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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】電装部品の保護構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20241001BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241001BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241001BHJP
【FI】
B60R16/04 J
B60R16/02 610J
B60K1/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021030108
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131255
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 有吾
(72)【発明者】
【氏名】柘植 惇史
(72)【発明者】
【氏名】安藤 昇一郎
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144982(JP,A)
【文献】特開2002-095142(JP,A)
【文献】特開2001-294048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60R 16/02
16/04
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に複数の端子部を有し、車両のフロアパネル上に設置された電装部品の保護構造であって、
前記フロアパネルに設けられ、前記電装部品を覆うカバー部材を有し、
前記カバー部材は、前記電装部品の前記側面に対向する側壁を有し、
前記側壁は、内部に空間部が形成される膨出部を有し、
前記膨出部は、前記側壁の下端部よりも上方に設けられ、かつ、前記側壁の壁面に対して上方に向かうに従って前記電装部品の前記側面から離れる方向に膨出しており、
前記端子部は、前記膨出部と同じ高さ位置に位置することを特徴とする電装部品の保護構造。
【請求項2】
前記フロアパネルに開口部が形成されており、
前記カバー部材は、天井壁と、前記天井壁から下方に延び、前記側壁を含んだ複数の側壁とを有し、前記複数の側壁の下端部が前記フロアパネルの近傍まで延びており、
前記開口部は、前記カバー部材によって覆われており、
前記端子部にワイヤハーネスが接続されており、
前記ワイヤハーネスは、前記フロアパネルの下方から前記開口部を通して前記カバー部材の内部において前記フロアパネルの上方に延びていることを特徴とする請求項1に記載の電装部品の保護構造。
【請求項3】
前記電装部品から最も離れる前記膨出部の膨出方向の先端部は、前記ワイヤハーネスが接続される前記端子部の位置と同じ高さ位置に位置することを特徴とする請求項2に記載の電装部品の保護構造。
【請求項4】
前記電装部品は、前記端子部よりも上方に基板部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電装部品の保護構造。
【請求項5】
前記端子部は、前記電装部品の高さ方向の中央部よりも上方に設置されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電装部品の保護構造。
【請求項6】
前記フロアパネルにブラケットが設けられており、
前記ブラケットは、前記フロアパネルの上面よりも高い位置に被固定部を有し、
前記電装部品は、前記被固定部に固定される固定部を有し、
前記カバー部材は、前記固定部を覆う覆い部を有し、
前記端子部は、前記固定部よりも上方に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電装部品の保護構造。
【請求項7】
前記電装部品は、前記側面を含んだ複数の側面を有し、前記複数の側面の少なくとも1つ以上に切り欠き部が形成されており、
前記切り欠き部は、前記端子部よりも下方に位置し、
