(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】クレーン走行支援装置
(51)【国際特許分類】
B66C 23/88 20060101AFI20241001BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B66C23/88 D
B66C15/00 E
(21)【出願番号】P 2021037794
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 和彰
(72)【発明者】
【氏名】寺田 王彦
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-140998(JP,A)
【文献】特開2018-021374(JP,A)
【文献】特開2018-039649(JP,A)
【文献】特開2013-068115(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0062555(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの車体に対して水平方向に旋回可能な旋回体と、
前記車体に取り付けられた、前記クレーンの前方の物体との距離を検知する前方距離検知部と、
前記車体に取り付けられた、前記クレーンの後方の物体との距離を検知する後方距離検知部と、
前記車体に対する前記旋回体の姿勢を検知する姿勢検知部と、
前記姿勢検知部の検知情報に基づいて、前記車体に対する前記旋回体の姿勢が、前記車体に対して前方を向いた前方姿勢であるか、又は、前記車体に対して後方を向いた後方姿勢であるかを判断する姿勢判断部と、
前記姿勢判断部の判断情報に基づいて、前記前方距離検知部と前記後方距離検知部の何れの検知情報を使用するかを決定する使用決定部と、
前記使用決定部の決定した距離検知部の検知情報に基づいて、前記クレーンの走行を制動する制動制御部と、を備え、
前記姿勢判断部が前記前方姿勢と判断した場合、前記使用決定部は、前記前方距離検知部の検知情報の使用を決定し、
前記姿勢判断部が前記後方姿勢と判断した場合、前記使用決定部は、前記後方距離検知部の検知情報の使用を決定する
ことを特徴とする、クレーン走行支援装置。
【請求項2】
前記姿勢判断部の判断情報に基づいて、前記旋回体の前記車体に対する姿勢を表示する表示部を備える
ことを特徴とする、請求項1に記載のクレーン走行支援装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記前方距離検知部又は前記後方距離検知部が検知した前記物体との距離をインジケータによって表示する
ことを特徴とする、請求項2に記載のクレーン走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には、衝突被害軽減ブレーキを搭載することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、障害物に自車両が衝突する前に自車両を停車させるように自動的に自車両のブレーキ手段を作動させる自動ブレーキシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クレーンにおいては、車体に対する旋回体の姿勢を変えて、走行する場合がある。そのため、車体に対する旋回体の姿勢に応じた適切な距離センサを使用して、クレーンの走行の障害となる物体を検知することができない、という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、車体に対する旋回体の姿勢に応じた適切な距離検知部を使用して、クレーンの走行の障害となる物体を検知することができるクレーン走行支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のクレーン走行支援装置は、クレーンの車体に対して水平方向に旋回可能な旋回体と、前記車体に取り付けられた、前記クレーンの前方の物体との距離を検知する前方距離検知部と、前記車体に取り付けられた、前記クレーンの後方の物体との距離を検知する後方距離検知部と、前記車体に対する前記旋回体の姿勢を検知する姿勢検知部と、前記姿勢検知部の検知情報に基づいて、前