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特許7563256水電解システム、水電解システムの制御方法、および水電解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】水電解システム、水電解システムの制御方法、および水電解方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/02 20210101AFI20241001BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241001BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241001BHJP
【FI】
C25B15/02
C25B1/04
C25B9/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021040316
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139785
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】植田 忠伸
(72)【発明者】
【氏名】村田 元
(72)【発明者】
【氏名】関 純太郎
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-518719(JP,A)
【文献】特開2020-143346(JP,A)
【文献】特開2014-194916(JP,A)
【文献】特開昭59-170282(JP,A)
【文献】特開2007-031784(JP,A)
【文献】特開2016-123953(JP,A)
【文献】特開2008-277089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解システムであって、
アノードと、アノード室と、カソードと、カソード室と、を備え、水を電気分解することで、前記アノードで酸素を生成し、前記カソードで水素を生成する水電解槽と、
前記水電解槽の前記アノード室内を、アノード第1方向に流れるように前記水を供給可能であり、かつ、前記アノード第1方向と略逆方向のアノード第2方向に流れるように前記水を供給可能である、水供給部と、
前記水供給部を制御して、前記水電解槽の前記アノード室における前記水の流れ方向を、前記アノード第1方向と、前記アノード第2方向と、に切替える制御部と、
を備え
前記水電解槽は、
前記水が入出する第1アノード口部と、
前記第1アノード口部に対して、前記アノード室を介して略対向する位置に配置され、前記水が入出する第2アノード口部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1アノード口部を前記水の入口とし、前記第2アノード口部を前記水の出口とする第1条件と、前記第2アノード口部を前記水の入口とし、前記第1アノード口部を前記水の出口とする第2条件とを切替えさせることにより、前記水の流れ方向を前記アノード第1方向と、前記アノード第2方向と、に切替えさせ、
前記水電解システムは、
前記第1アノード口部内の温度を測定する第1温度測定部と、
前記第2アノード口部内の温度を測定する第2温度測定部と、
を、さらに備え、
前記制御部は、
前記第1温度測定部および前記第2温度測定部による測定結果を用いて、前記第1アノード口部の温度と、前記第2アノード口部の温度と、が時間的に略均一になるように、前記アノード室の前記水の流れ方向を切り替える、
水電解システム。
【請求項2】
電解システムであって、
アノードと、アノード室と、カソードと、カソード室と、を備え、水を電気分解することで、前記アノードで酸素を生成し、前記カソードで水素を生成する水電解槽と、
前記水電解槽の前記アノード室内を、アノード第1方向に流れるように前記水を供給可能であり、かつ、前記アノード第1方向と略逆方向のアノード第2方向に流れるように前記水を供給可能である、水供給部と、
前記水供給部を制御して、前記水電解槽の前記アノード室における前記水の流れ方向を、前記アノード第1方向と、前記アノード第2方向と、に切替える制御部と、
前記アノード室の内部の温度を測定する内部温度測定部と、
を備え、
前記制御部は、
前記内部温度測定部による測定結果を用いて、前記アノード室の内部の温度が時間的に略均一になるように、前記アノード室の前記水の流れ方向を切り替える、
水電解システム。
【請求項3】
請求項に記載の水電解システムであって、
前記水電解槽は、
前記水が入出する第1アノード口部と、
前記第1アノード口部に対して、前記アノード室を介して略対向する位置に配置され、前記水が入出する第2アノード口部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1アノード口部を前記水の入口とし、前記第2アノード口部を前記水の出口とする第1条件と、前記第2アノード口部を前記水の入口とし、前記第1アノード口部を前記水の出口とする第2条件とを切替えさせることにより、前記水の流れ方向を前記アノード第1方向と、前記アノード第2方向と、に切替えさせる、
水電解システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずか一項に記載の水電解システムであって、
前記水電解槽の前記カソード室内を、カソード第1方向に流れるように、前記カソードで生成された水素を排出させることが可能であり、かつ、前記カソード第1方向と略逆方向のカソード第2方向に流れるように前記水素を排出させることが可能である、水素排出部を備え、
前記制御部は、
前記水素排出部を制御して、前記水電解槽の前記カソード室における前記水素の流れ方向を、前記カソード第1方向と、前記カソード第2方向と、に切替える、
水電解システム。
【請求項5】
請求項4に記載の水電解システムであって、
前記アノード室の前記水の流れ方向と、前記カソード室の前記水素の流れ方向は、対向している、
水電解システム。
【請求項6】
電解システムであって、
アノードと、アノード室と、カソードと、カソード室と、を備え、水を電気分解することで、前記アノードで酸素を生成し、前記カソードで水素を生成する水電解槽と、
前記水電解槽の前記アノード室内を、アノード第1方向に流れるように前記水を供給可能であり、かつ、前記アノード第1方向と略逆方向のアノード第2方向に流れるように前記水を供給可能である、水供給部と、
前記水供給部を制御して、前記水電解槽の前記アノード室における前記水の流れ方向を、前記アノード第1方向と、前記アノード第2方向と、に切替える制御部と、
前記水電解槽の前記カソード室内を、カソード第1方向に流れるように、前記カソードで生成された水素を排出させることが可能であり、かつ、前記カソード第1方向と略逆方向のカソード第2方向に流れるように前記水素を排出させることが可能である、水素排出部と、を備え、
前記制御部は、
さらに、前記水素排出部を制御して、前記水電解槽の前記カソード室における前記水素の流れ方向を、前記カソード第1方向と、前記カソード第2方向と、に切替え、
前記アノード室の前記水の流れ方向と、前記カソード室の前記水素の流れ方向は、対向している、
水電解システム。
【請求項7】
請求項6に記載の水電解システムであって、
前記水電解槽は、
前記水が入出する第1アノード口部と、
前記第1アノード口部に対して、前記アノード室を介して略対向する位置に配置され、前記水が入出する第2アノード口部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1アノード口部を前記水の入口とし、前記第2アノード口部を前記水の出口とする第1条件と、前記第2アノード口部を前記水の入口とし、前記第1アノード口部を前記水の出口とする第2条件とを切替えさせることにより、前記水の流れ方向を前記アノード第1方向と、前記アノード第2方向と、に切替えさせる、
水電解システム。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の水電解システムであって、
前記制御部は、
前記アノード室の前記水の流れ方向の切替と、前記カソード室の前記水素の流れ方向の切替と、を同期させる、
水電解システム。
【請求項9】
水電解システムの制御方法であって、
前記水電解システムは、アノードと、アノード室と、カソードと、カソード室と、を備え、水を電気分解することで、前記アノードで酸素を生成し、前記カソードで水素を生成する水電解槽と、
前記水電解槽の前記アノード室内を、アノード第1方向に流れるように前記水を供給可能であり、かつ、前記アノード第1方向と略逆方向のアノード第2方向に流れるように前記水を供給可能である、水供給部と、を備え
前記水電解槽は、
前記水が入出する第1アノード口部と、
前記第1アノード口部に対して、前記アノード室を介して略対向する位置に配置され、前記水が入出する第2アノード口部と、
を備え、
前記水電解システムは、
前記第1アノード口部内の温度を測定する第1温度測定部と、
前記第2アノード口部内の温度を測定する第2温度測定部と、
を、さらに備えており、
前記水供給部を制御して、前記水電解槽の前記アノード室における前記水の流れ方向を、前記アノード第1方向と、前記アノード第2方向と、に切替える際に、
前記第1アノード口部を前記水の入口とし、前記第2アノード口部を前記水の出口とする第1条件と、前記第2アノード口部を前記水の入口とし、前記第1アノード口部を前記水の出口とする第2条件とを切替えさせることにより、前記水の流れ方向を前記アノード第1方向と、前記アノード第2方向と、に切替え、
前記第1温度測定部および前記第2温度測定部による測定結果を用いて、前記第1アノード口部の温度と、前記第2アノード口部の温度と、が時間的に略均一になるように、前記アノード室の前記水の流れ方向を切り替える、
水電解システムの制御方法。
【請求項10】
水電解方法であって、
アノードと、アノード室と、カソードと、カソード室と、を備え、水を電気分解することで、前記アノードで酸素を生成し、前記カソードで水素を生成する水電解槽に対して、
前記水電解槽の前記アノード室内を、アノード第1方向に流れるように、前記水を供給する第1水供給工程と、
前記水電解槽に対して、前記水電解槽の前記アノード室内を、前記アノード第1方向と略逆方向のアノード第2方向に流れるように前記水を供給する第2水供給工程と、を備え、
前記水電解槽は、
前記水が入出する第1アノード口部と、
前記第1アノード口部に対して、前記アノード室を介して略対向する位置に配置され、前記水が入出する第2アノード口部と、
を備え、
前記第1水供給工程において、前記第1アノード口部を前記水の入口とし、前記第2アノード口部を前記水の出口とする方向を前記アノード第1方向とし、
前記第2水供給工程において、前記第2アノード口部を前記水の入口とし、前記第1アノード口部を前記水の出口とする方向を前記アノード第2方向とし、
前記第1アノード口部の温度と、前記第2アノード口部の温度と、が時間的に略均一になるように、前記アノード室の前記水の流れ方向を切り替える、
水電解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水の電気分解によって水素と酸素を生成する水電解槽を備える水電解システムが知られている。水の電気分解には過電圧が必要であるため、水電解槽において発熱が生じる。複数の水電解セルが互いに積層された水電解槽を備える水電解システムにおいて、水電解槽の運転時において、複数の水電解セルにおける積層方向の中央部に位置する水電解セルが端部に位置する水電解セルよりも高温になり易いという問題がある。これに対し、水電解槽の各セルへの供給水量が一定となるように設計することにより、複数の水電解セルの間の温度差を小さくする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-123899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水電解システムにおいて、水電解槽に対して比較的低温の水が供給されると、上述の通り、水電解における過電圧により発熱するため、水電解セル内では、水の流れの下流ほど水温が高くなる。水電解セル内において、このような温度分布が生じると、高温部分において電極触媒が溶出し、耐久性が低下する虞がある。特許文献1記載の技術によれば、複数の水電解セル間の温度差を小さくすることができるものの、各水電解セル内での温度分布(温度差)は回避できない。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、水電解システムにおいて、水電解セル(水電解槽)内の温度分布(温度差)を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、水電解システムが提供される。この水電解システムは、アノードと、アノード室と、カソードと、カソード室と、を備え、水を電気分解することで、前記アノードで酸素を生成し、前記カソードで水素を生成する水電解槽と、前記水電解槽の前記アノード室内を、アノード第1方向に流れるように前記水を供給可能であり、かつ、前記アノード第1方向と略逆方向のアノード第2方向に流れるように前記水を供給可能である、水供給部と、前記水供給部を制御して、前記水電解槽の前記アノード室における前記水の流れ方向を、前記アノード第1方向と、前記アノード第2方向と、に切替える制御部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、アノード室内の水の流れ方向を、アノード第1方向と、アノード第1方向と略逆方向のアノード第2方向に切替えることができる。水電解では、過電圧や電流集中により、発熱が生じるため、アノード室の水温が上昇するものの、アノード室内の水の流れが変更されることにより、供給水による冷却と温度上昇がバランスして、アノード室内の温度差が抑制され、局所的な高温部の形成が抑制される。そのため、アノード室内の水の温度上昇によるアノード触媒の腐食を抑制することができ、水電解システムの耐久性を向上させることができる。
