(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】撹拌釜
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20241001BHJP
B01F 27/00 20220101ALI20241001BHJP
B01F 27/70 20220101ALI20241001BHJP
【FI】
A47J27/14 E
A47J27/14 Q
B01F27/00
B01F27/70
(21)【出願番号】P 2021042859
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牟田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】松本 宏典
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/077741(WO,A1)
【文献】特開2018-068443(JP,A)
【文献】特開2004-351337(JP,A)
【文献】特開2010-194529(JP,A)
【文献】特開2001-205227(JP,A)
【文献】米国特許第04989504(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14-27/18
B01F 27/00-27/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌対象が収容される釜と、
前記釜の内側に配置され回動軸を中心に回動可能な撹拌部材と、
前記撹拌部材を回動させる駆動装置と、
前記撹拌部材が360°以下の範囲で正方向の回動と逆方向の回動とを繰り返すように前記駆動装置を制御する第1制御指令を出力する制御装置と、を備え
、
前記撹拌部材は、撹拌シャフトと、前記撹拌シャフトから前記回動軸の径方向外側に延伸するアームと、前記アームの先端部に配置される撹拌羽根と、を有し、
前記制御装置は、前記撹拌対象に挿入されている前記撹拌羽根が前記撹拌対象の外側に出ないように、前記第1制御指令を出力する、
撹拌釜。
【請求項2】
前記回動軸は、左右方向に延伸する、
請求項1に記載の撹拌釜。
【請求項3】
前記撹拌対象は、流動体であり、
前記制御装置は、前記撹拌対象に浸かっている前記撹拌羽根が前記撹拌対象の表面から前記撹拌対象の外側に出ないように、前記第1制御指令を出力する、
請求項
1又は請求項2に記載の撹拌釜。
【請求項4】
前記アーム及び前記撹拌羽根は、前記回動軸の周囲に複数配置され、
前記制御装置は、前記撹拌対象に浸かっている第1の前記撹拌羽根が前記撹拌対象の表面から前記撹拌対象の外側に出ないように、且つ、前記撹拌対象に浸かっていない第2の前記撹拌羽根が前記撹拌対象の表面から前記撹拌対象に進入しないように、前記第1制御指令を出力する、
請求項
3に記載の撹拌釜。
【請求項5】
前記制御装置は、前記撹拌部材が前記正方向又は前記逆方向に連続して
360°を上回る範囲で回転するように前記駆動装置を制御する第2制御指令を出力する、
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の撹拌釜。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1制御指令の出力と前記第2制御指令の出力とを切り換える、
請求項
5に記載の撹拌釜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撹拌釜に関する。
【背景技術】
【0002】
撹拌釜に係る技術分野において、特許文献1に開示されているような掻取り押し付け式加熱撹拌釜が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
撹拌対象によっては、撹拌により飛び散りや泡立ちが発生してしまう可能性がある。