記車体に対する前記旋回体の姿勢が、前記車体に対して前方を向いた前方姿勢であるか、又は、前記車体に対して後方を向いた後方姿勢であるかを判断する姿勢判断部と、前記姿勢判断部の判断情報に基づいて、前記前方距離検知部と前記後方距離検知部の何れの検知情報を使用するかを決定する使用決定部と、前記使用決定部の決定した距離検知部の検知情報に基づいて、前記クレーンの走行を制動する制動制御部と、を備え、前記姿勢判断部が前記前方姿勢と判断した場合、前記使用決定部は、前記前方距離検知部の検知情報の使用を決定し、前記姿勢判断部が前記後方姿勢と判断した場合、前記使用決定部は、前記後方距離検知部の検知情報の使用を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本発明のクレーン走行支援装置は、車体に対する旋回体の姿勢に応じた適切な距離検知部を使用して、クレーンの走行の障害となる物体を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】実施例1のクレーン走行支援装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】実施例1のクレーンが前方姿勢で走行している状態を示す図である。
【
図5】実施例1のクレーンが後方姿勢で走行している状態を示す図である。
【
図6】実施例1のクレーンが前方姿勢で走行している際の表示部を示す図である。
【
図7】実施例1のクレーンが後方姿勢で走行している際の表示部を示す図である。
【
図8】実施例1の制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明によるクレーン走行支援装置を実現する実施形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1におけるクレーンは、クレーンとしてのラフテレーンクレーン(以下、単にクレーンという)に適用される。
【0012】
[クレーンの構成]
図1は、実施例1のクレーンを示す側面図である。
図2は、実施例1のクレーンを示す平面図である。以下、実施例1のクレーンの構成を説明する。なお、クレーンの前後方向を前後方向Dとする。
【0013】
図1及び
図2に示すように、クレーン1は、車体10と、旋回体20と、ブーム30とを備える。
【0014】
車体10は、アウトリガー11と、道路や作業現場を自走するための走行装置等を備える。
【0015】
アウトリガー11は、作業時に、水平方向及び垂直方向に張り出し、車体10全体を持ち上げて、姿勢を安定させる。
【0016】
旋回体20は、車体10の上方に設けられ、車体10に対して、鉛直軸C1回りに回転可能となっている。すなわち、旋回体20は、車体10に対して水平方向に旋回可能となっている。
【0017】
ここで、旋回体20が車体10に対して、前方を向く姿勢を前方姿勢という。旋回体20が車体10に対して、後方を向く姿勢を後方姿勢という。
【0018】
旋回体20は、キャビン21を備える。キャビン21は、クレーン1の進行方向を向いて、ブーム30の右側に設けられている。なお、キャビン21は、クレーン1の進行方向を向いて、ブーム30の左側に設けられてもよい。
【0019】
キャビン21は、車体10の走行を制御するための操作部(例えば、ステアリング、シフトレバー、アクセルペダル、及びブレーキペダル等)を有する。また、キャビン21は、旋回体20やブーム30やウィンチ24等を操作する操作部を有する。キャビン21に搭乗した運転者Mは、操作部を操作して、旋回体20を旋回させ、ブーム30を起伏及び伸縮させ、ウィンチ24を回転させて作業を行う。
【0020】
キャビン21には、表示部72が設けられている。表示部72は、表示モニタとすることができる。
【0021】
ブーム30は、基端側の基端ブーム31と、中間ブーム32と、先端側の先端ブーム33と、を備える。中間ブーム32と先端ブーム33は、順次、基端ブーム31の内部に格納される入れ子式になっている。
【0022】
基端ブーム31は、旋回体20に設けられた起伏シリンダ(不図示)に支持される。起伏シリンダが伸縮することで、ブーム30は起伏し、伸縮シリンダ(不図示)が伸縮することによって、ブーム30が伸縮する。
【0023】
