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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】電動車両の下部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20241001BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20241001BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241001BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20241001BHJP
【FI】
B60K1/04 A
B62D25/20 E
H01M50/249
H01M50/262 S
H01M50/262 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021052671
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150183
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 憲治
(72)【発明者】
【氏名】大神 宗之
(72)【発明者】
【氏名】角田 龍平
(72)【発明者】
【氏名】中山 俊太朗
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-093458(JP,A)
【文献】特開2006-168600(JP,A)
【文献】特開2013-112182(JP,A)
【文献】特開2013-251111(JP,A)
【文献】国際公開第2013/188680(WO,A1)
【文献】特開2015-077896(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009043635(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12, 7/00- 8/00,16/00
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04
B60K 6/20- 6/547
B60W 10/00,10/02,10/06,10/08,10/10,
10/18,10/26,10/28,10/30-20/50
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に伸びるフロアトンネルが形成されたフロアパネルと、
前記フロアトンネルの内部に配置されたトランスミッションと、
前記フロアトンネルの車幅方向の両側部を掛け渡すように前記フロアパネルに取り付けられかつ、前記トランスミッションのケースの後部を支持するトランスミッション支持メンバーと、
前記トランスミッションのケースに取り付けられかつ、前記フロアトンネルの内部に配置されたインバータと、
前記フロアパネルの下側において、前記トランスミッションの後方でかつ、前記フロアトンネルの車幅方向の一側外方に配置されたバッテリユニットと、
その第1端部が前記インバータに接続されかつ、その第2端部が前記バッテリユニットの前端部に接続されると共に、前記第1端部と前記第2端部との間の中間部分が、前記トランスミッション支持メンバーの後側において、前記フロアトンネルを内から外へ跨ぐように配設されるハーネスと、を備え、
前記バッテリユニットは、底面視で略矩形状を有すると共に、前記バッテリユニットの前端部における前記フロアトンネル側の角部が切り欠かれることによって、前記バッテリユニットの前端部と、前記トランスミッション支持メンバーの後側における前記フロアトンネルとの間に空きスペースが形成されている、
電動車両の下部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両の下部構造において、
前記バッテリユニットを支持するバッテリ支持ブラケットを備え、
前記バッテリ支持ブラケットは、前記空きスペースよりも後方の位置において、前記フロアパネルに支持されている、
電動車両の下部構造。
【請求項3】
請求項2に記載の電動車両の下部構造において、
前記バッテリユニットの側部は、前記フロアトンネルの車幅方向の一側部に隣接しており、
前記バッテリ支持ブラケットは、前記フロアトンネルの車幅方向の両側部を掛け渡すように配設されたトンネルクロスメンバーに固定されている、