前記カバー部材の内部に、前記切り欠き部によって囲まれる空間部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電装部品の保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電装部品の保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下部に開口を有するケース本体に電池パックを収容し、電池パックを開口よりも上方の領域に設置することにより、電池パックの下方に空気溜まり領域を形成して、電池パックが水没することを防止した車両用蓄電装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-176669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の床下部(フロアパネル)と前席シートの間に電池パックを設置する場合、上下方向の空間に限りがあるため、電池パックの大きさによっては本体ケースの内部において電池パックを上方の領域に設置できないことが考えられる。
【0005】
この場合、車両の冠水時に電池パックの端子部が水没してしまい、電池パックを保護できないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、車両が冠水した場合に、フロアパネルに設置される電装部品の端子部が水没することを抑制でき、電装部品を保護できる電装部品の保護構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、側面に複数の端子部を有し、車両のフロアパネル上に設置された電装部品の保護構造であって、前記フロアパネルに設けられ、前記電装部品を覆うカバー部材を有し、前記カバー部材は、前記電装部品の前記側面に対向する側壁を有し、前記側壁は、内部に空間部が形成される膨出部を有し、前記膨出部は、前記側壁の下端部よりも上方に設けられ、かつ、前記側壁の壁面に対して上方に向かうに従って前記電装部品の前記側面から離れる方向に膨出しており、前記端子部は、前記膨出部と同じ高さ位置に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、車両が冠水した場合に、フロアパネルに設置される電装部品の端子部が水没することを抑制でき、電装部品を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係る電装部品の保護構造を備えた車両のフロアパネルの平面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る電装部品の保護構造を備えた車両のクロスメンバを後方から見た図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る電装部品の保護構造を備えた車両のバッテリパックとその周辺のフロアパネルの平面図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る電装部品の保護構造を備えた車両のバッテリパックを左方から見た図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係る電装部品の保護構造を備えた車両のバッテリとその周辺のフロアパネルの平面図である。
図6図6は、本発明の一実施例に係る電装部品の保護構造を備えた車両のバッテリを左方から見た図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係る電装部品の保護構造を備えた車両のバッテリパックを下方から見た図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係る電装部品の保護構造を備えた車両のバッテリを前方から見た図である。
図9図9は、図3のIX-IX矢視断面図である。
図10図10は、本発明の一実施例に係る電装部品の保護構造を備えた車両のバッテリパックを前方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る電装部品の保護構造は、側面に複数の端子部を有し、車両のフロアパネル上に設置された電装部品の保護構造であって、前記フロアパネルに設けられ、前記電装部品を覆うカバー部材を有し、前記カバー部材は、前記電装部品の前記側面に対向する側壁を有し、前記側壁は、膨出部を有し、前記膨出部は、前記側壁の下端部よりも上方に設けられ、前記側壁の壁面に対して前記電装部品の前記側面から離れる方向に膨出しており、前記端子部は、前記膨出部と同じ高さ位置に位置する。
【0011】
これにより、本発明の一実施の形態に係る電装部品の保護構造は、車両が冠水した場合に、フロアパネルに設置される電装部品の端子部が水没することを抑制でき、電装部品を保護できる。
