(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】推力発生装置
(51)【国際特許分類】
B64C 27/68 20060101AFI20241001BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20241001BHJP
B64C 11/32 20060101ALI20241001BHJP
B64C 27/605 20060101ALI20241001BHJP
F16J 15/3232 20160101ALI20241001BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B64C27/68
B64D27/24
B64C11/32
B64C27/605
F16J15/3232 201
F16J15/18 C
(21)【出願番号】P 2021050764
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2020140323
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 浩保
(72)【発明者】
【氏名】郡司 大輔
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ロペス リカルド
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-078975(JP,A)
【文献】実公昭38-013048(JP,Y1)
【文献】米国特許第02499837(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/68
B64D 27/24
B64C 11/32
B64C 27/605
F16J 15/3232
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼の推力を発生させる第1モータと、
前記回転翼のピッチ角を変化させる回転運動を発生させる第2モータと、
前記第2モータの回転運動を直線運動に変換する第1変換部と、
前記第1変換部で変換された直線運動を回転運動に変換する第2変換部とを備え、
前記第2変換部は、
前記直線運動に基づいて前記回転運動を発生するラックアンドピニオンと、
前記ラックアンドピニオンのピニオンの回転運動を前記回転翼に伝える支持軸と、
前記ラックアンドピニオンと支持軸を収容するケースと、
前記支持軸に結合され、前記回転翼を保持するグリップと、
前記ケース内で前記支持軸を回転可能に支持する軸受と、
前記グリップの付け根の位置で前記ケースをシールするシール材とを備え
、
前記シール材は、前記グリップと前記ケースとの間の隙間を塞ぐシールリングであり、
前記シールリングの装着位置において、装着前の前記シールリングの内径は前記グリップの径よりも小さく、
前記グリップは、前記ケースの外側で径方向に広がった傾斜面を備え、
前記シールリングは、
前記隙間の位置で前記グリップと前記ケースに密着する第1リップと、
前記グリップの前記傾斜面に密着する第2リップと、
前記隙間の位置より径方向外側で前記ケースに密着する第3リップとを備えることを特徴とする推力発生装置。
【請求項2】
前記シールリングの装着位置において、前記第1リップと前記第2リップは、前記グリップにて押圧されることで弾性変形することを特徴とする請求項
1に記載の推力発生装置。
【請求項3】
前記ケースは、
前記シールリングを前記グリップに押し付ける凸部と、
前記第3リップを収容する凹部とを備えることを特徴とする請求項
1または
2に記載の推力発生装置。
【請求項4】
前記ケースに装着可能なクランプ部を備え、
前記クランプ部は、前記ケースへの装着時に、前記第3リップを収容しつつ、前記シールリングを前記グリップに押し付ける段差を備えることを特徴とする請求項
1または
2に記載の推力発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推力発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧を用いることなく、電動でプロペラ(回転翼)の回転軸に対する取付角度であるピッチを可変にする技術として、例えば、特許文献1に開示がある。この技術では、回転主軸が中空状に形成され、この回転主軸内に操作ロッドが軸線方向にのみ移動可能に同心状に配設され、その操作ロッドの下端に固着されたアームが、リンクおよびレバー機構を介して羽根の各支持軸に連結されている。そして、操作ロッドを軸線方向に往復移動させることによって、リンクおよびレバー機構を介して各羽根の取付角度が変化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、アーム、リンクおよびレバー機構などの動作を円滑化するためにグリースなどの潤滑剤を用いると、潤滑剤がランナボス外に飛散するおそれがあった。
そこで、本発明は、ピッチ角を変化させる回転部のシール性を向上させることが可能な推力発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、回転翼の推力を発生させる第1モータと、前記回転翼のピッチ角を変化させる回転運動を発生させる第2モータと、前記第2モータの回転運動を直線運動に変換する第1変換部と、前記第1変換部で変換された直線運動を回転運動に変換する第2変換部とを備え、前記第2変換部は、前記直線運動に基づいて前記回転運動を発生するラックアンドピニオンと、前記ラックアンドピニオンのピニオンの回転運動を前記回転翼に伝える支持軸と、前記ラックアンドピニオンと支持軸を収容するケースと、前記支持軸に結合され、前記回転翼を保持するグリップと、前記ケース内で前記支持軸を回転可能に支持する軸受と、前記グリップの付け根の位置で前記ケースをシールするシール材とを備える。
【0006】
これにより、軸受の回転を円滑化するための潤滑剤をケース内に封止することができ、グリップとケースとの間の隙間から潤滑剤が漏れ出するのを防止することができる。このため、第1モータの回転軸回りにケースが回転し、潤滑剤に遠心力がかかった場合においても、潤滑剤がケース外に飛散するのを防止することができる。
【0007】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記シール材は、前記グリップと前記ケースとの間の隙間を塞ぐシールリングである。
【0008】
これにより、グリップにシールリングを装着することで、グリップとケースとの間の隙間を塞ぐことができる。このため、シール作業の煩雑化を抑制しつつ、グリップを支持するケースのシール性を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記シールリングの装着位置において、装着前の前記シールリングの内径は前記グリップの径よりも小さい。
【0010】
これにより、シールリングをグリップに装着することで、シールリングをグリップに密着させることができ、グリップを支持するケースのシール性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記グリップは、前記ケースの外側で径方向に広がった傾斜面を備え、前記シールリングは、前記隙間の位置で前記グリップと前記ケースに密着する第1リップと、前記グリップの前記傾斜面で前記グリップに密着する第2リップと、前記隙間の位置より径方向外側で前記ケースに密着する第3リップとを備える。
【0012】
これにより、グリップとケースとの間の隙間に第1リップを侵入させつつ、グリップとケースとの間の隙間から第1リップが抜けないように第2リップと第3リップで抑えることができる。このため、第1モータの回転軸回りにグリップが回転し、グリップおよびシールリングにかかる遠心力によってグリップおよびシールリングがケースから引き離された場合においても、グリップとケースとの間の隙間がシールリングで塞がれたままの状態を維持することができ、グリップを支持するケースのシール性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記シールリングの装着位置において、前記第1リップと前記第2リップは、前記グリップにて押圧されることで弾性変形する。
【0014】
これにより、グリップとケースとの間の隙間に第1リップを侵入させやすくすることが可能となるとともに、グリップおよびシールリングにかかる遠心力によってグリップおよびシールリングがケースから引き離された場合においても、グリップとケースとの間の隙間から第1リップが抜けにくくすることができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記ケースは、前記シールリングを前記グリップに押し付ける凸部と、前記第3リップを収容する凹部とを備える。
【0016】
これにより、グリップおよびシールリングにかかる遠心力によってグリップがケースから引き離された場合においても、シールリングがケースから引き離されるのを防止することができ、グリップを支持するケースのシール性を維持することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記ケースに装着可能なクランプ部を備え、前記クランプ部は、前記ケースへの装着時に、前記第3リップを収容しつつ、前記シールリングを前記グリップに押し付ける段差を備える。
