(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】発光素子とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/14 20100101AFI20241001BHJP
H01L 33/08 20100101ALI20241001BHJP
H01L 33/38 20100101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L33/14
H01L33/08
H01L33/38
(21)【出願番号】P 2021039758
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】五所野尾 浩一
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/058726(WO,A1)
【文献】特開2021-022688(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0254044(US,A1)
【文献】特開2004-006718(JP,A)
【文献】特開2010-192698(JP,A)
【文献】特開平08-236812(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0161113(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
G09F 9/30 - 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する基板と、
前記基板の前記第1面の上の半導体層と、
を有する発光素子において、
前記半導体層は、
n型半導体層と、第1発光層と、p型半導体層と、電流抑制部と、を有し、
前記電流抑制部は、
前記p型半導体層および前記第1発光層よりも電気抵抗率の高い層であるとともに、
前記第1発光層をサブピクセルに分割するとともに、前記第1発光層の周囲を囲っており、
前記p型半導体層は、
前記電流抑制部を間に挟んで連続的につながっていて、
第1発光領域と第2発光領域とを有するモノリシック素子であり、
前記半導体層は、
第1中間層と、第2発光層と、をさらに有し、
前記第2発光層の発光波長は前記第1発光層の発光波長と異なっており、
前記第1発光領域は、
前記n型半導体層と前記第1発光層と前記p型半導体層と前記電流抑制部とを有し、
前記第2発光領域は、
前記n型半導体層と前記第1発光層と前記第1中間層と前記第2発光層と前記p型半導体層と前記電流抑制部とを有し、
前記電流抑制部は、
前記第2発光層よりも電気抵抗率の高い層であるとともに、
前記第2発光層をサブピクセルに分割するとともに、前記第2発光層の周囲を囲っており、
前記第1発光領域の前記p型半導体層と前記第2発光領域の前記p型半導体層とは、
前記電流抑制部を間に挟んで連続的につながっていること
を含む発光素子。
【請求項2】
第1面を有する基板と、
前記基板の前記第1面の上の半導体層と、
を有する発光素子において、
前記半導体層は、
n型半導体層と、第1発光層と、p型半導体層と、電流抑制部と、を有し、
前記電流抑制部は、
前記p型半導体層および前記第1発光層よりも電気抵抗率の高い層であるとともに、
前記第1発光層をサブピクセルに分割するとともに、前記第1発光層の周囲を囲っており、
前記p型半導体層は、
前記電流抑制部を間に挟んで連続的につながっていて、
前記電流抑制部は、
前記第1発光層の周囲を筒状に囲っていること
を含む発光素子。
【請求項3】
第1面を有する基板と、
前記基板の前記第1面の上の半導体層と、
を有する発光素子において、
前記半導体層は、
n型半導体層と、第1発光層と、p型半導体層と、電流抑制部と、を有し、
前記電流抑制部は、
前記p型半導体層および前記第1発光層よりも電気抵抗率の高い層であるとともに、
前記第1発光層をサブピクセルに分割するとともに、前記第1発光層の周囲を囲っており、
前記p型半導体層は、
前記電流抑制部を間に挟んで連続的につながっていて、
前記p型半導体層の上の透明電極を有し、
前記透明電極は、
前記電流抑制部を間に挟んで連続的につながっており、
前記電流抑制部は、
前記透明電極の周囲を囲っていること
を含む発光素子。
【請求項4】
第1面を有する基板と、
前記基板の前記第1面の上の半導体層と、
を有する発光素子において、
前記半導体層は、
n型半導体層と、第1発光層と、p型半導体層と、電流抑制部と、を有し、
前記電流抑制部は、
前記p型半導体層および前記第1発光層よりも電気抵抗率の高い層であるとともに、
前記第1発光層をサブピクセルに分割するとともに、前記第1発光層の周囲を囲っており、
前記p型半導体層は、
前記電流抑制部を間に挟んで連続的につながっていて、
前記電流抑制部は、
光を吸収する光吸収部であること
を含む発光素子。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の発光素子において、
第1発光領域と第2発光領域とを有するモノリシック素子であり、
前記半導体層は、
第1中間層と、第2発光層と、をさらに有し、
前記第2発光層の発光波長は前記第1発光層の発光波長と異なっており、
前記第1発光領域は、
前記n型半導体層と前記第1発光層と前記p型半導体層と前記電流抑制部とを有し、
前記第2発光領域は、