【0005】
本開示は、撹拌対象の飛び散りや泡立ちの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、撹拌対象が収容される釜と、釜の内側に配置され回動軸を中心に回動可能な撹拌部材と、撹拌部材を回動させる駆動装置と、撹拌部材が360°以下の範囲で正方向の回動と逆方向の回動とを繰り返すように駆動装置を制御する第1制御指令を出力する制御装置と、を備える、撹拌釜が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、撹拌対象の飛び散りや泡立ちの発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る撹拌釜を示す正面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る撹拌釜を示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る撹拌釜を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る撹拌釜の一部を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る制御装置を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る撹拌部材の動作を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る撹拌部材の動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
実施形態においては、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、及び「下」の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、撹拌釜1の中心を基準とした相対位置又は方向を示す。
【0011】
[撹拌釜]
図1は、実施形態に係る撹拌釜1を示す正面図である。
図2は、実施形態に係る撹拌釜1を示す平面図である。
図3は、実施形態に係る撹拌釜1を示す断面図である。
図4は、実施形態に係る撹拌釜1の一部を示す図である。
図1は、撹拌釜1の一部破断図である。
図3は、
図1のA-A線断面図である。
図4は、
図1のB-B矢視図である。
【0012】
撹拌釜1は、支持台2と、釜3と、ホッパ4と、蒸気ジャケット5と、蓋6と、撹拌部材7と、制御ボックス8と、駆動装置9と、傾動装置10と、回動センサ11と、重量センサ12と、蓋センサ13と、傾動センサ14と、制御装置15とを備える。
【0013】
支持台2は、釜3、サイドフレーム16、及び制御ボックス8を支持する。
【0014】
釜3は、撹拌対象を収容する。撹拌対象は、食材を含む。撹拌対象として、流動体が例示される。流動体として、調味液やスープのような液体食材が例示される。釜3の上部に開口3Aが設けられる。撹拌対象は、開口3Aから釜の内側に投入される。
【0015】
釜3の左部及び右部のそれぞれに釜シャフト17が固定される。釜シャフト17は、ベアリング18に回転可能に支持される。左側の釜シャフト17は、左側のベアリング18に支持される。右側の釜シャフト17は、右側のベアリング18に支持される。左側のベアリング18は、制御ボックス8の内側に配置され、制御ボックス8の少なくとも一部に支持される。右側のベアリング18は、サイドフレーム16に支持される。
【0016】
釜3の上部は、ホッパ4を含む。ホッパ4の前板部4Bは、前方に向かって上方に傾斜する。
【0017】
蒸気ジャケット5は、釜3の外側に配置される。蒸気ジャケット5は、釜3の下部を覆うように配置される。蒸気ジャケット5は、釜3との間に蒸気が供給される空間を形成する。釜3と蒸気ジャケット5との間の空間に蒸気が供給されることにより、釜3に収容されている撹拌対象が加熱される。