【0018】
これにより、グリップおよびシールリングにかかる遠心力によってグリップがケースから引き離された場合においても、シールリングがケースから引き離されるのを防止することができ、グリップを支持するケースのシール性を維持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一つの態様によれば、ピッチ角を変化させる回転部のシール性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(a)は、第1実施形態に係る推力発生装置に回転翼を取り付けた状態を示す斜視図、
図1(b)および
図1(c)は、第1実施形態に係る推力発生装置に取り付けられた回転翼のピッチ角を変化させた状態を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1(a)の推力発生装置を回転軸の一端側から見たときの構成を分解して示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1(a)に示す推力発生装置を回転軸の他端側から見たときの構成を分解して示す斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、
図2に示す推力発生装置の組み立て後の構成を示す斜視図、
図4(b)は、
図3に示す推力発生装置の組み立て後の構成を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、第1実施形態に係る推力発生装置の構成を示す平面図、
図5(b)は、
図5(a)のA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図6】
図6(a)は、第1実施形態に係る推力発生装置の構成を示す平面図、
図6(b)は、
図6(a)のB-B線に沿って切断した断面図である。
【
図7】
図7(a)は、第1実施形態に係る推力発生装置の推力発生用モータの構成を示す平面図、
図7(b)は、
図7(a)のC-C線に沿って切断した断面図である。
【
図8】
図8(a)は、
図6のピッチ可変用モータ、垂直伝達部および回転直動変換部の構成を示す斜視図、
図8(b)は、
図8(a)のピッチ可変用モータ、垂直伝達部および直動案内部を除去した構成を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図1(b)のハブの構成を分解して示す斜視図である。
【
図10】
図10は、
図3のラックが取り付けられた直動体とピニオンとの位置関係を示す上面図である。
【
図11】
図11(a)は、
図1(b)の回転翼のピッチ角に対応した直動体の位置を示す斜視図、
図11(b)は、
図1(c)の回転翼のピッチ角に対応した直動体の位置を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る直動回転変換部の1つのグリップ部分の構成を示す断面図である。
【
図13】
図13は、
図12の直動回転変換部の1つのグリップ部分の構成を分解して示す斜視図である。
【
図18】
図18は、ケースからの支持軸の抜き出し方法の一例を示す断面図である。
【
図19】
図19(a)は、第2実施形態に係る推力発生装置に回転翼を取り付けた状態を示す斜視図、
図19(b)および
図19(c)は、第2実施形態に係る推力発生装置に取り付けられた回転翼のピッチ角を変化させた状態を示す側面図である。
【
図20】
図20は、
図19(a)の推力発生装置を回転軸の一端側から見たときの構成を分解して示す斜視図である。
【
図21】
図21は、
図19(a)に示す推力発生装置を回転軸の他端側から見たときの構成を分解して示す斜視図である。
【
図22】
図22(a)は、
図20に示す推力発生装置の組み立て後の構成を示す斜視図、
図22(b)は、
図21に示す推力発生装置の組み立て後の構成を示す斜視図である。
【
図23】
図23(a)は、第2実施形態に係る推力発生装置の構成を示す平面図、
図23(b)は、
図23(a)のA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図24】
図24(a)は、第2実施形態に係る推力発生装置の構成を示す平面図、
図24(b)は、
図24(a)のB-B線に沿って切断した断面図である。
【
図25】
図25は、
図19(b)のハブおよびエクステンションの構成を分解して示す斜視図である。
【
図26】
図26は、
図19(b)の装着部、ケースおよびエクステンションの構成を分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。また、以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。
【0022】
以下の説明では、推力発生装置で駆動される回転翼が3枚の場合を例にとるが、推力発生装置で駆動される回転翼は、必ずしも3枚に限定されることなく、N(Nは2以上の整数)枚であればよい。
図1(a)は、第1実施形態に係る推力発生装置に回転翼を取り付けた状態を示す斜視図、
図1(b)および
図1(c)は、第1実施形態に係る推力発生装置に取り付けられた回転翼のピッチ角を変化させた状態を示す側面図、
図2および
図3は、
図1(a)の推力発生装置の構成を分解して示す斜視図、
図4(a)および
図4(b)は、
図2および
図3の推力発生装置の組み立て後の構成を示す斜視図である。
【0023】
図1(a)、
図1(b)および
図1(c)において、推力発生装置1は、回転翼H1~H3を電動で駆動する。回転翼H1~H3は、グリップP1~P3をそれぞれ介して推力発生装置1に装着される。グリップP1~P3は、推力発生装置1から水平方向に放射状に延びるように回転翼H1~H3を支持する。推力発生装置1は、装着面1Aを介して飛翔体に装着される。推力発生装置1が装着された飛翔体は、例えば、モータで飛行するマルチコプター、飛行機、回転翼機および飛行機能を備える自動車などの飛行可能な機体または車体である。
【0024】
図1(a)、
図1(b)、
図1(c)、
図2、
図3、
図4(a)および
図4(b)に示すように、推力発生装置1は、推力発生用モータ(第1モータ)2、ピッチ可変用モータ(第2モータ)5、回転伝達部6、回転直動変換部(第1変換部)7、直動回転変換部(第2変換部)8、エクステンション9およびハブ10を備える。推力発生用モータ2は、ステータ2A、ロータ2B、外側フレーム2C、内径部2Dおよび内側フレーム2Eを備える。また、ロータ2Bは、内径側にロータ軸4および中空部3A、3Bを備える。ロータ軸4の軸方向端部には、エクステンション9を介してハブ10を装着する装着部4Aが設けられる。
【0025】
内径部2Dの径方向外側には、内側フレーム2Eが位置し、内側フレーム2Eの径方向外側には、外側フレーム2Cが位置する。内径部2Dは、外側フレーム2C側に固定される。内側フレーム2Eは、ロータ軸4側に固定され、ロータ軸4とともに回転する。ロータ軸4は、内径部2D内に収容される。このとき、装着部4Aは、内径部2Dの軸方向外側に位置する。内側フレーム2Eの外周面に沿ってロータ2Bが位置する。外側フレーム2Cの内周面に沿ってステータ2Aが位置する。このとき、ロータ軸4、内径部2D、内側フレーム2E、ロータ2B、ステータ2Aおよび外側フレーム2Cは、回転軸S0から径方向外側に向かって同心円状に配置される。
【0026】
推力発生用モータ2は、
図1(b)の回転軸S0の軸回りに回転翼H1~H3を回転させ、回転翼H1~H3の推力Fを発生させる。ステータ2Aは、電磁鋼鈑と巻線を備え、ロータ2Bの外側に位置する。ステータ2A、内径部2Dおよび装着面1Aは、外側フレーム2Cに固定される。このとき、装着面1Aは、支持部1Cを介して外側フレーム2Cに固定することができる。内径部2Dは、スペーサ2Fを介して装着面1Aの裏側に固定することができる。スペーサ2Fは、推力発生用モータ2内に回転伝達部6を収容するための空間を確保することができる。
【0027】
装着面1Aは、回転伝達部6を外側フレーム2C内に挿入可能な開口1Bを備える。支持部1Cは、外側フレーム2Cから内側に向かって放射状に延びる。内径部2Dは、円筒形状であり、軸受U1を介してロータ軸4を回転自在に支持する。内側フレーム2Eは、円環状であり、ロータ2Bを支持する。外側フレーム2Cは、円環状であり、ステータ2Aを支持する。
【0028】
装着面1A、外側フレーム2C、内径部2D、内側フレーム2Eおよびスペーサ2Fは、例えば、ジュラルミンなどの合金で形成することができる。装着面1A、外側フレーム2C、内径部2D、内側フレーム2Eおよびスペーサ2Fは、例えば、鋳造、鍛造または切削加工などの方法で一体的に形成することができる。
【0029】
ロータ2Bは、磁石などにより構成され、ロータ軸4の外側に位置する。ロータ2Bおよびロータ軸4は、内側フレーム2Eに固定される。ロータ軸4は、軸受U1を介して、回転軸S0の軸回りに回転する。ロータ軸4の回転に伴ってロータ2Bおよび内側フレーム2Eも回転軸S0の軸回りに回転する。ロータ軸4、装着部4Aおよび内側フレーム2Eは、例えば、ジュラルミンなどの合金で形成することができる。ロータ軸4、装着部4Aおよび内側フレーム2Eは、例えば、鋳造、鍛造または切削加工などの方法で一体的に形成することができる。
