をなし、
前記永久磁石の着磁による磁界強さの変化が緩やかになる変曲点を所望下限値とした場合、前記永久磁石において所望下限値を上回る磁界強さにて着磁される前記永久磁石の部位の体積比が90%を超える着磁態様である、ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋込状態にある永久磁石の着磁をロータの外部から行う埋込磁石型のロータの製造装置、ロータの製造方法及びロータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、埋込磁石型(IPM型)のロータを用いる回転電機が周知である。埋込磁石型のロータは、永久磁石がロータコアの内部に埋め込まれる態様をなし、ロータコアにおける永久磁石より径方向外側部位にてリラクタンストルクを得る構成となっている。このような埋込磁石型のロータにおいては、埋込状態をなす未着磁の永久磁石を有したロータコアに対し、外径側から着磁装置にて着磁が行われているものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-144322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、埋込磁石型のロータをより高性能とするためには、永久磁石を略V又はU字の折返し形状としてロータコアにおける永久磁石より径方向外側部位を大きく構成し、リラクタンストルクの増大を図ることが一つの対策である。
【0005】
しかしながら、ロータコアにおける永久磁石より径方向外側部位をより大きくしようと、永久磁石の折返し部分である屈曲部がより径方向内側に位置する深い折返し形状とするほど、永久磁石の特に屈曲部及び屈曲部近辺が着磁装置から遠く離れることになる。そのため、着磁装置から遠い部位となる永久磁石の屈曲部や屈曲部近辺が十分な磁力となるように着磁されるかが懸念されるところである。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ロータコアに埋込状態の永久磁石に対して高磁力で着磁し得るロータの製造装置、ロータの製造方法及びその着磁がなされたロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するロータの製造装置は、ロータコア(22)の磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石(23)を有するロータ(20)において、埋込状態にある前記永久磁石に対して前記ロータの外部から着磁を行う着磁装置(30)を含むロータの製造装置であって、前記着磁装置は、前記ロータの外周面(22a)との対向部位(32a)を有する第1ヨーク部(32)と、前記第1ヨーク部と磁路を構成するとともに回転軸(21)の嵌挿前の前記ロータの軸嵌挿孔(22b)に挿入される挿入部位(34d,42d)若しくは前記ロータの軸嵌挿孔に嵌挿された回転軸と磁気的に連結するための連結部位(34e,42e)を有する第2ヨーク部(34,42)と、前記第1及び第2ヨーク部の磁路上に設けられる着磁用コイル(33,35,43)とを含み、前記着磁用コイルへの通電に基づき、前記ロータの径方向に対向する関係にある前記第1ヨーク部の対向部位と前記第2ヨーク部の挿入部位若しくは前記回転軸との間で少なくとも前記ロータの内部に着磁磁束を流して、埋設状態の前記永久磁石に対する着磁を行うように構成された。
【0008】
上記課題を解決するロータの製造方法は、ロータコア(22)の磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石(23)を有するロータ(20)において、着磁装置(30)を用いて埋込状態にある前記永久磁石に対して前記ロータの外部から着磁を行うロータの製造方法であって、前記着磁装置は、前記ロータの外周面(22a)との対向部位(32a)を有する第1ヨーク部(32)と、前記第1ヨーク部と磁路を構成するとともに回転軸(21)の嵌挿前の前記ロータの軸嵌挿孔(22b)に挿入される挿入部位(34d,42d)若しくは前記ロータの軸嵌挿孔に嵌挿された回転軸と磁気的に連結するための連結部位(34e,42e)を有する第2ヨーク部(34,42)と、前記第1及び第2ヨーク部の磁路上に設けられる着磁用コイル(33,35,43)とを含む構成のものを用い、前記着磁用コイルへの通電に基づき、前記ロータの径方向に対向する関係にある前記第1ヨーク部の対向部位と前記第2ヨーク部の挿入部位若しくは前記回転軸との間で少なくとも前記ロータの内部に着磁磁束を流して、埋設状態の前記永久磁石に対する着磁を行う。
【0009】