電動車両の下部構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電動車両の下部構造において、
前記ハーネスの中間部分の一部は、前記トランスミッションのケースに支持されている、
電動車両の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、電動車両の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動車両におけるインバータの配設構造が開示されている。より詳細に、特許文献1に記載された電動車両では、いわゆる縦置きに配置されたエンジンの後方に、トランスミッションが配設されると共に、エンジンとトランスミッションとの間に、走行用モータが設けられている。走行用モータを駆動するためのインバータは、トランスミッションのケースに取り付けられている。この構成は、走行用モータとインバータとを接続するハーネスの削減に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-220830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には記載されていないが、縦置きに配置されたエンジン後方のトランスミッションは、フロアトンネルの内部に配置される。トランスミッションの後部は、トランスミッション支持メンバーによって、フロアトンネルの車幅方向の両側部に支持される場合がある。また、特許文献1には記載されていないが、インバータを介してモータに電力を供給するためのバッテリユニットは、フロアトンネルの外側、より具体的には、フロアパネルの下側において、フロアトンネルの車幅方向の一側外方に配置される。バッテリユニットの容量をできるだけ大きくするために、バッテリユニットの配設スペースを十分に大きく確保しようとすれば、バッテリユニットは、フロアトンネルの車幅方向の一側外方における、トランスミッションよりも後方に配設することが考えられる。
【0005】
特許文献1に記載されているように、インバータがトランスミッションのケースに取り付けられている場合、インバータにハーネスの第1端部が接続されかつ、バッテリユニットにハーネスの第2端部が接続される。ハーネスにおける第1端部と第2端部との中間部分は、例えば、フロアトンネルの内部を車両後方へと伸びてトランスミッション支持メンバーと交差した後、トランスミッション支持メンバーの後側において、フロアトンネルを内から外へ跨ぐように配設されて、バッテリユニットへ至るように配置される。
【0006】
ここで、エンジンが縦置きに配設された車両においては、前突時に、トランスミッション支持メンバーによる支持からトランスミッションを離脱させて、トランスミッションを後退させるように構成される。このトランスミッションの後退時に、前述したハーネスが、トランスミッション又はトランスミッション支持メンバーとバッテリユニットとの間に挟まれる懸念がある。
【0007】
ここに開示する技術は、電動車両において、前突時のハーネスの干渉を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示する技術は、電動車両の下部構造に係る。電動車両は、
車両前後方向に伸びるフロアトンネルが形成されたフロアパネルと、
前記フロアトンネルの内部に配置されたトランスミッションと、
前記フロアトンネルの車幅方向の両側部を掛け渡すように前記フロアパネルに取り付けられかつ、前記トランスミッションのケースの後部を支持するトランスミッション支持メンバーと、
前記トランスミッションのケースに取り付けられかつ、前記フロアトンネルの内部に配置されたインバータと、
前記フロアパネルの下側において、前記トランスミッションの後方でかつ、前記フロアトンネルの車幅方向の一側外方に配置されたバッテリユニットと、
その第1端部が前記インバータに接続されかつ、その第2端部が前記バッテリユニットの前端部に接続されると共に、前記第1端部と前記第2端部との間の中間部分が、前記トランスミッション支持メンバーの後側において、前記フロアトンネルを内から外へ跨ぐように配設されるハーネスと、を備え、
前記バッテリユニットは、底面視で略矩形状を有すると共に、前記バッテリユニットの前端部における前記フロアトンネル側の角部が切り欠かれることによって、前記バッテリユニットの前端部と、前記トランスミッション支持メンバーの後側における前記フロアトンネルとの間に空きスペースが形成されている。