【実施例
【0012】
以下、本発明の一実施例に係る電装部品の保護構造について、図面を用いて説明する。
【0013】
図1から図10は、本発明の一実施例に係る電装部品の保護構造を示す図である。図1から図10において、上下前後左右方向は、バッテリパックが搭載された車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車両の幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0014】
まず、構成を説明する。
図1において、車両1は、フロアパネル2を有する。フロアパネル2の左端部には左側サイドシル3Lが設けられており、左側サイドシル3Lは、フロアパネル2に沿って前後方向に延びている。フロアパネル2の右端部には右側サイドシル3Rが設けられており、右側サイドシル3Rは、フロアパネル2に沿って前後方向に延びている。
【0015】
フロアパネル2の車幅方向の中央部にはフロアトンネル4が設けられており、フロアトンネル4は、フロアパネル2から上方に膨出している。
【0016】
フロアトンネル4と左側サイドシル3Lの間には前側クロスメンバ5と後側クロスメンバ6が取付けられており、前側クロスメンバ5と後側クロスメンバ6は、前後方向に離隔して車幅方向に延びている。
【0017】
フロアトンネル4と右側サイドシル3Rの間には前側クロスメンバ7と後側クロスメンバ8が取付けられており、前側クロスメンバ7と後側クロスメンバ8は、前後方向に離隔して車幅方向に延びている。
【0018】
図2に示すように、前側クロスメンバ5にはワイヤハーネス9の一部が取付けられており、ワイヤハーネス9は、車幅方向に延びている。具体的には、図1に示すように、ワイヤハーネス9は、右側サイドシル3Rに沿って前後方向に延びており、右側サイドシル3Rの延びる方向の中央部から分岐されて前側クロスメンバ7に沿ってフロアトンネル4に延びている。
【0019】
ワイヤハーネス9は、フロアトンネル4から前側クロスメンバ5に沿って車幅方向に延びた後、左側サイドシル3Lに沿って前後方向に延びている。本実施例の前側クロスメンバ5は、クロスメンバを構成し、ワイヤハーネス9は、第1のワイヤハーネスを構成する。
【0020】
図2に示すように、前側クロスメンバ5は、車幅方向の中央部に形成された孔部5aを有する。孔部5aは、前側クロスメンバ5を挟んで前後方向に設置される車載部品を通すものである。例えば、孔部5aには前側クロスメンバ5の前方に設置される空調装置のダクトが挿通されており、孔部5aに挿通されるダクトは前側クロスメンバ5の後方に延びている。
【0021】
前側クロスメンバ5は、バンド状部材10Aを有する。バンド状部材10Aは、孔部5aよりも上方に設けられており、ワイヤハーネス9の車幅方向の中央部を前側クロスメンバ5に固定している。
【0022】
前側クロスメンバ5は、バンド状部材10B、10Cを有する。バンド状部材10B、10Cは、バンド状部材10Aよりも下方で、かつバンド状部材10Aに対して前側クロスメンバ5の車幅方向の左右端部に位置しており、ワイヤハーネス9の左右端部を前側クロスメンバ5に固定している。
【0023】
すなわち、バンド状部材10Bは、バンド状部材10Aに対して車幅方向の左端部側に位置し、バンド状部材10Cは、バンド状部材10Aに対して車幅方向の右端部側に位置している。
【0024】
ここで、ワイヤハーネス9の車幅方向の中央部および車幅方向の左右端部とは、前側クロスメンバ5の車幅方向の長さを基準とし、前側クロスメンバ5の車幅方向に配索されるワイヤハーネス9の部位における車幅方向の中央部および車幅方向の左右端部を意味する。
【0025】
本実施例のバンド状部材10Aは、第1の取付部を構成し、バンド状部材10B、10Cは、第2の取付部を構成する。
【0026】
図1図3図4に示すように、フロアパネル2の上面2aには電装装置としてのバッテリパック11が設置されており、バッテリパック11は、図示しない助手席とフロアパネル2の間の空間に設置されている。なお、バッテリパック11は、図示しない運転席とフロアパネル2の間の空間に設置されてもよい。
【0027】
バッテリパック11は、助手席とフロアパネル2の間に設置されているので、エンジンルームに比べて低温環境にある車室にバッテリパック11を設置でき、後述するバッテリ12の性能を引き出し易い。
【0028】