上記ロータの製造装置及び上記ロータの製造方法によれば、着磁装置を用いて外部からロータに埋設状態にある永久磁石の着磁を行う際、ロータの径方向に対向する関係にある第1ヨーク部の対向部位と、回転軸の嵌挿前の軸嵌挿孔に挿入される第2ヨーク部の挿入部位、若しくは第2ヨーク部と磁気的に連結するロータの軸嵌挿孔に嵌挿された回転軸と、の間で少なくともロータの内部に着磁磁束を流す着磁が行われる。つまり、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石の屈曲部や屈曲部近辺は、従来一般的に行われている外径側からの着磁において着磁磁束の届き難い位置にあるものの、上記着磁手法を用いることで永久磁石の屈曲部や屈曲部近辺についても十分な着磁磁束の供給が可能となる。これにより、永久磁石の全体に亘って十分な磁力にて着磁することが可能となる。
【0010】
上記課題を解決するロータの製造方法により製造されたロータは、前記ロータコア(22)の前記磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす前記永久磁石(23)を有し、前記着磁装置(30)を用いて埋込状態にある前記永久磁石に対して外部から着磁が行われて構成されるものであり、前記ロータコアの外周面(22a)において折返し形状の前記永久磁石の内側面の延長線間を磁極ピッチ(Lp)、前記永久磁石の周方向中心線(Ls)上において前記ロータコアの外周面から前記永久磁石の屈曲部(23b)の内側面までを埋込深さ(Lm)とすると、前記永久磁石は、前記磁極ピッチより前記埋込深さが大となるような深い折返し形状をなし、前記永久磁石の着磁による磁界強さの変化が緩やかになる変曲点を所望下限値とした場合、前記永久磁石において所望下限値を上回る磁界強さにて着磁される前記永久磁石の部位の体積比が90%を超える着磁態様である。
【0011】
磁極ピッチより埋込深さが大となるような深い折返し形状をなす永久磁石を有するロータにおいては、永久磁石の屈曲部や屈曲部近辺が着磁磁束の届き難い状況にあるものの、上記ロータの製造方法を用いることで、永久磁石の全体に亘って十分な磁力にて着磁がなされる。この場合、永久磁石の着磁による磁界強さの変化が緩やかになる変曲点を所望下限値とすると、ロータの永久磁石においては、その所望下限値を上回る磁界強さにて着磁される永久磁石の部位の体積比が90%を超える着磁態様とすることが可能である(図10等参照)。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】埋込磁石型のロータを有する回転電機の構成図。
図2】ロータの構成図。
図3】ロータの断面図。
図4】一実施形態の着磁装置の構成を説明するための説明図。
図5】同形態の着磁装置の構成を説明するための説明図。
図6】同形態の着磁装置の構成を説明するための説明図。
図7】同形態の着磁装置の着磁方法を説明するための説明図。
図8】同形態の着磁装置の着磁方法を説明するための説明図。
図9】同形態の着磁装置にて着磁された永久磁石を説明するための説明図。
図10】同形態の着磁装置にて着磁された永久磁石を説明するための説明図。
図11】変更例の着磁装置の構成を説明するための説明図。
図12】変更例の着磁装置の構成を説明するための説明図。
図13】変更例の着磁装置の構成及び着磁方法を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、ロータの製造装置、ロータの製造方法及びロータの一実施形態を説明する。
図1に示す本実施形態の回転電機Mは、埋込磁石型のブラシレスモータにて構成されている。回転電機Mは、略円環状のステータ10と、ステータ10の径方向内側空間にて回転可能に配置される略円柱状のロータ20とを備えている。
【0014】
ステータ10は、略円環状のステータコア11を備えている。ステータコア11は、磁性金属材料にて構成、例えば複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成されている。ステータコア11は、径方向内側に向かって延び周方向等間隔に配置される本実施形態では12個のティース12を有している。各ティース12は、互いに同一形状をなしている。ティース12は、先端部である径方向内側端部が略T型をなし、先端面12aがロータ20の外周面に倣った円弧状をなしている。ティース12には、巻線13が集中巻きにて巻装されている。巻線13は3相結線がなされ、図1ようにそれぞれU相、V相、W相として機能する。そして、巻線13に対して電源供給がなされると、ロータ20を回転駆動するための回転磁界がステータ10にて生じるようになっている。このようなステータ10は、ステータコア11の外周面がハウジング14の内周面に対して固定されている。
【0015】