【0018】
蒸気ジャケット5は、蒸気パイプ19に接続される。蒸気パイプ19に、蒸気バルブ20、圧力計21、及び安全弁22が配置される。蒸気パイプ19は、蒸気ジャケット5の下端部に接続される。蒸気は、蒸気パイプ19の流路を介して、釜3と蒸気ジャケット5との間の空間に供給される。
【0019】
蒸気ジャケット5は、ドレンパイプ23に接続される。ドレンパイプ23に、ドレンバルブ24が配置される。ドレンパイプ23は、蒸気ジャケット5の下端部に接続される。釜3と蒸気ジャケット5との間の空間に蒸気のドレン(凝縮水)が溜まる可能性がある。ドレンは、ドレンパイプ23の流路を介して、釜3と蒸気ジャケット5との間の空間から排出される。ドレンパイプ23に、スチームトラップ25が設けられている。ドレンパイプ23のドレンは、スチームトラップ25から排出される。
【0020】
蒸気ジャケット5は、エアパイプ26に接続される。エアパイプ26に、エアバルブ27が配置される。エアパイプ26は、蒸気ジャケット5の上部に接続される。空気は、エアパイプ26の流路を介して、釜3と蒸気ジャケット5との間の空間から排出される。
【0021】
蓋6は、釜3の開口3Aに配置される。蓋6は、釜3に着脱可能である。蓋6は、格子状である。蓋6は、矩形状のフレーム部6Aと、フレーム部6Aの内側に配置される複数の第1ロッド部6B及び複数の第2ロッド部6Cとを有する。第1ロッド部6Bは、前後方向に長い。第1ロッド部6Bの前端部及び後端部のそれぞれは、フレーム部6Aに固定される。複数の第1ロッド部6Bは、左右方向に間隔をあけて配置される。第2ロッド部6Cは、左右方向に長い。第2ロッド部6Cの左端部及び右端部のそれぞれは、フレーム部6Aに固定される。複数の第2ロッド部6Cは、前後方向に間隔をあけて配置される。
【0022】
フレーム部6Aに複数のフック部6Dが設けられる。フック部6Dは、釜3の上端部に掛けられる。フック部6Dが釜3の上端部に掛けられることにより、蓋6が開口3Aに配置される。
【0023】
撹拌部材7は、釜3に収容されている撹拌対象を撹拌する。撹拌部材7は、釜3の内側に配置される。撹拌部材7は、回動軸AXを中心に回動する。実施形態において、回動軸AXは、左右方向に延伸する。
【0024】
撹拌部材7は、撹拌シャフト7Aと、アーム7Bと、撹拌羽根7Cとを有する。撹拌シャフト7Aの中心軸と回動軸AXとは、一致する。アーム7Bは、撹拌シャフト7Aから回動軸AXの径方向外側に延伸する。撹拌羽根7Cは、アーム7Bの先端部に配置される。
【0025】
撹拌シャフト7Aは、釜3の少なくとも一部を貫通するように配置される。撹拌シャフト7Aの左端部及び右端部のそれぞれは、釜3の外側に配置される。撹拌シャフト7Aの左端部及び右端部のそれぞれは、ベアリング28に回転可能に支持される。ベアリング28は、釜3の外側に配置される。
【0026】
実施形態において、釜シャフト17の少なくとも一部は、筒状である。撹拌シャフト7Aの左部は、左側の釜シャフト17の内側に配置される。撹拌シャフト7Aの右部は、右側のベアリング28に支持される。また、蒸気パイプ19の一部及びドレンパイプ23の一部は、右側の釜シャフト17の内側に配置される。
【0027】
制御ボックス8は、駆動装置9と傾動装置10と制御装置15とを収容する。
【0028】
駆動装置9は、回動軸AXを中心に撹拌部材7を回動させる。駆動装置9は、モータ9Aと、駆動スプロケット9Bと、従動スプロケット9Cと、チェーン9Dとを有する。モータ9Aのロータシャフトは、駆動スプロケット9Bに固定される。撹拌シャフト7Aの左端部は、制御ボックス8の内側に配置される。撹拌シャフト7Aの左端部は、従動スプロケット9Cに固定される。チェーン9Dは、駆動スプロケット9Bと従動スプロケット9Cとを連結する。モータ9Aが駆動すると、駆動スプロケット9Bが回転する。駆動スプロケット9Bが回転すると、チェーン9Dを介して駆動スプロケット9Bに連結されている従動スプロケット9Cが回転する。従動スプロケット9Cが回転することにより、撹拌部材7が回転する。