【0009】
この構成によると、インバータは、トランスミッションのケースに固定されている。電動車両のモータは、例えば縦置きに配置されたエンジンと、エンジンの後方に配設されたトランスミッションとの間に設けてもよい。このモータの配置であれば、モータと、トランスミッションのケースに固定されたインバータとの距離が近いため、モータとインバータとの間のハーネスの削減が可能である。
【0010】
トランスミッションは、フロアトンネルの内部に配置される。バッテリユニットは、フロアパネルの下側において、トランスミッションの後方でかつ、フロアトンネルの車幅方向の一側外方に配置される。当該箇所は、バッテリユニット用のスペースを広く確保できるため、バッテリの容量を大きくする上で有利である。
【0011】
前記の構成では、インバータがフロアトンネルの内部に配設され、バッテリユニットがフロアトンネルの外部に配設されている。インバータとバッテリユニットとを電気的に接続するハーネスは、トランスミッション支持メンバーの後側において、フロアトンネルを内から外へ跨がるように配設される。ハーネスをこのように配設した場合、電動車両の前突時には、トランスミッションと共に後退するトランスミッション支持メンバーと、バッテリユニットとの間にハーネスが挟まれる恐れがある。
【0012】
ハーネスの干渉に関して、前記電動車両の下部構造では、底面視で略矩形状を有するバッテリユニットにおいて、その前端部におけるフロアトンネル側の角部が切り欠かれている。バッテリユニットの切り欠きによって、バッテリユニットの前端部と、トランスミッション支持メンバーの後側におけるフロアトンネルとの間に空きスペースが形成される。
【0013】
電動車両の前突時に、トランスミッションと共にトランスミッション支持メンバーが後退した場合、フロアトンネルを内から外へ跨がっているハーネスは、前記の空きスペースに退避することができる。トランスミッション支持メンバーとバッテリユニットとの間にハーネスが挟まれることが、抑制される。
【0014】
前記電動車両は、前記バッテリユニットを支持するバッテリ支持ブラケットを備え、
前記バッテリ支持ブラケットは、前記空きスペースよりも後方の位置において、前記フロアパネルに支持されている、としてもよい。
【0015】
こうすることで、電動車両の前突時に、後退するハーネスと、バッテリ支持ブラケットとが干渉することが抑制される。
【0016】
前記バッテリユニットの側部は、前記フロアトンネルの車幅方向の一側部に隣接しており、
前記バッテリ支持ブラケットは、前記フロアトンネルの車幅方向の両側部を掛け渡すように配設されたトンネルクロスメンバーに固定されている、としてもよい。
【0017】
バッテリ支持ブラケットをトンネルクロスメンバーに取り付けることにより、バッテリ支持ブラケットの位置を、車幅方向の中央側に位置づけることができる。このことは、バッテリユニットを車幅方向に対して、できるだけフロアトンネルの近くまで大きくすることを可能にする。つまり、前記の構成は、バッテリの容量を大きくする上で有利である。
【0018】
前記ハーネスの中間部分の一部は、前記トランスミッションのケースに支持されている、としてもよい。
【0019】
こうすることで、電動車両の前突時に、トランスミッションのケースに支持されているハーネスがトランスミッションと共に後退するから、ハーネスとトランスミッション支持メンバーとの接触が抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、前記の電動車両の下部構造によると、前突時のハーネスの干渉が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、例示的な電動車両の下部構造の底面図である。
図2図2は、トランスミッションとバッテリユニットとを拡大して示している。
図3図3は、電動車両の下部構造の斜視図である。
図4図4は、電動車両の下部構造の側面図である。
図5図5は、図2のV-V断面図である。
図6図6は、図2のVI-VI断面図である。
図7図7は、バッテリユニットの斜視図である。
図8図8は、電動車両の前突時における、トランスミッション及びハーネスの移動を例示する遷移図である。
図9図9は、バッテリユニットの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、電動車両の下部構造の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明する電動車両の下部構造は例示である。