ロータ20は、回転軸21と、回転軸21が中心部に嵌挿される略円柱状のロータコア22と、ロータコア22の内部に埋め込まれる態様をなす本実施形態では8個の永久磁石23とを備えている。ロータコア22は、磁性金属材料にて構成、例えば複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成されている。ロータ20は、回転軸21がハウジング14に設けられる図示略の軸受に支持されることで、ステータ10に対して回転可能に配置されている。
【0016】
ロータコア22は、永久磁石23を収容するための磁石収容孔24を有している。磁石収容孔24は、ロータコア22の周方向等間隔に本実施形態では8個設けられている。各磁石収容孔24は、径方向内側に向かって凸の略V字の折返し形状をなし、互いに同一形状をなしている。また、磁石収容孔24は、ロータコア22の軸方向全体に亘り設けられている。
【0017】
ここで、本実施形態の永久磁石23は、磁石粉体を樹脂と混合した磁石材料を成型固化してなるボンド磁石よりなる。すなわち、永久磁石23は、ロータコア22の磁石収容孔24を成形型とし、固化前の磁石材料が射出成形により磁石収容孔24内に隙間なく充填され、充填後に磁石収容孔24内で固化されて構成されている。したがって、磁石収容孔24の孔形状は、永久磁石23の外形形状となる。本実施形態の永久磁石23に用いられる磁石粉体としては、例えばサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁石が用いられるが、他の希土類磁石等を用いてもよい。
【0018】
永久磁石23は、径方向内側に向かって凸の略V字の折返し形状をなしている。詳述すると、永久磁石23は、図2に示すように、一対の直線部23aの径方向内側端部同士を屈曲部23bにて繋いだ形状をなしている。直線部23aの径方向外側端部23cは、ロータコア22の外周面22aの近くに位置している。永久磁石23は、一対の直線部23a及び屈曲部23bを含むV字経路のいずれにおいても厚さWmが一定に設定されている。永久磁石23は、ロータ20の軸中心O1を通る自身の周方向中心線Lsに対して線対称形状をなし、隣接の永久磁石23間におけるロータ20の軸中心O1を通る磁極境界線Ldに近接している。隣接の磁極境界線Ld間の角度、すなわちこの永久磁石23を含むロータ磁極部26の磁極開角度θmは、電気角で180°である。
【0019】
また、ロータコア22の外周面22aにおいて永久磁石23の各直線部23aの内側面の延長線間を磁極ピッチLp、永久磁石23の周方向中心線Ls上においてロータコア22の外周面22aから永久磁石23の屈曲部23bの内側面までを埋込深さLmとすると、本実施形態の永久磁石23は、磁極ピッチLpより埋込深さLmが大となるような深い折返し形状を採用している。つまり、本実施形態の永久磁石23は、図2及び図3に示すように、自身の屈曲部23bがロータコア22の中心部の回転軸21の嵌挿される軸嵌挿孔22bに近い径方向内側寄りに位置する深い折返し形状となっている。また、永久磁石23は、ロータコア22の軸方向全体に亘り設けられている。
【0020】
ロータコア22の磁石収容孔24内で固化した永久磁石23は、図4等に示す着磁装置30を用い、未着磁状態から本来の磁石として機能させるべくロータコア22の外部から着磁が行われる。着磁装置30及び着磁装置30を用いた着磁方法の詳細については後述する。永久磁石23は、ロータコア22の周方向に本実施形態では8個設けられており、周方向に交互に異極となるように着磁される。また、個々の永久磁石23においては、それぞれ自身の厚さ方向に磁化される。
【0021】
ロータコア22において永久磁石23より径方向外側部位でステータ10と対向する部位は、リラクタンストルクを得るための外側コア部25として機能する。そして、ロータ20は、永久磁石23と個々の永久磁石23の略V字間で囲まれる外側コア部25とを含む本実施形態では8極のロータ磁極部26として構成されている。各ロータ磁極部26は、図1のように周方向に交互にそれぞれN極、S極として機能する。このようなロータ磁極部26を有するロータ20では、マグネットトルクとリラクタンストルクとが好適に得られるものとなる。
【0022】
次に、永久磁石23の着磁装置30及び着磁装置30を用いた永久磁石23の着磁方法を含むロータ20の製造装置及びロータ20の製造方法について説明する。
[着磁装置の構成]
本実施形態の着磁装置30について、図4図5及び図6を用いて説明する。なお、図4から図6では、断面部分について適宜ハッチングを省略してある。また、図6では、ロータ20が断面として図示、着磁装置30が端面として図示してある。
【0023】