【0030】
中空部3A、3Bは、推力発生用モータ2内に位置する。また、中空部3Aは、ロータ2Bの円周方向に沿ってロータ2Bとロータ軸4の間に位置する。中空部3Bは、ロータ軸4の軸方向に沿ってロータ軸4内径側に位置する。
【0031】
ピッチ可変用モータ5は、回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3を変化させる回転運動を発生させる。ピッチ可変用モータ5は、内径部2Dに固定される。ピッチ可変用モータ5の少なくとも一部は、推力発生用モータ2内に収容される。このとき、ピッチ可変用モータ5は、中空部3Aに位置することができる。ピッチ可変用モータ5の回転軸は、推力発生用モータ2の回転軸S0と並列に位置することができる。
【0032】
回転伝達部6は、ピッチ可変用モータ5で発生された回転運動を推力発生用モータ2の回転軸S0に対して垂直方向に伝える。すなわち、ピッチ可変用モータ5の回転軸と、推力発生用モータ2の回転軸S0は平行な異なる軸であり、回転伝達部6によりピッチ可変用モータ5で発生された回転運動を、推力発生用モータ2の回転軸S0の軸上に伝達する。回転伝達部6は、内径部2Dに固定される。回転伝達部6の少なくとも一部は、推力発生用モータ2内に収容される。
【0033】
回転直動変換部7は、ピッチ可変用モータ5で発生され、回転伝達部6を介して伝えられた回転運動を、回転軸S0の軸方向の直線運動LMに変換する。回転直動変換部7の少なくとも一部は、推力発生用モータ2内に収容される。このとき、回転直動変換部7の少なくとも一部は、中空部3B内に位置することができる。この場合、回転直動変換部7の少なくとも一部は、回転軸S0の軸方向に沿って中空部3Bから回転翼H1~H3側に突出させることができる。回転直動変換部7は、内径部2Dに固定される。
【0034】
直動回転変換部8は、回転直動変換部7で変換された直線運動LMを、各支持軸M1~M3の軸回りの回転運動に変換する。直動回転変換部8は、推力発生用モータ2の外部に位置する。
【0035】
エクステンション9は、回転軸S0の軸方向において、推力発生用モータ2と回転翼H1~H3との間の間隔を保つためのスペーサである。エクステンション9は、回転翼H1~H3が推力発生用モータ2に衝突するのを防止する。エクステンション9は、装着部4Aを介してロータ軸4に固定され、ロータ軸4とともに回転する。
【0036】
ハブ10は、直動回転変換部8を収容するとともに、グリップP1~P3がハブ10から突出した状態でグリップP1~P3を支持する。ハブ10は、エクステンション9を介して、ロータ軸4に固定される。すなわち、ハブ10は、ロータ軸4を介して回転軸S0の軸回りに回転可能な状態で外側フレーム2Cに支持される。ハブ10は、グリップP1~P3を介し、回転軸S0の軸方向に対して垂直方向に回転翼H1~H3を支持する。
【0037】
推力発生用モータ2が動作すると、ロータ2Bが回転軸S0を中心に回転することで、回転翼H1~H3が回転する。そして、各回転翼H1~H3の回転R1~R3に伴って回転翼H1~H3の推力Fが発生する。
【0038】
ここで、ピッチ可変用モータ5、回転伝達部6および回転直動変換部7は、外側フレーム2C側に固定される。このため、ロータ2Bが回転しても、ピッチ可変用モータ5、回転伝達部6および回転直動変換部7は、回転軸S0の軸回りに回転しない。
【0039】
また、ピッチ可変用モータ5が動作すると、各回転翼H1~H3は、各支持軸M1~M3の軸回りに回転し、回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3が変化する。このとき、ピッチ可変用モータ5の回転運動は、回転伝達部6を介して回転直動変換部7に伝えられる。そして、ピッチ可変用モータ5の回転運動は、回転直動変換部7によって、回転軸S0の軸方向の直線運動LMに変換される。そして、回転直動変換部7で変換された1つの直線運動LMは、直動回転変換部8によって、各支持軸M1~M3の軸回りの3つの回転運動に変換される。そして、各支持軸M1~M3の回転運動は、グリップP1~P3をそれぞれ介し、各回転翼H1~H3に伝えられ、各回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3が変化される。
【0040】
ここで、推力発生装置1は、回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3を可変とすることにより、推力を変化させることができる。また、推力発生装置1は、ピッチ角θ1~θ3を可変とすることにより、推力変化の応答速度を速め、飛翔体の安定性を向上させることが可能となるとともに、ブレード長(回転翼H1~H3の長さ)を長くすることなく、飛翔体に必要な推力を確保することができ、推力発生装置1の大型化および重量増を抑制することができる。また、各状況で必要な推力は固定ピッチと比較した場合、推力発生用モータ2の低い回転数で発生できるので、回転数に依存する騒音を抑制することができる。
【0041】
また、推力発生装置1は、回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3を電動で可変とすることにより、油圧を用いる必要がなくなる。このため、油の給排を制御する油圧制御ユニットおよび回転体に対してオイルシールを行うための複雑な回転シール機構を設ける必要がなくなり、推力発生装置1の大型化を抑制することが可能となるとともに、推力発生装置1のメンテナンス性を向上させることができる。
【0042】
また、直動回転変換部8は、回転直動変換部7で変換された1つの直線運動LMを、各支持軸M1~M3の軸回りの3つの回転運動に変換することにより、回転直動変換部7で変換された1つの直線運動LMに基づいて、3枚の回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3を調整することができ、推力発生装置1の大型化を抑制することができる。
【0043】
さらに、回転直動変換部7の少なくとも一部を、推力発生用モータ2内に収容することにより、回転軸S0の軸方向において推力発生用モータ2からの回転直動変換部7の突出量を減らすことができる。このため、推力発生用モータ2で回転翼H1~H3の推進力を発生させ、ピッチ可変用モータ5で回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3を可変とした場合においても、回転軸S0の軸方向に推力発生装置1をコンパクト化することが可能となる。
【0044】
さらに、回転直動変換部7の少なくとも一部を、中空部3B内に収容することにより、推力発生用モータ2を回転軸S0の軸方向に大型化することなく、回転直動変換部7の少なくとも一部を推力発生用モータ2内に収容することができ、回転軸S0の軸方向に推力発生装置1をコンパクト化することが可能となる。
【0045】
さらに、ピッチ可変用モータ5で発生された回転運動を、回転伝達部6を介して伝えることにより、推力発生用モータ2の回転軸S0とピッチ可変用モータ5の回転軸を並列に配置することが可能となり、ピッチ可変用モータ5を推力発生用モータ2内に収容することが可能となる。
【0046】
さらに、直動回転変換部8をハブ10内に収容することにより、回転軸S0の軸方向に推力発生装置1をコンパクト化することが可能となるとともに、直動回転変換部8が外部に露出するのを防止することが可能となる。
【0047】
ここで、回転翼H1~H3がロータ軸4の軸回りに回転すると、各回転翼H1~H3には遠心力F1~F3がそれぞれかかる。各回転翼H1~H3にかかる遠心力F1~F3は、グリップP1~P3をそれぞれ介し、各支持軸M1~M3に伝わる。このとき、各支持軸M1~M3は、各支持軸M1~M3に伝わった各遠心力F1~F3に基づいて、各支持軸M1~M3の回転軸芯を自動調整し、各支持軸M1~M3の軸回りの回転精度を向上させることができる。
【0048】
以下、回転伝達部6、回転直動変換部7および直動回転変換部8の構成および動作について、より具体的に説明する。
図5(a)および
図6(a)は、第1実施形態に係る推力発生装置の構成を示す平面図、
図5(b)は、
図5(a)のA-A線に沿って切断した断面図、
図6(b)は、
図6(a)のB-B線に沿って切断した断面図、
図7(a)は、第1実施形態に係る推力発生装置の推力発生用モータの構成を示す平面図、
図7(b)は、
図7(a)のC-C線に沿って切断した断面図である。
【0049】
図7(a)および
図7(b)において、ロータ2Bは、軸受U1を介し、回転軸S0の軸回りに回転可能な状態で外側フレーム2Cにて支持される。また、推力発生用モータ2内において、ロータ2Bとロータ軸4の間には中空部3Aが設けられ、ロータ軸4内には中空部3Bが設けられている。
【0050】
また、
図2、
図3、
図5(a)、
図5(b)、
図6(a)および
図6(b)において、回転伝達部6は、歯車G1~G3および支持部材BJ1~BJ3を備える。歯車G1~G3は、ピッチ可変用モータ5の回転運動を回転直動変換部7に伝える。歯車G1は、ボールねじ軸7Fの一端に取り付けられる。歯車G3は、ピッチ可変用モータ5の回転軸に取り付けられる。歯車G2は、歯車G1と歯車G3の間で歯車G1、G3と噛み合う位置に設けられる。