【0023】
図1は、例示的な電動車両1の下部構造の底面図であり、図2は、図1におけるトランスミッション2とバッテリユニット4との配設箇所を拡大して示す図である。図3は、電動車両1の下部構造を、フロアパネルを取り除いた状態で、後方の斜め上方から見た場合の斜視図である。図4は、電動車両1の下部構造を、フロアパネルを取り除いた状態で、左側方から見た場合の側面図であり、図5及び図6はそれぞれ、図2のV-V断面図及びVI-VI断面図である。図7は、バッテリユニット4を斜め下方から見上げた斜視図である。尚、以下の説明において、「前」「後」「上」「下」は、電動車両1における「前」「後」「上」「下」に対応し、「右」「左」は、電動車両1の前進方向を向いた姿勢における「右」及び「左」に対応する。電動車両1の左右方向は、車幅方向と呼ぶ場合がある。
【0024】
電動車両1の下部には、フロアパネル61が配設されている。フロアパネル61は、電動車両1の車室の床を構成する。フロアパネル61は、電動車両1の車幅方向の側部に配設された二つのサイドシル64の間をつなぐように、前後方向及び車幅方向に広がっている。
【0025】
フロアパネル61における、車幅方向の中央部には、フロアトンネル62が設けられている。フロアトンネル62は、図5又は図6に示すようにフロアパネル61よりも上方に膨出すると共に、図1又は図2に示すように前後方向に伸びている。フロアトンネル62の車幅方向の両側部には、トンネルサイドフレーム63が配設されている。トンネルサイドフレーム63は、図5又は図6に示すように閉断面を有する高剛性のフレームであって、フロアトンネル62に沿うように前後方向に伸びている。フロアトンネル62における所定の箇所、より具体的には、フロアトンネル62の後部における2箇所には、トンネルクロスメンバー651、652が取り付けられている。前側の第1トンネルクロスメンバー651は、二つのトンネルサイドフレーム63同士をつなぐように、車幅方向に伸びている(図6も参照)。第1トンネルクロスメンバー651は、後述するトランスミッション支持メンバー21よりも後方に位置している。後側の第2トンネルクロスメンバー652も、二つのトンネルサイドフレーム63同士をつなぐように、車幅方向に伸びている。第1トンネルクロスメンバー651は、第2トンネルクロスメンバー652よりも前後方向の幅が広い。
【0026】
サイドシル64とトンネルサイドフレーム63との間には、フロアサイドフレーム66が配設されている。尚、図1では、フロアトンネル62に対して左側方のフロアサイドフレーム66のみを図示しているが、フロアトンネル62に対して右側方にもフロアサイドフレーム66が配設されている。二つのフロアサイドフレーム66は、左右対称に配設されてている。
【0027】
フロアサイドフレーム66も、図5又は図6に示すように、閉断面を有する高剛性のフレームである。フロアサイドフレーム66は、フロアパネル61の前端部においては、車幅方向について、サイドシル64とトンネルサイドフレーム63との中間付近に位置している。フロアサイドフレーム66は、そこから、電動車両1の後方に向かうに従い、車幅方向の外方へ斜めに傾き、フロアパネル61の前後方向の中央部付近において、サイドシル64の内側に当たる。サイドシル64の内側に当たったフロアサイドフレーム66は、サイドシル64の内側に沿うように、電動車両1の後方に向かって真っ直ぐに伸びている。
【0028】
尚、以下においては、フロアパネル61、フロアトンネル62、トンネルサイドフレーム63、サイドシル64、第1トンネルクロスメンバー651、第2トンネルクロスメンバー652、及び、フロアサイドフレーム66を総称して、フロアパネル61と呼ぶ場合がある。
【0029】
電動車両1は、図外のエンジンと、トランスミッション2と、電駆システム3と、を備えている。電動車両1は、フロントエンジンリヤドライブ車両をベースにした四輪駆動車両である。電動車両1はさらに、トランスファ51及びリヤプロペラシャフト52、及び、フロントプロペラシャフト53を備えている。
【0030】
エンジンは、少なくともガソリンを含む燃料が供給されるガソリンエンジン、又は、ディーゼル燃料が供給されるディーゼルエンジンである。エンジンは火花点火式又は圧縮着火式である。尚、エンジンの形式に特に制限はない。エンジンは、電動車両1の前部に設けられたエンジンルームの中に、いわゆる縦置きで設置されている。電動車両1の後部には、フューエルタンク11が配設されている。フューエルタンク11は、エンジンに供給する燃料を貯留している。