着磁装置30は、図4から図6に示すように、装置本体部31と装置上側部41とを備え、着磁対象のロータ20の設置及び取出しを可能とすべく、装置本体部31に対して装置上側部41が接離可能に構成されている。なお、装置本体部31と装置上側部41との配置や動作態様は一例であり、適宜変更可能である。
【0024】
装置本体部31は、主着磁部30aと、下側補助着磁部30bとを一体に備えている。主着磁部30aは、磁性金属製の外径側主ヨーク部32と、着磁用主コイル33とを備えている。外径側主ヨーク部32は、着磁装置30に設置されるロータ20の各ロータ磁極部26に対応して設けられる8個の着磁用対向凸部32aを有し、各着磁用対向凸部32aの径方向内側端部である先端部32a1は、ロータ20(ロータコア22)の外周面22aに対し径方向に非常に近接して対向する位置関係となっている。各着磁用対向凸部32aには、それぞれ巻回軸が径方向に向くように着磁用主コイル33が巻装されている。外径側主ヨーク部32の径方向外周部は、周方向等間隔に設けられる各着磁用対向凸部32aを周方向に一体的に連結する環状連結部32bとしている(環状連結部32bの環状形状を示す図示は省略)。
【0025】
下側補助着磁部30bは、磁性金属製の下側補助ヨーク部34と、着磁用下側補助コイル35とを備えている。下側補助ヨーク部34は、各着磁用対向凸部32aに対応して8個設けられる下側連結部34aと、各下側連結部34aを纏める1個の下側集合部34bとを備えている。各下側連結部34aは、一端が外径側主ヨーク部32の環状連結部32bの下面部にそれぞれ一体的に連結されている。各下側連結部34aは、着磁用主コイル33等を避けつつ軸方向下方側に迂回する形状をなし、各下側連結部34aの他端は、下側集合部34bとそれぞれ一体的に連結している。
【0026】
下側集合部34bは、着磁装置30に設置されるロータ20の下側に位置し、ロータ20の軸方向に沿った柱状をなしている。下側集合部34bは、自身の上面中央部にロータ20が当接、すなわち下側集合部34bではロータ20が載置される当接部34cを有し、当接部34cより内側には、ロータ20の中心部の軸嵌挿孔22bに下側から挿入される下側挿入突部34dが設けられている。
【0027】
また、下側集合部34bには、巻回軸が軸方向に向くように着磁用下側補助コイル35が巻装されている。着磁用下側補助コイル35の外周側には、非磁性金属製で筒状をなす下側第1規制部材36が装着され、着磁用下側補助コイル35の軸方向上側には、非磁性金属製で板状をなす下側第2規制部材37が下側集合部34b等に固定されている。下側第2規制部材37及び当接部34cの各上側面は、例えば面一をなしている。各規制部材36,37は、例えばSUS製である。そして、各規制部材36,37は、着磁時の通電の際の着磁用下側補助コイル35の膨らみや巻き崩れ等を低減するために設けられている。
【0028】
一方、装置本体部31に対して接離動作する装置上側部41は、上側補助着磁部30cのみ備えている。上側補助着磁部30cは、磁性金属製の上側補助ヨーク部42と、着磁用上側補助コイル43とを備えている。上側補助ヨーク部42は、下側補助ヨーク部34と上下方向に対称的な構成をなし、各着磁用対向凸部32aに対応して8個設けられる上側連結部42aと、各上側連結部42aを纏める1個の上側集合部42bとを備えている。各上側連結部42aは、一端が外径側主ヨーク部32の環状連結部32bの上面部に当接可能に構成されている。各上側連結部42aは、着磁用主コイル33等を避けつつ軸方向上方側に迂回する形状をなし、各上側連結部42aの他端は、上側集合部42bとそれぞれ一体的に連結している。この上側補助ヨーク部42については、上側集合部42bに各上側連結部42aがそれぞれ連結されて一体的な構成となっている。
【0029】
上側集合部42bは、着磁装置30に設置されるロータ20の上側に位置し、ロータ20の軸方向に沿った柱状をなしている。上側集合部42bは、自身の下面中央部にロータ20が当接する当接部42cを有し、当接部42cより内側には、ロータ20の中心部の軸嵌挿孔22bに上側から挿入される上側挿入突部42dが設けられている。
【0030】
また、上側集合部42bには、巻回軸が軸方向に向くように着磁用上側補助コイル43が巻装されている。着磁用上側補助コイル43の外周側には、非磁性金属製で筒状をなす上側第1規制部材44が装着され、着磁用上側補助コイル43の軸方向下側には、非磁性金属製で板状をなす上側第2規制部材45が上側集合部42b等に固定されている。上側第2規制部材45及び当接部42cの各下側面は、例えば面一をなしている。各規制部材44,45は、例えばSUS製である。そして、各規制部材44,45は、着磁時の通電の際の着磁用上側補助コイル43の膨らみや巻き崩れ等を低減するために設けられている。また、上側第2規制部材45は、着磁用上側補助コイル43の自重による巻き崩れ等も低減可能である。