前記n型半導体層と前記第1発光層と前記第1中間層と前記第2発光層と前記p型半導体層と前記電流抑制部とを有し、
前記電流抑制部は、
前記第2発光層よりも電気抵抗率の高い層であるとともに、
前記第2発光層をサブピクセルに分割するとともに、前記第2発光層の周囲を囲っており、
前記第1発光領域の前記p型半導体層と前記第2発光領域の前記p型半導体層とは、
前記電流抑制部を間に挟んで連続的につながっていること
を含む発光素子。
【請求項6】
請求項1または請求項5に記載の発光素子において、
第3発光領域を有し、
前記半導体層は、
第2中間層と、第3発光層と、を有し、
前記第3発光層の発光波長は前記第1発光層および前記第2発光層の発光波長と異なっており、
前記第3発光領域は、
前記n型半導体層と前記第1発光層と前記第1中間層と前記第2発光層と前記第2中間層と前記第3発光層と前記p型半導体層と前記電流抑制部とを有し、
前記電流抑制部は、
前記第3発光層よりも電気抵抗率の高い層であるとともに、
前記第3発光層をサブピクセルに分割するとともに、前記第3発光層の周囲を囲っており、
前記第1発光領域の前記p型半導体層と前記第2発光領域の前記p型半導体層と前記第3発光領域の前記p型半導体層とは、
前記電流抑制部を間に挟んで連続的につながっていること
を含む発光素子。
【請求項7】
請求項1、請求項3または請求項4に記載の発光素子において、
前記電流抑制部は、
前記第1発光層
の周囲を格子状に囲っていること
を含む発光素子。
【請求項8】
請求項1、請求項3または請求項4に記載の発光素子において、
前記電流抑制部は、
前記第1発光層の周囲を筒状に囲っていること
を含む発光素子。
【請求項9】
請求項1、請求項5、または請求項6に発光素子において、
前記電流抑制部は、
前記第2発光層
の周囲を筒状に囲っていること
を含む発光素子。
【請求項10】
請求項1、請求項2、または請求項4に記載の発光素子において、
前記p型半導体層の上の透明電極を有し、
前記透明電極は、
前記電流抑制部を間に挟んで連続的につながっており、
前記電流抑制部は、
前記透明電極の周囲を囲っていること
を含む発光素子。
【請求項11】
請求項1、請求項5または請求項6に記載の発光素子において、
前記n型半導体層は、
前記第1発光領域および前記第2発光領域にわたって共通であり、
前記サブピクセルごとに一つのp電極を有し、
前記n型半導体層の上に一つのn電極を有すること
を含む発光素子。
【請求項12】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の発光素子において、
前記電流抑制部は、
光を吸収する光吸収部であること
を含む発光素子。
【請求項13】
請求項4または請求項12に記載の発光素子において、
前記電流抑制部の深さは、次式
D1 ≧ W1 / tanθc
n1・sinθc=n2
θc:臨界角
W1:サブピクセルのピッチ
D1:電流抑制部の深さ
n1:半導体の屈折率
n2:基板の屈折率
を満たすこと
を含む発光素子。
【請求項14】
基板の第1面の上にn型半導体層と第1発光層と第1中間層と第2発光層とを形成する工程と、
前記第1中間層の一部を露出させる凹部を形成する工程と、
p型半導体層を形成する工程と、
前記p型半導体層にイオンを注入する工程と、
を有する発光素子の製造方法において、
前記発光素子は、
第1発光領域と第2発光領域とを有するモノリシック素子であり、
前記第2発光層の発光波長は前記第1発光層の発光波長と異なっており、
前記イオンを注入する工程では、
前記第1発光層および前記第2発光層をサブピクセルに分割するとともに、前記第1発光層および前記第2発光層の周囲を囲う領域に前記イオンを注入すること
を含む発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、モノリシック発光素子とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子として、基板上に発光層を含む半導体層を形成したものが一般的である。また、同一基板上に異なる色で発光する複数の発光部を有する発光素子が研究開発されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基板の上に第1の半導体膜12(第1発光層)、第2の半導体膜14(第2発光層)、第3の半導体膜16(第3発光層)を有するモノリシック発光素子が開示されている(特許文献1の段落[0022]-[0024])。第3の発光部P3においては、3種類の発光層が積層されている(特許文献1の段落[0016]および
図1)。この場合には、3種類の発光層のうち最もバンドギャップが小さい井戸層を有する発光層で集中的に発光する(特許文献1の段落[0035]-[0038]および
図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術においては、エッチング等により、サブピクセルに相当する半導体領域を分割する(特許文献1の段落[0052]および
図4(b))。この分割を実施するために、例えば、第3の発光部P3と第2の発光部P2との間には隙間が必要である。この隙間のために、素子を小型化しにくい。また、分割するためのエッチング時間が長いことがある。とはいえ、各発光部のp型コンタクト層を共通化すると、電流が拡散する。つまり、隣接するサブピクセルの発光層が発光する。この場合には、この発光素子のコントラストは低下する。