【0029】
傾動装置10は、釜シャフト17を中心に釜3を傾動させる。傾動装置10は、開口3Aが前方を向くように釜3を傾ける。傾動装置10は、モータ10Aと、ウォーム10Bと、ウォームホイール10Cとを有する。モータ10Aのロータシャフトは、ウォーム10Bに固定される。ウォームホイール10Cは、釜3の左側の釜シャフト17に固定される。ウォームホイール10Cは、ウォーム10Bと噛み合う。モータ10Aが駆動すると、ウォーム10Bが回転する。ウォーム10Bが回転すると、ウォーム10Bと噛み合うウォームホイール10Cが回転する。ウォームホイール10Cが回転することにより、釜3が傾動する。
【0030】
図3の2点鎖線で示すように、モータ10Aが正回転することにより、釜3は、開口3Aが前方を向くように設定角度まで傾動される。モータ10Aが逆回転することにより、釜3は、開口3Aが上方を向くように元の位置に戻される。
【0031】
回動センサ11は、撹拌部材7の回動角度を検出する。回動センサ11は、ロータリーエンコーダを含む。回動センサ11は、従動スプロケット9Cの回転中心に取り付けられる。
【0032】
重量センサ12は、釜3に収容された撹拌対象の重量を検出する。
【0033】
蓋センサ13は、釜3の開口3Aに蓋6が配置されているか否かを検出する。制御ボックス8の上部に補助ボックス29が配置される。蓋センサ13は、補助ボックス29の上面に配置される。実施形態において、蓋6は、フレーム部6Aから左方に突出する検出片6Eを有する。蓋センサ13は、検出片6Eの有無を検出する。蓋センサ13として、磁界を利用して検出片6Eの有無を非接触で検知する高周波発振型の近接センサが例示される。釜3の開口3Aに蓋6が配置されると、検出片6Eが蓋センサ13に対向するように配置される。蓋センサ13は、検出片6Eを検出することにより、釜3の開口3Aに蓋6が配置されていることを検出することができる。釜3の開口3Aから蓋6が外された場合、蓋センサ13は、検出片6Eを検出しないので、釜3の開口3Aから蓋6が外されていることを検出することができる。
【0034】
傾動センサ14は、傾動装置10により釜3が傾動されたか否かを検出する。傾動センサ14は、制御ボックス8の所定部位に支持される。傾動センサ14は、リミットスイッチを含む。傾動センサ14からレバー14Aが突出する。ウォームホイール10Cにピン14Bが設けられる。ピン14Bは、ウォームホイール10Cの左面から左方に突出する。傾動センサ14は、レバー14Aがピン14Bに接触したか否かを検出する。釜3が水平状態にある際に、傾動センサ14は、レバー14Aを介してピン14Bを検出する。傾動センサ14は、ピン14Bを検出したとき、釜3が水平であることを検出する。傾動センサ14は、ピン14Bを検出しないとき、釜3が傾動されたことを検出する。
【0035】
制御ボックス8は、インタフェース30を有する。インタフェース30は、入力装置31と、出力装置32とを含む。入力装置31として、プッシュボタン、回転ハンドル、コンピュータ用キーボード、及びタッチパネルが例示される。出力装置32として、ランプ、音声出力装置、及び表示装置が例示される。入力装置31は、撹拌釜1の使用者に操作される。入力装置31は、操作されることにより入力データを生成する。
【0036】
制御装置15は、撹拌釜1を制御する。実施形態において、制御装置15は、少なくとも駆動装置9を制御する。制御装置15は、回動センサ11の検出データに基づいて、駆動装置9を制御する。なお、制御装置15は、入力装置31の入力データに基づいて、駆動装置9を制御してもよい。
【0037】
[制御装置]
図5は、実施形態に係る制御装置15を示す機能ブロック図である。
図5に示すように、制御装置15は、角度データ取得部15Aと、重量データ取得部15Bと、特性データ取得部15Cと、表面算出部15Dと、第1制御指令部15Eと、第2制御指令部15Fと、切換部15Gとを有する。