【0031】
このような本実施形態の着磁装置30は、主着磁部30aの着磁動作として、周方向に隣接する着磁用対向凸部32a間にロータ20の内部を介して着磁磁束を流す着磁が行われる。加えて、主着磁部30aと各補助着磁部30b,30cとが協働して、主着磁部30aのみでは届き難いロータ20の内径側にも強制力を以て着磁磁束を流す着磁も行われる。つまり、本実施形態の着磁装置30では、永久磁石23の特に主着磁部30aより遠い径方向内側に位置している屈曲部23b及び屈曲部23bの近辺の着磁を効果的に行える構成となっている。
【0032】
[着磁装置を用いた永久磁石の着磁方法]
上記構成の着磁装置30を用い、先ず、未着磁の永久磁石23を有するロータ20が着磁装置30に設置される。また、着磁対象のロータ20は回転軸21が嵌挿前の状態であり、軸嵌挿孔22bは開放状態となっている。
【0033】
図6に示すように、装置上側部41を装置本体部31から上方に離間させた状態で、未着磁の永久磁石23を有するロータ20が装置本体部31の下側集合部34bの上面部に載置される。その際、下側挿入突部34dがロータ20の軸嵌挿孔22bに挿入される。ロータ20が装置本体部31に設置されると、図4及び図5に示すように装置上側部41が軸方向に下降されて、上側挿入突部42dがロータ20の軸嵌挿孔22bに挿入される。また、装置上側部41の下降は、上側補助ヨーク部42の上側連結部42aの一端が外径側主ヨーク部32の上面に当接するまで行われる。つまり、上側補助ヨーク部42と外径側主ヨーク部32とが磁気的に接続されて、上側補助ヨーク部42と外径側主ヨーク部32との間で着磁磁束が良好に流れる状態とする。
【0034】
次いで、ロータ20の未着磁の永久磁石23に対し、本実施形態では2工程での着磁が行われ、本実施形態では例えば先にS極着磁、次にN極着磁が行われる。この着磁順は一例であり、逆の着磁順であってもよい。
【0035】
S極着磁の場合、ロータ20の周方向に8個配置される未着磁の永久磁石23の内、一つ置きのS極着磁予定の永久磁石23に対してS極着磁が行われる。すなわち、S極着磁を行う周方向一つ置きの着磁用対向凸部32aに装着の着磁用主コイル33と補助コイル35,43とに対し、図5に示す着磁制御装置50からS極着磁用の通電が行われる。すると、図7に示すようにロータ20の内部において、外径側主ヨーク部32の各着磁用対向凸部32aから各補助ヨーク部34,42の各挿入突部34d,42dに向けた着磁磁束が流される。
【0036】
その際、互いに磁気的に接続される各着磁用対向凸部32aと各挿入突部34d,42dとがロータ20の径方向外側と内側とで対向する位置関係となるため、ロータ20の径方向外側から内側まで全体に亘ってロータ20の内部を進む着磁磁束が増加する。また、補助コイル35,43を設けて着磁用主コイル33と協働するように通電することで、着磁磁束の流れに対してより強制力を付与でき、好適とした磁束の流れをより効果的に維持することが可能となる。
【0037】
N極着磁の場合、ロータ20の残りの一つ置きのN極着磁予定の永久磁石23に対してN極着磁が行われる。すなわち、N極着磁を行う周方向一つ置きの着磁用対向凸部32aに装着の着磁用主コイル33と補助コイル35,43とに対し、着磁制御装置50からS極着磁とは逆向きのN極着磁用の通電が行われる。すると、図8に示すようにロータ20の内部において、各補助ヨーク部34,42の各挿入突部34d,42dから外径側主ヨーク部32の各着磁用対向凸部32aに向けたS極着磁時とは逆向きの着磁磁束が流される。
【0038】
N極着磁の場合も同様に、互いに磁気的に接続される各着磁用対向凸部32aと各挿入突部34d,42dとがロータ20の径方向外側と内側とで対向する位置関係となっていることから、ロータ20の径方向内側から外側まで全体に亘ってロータ20の内部を進む着磁磁束が増加する。また同様に、補助コイル35,43を設けて着磁用主コイル33とともに通電することで、N極の着磁磁束の流れに対してもより強制力を付与でき、好適とした磁束の流れをより効果的に維持することが可能となる。
【0039】
したがって、略V字の折返し形状をなす本実施形態の永久磁石23のように、折返し部分である屈曲部23bが径方向内側寄りに位置する折返し形状であっても、主着磁部30aより遠い屈曲部23b及び屈曲部23bの近辺の着磁が効果的に行うことができるようになっている。特に本実施形態の永久磁石23のように、磁極ピッチLpより埋込深さLmが大となるような深い折返し形状を採用する場合ではより顕著である。
【0040】