【0009】
(2)上記形態の水電解システムであって、前記水電解槽は、前記水が入出する第1アノード口部と、前記第1アノード口部に対して、前記アノード室を介して略対向する位置に配置され、前記水が入出する第2アノード口部と、を備え、前記制御部は、前記第1アノード口部を前記水の入口とし、前記第2アノード口部を前記水の出口とする第1条件と、前記第2アノード口部を前記水の入口とし、前記第1アノード口部を前記水の出口とする第2条件とを切替えさせることにより、前記水の流れ方向を前記アノード第1方向と、前記アノード第2方向と、に切替えさせてもよい。このようにすると、水の流れ方向を、容易に、アノード第1方向と、アノード第2方向とに、切替えることができる。
【0010】
(3)上記形態の水電解システムであって、前記制御部は、前記アノード室の前記水の流れ方向を、時間に応じて切り替えてもよい。このようにすると、アノード室内の流れ方向の切替の制御を簡単にすることができ、演算資源を小さくすることができる。そのため、水電解システムの構成の簡易化、小型化に資することができる。
【0011】
(4)上記形態の水電解システムであって、前記第1アノード口部内の温度を測定する第1温度測定部と、前記第2アノード口部内の温度を測定する第2温度測定部と、を、さらに備え、前記制御部は、前記第1温度測定部および前記第2温度測定部による測定結果を用いて、前記第1アノード口部の温度と、前記第2アノード口部の温度と、が時間的に略均一になるように、前記アノード室の前記水の流れ方向を切り替えてもよい。このようにすると、より精度よく、アノード室内の温度差を抑制することができる。
【0012】
(5)上記形態の水電解システムであって、前記アノード室の内部の温度を測定する内部温度測定部を、さらに備え、前記制御部は、前記内部温度測定部による測定結果を用いて、前記アノード室の内部の温度が時間的に略均一になるように、前記アノード室の前記水の流れ方向を切り替えてもよい。このようにしても、より精度よく、アノード室内の温度差を抑制することができる。
【0013】
(6)上記形態の水電解システムであって、前記水電解槽の前記カソード室内を、カソード第1方向に流れるように、前記カソードで生成された水素を排出させることが可能であり、かつ、前記カソード第1方向と略逆方向のカソード第2方向に流れるように前記水素を排出させることが可能である、水素排出部を備え、前記制御部は、前記水素排出部を制御して、前記水電解槽の前記カソード室における前記水素の流れ方向を、前記カソード第1方向と、前記カソード第2方向と、に切替えてもよい。このようにすると、水電解槽のカソード側においても、カソード室内を、水素がカソード第1方向と、カソード第1方向と略逆方向のカソード第2方向と、に切替えることができる。そのため、カソード室内の温度差が抑制され、カソード触媒の腐食も抑制することができる。
【0014】
(7)上記形態の水電解システムであって、前記アノード室の前記水の流れ方向と、前記カソード室の前記水素の流れ方向は、対向していてもよい。このようにすると、アノード室の温度分布とカソード室の温度分布が逆になり、アノード室とカソード室との間で熱交換が行われることにより、効率よくアノード室およびカソード室の温度差を抑制することができる。
【0015】
(8)上記形態の水電解システムであって、前記制御部は、前記アノード室の前記水の流れ方向の切替と、前記カソード室の前記水素の流れ方向の切替と、を同期させてもよい。このようにすると、さらに効率よく、アノード室およびカソード室の温度差を抑制することができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、水電解システムの制御方法、水電解方法、水電解システムの制御をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム、コンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の水電解システムの概略構成を示す説明図である。
図2】水電解槽の概略構成を概念的に示す説明図である。
図3】第1実施形態の水電解処理を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態の水電解処理のステップS104~S106における水の流通状態を示す説明図である。
図5】第1実施形態の水電解処理のステップS110~S112における水の流通状態を示す説明図である。
図6】アノード室内の温度分布を概念的に示す説明図である。
図7】第2実施形態における水電解システムの概略構成を示す説明図である。
図8】第3実施形態における水電解システムの概略構成を示す説明図である。
図9】第4実施形態における水電解システムの概略構成を示す説明図である。
図10】第5実施形態の水電解槽におけるアノード口部の配置と流路内温度分布を概念的に示す説明図である。
図11】第6実施形態の水電解槽におけるアノード口部の配置と流路内温度分布を概念的に示す説明図である。
図12】第7実施形態の水電解槽におけるアノード口部の配置と流路内温度分布を概念的に示す説明図である。
図13】第8実施形態の水電解槽におけるアノード口部の配置と流路内温度分布を概念的に示す説明図である。
図14】第9実施形態の水電解システムの概略構成を示す説明図である。
図15】第9実施形態おけるアノード口部の選択条件の切替処理を示すフローチャートである。
図16】第10実施形態の水電解システムの概略構成を示す説明図である。
図17】第10実施形態の水電解システムの概略構成を示す説明図である。
図18】第10実施形態におけるアノード口部の条件の切替処理を示すフローチャートである。
図19】第10実施形態におけるアノード口部の条件の切替処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の水電解システム100の概略構成を示す説明図である。本実施形態の水電解システム100では、水電解槽10において水を電気分解することで酸素と水素を生成する。水電解システム100は、水電解槽10と、水供給部20と、酸素排出部40と、水素排出部50と、制御部30と、を備える。
【0019】
図2は、水電解槽10の概略構成を概念的に示す説明図である。水電解槽10は、PEM(Polymer Electrolyte Membrane:固体高分子電解質膜)型水電解槽であって、膜電極接合体(以下、「MEA」という)11を有する。MEA11は、プロトン(H+)と水を通すことが可能な電解質膜11aの両面に、水を分解し酸素とプロトン(水素イオン)を生成するアノード11bと、水素イオンから水素を生成するカソード11cと、が接合されたものである。本実施形態において、水電解槽10は、複数の水電解セルを直列に積層した複極式電解モジュールである。水電解槽10では、MEA11と電極板14(「複極板」ともいう)で仕切られたアノード室12とカソード室が交互に並ぶ。アノード室12およびカソード室13内には、溝や多孔質部材の細孔などの流路が形成されている。また、アノード室12およびカソード室13内には、金属メッシュ等の給電体が設けられている。
【0020】
アノード室12には、第1アノード口部121と第2アノード口部122が形成されており、第1アノード口部121には第1流路61が接続され、第2アノード口部122には第2流路62が接続されている。一方、カソード室13には第1カソード口部131と第2カソード口部132が形成されており、第1カソード口部131には第1カソード流路51が接続されており、第2カソード口部132には第2カソード流路52が接続されている。各流路については、後述する。
【0021】
水電解槽10の両端には、端子電極15が設けられている。二つの端子電極15には、電源19が接続されており、水電解槽10に電力を供給することができる。
【0022】
水電解槽10では、水供給部20が供給する水がアノード室12を流れている状態において、電源19から電力が供給されると、アノード11bにおいて水が電気分解され、酸素と水素イオンが生成される。生成された酸素は、電気分解されなかった水の一部とともに酸素排出部40に排出される(図1)。アノード11bで生成された水素イオンは、水(随伴水)とともに、アノード室12からカソード室13に移動し、カソード11cにおいて電子と結合することで水素になる。カソード11cにおいて生成された水素は、電解質膜を透過した透過水、および随伴水とともに、水素排出部50に排出される。
【0023】
水供給部20は、水電解槽10(図1)のアノード室12(図2)に水を供給する。水供給部20は、水タンク21と、第1供給路22と、第2供給路23と、三方弁26と、第3供給路24と、供給ポンプ25と、を備える。第1供給路22は、アノード室12の第1アノード口部121(図2)に第1流路61を介して接続され、第2供給路23は、アノード室12の第2アノード口部122に第2流路62を介して接続されている。第3供給路24は、水タンク21に接続されるとともに、第1供給路22および第2供給路23と、三方弁26を介して接続されている。供給ポンプ25は、第3供給路24上に配置され、水タンク21内の水を水電解槽10に供給する。
【0024】
本実施形態において、水タンク21には、不純物が少ない純度が高められた純水が貯留されている。そのため、本実施形態の水電解システム100では、水素と酸素を効率的にかつ高純度で生成することができる。他の実施形態では、水タンク21に貯留される水は、純水でなくてもよい。
【0025】
三方弁26は、制御部30からの指示に従い、第3供給路24の接続先を、第1供給路22と第2供給路23との間で切替える。第3供給路24と第1供給路22とが接続されると、水タンク21内の水は、第3供給路24、第1供給路22、第1流路61を介して水電解槽10のアノード室12に供給される(図1において、水の流れを破線矢印で示している)。一方、第3供給路24と第2供給路23とが接続されると、水は、第3供給路24、第2供給路23、第2流路62を介して水電解システム100に供給される(図1において、水の流れを一点鎖線矢印で示している)。本実施形態における三方弁26を、「供給切替部」とも呼ぶ。
【0026】
酸素排出部40は、水電解槽10において生成された酸素を、未反応の水と共に水電解槽10から排出させる。以降、水電解槽10において生成された酸素を含む未反応の水を、「含酸素水」とも呼ぶ。酸素排出部40は、第1排出路41と、第2排出路42と、三方弁44と、第3排出路43と、を備える。第1排出路41は、アノード室12の第1アノード口部121に第1流路61を介して接続され、第2排出路42は、アノード室12の第2アノード口部122に第2流路62を介して接続されている。第3排出路43は、第1排出路41および第2排出路42と三方弁44を介して接続されている。
【0027】
三方弁44は、制御部30からの指示に従い、第3排出路43の接続先を、第1排出路41と第2排出路42との間で切替える。第3排出路43と第1排出路41とが接続されると、含酸素水は、第1流路61、第1排出路41、および第3排出路43を流れる(図1において、含酸素水の流れを一点鎖線矢印で示している)。一方、第3排出路43と第2排出路42とが接続されると、含酸素水は、第2流路62、第2排出路42、および第3排出路43を流れる(図1において、含酸素水の流れを破線矢印で示している)。本実施形態における三方弁44を、「排出切替部」とも呼ぶ。
【0028】