【0006】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、小型化に適するとともにコントラストの高い発光素子とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様における発光素子は、第1面を有する基板と、基板の第1面の上の半導体層と、を有する。半導体層は、n型半導体層と、第1発光層と、p型半導体層と、電流抑制部と、を有する。電流抑制部は、p型半導体層および第1発光層よりも電気抵抗率の高い層であるとともに、第1発光層をサブピクセルに分割するとともに、第1発光層の周囲を囲っている。p型半導体層は、電流抑制部を間に挟んで連続的につながっている。第1発光領域と第2発光領域とを有するモノリシック素子である。半導体層は、第1中間層と、第2発光層と、をさらに有する。第2発光層の発光波長は第1発光層の発光波長と異なっている。第1発光領域は、n型半導体層と第1発光層とp型半導体層と電流抑制部とを有する。第2発光領域は、n型半導体層と第1発光層と第1中間層と第2発光層とp型半導体層と電流抑制部とを有する。電流抑制部は、第2発光層よりも電気抵抗率の高い層であるとともに、第2発光層をサブピクセルに分割するとともに、第2発光層の周囲を囲っており、第1発光領域のp型半導体層と第2発光領域のp型半導体層とは、電流抑制部を間に挟んで連続的につながっている。
【0008】
この発光素子においては、各サブピクセルを構成する半導体領域の少なくとも一部は、電流抑制部により囲まれている。このため、あるサブピクセルの半導体領域に電流が流れる際に、そのサブピクセルに隣接するサブピクセルの半導体領域に電流が流れてしまうことを抑制することができる。このため、この発光素子は、高いコントラストで発光することができる。
【発明の効果】
【0009】
本明細書では、小型化に適するとともにコントラストの高い発光素子とその製造方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の発光素子100の概略構成図である。
【
図2】第1の実施形態の発光素子100におけるバンド構造と電子および正孔の振舞を概念的に示す図である。
【
図3】第1の実施形態の発光素子100における発光領域の配置を示す図である。
【
図4】第1の実施形態の発光素子100における電流の流れを示す図である。
【
図5】第1の実施形態の発光素子100の製造方法を説明する図(その1)である。
【
図6】第1の実施形態の発光素子100の製造方法を説明する図(その2)である。
【
図7】第1の実施形態の発光素子100の製造方法を説明する図(その3)である。
【
図8】第1の実施形態の発光素子100の製造方法を説明する図(その4)である。
【
図9】第1の実施形態の発光素子100の製造方法を説明する図(その5)である。
【
図10】第1の実施形態の変形例における発光素子200の概略構成図である。
【
図11】第1の実施形態の変形例における発光素子300の概略構成図である。
【
図12】第1の実施形態の変形例における発光素子400の概略構成図である。
【
図13】第2の実施形態の発光素子500における光吸収を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施形態について、発光素子とその製造方法を例に挙げて図を参照しつつ説明する。しかし、本明細書の技術はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、後述する半導体素子の各層の積層構造および電極構造は、例示である。実施形態とは異なる積層構造であってももちろん構わない。そして、それぞれの図における各層の厚みの比は、概念的に示したものであり、実際の厚みの比を示しているわけではない。
【0012】
(第1の実施形態)
1.発光素子
図1は、第1実施形態の発光素子100の概略構成図である。発光素子100は、モノリシック素子である。発光素子100は、III 族窒化物半導体から成る複数の半導体層を有する。
図1に示すように、発光素子100は、基板110と、n型コンタクト層120と、第1発光層130と、第1中間層140と、第2発光層150と、第2中間層160と、第3発光層170と、キャップ層180と、p型コンタクト層190と、n電極N1と、p電極P1、P2、P3と、電流抑制部CS1、CS2、CS3と、を有する。
【0013】
基板110の第1面110a上には、n型コンタクト層120と、第1発光層130と、第1中間層140と、第2発光層150と、第2中間層160と、第3発光層170と、キャップ層180と、p型コンタクト層190と、がこの順序で形成されている。n電極N1は、n型コンタクト層120の上に形成されている。p電極P1、P2、P3は、p型コンタクト層190の上に形成されている。
【0014】
n型コンタクト層120はn型半導体層である。p型コンタクト層190はp型半導体層である。第1発光層130と、第1中間層140と、第2発光層150と、第2中間層160と、第3発光層170とは、ノンドープの半導体層である。キャップ層180は、n型半導体層またはノンドープの半導体層である。ここで、ノンドープの半導体層とは、意図的にドープされていない半導体層である。
【0015】
発光素子100は、第1発光領域R1と、第2発光領域R2と、第3発光領域R3と、を有する。第1発光領域R1と、第2発光領域R2と、第3発光領域R3とは、基板110の第1面110aの上に並んで配置されている。