【0051】
内径部2Dは、支持部材BJ1を介し、歯車G1およびボールねじ軸7Fが回転可能な状態で歯車G1および回転直動変換部7を支持する。また、内径部2Dは、支持部材BJ3を介し、歯車G3およびピッチ可変用モータ5の回転軸を回転可能な状態で支持する。また、内径部2Dは、支持部材BJ1、BJ2を介し、歯車G2を回転可能な状態で支持する。このとき、歯車G2は、支持部材BJ1、BJ2で挟み込まれた状態で、歯車G1、G3と噛み合う位置に配置される。歯車G1~G3の材料は、例えば、炭素鋼であり、支持部材BJ1~BJ3の材料は、例えば、アルミ合金である。なお、回転伝達部の機構として、歯車の代わりにベルトを用いてもよい。
【0052】
回転直動変換部7の回転直動変換機構として、ボールねじを用いることができる。回転直動変換部7の回転直動変換機構として、すべりねじを用いるようにしてもよい。回転直動変換部7は、直動伝達軸7D、直動案内部7E、ボールねじ軸7Fおよびボールねじナット7Gを備える。
【0053】
直動案内部7Eは、回転軸S0に沿って直線運動する方向にボールねじナット7Gおよび直動伝達軸7Dを案内する。このとき、直動案内部7Eは、ボールねじ軸7Fの回転に伴ってボールねじナット7Gが回転運動するのを規制する。直動案内部7Eは、支持部材BJ1から突出する形状である。直動案内部7Eは、支持部材BJ1と一体的に設けることができる。
【0054】
ボールねじ軸7Fは、軸受U2を介し、回転可能な状態で支持部材BJ1にて支持される。ボールねじ軸7Fは、転動体を介してボールねじナット7Gと螺合した状態で歯車G1とともに回転し、ボールねじナット7Gを直線運動させる。
ボールねじナット7Gは、ボールねじ軸7Fの回転運動に伴って直線運動し、その直線運動LMを直動伝達軸7Dに伝える。
【0055】
直動伝達軸7Dは、ボールねじナット7Gの直線運動LMを直動回転変換部8に伝える。直動伝達軸7Dは、ボールねじナット7Gに固定され、直動伝達軸7Dの先端は、軸受U3の内輪に挿入される。直動伝達軸7Dは、ボールねじナット7Gおよびボールねじ軸7Fの一部を内包する形状である。
【0056】
直動回転変換部8の直動回転変換機構として、ラックアンドピニオンを用いることができる。直動回転変換部8は、直動体11、ラックA1~A3、ケース21、支持軸M1~M3、軸受E1~E3、アダプタD1~D3およびピニオンB1~B3を備える。
【0057】
直動体11は、軸受U3を介し、直動伝達軸7Dの軸回りに回転可能な状態で支持される。このとき、直動体11は、直動伝達軸7Dとともに、回転軸S0の軸方向に沿って直線運動可能である。
【0058】
ラックA1~A3は、直動体11にて支持される。各ラックA1~A3は、ピニオンB1~B3とそれぞれ噛み合った状態で直動体11とともに直線運動し、ピニオンB1~B3をそれぞれ回転運動させる。
【0059】
各支持軸M1~M3は、推力発生装置1から水平方向に放射状に突出するようにグリップP1~P3をそれぞれ支持する。各支持軸M1~M3は、軸受E1~E3をそれぞれ介し、各支持軸M1~M3の軸回りに回転可能な状態でケース21にて保持される。グリップP1と支持軸M1は一体的に設け、グリップP2と支持軸M2は一体的に設け、グリップP3と支持軸M3は一体的に設けることができる。グリップP1~P3と支持軸M1~M3の材料は、例えば、ジュラルミンである。グリップP1~P3と支持軸M1~M3の耐久性を増大させるため、グリップP1~P3と支持軸M1~M3の材料として、例えば、チタンを用いてもよい。
【0060】
各ピニオンB1~B3は、各支持軸M1~M3にそれぞれ固定される。各ピニオンB1~B3は、各ラックA1~A3の直線運動LMに伴って回転運動し、その回転運動を各支持軸M1~M3に伝える。ピニオンB1~B3およびラックA1~A3の材料は、例えば、クロムモリブデン鋼である。
【0061】
ケース21は、ハブ10の一部として用いることができる。ケース21は、例えば、接合面のない非分割ケースである。非分割ケースは、インゴットからの削り出しで作製することができる。このとき、非分割ケースは、接着剤または溶接などで個片を繋ぎ合わせることなく作製することができる。非分割ケースは、繋ぎ目のないシームレスケースであってもよい。ケース21は、直動体11、ラックA1~A3、支持軸M1~M3、軸受E1~E3、アダプタD1~D3およびピニオンB1~B3を収容する。このとき、ケース21は、ロータ軸4の円周方向に120°の間隔で支持軸M1~M3を収容することができる。ケース21は、エクステンション9を介してロータ2Bの端面に固定される。また、ケース21は、回転軸S0の軸回りの回転時に各回転翼H1~H3にかかる遠心力F1~F3に対抗して各支持軸M1~M3を支持することができる。ケース21は、例えば、ジュラルミンなどの切削加工で一体的に形成することができる。
【0062】
各アダプタD1~D3は、支持軸M1~M3と軸受E1~E3との間に設けられ、支持軸M1~M3にてそれぞれ支持される。各アダプタD1~D3の内周面は、支持軸M1~M3の外周面に沿うように形成され、各アダプタD1~D3の外周面は、軸受E1~E3の内周面に沿うように形成される。これにより、各アダプタD1~D3は、各支持軸M1~M3の径の変化に対応しつつ、各軸受E1~E3の内周側で各支持軸M1~M3を支持させることができる。アダプタD1~D3の材料は、例えば、ジュラルミンである。
【0063】
各軸受U3、E1~E3は、例えば、複列アンギュラ玉軸受を用いることができる。複列アンギュラ玉軸受は、単列アンギュラ玉軸受を背面組合せにし、外輪を一体にしてもよいし、単列アンギュラ玉軸受を正面組合せにし、内輪を一体にしてもよい。複列アンギュラ玉軸受は、ラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を負荷することができ、背面組合せではモーメント荷重も負荷できる。
【0064】
エクステンション9は、フランジ9Aを備える。フランジ9Aは、エクステンション9と一体的に設けることができる。エクステンション9は、フランジ9Aを介し、ロータ軸4の端面に取り付け可能である。ここで、ボルトJ6にてフランジ9Aをロータ軸4にねじ止めすることで、エクステンション9をロータ軸4に固定することができる。エクステンション9およびフランジ9Aの材料は、例えば、ジュラルミンである。
【0065】
フランジ9Aは、ロータ軸4の軸方向にフランジ9Aを貫通する貫通孔9Kを備える。貫通孔9Kは、ボルトJ6を挿入可能である。装着部4Aは、ボルトJ6をねじ込み可能な雌ねじ4Bを備える。雌ねじ4Bは、フランジ9Aの装着面側に位置する。貫通孔9Kおよび雌ねじ4Bは、ボルトJ6の挿入位置に対応させて配置することができる。ここで、貫通孔9Kを通してボルトJ6を雌ねじ4Bにねじ込み、ボルトJ6にてフランジ9Aを装着部4Aにねじ止めすることで、エクステンション9をロータ軸4に固定することができる。
【0066】
ピッチ可変用モータ5が回転すると、ピッチ可変用モータ5の回転運動に伴って歯車G1~G3が回転する。そして、歯車G1の回転運動に伴ってボールねじ軸7Fが回転し、ボールねじ軸7Fの回転運動に伴って、ボールねじナット7Gとともに直動伝達軸7Dが直線運動する。このとき、ボールねじナット7Gおよび直動伝達軸7Dの運動は、直動案内部7Eにて案内され、推力発生装置1内において、回転軸S0の軸方向に沿った直線運動に制限される。
【0067】
直動伝達軸7Dの直線運動LMは、直動体11に伝えられ、直動伝達軸7Dの直線運動LMに伴って、直動体11とともに各ラックA1~A3が直線運動する。このとき、各ラックA1~A3は、ピニオンB1~B3とそれぞれ噛み合った状態で直線運動し、各ピニオンB1~B3を回転させる。各ピニオンB1~B3の回転運動に伴って、各支持軸M1~M3がそれぞれの軸回りに回転する。そして、各支持軸M1~M3の回転運動は、グリップP1~P3をそれぞれ介し、各回転翼H1~H3に伝えられ、各回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3が変化される。
【0068】
ここで、回転直動変換部7の回転直動変換機構としてボールねじを用いることにより、すべりねじを用いた場合に比べて、ピッチ可変に必要な駆動トルクを低減することができ、ピッチ可変用モータ5の省電力化を図ることができる。
また、回転直動変換部7に直動伝達軸7Dを設けることにより、ボールねじと直動体11を回転軸S0の軸方向に離間して配置することができ、ボールねじを推力発生用モータ2内に収容しつつ、直動体11をハブ10内に収容することができる。
さらに、直動回転変換部8の直動回転変換機構として、ラックアンドピニオンを用いることにより、各ラックA1~A3の長手方向を直動体11の直動方向に揃えることが可能となるとともに、各ピニオンB1~B3の円周方向を各支持軸M1~M3の円周方向に揃えることが可能となる。このため、3個のラックアンドピニオンの配置を直動体11の周囲でコンパクトにまとめることができ、各回転翼H1~H3に対応して3個のラックアンドピニオンを設けた場合においても、ハブ10の大型化を抑制しつつ、直動回転変換部8をハブ10内に収容することが可能となる。
【0069】
以下、回転伝達部6および回転直動変換部7の構成および動作について、さらに具体的に説明する。