本実施形態において、三方弁26と三方弁44とは、連動して制御され、第3供給路24と第1供給路22とが接続されるとき、第3排出路43と第2排出路42とが接続される。すなわち、水タンク21内の水が、第3供給路24、第1供給路22、第1流路61を介して水電解槽10に供給されると、水電解槽10において生成された酸素と共に、供給された水の一部が、第2流路62、第2排出路42、および第3排出路43を流れる。このとき、水電解槽10のアノード室12(図2)内を、水が第1アノード口部121から第2アノード口部122の方向に流れる。本実施形態において、アノード室12における第1アノード口部121から第2アノード口部122への水の流れ方向を「アノード第1方向DA1」といい、図2において破線矢印で図示している。
【0029】
一方、第3供給路24と第2供給路23とが接続されるとき、第3排出路43と第1排出路41とが接続される。すなわち、水タンク21内の水が、第3供給路24、第2供給路23、第2流路62を介して水電解槽10に供給されると、水電解槽10において生成された酸素と共に、供給された水の一部が、第1流路61、第1排出路41、および第3排出路43を流れる。このとき、水電解槽10のアノード室12(図2)内を、水が第2アノード口部122から第1アノード口部121の方向に流れる。本実施形態において、アノード室12における第2アノード口部122から第1アノード口部121への水の流れ方向を「アノード第2方向DA2」といい、図2において一点鎖線矢印で図示している。
【0030】
水素排出部50は、水電解槽10において生成された水素を、未反応の水(随伴水、透過水)と共に水電解槽10から排出させる。以降、水電解槽10において生成された水素を含む未反応の水(随伴水、透過水)を、「含水素水」とも呼ぶ。水素排出部50は、第1カソード流路51と、第2カソード流路52と、三方弁54と、第3カソード流路53と、を備える。第1カソード流路51は、カソード室13の第1カソード口部131に接続され、第2カソード流路52は、カソード室13の第2カソード口部132に接続されている。第3カソード流路53は、第1カソード流路51および第2カソード流路52と三方弁54を介して接続されている。以降の説明において、「含酸素水」および「含水素水」を、単に「水」とも呼ぶ。
【0031】
三方弁54は、制御部30からの指示に従い、第3カソード流路53の接続先を、第1カソード流路51と第2カソード流路52との間で切替える。第3カソード流路53と第1カソード流路51とが接続されると、含水素水は、第1カソード流路51および第3カソード流路53を流れる(図1において、含水素水の流れを破線矢印で示している)。このとき、カソード室13内の含水素水は、第2カソード口部132(図2)から第1カソード口部131へ向かう方向に流れる。換言すると、カソード11cで生成された水素は、第2カソード口部132から第1カソード口部131へ向かう方向に流れる。本実施形態において、第2カソード口部132から第1カソード口部131へ向かう方向を「カソード第1方向DC1」といい、図2において破線矢印で図示している。本実施形態における三方弁54を、「カソード切替部」とも呼ぶ。
【0032】
一方、第3カソード流路53(図1)と第2カソード流路52とが接続されると、含水素水は、第2カソード流路52および第3カソード流路53を流れる(図1において、含水素水の流れを一点鎖線矢印で示している)。このとき、カソード室13内の含水素水は、第1カソード口部131(図2)から第2カソード口部132へ向かう方向に流れる。換言すると、カソード11cで生成された水素は、第1カソード口部131から第2カソード口部132へ向かう方向に流れる。本実施形態において、第1カソード口部131から第2カソード口部132へ向かう方向を「カソード第2方向DC2」といい、図2において一点鎖線矢印で図示している。
【0033】
本実施形態において、三方弁54は、三方弁26と連動して制御される。第3供給路24と第1供給路22とが接続されるとき、第1カソード流路51と第3カソード流路53とが接続される。すなわち、水電解槽10のアノード室12(図2)内を、水が第1方向DA1に流れるとき、水電解槽10のカソード室13内を、含水素水がカソード第1方向DC1に流れる(図2において破線矢印で図示)。一方、第3供給路24と第2供給路23とが接続されるとき、第2カソード流路52と第3カソード流路53とが接続される。すなわち、水電解槽10のアノード室12(図2)内を、水がアノード第2方向DA2に流れるとき、水電解槽10のカソード室13内を、含水素水がカソード第2方向DC2に流れる(図2において一点鎖線矢印で図示)。このように、本実施形態の水電解システム100では、アノード室12内の水の流れとカソード室13内の水の流れは、対向している。
【0034】
制御部30は、水電解システム100の全体の制御を行う電子装置であり、例えば中央演算装置(CPU)であってもよい。制御部30は、3個の三方弁26、44、54と電気的に接続され、各三方弁の切替え制御を行う。
【0035】
図2図5を用いて、第1実施形態の制御部30の各三方弁の切替えを含む水電解処理について説明する。図3は、第1実施形態の水電解処理を示すフローチャートである。図4は、第1実施形態の水電解処理のステップS104~S106における水の流通状態を示す説明図である。図5は、第1実施形態の水電解処理のステップS110~S112における水の流通状態を示す説明図である。本実施形態の水電解処理では、後述するように、水が水電解槽10内をアノード第1方向DA1に流れるように、水を供給する処理と、水が水電解槽10内をアノード第2方向DA2に流れるように、水を供給する処理と、を交互に繰り返す。
【0036】
水電解システム100が起動され、水電解処理開始の指示が入力されると、図3に示すように、制御部30は、時刻T=0に設定する(ステップS102)。次に、制御部30は、水電解槽10のアノード室12内をアノード第1方向DA1(図2において、破線矢印で図示)に水が流れるように、各三方弁を設定し、純水を供給させる(ステップS104)。具体的には、制御部30は、三方弁26(図4)を介して第3供給路24と第1供給路22を接続させ、三方弁44を介して第2排出路42と第3排出路43を接続させ、三方弁54を介して第1カソード流路51と第3カソード流路53を接続させる。そして、制御部30は、供給ポンプ25を制御して、水タンク21から水電解槽10へ純水を供給させると共に、電源19(図2)を制御して、水電解槽10に電力を供給させる。ステップS104の工程を、「第1水供給工程」とも呼ぶ。
【0037】
図4において、ステップS104における水(純水、含酸素水、および含水素水)の流れを、破線矢印で示す。ステップS104の処理によって、純水は、第3供給路24、第1供給路22、第1流路61を通って、水電解槽10のアノード室12の第1アノード口部121(図2)から水電解槽10のアノード室12に供給される。そして、水の電気分解によって生成された酸素を含む水である含酸素水が、水電解槽10のアノード室12中をアノード第1方向DA1に流れて、第2アノード口部122を介して第2流路62に出る(図2)。第2流路62(図4)に出てきた含酸素水は、第2排出路42、第3排出路43を流れる。すなわち、制御部30は、ステップS104において、第1アノード口部121を水の入口とし、第2アノード口部122を水の出口とする第1条件に設定して、水電解システム100を運転する。
【0038】
一方、ステップS104の処理によって、水電解槽10のカソード11cで生成された水素を含む水(随伴水、透過水)である含水素水は、水電解槽10のカソード室13(図2)内を、カソード第1方向DC1に流れ、第1カソード口部131を介して第1カソード流路51に出る。第1カソード流路51(図4)に出てきた含水素水は、第1カソード流路51、第3カソード流路53を流れる。
【0039】
図3に示すように、制御部30は、時刻TがT11になるまで水電解槽10のアノード室12内の水の流れがアノード第1方向DA1、カソード室13内の水の流れがカソード第1方向DC1になるように、水を供給させ続け(ステップS106:NO)、時刻TがT11になると、時刻T=0に設定して(ステップS108)、ステップS110へ進む(ステップS106:YES)。T11は、任意に設定することができる。
【0040】
ステップS110において、制御部30は、水電解槽10のアノード室12内をアノード第2方向DA2(図2において、一点鎖線矢印で図示)に水が流れるように、各三方弁を設定し、純水を供給させる。具体的には、制御部30は、三方弁26(図5)を介して第3供給路24と第2供給路23を接続させ、三方弁44を介して第1排出路41と第3排出路43を接続させ、三方弁54を介して第2カソード流路52と第3カソード流路53を接続させる。そして、制御部30は、供給ポンプ25を制御して、水タンク21から水電解槽10へ純水を供給させると共に、電源19(図2)を制御して、水電解槽10に電力を供給させる。ステップS110の工程を、「第2水供給工程」とも呼ぶ。
【0041】
図5において、ステップS110における水(純水、含酸素水、および含水素水)の流れを、一点鎖線矢印で示す。ステップS110の処理によって、純水は、第3供給路24、第2供給路23、第2流路62を通って、水電解槽10のアノード室12の第2アノード口部122(図2)から水電解槽10のアノード室12に供給される。そして、含酸素水が、水電解槽10のアノード室12中をアノード第2方向DA2に流れて、第1アノード口部121を介して第1流路61に出る(図2)。第1流路61(図5)に出てきた含酸素水は、第1排出路41、第3排出路43を流れる。すなわち、制御部30は、ステップS110において、第2アノード口部122を水の入口とし、第1アノード口部121を水の出口とする第2条件に設定して、水電解システム100を運転する。
【0042】
一方、ステップS110の処理によって、含水素水は、水電解槽10のカソード室13(図2)内を、カソード第2方向DC2に流れ、第2カソード口部132を介して第2カソード流路52に出る。第2カソード流路52(図5)に出てきた含水素水は、第2カソード流路52、第3カソード流路53を流れる。
【0043】
図3に示すように、制御部30は、時刻TがT12になるまで水電解槽10のアノード室12内の水の流れがアノード第2方向DA2、カソード室13内の水の流れがカソード第2方向DC2になるように、水を供給させ続け(ステップS112:NO)、時刻TがT12になると、ステップS102へ戻る(ステップS112:YES)。T12は、任意に設定することができる。T11と、T12を、同じ時間(例えば、それぞれ、3分)に設定してもよい。また、T11とT12を異なる時間に設定してもよい。水電解システム100は、水電解処理の終了指示が入力されるまで、ステップS102~S112を、繰り返し実行する。
【0044】
上述の水電解処理を実現するプログラムは、制御部30に、予め記憶されていてもよい。また、プログラムはプログラム提供者側から通信ネットワークを介して、提供されてもよい。また、プログラムは、市販され、流通している可搬型記憶媒体に格納されていてもよい。この場合、この可搬型記憶媒体は外付け又は内蔵の読取装置にセットされて、制御部30によってそのプログラムが読み出されて、実行されてもよい。可搬型記憶媒体としてはCD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、USBメモリ装置など様々な形式の記憶媒体を使用することができる。このような記憶媒体に格納されたプログラムが読取装置によって読み取られる。
【0045】
図6は、アノード室12内の温度分布を概念的に示す説明図である。図6では、温度の高低を色の濃淡で示しており、温度が高い部分を濃く、温度が低い部分を薄く示している。また、図中、矢印は水の流通方向を示す。図6(A)、(E)、および(F)は、水がアノード第1方向DA1(図2)に流れている際の温度分布を示し、図6(B)、(C)、および(D)は、水がアノード第2方向DA2(図2)に流れている際の温度分布を示す。白抜き矢印は低温水を示し、黒塗り矢印は高温水を示し、グレーの矢印は中温水を示す。
【0046】
水電解システム100において水電解処理が開始され、水電解槽10のアノード室12内を水がアノード第1方向DA1(図2)に流れるように水が供給されるとき(図4破線矢印)、低温水が供給される(図6(A))。ここで、低温水は、水タンク21から供給される水であり、所定の低温になっている。水電解槽10に電力が供給され、水電解が行われるとき、電解反応には過電圧が必要であるため、発熱が生じる。また、水電解槽10において、給電体として金属メッシュ等が用いられる場合には導電断面積が小さくなるため、高出力で電解させようとすると局所的な電流集中が生じ、ジュール熱が発生する。そのため、アノード室12における水の流れの後流側で温度が上昇し、アノード室12内は、水の流れに沿って温度が高くなる温度分布が生じ、高温水が排出される(図6(A))。
【0047】