【0016】
第1発光領域R1は、例えば、青色光を発する。第1発光領域R1は、基板110と、n型コンタクト層120と、第1発光層130と、第1中間層140と、p型コンタクト層190と、p電極P1と、電流抑制部CS1と、を有する。第1発光領域R1においては、p型コンタクト層190は、第1中間層140の上に形成されている。
【0017】
第2発光領域R2は、例えば、緑色光を発する。第2発光領域R2は、基板110と、n型コンタクト層120と、第1発光層130と、第1中間層140と、第2発光層150と、第2中間層160と、p型コンタクト層190と、p電極P2と、電流抑制部CS2と、を有する。第2発光領域R2においては、p型コンタクト層190は、第2中間層160の上に形成されている。
【0018】
第3発光領域R3は、例えば、赤色光を発する。第3発光領域R3は、基板110と、n型コンタクト層120と、第1発光層130と、第1中間層140と、第2発光層150と、第2中間層160と、第3発光層170と、キャップ層180と、p型コンタクト層190と、p電極P3と、電流抑制部CS3と、を有する。第3発光領域R3においては、p型コンタクト層190は、キャップ層180の上に形成されている。
【0019】
基板110は、各半導体層を支持する支持基板である。基板110は、第1面110aを有する。基板110の第1面110aは、例えば、c面である。基板110は、例えば、サファイア基板、AlN基板、Si基板、SiC基板等の異種基板である。基板110は、GaN基板であってもよい。
【0020】
n型コンタクト層120は、n電極N1と接触する層である。n型コンタクト層120は、基板110の第1面110aの上に形成されている。n型コンタクト層120は、例えば、Siをドープされたn型GaN層である。n型コンタクト層120は、n型AlGaN層であってもよい。
【0021】
第1発光層130は、電子と正孔とが再結合することにより発光する活性層である。第1発光層130は、n型コンタクト層120と第1中間層140との間の位置に位置している。第1発光層130は、井戸層と障壁層とを有する。第1発光層130の井戸層は、例えば、InGaN層である。第1発光層130の障壁層は、例えば、GaN層である。第1発光層130の井戸層のIn組成は、例えば、0.14以上0.22以下である。
【0022】
第1中間層140は、第1発光層130と第2発光層150との間に位置する層である。第1中間層140のバンドギャップは、第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170の井戸層のバンドギャップよりも大きい。第1中間層140の材質は、例えば、AlInGaNである。
【0023】
第2発光層150は、電子と正孔とが再結合することにより発光する活性層である。第2発光層150は、第1中間層140と第2中間層160との間の位置に位置している。第2発光層150は、井戸層と障壁層とを有する。第2発光層150の井戸層は、例えば、InGaN層である。第2発光層150の障壁層は、例えば、GaN層である。第2発光層150の井戸層のIn組成は、例えば、0.26以上0.33以下である。
【0024】
第2中間層160は、第2発光層150と第3発光層170との間に位置する層である。第2中間層160のバンドギャップは、第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170の井戸層のバンドギャップよりも大きい。第2中間層160の材質は、例えば、AlInGaNである。
【0025】
第3発光層170は、電子と正孔とが再結合することにより発光する活性層である。第3発光層170は、第2中間層160とキャップ層180との間の位置に位置している。第3発光層170は、井戸層と障壁層とを有する。第3発光層170の井戸層は、例えば、InGaN層である。第3発光層170の障壁層は、例えば、GaN層である。第3発光層170の井戸層のIn組成は、例えば、0.39以上0.48以下である。
【0026】
キャップ層180は、第3発光層170とp型コンタクト層190との間に位置する層である。キャップ層180のバンドギャップは、第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170の井戸層のバンドギャップよりも大きい。キャップ層180の材質は、例えば、AlInGaNである。
【0027】
p型コンタクト層190は、p電極P1と電気的に接続された半導体層である。p型コンタクト層190は、p電極P1と接触している。p型コンタクト層190は、第1中間層140の上と第2中間層160の上とキャップ層180の上とに形成されている。また、p型コンタクト層190は、第1中間層140と、第2発光層150と、第2中間層160と、第3発光層170と、キャップ層180との側面を覆っている。p型コンタクト層190は、基板110の第1面110aの側の半導体層を覆っている。p型コンタクト層190は、連続した層である。p型コンタクト層190は、第1発光領域R1と第2発光領域R2と第3発光領域R3とにわたってつながった状態で形成されている。p型コンタクト層190は、例えば、Mgをドープされたp型GaN層である。p型コンタクト層190は、p型AlGaN層であってもよい。
【0028】