【0038】
角度データ取得部15Aは、回動センサ11の検出データを取得する。回動センサ11の検出データは、撹拌部材7の回動角度を示す。角度データ取得部15Aは、撹拌部材7の回動角度を示す角度データを取得する。
【0039】
重量データ取得部15Bは、重量センサ12の検出データを取得する。重量センサ12の検出データは、釜3に収容されている撹拌対象の重量を示す。重量データ取得部15Bは、釜3に収容されている撹拌対象の重量を示す重量データを取得する。
【0040】
特性データ取得部15Cは、釜3に収容される撹拌対象の特性を示す特性データを取得する。撹拌対象の特性データとして、Brix値(糖度)及び水分量が例示される。撹拌対象の特性は、撹拌対象の固有値である。釜3に投入される前の撹拌対象の特性を示す初期特性データは、入力装置31により入力される。特性データ取得部15Cは、入力装置31から初期特性データを取得する。釜3に投入された撹拌対象が蒸気ジャケット5により加熱されると、撹拌対象の特性は、変化する。例えば、撹拌対象が加熱されると、水分が蒸発して撹拌対象の水分量が減少する。
【0041】
表面算出部15Dは、重量データに基づいて、釜3に収容されている撹拌対象の表面の高さを算出する。表面算出部15Dは、重量データと初期特性データとに基づいて、撹拌対象が釜3に投入された直後の撹拌対象の表面の高さを算出することができる。また、釜3に投入された撹拌対象が蒸気ジャケット5により加熱されると、水分が蒸発して撹拌対象の水分量が減少し、撹拌対象の表面の高さが下降する。表面算出部15Dは、重量センサ12の検出データと特性データと蒸気ジャケット5に供給された蒸気の供給量及び温度とに基づいて、釜3に収容されている撹拌対象の表面の高さを算出することができる。なお、表面算出部15Dは、撹拌対象と釜3との接触面積(伝熱面積)も考慮して、釜3に収容されている撹拌対象の表面の高さを算出してもよい。
【0042】
第1制御指令部15Eは、撹拌部材7が360°以下の範囲で正方向の回動と逆方向の回動とを繰り返すように駆動装置9を制御する第1制御指令を出力する。第1制御指令部15Eは、駆動装置9のモータ9Aを制御するための第1制御指令を出力する。モータ9Aは、第1制御指令に基づいて、ロータシャフトの正回転と逆回転とを繰り返す。モータ9Aのロータシャフトが所定角度だけ正回転することにより、撹拌部材7は正方向に所定の回動角度だけ回動する。モータ9Aのロータシャフトが所定角度だけ逆回転することにより、撹拌部材7は逆方向に所定の回動角度だけ回動する。第1制御指令が出力されることにより、撹拌部材7は、揺動するように、正方向の回動と逆方向の回動とを交互に繰り返す。
【0043】
なお、第1制御指令部15Eは、撹拌部材7が180°以下の範囲内で正方向の回動と逆方向の回動とを繰り返すように駆動装置9を制御する第1制御指令を出力してもよい。第1制御指令部15Eは、撹拌部材7が90°以下の範囲内で正方向の回動と逆方向の回動とを繰り返すように駆動装置9を制御する第1制御指令を出力してもよい。第1制御指令部15Eは、撹拌部材7が45°以下の範囲内で正方向の回動と逆方向の回動とを繰り返すように駆動装置9を制御する第1制御指令を出力してもよい。
【0044】
第1制御指令部15Eは、撹拌対象に挿入されている撹拌羽根7Cが撹拌対象の外側に出ないように、第1制御指令を出力する。撹拌対象が流動体である場合、第1制御指令部15Eは、撹拌対象に浸かっている撹拌羽根7Cが撹拌対象の表面から撹拌対象の外側に出ないように、第1制御指令を出力する。
【0045】
実施形態において、アーム7B及び撹拌羽根7Cは、回動軸AXの周囲に複数配置される。第1制御指令部15Eは、撹拌対象に浸かっている第1の撹拌羽根7Cが撹拌対象の表面から撹拌対象の外側に出ないように、且つ、撹拌対象に浸かっていない第2の撹拌羽根7Cが撹拌対象の表面から撹拌対象に進入しないように、第1制御指令を出力する。