アノード第1方向DA1の水の供給を所定の時間(本実施形態ではT11)行った後、水の供給方向をアノード第2方向DA2(図2)に切替えたとき(図5一点鎖線矢印)、第2流路62(図5)内に、高温水が残っているため、最初は高温水が供給される(図6(B))。そのため、水の供給方向を切り替えた直後は、アノード室12内の温度分布は略変わらない。アノード第2方向DA2の水の供給を続けていると、図6(C)に示すように、低温水の供給によりアノード室12内の温度が略均一化され、低温水と高温水の間の温度の中温水が排出される。その後さらに、アノード第2方向DA2の水の供給を続けていると、アノード室12内は、水の流れに沿って温度が高くなる温度分布が生じる(図6(D))。
【0048】
アノード第2方向DA2の水の供給を所定の時間(本実施形態ではT12)行った後、水の供給方向をアノード第1方向DA1(図2)に切替えたとき(図4)、第1流路61内に、高温水が残っているため、最初は高温水が供給される(図6(E))。そのため、水の供給方向を切り替えた直後は、アノード室12内の温度分布は略変わらない。アノード第1方向DA1の水の供給を続けていると、図6(F)に示すように、低温水の供給によりアノード室12内の温度が略均一化され、中温水が排出される。
【0049】
このように、水電解槽10のアノード室12への水の供給方向を一定周期で切り替えることにより、アノード室12内の温度分布を均一化することができる。なお、図6に示したようなアノード室12内の温度分布の変化を、予め、実験的に測定し、アノード室12内の温度分布が均一になる時間が長くなるように、供給方向の切替タイミングであるT11、およびT12を決定することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の水電解システム100は、水電解槽10のアノード室12内の水の流れを、アノード第1方向DA1と、アノード第1方向DA1と略逆方向のアノード第2方向DA2と、に切替え可能に構成されている。そして、制御部30は、水電解処理において、ステップS104~S106では、水電解槽10のアノード室12内をアノード第1方向DA1に流れるように水を供給させ、ステップS110~S112では、水電解槽10のアノード室12内をアノード第2方向DA2に流れるように、水を供給させている。
【0051】
上述の通り、水電解では、過電圧や電流集中により、発熱が生じる。アノード室12内の水が高温になると、PH(水素イオン指数)が上がり、アノード触媒が溶出する虞がある。また、アノード室12内の水が高温になると、金属メッシュ等の給電体の電気伝導度が上昇し、さらなる電流集中により酸化が生じやすくなり、給電体の腐食が生じる虞もある。これに対し、本実施形態の水電解システム100によれば、上述の通り、アノード室12内をアノード第1方向DA1と、アノード第2方向DA2のいずれにも流れるように、水を供給可能に構成されている。そして、周期的に水の供給方向を交互に変動させることにより、供給水による冷却と温度上昇がバランスして、アノード室12内の温度分布が均一化される。その結果、アノード室12に局所的な高温がなくなるため、アノード触媒や給電体の腐食(酸化)を抑制することができる。また、仮に、アノード触媒や給電体の腐食が生じたとしても、低いレベルで均一にできる。そのため、水電解システム100の耐久性を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態の水電解システム100では、水電解槽10のカソード側においても、カソード室13内を、含水素水がカソード第1方向DC1と、カソード第1方向DC1と略逆方向のカソード第2方向DC2と、に切替え可能に構成されている。そして、制御部30は、水電解処理において、ステップS104~S106では、水電解槽10のカソード室13内をカソード第1方向DC1に流れるように三方弁54を制御し、ステップS110~S112では、水電解槽10のカソード室13内をカソード第2方向DC2に流れるように、三方弁54を制御している。そのため、カソード室13内の温度差が抑制され、カソード触媒の腐食(酸化)も抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態の水電解システム100では、水電解槽10のアノード室12(図2)内を、水がアノード第1方向DA1に流れるとき、水電解槽10のカソード室13内を、水がカソード第1方向DC1に流れる(図2において破線矢印で図示)ように、3つの三方弁26、44、54が制御される。一方、水電解槽10のアノード室12内を、水がアノード第2方向DA2に流れるとき、水電解槽10のカソード室13内を、水がカソード第2方向DC2に流れる(図2において一点鎖線矢印で図示)ように、3つの三方弁26、44、54が制御される。図2に示すように、アノード第1方向DA1とカソード第1方向DC1は、略逆方向であり、アノード第2方向DA2とカソード第2方向DC2は、略逆方向である。すなわち、アノード室12の水の流れ方向と、カソード室13の水の流れ方向は、対向している。また、上述の通り、アノード室の水の流れ方向の切替と、カソード室の水の流れ方向の切替と、が同期している。そのため、アノード室12の温度分布とカソード室13の温度分布が逆になり、アノード室12とカソード室13との間で熱交換が行われることにより、効率よくアノード室12およびカソード室13内の温度差を抑制することができる。
【0054】
本実施形態では、制御部30は、アノード室12の水の流れ方向を、時間に応じて切り替えている。そのため、例えば、アノード室12の温度差に応じてアノード室12の水の流れ方向を切替える構成と比較して、流れ方向の切替の制御を簡単にすることができ、演算資源を小さくすることができる。また、アノード室12の温度差に応じて制御する場合と比較すると、温度センサを要さないため、水電解システムの部品点数の増加を抑制することができるため、システムの複雑化の抑制、小型化、コスト低減に資することができる。
【0055】
本実施形態の水電解システム100では、第1供給路22と第1排出路41とが第1流路61を介してアノード室12の第1アノード口部121に接続されており、第2供給路23と第2排出路42とが第2流路62を介してアノード室12の第2アノード口部122に接続されている。すなわち、第1流路61および第2流路62は、供給路として機能すると共に排出路としても機能している。そのため、省スペース化することができ、水電解システム100の小型化に資することができる。
【0056】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態における水電解システム100Aの概略構成を示す説明図である。水電解システム100Aが第1実施形態の水電解システム100と異なる点は、カソード切替部を備えない点と、供給切替部および排出切替部の構成が異なる点である。第1実施形態と同一の構成には、同一の符号を付して、先行する説明を参照する。
【0057】
本実施形態の水電解システム100Aは、供給切替部として、開閉弁27および開閉弁28を備える。また、排出切替部として、開閉弁45および開閉弁46を備える。また、水素排出部50Aは、カソード切替部を備えないため、カソード室13の水の流れ方向は変更されず、一定である。本実施形態では、例えば、カソード室13内をカソード第2方向DC2(図2)に水が流れる。
【0058】
水供給部20Aは、水タンク21と、第1供給路22と、第1供給路22上に設けられた開閉弁27と、第2供給路23と、第2供給路23上に設けられた開閉弁28と、第1供給路22および第2供給路23に接続された第3供給路24と、供給ポンプ25と、を備える。
【0059】
酸素排出部40Aは、第1排出路41と、第1排出路41上に設けられた開閉弁45と、第2排出路42と、第2排出路42上に設けられた46と、第1排出路41および第2排出路42に接続された第3排出路43と、を備える。
【0060】
本実施形態の水電解システム100Aにおける水電解処理では、第1実施形態におけるステップS104(図3)において、制御部30は、開閉弁27を開、開閉弁28を閉にすると共に、開閉弁45を閉、開閉弁46を開にする。これにより、図3に示すステップS106~S108の間、図7に破線で示す流路で水が流れ、第1実施形態と同様に、水電解槽10のアノード室12(図2)内をアノード第1方向DA1(図2において、破線矢印で図示)に水が流れる。このとき、上述の通り、カソード室13内ではカソード第2方向DC2(図2)に水が流れる。
【0061】
また、本実施形態では、第1実施形態におけるステップS110(図3)において、制御部30は、開閉弁27を閉、開閉弁28を開にすると共に、開閉弁45を開、開閉弁46を閉にする。これにより、図3に示すステップS110~S112の間、図7に一点鎖線で示す流路で水が流れ、第1実施形態と同様に、水電解槽10のアノード室12(図2)内をアノード第2方向DA2(図2において、一点鎖線矢印で図示)に水が流れる。このとき、上述の通り、カソード室13内では、カソード第2方向DC2(図2)に水が流れる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の水電解システム100Aによっても、周期的にアノード室12の水の流れ方向を交互に変えることができるため、アノード室12内の温度分布を均一化することができる。その結果、アノード触媒の腐食(酸化)を抑制することができ、水電解システム100Aの耐久性を向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態の水電解システム100Aによれば、供給切替部および排出切替部として、それぞれ、2つの開閉弁を用いている。そのため、供給切替部および排出切替部を水電解槽10の近くに設けることができる。水電解槽10へ供給した水は、電解反応後、気体の酸素を伴って水電解槽10から出てくる。水電解槽10から開閉弁までの配管が長いと、開閉弁の開閉の切替時に配管内に残存する酸素の体積が大きくなる。気体は圧縮性を有しているため、配管内に残存する酸素の体積が大きくなると、その分圧縮性の容量が増える。開閉弁の切替により、水電解槽10の水の出口が入口に切替わった際、供給圧と配管内の酸素の圧縮性がバランスするまでは、開閉弁側に水が流れることになり、一時的に、水電解槽10へ供給される水量が低下する虞がある。本実施形態の水電解システム100Aでは、水電解反応を継続したまま、換言すると、発熱を継続したまま、水の経路の切替を行うため、一定の流量で水が供給されることが好ましい。本実施形態の水電解システム100Aによれば、水電解槽10と開閉弁との距離を、第1実施形態の水電解システム100より短くしているため、配管内の酸素の量を減少させることができ、水電解槽10への水の早期定量供給が可能になる効果が期待できる。また、本実施形態の水電解システム100Aによれば、圧縮性容量を減少させることができるため、水電解槽10の水の出口と入口とを切替える時の圧力変動を抑制することができる。その結果、水電解槽10へ供給される水の流量の一定制御を良好に行うことができる。
【0064】
<第3実施形態>
図8は、第3実施形態における水電解システム100Bの概略構成を示す説明図である。水電解システム100Bが第1実施形態の水電解システム100と異なる点は、カソード切替部を備えない点と、排出切替部の構成が異なる点である。第1、2実施形態と同一の構成には、同一の符号を付して、先行する説明を参照する。
【0065】
本実施形態の水電解システム100Bは、排出切替部として、開閉弁45および開閉弁46を備える。すなわち、本実施形態の水電解システム100Bにおける酸素排出部40Aおよび水素排出部50Aは、第2実施形態と同一である。
【0066】
本実施形態の水電解システム100Bにおける水電解処理では、第1実施形態におけるステップS104(図3)において、制御部30は、三方弁26(図8)を介して第3供給路24と第1供給路22を接続させると共に、開閉弁45を閉、開閉弁46を開にする。これにより、図3に示すステップS106~S108の間、図8に破線で示す流路で水が流れ、第1実施形態と同様に、水電解槽10のアノード室12(図2)内をアノード第1方向DA1(図2において、破線矢印で図示)に水が流れる。このとき、カソード室13内では、カソード第2方向DC2(図2)に水が流れる。
【0067】
また、本実施形態では、第1実施形態におけるステップS110(図3)において、制御部30は、三方弁26(図8)を介して第3供給路24と第2供給路23を接続させると共に、開閉弁45を開、開閉弁46を閉にする。これにより、図3に示すステップS110~S112の間、図8に一点鎖線で示す流路で水が流れ、第1実施形態と同様に、水電解槽10のアノード室12(図2)内をアノード第2方向DA2(図2において、一点鎖線矢印で図示)に水が流れる。このとき、カソード室13内では、カソード第2方向DC2(図2)に水が流れる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の水電解システム100Bによっても、周期的にアノード室12の水の流れ方向を交互に変えることができるため、アノード室12内の温度分布を均一化することができる。その結果、アノード触媒の腐食(酸化)を抑制することができ、水電解システム100Bの耐久性を向上させることができる。