p電極P1、P2、P3は、p型コンタクト層190と電気的に接続されている。p電極P1、P2、P3は、p型コンタクト層190の上にp型コンタクト層190と接触した状態で形成されている。p電極P1、P2、P3の材質は、例えば、ITOである。また、ITOの他に、IZO、ICO、ZnO、TiO2 、NbTiO2 、TaTiO2 等の透明な導電性酸化物を用いることができる。p電極P1、P2、P3は、例えば、Ni、Au、Ag、Co、In等の金属層または合金層を含んでいてもよい。電極P1、P2、P3は、互いに独立した領域に形成されている。このため、これらの電極P1、P2、P3はつながっていない。
【0029】
n電極N1は、n型コンタクト層120と電気的に接続されている。n電極N1は、n型コンタクト層120の上にn型コンタクト層120と接触した状態で形成されている。n電極N1の材質は、例えば、Ni、Au、Ag、Co、In、Ti等の金属である。
【0030】
第1発光領域R1のp型コンタクト層190と第2発光領域R2のp型コンタクト層190と第3発光領域R3のp型コンタクト層190とは、電流抑制部CS1、CS2、CS3を間に挟んで連続的につながっている。
【0031】
n型コンタクト層120は、第1発光領域R1および第2発光領域R2および第3発光領域R3にわたって共通である。発光素子100は、n型コンタクト層120の上に一つのn電極を有する。発光素子100は、サブピクセルごとに一つのp電極を有する。
【0032】
n型コンタクト層120の膜厚は、例えば、1μm以上5μm以下である。第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170の膜厚は、例えば、6nm以上100nm以下である。第1中間層140、第2中間層160の膜厚は、例えば、2nm以上100nm以下である。キャップ層180の膜厚は、例えば、5nm以上10nm以下である。p型コンタクト層190の膜厚は、例えば、10nm以上200nm以下である。
【0033】
2.バンド構造と電子および正孔の振舞
2-1.バンド構造
図2は、第1の実施形態の発光素子100におけるバンド構造と電子および正孔の振舞を概念的に示す図である。
図2では、説明の簡単のために、各発光層は単一量子井戸構造を有するものとして描かれている。各発光層は、多重量子井戸構造であってもよい。
【0034】
図2に示すように、第3発光層170の井戸層のバンドギャップは、第2発光層150の井戸層のバンドギャップよりも小さい。第2発光層150の井戸層のバンドギャップは、第1発光層130の井戸層のバンドギャップよりも小さい。第1発光層130の井戸層のバンドギャップは、その他の障壁層等のバンドギャップよりも小さい。このため、第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170の発光波長は、互いに異なっている。
【0035】
2-2.電子および正孔の振舞
p電極p3から注入された正孔は容易に第3発光層170に進入する。正孔は第3発光層170からほとんど出ることなく第3発光層170に留まる。第3発光層170から見た第2中間層160の障壁が十分に高いからである。
【0036】
n電極N1から注入された電子は第1発光層130に進入する。第1発光層130から見た第1中間層140の障壁はそれほど高くない。このため、電子は第1発光層130から第2発光層150に移動しやすい。第2発光層150から見た第2中間層160の障壁はそれほど高くない。このため、電子は第2発光層150から第3発光層170に移動しやすい。第3発光層170に進入した電子はほとんど移動せずに第3発光層170に留まる。第3発光層170に隣接する障壁が十分に高いからである。
【0037】
このように、電子は第3発光層170に存在しやすく、正孔は第3発光層170に存在しやすい。つまり、電子の波動関数および正孔の波動関数は、第3発光層170の位置で大きな振幅をもつとともに、互いによく重なり合う。このため、第3発光層170で集中的に発光し、第1発光層130および第2発光層150ではそれほど発光しない。
【0038】
第3発光層170が存在しない場合には、第2発光層150で集中的に発光し、第1発光層130ではそれほど発光しない。
【0039】
3.電流抑制部
3-1.電流抑制部の領域
図1に示すように、発光素子100は、電流抑制部CS1、CS2、CS3を有する。電流抑制部CS1、CS2、CS3は、電気抵抗率が高い材料で形成されている。電流抑制部CS1、CS2、CS3の材質は、例えば、酸素原子を含むIII 族窒化物である。
【0040】
電流抑制部CS1は、電流が基板110の第1面110aに平行な方向に拡散することを抑制する。電流抑制部CS1は、第1発光領域R1を筒状に囲っている。電流抑制部CS1は、p型コンタクト層190からn型コンタクト層120の途中まで達している。
【0041】
電流抑制部CS2は、電流が基板110の第1面110aに平行な方向に拡散することを抑制する。電流抑制部CS2は、第2発光領域R2を筒状に囲っている。電流抑制部CS2は、p型コンタクト層190からn型コンタクト層120の途中まで達している。
【0042】
電流抑制部CS3は、電流が基板110の第1面110aに平行な方向に拡散することを抑制する。電流抑制部CS3は、第3発光領域R3を筒状に囲っている。電流抑制部CS3は、p型コンタクト層190からn型コンタクト層120の途中まで達している。
【0043】