仮に、各補助着磁部30b,30cを用いず外径側の主着磁部30aのみで着磁する従来一般的に行われている着磁方法では、ロータ20の径方向内側を通るような着磁磁束の強制力も弱いため、永久磁石23の屈曲部23b及び屈曲部23bの近辺の磁力は弱くなってしまう。本実施形態の永久磁石23のような深い折返し形状を採用する場合では特に、屈曲部23b及びその近辺の磁力はより弱くなることが推察できる。
【0041】
これに対し、本実施形態の着磁方法を用いることで、図9に示すように、ロータ20の径方向内側に位置する永久磁石23の屈曲部23b、特に永久磁石23の側方視で軸方向に長い長方形状とした場合では上下方向中央部分23xでの磁力が最も弱くなりがちなところ、上下方向中央部分23xにおいても所望下限値を上回るような磁界強さでの着磁が可能である。屈曲部23bの上下方向中央部分23xより上側部分や下側部分、直線部23aは、より十分な磁界強さでの着磁が可能である。また、図10に示すように、永久磁石23に対する着磁による磁界強さの変化が緩やかになる変曲点を所望下限値とした場合、所望下限値を上回る磁界強さにて着磁される部位が90%を超える95%程度となり、永久磁石23の全体に亘り十分な磁力にて着磁することが可能である。
【0042】
本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態の着磁装置30を用いて外部からロータ20に埋設状態にある永久磁石23の着磁を行う際、ロータ20の径方向に対向する関係にある外径側主ヨーク部32の着磁用対向凸部32aと、回転軸21の嵌挿前の軸嵌挿孔22bに挿入される各補助ヨーク部34,42の挿入突部34d,42dとの間についてもロータ20の内部に着磁磁束を流す着磁が行われる。つまり、本実施形態のように径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石23では特に、屈曲部23bや屈曲部23b近辺が従来一般的に行われている外径側からの着磁において着磁磁束の届き難い位置にあるものの、本実施形態のような着磁手法を用いることで永久磁石23の屈曲部23bや屈曲部23b近辺についても十分な着磁磁束を供給することができる。これにより、永久磁石23の全体に亘って十分な磁力にて着磁することができる。
【0043】
(2)外径側主ヨーク部32の対向部位に巻装の着磁用主コイル33と、各補助ヨーク部34,42の挿入突部34d,42dの近傍の各集合部34b,42bに巻装の着磁用各補助コイル35,43とで協働して着磁磁束の供給が行われる。つまり、永久磁石23の屈曲部23bに近い位置の補助コイル35,43の励磁動作が加わることで、永久磁石23の屈曲部23bや屈曲部23b近辺にも十分な着磁磁束の供給を効果的に維持することができる。これにより、永久磁石23の全体に亘る十分な磁力での着磁をより確実に行うことができる。
【0044】
(3)着磁用各補助コイル35,43は、永久磁石23を含むロータ磁極部26の異なる極に対して共用で設けられ、永久磁石23の着磁する極毎に通電態様を切り替えて着磁磁束の向きが切り替えられる。これにより、着磁装置30において補助コイル35,43の数を極力少ない数で構成することができる。また、ロータ20の軸嵌挿孔22b内に挿入する各挿入突部34d,42dも共用となるため、軸嵌挿孔22b内で各挿入突部34d,42dを極力大きく構成でき、磁気抵抗を極力小さくすることができる。
【0045】
(4)上側補助ヨーク部42と下側補助ヨーク部34、及び着磁用上側補助コイル43と着磁用下側補助コイル35は、着磁対象のロータ20の軸方向一方側と他方側(本実施形態では上側と下側)とで一対対称的に設けられる。これにより、ロータ20の軸方向において対称的な着磁磁束を供給でき、永久磁石23の軸方向においてバランスの良い着磁を行うことができる。
【0046】
(5)本実施形態のように磁極ピッチLpより埋込深さLmが大の深い折返し形状をなす永久磁石23において、着磁による磁界強さの変化が緩やかになる変曲点を所望下限値とした場合、その所望下限値を上回る磁界強さにて着磁される部位が90%を超える着磁態様とすることができる。つまり、ロータ20の外部からの着磁態様であっても、屈曲部23bを含めて高磁力にて着磁された永久磁石23を有するロータ20として構成することが可能である。
【0047】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・各補助ヨーク部34,42の挿入突部34d,42dにおいて、図6にて破線及び括弧付きの符号にて示すように、その先端部にテーパ部34x,42xを設けて各挿入突部34d,42dを先細形状としてもよい。このようにすれば、着磁対象のロータ20の軸嵌挿孔22b内への各挿入突部34d,42dの挿入が行い易くなる。また、ロータ20の軸嵌挿孔22bにおいて、開口を拡開形状とするテーパ部22xを設けても、軸嵌挿孔22b内への各挿入突部34d,42dの挿入が行い易くなる。
