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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241001BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241001BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/28 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021071710
(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公開番号】P2022166479
(43)【公開日】2022-11-02
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】中村 龍之介
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-179376(JP,A)
【文献】国際公開第2014/083717(WO,A1)
【文献】特開2006-140317(JP,A)
【文献】特開平08-031967(JP,A)
【文献】特開平09-211210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状であって、厚さ方向に貫通する第1貫通孔を有し、厚さ方向の一方に位置する第1の面を含むベース板と、
回路パターンを含み、前記第1の面上に配置される基板と、
前記回路パターン上に配置される半導体チップと、
前記第1の面に対向する第2の面を含み、前記基板の外周を取り囲むよう前記第1の面上に配置される枠体と、
前記枠体に取り付けられ、前記回路パターンと電気的に接続される端子と、を備え、
前記枠体は、前記ベース板の厚さ方向に貫通し、前記第1の面上に配置された状態で、前記第1貫通孔の位置と一致するように配置される第2貫通孔を有し、
前記枠体は、前記第2貫通孔に取り付けられ、前記ベース板の厚さ方向に貫通する第3貫通孔を有する金属製の環状部材を含み、
前記環状部材は、
前記第2貫通孔内に配置される第1領域と、
前記第2の面から突出する第2領域と、を含み、
前記第2領域の外径面は、先端に近づくにしたがって外径が小さくなっており、
前記第2領域の外径面の最小の直径Dは、前記第1貫通孔の直径Dよりも小さく、
前記第2領域の外径面の最大の直径Dは、前記第1貫通孔の直径Dよりも大きく、
前記ベース板の厚さ方向において、前記第1貫通孔を構成する第1側壁面のうちの前記第1の面側の端部は、前記第2領域の外径面と接触しており、
前記環状部材の前記第1の面側の端部は、前記第1貫通孔内にある、半導体装置。
【請求項2】
前記第2領域の外径面は、テーパ状である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1貫通孔の直径Dと前記第2領域の外径面の最小の直径Dの差は、0.5mm以上1mm以下である、請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1貫通孔の直径Dと前記第2領域の外径面の最大の直径Dの差は、2mm以上である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記回路パターンは、前記端子の一部が溶融して前記端子と接合されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体チップは、SiC、GaNおよびSiのうちの少なくともいずれか一つから構成される半導体層を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ベース板は、厚さ方向に見て矩形状であり、
前記第1貫通孔は、矩形状の前記ベース板の4隅に対応して4つ設けられており、
前記第2貫通孔は、4つの前記第1貫通孔に対応するように4つ設けられており、
前記環状部材は、4つの前記第2貫通孔に対応するように4つ取り付けられている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
4つの前記環状部材の前記第2の面から突出する突出量は、均等である、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