【0069】
<第4実施形態>
図9は、第4実施形態における水電解システム100Cの概略構成を示す説明図である。水電解システム100Cが第1実施形態の水電解システム100と異なる点は、排出切替部およびカソード切替部の構成が異なる点である。第1~3実施形態と同一の構成には、同一の符号を付して、先行する説明を参照する。
【0070】
本実施形態の水電解システム100Cは、排出切替部として、開閉弁45および開閉弁46を備え、カソード切替部として開閉弁55と開閉弁56とを備える。すなわち、本実施形態の水電解システム100Cにおける酸素排出部40Aは、第2実施形態と同一である。
【0071】
水素排出部50Cは、第1カソード流路51と、第1カソード流路51上に設けられた開閉弁55と、第2カソード流路52と、第2カソード流路52上に設けられた開閉弁56と、第1カソード流路51および第2カソード流路52に接続された第3カソード流路53と、を備える。
【0072】
本実施形態の水電解システム100Cにおける水電解処理では、第1実施形態におけるステップS104(図3)において、制御部30は、三方弁26(図9)を介して第3供給路24と第1供給路22を接続させると共に、開閉弁45を閉、開閉弁46を開にする。また、制御部30は、開閉弁55を開、開閉弁56を閉にする。これにより、図3に示すステップS106~S108の間、図9に破線で示す流路で水が流れる。すなわち、第1実施形態と同様に、水電解槽10のアノード室12(図2)内をアノード第1方向DA1(図2において、破線矢印で図示)に水が流れ、カソード室13(図2)内をカソード第1方向DC1(図2において、破線矢印で図示)に水が流れる。
【0073】
また、本実施形態では、第1実施形態におけるステップS110(図3)において、制御部30は、三方弁26(図9)を介して第3供給路24と第2供給路23を接続させると共に、開閉弁45を開、開閉弁46を閉にする。また、制御部30は、開閉弁55を閉、開閉弁56を開にする。これにより、図3に示すステップS110~S112の間、図8に一点鎖線で示す流路で水が流れる。すなわち、第1実施形態と同様に、水電解槽10のアノード室12(図2)内をアノード第2方向DA2(図2において、一点鎖線矢印で図示)に水が流れ、カソード室13(図2)内をカソード第2方向DC2(図2において、一点鎖線矢印で図示)に水が流れる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の水電解システム100Cによっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態の水電解システム100Cによれば、カソード切替部としても、2つの開閉弁を用いている。そのため、カソード切替部を水電解槽10の近くに設けることができる。その結果、水電解槽10における水素の出口の切替に伴い、配管内に残存する水素の量を低減することができ、水素の排出を良好にすることができる。
【0075】
<アノード口部の数の検討>
上記実施形態において、アノード室12に対する水の入出口として、2つのポート(第1アノード口部121と第2アノード口部122)を有する例を示したが、アノード口部は、2つ以上であってもよい。2つ以上のアノード口部の配置例と、対応するアノード室内温度(流路内温度)について、図10図13を用いて説明する。図10図13では、図6と同様に、温度の高低を色の濃淡で示しており、温度が高い部分を濃く、温度が低い部分を薄く示している。また、図中、矢印は水の流通方向を示す。白抜き矢印は低温水を示し、黒塗り矢印は高温水を示す。これらの温度は、CAE(Computer Aided Engineering)による解析結果である。上述の通り、アノード室12内には、溝や多孔質部材の細孔などの流路(アノード室内流路とも呼ぶ)が形成されているため、以降の説明において、アノード室内温度として、流路内温度を用いる。
【0076】
<第5実施形態>
図10は、第5実施形態の水電解槽における2つのアノード口部の配置と流路内温度分布を概念的に示す説明図である。本実施形態では、水電解槽は、第1アノード口部121と第2アノード口部122とを有する。アノード室内流路12Fは、平面形状が長方形状であり、対向する第1短辺S1および第2短辺S2の外側に、それぞれ、第1アノード口部121と第2アノード口部122が設けられている。すなわち、第1アノード口部121と第2アノード口部122は、アノード室内流路12F(アノード室12)を介して対向している。図10(A)では、水の流入口として第1アノード口部121が選択され、水の流出口として第2アノード口部122が選択された第1条件で、水電解システムが運転されているときのアノード室内流路12F内の温度分布を示している。アノード室内流路12Fを、「水が流れる流路」とも呼ぶ。
【0077】
図10(B)は、各条件に対するアノード室内流路12F内の温度分布を示している。ここで、T1~T6は、図10(A)に示す位置である。本実施形態において、制御部は、第1アノード口部121を水の入口とし、第2アノード口部122を水の出口とする第1条件と、第2アノード口部122を水の入口とし、第1アノード口部121を水の出口とする第2条件とを切替える。第1条件が選択されているときは、水は、第1アノード口部121から第2アノード口部122へ向かうアノード第1方向に流れ、第2条件が選択されているときは、水は、第2アノード口部122から第1アノード口部121へ向かうアノード第2方向に流れる。図10(B)では、条件を切替える直前の温度分布を示している。以降に説明する実施形態(図11図13)についても同様である。
【0078】
図10(A)に示すように、第1アノード口部121と第2アノード口部122は、それぞれ、第1短辺S1、S2の長さの略真ん中に対応する位置に配置されている。第1条件では、アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第1アノード口部121側の第1短辺S1の近傍(T1、T5、T6)は低温であり、水の流出口である第2アノード口部122側の第2短辺S2に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T2の温度は中高温、T3およびT4の温度は高温である。T2は、第1アノード口部121と第2アノード口部122とを結ぶ直線上にあるため、第1アノード口部121から第2アノード口部122に向かって流れる水の流量が多く、高温の水が滞留しにくいため、T3およびT4より温度が低くなると考えられる。
【0079】
第2条件では、アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第2アノード口部122側の第2短辺S2の近傍(T2、T3、T4)は低温であり、水の流出口である第1アノード口部121側のS1に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T1の温度は中高温、T5およびT6の温度は高温である。T1は、第1アノード口部121と第2アノード口部122とを結ぶ直線状上あるため、第2アノード口部122から第1アノード口部121に向かって流れる水の流量が多く、高温の水が滞留しにくいため、T5およびT6より温度が低くなると考えられる。
【0080】
この例では、第1条件と第2条件とを切替えて、水の流れ方向を切替えている。条件を切替えると、比較的温度が高くなっている(中高温)位置が水の流れの上流になるため、条件を切替えることにより、アノード室内の温度を、略均一にすることができる。図10(B)に示すように、第1条件では、T1の温度が低温、T2の温度が中高温であり、第2条件では、逆に、T2の温度が低温であり、T1の温度が中高温である。すなわち、制御部は、アノード室12の内部の温度が時間的に略均一になるように、アノード室12の水の流れ方向を切り替えている。
【0081】
<第6実施形態>
図11は、第6実施形態の水電解槽における4つのアノード口部の配置と流路内温度分布を概念的に示す説明図である。本実施形態では、水電解槽は、第1アノード口部121と、第2アノード口部122と、第3アノード口部123と、第4アノード口部124と、を有する。アノード室内流路12Fは、第5実施形態と同様に、平面形状が長方形状である。本実施形態では、アノード室内流路12Fに対して、第1アノード口部121と第4アノード口部124が、第1短辺S1の外側に設けられており、第2アノード口部122と第3アノード口部123が、第2短辺S2の外側に設けられている。
【0082】
第1アノード口部121と第2アノード口部122は、アノード室内流路12Fの中心Cに対して点対称の位置に配置されている。すなわち、第1アノード口部121と第2アノード口部122は、アノード室内流路12F(アノード室12)を介して略対向している。同様に、第3アノード口部123と第4アノード口部124も、アノード室内流路12Fの中心Cに対して点対称の位置に配置されている。すなわち、第3アノード口部123と第4アノード口部124も、アノード室内流路12F(アノード室12)を介し略対向している。図11(A)では、水の流入口として第1アノード口部121が選択され、水の流出口として第2アノード口部122が選択された第1条件で、水電解システムが運転されているときのアノード室12内の温度分布を示している。
【0083】
図11(B)は、各条件に対するアノード室内流路12F内の温度分布を示している。ここで、T1~T4は、図11(A)に示す位置である。本実施形態において、制御部は、第1アノード口部121を水の入口とし、第2アノード口部122を水の出口とする第1条件と、第3アノード口部123を水の入口とし、第4アノード口部124を水の出口とする第3条件と、第2アノード口部122を水の入口とし、第1アノード口部121を水の出口とする第2条件と、第4アノード口部124を水の入口とし、第3アノード口部123を水の出口とする第4条件とを、その順に切替える。
【0084】
第1条件が選択されているときは、水は、第1アノード口部121から第2アノード口部122へ向かうアノード第1方向に流れ、第2条件が選択されているときは、水は、第2アノード口部122から第1アノード口部121へ向かうアノード第2方向に流れる。第3条件が選択されているときは、水は、第3アノード口部123から第4アノード口部124へ向かうアノード第3方向に流れ、第4条件が選択されているときは、水は、第4アノード口部124から第3アノード口部123へ向かうアノード第4方向に流れる。アノード第1方向とアノード第2方向とは逆方向であり、アノード第3方向とアノード第4方向とは逆方向である。
【0085】
図11(A)に示すように、第1アノード口部121と第4アノード口部124は、第1短辺S1の両端に対応する位置に配置されており、第2アノード口部122と第3アノード口部123は、第2短辺S2の両端に対応する位置に配置されている。
【0086】
第1条件では、水の流れ方向は、第1アノード口部121から第2アノード口部122へ向かうアノード第1方向である。第1実施形態において図6を用いて説明した通り、水の流れの下流になるに従い温度が高くなる。アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第1アノード口部121の近傍の位置T1の近傍は低温であり、水の流出口である第2アノード口部122の近傍の位置T2に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T1が低温、T2が中温、T3が中高温、T4が高温である。アノード室内流路12Fにおいて、水の流れの下流になるに従い温度が高くなるものの、T2では第1アノード口部121から第2アノード口部122に向かって流れる水の流量が多く、高温の水が滞留しにくいため、若干温度が下がると考えられる。第3アノード口部123の近傍の位置T3と、第4アノード口部124の近傍の位置T4は、水が流れるものの、流量が少なく高温の水が滞留しやすいため、T2より温度が高いと考えられる。
【0087】