先端ブーム33の先端に設けられたブームヘッド33aには、シーブ34が配置されている。旋回体20に設けられたウィンチ24には、吊り荷用のワイヤロープ35が巻かれている。ワイヤロープ35は、ウィンチ24からシーブ34までブーム30に沿って配置される。シーブ34に掛け回されたワイヤロープ35は、シーブ34から鉛直方向の下方に吊り下げられる。ワイヤロープ35の最下部には、フック36が設けられている。
【0024】
フック36には、荷物が吊られる。ウィンチ24によってワイヤロープ35が繰り出されることで、フック36が降下し、ワイヤロープ35が巻き上げられることで、フック36が上昇する。
【0025】
車体10の前側には、クレーン1の前方の物体との距離を検知する前方距離検知部51が取り付けられる。前方距離検知部51は、例えば、ミリ波レーダとすることができる。
【0026】
車体10の後側には、クレーン1の後方の物体との距離を検知する後方距離検知部52が取り付けられる。後方距離検知部52は、例えば、ミリ波レーダとすることができる。
【0027】
なお、前方距離検知部51と後方距離検知部52が距離を検知する物体としては、自動車や、自転車や、人物や、建設物や、工事現場に置かれている建設資材等があげられる。物体は、静止している静止体であっても、移動している移動体であってもよい。
【0028】
車体10には、姿勢検知部53が搭載される。姿勢検知部53は、車体10に対する旋回体20の姿勢を検知する。姿勢検知部53は、例えば、車体10に対する旋回体20の旋回角度を検出する旋回角度検出器とすることができる。
【0029】
車体10には、後述する制御部60により制御される制動装置71が搭載される。制動装置71は、制御部60からの情報によって、走行しているクレーン1を制動する。
【0030】
このように構成されたクレーン1は、ウィンチ24によるワイヤロープ35の繰り出し・巻き上げ、ブーム30の起伏及び伸縮、並びに旋回体20の旋回により、フック36に吊られた荷物を所定の位置に移動させる。
【0031】
[クレーン走行支援装置の機能構成]
図3は、実施例1のクレーン走行支援装置の機能構成を示すブロック図である。
図4は、実施例1のクレーン1が前方姿勢で走行している状態を示す図である。
図5は、実施例1のクレーン1が後方姿勢で走行している状態を示す図である。
図6は、実施例1のクレーン1が前方姿勢で走行している際の表示部72を示す図である。
図7は、実施例1のクレーン1が後方姿勢で走行している際の表示部72を示す図である。以下、実施例1のクレーン走行支援装置の機能構成を説明する。
【0032】
図3に示すように、クレーン走行支援装置1Aは、前方距離検知部51が検知した情報と、後方距離検知部52が検知した情報と、姿勢検知部53が検知した情報と、が制御部60に入力され、制御部60で制御された情報が制動装置71と表示部72に出力される。
【0033】
前方距離検知部51は、クレーン1の走行時や静止時(発進時)に使用され、クレーン1の前方の物体との距離を検知する。前方距離検知部51が検知した情報は、制御部60に入力される。
【0034】
後方距離検知部52は、クレーン1の走行時や静止時(発進時)に使用され、クレーン1の後方の物体との距離を検知する。後方距離検知部52が検知した情報は、制御部60に入力される。
【0035】
姿勢検知部53は、例えば、旋回角度検出器とすることができ、車体10に対する旋回体20の姿勢を検知する。姿勢検知部53が検知した情報は、制御部60に入力される。
【0036】
制御部60は、姿勢判断部61と、使用決定部62と、制動制御部63と、を備える。
【0037】
姿勢判断部61は、姿勢検知部53の検知情報に基づいて、車体10に対する旋回体20の姿勢が、前方姿勢であるか、又は、後方姿勢であるかを判断する。姿勢判断部61は、姿勢検知部53としての旋回角度検出器からの角度情報に基づいて、車体10に対する旋回体20の姿勢が、前方姿勢であるか、又は、後方姿勢であるかを判断する。
【0038】
なお、姿勢判断部61は、姿勢検知部53の検知情報に基づいて、車体10に対する旋回体20の姿勢が、前方姿勢、後方姿勢、及び側方姿勢の何れかを判断してもよい。
【0039】