これに加えて、荷室のスペースがバッテリパック11によって阻害されることを防止してバッテリパック11の設置性能を向上できる上に、バッテリパック11をエンジンルームに設置する必要がないので、エンジンルームの小型化を図ることができる。
【0029】
図1に示すように、車両1の平面視でバッテリパック11は、左側サイドシル3L、フロアトンネル4、前側クロスメンバ5および後側クロスメンバ6の間に位置している。
【0030】
図5図6に示すように、バッテリパック11は、電装部品としてバッテリ12を有する。バッテリ12は、図示しない複数のバッテリモジュールと、複数のバッテリモジュールを収容し、バッテリモジュールを保護するバッテリホルダと、バッテリホルダの上面に設けられた基板部23とを有する。
【0031】
図5図7に示すように、バッテリ12には複数の固定片12A、12B、12C、12Dが設けられており、固定片12A、12B、12C、12Dは、バッテリ12の側面から車幅方向の外方(左右外方)に突出している。
【0032】
図6に示すように、フロアパネル2にはブラケット14が設けられており、ブラケット14には固定片14A、14Bが設けられている(図5参照)。
【0033】
固定片14A、14Bは、ブラケット14の右端部から上方に突出しており、フロアパネル2の上面2aよりも高い位置に位置している。
【0034】
ブラケット14には固定片14C、14D(図5参照)が設けられている。固定片14C、14Dは、ブラケット14の左端部から上方に突出しており、フロアパネル2の上面2aよりも高い位置に位置している。固定片14A、14Bと固定片14C、14Dは、同一の高さ位置に位置している。
【0035】
固定片14A、14Bには図示しないボルトによってバッテリ12の固定片12A、12Bが固定されている。固定片14C、14Dにはボルト51Aによってバッテリ12の固定片12C、12Dが固定されている。本実施例の固定片12A、12B、12C、12Dは、固定部を構成する。
【0036】
これにより、バッテリ12は、ブラケット14によってフロアパネル2から上方に離隔した状態で、ブラケット14を介してフロアパネル2に固定されている。本実施例の固定片14A、14B、14C、14Dは、被固定部を構成する。
【0037】
図5図8に仮想線で示すように、バッテリ12の前面12aの上部には端子部13A、13Bが設けられており、車両1の平面視で端子部13A、13Bは、車幅方向に並んで設置されている。車幅方向は、端子部13A、13Bの配列方向Lである。以下、端子部13A、13Bの配列方向Lを端子部の配列方向Lという。
【0038】
端子部13A、13Bは、固定片14A、14B、14C、14Dよりも上方で、かつ、バッテリ12の高さ方向の中央部Cよりも上方に設置されている(図6参照)。なお、図5ではワイヤハーネス9を図示省略している。
【0039】
図9に示すように、端子部13A、13Bは、バッテリ12の前面12aの前方に位置して上下方向に延びている。なお、端子部13A、13Bは、同一形状を有し、車幅方向に重なっている。本実施例の端子部13Aは、第1の端子部を構成し、端子部13Bは、第2の端子部を構成する。
【0040】
図6に示すように、基板部23は、端子部13A、13Bよりも上方に設けられている。基板部23は、例えば、バッテリモジュールの残容量の検出や放充電制御等を行う制御基板である。
【0041】
図5に示すように、フロアパネル2には開口部2bが形成されている。開口部2bは、端子部13A、13Bに対してフロアトンネル4側に位置し、車両1の平面視で端子部の配列方向Lに並んでいる。
【0042】
端子部13Bは、端子部13Aよりも端子部の配列方向Lで開口部2bから離れた位置に設置されている。
【0043】
図8に示すように、バッテリパック11にはワイヤハーネス21、22が接続されている。ワイヤハーネス21、22は、フロアパネル2の下方から開口部2bを通過してフロアパネル2よりも上方で、かつ、端子部の配列方向Lに延びており、一端部に設けられたコネクタ21C、22Cが端子部13Aと端子部13Bにそれぞれ接続されている。
【0044】
ワイヤハーネス21、22は、フロアパネル2の下方においてフロアトンネル4を通って配索され、他端部が図示しない補機などの他の電装部品に接続されている。これにより、バッテリ12の電力がワイヤハーネス21、22によって補機などの他の電装部品に供給される。本実施例のワイヤハーネス21、22は、第2のワイヤハーネスを構成する。
【0045】
図4図9に示すように、バッテリパック11は、カバー部材15を有する。カバー部材15は、天井壁15Aと、天井壁15Aから下方に延びる前壁15B、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eを有する。