【0046】
撹拌対象の表面の高さは、表面算出部15Dにより算出される。また、撹拌部材7の固有データは、既知データである。撹拌部材7の固有データは、撹拌部材7の形状及び撹拌部材7の寸法を含む。また、撹拌部材7の固有データは、アーム7B及び撹拌羽根7Cの数を含む。実施形態において、アーム7B及び撹拌羽根7Cは、回動軸AXの周囲に等間隔で4つ配置される。第1制御指令部15Eは、表面算出部15Dにより算出された撹拌対象の表面の高さと、撹拌部材7の固有データとに基づいて、撹拌対象に浸かっている第1の撹拌羽根7Cが撹拌対象の表面から撹拌対象の外側に出ないように、且つ、撹拌対象に浸かっていない第2の撹拌羽根7Cが撹拌対象の表面から撹拌対象に進入しないように、第1制御指令を出力することができる。
【0047】
第2制御指令部15Fは、撹拌部材7が正方向又は逆方向に連続して回転するように駆動装置9を制御する第2制御指令を出力する。第2制御指令部15Fは、駆動装置9のモータ9Aを制御するための第2制御指令を出力する。モータ9Aは、第2制御指令に基づいて、ロータシャフトを正回転又は逆回転させる。モータ9Aのロータシャフトが正回転することにより、撹拌部材7は正方向に360°を上回る角度回動する。モータ9Aのロータシャフトが逆回転することにより、撹拌部材7は逆方向に360°を上回る角度回動する。第2制御指令が出力されることにより、撹拌部材7は、正方向又は逆方向に連続して回転する。
【0048】
切換部15Gは、駆動装置9に対する第1制御指令の出力と第2制御指令の出力とを切り換える。第1制御指令が出力されることにより、撹拌部材7は、揺動するように、正方向の回動と逆方向の回動とを交互に繰り返す。第2制御指令が出力されることにより、撹拌部材7は、正方向又は逆方向に連続して回転する。
【0049】
[撹拌部材の動作]
図6及び
図7のそれぞれは、実施形態に係る撹拌部材7の動作を説明するための模式図である。
図6は、撹拌対象の表面が第1高さであるときの撹拌部材7の動作を示す。
図7は、撹拌対象の表面が第1高さよりも高い第2高さであるときの撹拌部材7の動作を示す。
【0050】
以下の説明においては、4つのアーム7Bのそれぞれを適宜、アーム71B、アーム72B、アーム73B、及びアーム74B、と称する。4つの撹拌羽根7Cのそれぞれを適宜、撹拌羽根71C、撹拌羽根72C、撹拌羽根73C、及び撹拌羽根74C、と称する。
【0051】
図6及び
図7のそれぞれに示すように、第1制御指令部15Eは、表面算出部15Dにより算出された撹拌対象の表面の高さと、撹拌部材7の固有データと、角度データ取得部15Aにより取得された回動センサ11の検出データとに基づいて、撹拌対象に浸かっている撹拌羽根71C,72Cが撹拌対象の表面から撹拌対象の外側に出ないように、且つ、撹拌対象に浸かっていない撹拌羽根73C,74Cが撹拌対象の表面から撹拌対象に進入しないように、第1制御指令を出力する。
【0052】
第1制御指令部15Eは、撹拌対象の表面の高さに基づいて、撹拌部材7の回動角度を調整する。
【0053】
図6(A)に示すように、撹拌部材7が正方向に回動し、撹拌羽根71Cが撹拌対象の表面から撹拌対象の外側に出る直前で、撹拌部材7の回動方向が正方向から逆方向に切り換えられる。撹拌部材7が逆方向に回動することにより、撹拌羽根71Cは撹拌対象の表面から離れ、撹拌羽根72Cが撹拌対象の表面に接近する。
【0054】
図6(B)に示すように、撹拌部材7が逆方向に回動し、撹拌羽根72Cが撹拌対象の表面から撹拌対象の外側に出る直前で、撹拌部材7の回動方向が逆方向から正方向に切り換えられる。撹拌部材7が正方向に回動することにより、撹拌羽根72Cは撹拌対象の表面から離れ、撹拌羽根71Cが撹拌対象の表面に接近する。
【0055】
撹拌対象の表面が第1高さにおいて、第1制御指令部15Eは、撹拌部材7が
図6(A)に示した状態と