例えば、姿勢検知部53としての旋回角度検出器の角度情報が、0°である場合、姿勢判断部61は、前方姿勢であると判断する。姿勢検知部53としての旋回角度検出器の角度情報が、180°である場合、姿勢判断部61は、後方姿勢であると判断する。ここで、前方姿勢とは、旋回体20が車体10に対して前方を向いた姿勢である。後方姿勢とは、旋回体20が車体10に対して後方を向いた姿勢である。
【0040】
なお、前方姿勢P1には、旋回体20が車体10に対して、斜め前方を向いた姿勢も含まれるものとする。また、後方姿勢P2には、旋回体20が車体10に対して、斜め後方を向いた姿勢も含まれるものとする。
【0041】
例えば、姿勢検知部53としての旋回角度検出器の角度情報が-45°~45°、である場合、姿勢判断部61は、前方姿勢であると判断してもよい。姿勢検知部53としての旋回角度検出器の角度情報が、135°~225°である場合、姿勢判断部61は、後方姿勢であると判断してもよい。なお、姿勢検知部53としての旋回角度検出器の角度情報が上記以外である場合、姿勢判断部61は、側方姿勢であると判断してもよい。
【0042】
具体的には、
図4に示すように、旋回体20が車体10に対して前方を向いた前方姿勢P1である場合、姿勢判断部61は、車体10に対する旋回体20の姿勢を前方姿勢P1と判断する。
【0043】
図5に示すように、旋回体20が車体10に対して後方を向いた後方姿勢P2である場合、姿勢判断部61は、車体10に対する旋回体20の姿勢を後方姿勢P2と判断する。
【0044】
使用決定部62は、姿勢判断部61の判断情報に基づいて、前方距離検知部51の検知情報を使用するか、又は、後方距離検知部52の検知情報を使用するかを決定する。使用決定部62は、姿勢判断部61が旋回体20の姿勢を前方姿勢P1と判断した場合、前方距離検知部51の検知情報の使用を決定する。使用決定部62は、姿勢判断部61が旋回体20の姿勢を後方姿勢P2と判断した場合、後方距離検知部52の検知情報の使用を決定する。
【0045】
具体的には、
図4に示すように、旋回体20が車体10に対して前方を向いた前方姿勢P1で、クレーン1が前方に走行している場合、使用決定部62は、前方距離検知部51の検知情報の使用を決定する。前方距離検知部51は、クレーン1の走行方向の前方の物体G(例えば、トラック)を検知する。なお、クレーン1が前方姿勢P1で走行する場所は、例えば、一般公道や作業現場があげられる。
【0046】
図5に示すように、旋回体20が車体10に対して後方を向いた後方姿勢P2で、クレーン1が後方に走行している場合、使用決定部62は、後方距離検知部52の検知情報の使用を決定する。後方距離検知部52は、クレーン1の走行方向の前方の物体G(例えば、建設機械)を検知する。なお、クレーン1が後方姿勢P2で走行する場所は、例えば、作業現場があげられる。
【0047】
使用決定部62は、姿勢判断部61が旋回体20の姿勢を側方姿勢と判断した場合、前方距離検知部51及び後方距離検知部52の検知情報の使用を決定してもよい。なお、使用決定部62は、姿勢判断部61が旋回体20の姿勢を側方姿勢と判断した場合、制御不可として、前方距離検知部51及び後方距離検知部52の検知情報の不使用を決定してもよい。
【0048】
制動制御部63は、使用決定部62の決定した距離検知部(前方距離検知部51、又は、後方距離検知部52)の検知情報に基づいて、クレーン1の走行を制動する指示を制動装置71に出力する。
【0049】
制動装置71は、制動制御部63から出力された指示に基づいて、クレーン1の制動力を発生させる。すなわち、制動装置71は、制動制御部63から出力された指示に基づいて、走行しているクレーン1を停止させる。
【0050】
表示部72は、姿勢判断部61の判断情報に基づいて、車体10に対する旋回体20の姿勢を表示する。
【0051】
具体的には、車体10に対する旋回体20の姿勢が前方姿勢P1であると姿勢判断部61が判断した場合、
図6に示すように、表示部72は、前方姿勢P1のクレーン1を上方から見た俯瞰
図S1と、前方姿勢P1のクレーン1を側方から見た側面
図T1と、を表示する。俯瞰
図S1と側面
図T1は、模式図とすることができる。
【0052】
俯瞰
図S1と側面
図T1には、前方距離検知部51が検知した物体Gとの距離をインジケータ80によって表示する。インジケータ80は、例えば、赤色の第1指標81と、黄色の第2指標82と、緑色の第3指標83と、で構成される。
【0053】