第3条件では、水の流れ方向は、第3アノード口部123から第4アノード口部124へ向かうアノード第3方向である。第3条件では、第1条件において、中高温となった位置T3が水の流れの上流になり、第1条件において高温となった位置T4が水の流れの下流になる。アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第3アノード口部123の近傍の位置T3は低温であり、水の流出口である第4アノード口部124の近傍の位置T4に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T1が高温、T2が中高温、T3が低温、T4が中温である。上述の通り、水の流れの下流になるに従い温度が高くなるものの、T4では第3アノード口部123から第4アノード口部124に向かって流れる水の流量が多く、高温の水が滞留しにくいため、若干温度が下がると考えられる。第2アノード口部122の近傍の位置T2と、第1アノード口部121の近傍の位置T1は、水が流れるものの、流量が少なく高温の水が滞留しやすいため、T4より温度が高いと考えられる。
【0088】
第2条件では、水の流れ方向は、第2アノード口部122から第1アノード口部121へ向かうアノード第2方向である。第2条件では、第3条件において、中高温となった位置T2が水の流れの上流になり、第3条件において高温となった位置T1が水の流れの下流になる。アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第2アノード口部122の近傍の位置T2は低温であり、水の流出口である第1アノード口部121の近傍の位置T1に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T2が低温、T1が中温、T3が中高温、T4が高温である。上述の通り、水の流れの下流になるに従い温度が高くなるものの、T1では第2アノード口部122から第1アノード口部121に向かって流れる水の流量が多く、高温の水が滞留しにくいため、若干温度が下がると考えられる。第3アノード口部123の近傍の位置T3と、第4アノード口部124の近傍の位置T4は、水が流れるものの、流量が少なく高温の水が滞留しやすいため、T1より温度が高いと考えられる。
【0089】
第4条件では、水の流れ方向は、第4アノード口部124から第3アノード口部123へ向かうアノード第4方向である。第4条件では、第2条件において、高温となった位置T4が水の流れの上流になり、第2条件において中高温となった位置T3が水の流れの下流になる。アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第4アノード口部124の近傍の位置T4は低温であり、水の流出口である第3アノード口部123の近傍の位置T3に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T4が低温、T3が中温、T1が中高温、T2が高温である。上述の通り、水の流れの下流になるに従い温度が高くなるものの、T3では第4アノード口部124から第3アノード口部123に向かって流れる水の流量が多く、高温の水が滞留しにくいため、若干温度が下がると考えられる。第1アノード口部121の近傍の位置T1と、第2アノード口部122の近傍の位置T2は、水が流れるものの、流量が少なく高温の水が滞留しやすいため、T3より温度が高いと考えられる。
【0090】
この例では、第1条件、第3条件、第2条件、第4条件を切替えて、水の流れ方向を切替えている。条件を切替える際に、比較的、温度が高くなっている(中高温、高温)位置が水の流れの上流になるように条件を選択しているため、効率よく、アノード室内の温度を時間的に略均一にすることができる。巨視的に見ると、アノード第1方向(第1条件)とアノード第4方向(第4条件)は、第1短辺S1から第2短辺S2へ向かう第1方向であり、アノード第2方向(第2条件)とアノード第3方向(第3条件)は第2短辺S2から第1短辺S1へ向かう第2方向であり、水の流れ方向を、互いに逆方向である第1方向と第2方向とに、切替えているともいえる。
【0091】
図11(B)に示すように、第1条件では、T1の温度が低温、T2の温度が中温であり、第2条件では、逆に、T2の温度が低温であり、T1の温度が中温である。また、第3条件では、T3の温度が低温、T4の温度が中温であり、第4条件では、逆に、T4の温度が低温であり、T3の温度が中温である。すなわち、制御部は、アノード室12の内部の温度が時間的に略均一になるように、アノード室12の水の流れ方向を切り替えている。
【0092】
<第7実施形態>
図12は、第7実施形態の水電解槽における3つのアノード口部の配置と流路内温度分布を概念的に示す説明図である。本実施形態では、水電解槽は、第1アノード口部121と、第2アノード口部122と、第3アノード口部123と、を有する。アノード室内流路12Fは、第5実施形態と同様に、平面形状が長方形状である。本実施形態では、アノード室内流路12Fに対して、第1アノード口部121が、第1短辺S1の外側に設けられており、第2アノード口部122と第3アノード口部123が、第2短辺S2の外側に設けられている。すなわち、第1アノード口部121と第2アノード口部122は、アノード室内流路12F(アノード室12)を介し略対向しており、第1アノード口部121と第3アノード口部123も、アノード室内流路12F(アノード室12)を介し略対向している。
【0093】
図12(A)に示すように、第1アノード口部121は、第1短辺S1の長さの略真ん中に対応する位置に配置されており、第2アノード口部122と第3アノード口部123は、第2短辺S2の両端に対応する位置に配置されている。図12(A)では、水の流入口として第1アノード口部121が選択され、水の流出口として第2アノード口部122が選択された第1条件で、水電解システムが運転されているときのアノード室12内の温度分布を示している。
【0094】
図12(B)は、各条件に対するアノード室内流路12F内の温度分布を示している。ここで、T1~T3は、図12(A)に示す位置である。本実施形態では、制御部は、第1アノード口部121を水の入口とし、第2アノード口部122を水の出口とする第1条件と、第3アノード口部123を水の入口とし、第1アノード口部121を水の出口とする第4条件と、第2アノード口部122を水の入口とし、第1アノード口部121を水の出口とする第2条件と、第1アノード口部121を水の入口とし、第3アノード口部123を水の出口とする第3条件とを、その順に切替える。
【0095】
第1条件が選択されているときは、水は、第1アノード口部121から第2アノード口部122へ向かうアノード第1方向に流れ、第2条件が選択されているときは、水は、第2アノード口部122から第1アノード口部121へ向かうアノード第2方向に流れる。第3条件が選択されているときは、水は、第1アノード口部121から第3アノード口部123へ向かうアノード第3方向に流れ、第4条件が選択されているときは、水は、第3アノード口部123から第1アノード口部121へ向かうアノード第4方向に流れる。アノード第1方向とアノード第2方向とは逆方向であり、アノード第3方向とアノード第4方向とは逆方向である。
【0096】
第1条件では、水の流れ方向は、第1アノード口部121から第2アノード口部122へ向かうアノード第1方向である。上述の通り、水の流れの下流になるに従い温度が高くなる。アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第1アノード口部121の近傍の位置T1の近傍は低温であり、水の流出口である第2アノード口部122の近傍の位置T2に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T1が低温、T2が中温、T3が高温である。アノード室内流路12Fにおいて、水の流れの下流になるに従い温度が高くなるものの、T2では第1アノード口部121から第2アノード口部122に向かって流れる水の流量が多く、高温の水が滞留しにくいため、若干温度が下がると考えられる。位置T3は、水が流れるものの、流量が少なく高温の水が滞留しやすいため、高温になると考えられる。
【0097】
第4条件では、水の流れ方向は、第3アノード口部123から第1アノード口部121へ向かうアノード第4方向である。第4条件では、第1条件において、高温となった位置T3が水の流れの上流になり、第1条件において低温となった位置T1が水の流れの下流になる。アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第3アノード口部123の近傍の位置T3は低温であり、水の流出口である第1アノード口部121の近傍の位置T1に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T1が中温、T2が中温、T3が低温である。上述の通り、水の流れの下流になるに従い温度が高くなるものの、T1では第3アノード口部123から第1アノード口部121に向かって流れる水の流量が多く、高温の水が滞留しにくいため、若干温度が下がると考えられる。第2アノード口部122の近傍の位置T2は、低温の水が流れるものの、流量が少ないため条件1のときの温度からあまり変わらないと考えられる。
【0098】
第2条件では、水の流れ方向は、第2アノード口部122から第1アノード口部121へ向かうアノード第2方向である。第2条件では、第4条件において、中温となった位置T2が水の流れの上流になり、第4条件において中温となった位置T1が水の流れの下流になる。アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第2アノード口部122の近傍の位置T2は低温であり、水の流出口である第1アノード口部121の近傍の位置T1に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T2が低温、T1が中温、T3が中温である。上述の通り、水の流れの下流になるに従い温度が高くなるものの、T1では第2アノード口部122から第1アノード口部121に向かって流れる水の流量が多く、高温の水が滞留しにくいため、若干温度が下がると考えられる。第3アノード口部123の近傍の位置T3は、低温の水が流れるものの、流量が少ないため、条件2への切替後、ごく短時間では低温であるが、時間が経過すると、温度定常になるため、中温になると考えられる。
【0099】
第3条件では、水の流れ方向は、第1アノード口部121から第3アノード口部123へ向かうアノード第3方向である。第3条件では、第2条件において、中温となった位置T1が水の流れの上流になり、第2条件において中となった位置T3が水の流れの下流になる。アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第1アノード口部121の近傍の位置T1は低温であり、水の流出口である第3アノード口部123の近傍の位置T3に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T1が低温、T3が中温、T2が高温ある。上述の通り、水の流れの下流になるに従い温度が高くなるものの、T3では第1アノード口部121から第3アノード口部123に向かって流れる水の流量が多く、高温の水が滞留しにくいため、若干温度が下がると考えられる。第2アノード口部122の近傍の位置T2は、水が流れるものの、流量が少なく高温の水が滞留しやすいため、高温になったと考えられる。
【0100】
この例では、第1条件、第4条件、第2条件、第3条件を、この順に切替えて、水の流れ方向を切替えている。条件を切替える際に、比較的、温度が高くなっている(中温、高温)位置が水の流れの上流になるように条件を選択しているため、効率よく、アノード室内の温度を時間的に略均一にすることができる。巨視的に見ると、アノード第1方向(第1条件)とアノード第3方向(第3条件)は、第1短辺S1から第2短辺S2へ向かう第1方向であり、アノード第2方向(第2条件)とアノード第4方向(第4条件)は第2短辺S2から第1短辺S1へ向かう第2方向であり、水の流れ方向を、互いに逆方向である第1方向と第2方向とに、切替えているともいえる。
【0101】
図12(B)に示すように、第1条件では、T1の温度が低温、T2の温度が中温であり、第2条件では、逆に、T2の温度が低温であり、T1の温度が中温である。また、第3条件では、T1の温度が低温、T3の温度が中温であり、第4条件では、逆に、T3の温度が低温であり、T1の温度が中温である。すなわち、制御部は、アノード室12の内部の温度が時間的に略均一になるように、アノード室12の水の流れ方向を切り替えている。
【0102】
<第8実施形態>
図13は、第8実施形態の水電解槽における4つのアノード口部の配置と流路内温度分布を概念的に示す説明図である。本実施形態では、水電解槽は、第1アノード口部121と、第2アノード口部122と、第3アノード口部123と、第4アノード口部124と、を有する。アノード室内流路12Fは、第5~第7実施形態と異なり、平面形状が正方形状である。本実施形態では、アノード室内流路12Fに対して、第1アノード口部121が第1辺S11の外側に設けられており、第2アノード口部122が、第1辺S11と対向する第2辺S12の外側に設けられており、第3アノード口部123が、第3辺S13の外側に設けられており、第4アノード口部124が、第3辺S13と対向する第4辺S14の外側に設けられている。