図8(a)は、
図6のピッチ可変用モータ、回転伝達部および回転直動変換部の構成を示す斜視図、
図8(b)は、
図8(a)の回転直動変換部を支持する支持部材および直動案内部を除去した構成を示す斜視図である。
【0070】
図8(a)および
図8(b)において、支持部材BJ1は、ボルトJ1により内径部2Dに固定することができる。ボルトJ1は、例えば、支持部材BJ1の四隅に配置することができる。支持部材BJ2は、支持部材BJ1との間に歯車G2を挟み込んだ状態で、ボルトJ2と支柱31により支持部材BJ1に固定する。ボルトJ2は、例えば、支持部材BJ2の両端に配置することができる。歯車G2の両軸端は、軸受を介して支持部材BJ1およびBJ2に対し回転自在に支持される。支持部材BJ3は、ボルトJ3により内径部2Dに固定することができる。ボルトJ3は、例えば、支持部材BJ3の端部の2か所に配置することができる。また、支持部材BJ3は、ボルトJ4によりピッチ可変用モータ5を固定することができる。
【0071】
ボールねじナット7Gは、フランジ7Aを備える。フランジ7Aは、円筒を平行な二平面で切り取った形状であり、直動案内部7Eの開口部にフランジ7Aの突出部が配置される。フランジ7Aは、ボールねじナット7Gと一体的に設けることができる。
直動伝達軸7Dは、フランジ7Bおよび案内面7Cを備える。案内面7Cは、摺動部材7Hを備える。フランジ7Bおよび案内面7Cは、円筒を平行な二平面で切り取った形状であり、直動案内部7Eの開口部にフランジ7Bが配置される。
【0072】
フランジ7Bの平坦面と案内面7Cは一体の平面であってもよい。この平坦面は、互いに反対方向を向く2つの面であってもよい。フランジ7A、7Bの突出部には、ボルトJ5を挿入可能な領域を設けることができる。フランジ7A、7Bが重なった状態で、ボルトJ5にてフランジ7Aをフランジ7Bに固定することにより、直動伝達軸7Dをボールねじナット7Gに固定することができる。
【0073】
また、フランジ7Bの平坦面または案内面7Cには、摺動部材7Hを挿入可能な凹部を設けることができる。そして、その凹部に摺動部材7Hを挿入し、接着剤などでフランジ7Bに固定することができる。このとき、摺動部材7Hは、平坦面から突出する。摺動部材7Hの材料は、例えば、樹脂である。
【0074】
一方、直動案内部7Eの内側には、フランジ7A、7Bおよび案内面7Cの平坦面と対向する平面を設けることができる。そして、直動伝達軸7Dの直線運動LMに伴って摺動部材7Hが直動案内部7Eの平面を摺動することにより、直動伝達軸7Dの運動を回転軸S0の軸方向に制限することができる。
【0075】
ここで、フランジ7A、7Bの外周部の一部および案内面7Cに平坦面を設けるとともに、ボルトJ5を挿入可能な突出部をフランジ7A、7Bに設け、突出部を直動案内部7Eの開口部に配置することにより、直動案内部7Eの外径を小さくすることができ、推力発生用モータ2内のロータ軸4の径の増大を抑制しつつ、回転直動変換部7をロータ軸4内に収納することが可能となる。
【0076】
以下、直動回転変換部8の構成および動作について、さらに具体的に説明する。
図9は、
図1(b)のハブの構成を分解して示す斜視図、
図10は、
図3のラックが取り付けられた直動体とピニオンとの位置関係を示す上面図、
図11(a)は、
図1(b)の回転翼のピッチ角に対応した直動体の位置を示す斜視図、
図11(b)は、
図1(c)の回転翼のピッチ角に対応した直動体の位置を示す斜視図である。
【0077】
図9、
図10、
図11(a)および
図11(b)において、直動回転変換部8は、その直動方向の移動範囲を制限するため、リフトガイド19およびナットS1~S3を備える。リフトガイド19は、ガイドピンT1~T3およびガイドベース13を備える。ガイドベース13は、直動伝達軸7Dの先端を通過可能な開口14を備える。直動体11は、開口12、開口V1~V3および面Z1~Z3を備える。ハブ10は、ケース21、外蓋22および中蓋23を備える。ケース21は、収容部21A、中空部Q1~Q3、開口21Bおよび開口K1~K3を備える。中蓋23は、貫通孔23Aを備える。
【0078】
各面Z1~Z3は、直動体11が回転軸S0の軸回りに3回の回転対称となる位置に設けられる。3回の回転対称では、回転軸S0の軸回りに直動体11を120°だけ回転させる度に、回転後の形状を回転前の形状に重ねることができる。各面Z1~Z3は、ラックA1~A3をそれぞれ支持可能である。このとき、各面Z1~Z3は、各ラックA1~A3の歯がピニオンB1~B3の歯の方向を向く位置で各ラックA1~A3を支持する。
開口12には軸受U3が挿入され、さらに軸受U3の内輪には直動伝達軸7Dが挿入される。各開口V1~V3は、ガイドピンT1~T3をそれぞれ挿入可能である。
【0079】
直動体11は、軸受U3の外輪で支持され、直動伝達軸7Dの先端はナット15により軸受U3の内輪に固定される。軸受U3の外輪は、例えば、C型留め輪16にて直動体11に取り付けることができる。
【0080】
ガイドベース13は、ガイドピンT1~T3を直立した状態で支持する。ガイドピンT1~T3は、ガイドベース13と一体的に設けることができる。ガイドベース13の平面形状は、直動体11の平面形状と等しくすることができる。各開口V1~V3の位置は、ガイドピンT1~T3の位置に対応させることができる。
【0081】
開口21Bは、ラックA1~A3が取り付けられた直動体11をリフトガイド19とともに収容部21Aに挿入可能である。各開口K1~K3は、各支持軸M1~M3をケース21内に挿入可能である。
【0082】
収容部21Aは、ラックA1~A3が取り付けられた直動体11をリフトガイド19とともにケース21内に収容する。ただし、ガイドピンT1~T3の先端は、収容部21Aから突出可能である。収容部21Aは、例えば、ケース21内に設けられた中空部または凹部である。収容部21Aの平面形状は、ガイドベース13の平面形状に対応させることができる。このとき、収容部21Aの平面形状は、回転軸S0の軸回りに3回の回転対称とすることができる。
【0083】
一方、各支持軸M1~M3を挿入可能な開口K1~K3は、収容部21Aの外側の円周面に沿って配置することができる。このとき、支持軸M1、ピニオンB1、軸受E1およびアダプタD1を挿入可能な中空部Q1と、支持軸M2、ピニオンB2、軸受E2およびアダプタD2を挿入可能な中空部Q2と、支持軸M3、ピニオンB3、軸受E3およびアダプタD3を挿入可能な中空部Q3をケース21に設けることができる。各中空部Q1~Q3には、開口21Bを介し、支持軸M1~M3、ピニオンB1~B3、軸受E1~E3およびアダプタD1~D3をそれぞれ挿入可能である。
【0084】
ガイドピンT1~T3の先端は、貫通孔23Aを介して中蓋23の外側に突出する。そして、ガイドピンT1~T3の先端が中蓋23の外側に突出した状態で、ナットS1~S3が各ガイドピンT1~T3の先端に装着されることで、収容部21A内にガイドベース13を配置することができる。
【0085】
中蓋23は、ケース21にて支持される。中蓋23は、ボルトJ7にてケース21に固定することができる。外蓋22は、中蓋23をカバーする。外蓋22は、中蓋23に固定することができる。中蓋23の材料は、例えば、ジュラルミン、外蓋22の材料は、例えば、樹脂である。
【0086】
そして、ラックA1~A3が取り付けられた直動体11は、収容部21Aに収納される。各ピニオンB1~B3が取り付けられた各支持軸M1~M3は、各中空部Q1~Q3に収納される。このとき、
図10に示すように、各支持軸M1~M3は、それぞれの回転軸JS1~JS3が直動体11の各面Z1~Z3に対して垂線方向JD1~JD3に向くように配置される。そして、各ラックA1~A3は、各面Z1~Z3上において、各ピニオンB1~B3と噛み合う位置でそれぞれ支持される。
【0087】
また、各ピニオンB1~B3は、各ピニオンB1~B3の各回転軸と各支持軸M1~M3の各回転軸JS1~JS3が同一方向に向いた状態で各支持軸M1~M3にて支持される。このとき、各ピニオンB1~B3の一方の各端面B1A~B3Aは、各回転翼H1~H3にかかる各遠心力F1~F3の方向を向くことができる。各ピニオンB1~B3の他方の各端面B1B~B3Bは、各面Z1~Z3に対向することができる。
【0088】
直動伝達軸7Dの直線運動に伴って、直動体11とともに各ラックA1~A3が直線運動する。このとき、直動体11の運動は、ガイドピンT1~T3にて案内されるとともに、直動体11の直動方向の移動範囲が、ガイドベース13およびナットS1~S3にて制限される。各ラックA1~A3の直線運動に伴ってピニオンB1~B3がそれぞれ回転運動し、ピニオンB1~B3の回転運動に伴って、各支持軸M1~M3がそれぞれの軸回りに回転する。そして、各支持軸M1~M3の回転運動に伴って各回転翼H1~H3が回転し、各回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3が変化される。例えば、直動体11が
図11(a)の位置にあるときは、各回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3が
図1(b)に示すように設定され、直動体11が
図11(b)の位置にあるときは、各回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3が