第1指標81は、クレーン1から最も近い距離の指標である。第2指標82は、第1指標81より遠い距離の指標である。第3指標83は、第2指標82より遠い距離の指標である。
【0054】
前方距離検知部51が検知した物体Gとの距離に応じて、第1指標81、第2指標82及び第3指標83の何れかが点灯するようになっている。なお、前方距離検知部51が検知した物体Gとの距離に応じて、まず、第3指標83が点灯し、次に、第2指標82及び第3指標83が点灯し、次に、全ての指標が点灯するように、段階的に点灯する指標を増やすようにしてもよい。また、インジケータ80は、ビックリマーク等のアイコンとすることもできるし、インジケータ80に合わせてブザーを鳴らすようにしてもよい。
【0055】
車体10に対する旋回体20の姿勢が後方姿勢P2であると姿勢判断部61が判断した場合、
図7に示すように、表示部72は、後方姿勢P2のクレーン1を上方から見た俯瞰
図S2と、後方姿勢P2のクレーン1を側方から見た側面
図T2と、を表示する。俯瞰
図S2と側面
図T2は、模式図とすることができる。
【0056】
俯瞰
図S2と側面
図T2には、後方距離検知部52が検知した物体Gとの距離をインジケータ80によって表示する。インジケータ80は、例えば、赤色の第1指標81と、黄色の第2指標82と、緑色の第3指標83と、で構成される。
【0057】
第1指標81は、クレーン1から最も近い距離の指標である。第2指標82は、第1指標81より遠い距離の指標である。第3指標83は、第2指標82より遠い距離の指標である。
【0058】
後方距離検知部52が検知した物体Gとの距離に応じて、第1指標81、第2指標82及び第3指標83の何れかが点灯するようになっている。
【0059】
[制御部による処理]
図8は、実施例1の制御部60による処理の流れを示すフローチャートである。以下、実施例1のクレーン走行支援装置1Aの制御部60による処理の流れを説明する。
【0060】
まず、姿勢判断部61は、車体10に対する旋回体20の姿勢が前方姿勢P1であるか否かを判断する(ステップS101)。
【0061】
車体10に対する旋回体20の姿勢が前方姿勢P1であると判断した場合(ステップS101でYES)、使用決定部62は、前方距離検知部51の検知情報の使用を決定する(ステップS102)。
【0062】
次いで、制御部60は、前方姿勢P1と、前方距離検知部51が検知した物体Gとの距離に基づいたインジケータ80と、を表示部72に表示する(ステップS103)。
【0063】
次いで、制動制御部63は、前方距離検知部51の検知情報に基づいて、クレーン1の走行を制動する指示を制動装置71に出力して(ステップS104)、処理を終了する。
【0064】
一方、車体10に対する旋回体20の姿勢が後方姿勢P2であると判断した場合(ステップS101でNO)、使用決定部62は、後方距離検知部52の検知情報の使用を決定する(ステップS105)。
【0065】
次いで、制御部60は、後方姿勢P2と、後方距離検知部52が検知した物体Gとの距離に基づいたインジケータ80と、を表示部72に表示する(ステップS106)。
【0066】
次いで、制動制御部63は、後方距離検知部52の検知情報に基づいて、クレーン1の走行を制動する指示を制動装置71に出力して(ステップS107)、処理を終了する。
【0067】
[クレーン走行支援装置の作用]
実施例1のクレーン走行支援装置1Aは、クレーン1の車体10に対して水平方向に旋回可能な旋回体20と、車体10に取り付けられた、クレーン1の前方の物体Gとの距離を検知する前方距離検知部51と、車体10に取り付けられた、クレーン1の後方の物体Gとの距離を検知する後方距離検知部52と、車体10に対する旋回体20の姿勢を検知する姿勢検知部53と、姿勢検知部53の検知情報に基づいて、車体10に対する旋回体20の姿勢が、車体10に対して前方を向いた前方姿勢P1であるか、又は、車体10に対して後方を向いた後方姿勢P2であるかを判断する姿勢判断部61と、姿勢判断部61の判断情報に基づいて、前方距離検知部51と後方距離検知部52の何れの検知情報を使用するかを決定する使用決定部62と、使用決定部62の決定した距離検知部の検知情報に基づいて、クレーン1の走行を制動する制動制御部63と、を備え、姿勢判断部61が前方姿勢P1と判断した場合、使用決定部62は、前方距離検知部51の検知情報の使用を決定し、姿勢判断部61が後方姿勢P2と判断した場合、使用決定部62は、後方距離検知部52の検知情報の使用を決定する(