電流抑制部CS1、CS2、CS3は、p型コンタクト層190および第3発光層170および第2発光層150および第1発光層130よりも電気抵抗率の高い層である。
【0044】
電流抑制部CS1は、第1発光層130をサブピクセルに分割するとともに、第1発光層130の周囲を筒状に囲っている。電流抑制部CS2は、第2発光層150をサブピクセルに分割するとともに、第2発光層150の周囲を筒状に囲っている。電流抑制部CS3は、第3発光層170をサブピクセルに分割するとともに、第3発光層170の周囲を筒状に囲っている。
【0045】
図3は、第1の実施形態の発光素子100における発光領域の配置を示す図である。
図3は、基板110の第1面110aに垂直な方向から発光素子100を視た図である。
【0046】
図3に示すように、電流抑制部CS1は、第1発光領域R1を囲っている。電流抑制部CS2は、第2発光領域R2を囲っている。電流抑制部CS3は、第3発光領域R3を囲っている。
【0047】
図1および
図3に示すように、電流抑制部CS1は、四角筒形状に第1発光領域R1を囲っている。電流抑制部CS2は、四角筒形状に第2発光領域R2を囲っている。電流抑制部CS3は、四角筒形状に第3発光領域R3を囲っている。
【0048】
3-2.電流の流れ方
図4は、第1の実施形態の発光素子100における電流の流れを示す図である。
【0049】
p電極P1とn電極N1との間に十分な大きさの電圧が印加された場合には、電流がp型コンタクト層190、第1中間層140、第1発光層130、n型コンタクト層120、の順に流れる。これにより、第1発光領域R1が発光する。電流抑制部CS1があるため、電流は第2発光領域R2および第3発光領域R3に拡散しない。このため、発光素子100は、十分なコントラストを発揮する。また、意図しない色の発光が抑制される。
【0050】
p電極P2とn電極N1との間に十分な大きさの電圧が印加された場合には、電流がp型コンタクト層190、第2中間層160、第2発光層150、第1中間層140、第1発光層130、n型コンタクト層120、の順に流れる。これにより、第2発光領域R2が発光する。電流抑制部CS2があるため、電流は第1発光領域R1および第3発光領域R3に拡散しない。このため、発光素子100は、十分なコントラストを発揮する。また、意図しない色の発光が抑制される。
【0051】
p電極P3とn電極N1との間に十分な大きさの電圧が印加された場合には、電流がp型コンタクト層190、キャップ層180、第3発光層170、第2中間層160、第2発光層150、第1中間層140、第1発光層130、n型コンタクト層120、の順に流れる。これにより、第3発光領域R3が発光する。電流抑制部CS3があるため、電流は第1発光領域R1および第2発光領域R2に拡散しない。このため、発光素子100は、十分なコントラストを発揮する。また、意図しない色の発光が抑制される。
【0052】
4.半導体発光素子の製造方法
4-1.半導体層形成工程
図5に示すように、基板110の第1面110aの上に半導体層をエピタキシャル成長させる。その際には、MOCVD法等の気相成長法を用いればよい。基板110の第1面110aの上にn型コンタクト層120、第1発光層130、第1中間層140、第2発光層150、第2中間層160、第3発光層170、キャップ層180をこの順序で形成する。
【0053】
4-2.中間層露出工程
図6に示すように、半導体層に凹部U1、U2を形成して第1中間層140および第2中間層160の一部を露出させる。そのために、マスクを用いて半導体層をエッチングすればよい。凹部U1の底部には、第2中間層160が露出している。凹部U2の底部には、第1中間層140が露出している。
【0054】
4-3.p型半導体層形成工程
図7に示すように、半導体層の上にp型コンタクト層190を成長させる。第1中間層140、第2中間層160、キャップ層180の上面にわたってp型コンタクト層190を形成する。その際に、第1中間層140、第2発光層150、第2中間層160、第3発光層170、キャップ層180の側面にもp型コンタクト層190を形成する。
【0055】
4-4.電流抑制部形成工程
図8に示すように、半導体層に電流抑制部CS1、CS2、CS3を形成する。そのために、例えば、電流抑制部CS1、CS2、CS3を形成する半導体層の領域にイオンを注入する。例えば、p型コンタクト層190の上にマスクを形成し、酸素ガスをプラズマ化してマスクで覆われていない領域に酸素イオンを注入する。具体的には、第1発光層130および第2発光層150および第3発光層170をサブピクセルに分割するとともに、第1発光層130および第2発光層150および第3発光層170の周囲を筒状に囲う領域にイオンを注入する。これにより、p型コンタクト層190からn型コンタクト層120の途中まで達する電流抑制部CS1、CS2、CS3を形成する。
【0056】
4-5.電極形成工程
図9に示すように、n型コンタクト層120を形成するための凹部U3を形成する。凹部U3は、p型コンタクト層190からn型コンタクト層120の途中まで達する。凹部U3の底部には、n型コンタクト層120が露出している。この後、n型コンタクト層120の上にn電極N1を形成し、p型コンタクト層190の上にp電極P1、P2、P3を形成する。p電極P1、P2、P3を形成する際には、一様な電極層を形成した後に、エッチングにより各々の電極を複数個所に分割すればよい。
【0057】
5.第1の実施形態の効果