【0046】
天井壁15Aは、開口部2bの上方とバッテリ12の上面とワイヤハーネス21、22を上方から覆っている。前壁15Bは、バッテリ12の前面12aとワイヤハーネス21、22を覆っており、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eは、バッテリ12の後面、左側面および右側面を覆っている。
【0047】
すなわち、開口部2bは、前壁15B、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eの内方に位置しており、カバー部材15によって覆われている。本実施例の前壁15B、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eは、側壁を構成する。
【0048】
カバー部材15の前壁15Bは、前後方向でワイヤハーネス9に対向しており、ワイヤハーネス9は、車幅方向で前壁15Bに沿って配索されている(図3参照)。
【0049】
前壁15B、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eの下端部15uは、フロアパネル2に近接しており、バッテリ12の下面12uと同じ高さ位置に位置している(図9参照)。前壁15B、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eの上下方向の長さ(高さ)は同一である。
【0050】
本実施例のバッテリ12の前面12aは、電装部品の側面を構成し、カバー部材15の前壁15Bは、カバー部材の側壁を構成する。
【0051】
図3図7に示すように、カバー部材15には覆い部15F、15Gが設けられている。覆い部15Fは、カバー部材15の右側壁15Eから外方(右方)に突出しており、バッテリ12の固定片12A、12Bを上方および左方から覆っている(図7図10参照)。
【0052】
覆い部15Gは、カバー部材15の左側壁15Eから外方(左方)に突出しており、バッテリ12の固定片12C、12Dを上方および左方から覆っている(図4図7参照)。
【0053】
図9に示すように、前後方向でバッテリ12の前面12aに対向するカバー部材15の前壁15Bには膨出部16が設けられている(図3図4図7参照)。
【0054】
膨出部16は、前壁15Bの下端部15uよりも上方に位置しており、前壁15Bの壁面15aに対してバッテリ12の前面12aから離れる方向に膨出している。
【0055】
図4図9に示すように、膨出部16は、傾斜部16tを有する。傾斜部16tは、前壁15Bの壁面15aから上方に向かうに従ってバッテリ12の前面12aから離れるように傾斜している。膨出部16において、傾斜部16tよりも上方に位置する膨出方向の先端部16aがバッテリ12の前面12aから前側に最も離れている。
【0056】
端子部13A、13Bは、膨出部16と同じ高さ位置に位置しており、前後方向で膨出部16に対向している。
【0057】
本実施例の端子部13A、13Bは、バッテリ12から前方に最も離れる膨出部16の膨出方向の先端部16aの位置と同じ高さ位置に位置している。
【0058】
図9に示すように、膨出部16は、カバー部材15の前壁15Bの壁面15aからワイヤハーネス9側に膨出しており、ワイヤハーネス9の上方を覆っている。
【0059】
膨出部16は、バンド状部材10Aよりも上方に位置している。図1に示すように、膨出部16は、車両1の平面視でバンド状部材10Aと重なっている。換言すれば、膨出部16は、上下方向でバンド状部材10Aと並んで設けられている。
【0060】
これにより、車幅方向から車両1に衝撃が加わり、ワイヤハーネス9がフロアパネル2に向かって上方に変形した場合に(図2のワイヤハーネス9L参照)、ワイヤハーネス9を膨出部16に衝突させることができ、ワイヤハーネス9がフロアパネル2の上方に変形することを抑制できる。
【0061】
このため、ワイヤハーネス9がフロアパネル2の上方の助手席に衝突することを抑制し、助手席に衝撃が加わることを抑制できる。
【0062】
端子部13Bは、端子部13Aよりも端子部の配列方向Lで開口部2bから離れた位置に設置されているので、カバー部材15内におけるワイヤハーネス22の配索長さは、ワイヤハーネス21の配索長さよりも長くなる。
【0063】