【0031】
エンジンの排気ガスを排出するための排気管12が、フロアパネル61の下側に配設されている。排気管12は、エンジンルームから、電動車両1の後方に向かって伸びている。より詳細に、排気管12はフロアトンネル62よりも右側において、エンジンルームから、電動車両1の後方に向かって伸びた後、車幅方向の中央側に折れ曲がり、フロアトンネル62に沿うように、電動車両1の後方に向かってさらに伸びている。尚、排気管12の途中には、触媒コンバータ13が配設されている。触媒コンバータ13は、後述するトランスミッション2のケースの後端部に対して、右側方に位置している。
【0032】
電駆システム3は、電気モータ30、インバータ31、及び、バッテリユニット4を備えている。電気モータ30は、エンジンの出力軸上に配設されている。電気モータ30は、エンジンと、トランスミッション2との間に介設されている。電気モータ30は、力行時には車両が走行するための駆動トルクを出力すると共に、車両に制動力を付与する回生を行う。
【0033】
トランスミッション2は、例えば、少なくとも一の遊星歯車機構を含む自動変速機である。尚、トランスミッション2は、自動変速機に限定されない。トランスミッション2は、エンジン及び電気モータ30の出力軸に結合されている。トランスミッション2は、エンジン及び/又は電気モータ30のトルクを変速して出力する。
【0034】
トランスミッション2は、電気モータ30の後側に配設されている。トランスミッション2は、図1及び図2に示すように、フロアトンネル62の内部に配設されている。トランスミッション2のケースは、フロアトンネル62の前部において、フロアトンネル62に沿うように前後方向に伸びている。
【0035】
トランスファ51は、トランスミッション2の出力軸に接続されている。トランスファ51は、トランスミッション2の後側でかつ、フロアトンネル62の内部に配設されている。トランスファ51のケースとトランスミッション2のケースとは一体化している。以下においては、一体化したトランスファ51のケース及びトランスミッション2のケースを総称して、「トランスミッション2のケース」と呼ぶ。
【0036】
トランスミッション2のケースにおける後端部、より正確には、トランスファ51のケースは、トランスミッション支持メンバー21に支持されている。トランスミッション支持メンバー21は、二つのトンネルサイドフレーム63の間を掛け渡すように、車幅方向に伸びている。図5にも示すように、トランスミッション支持メンバー21の両端部はそれぞれ、トンネルサイドフレーム63に固定されている。トランスミッション支持メンバー21の中央部は、トランスミッション2のケースの下部に固定され、トランスミッション2を下側から支持している。
【0037】
トランスファ51には、リヤプロペラシャフト52及びフロントプロペラシャフト53がそれぞれ、接続されている。トランスファ51は、エンジン及び/又は電気モータ30のトルクを、前輪及び後輪に分配する。
【0038】
リヤプロペラシャフト52は、フロアトンネル62の内部において、トランスファ51から電動車両1の後方へ伸びている。リヤプロペラシャフト52は、図外のリヤディファレンシャルギヤを介して、左右の後輪に結合されたリヤドライブシャフトに接続されている。
【0039】
フロントプロペラシャフト53は、フロアトンネル62の内部において、トランスミッション2の左側方を通って、トランスファ51から車両の前方へ伸びている。フロントプロペラシャフト53は、図外のフロントディファレンシャルギヤを介して、左右の前輪に結合されたフロントドライブシャフトに接続されている。
【0040】
インバータ31は、図3又は図4に例示するように、トランスミッション2のケースの上部に取り付けられている。インバータ31と電気モータ30とは、互いに近接して配置されている。この構成は、インバータ31と電気モータ30との電気的な接続用のハーネスの削減を可能にする。インバータ31と電気モータ30とは、例えばバスバーを介して電気的に接続してもよい。
【0041】
バッテリユニット4は、インバータ31を介して電気モータ30に、電気的に接続されている。バッテリユニット4は、電気モータ30へ、駆動用の電力を供給すると共に、電気モータ30の回生時に、バッテリユニット4は充電される。インバータ31は、力行時には電気モータ30へバッテリユニット4の電力を供給すると共に、回生時にはバッテリユニット4へ電気モータ30の発電電力を送る。
【0042】