【0103】
第1アノード口部121、第2アノード口部122、第3アノード口部123、および第4アノード口部124は、それぞれ、第1辺S11、第2辺S12、第3辺S13、および第4辺S14それぞれの略真ん中に対応する位置に配置されている。すなわち、第1アノード口部121と第2アノード口部122は、アノード室内流路12F(アノード室12)を介し対向している。同様に、第3アノード口部123と第4アノード口部124も、アノード室内流路12F(アノード室12)を介し対向している。図13(A)では、水の流入口として第1アノード口部121が選択され、水の流出口として第2アノード口部122が選択された第1条件で、水電解システムが運転されているときのアノード室内流路12F内の温度分布を示している。
【0104】
図13(B)は、各条件に対するアノード室内流路12F内の温度分布を示している。ここで、T1~T4は、図13(A)に示す位置である。本実施形態では、制御部は、第1アノード口部121を水の入口とし、第2アノード口部122を水の出口とする第1条件と、第3アノード口部123を水の入口とし、第4アノード口部124を水の出口とする第3条件と、第2アノード口部122を水の入口とし、第1アノード口部121を水の出口とする第2条件と、第4アノード口部124を水の入口とし、第3アノード口部123を水の出口とする第4条件とを、その順に切替える。
【0105】
第1条件が選択されているときは、水は、第1アノード口部121から第2アノード口部122へ向かうアノード第1方向に流れ、第2条件が選択されているときは、水は、第2アノード口部122から第1アノード口部121へ向かうアノード第2方向に流れる。第3条件が選択されているときは、水は、第3アノード口部123から第4アノード口部124へ向かうアノード第3方向に流れ、第4条件が選択されているときは、水は、第4アノード口部124から第3アノード口部123へ向かうアノード第4方向に流れる。アノード第1方向とアノード第2方向とは逆方向であり、アノード第3方向とアノード第4方向とは逆方向である。また、アノード第1方向およびアノード第2方向と、アノード第3方向およびアノード第4方向と、は略直交する方向である。
【0106】
第1条件では、水の流れ方向は、第1アノード口部121から第2アノード口部122へ向かうアノード第1方向である。上述の通り、水の流れの下流になるに従い温度が高くなる。アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第1アノード口部121の近傍の位置T1の近傍は低温であり、水の流出口である第2アノード口部122の近傍の位置T2に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T1が低温、T2が高温、T3が中高温、T4が中温である。
【0107】
第3条件では、水の流れ方向は、第3アノード口部123から第4アノード口部124へ向かうアノード第3方向である。第3条件では、第1条件において、中温となった位置T3が水の流れの上流になり、第1条件において中温となった位置T4が水の流れの下流になる。アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第3アノード口部123の近傍の位置T3は低温であり、水の流出口である第4アノード口部124の近傍の位置T4に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T3が低温、T4が高温、T1が中温、T2が中温である。
【0108】
第2条件では、水の流れ方向は、第2アノード口部122から第1アノード口部121へ向かうアノード第2方向である。第2条件では、第3条件において、中温となった位置T2が水の流れの上流になり、第3条件において中温となった位置T1が水の流れの下流になる。アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第2アノード口部122の近傍の位置T2は低温であり、水の流出口である第1アノード口部121の近傍の位置T1に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T2が低温、T1が高温、T3が中温、T4が中温である。
【0109】
第4条件では、水の流れ方向は、第4アノード口部124から第3アノード口部123へ向かうアノード第4方向である。第4条件では、第2条件において、中温となった位置T4が水の流れの上流になり、第2条件において中温となった位置T3が水の流れの下流になる。アノード室内流路12Fにおいて、水の流入口である第4アノード口部124の近傍の位置T4は低温であり、水の流出口である第3アノード口部123の近傍の位置T3に向かって温度が高くなっている。詳しくは、T4が低温、T3が高温、T1が中温、T2が中温である。
【0110】
本実施形態では、第1条件、第3条件、第2条件、第4条件を、この順に切替えて、水の流れ方向を切替えている。水の流れ方向が逆方向、直交方向に切替えられるため、アノード室内流路12Fの平面形状が正方形の場合に、アノード室内の温度を、時間的に略均一にすることができる。本実施形態では、水の流入口としてのアノード口部を、アノード室内流路12Fの周りに時計回りに選択しているが、他の例では、反時計回りに選択してもよい。
【0111】
図13(B)に示すように、第1条件では、T1の温度が低温、T2の温度が高温であり、第2条件では、逆に、T2の温度が低温であり、T1の温度が高温である。また、第3条件では、T3の温度が低温、T4の温度が高温であり、第4条件では、逆に、T4の温度が低温であり、T3の温度が低温である。すなわち、制御部は、アノード室12の内部の温度が時間的に略均一になるように、アノード室12の水の流れ方向を切り替えている。
【0112】
以下に、アノード口部の切替制御について、第1実施形態と異なる他の例について説明する。
【0113】
<第9実施形態> 図14は、第9実施形態の水電解システム100Dの概略構成を示す説明図である。水電解システム100Dが第1実施形態の水電解システム100と異なる点は、第1アノード口部121の温度を測定する第1温度測定部71と、前記第2アノード口部122の温度を測定する第2温度測定部72と、を備える点と、制御部30による制御である。第1実施形態と同一の構成には、同一の符号を付して、先行する説明を参照する。
【0114】
本実施形態の水電解槽10は、第1実施形態と同一の構成であり、2つのアノード口部(第1アノード口部121、第2アノード口部122)を有する。
【0115】
第1温度測定部71は、第1アノード口部121の内部に設けられ、第2温度測定部72は、第2アノード口部122の内部に設けられる。第1温度測定部71および第2温度測定部72による温度測定結果は、制御部30に入力される。第1温度測定部71と第2温度測定部72としては、熱電対、IC(集積回路)温度センサ、サーミスタ、測温抵抗体等、種々の公知の温度センサを用いることができる。
【0116】
制御部30は、第5実施形態(図10)に示した第1条件と第2条件とを切替えることにより、アノード室12内の水の流れ方向を切替える。第5実施形態において示した通り、第1条件では、第1アノード口部121が流入口、第2アノード口部122が流出口として選択され、第2条件では、第2アノード口部122が流入口、第1アノード口部121が流出口として選択される。本実施形態において、制御部30は、第1温度測定部71および第2温度測定部72から入力される測定結果を用いて、条件の切替を行う。
【0117】
図15は、第9実施形態の水電解処理におけるアノード口部の選択条件の切替処理を示すフローチャートである。 水電解システム100が起動され、水電解処理開始の指示が入力されると、制御部30は、アノード口部の選択条件の切替処理を開始する。ステップS202では、制御部30は、第1条件を選択する。具体的には、制御部30は、三方弁26(図14)を介して第3供給路24と第1供給路22を接続させ、三方弁44を介して第2排出路42と第3排出路43を接続させる。そして、供給ポンプ25を駆動させて水タンク21から水電解槽10に対して水を供給させると、第1アノード口部121を介して水が流入し、第2アノード口部122を介して水が流出する。すなわち、アノード室12内を第1方向に水が流れる。
【0118】
制御部30は、ステップS203では、第1温度測定部71から第1アノード口部121内の温度t1を取得し、ステップS204では、第2温度測定部72から第2アノード口部122内の温度t2を取得する。
【0119】
ステップS205では、制御部30は、温度t1と温度t2との差が変更閾値Δtc以上が否か判定する。温度t1と温度t2との差が変更閾値Δtc以上の場合には(ステップS205においてYes)、制御部30は、条件を、今の条件と異なる条件に切替える(ステップS206)。すなわち、第1条件で運転している場合には、第2条件に切替えて、第2条件で運転している場合には、第1条件に切替える。変更閾値Δtcは、水の流出口側の温度が、触媒劣化や給電体の腐食が生じない範囲の温度に設定するのが好ましい。例えば、変更閾値Δtcは、30~40℃に設定することができる。このようにすると、アノード室12において、水の流出口側の温度が、触媒劣化や給電体の腐食が生じる温度になる前に、水の入出口が切替えられるため、アノード室12における局所的な温度上昇を抑制することができる。
【0120】
ステップS206において制御部30が第2条件を選択するとき、具体的には、下記の制御を行う。制御部30は、三方弁26(図14)を介して第3供給路24と第2供給路23を接続させる。また、制御部30は、三方弁44を介して第1排出路41と第3排出路43を接続させる。そして、供給ポンプ25を駆動させて水タンク21から水電解槽10に対して水を供給させると、第2アノード口部122を介して水が流入し、第1アノード口部121を介して水が流出する(図14において、水の流れを一点鎖線で図示している)。すなわち、アノード室12内を第2方向に水が流れる。
【0121】
制御部30は、ステップS207において、切替処理の停止指示の入力がない場合は、ステップS203およびステップS204に戻り、切替処理の停止指示が入力されると、切替処理を停止する。切替処理の停止処理は、例えば、水電解処理の停止指示の入力に伴って入力される。図示するように、切替処理の停止指示が入力されるまで、制御部30は、ステップS203~ステップS207を繰り返し実行する。
【0122】
本実施形態の水電解システムの制御方法によれば、第1アノード口部121の温度と第2アノード口部122の温度を用いて、アノード室12内の水の流れ方向の切替タイミングを決定しているため、水電解槽10の運転状況、アノード室12内の状況に応じて、適切に水の流れ方向を切替えることができる。その結果、適切に、アノード室12内の温度差を抑制することができ、アノード室12内の温度を、時間的に略均一化することができる。
【0123】
<第10実施形態>
図16図17は、第10実施形態の水電解システム100Eの概略構成を示す説明図である。図16図17では、アノード側の構成を明確に示すため、カソード側の構成である水素排出部50の記載を省略している。水電解システム100Eが第9実施形態の水電解システム100Dと異なる点は、水電解槽10Eが、4つのアノード口部(不図示)を備える点と、第2温度測定部73および第4温度測定部74と、第3流路83および第4流路84と、四方弁81および四方弁82をさらに備える点と、制御部30による制御である。第9実施形態と同一の構成には、同一の符号を付して、先行する説明を参照する。
【0124】
本実施形態の水電解槽10Eは、図13に示すように、4つのアノード口部(第1アノード口部121、第2アノード口部122、第3アノード口部123、124)を有する。
【0125】
第3温度測定部73は、第3アノード口部123の内部に設けられ、第3アノード口部123の内部温度を測定する。第4温度測定部74は、第4アノード口部124の内部に設けられ、第4アノード口部124の内部温度を測定する。第3温度測定部73および第4温度測定部74による温度測定結果も、第1温度測定部71および第2温度測定部72と同様に、制御部30に入力される。第3温度測定部73と第4温度測定部74も、第1温度測定部71および第2温度測定部72と同様の温度センサを用いることができる。
【0126】
制御部30は、第8実施形態(図13)に示した第1条件と、第3条件と、第2条件と、第4条件とを、この順に切替えることにより、アノード室12内の水の流れ方向を切替える。第8実施形態において説明した通り、第1条件では、第1アノード口部121が流入口、第2アノード口部122が流出口として選択され、第2条件では、第2アノード口部122が流入口、第1アノード口部121が流出口として選択され、第3条件では、第3アノード口部123が流入口、第4アノード口部124が流出口として選択され、第4条件では、第4アノード口部124が流入口、第3アノード口部123が流出口として選択される。本実施形態において、制御部30は、第1温度測定部71、第2温度測定部72、第3温度測定部73、および第4温度測定部74から入力される測定結果を用いて、条件の切替を行う。