【0048】
・各補助ヨーク部34,42のそれぞれに同様の挿入突部34d,42dを設けたが、各挿入突部34d,42dの突出長さを異ならせてもよい。例えば図12に示すように、下側挿入突部34dの突出長さL1を上側挿入突部42dの突出長さL2よりも長く構成すれば、着磁時に下側挿入突部34dに挿入して支持するロータ20の設置の安定性向上等の効果が期待できる。換言すると、上側挿入突部42dの突出長さL2が下側挿入突部34dの突出長さL1よりも短いと、可動部である装置上側部41が据置部である装置本体部31に対して可動する態様の場合等、上側挿入突部42dが周囲部材に接触する懸念が軽減でき、装置上側部41の可動がし易くなる。また、上側挿入突部42dの突出長さL2がゼロ、すなわち下側挿入突部34dのみとし、ロータ20の軸方向一端から他端まで挿通させる態様としてもよい。また逆に、上側挿入突部42dのみとしてもよい。
【0049】
・各補助ヨーク部34,42に挿入突部34d,42dを設けて、回転軸21の嵌挿前のロータ20の軸嵌挿孔22b内に各挿入突部34d,42dを挿入して着磁を行ったが、例えば図11に示すように、ロータ20の軸嵌挿孔22bに嵌挿された回転軸21そのものを磁路の一部とし、ロータ20に回転軸21を装着した状態で永久磁石23の着磁を行ってもよい。この変更例では、下側補助ヨーク部34の下側集合部34bに下側連結凹部34eが、上側補助ヨーク部42の上側集合部42bに上側連結凹部42eがそれぞれ設けられる。そして、着磁対象のロータ20に先に装着状態とした回転軸21の下端部と上端部とを各連結凹部34e,42eに嵌挿させて磁気的に連結し、外径側主ヨーク部32の着磁用対向凸部32aと回転軸21とをロータ20の径方向に対向させてこの両者間で着磁磁束が流されて、永久磁石23の着磁が行われる態様である。なお、この変更例では、磁性金属製の回転軸21を用いる場合に適用可能である。
【0050】
・着磁用各補助コイル35,43の周囲に設置の非磁性金属製の各規制部材36,37,44,45にて着磁用各補助コイル35,43の変形や移動を規制したが、規制態様はこれに限らない。例えば図12に示すように、着磁用各補助コイル35,43の周囲をエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂にて覆い固めてコイル保持部38,46を構成し、着磁用各補助コイル35,43の変形や移動を規制してもよい。このようにしても、着磁用各補助コイル35,43の通電時の変形や巻き崩れの低減等が図れる。また、コイル保持部38,46の樹脂が着磁用各補助コイル35,43と密着する面積が増えることで、着磁用各補助コイル35,43からコイル保持部38,46への吸熱が効率的となることが期待できる。
【0051】
なお、図12では、コイル保持部38,46の外側に更に各規制部材36,37,44,45が装着され、着磁用各補助コイル35,43の変形や移動の規制をより確実としている。またこの場合、コイル保持部38,46が着磁用各補助コイル35,43を覆うため、各規制部材36,37,44,45の装着時に、金属製よりなる各規制部材36,37,44,45が着磁用各補助コイル35,43に接触して損傷させる懸念を軽減することができる。コイル保持部38,46を設ける場合、各規制部材36,37,44,45の装着についてはいずれかを省略してもよく、また各規制部材36,37,44,45の全部を省略してもよい。
【0052】
また、着磁用各補助コイル35,43のみならず、着磁用主コイル33についてもその周囲をエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂にて覆い固めてコイル保持部39を構成し、着磁用主コイル33の変形や移動を規制してもよい。このように着磁用主コイル33についても、通電時の変形や巻き崩れの低減等が図れる。
【0053】
・上側補助ヨーク部42と下側補助ヨーク部34、及び着磁用上側補助コイル43と着磁用下側補助コイル35を、着磁対象のロータ20の軸方向一方側と他方側とで一対対称的としたが、軸方向一方側のみに設けてもよい。この場合、上記したように、挿入突部34d,42dをロータ20の軸方向一端から他端まで挿通させる態様とすることが好ましい。
【0054】
・外径側主ヨーク部32の対向凸部32aに着磁用主コイル33を設置、着磁用各補助ヨーク部34,42の各集合部34b,42bに着磁用各補助コイル35,43を設置したが、着磁用コイルの設置態様はこれに限らない。例えば、各補助コイル35,43について、各補助ヨーク部34,42の各連結部34a,42aのそれぞれに補助コイルを巻装して設けてもよい。この場合、上記実施形態のように各集合部34b,42b及び各挿入突部34d,42dを共用としてもよいが、各連結部34a,42aから各挿入突部34d,42dにかけて磁路を独立させてもよい。主コイル33の設置位置も対向凸部32a以外の位置に適宜変更してもよい。また、主コイル33と各補助コイル35,43とで分けずに着磁用コイルの共用化を図ってもよい。