図9に示すように、ワイヤハーネス22は、カバー部材15の内部において膨出部16によって形成される空間部17に設置されており、傾斜部16tに沿って端子部の配列方向Lに延びている。
【0064】
カバー部材15の内部において、ワイヤハーネス21は、膨出部16によって形成される空間部17に設置されるワイヤハーネス22よりもバッテリ12の前面12a側に設置されている。
【0065】
図8に示すように、バッテリ12は、上下方向(縦方向)の長さよりも車幅方向(横方向)の長さが長く形成されているので、カバー部材15の内部において、ワイヤハーネス21、22は、上下方向の配索長さよりも端子部の配列方向Lの配索長さが長くなるように配索されている。
【0066】
具体的には、ワイヤハーネス21、22は、それぞれ下側ワイヤハーネス部21A、22Aと上側ワイヤハーネス部21B、22Bとを有する。
【0067】
下側ワイヤハーネス部21A、22Aは、フロアパネル2の開口部2bからフロアパネル2よりも上方に延びている。
【0068】
上側ワイヤハーネス部21B、22Bは、下側ワイヤハーネス部21A、22Aの上端21a、22aから端子部の配列方向Lに延び、端子部13A、13Bに接続されている。
【0069】
本実施例のワイヤハーネス21、22は、カバー部材15の内部において上側ワイヤハーネス部21B、22Bが下側ワイヤハーネス部21A、22Aよりも長く配索されている。
【0070】
図10に示すように、膨出部16の端子部の配列方向Lの長さL1(図3参照)は、カバー部材15の内部におけるワイヤハーネス21、22の端子部の配列方向Lの配索長さL2よりも長く形成されている。
【0071】
膨出部16の上下方向の長さT1は、上側ワイヤハーネス部21B、22Bの上下方向の長さ(高さ)T2よりも長く形成されている。上側ワイヤハーネス部21Bまたは上側ワイヤハーネス部22Bの上下方向の長さT2とは、カバー部材15の内部において、最も高い位置に位置する上側ワイヤハーネス部21B、22Bの上端から最も低い位置に位置する上側ワイヤハーネス部21Bまたは上側ワイヤハーネス部22Bの下端部までの長さ(高さ)である。
【0072】
図9に示すように、バッテリ12の側面視において、すなわち、バッテリ12を車幅方向から見た場合に、膨出部16は、上側ワイヤハーネス部22Bと重なる位置に設置されている。すなわち、膨出部16と上側ワイヤハーネス部22Bは、前後方向に重なっている。
【0073】
なお、上側ワイヤハーネス部21B、22Bよりも下側ワイヤハーネス部21A、22Aが長くなるように配索してもよい。この場合には、バッテリ12の側面視において、膨出部16は、下側ワイヤハーネス部22Aと重なる位置に設置されてもよい。
【0074】
図9に示すように、バッテリ12の前面12aには切り欠き部12bが形成されており、切り欠き部12bは、端子部13A、13Bよりも下方に位置している。
【0075】
カバー部材15の内部には切り欠き部12bによって囲まれる空間部18が形成されている。
【0076】
図7図9に示すように、切り欠き部12bには放熱フィン12cが形成されており、放熱フィン12cは空間部18に設置されている。
【0077】
次に、本実施例のバッテリ12の保護構造の効果を説明する。
本実施例のバッテリ12の保護構造は、フロアパネル2に設けられ、バッテリ12を覆うカバー部材15を有し、カバー部材15は、バッテリ12の前面12aに対向する前壁15Bを有する。
【0078】
前壁15Bは、膨出部16を有し、膨出部16は、前壁15Bの下端部15uよりも上方に設けられ、前壁15Bの壁面15aに対してバッテリ12の前面12aから離れる方向に膨出している。これに加えて、端子部13A、13Bは、膨出部16と同じ高さ位置に位置している。
【0079】
これにより、バッテリ12をカバー部材15の内部で上方の領域に設置できない場合に、膨出部16によって形成される空間部17に空気溜まりを形成できる。
【0080】
このため、バッテリ12が水没した場合に、空気溜まりによって水が端子部13A、13Bに到達することを困難にして、端子部13A、13Bが水没することを抑制でき、バッテリ12を保護できる。
【0081】
この結果、端子部13A、13Bが水に濡れてショートすることを防止でき、バッテリ12の中でも水没に対して保護が必要な端子部13A、13Bを保護できる。
【0082】
また、本実施例のバッテリ12の保護構造によれば、カバー部材15は、天井壁15Aと、天井壁15Aから下方に延びる前壁15B、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eとを有する。