図6(B)に示した状態を交互に繰り返すように、撹拌部材7を揺動させる。
【0056】
図7(A)に示すように、撹拌部材7が正方向に回動し、撹拌羽根73Cが撹拌対象の表面から撹拌対象に進入する直前で、撹拌部材7の回動方向が正方向から逆方向に切り換えられる。撹拌部材7が逆方向に回動することにより、撹拌羽根73Cは撹拌対象の表面から離れ、撹拌羽根74Cが撹拌対象の表面に接近する。
【0057】
図7(B)に示すように、撹拌部材7が逆方向に回動し、撹拌羽根74Cが撹拌対象の表面から撹拌対象に進入する直前で、撹拌部材7の回動方向が逆方向から正方向に切り換えられる。撹拌部材7が正方向に回動することにより、撹拌羽根74Cは撹拌対象の表面から離れ、撹拌羽根73Cが撹拌対象の表面に接近する。
【0058】
撹拌対象の表面が第2高さにおいて、第1制御指令部15Eは、撹拌部材7が
図7(A)に示した状態と
図7(B)に示した状態を交互に繰り返すように、撹拌部材7を揺動させる。
【0059】
なお、第1制御指令部15Eは、撹拌羽根71C及び撹拌羽根72Cが撹拌対象に浸かり、且つ、撹拌羽根73C及び撹拌羽根74Cが撹拌対象に浸かっていない状態で、撹拌部材7を一定時間揺動させた後、撹拌羽根73C及び撹拌羽根74Cが撹拌対象に浸かり、且つ、撹拌羽根71C及び撹拌羽根72Cが撹拌対象に浸かっていない状態に変化させ、撹拌羽根73C及び撹拌羽根74Cが撹拌対象に浸かり、且つ、撹拌羽根71C及び撹拌羽根72Cが撹拌対象に浸かっていない状態で、撹拌部材7を一定時間揺動させてもよい。すなわち、第1制御指令部15Eは、撹拌対象に浸かっている撹拌羽根71C及び撹拌羽根72Cを揺動する動作と、撹拌対象に浸かっている撹拌羽根73C及び撹拌羽根74Cを揺動する動作とを交互に繰り返してもよい。
【0060】
[効果]
以上説明したように、実施形態によれば、撹拌部材7が360°以下の範囲で正方向の回動と逆方向の回動とを繰り返すように駆動装置9が制御される。撹拌部材7が正方向又は逆方向に連続的に回転しないので、撹拌対象の飛び散りや泡立ちの発生が抑制される。
【0061】
回動軸AXは、左右方向に延伸する。これにより、撹拌釜1の大型化が抑制され、撹拌対象は撹拌部材7で適正に撹拌される。
【0062】
第1制御指令部15Eは、撹拌対象に挿入されている撹拌羽根7Cが撹拌対象の外側に出ないように、第1制御指令を出力する。撹拌羽根7Cが撹拌対象に挿入されている状態で揺動するので、撹拌対象の飛び散りや泡立ちの発生が効果的に抑制される。また、撹拌対象は適正に撹拌される。
【0063】
撹拌対象が流動体である場合において、第1制御指令部15Eは、撹拌対象に浸かっている撹拌羽根7Cが撹拌対象の表面から撹拌対象の外側に出ないように、第1制御指令を出力する。撹拌羽根7Cが撹拌対象に浸かっている状態で揺動するので、撹拌対象の飛び散りや泡立ちの発生が効果的に抑制される。また、撹拌対象は適正に撹拌される。
【0064】
図6及び
図7を参照して説明したように、アーム7B及び撹拌羽根7Cは、回動軸AXの周囲に複数配置されている場合において、第1制御指令部15Eは、撹拌対象に浸かっている撹拌羽根71C,72Cが撹拌対象の表面から撹拌対象の外側に出ないように、且つ、撹拌対象に浸かっていない撹拌羽根73C,74Cが撹拌対象の表面から撹拌対象に進入しないように、第1制御指令を出力する。これにより、撹拌対象の飛び散りや泡立ちの発生が効果的に抑制された状態で、撹拌対象が適正に撹拌される。
【0065】
第2制御指令部15Fは、撹拌部材7が正方向又は逆方向に連続して回転するように駆動装置9を制御する第2制御指令を出力する。飛び散りや泡立ちが発生する可能性が低い撹拌対象においては、撹拌部材7が連続して回転することにより、撹拌対象は十分に撹拌される。
【0066】