図3)。
【0068】
これにより、旋回体20が、車体10に対して前方を向いた前方姿勢P1でクレーン1が前方に走行する場合、前方距離検知部51を使用して、進行方向の前方にある物体Gを検知することができる。一方、旋回体20が、車体10に対して後方を向いた後方姿勢P2でクレーン1が後方に走行する場合、後方距離検知部52を使用して、進行方向の前方にある物体Gを検知することができる。
【0069】
そのため、車体10に対する旋回体20の姿勢に応じた適切な距離検知部を使用して、クレーン1の走行の障害となる物体Gを検知することができる。
【0070】
実施例1のクレーン走行支援装置1Aにおいて、姿勢判断部61の判断情報に基づいて、旋回体20の車体10に対する姿勢を表示する表示部72を備える(
図6及び
図7)。
【0071】
これにより、旋回体20が前方姿勢P1であるか、又は、後方姿勢P2であるかを運転者Mが確認することができる。そのため、運転者Mは、旋回体20が前方姿勢P1でクレーン1が走行しているのか、又は、旋回体20が後方姿勢P2でクレーン1が走行しているのかを確認することができる。
【0072】
実施例1のクレーン走行支援装置1Aにおいて、表示部72は、前方距離検知部51又は後方距離検知部52が検知した物体Gとの距離をインジケータ80によって表示する(
図6及び
図7)。
【0073】
これにより、運転者Mは、クレーン1の走行時に、走行の障害となる物体Gとの距離を確認することができる。
【0074】
以上、本発明のクレーン走行支援装置を実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や、追加等は許容される。
【0075】
実施例1では、姿勢検知部53を、車体10に対する旋回体20の旋回角度を検出する旋回角度検出器とする例を示した。しかし、姿勢検知部53は、この態様に限定されず、例えば、専用のスイッチにより、車体10に対する旋回体20の姿勢を検知するようにしてもよい。
【0076】
実施例1では、前方距離検知部51と後方距離検知部52をミリ波レーダとする例を示した。しかし、前方距離検知部51と後方距離検知部52は、この態様に限定されず、超音波センサや、LiDAR(Light Detection and Ranging)等の距離センサにすることもできる。また、前方距離検知部と後方距離検知部とを異なる距離センサとすることもできる。
【0077】
実施例1では、表示部72には、クレーン1の進行方向の前方又は後方にインジケータ80を表示する例を示した。しかし、表示部72には、クレーン1の進行方向の前方及び後方にインジケータ80を表示してもよい。
【0078】
実施例1では、表示部72には、俯瞰
図S2と側面
図T2を表示する例を示した。しかし、表示部72には、俯瞰
図S2及び側面
図T2の何れか一方を表示してもよい。また、表示部への表示方法は、上述の態様に限定されるものではない。
【0079】
実施例1では、クレーン走行支援装置1Aは、前方距離検知部51と後方距離検知部52を備える例を示した。しかし、クレーン走行支援装置1Aは、前方距離検知部51だけを備えてもよい。この場合、クレーン走行支援装置1Aは、姿勢判断部61が前方姿勢でないと判断した場合、使用決定部62は、制御不可として、前方距離検知部51及び後方距離検知部52の検知情報の不使用を決定してもよい。
【0080】
実施例1では、クレーン走行支援装置1Aは、制御部60で制御された情報を表示部72に出力する例を示した。しかし、クレーン走行支援装置は、制御部で制御された情報を表示部に出力しなくてもよい。
【0081】
実施例1では、本発明をラフテレーンクレーン1に適用する例を示した。しかし、本発明は、走行可能なクレーンに適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 クレーン
1A クレーン走行支援装置
10 車体
20 旋回体
21 キャビン
51 前方距離検知部
52 後方距離検知部
53 姿勢検知部
61 姿勢判断部
62 使用決定部
63 制動制御部
72 表示部
G 物体
P1 前方姿勢
P2 後方姿勢