第1の実施形態の発光素子100は、p型コンタクト層190からn型コンタクト層120の途中まで達する電流抑制部CS1、CS2、CS3を有する。電流抑制部CS1は第1発光領域R1を筒状に囲っている。電流抑制部CS2は第2発光領域R2を筒状に囲っている。電流抑制部CS3は第3発光領域R3を筒状に囲っている。
【0058】
このため、電流が隣接する領域に拡散することが抑制される。モノリシック素子を発光させても、狙ったサブピクセルが発光し、隣接するサブピクセルが発光するおそれはほとんどない。つまり、この発光素子100のコントラストは高い。
【0059】
6.変形例
6-1.電流抑制部の存在領域
図10は、第1の実施形態の変形例における発光素子200の概略構成図である。発光素子200は、電流抑制部CS1a、CS2a、CS3aを有する。電流抑制部CS1aはp型コンタクト層190からn型コンタクト層120の途中まで達している。電流抑制部CS2aはp型コンタクト層190から第1中間層140の途中まで達している。電流抑制部CS3aはp型コンタクト層190から第2中間層160の途中まで達している。
【0060】
電流抑制部CS2a、CS3aは、n型コンタクト層120まで達していない。しかし、電流抑制部CS1a、CS2a、CS3aは、p型コンタクト層190における電流の横方向の拡散を抑制する。
【0061】
各発光層が十分に薄く、n型コンタクト層120が十分に厚い場合には、発光素子100を容易に製造することができる。しかし、各発光層がある程度厚い場合には、発光素子200のように電流抑制部がn型コンタクト層120に達しないことがある。電流抑制部CS1a、CS2a、CS3aの深さは、必ずしも、
図10と同じである必要はない。
【0062】
6-2.p電極
図11は、第1の実施形態の変形例における発光素子300の概略構成図である。発光素子300は、基板110の第1面110aの側に一様に形成された透明電極TE1を有する。透明電極TE1は、ITO、IZO、ICO、ZnO、TiO
2 、NbTiO
2 、TaTiO
2 等の透明な導電性酸化物である。
【0063】
透明電極TE1は、p型コンタクト層190の上に形成されている。第1発光領域R1の透明電極TE1と第2発光領域R2の透明電極TE1と第3発光領域R3の透明電極TE1とは、電流抑制部CS1b、CS2b、CS3bを間に挟んで連続的につながっている。電流抑制部CS1bは、第1発光層130の周囲とともに透明電極TE1の周囲を筒状に囲っている。電流抑制部CS2bは、第2発光層150の周囲とともに透明電極TE1の周囲を筒状に囲っている。電流抑制部CS3bは、第3発光層170の周囲とともに透明電極TE1の周囲を筒状に囲っている。電流抑制部CS1b、CS2b、CS3bは、酸素イオンを注入された領域である。透明電極TE1に酸素プラズマを照射することにより、電流抑制部CS1b、CS2b、CS3bを形成することができる。
【0064】
6-3.電流抑制部の形状
電流抑制部CS1、CS2、CS3の形状は、四角筒形状でなくてもよい。電流抑制部CS1、CS2、CS3の形状は、例えば、多角筒形状、円筒形状であってもよい。電流抑制部CS1、CS2、CS3の形状は、格子状であってもよい。
【0065】
図12は、第1の実施形態の変形例における発光素子400の概略構成図である。発光素子400は、電流抑制部CSXを有する。電流抑制部CSXは、第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170を格子状に囲っている。この場合であっても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0066】
6-4.イオン注入
電流抑制部CS1、CS2、CS3を形成する領域に注入するイオンは酸素イオン以外であってもよい。例えば、Znであってもよい。ZnプラズマによりZnイオンを電流抑制部CS1、CS2、CS3を形成する領域に注入すればよい。このとき電流抑制部CS1、CS2、CS3の材質は、Znを含むIII 族窒化物である。
【0067】
6-5.組成
第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170の障壁層はGaN層以外のAlInGaN層であってもよい。
【0068】
6-6.発光領域の数
第1の実施形態では、発光素子100は第1発光領域R1と第2発光領域R2と第3発光領域R3とを有する。しかし、発光素子は、第1発光領域R1だけを有していてもよい。また、発光素子は、第1発光領域R1および第2発光領域を有しており、第3発光領域を有していなくてもよい。
【0069】
6-7.バッファ層
基板110の第1面110aとn型コンタクト層120との間にはバッファ層があってもよい。
【0070】
6-8.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。
【0071】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。
【0072】
1.発光素子
第2の実施形態の発光素子500の基本的構造は、第1の実施形態の変形例における発光素子400の基本的構造と同じである。第2の実施形態の発光素子500においては、電流抑制部CSは、光を吸収する光吸収部の役割も担っている。
【0073】
2.光吸収
第1の実施形態の変形例における発光素子400の電流抑制部CSXは、III 族窒化物半導体にイオン注入した領域である。III 族窒化物半導体に酸素イオンを注入した領域は高い電気抵抗率を備えるとともに光を吸収する。