バッテリユニット4は、図1又は図2に例示するように、底面視で、略矩形状を有している。バッテリユニット4は、バッテリモジュール41と、ジャンクションボックス42とを有している。図7にも示すように、ジャンクションボックス42は、バッテリユニット4の前端部に配設されている。バッテリモジュール41は、ジャンクションボックス42の後側に配設されている。
【0043】
バッテリユニット4は、フロアパネル61の下側において、フロアトンネル62の左側に配設されている。より詳細に、バッテリユニット4は、トランスミッション2よりも後方でかつフューエルタンク11の前方において、トンネルサイドフレーム63とフロアサイドフレーム66との間に配設されている。つまり、バッテリユニット4は、エンジンの排気管12及び触媒コンバータ13とは、フロアトンネル62を挟んだ反対側に配設されている。この配設構造は、電駆システム3を熱源から遠ざけることを可能にする。尚、図1又は図2における符号32は、電駆システム3の一部を構成するDC/DCコンバータ32である。DC/DCコンバータ32は、フロアトンネル62の左側において、トランスミッション2の左側方でかつ、バッテリユニット4の前方に配設されている。
【0044】
前述したように、フロアサイドフレーム66は、フロアパネル61の前後方向の中央部から後部において、サイドシル64に当接するように配設されており、フロアパネル61の後部において、トンネルサイドフレーム63とフロアサイドフレーム66との車幅方向の間隔は広い。この広いスペースには、大型のバッテリユニット4を配設することができる。従って、バッテリユニット4の容量は、比較的大きい。
【0045】
バッテリユニット4は、バッテリ支持ブラケット45によって、フロアパネル61に取り付けられている。バッテリ支持ブラケット45は、下壁部450と、第1縦壁部451、第2縦壁部452、及び第3縦壁部453とを有している。下壁部450は、バッテリユニット4の下側に位置し、バッテリユニット4の底面を覆うように広がっている。下壁部450は、バッテリユニット4を下側から支えている。
【0046】
第1縦壁部451は、下壁部450に対して車幅方向の外方(つまり、左側)に位置し、下壁部450の左側縁と連続している。第1縦壁部451は、バッテリユニット4の左側方において前後方向に広がると共に、上下方向に伸びており、図5又は図6に示すように、第1縦壁部451の上端部は、フロアサイドフレーム66に対して固定されている。
【0047】
第2縦壁部452は、下壁部450に対して車幅方向の中央側(つまり、右側)に位置し、下壁部450の右側縁における前部と連続している。第2縦壁部452は、バッテリユニット4の前部における右側方において上下方向に伸びている。図2又は図6に示すように、第2縦壁部452の上端部は、第1トンネルクロスメンバー651に固定されている。つまり、第2縦壁部452の上端部は、トンネルサイドフレーム63よりも車幅方向の中央側に位置しており、これに伴い、第2縦壁部452は、車幅方向について、トンネルサイドフレーム63とほぼ同じ位置に位置している。第2縦壁部452が車幅方向の中央側に位置しているため、バッテリユニット4の右側部は、車幅方向の中央側に位置することが可能になって、バッテリユニット4の右側部は、フロアトンネル62の左側部に隣接している。つまり、バッテリユニット4が大型になり、それに伴い、バッテリユニット4の容量が大容量になる。
【0048】
第3縦壁部453は、下壁部450に対して車幅方向の中央側(つまり、右側)に位置し、下壁部450の右側縁における後部と連続している。第3縦壁部453は、バッテリユニット4の後部における右角部において上下方向に伸びている。図2に示すように、第2縦壁部452の上端部は、トンネルサイドフレーム63に対して固定されている。第3縦壁部453の上端部は、第2縦壁部452の上端部よりも、車幅方向の外方に位置している。第3縦壁部453は、バッテリユニット4の後部における右角部に位置しているため、バッテリユニット4の右側部とは干渉せず、バッテリユニット4の大容量化に悪影響を与えない。
【0049】