【0083】
前壁15B、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eの下端部15uは、フロアパネル2の近傍まで延びており、開口部2bがカバー部材15によって覆われている。
【0084】
これに加えて、端子部13A、13Bにワイヤハーネス21、22が接続されており、ワイヤハーネス21、22は、フロアパネル2の下方から開口部2bを通してカバー部材15の内部においてフロアパネル2の上方に延びている。
【0085】
ここで、例えば、カバー部材15の左側壁15Dや右側壁15Eなどに図示しない開口部を設けて、この開口部を通してカバー部材15の内部にワイヤハーネス21、22を配索して端子部13A、13Bにワイヤハーネス21、22を接続すると、バッテリ12の水没時に左側壁15Dや右側壁15Eの開口部からカバー部材15の内部に水が侵入するおそれがある。
【0086】
本実施例のバッテリ12の保護構造によれば、ワイヤハーネス21、22をフロアパネル2に設けられた開口部2bからカバー部材15の内部に配索することにより、カバー部材15の内部に水が侵入する経路が増大することを防止できる上に、端子部13A、13Bから開口部2bを下方に離すことができる。
【0087】
これに加えて、前壁15B、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eによって囲まれる空間部によってカバー部材15の内部に形成される空気溜まりの容量を増大できる。
【0088】
このため、端子部13A、13Bに水が到達することをより一層困難にして、端子部13A、13Bが水没することをより効果的に抑制でき、バッテリ12をより効果的に保護することができる。
【0089】
また、本実施例のバッテリ12の保護構造によれば、バッテリ12から最も離れる膨出部16の膨出方向の先端部16aは、ワイヤハーネス21、22が接続される端子部13A、13Bの位置と同じ高さ位置に位置している。
【0090】
これにより、ワイヤハーネス21、22と端子部13A、13Bとの接続部が設置される空間部17の領域を大きくして、接続部が設置される空気溜まりの領域を大きくできる。
【0091】
このため、膨出部16によって形成される大きい領域の空間部17によってワイヤハーネス21、22と端子部13A、13Bとの接続部に水が到達することを困難にして、接続部が水没することを抑制でき、バッテリ12をより効果的に保護することができる。
【0092】
また、本実施例のバッテリ12の保護構造によれば、バッテリ12は、端子部13A、13Bよりも上方に基板部23を有し、膨出部16は、上方に向かうに従ってバッテリ12から離れるように膨出している。
【0093】
これにより、万が一、端子部13A、13Bが水没した場合に、基板部23に水が到達することを困難にして基板部23を保護できる。このため、バッテリ12に致命的な故障が生じることを防止して、バッテリ12を保護できる。
【0094】
また、膨出部16は、上方に向かうに従ってバッテリ12から離れるように膨出しているので、膨出部16によって形成される空間部17を大きくでき、膨出部16に形成される空気溜まりの領域をより一層大きくして、基板部23に水が到達することを困難にして基板部23を保護できる。このため、基板部23に水が到達することをより一層困難にして基板部23をより効果的に保護できる。
また、本実施例のバッテリ12の保護構造によれば、端子部13A、13Bは、バッテリ12の高さ方向の中央部Cよりも上方に設置されている。
【0095】
これにより、端子部13A、13Bをフロアパネル2よりも上方に離間して、端子部13A、13Bに水が到達することを困難にでき、端子部13A、13Bが水没することをより効果的に抑制できる。
【0096】
また、本実施例のバッテリ12の保護構造によれば、フロアパネル2にブラケット14が設けられており、ブラケット14は、フロアパネル2の上面2aよりも高い位置に固定片14A、14B、14C、14Dを有する。
【0097】
バッテリ12は、固定片14A、14B、14C、14Dに固定される固定片12A、12B、12C、12Dを有する。
これに加えて、カバー部材15は、固定片12A、12B、12C、12Dを覆う覆い部15F、15Gを有し、端子部13A、13Bは、固定片14A、14B、14C、14Dよりも上方に設けられている。
【0098】
これにより、端子部13A、13Bをフロアパネル2よりも上方に離間して、端子部13A、13Bに水が到達することをより一層困難にして、端子部13A、13Bが水没することをより効果的に抑制できる。