【0074】
図13は、第2の実施形態の発光素子500における光吸収を説明するための図である。
図13において、発光素子500は、基板110と、半導体層Epと、電流抑制部CSと、を有する。
【0075】
次式を満たす場合に、光は電流抑制部CSに十分に吸収される。
tanθc ≧ W1/D1
n1・sinθc=n2
θc:臨界角
W1:サブピクセルのピッチ
D1:電流抑制部の深さ
n1:半導体の屈折率
n2:基板の屈折率
【0076】
このため、電流抑制部CSの深さは、次式を満たせばよい。
D1 ≧ W1 / tanθc
【0077】
3.第2の実施形態の効果
第2の実施形態では、基板110との界面で反射した光が隣接するサブピクセルに入射する前に電流抑制部CSに吸収される。このため、あるサブピクセルの発光層から発せられる光が他のサブピクセルの発光層で吸収されることが抑制される。このため、他のサブピクセルの発光層が再発光することが抑制される。このため、発光素子500は良好なコントラストを有する。
【0078】
4.変形例
酸素プラズマの代わりに、Znプラズマ、窒素プラズマを用いることができる。
【0079】
(実施形態の組み合わせ)
第1の実施形態から第2の実施形態までについて変形例を含めて組み合わせてよい。
【0080】
(付記)
第1の態様における発光素子は、第1面を有する基板と、基板の第1面の上の半導体層と、を有する。半導体層は、n型半導体層と、第1発光層と、p型半導体層と、電流抑制部と、を有する。電流抑制部は、p型半導体層および第1発光層よりも電気抵抗率の高い層であるとともに、第1発光層をサブピクセルに分割するとともに、第1発光層の周囲を囲っている。p型半導体層は、電流抑制部を間に挟んで連続的につながっている。
【0081】
第2の態様における発光素子は、第1発光領域と第2発光領域とを有するモノリシック素子である。半導体層は、第1中間層と、第2発光層と、を有する。第2発光層の発光波長は第1発光層の発光波長と異なっている。第1発光領域は、n型半導体層と第1発光層とp型半導体層と電流抑制部とを有する。第2発光領域は、n型半導体層と第1発光層と第1中間層と第2発光層とp型半導体層と電流抑制部とを有する。電流抑制部は、第2発光層よりも電気抵抗率の高い層であるとともに、第2発光層をサブピクセルに分割するとともに、第2発光層の周囲を囲っている。第1発光領域のp型半導体層と第2発光領域のp型半導体層とは、電流抑制部を間に挟んで連続的につながっている。
【0082】
第3の態様における発光素子は、第3発光領域を有する。半導体層は、第2中間層と、第3発光層と、を有する。第3発光層の発光波長は第1発光層および第2発光層の発光波長と異なっている。第3発光領域は、n型半導体層と第1発光層と第1中間層と第2発光層と第2中間層と第3発光層とp型半導体層と電流抑制部とを有する。電流抑制部は、第3発光層よりも電気抵抗率の高い層であるとともに、第3発光層をサブピクセルに分割するとともに、第3発光層の周囲を囲っている。第1発光領域のp型半導体層と第2発光領域のp型半導体層と第3発光領域のp型半導体層とは、電流抑制部を間に挟んで連続的につながっている。
【0083】
第4の態様における発光素子においては、電流抑制部は、第1発光層または第2発光層または第3発光層の周囲を格子状に囲っている。
【0084】
第5の態様における発光素子においては、電流抑制部は、第1発光層または第2発光層または第3発光層の周囲を筒状に囲っている。
【0085】
第6の態様における発光素子は、p型半導体層の上の透明電極を有する。透明電極は、電流抑制部を間に挟んで連続的につながっている。電流抑制部は、透明電極の周囲を囲っている。
【0086】
第7の態様における発光素子においては、n型半導体層は、第1発光領域および第2発光領域にわたって共通である。発光素子はサブピクセルごとに一つのp電極を有する。発光素子はn型半導体層の上に一つのn電極を有する。
【0087】
第8の態様における発光素子においては、電流抑制部は、光を吸収する光吸収部である。
【0088】
第9の態様における発光素子においては、電流抑制部の深さは、次式
D1 ≧ W1 / tanθc
n1・sinθc=n2
θc:臨界角
W1:サブピクセルのピッチ
D1:電流抑制部の深さ
n1:半導体の屈折率
n2:基板の屈折率
を満たす。
【0089】
第10の態様における発光素子の製造方法は、基板の第1面の上にn型半導体層と第1発光層と第1中間層と第2発光層とを形成する工程と、第1中間層の一部を露出させる凹部を形成する工程と、p型半導体層を形成する工程と、半導体層にイオンを注入する工程と、を有する。発光素子は、第1発光領域と第2発光領域とを有するモノリシック素子である。第2発光層の発光波長は第1発光層の発光波長と異なっている。イオンを注入する工程では、第1発光層および第2発光層をサブピクセルに分割するとともに、第1発光層および第2発光層の周囲を囲う領域にイオンを注入する。
【符号の説明】
【0090】
100…発光素子
110…基板
120…n型コンタクト層
130…第1発光層
140…第1中間層
150…第2発光層
160…第2中間層
170…第3発光層
180…キャップ層
190…p型コンタクト層
N1…n電極
P1、P2、P3p…電極
CS1、CS2、CS3…電流抑制部
R1…第1発光領域
R2…第2発光領域
R3…第3発光領域