図1(c)に示すように設定される。
【0089】
ここで、回転軸S0の軸回りに3回の回転対称となる位置に各面Z1~Z3を設け、ラックA1~A3を各面Z1~Z3に配置することにより、1個の直動体11を直線運動させることで、3個の各支持軸M1~M3の軸回りの3個の回転運動を発生させることができる。このため、直動回転変換部8をハブ10内に収容することを可能としつつ、3枚の回転翼H1~H3のピッチを可変とすることができる。
【0090】
また、各ピニオンB1~B3の各回転軸と各支持軸M1~M3の各回転軸JS1~JS3を同一方向に向けることにより、各回転翼H1~H3にかかる各遠心力F1~F3に基づいて、各ピニオンB1~B3が各支持軸M1~M3の方向に力を受けるようにすることができる。このため、各回転翼H1~H3にかかる各遠心力F1~F3を利用し、各ピニオンB1~B3の各端面B1A~B3Aが各軸受E1~E3の内輪の端面に押し当てられるようにすることができ、各ピニオンB1~B3を各支持軸M1~M3に取り付けた際のガタを除去しつつ、各ピニオンB1~B3を各支持軸M1~M3に固定することができる。
【0091】
また、各ピニオンB1~B3の各端面B1B~B3Bは、直動体11の各面Z1~Z3に対向させることにより、各ピニオンB1~B3の各端面B1B~B3Bと直動体11の各面Z1~Z3との間の隙間を小さくすることができ、直動回転変換部8のコンパクト化を図ることができる。
【0092】
以下、ケース21内における各支持軸M1~M3の支持機構の一例について、より具体的に説明する。なお、以下の説明では、支持軸M1の支持機構を例にとるが、各支持軸M2、M3の支持機構についても同様に構成される。
図12は、実施形態に係る直動回転変換部の1つのグリップ部分の構成を示す断面図、
図13は、
図12の直動回転変換部の1つのグリップ部分の構成を分解して示す斜視図である。
【0093】
図12および
図13において、支持軸M1の外周面は、回転翼H1の方向に向かって支持軸M1の軸方向に傾斜している面M1Aを備える。面M1Aは、支持軸M1の軸回りに回転対称な面とすることができる。面M1Aは、例えば、遠心力F1の方向に向かって先細りになる面である。面M1Aは、例えば、遠心力F1の方向と反対方向に広がるテーパ面である。面M1Aは、必ずしも支持軸M1の外周面全体に設ける必要はなく、支持軸M1の外周面の一部に設けてもよい。面M1Aは、軸受E1の内輪で支持軸M1の周囲が囲まれる位置にあればよい。面M1Aは、回転翼H1の方向に向かって直線状に傾斜してもよいし、曲線状に傾斜してもよい。面M1Aが回転翼H1の方向に向かって曲線状に傾斜する場合、外側に反った形状であってもよいし、内側に反った形状であってもよいし、これらを組み合わせた形状であってもよい。面M1Aが転翼H1の方向に向かって直線状に傾斜する場合、面M1Aは、円錐面状とすることができる。面M1Aが遠心力F1の方向に向かって曲線状に傾斜する場合、例えば、ラッパ状、壺状または鐘状とすることができる。
【0094】
アダプタD1の内周面D1Aは、支持軸M1の面M1Aに沿うように形成され、遠心力F1の方向に向かう力を支持軸M1の面M1Aから受ける。このとき、支持軸M1の面M1Aは、その反作用として、支持軸M1の回転軸が支持軸M1の回転中心に近づく方向の力をアダプタD1の内周面D1Aから受ける。また、アダプタD1は、フランジD1Bを備える。フランジD1Bは、アダプタD1の末端に位置する。フランジD1Bは、遠心力F1の方向に向かう力を、軸受E1を介して受ける。アダプタD1は、中空部Q1内に挿入された支持軸M1に面M1Aの位置で装着可能とするために、2つに分割可能である。
【0095】
ケース21は、遠心力F1の方向に支持軸M1が引き抜かれるような力を受ける受面21Cを備える。受面21Cは、支持軸M1の回転軸JS1に対して垂直な面とすることができる。開口K1は、受面21Cに設けられる。
【0096】
受皿Y1、スラスト軸受L1および受皿X1は、支持軸M1にかかる遠心力F1を、アダプタD1を介して受面21Cに伝える。このとき、受皿Y1、スラスト軸受L1および受皿X1は、アダプタD1を介して伝えられた遠心力F1の方向の力がケース21にかかるのを緩和する。ここで、フランジD1B、受皿Y1、スラスト軸受L1および受皿X1の外径は、開口K1の径よりも大きくする。これにより、フランジD1B、受皿Y1、スラスト軸受L1、受皿X1および受面21Cの面を順次押し当て可能とすることができ、フランジD1B、受皿Y1、スラスト軸受L1および受皿X1を順次介し、支持軸M1にかかる遠心力F1をケース21の受面21Cで受けることができる。
【0097】
シールリングO1は、支持軸M1に対するグリップP1の付け根の位置に装着される。そして、シールリングO1が装着された支持軸M1を、開口K1を介して中空部Q1に挿入する。シールリングO1は、回転翼H1に遠心力F1がかかった場合においても、軸受E1およびスラスト軸受L1などに用いられるグリースが中空部Q1外に飛び散るのを防止する。
【0098】
フランジD1B、受皿Y1、スラスト軸受L1および受皿X1の外径は、開口K1の径よりも大きいので、フランジD1B、受皿Y1、スラスト軸受L1および受皿X1は、開口K1を介して中空部Q1に挿入できない。このため、開口21Bを介し、受皿Y1、スラスト軸受L1および受皿X1を中空部Q1に順次挿入する。このとき、支持軸M1を通すようにして、受皿Y1、スラスト軸受L1および受皿X1を受面21Cの内側に配置する。
【0099】
次に、開口21Bを介し、アダプタD1を中空部Q1に挿入する。このとき、支持軸M1の面M1Aの位置で支持軸M1を挟み込むようにしてアダプタD1を支持軸M1に装着する。ここで、アダプタD1の各分割片の各端部には凸部と凹部を設けることができる。アダプタD1の一方の分割片の凸部は、アダプタD1の他方の分割片の凹部と対向し、アダプタD1の一方の分割片の凹部は、アダプタD1の他方の分割片の凸部と対向する位置に配置することができる。そして、アダプタD1の一方の分割片の凸部と凹部を、アダプタD1の他方の分割片の凹部と凸部にそれぞれはめ合わせることで、アダプタD1の2つの分割片の位置を揃えることができる。
【0100】
次に、開口21Bを介し、シムC1を中空部Q1に挿入する。そして、アダプタD1のフランジD1Bの外周にシムC1を装着する。中空部Q1内でアダプタD1を支持軸M1に装着可能とするために、フランジD1Bの外径は、中空部Q1の内径より小さくすることができる。このとき、フランジD1Bの外周にシムC1を装着することにより、中空部Q1内におけるアダプタD1のガタを除去することができる。シムC1が装着されたアダプタD1は、フランジD1Bを受皿X1に押し当て可能な位置に配置することができる。
【0101】
次に、開口21Bを介し、軸受E1を中空部Q1に挿入する。このとき、軸受E1の外輪は、ケース21側で支持され、支持軸M1は、アダプタD1を介し軸受E1の内輪側で支持される。軸受E1の軸方向の一端は、フランジD1Bに接し、軸受E11の軸方向の他端は、開口21Bに接するように配置することができる。また、ピニオンB1の端面B1Aは、軸受E1の内輪の端面E1Aに対向させることができる。このとき、ピニオンB1の端面B1Aは、軸受E1の内輪の端面E1Aに押し当て可能である。
【0102】
次に、開口21Bを介し、ピニオンB1を中空部Q1に挿入する。ピニオンB1は、支持軸M1の軸方向の一端に取り付けることができる。次に、開口21Bを介し、C型止め輪I1を中空部Q1に挿入し、支持軸M1に設けられた溝M1Bに嵌め込む。C型止め輪I1は、支持軸M1の軸方向の一端がピニオンB1を貫通した位置で、ピニオンB1を支持軸M1に固定することができる。
【0103】
回転翼H1は、ボルトP1AとナットP1DでグリップP1に取り付けることができる。このとき、ボルトP1AとグリップP1の間にワッシャP1Bを設け、ナットP1DとグリップP1の間にワッシャP1Cを設けてもよい。
【0104】
グリップP1には、推力発生用モータ2の回転に伴って常時遠心力F1がかかる。ここで、面M1Aをテーパ形状とすることにより、アダプタD1を押し広げるような方向に力が掛かる。このとき、軸受E1の内輪でアダプタD1の広がり方向が制限されるため、支持軸M1とアダプタD1には楔効果が発生し、遠心力F1の方向に対して支持軸M1の移動の制限が掛かり、支持軸M1がケース21から抜けるのを防止することができ。
推力発生用モータ2の回転数が上がるに従って、アダプタD1が軸受E1の内輪を押し付ける力が大きくなる。このため、この楔効果が増大し、遠心力F1に対して、支持軸M1がケース21からより抜けづらくすることができる。
【0105】
また、面M1Aをテーパ形状とすることにより、支持軸M1の取り付けのガタツキまたは支持軸M1の加工精度のバラツキなどがある場合においても、支持軸M1の軸芯のガタが減少する方向に支持軸M1の軸芯を自動調整することができる。遠心力F1の大部分は、アダプタD1のフランジD1Bを介し、受皿Y1、スラスト軸受L1、受皿X1およびケース21の順に伝わって、ケース21の受面21Cで支えられる。
【0106】
ここで、ケース21として接合面のない非分割ケースを用いることにより、ケース21を構成するために、ねじなどの締結部材を不要とすることができる。このため、分割式ケースを使用した場合に対し、ケース21自体の強度を確保するとともに、軸受E1の予圧機構を省きつつ、グリップP1を支えることができ、直動回転変換部8の軽量化が可能となる。