【0099】
また、カバー部材15に、端子部13A、13Bよりも下方に位置する固定片12Aから固定片12Dを覆う覆い部15F、15Gを設けることにより、端子部13A、13Bよりも下方に覆い部15F、15Gによる空気溜まりを形成できる。
【0100】
これにより、空気溜まりによって水が端子部13A、13Bに到達することをより一層困難にして、端子部13A、13Bが水没することをより効果的に抑制でき、バッテリ12をより効果的に保護できる。
【0101】
また、フロアパネル2から上方に離間した位置でバッテリ12をブラケット14に固定しているので、フロアパネル2の上面2aに固定部を設ける場合に比べて、車両1の振動がフロアパネル2からバッテリ12に直に伝達されることを抑制でき、バッテリ12を振動から保護できる。
【0102】
また、本実施例のカバー部材15は、バッテリ12の外径形状に沿った形状を有し、バッテリ12に密接するようにしてバッテリ12を覆っている。これにより、カバー部材15によってバッテリ12の剛性を高くして、車両1の振動がバッテリ12に伝達されることをより効果的に抑制でき、バッテリ12を振動からより効果的に保護できる。
【0103】
また、本実施例のバッテリ12の保護構造によれば、バッテリ12の前面12aに切り欠き部12bが形成されており、切り欠き部12bは、端子部13A、13Bよりも下方に位置している。
【0104】
これに加えて、カバー部材15の内部に、切り欠き部12bによって囲まれる空間部18が形成されている。
【0105】
これにより、端子部13A、13Bの下方において、カバー部材15の内部に容量の大きい空気溜まりを形成できる。このため、バッテリ12が水没した場合に、切り欠き部12bに囲まれる空気溜まりによって水が端子部13A、13Bにより到達することをより一層困難にできる
【0106】
この結果、端子部13A、13Bが水没することをより効果的に抑制でき、バッテリ12をより効果的に保護できる。
【0107】
また、切り欠き部12bには放熱フィン12cが形成されているので、放熱フィン12cによってバッテリ12の放熱効果を向上できる。これに加えて、切り欠き部12bによって囲まれる空間部18を利用して放熱フィン12cを設置できるので、放熱フィン12cの設置スペースが増大することを防止でき、バッテリ12が大型化することを防止できる。
【0108】
なお、本実施例の切り欠き部12bは、バッテリ12の前面12aに形成されているが、これに限定されるものではない。切り欠き部12bは、バッテリ12の前面12a、後面、左後面および右側面の少なくとも1つ以上に形成されていればよい。バッテリ12の異なる向きに形成された前面12a、後面、左後面および右側面は、それぞれ異なる向きに形成された電装部品の側面を構成する。
【0109】
また、本実施例の端子部は、端子部13A、13Bから構成されているが、端子部は3つ以上設けられてよい。したがって、ワイヤハーネスも3本以上配索されてもよい。
【0110】
また、膨出部16の空間部17にワイヤハーネス22を配索しているが、ワイヤハーネス21、22の両方を配索してもよい。
【0111】
また、電装部品としては、バッテリ12に限定されるものではなく、例えば、DC-DCコンバータに適用可能である。しかしながら、バッテリやDC-DCコンバータに限定されるものではなく、車両1に搭載される電気的な部品であればなんでもよい。
【0112】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0113】
1...車両、2...フロアパネル、2a...上面(フロアパネルの上面)、2b...開口部、12...バッテリ(電装部品)、12A,12B,12C,12D...固定片(固定部)、12a...前面(電装部品の側面)、12b...切り欠き部、13A,13B...端子部、14...ブラケット、14A,14B,14C,14D...固定片(被固定部)、15...カバー部材、15B...前壁(カバー部材の側壁)、15C...後壁(カバー部材の側壁)、15D...左側壁(カバー部材の側壁)、15E...右側壁(カバー部材の側壁)、15F、15G...覆い部、15u...下端部(側壁の下端部)、16...膨出部、16a...先端部(膨出部の膨出方向の先端部)、18...空間部、21,22...ワイヤハーネス、23...基板部
図1
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図10