切換部15Gは、駆動装置9に対する第1制御指令の出力と第2制御指令の出力とを切り換える。これにより、釜3に投入される撹拌対象に合わせて最適な撹拌方式が選択される。飛び散りや泡立ちが発生する可能性が高い撹拌対象が釜3に投入された場合、第1制御指令が出力され、飛び散りや泡立ちが発生する可能性が低い撹拌対象が釜3に投入された場合、第2制御指令が出力されることにより、品質の良い食材を提供することができる。
【0067】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、撹拌対象の表面の高さが、重量センサ12の検出データと撹拌対象の特性データとに基づいて算出されることとした。撹拌対象の表面の高さが、釜3に設けられた水位センサのような、撹拌対象の表面の高さを検出するセンサによって検出されてもよい。
【0068】
上述の実施形態において、撹拌部材7の正方向の回動角度及び逆方向の回動角度が、表面算出部15Dにより算出された撹拌対象の表面高さに基づいて制御されることとした。撹拌部材7の正方向の回動角度及び逆方向の回動角度は、入力装置31からの入力データに基づいて制御されてもよい。すなわち、撹拌釜1の使用者が入力装置31を操作して、撹拌部材7の正方向の回動角度及び逆方向の回動角度を設定してもよい。第1制御指令部15Eは、入力装置31からの入力データに基づいて、撹拌部材7の正方向の回動角度及び逆方向の回動角度を制御してもよい。また、切換部15Gは、入力装置31からの入力データに基づいて、駆動装置9に対する第1制御指令の出力と第2制御指令の出力とを切り換えてもよい。
【0069】
上述の実施形態において、アーム7B及び撹拌羽根7Cは、撹拌シャフト7Aの周囲に4つ設けられることとした。アーム7B及び撹拌羽根7Cは、撹拌シャフト7Aの周囲に1つだけ設けられてもよいし、2つ又は3つ設けられてもよいし、5つ以上の任意の複数設けられてもよい。アーム7B及び撹拌羽根7Cが撹拌シャフト7Aの周囲に複数設けられる場合、等間隔に設けられてもよいし、不等間隔に設けられてもよい。例えばアーム7B及び撹拌羽根7Cが撹拌シャフト7Aの周囲に4つ設けられる場合、アーム7B及び撹拌羽根7Cは、撹拌シャフト7Aの周囲に90°の間隔で設けられてもよいし、任意の角度の間隔で設けられてもよい。アーム7B及び撹拌羽根7Cの間隔(取り付け角度)は、任意に定められてもよい。
【0070】
上述の実施形態において、撹拌対象は蒸気ジャケット5により加熱された状態で撹拌されてもよいし、冷却された状態で撹拌されてもよい。撹拌対象を冷却する場合、釜3と蒸気ジャケット5の間の空間に冷却水が供給される。供給された冷却水により撹拌対象が冷却される。例えば食材によっては冷却しながら撹拌する必要が生じる。撹拌対象を冷却した状態で泡立ちが発生すると、泡が凝固してしまい、食材の品質が低下してしまう可能性がある。実施形態においては、泡立ちの発生が抑制されるので、食材の品質の低下が抑制される。
【符号の説明】
【0071】
1…撹拌釜、2…支持台、3…釜、3A…開口、4…ホッパ、4B…前板部、5…蒸気ジャケット、6…蓋、6A…フレーム部、6B…第1ロッド部、6C…第2ロッド部、6D…フック部、6E…検出片、7…撹拌部材、7A…撹拌シャフト、7B…アーム、7C…撹拌羽根、8…制御ボックス、9…駆動装置、9A…モータ、9B…駆動スプロケット、9C…従動スプロケット、9D…チェーン、10…傾動装置、10A…モータ、10B…ウォーム、10C…ウォームホイール、11…回動センサ、12…重量センサ、13…蓋センサ、14…傾動センサ、14A…レバー、14B…ピン、15…制御装置、15A…角度データ取得部、15B…重量データ取得部、15C…特性データ取得部、15D…表面算出部、15E…第1制御指令部、15F…第2制御指令部、15G…切換部、16…サイドフレーム、17…釜シャフト、18…ベアリング、19…蒸気パイプ、20…蒸気バルブ、21…圧力計、22…安全弁、23…ドレンパイプ、24…ドレンバルブ、25…スチームトラップ、26…エアパイプ、27…エアバルブ、28…ベアリング、29…補助ボックス、30…インタフェース、31…入力装置、32…出力装置、AX…回動軸。