【0107】
また、ピニオンB1の端面B1Aは、軸受E1の内輪の端面E1Aに押し当て可能とすることにより、ピニオンB1と支持軸M1にC型止め輪I1を嵌めるための隙間がある場合においても、支持軸M1にかかる遠心力F1を利用し、ピニオンB1の端面B1Aが軸受E1の内輪の端面E1Aに押し当てられることで、ピニオンB1を支持軸M1に取り付けた際のガタを除去することが可能となるとともに、軸受E1に予圧をかけることができる。このため、ねじなどの締結部材を用いることなく、ピニオンB1を支持軸M1に固定することができ、ピニオンB1を支持軸M1に固定するための取り付け機構および取り付け作業を簡略化することができる。
【0108】
なお、受皿Y1、スラスト軸受L1、受皿X1、アダプタD1、シムC1、軸受E1、ピニオンB1およびC型止め輪I1は、中空部Q1内で支持軸M1の周りに組み付けられ後、開口21Bを介して中空部Q1から抜き出し可能である。このため、支持軸M1は、ケース21に脱着可能である。これにより、グリップP1の破損などに応じて、ケース21から支持軸M1を抜き出し、グリップP1を交換することができる。
【0109】
以下、ケース21の開口K1をシールするシールリングO1の一例について、より具体的に説明する。なお、以下の説明では、ケース21の開口K1をシールするシールリングO1を例にとるが、ケース21の開口K2、K3をシールするシールリングについても同様に構成される。
図14(a)は、
図13のシールリングの構成を示す斜視図、
図14(b)は、
図14(a)のシールリングの構成を示す正面図、
図14(c)は、
図14(b)のD-D線に沿って切断した断面図である。
【0110】
図14(a)~
図14(c)において、シール材としてのシールリングO1は、
図12に示すように、グリップP1の付け根の位置に装着され、グリップP1とケース21との間の隙間P1Mを塞ぐ。隙間P1Mは、
図12に示すように、ケース21の開口K1の位置において、グリップP1とケース21との間にある。シールリングO1の装着位置において、シールリングO1のグリップP1への装着前の内径はグリップP1の径よりも小さい。シールリングO1の材料は、例えば、ゴムなどの弾性体である。このため、シールリングO1をグリップP1に装着することにより、グリップP1を締め付けることができ、シールリングO1の密着性を向上させることができる。
【0111】
グリップP1は、
図12に示すように、ケース21の外側で径方向に広がった傾斜面P1Nを備える。このとき、
図14(a)および
図14(c)に示すように、シールリングO1は、リップPA~PCを備えることができる。リップPA、PB間には窪みKUが設けられている。リップPAは、グリップP1とケース21との間の隙間P1Mの位置でグリップP1とケース21に密着する。リップPBは、グリップP1の傾斜面P1Nに密着する。リップPCは、グリップP1とケース21との間の隙間P1Mの位置より径方向外側でケース21に密着する。
【0112】
図15(a)および
図15(b)は、
図14(a)のシールリングの装着方法の一例を示す断面図である。なお、
図15(a)は、シールリングの装着時の変形前の状態を示し、
図15(b)は、シールリングの装着時の変形後の状態を示す。
【0113】
図15(a)において、グリップP1は、ケース21の開口部K1を介して外側に突出する。このとき、グリップP1とケース21との間には隙間P1Mが発生する。そして、シールリングO1がグリップP1の付け根の位置に装着された場合、リップPAは、隙間P1Mを塞ぐようにグリップP1とケース21に密着する。リップPBは、グリップP1の傾斜面P1Nに密着し、リップPCは、隙間P1Mの位置より径方向外側でケース21に密着する。
【0114】
ここで、
図15(b)に示すように、シールリングO1の装着位置において、シールリングO1の内径はグリップP1の径よりも小さい。このため、リップPA、PBは、グリップP1にて押圧されることで弾性変形する。ここで、リップPA、PB間に窪みKUを設けることで、リップPAを押し広げやすくすることができる。このとき、リップPBは、グリップP1の傾斜面P1Nで押圧されることで、ケース21の方向にリップPCを押圧し、リップPCがケース21により強く密着される。そして、リップPAは、その弾性変形により隙間P1Mの奥の方向に侵入するとともに、リップPBがグリップP1に強く密着し、リップPCがケース21に強く密着することにより、リップPAが隙間P1Mから抜けにくくすることができる。
【0115】
ここで、グリップP1は、支持軸M1に結合されている。支持軸M1は、軸受E1を介し、支持軸M1の軸回りに回転可能な状態でケース21内に保持される。このとき、支持軸M1と軸受E1との間にアダプタD1が介在される。
図12に示すような遠心力F1がグリップP1にかかると、アダプタD1を押し広げるような方向に力が掛かかり、支持軸M1が締め付けられることから、ケース21から抜けにくくなる。また、アダプタD1のフランジD1Bとケース21の受面21Cとの間にはスラスト軸受L1が配置される。
【0116】
ここで、軸受E1およびスラスト軸受L1の動作を円滑化するために、グリースなどの潤滑剤がケース21内に封入されることがある。このとき、グリップP1にシールリングO1を装着することにより、ケース21内に遠心力F1がかかった場合においても、グリースがケース21外に飛散するのを防止することができる。このとき、シールリングO1は、遠心力F1により、
図15(b)の状態よりさらにケース21から離れる方向(
図15(b)の右方)に移動させられる。しかし、リップPBが傾斜面P1Nで拡径されることで弾性変形し、リップPCはケース21に押し付けられる。また、グリップP1にシールリングO1を嵌め込むことで隙間P1Mを塞ぐことができ、シール作業の煩雑化を抑制しつつ、ケース21のシール性を向上させることができる。
【0117】
また、グリップP1の破損などに応じて、グリップP1は交換可能である。このとき、グリップP1に結合された支持軸M1をケース21から抜き出すために、ケース21からアダプタD1を抜き出す必要がある。グリップP1にかかる遠心力F1によってアダプタD1は押し広げられ、支持軸M1は、アダプタD1により締め付けられている。このため、
図18に示すように、グリップP1に対して遠心力F1と反対の方向に力FV1をかけ、遠心力F1と反対の方向に支持軸M1を移動させる。このとき、支持軸M1は、アダプタD1の内周面の径の大きい方向に移動するので、アダプタD1による支持軸M1の締め付けが緩和され、ケース21からアダプタD1を抜き出しやすくすることができる。
【0118】
グリップP1に対して遠心力F1と反対の方向に力FV1をかるために、グリップP1の先端をハンマなどで叩くことができる。このとき、グリップP1の傾斜面P1Nがケース21に衝突し、ケース21に衝撃がかかる。ここで、グリップP1にシールリングO1を装着することにより、傾斜面P1Nを介してケース21にかかる衝撃を緩和することができ、ケース21を保護することができる。
【0119】
図16(a)および
図16(b)は、
図14(a)のシールリングの装着方法のその他の例を示す断面図である。なお、
図16(a)は、シールリングの装着時の変形前の状態を示し、
図16(b)は、シールリングの装着時の変形後の状態を示す。
【0120】
図16(a)の支持軸M1の支持機構では、
図15(a)のケース21の代わりにケース21´を備える。ケース21´は、凸部21Dと凹部21Eがケース21に追加されている。凸部21Dは、シールリングO1の装着位置において、シールリングO1をグリップP1に押し付ける。凹部21Eは、シールリングO1の装着位置において、リップPCを収容する。このとき、凸部21Dは、支持軸M1の軸方向に受面21Cに隣接して設けることができる。凹部21Eは、受面21Cと凸部21Dの間に設けることができる。凸部21Dと凹部21Eは、ケース21´に一体的に設けることができる。凸部21Dと凹部21Eの材料は、例えば、ジュラルミンである。
【0121】
ここで、
図16(b)に示すように、シールリングO1の装着位置において、装着前のシールリングO1の内径はグリップP1の径よりも小さい。このため、リップPA、PBは、グリップP1にて押圧されることで弾性変形し、リップPAは、隙間P1Mの奥の方向に侵入する。また、シールリングO1は、凸部21DでグリップP1に押し付けられることで、リップPB、PCの間の位置でくびれる。このとき、リップPCは、凹部21Eに侵入し、グリップP1およびシールリングO1にかかる遠心力F1によってグリップP1がケース21´から引き離された場合においても、リップPCの位置は、凹部21Eの位置に維持される。
【0122】
これにより、グリップP1およびシールリングO1にかかる遠心力F1によってグリップP1がケース21´から引き離された場合においても、シールリングO1がケース21´から引き離されるのを防止することができ、ケース21´のシール性を維持することができる。
【0123】
図17(a)および
図17(b)は、
図14(a)のシールリングの装着方法のさらにその他の例を示す断面図である。なお、
図17(a)は、シールリングの装着時の変形前の状態を示し、