【0055】
図4等にて着磁対象のロータ20は1個であったが、複数個のロータ20を同時に着磁してもよい。例えば図13に示すように、4個のロータ20を軸方向に積み重ねて設置し、4個のロータ20を同時に着磁することもできる。このように複数個のロータ20の着磁を同時に行えば、ロータ20の生産性向上が図れる。
【0056】
また、着磁装置30の装置本体部31と装置上側部41との間のロータ設置空間30xに対し、着磁対象のロータ20の軸方向長さや数によって例えば図13のようにロータ20以外で軸方向に隙間が生じる場合、その隙間を埋めるスペーサ51が設置される。図13では、2個ずつのロータ20の間にスペーサ51が一緒に設置される。スペーサ51は、ロータコア22と同じ磁性金属材料にて作製することが着磁磁束の流れへの影響が小さい点でより好ましいが、他の磁性金属材料を用いてもよい。
【0057】
また、上記した着磁装置30は、1個のロータ20を着磁した場合の永久磁石23の磁力の分布が図9に示されるが、永久磁石23の全体に亘り良好な磁力が得られるものの、その中でも僅かながら上下方向中央部分23xが他の部位よりも磁力の弱い着磁となる。つまり、着磁装置30の軸方向中央位置が僅かながら磁力の弱い着磁となり得るため、その位置に敢えてスペーサ51を配置することで、複数個のロータ20に対し互いに差の小さい効率的な着磁を行うことが可能である。
【0058】
なお、スペーサ51の設置位置は、上記に限らず適宜変更してもよい。例えば、ロータ20の一番下に配置する態様とすれば、都度のロータ20の着磁時に着磁対象のロータ20のみ着磁装置30から着脱すれば済むため、スペーサ51を着磁装置30に常時設置しておくこともできる。また、上記したスペーサ51は、ロータ設置空間30xの軸方向の隙間を埋めるために用いるものであったが、ロータ20の外径の大きさや軸嵌挿孔22bの内径の大きさによって、径方向の隙間を埋める磁性金属製のスペーサ(図示略)を用いてもよい。つまり、ロータ設置空間30xに対して着磁対象のロータ20の大きさや数によって軸方向や径方向の隙間を埋めるための磁性金属製のスペーサを用いてもよい。また、このようなスペーサを用いずにロータ設置空間30xに隙間が生じた状態でロータ20の着磁を行ってもよい。
【0059】
・着磁装置30について、装置本体部31に対しその上側に装置上側部41を配置する構成としたが、着磁装置30の配置構成はこれに限らない。例えば、装置本体部31と装置上側部41とを上下方向(鉛直方向)以外の傾斜方向や水平方向に並べて配置する構成としてもよい。
【0060】
図2及び図9等にて示した永久磁石23の形状は一例であり、適宜変更してもよい。
図1等で示した回転電機Mの構成は一例であり、適宜変更してもよい。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
【0061】
(イ)永久磁石の着磁時に第2ヨーク部の挿入部位である挿入突部が挿入されるロータの軸嵌挿孔は、開口を拡開形状とするテーパ部(22x)を含んで構成されている、ロータの製造方法。
【符号の説明】
【0062】
20 ロータ、21 回転軸、22 ロータコア、22a 外周面、22b 軸嵌挿孔、23 永久磁石、24 磁石収容孔、26 ロータ磁極部、30 着磁装置、30x ロータ設置空間、31 装置本体部(据置部)、32 外径側主ヨーク部(第1ヨーク部)、32a 着磁用対向凸部(対向部位)、33 着磁用主コイル(着磁用コイル、着磁用第1コイル)、34 下側補助ヨーク部(第2ヨーク部)、34d 下側挿入突部(挿入部位、挿入突部)、34e 下側連結凹部(連結部位)、34x テーパ部、35 着磁用下側補助コイル(着磁用コイル、着磁用第2コイル)、36 下側第1規制部材(規制部材)、37 下側第2規制部材(規制部材)、38 コイル保持部(規制部材)、39 コイル保持部(規制部材)、41 装置上側部(可動部)、42 上側補助ヨーク部(第2ヨーク部)、42d 上側挿入突部(挿入部位、挿入突部)、42e 上側連結凹部(連結部位)、42x テーパ部、43 着磁用上側補助コイル(着磁用コイル、着磁用第2コイル)、44 上側第1規制部材(規制部材)、45 上側第2規制部材(規制部材)、46 コイル保持部(規制部材)、51 スペーサ、Lp 磁極ピッチ、Ls 周方向中心線、Lm 埋込深さ、L1 突出長さ、L2 突出長さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13