4つの前記環状部材のうち少なくとも1つの前記第2の面から突出する突出量は、他の前記環状部材の前記第2の面から突出する突出量と異なる、請求項7に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールにおいて、電子部品が設けられた回路基板と、回路基板の熱を除去するためのヒートシンクと、ヒートシンクとの間に回路基板を介装したケーシングとを備える場合がある(例えば、特許文献1参照)。ケーシングは、ヒートシンクを支持する支持部材と、支持部材を保持するケーシング本体とを含む。特許文献1によると、支持部材に形成された第1ネジ挿通孔と、ケーシング本体に形成された第2ネジ挿通孔が同一軸線上に並ぶこととして、相手材に対する取り付けを容易にするとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-163914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の製造時においては、端子(バスバー)と基板の回路パターンとが接合される。ここで、端子と回路パターンとの接合が不十分であったり、接合時に半導体装置を構成する各部品に過大な応力が負荷されると、結果的に半導体装置としての信頼性の低下を招くことなる。
【0005】
そこで、信頼性の向上を図ることができる半導体装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った半導体装置は、板状であって、厚さ方向に貫通する第1貫通孔を有し、厚さ方向の一方に位置する第1の面を含むベース板と、回路パターンを含み、第1の面上に配置される基板と、回路パターン上に配置される半導体チップと、第1の面に対向する第2の面を含み、基板の外周を取り囲むよう第1の面上に配置される枠体と、枠体に取り付けられ、回路パターンと電気的に接続される端子と、を備える。枠体は、ベース板の厚さ方向に貫通し、第1の面上に配置された状態で、第1貫通孔の位置と一致するように配置される第2貫通孔を有する。枠体は、第2貫通孔に取り付けられ、ベース板の厚さ方向に貫通する第3貫通孔を有する金属製の環状部材を含む。環状部材は、第2貫通孔内に配置される第1領域と、第2の面から突出する第2領域と、を含む。第2領域の外径面は、先端に近づくにしたがって外径が小さくなっている。第2領域の外径面の最小の直径Dは、第1貫通孔の直径Dよりも小さい。第2領域の外径面の最大の直径Dは、第1貫通孔の直径Dよりも大きい。ベース板の厚さ方向において、第1貫通孔を構成する第1側壁面のうちの第1の面側の端部は、第2領域の外径面と接触している。環状部材の第1の面側の端部は、第1貫通孔内にある。
【発明の効果】
【0007】
上記半導体装置によれば、信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1における半導体装置の概略斜視図である。
図2図2は、図1に示す半導体装置をベース板の厚さ方向に見た場合の概略平面図である。
図3図3は、図1に示す半導体装置を組み立てる前の分解斜視図である。
図4図4は、図1に示す半導体装置を組み立てる前の分解側面図である。
図5図5は、図1に示す半導体装置の一部を示す概略断面図である。
図6図6は、環状部材の拡大断面図である。
図7図7は、図1に示す実施の形態1における半導体装置の製造方法の代表的な工程を示すフローチャートである。
図8図8は、枠体をベース板上に載置した状態の一部を示す概略断面図である。
図9図9は、圧入に要する力と圧入量との関係を示すグラフである。
図10図10は、実施の形態2における半導体装置の一部を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示に係る半導体装置は、板状であって、厚さ方向に貫通する第1貫通孔を有し、厚さ方向の一方に位置する第1の面を含むベース板と、回路パターンを含み、第1の面上に配置される基板と、回路パターン上に配置される半導体チップと、第1の面に対向する第2の面を含み、基板の外周を取り囲むよう第1の面上に配置される枠体と、枠体に取り付けられ、回路パターンと電気的に接続される端子と、を備える。枠体は、ベース板の厚さ方向に貫通し、第1の面上に配置された状態で、第1貫通孔の位置と一致するように配置される第2貫通孔を有する。枠体は、第2貫通孔に取り付けられ、ベース板の厚さ方向に貫通する第3貫通孔を有する金属製の環状部材を含む。環状部材は、第2貫通孔内に配置される第1領域と、第2の面から突出する第2領域と、を含む。第2領域の外径面は、先端に近づくにしたがって外径が小さくなっている。第2領域の外径面の最小の直径Dは、第1貫通孔の直径Dよりも小さい。第2領域の外径面の最大の直径Dは、第1貫通孔の直径Dよりも大きい。ベース板の厚さ方向において、第1貫通孔を構成する第1側壁面のうちの第1の面側の端部は、第2領域の外径面と接触している。環状部材の第1の面側の端部は、第1貫通孔内にある。
【0010】