インバータ31とバッテリユニット4とは、前述したように電気的に接続されている。インバータ31とバッテリユニット4との間には、ハーネス7が配設されている。ハーネス7の前端は、図3又は図4に示すように、インバータ31の後端部に接続されている。ハーネス7の後端は、バッテリユニット4のジャンクションボックス42に接続されている。インバータ31がトランスミッション2のケースの上部に配設されかつ、バッテリユニット4が、トランスミッション2の後方でかつフロアパネル61の下側に配設されているため、ハーネス7は、その前端と後端との間が、電動車両1の前から後に向かうに従い、上から下へ傾斜するように配設されている(図4参照)。傾斜したハーネス7の中間部は、トランスミッション2のケースに対して、ハーネス支持ブラケット70を介して、第1支持部71、第2支持部72、第3支持部73の三箇所で支持されている。第1支持部71、第2支持部72、及び、第3支持部73は、電動車両1の前から後に、この順番で並んでいる。
【0050】
また、図2に示すように、トランスミッション2(及びインバータ31)はフロアトンネル62の内部に配置されている一方、バッテリユニット4は、トランスミッション2の後方でかつ、フロアトンネル62の左側方に配置されている。そのため、ハーネス7は、フロアトンネル62の内部を後方に向かって伸びてトランスミッション支持メンバー21と交差し、トランスミッション支持メンバー21の後側において、フロアトンネル62を内から外へ跨がるように配設されている。
【0051】
ここで、この電動車両1は、前突時にエンジン及びトランスミッション2が後退するよう、トランスミッション2が、トランスミッション支持メンバー21による支持から離脱する構造となっている。トランスミッション2が後退することに伴い、トランスミッション支持メンバー21の後側においてフロアトンネル62を内から外へ跨がって配設されているハーネス7が、後退するトランスミッション2及びトランスミッション支持メンバー21と、バッテリユニット4との間に挟まってしまう恐れがある。
【0052】
そこで、この電動車両1では、バッテリユニット4の形状を工夫することによって、電動車両1の前突時に、ハーネス7が、トランスミッション2及びトランスミッション支持メンバー21と、バッテリユニット4との間に挟まってしまうことを抑制する。具体的にバッテリユニット4は、図2に示すように、前端部におけるフロアトンネル62側の角部が、底面視で三角形状に切り欠かれている。この切り欠きによって、バッテリユニット4の前端部と、フロアトンネル62との間には、三角形状の空きスペース46が形成されている(図2の網掛け部分を参照)。
【0053】
図8は、電動車両1の前突時における、トランスミッション2及びハーネス7の移動を例示する遷移図である。ステップS1は、前突が発生してトランスミッション2が後退し始めた状態を示している。ステップS2は、トランスミッション支持メンバー21による支持から離脱して、トランスミッション2がさらに後退した状態を示している。ハーネス7は、その前端がインバータ31に接続されていると共に、その中間部がトランスミッション2のケースに支持されているから、トランスミッション2と共に後退する。このため、ステップS2においては、トランスミッション支持メンバー21の後側において、ハーネス7が斜めに傾いている。
【0054】
ステップS3は、トランスミッション2がさらに後退した状態を示している。トランスミッション2のケースの後端部(つまり、トランスファ51)は、バッテリユニット4の前端部の近くまで移動している。ハーネス7は、バッテリユニット4の切り欠きに沿うように斜めに位置している。ハーネス7が空きスペース46に位置しているから、ハーネス7は、トランスミッション2及びトランスミッション支持メンバー21と、バッテリユニット4との間に挟まれない。
【0055】
また、バッテリ支持ブラケット45の第2縦壁部452が、空きスペース46よりも後方に位置しているため、ハーネス7がバッテリ支持ブラケット45と干渉することも抑制される。
【0056】
尚、図例では、バッテリユニット4の角部を底面視で三角形状に切り欠いているが、例えば図9に、模式的に例示するように、バッテリユニット4の角部を底面視で四角形状に切り欠いてもよいし(同図(a))、1/4円形状に切り欠いてもよい(同図(b))。
【0057】
また、ここに開示する技術は、四輪駆動車への適用に限らない。フロントエンジンリヤドライブ車両に、ここに開示する技術を適用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
2 トランスミッション
21 トランスミッション支持メンバー
31 インバータ
4 バッテリユニット
45 バッテリ支持ブラケット
46 空きスペース
61 フロアパネル
62 フロアトンネル
651 第1トンネルクロスメンバー
7 ハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9