図17(b)は、シールリングの装着時の変形後の状態を示す。
【0124】
図17(a)の支持軸M1の支持機構では、
図15(a)のケース21の代わりにケース21´´を備える。ケース21´´は、クランプ部21Fを装着可能である。クランプ部21Fは、ケース21´´への装着時に、リップPCを収容しつつ、リングO1をグリップP1に押し付ける段差21Gを備える。このとき、段差21Gは、受面21Cとの間でリップPCを収容可能な凹部21Iを形成する。クランプ部21Fは、ボルト21Hなどによりケース21´´の受面21Cに固定することができる。クランプ部21Fの材料は、例えば、ジュラルミンである。
【0125】
ここで、
図17(b)に示すように、シールリングO1の装着位置において、装着前のシールリングO1の内径はグリップP1の径よりも小さい。このため、リップPA、PBは、グリップP1にて押圧されることで弾性変形し、リップPAは、隙間P1Mの奥の方向に侵入する。また、シールリングO1は、段差21Gの位置でグリップP1に押し付けられることで、リップPB、PCの間の位置でくびれる。このとき、リップPCは、凹部21Iに侵入し、グリップP1およびシールリングO1にかかる遠心力F1によってグリップP1がケース21´´から引き離された場合においても、リップPCの位置は、凹部21Iの位置に維持される。
【0126】
これにより、グリップP1およびシールリングO1にかかる遠心力F1によってグリップP1がケース21´´から引き離された場合においても、シールリングO1がケース21´´から引き離されるのを防止することができ、ケース21´´のシール性を維持することができる。
【0127】
以下、第2実施形態に係る推力発生装置について説明する。上述した第1実施形態では、推力発生用モータ2と回転翼H1~H3との間の間隔を保つためのスペーサとして、フランジ9Aを有するエクステンション9を用いた例について説明した。第2実施形態では、推力発生用モータ2と回転翼H1~H3との間の間隔を保つためのスペーサとして、フランジ9Aがないエクステンション9´を用いる例について説明する。
以下の説明では、第1実施形態の構成と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0128】
図19(a)は、第2実施形態に係る推力発生装置に回転翼を取り付けた状態を示す斜視図、
図19(b)および
図19(c)は、第2実施形態に係る推力発生装置に取り付けられた回転翼のピッチ角を変化させた状態を示す側面図、
図20および
図21は、
図19(a)の推力発生装置の構成を分解して示す斜視図、
図22(a)および
図22(b)は、
図20および
図21の推力発生装置の組み立て後の構成を示す斜視図、
図23(a)および
図24(a)は、第2実施形態に係る推力発生装置の構成を示す平面図、
図23(b)は、
図23(a)のA-A線に沿って切断した断面図、
図24(b)は、
図24(a)のB-B線に沿って切断した断面図である。
【0129】
【0130】
エクステンション9´は、回転軸S0の軸方向において、推力発生用モータ2と回転翼H1~H3との間の間隔を保つためのスペーサである。エクステンション9´は、回転翼H1~H3が推力発生用モータ2に衝突するのを防止する。エクステンション9´は、装着部4Aを介してロータ軸4に固定され、ロータ軸4とともに回転する。このとき、ハブ10は、エクステンション9´を介して、ロータ軸4に固定される。エクステンション9´は、ロータ軸4の軸方向に直動伝達軸7Dを通すために円筒状とすることができる。エクステンション9´は、
図2のエクステンション9のフランジ9Aがないという点以外はエクステンション9と同様に構成することができる。
【0131】
以下、エクステンション9´を介したロータ軸4の端面側へのハブ10の取り付け方法について具体的に説明する。
図25は、
図19(b)のハブおよびエクステンションの構成を分解して示す斜視図、
図26は、
図19(b)の装着部、ケースおよびエクステンションの構成を分解して示す斜視図、
図27は、
図26のケースの構成を示す下面図である。
【0132】
図25から
図27において、ケース21の収容部21Aは、頂面21Dを備える。頂面21Dは、エクステンション9´の装着側に位置する。頂面21Dには、円形状の開口21Cおよび貫通孔WA1~WA3が設けられている。貫通孔WA1~WA3は、開口21Cの周囲の3か所に配置することができる。各貫通孔WA1~WA3は、ボルトW1~W3の挿入可能である。エクステンション9´は、段差9Bおよび貫通孔WB1~WB3を備える。段差9Bは、エクステンション9´の内周面側でロータ軸4の軸方向に突出する。段差9Bは、開口21Cに挿入可能である。貫通孔WB1~WB3は、ロータ軸4の軸方向にエクステンション9´を貫通する。各貫通孔WB1~WB3は、ボルトW1~W3の挿入可能である。装着部4Aは、雌ねじWC1~WC3を備える。雌ねじWC1~WC3は、エクステンション9´の装着面側に位置する。各貫通孔WA1~WA3、WB1~WB3および各雌ねじWC1~WC3は、各ボルトW1~W3の挿入位置に対応させて配置することができる。中蓋23は、ねじJ7を挿入可能な貫通孔23Dを備える。このとき、外蓋22は、貫通孔23Dを塞ぐように中蓋23をカバーすることができる。
【0133】
そして、段差9Bを開口21Cに挿入し、ケース21の頂面21Dをエクステンション9´の下端側に突き合わせる。そして、ボルトW1~W3を収容部21A内に挿入し、貫通孔WA1~WA3をそれぞれ介してケース21から突出させ、さらに貫通孔WB1~WB3をそれぞれ介してエクステンション9´から突出させ、雌ねじWC1~WC3にねじ止めすることで、ケース21およびエクステンション9´を装着部4Aに固定することができる。このとき、ケース21内およびエクステンション9´内にボルトW1~W3を収めた状態でケース21およびエクステンション9´を装着部4Aに固定することができる。このため、ボルトW1~W3が推力発生装置1´の外部に露出するのを防止することが可能となるとともに、
図1(a)の推力発生装置1に比べて
図19(a)の推力発生装置1´の軽量化を図りつつ、推力発生装置1´からのボルトW1~W3の脱落を防止することができる。
【0134】
ここで、
図25に示すように、ケース21とエクステンション9´の対向面にノックピン9Eを挿入し、装着部4Aとエクステンション9´の対向面にマーカピン9Fを挿入することができる。なお、ノックピン9Eおよびマーカピン9Fはそれぞれ、ボルトW1~W3の個数に合わせて3個ずつ設けることができる。このとき、エクステンション9´の下端面側において、ノックピン9EとボルトW1~W3を円周方向に交互に配置することができる。また、装着部4Aにおいて、マーカピン9FとボルトW1~W3を円周方向に交互に配置することができる。これにより、ケース21およびエクステンション9´を装着部4Aにねじ止めするためのクリアランスを確保しつつ、ケース21およびエクステンション9´の位置決め精度を向上させることが可能となるとともに、ボルトW1~W3にかかる周方向のトルクを逃がすことができる。
【0135】
そして、直動体11、ラックA1~A3およびピニオンB1~B3が収容部21A内に配置された状態で、開口21Bを塞ぐように中蓋23がケース21に装着される。そして、ねじJ7が貫通孔23Dに挿入された状態で、ねじJ7がケース21にねじ込まれることで中蓋23がケース21に固定される。そして、ねじJ7が挿入された貫通孔23Dを塞ぐように外蓋22が中蓋23に装着される。これにより、ねじJ7が推力発生装置1´の外部に露出するのを防止することが可能となるとともに、ねじJ7の脱落を防止することができる。
【0136】
なお、ケース21と装着部4Aは、
図1(b)の推力発生装置1と
図19(b)の推力発生装置1とで共通である。このため、
図20のエクステンション9´では装着強度が不足する場合に、ケース21および装着部4Aを改変することなく、
図2のエクステンション9に交換することができる。
【0137】
上記の実施形態においては、各回転翼H1~H3は推力発生装置1の真下に配置され、推力発生装置1は飛翔体の機体の下部に装着されるが、各回転翼H1~H3は推力発生装置1の真上に配置され、推力発生装置1は飛翔体の機体の上部に装着されてもよい。
【0138】
なお、上述した実施形態では、推力発生用モータ2と回転翼H1~H3との間の間隔を保つために、
図1(b)のエクステンション9または
図19(b)のエクステンション9´を設けた構成について示したが、エクステンション9またはエクステンション9´がなくても、推力発生用モータ2と回転翼H1~H3との間の間隔を十分維持できる場合は、エクステンション9またはエクステンション9´がなくてもよい。
図1(b)のエクステンション9がない場合、フランジ9Aをケース21に設けてもよい。
図19(b)のエクステンション9´がない場合、エクステンション9´による間隔分だけボルトW1~W3を短くし、ボルトW1~W3を用いてケース21を装着部4Aに直接固定することができる。
【符号の説明】
【0139】
1 推力発生装置、H1~H3 回転翼、P1~P3 グリップ、2 推力発生用モータ、2A ステータ、2B ロータ、3A、3B 中空部、4 ロータ軸、5 ピッチ可変用モータ、6 回転伝達部、7 回転直動変換部、8 直動回転変換部、9 エクステンション