【0127】
図18図19は、第10実施形態の水電解処理におけるアノード口部の条件の切替処理を示すフローチャートである。
水電解システム100Eが起動され、水電解処理開始の指示が入力されると、制御部30は、アノード口部の選択条件の切替処理を開始する。ステップS301では、制御部30は、切替処理の停止指示の有無を判断する。ステップS301において、切替処理の停止指示の入力がない場合は、ステップS302に進む。一方、切替処理の停止指示が入力されると、制御部30は、切替処理を停止する。
【0128】
ステップS302において、制御部30は、第1条件を選択する。具体的には、制御部30は、三方弁26(図16)を介して第3供給路24と第1供給路22を接続させると共に、四方弁81を介して22と61を接続させ、三方弁44を介して第2排出路42と第3排出路43を接続させる。そして、供給ポンプ25を駆動させて水タンク21から水電解槽10に対して水を供給させると、第1アノード口部121を介して水が流入し、第2アノード口部122を介して水が流出する(図16において、水の流れを破線で図示している)。すなわち、アノード室12内を第1方向に水が流れる。
【0129】
ステップS303では、制御部30は、第1温度測定部71から第1アノード口部121内の温度t1を取得し、第2温度測定部72から第2アノード口部122内の温度t2を取得し、第3温度測定部73から第3アノード口部123内の温度t3を取得し、第4温度測定部74から第4アノード口部124内の温度t4を取得する。
【0130】
ステップS304では、制御部30は、温度t1~温度t4のうち、最も高い温度tMAXと最も低い温度tMINを決定し、tMAXとtMINとの差が変更閾値Δtc以上か否か判定する。tMAXとtMINとの差が変更閾値Δtc以上の場合には(ステップS304においてYes)、制御部30は、第3条件に切替える(ステップS305)。変更閾値Δtcは、第5実施形態と同様に設定することができる。一方、tMAXとtMINとの差が変更閾値Δtcより小さい場合は、ステップS302へ戻る。すなわち、条件を変更しない。
【0131】
ステップS305において制御部30が第3条件を選択するとき、具体的には、下記の制御を行う。制御部30は、三方弁26(図17)を介して第3供給路24と第1供給路22を接続させると共に、四方弁81を介して第1供給路22と第3流路83を接続させる。また、制御部30は、三方弁44を介して第2排出路42と第3排出路43を接続させると共に、四方弁82を介して第4流路84と第2排出路42とを接続させる。そして、供給ポンプ25を駆動させて水タンク21から水電解槽10に対して水を供給させると、第3アノード口部123を介して水が流入し、第4アノード口部124を介して水が流出する(図17において、水の流れを破線で図示している)。すなわち、アノード室12内を第3方向に水が流れる。
【0132】
ステップS306では、制御部30は、第1温度測定部71から第1アノード口部121内の温度t1を取得し、第2温度測定部72から第2アノード口部122内の温度t2を取得し、第3温度測定部73から第3アノード口部123内の温度t3を取得し、第4温度測定部74から第4アノード口部124内の温度t4を取得する。
【0133】
ステップS307では、制御部30は、ステップS304と同様に、tMAXとtMINとの差が変更閾値Δtc以上か否か判定する。tMAXとtMINとの差が変更閾値Δtc以上の場合には(ステップS307においてYes)、制御部30は、第2条件に切替える(図19:ステップS308)。一方、tMAXとtMINとの差が変更閾値Δtcより小さい場合は、ステップS305へ戻る。すなわち、条件を変更しない。
【0134】
ステップS308において制御部30が第2条件を選択するとき、具体的には、下記の制御を行う。制御部30は、三方弁26(図16)を介して第3供給路24と第2供給路23を接続させると共に、四方弁81を介して第2供給路23と第2流路62を接続させる。また、制御部30は、三方弁44を介して第1排出路41と第3排出路43を接続させると共に、四方弁81を介して第1流路61と第1排出路41とを接続させる。そして、供給ポンプ25を駆動させて水タンク21から水電解槽10に対して水を供給させると、第2アノード口部122を介して水が流入し、第1アノード口部121を介して水が流出する(図16において、水の流れを一点鎖線で図示している)。すなわち、アノード室12内を第2方向に水が流れる。
【0135】
ステップS309では、制御部30は、第1温度測定部71から第1アノード口部121内の温度t1を取得し、第2温度測定部72から第2アノード口部122内の温度t2を取得し、第3温度測定部73から第3アノード口部123内の温度t3を取得し、第4温度測定部74から第4アノード口部124内の温度t4を取得する。
【0136】
ステップS310では、制御部30は、ステップS304と同様に、tMAXとtMINとの差が変更閾値Δtc以上か否か判定する。tMAXとtMINとの差が変更閾値Δtc以上の場合には(ステップS310においてYes)、制御部30は、第4条件に切替える(ステップS311)。一方、tMAXとtMINとの差が変更閾値Δtcより小さい場合は、ステップS308へ戻る。すなわち、条件を変更しない。
【0137】
ステップS311において制御部30が第4条件を選択するとき、具体的には、下記の制御を行う。制御部30は、三方弁26(図17)を介して第3供給路24と第2供給路23を接続させると共に、四方弁81を介して第2供給路23と第4流路84を接続させる。また、制御部30は、三方弁44を介して第1排出路41と第3排出路43を接続させると共に、四方弁81を介して第3流路83と第1排出路41とを接続させる。そして、供給ポンプ25を駆動させて水タンク21から水電解槽10に対して水を供給させると、第4アノード口部124を介して水が流入し、第3アノード口部123を介して水が流出する(図17において、水の流れを一点鎖線で図示している)。すなわち、アノード室12内を第4方向に水が流れる。
【0138】
ステップS312では、制御部30は、ステップS303と同様に、温度t1~温度t4を取得する。
【0139】
ステップS313では、制御部30は、ステップS304と同様に、tMAXとtMINとの差が変更閾値Δtc以上か否か判定する。tMAXとtMINとの差が変更閾値Δtc以上の場合には(ステップS313においてYes)、制御部30は、ステップS301(図18)へ戻る。一方、tMAXとtMINとの差が変更閾値Δtcより小さい場合は、ステップS311へ戻る。すなわち、条件を変更しない。
【0140】
制御部30は、ステップS301において、切替処理の停止指示の入力がない場合は、ステップS302へ進み、切替処理の停止指示が入力されると、切替処理を停止する。切替処理の停止処理は、例えば、水電解処理の停止指示の入力に伴って入力される。図示するように、切替処理の停止指示が入力されるまで、制御部30は、ステップS301~ステップS313を繰り返し実行する。
【0141】
本実施形態の水電解システム100Eの制御方法によれば、第1アノード口部121の温度t1、第2アノード口部122の温度t1、第3アノード口部123の温度t3、および第4アノード口部124の温度t4を用いて、アノード室12内の水の流れ方向の切替タイミングを決定しているため、水電解槽10の運転状況、アノード室12内の状況に応じて、適切に水の流れ方向を切替えることができる。その結果、適切に、アノード室12内の温度差を抑制することができる。
【0142】
また、アノード室12における水の流れ方向を、逆行する2方向だけでなく直交する方向を含めた4方向で切り替えているため、より適切に、アノード室12内の温度を時間的に略均一化することができる。
【0143】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0144】
・上記実施形態において、水電解槽10として、PEM型水電解槽を例示したが、水電解槽の種類は、上記実施形態に限定されない。例えば、アルカリ水電解槽を用いてもよい。アルカリ水電解槽を用いる場合、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムの水溶液(導電性のカリウムイオンやナトリウムイオンを溶かした水)等をアノード室およびカソード室に供給する。このようにしても、水の流れを交互に切替えることにより、電極の劣化を抑制することができる。
【0145】
・上記実施形態において、水電解槽10として、複数の水電解セルを直列に積層した複極式電解モジュールを例示したが、水電解槽10として、1つの水電解セルを用いてもよい。
【0146】
・上記実施形態では、供給と排出との両機能を果たす第1流路61および第2流路62を備えていたが、供給流路と排出流路とを、全く別個に設けてもよい。このようにしても、供給用の口部と排出用の口部とを適切な位置に配置し、各流路の切替を適切に行うことにより、アノード室12内の水の流れを略逆方向に切替えることができる。
【0147】
・上記実施形態では、水供給部20、酸素排出部40、水素排出部50それぞれにおいて、流路が分岐、または合流する例を示したが、各部において、それぞれ、2つの流路が別個に設けられてもよい。上記実施形態のように、流路が分岐、または合流する構成にすると、水電解システム100の構成の複雑化を抑制することができ、また、省スペース化できる。
【0148】
・上記実施形態において、アノード室12内の水の流れと、カソード室13内の水の流れの方向が対向する例を示したが、対向しなくてもよい。例えば、アノード室12内の水の流れと、カソード室13内の水の流れの方向が一致してもよい。また、アノード室12内の水の流れと、カソード室13内の水の流れの方向が略直交等に交差してもよい。
【0149】
・上水の流れ方向を切替える条件は、上記実施形態に限定されない。例えば、アノード室12から排出される水の温度が所定の閾値以上になったら切り替える構成にしてもよい。
【0150】
・上記第9実施形態および第10実施形態において、アノード口部内の温度t1を測定する温度測定部を備え、制御部30が、測定された温度t1を用いて、第1アノード口部121の温度t1と、第2アノード口部122の温度t1と、が時間的に略均一になるように、アノード室12の水の流れ方向を切り替える例を示したが、制御方法は、これに限定されない。例えば、水電解システム100がアノード室12の内部温度を測定する内部温度測定部を備え、制御部30が、アノード室12の内部温度が時間的に略均一になるように、アノード室12内の水の流れ方向を切替えてもよい。
【0151】
・上記実施形態において、制御部30が全ての弁を制御する例を示したが、各弁にそれぞれ、制御部が設けられてもよい。このようにしても、各制御部が時間に応じて連動することにより、上記第1実施形態と同様に制御することができる。
【0152】
・上記実施形態において、水電解システム100がさらに、酸素側処理部、水素側処理部を備えてもよい。例えば、酸素側処理部が気液分離器と酸素タンクを備え、水素側処理部が気液分離器と水素タンクを備える構成にしてもよい。また、水素側処理部がメタン製造装置を備えてもよい。水電解槽10から排出された水を水タンク21に戻して再利用する構成にしてもよい。
【0153】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0154】
10、10E…水電解槽
11a…電解質膜
11b…アノード
11c…カソード
12…アノード室
12F…アノード室内流路
13…カソード室
14…電極板
15…端子電極
19…電源
20、20A…水供給部
21…水タンク
22~24…第1~3供給路
26、44、54…三方弁
27、28、45、46、55、56…開閉弁
30…制御部
40、40A…酸素排出部
41~43…第1~3排出路
50、50A、50C…水素排出部
51~53…第1~3カソード流路
61、62…第1、2流路
71~74…第1~4温度測定部
81、82…四方弁
83、84…第3、4流路
100、100A、100B、100C、100D、100E…水電解システム
121~124…第1~4アノード口部
131、132…第1、2カソード口部
DA1…アノード第1方向
DA2…アノード第2方向
DC1…カソード第1方向
DC2…カソード第2方向
S1、S2…第1、2短辺
S11~S14…第1~4辺
図1
図2
図3
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