半導体装置の製造時においては、まず、端子が取り付けられた枠体と半導体チップを搭載した回路パターンを有する基板を接合したベース板とを準備し、ベース板に枠体を接着した後、端子と回路パターンとを接合する方法が採用される場合がある。特に、車載用等、半導体装置の高い信頼性が求められる場合には、端子と回路パターンとを確実に接合する必要があり、超音波接合が採用される場合がある。この超音波接合を行う場合において、端子と回路パターンとが接触する領域に超音波接合ツールを押し当てる際に、端子と回路パターンとの位置関係、特に高さに関する位置関係を適切にしておく必要がある。すなわち、端子と回路パターンとの距離を高精度に位置決めすることが求められる。この距離の精度が低いと、接合強度が弱くなったり、ベース板や枠体に過大な応力が負荷されるおそれがある。そうすると、端子と回路パターンとの接合強度の低下、ベース板や枠体へ負荷される応力により半導体装置の信頼性の低下を招くおそれがある。ここで、半導体装置を構成する各部品には、それぞれ寸法の誤差があり、各部品を取り付けていくと、その誤差が累積されることなる。さらに超音波接合時におけるベース板の反り等の影響も考慮すると、各部品の寸法を高精度に仕上げる手法で、高精度な位置決めを行うことは困難である。
【0011】
本開示の半導体装置によると、第2貫通孔内に配置される第1領域と、第2の面から突出する第2領域と、を含む環状部材が枠体に取り付けられている。そして、第2領域の外径面は、先端に近づくにしたがって外径が小さくなっている。また、第2領域の外径面の最小の直径Dは、第1貫通孔の直径Dよりも小さい。また、第2領域の外径面の最大の直径Dは、第1貫通孔の直径Dよりも大きい。したがって、環状部材の第2領域をベース板の第1貫通孔内にある状態として、枠体をベース板に押し当てて圧入していき、端子と回路パターンとの距離を適切な距離とすることが容易となる。この場合、第2領域の外径面は、先端に近づくにしたがって外径が小さくなっているため、この圧入量を調整して、接合前の端子と回路パターンとの位置決めを高精度に行うことができる。その後、端子と回路パターンとを接合することにより、ベース板および枠体に過大な応力が負荷されることを抑制しながら、端子と回路パターンとの適切な接合を行うことができる。その結果、このような半導体装置は、信頼性の向上を図ることができる。
【0012】
上記半導体装置において、第2領域の外径面は、テーパ状であってもよい。このようにすることにより、より確実に環状部材を第1貫通孔内に圧入させて、端子と回路パターンとの接合を確実に行うことができる。
【0013】
上記半導体装置において、第1貫通孔の直径Dと第2領域の外径面の最小の直径Dの差は、0.5mm以上1mm以下であってもよい。このようにすることにより、上記半導体装置の製造時において、第2領域の外径面と第1貫通孔を構成する側壁面との干渉を抑制して、突出した第2領域を含む環状部材を第1貫通孔内に挿入しやすくすることができる。したがって、より容易に上記半導体装置を製造することができる。
【0014】
上記半導体装置において、第1貫通孔の直径Dと第2領域の外径面の最大の直径Dの差は、2mm以上であってもよい。このようにすることにより、第1貫通孔を構成する側壁面のうちの第1の面側の端部と第2領域の外径面とを接触しやすくすることができる。したがって、より確実に上記半導体装置を製造することができる。
【0015】
上記半導体装置において、回路パターンは、端子の一部が溶融して端子と接合されていてもよい。このような接合は、例えば、超音波接合により行うことができる。したがって、接着剤や接合材を用いることなく、確実に端子と回路パターンとを電気的に接続することができる。
【0016】
上記半導体装置において、半導体チップは、SiC(炭化珪素)、GaN(窒化ガリウム)およびSi(シリコン)のうちの少なくともいずれか一つから構成される半導体層を含んでもよい。半導体チップが、SiCまたはGaNから構成される半導体層を含むことにより、半導体チップを、ワイドバンドギャップ半導体チップとして利用することができる。また、半導体チップが、Siから構成される半導体層を含むことにより、汎用性の高いものとすることができる。
【0017】
上記半導体装置において、ベース板は、厚さ方向に見て矩形状であってもよい。第1貫通孔は、矩形状のベース板の4隅に対応して4つ設けられていてもよい。第2貫通孔は、4つの第1貫通孔に対応するように4つ設けられていてもよい。環状部材は、4つの第2貫通孔に対応するように4つ取り付けられていてもよい。このようにすることにより、矩形状のベース板を含む半導体装置において、4つの環状部材、4つの第1貫通孔および4つの第2貫通孔により、端子と回路パターンとの接合状態をより適切にすることができる。したがって、より信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0018】
上記半導体装置において、4つの環状部材の第2の面から突出する突出量は、均等であってもよい。このようにすることにより、それぞれの環状部材を均等に圧入することができる。
【0019】
上記半導体装置において、4つの環状部材のうち少なくとも1つの第2の面から突出する突出量は、他の環状部材の第2の面から突出する突出量と異なってもよい。このようにすることにより、最も突出する環状部材を対応する第1貫通孔内に配置した後、これを基準として、他の環状部材を他の第1貫通孔内に配置することが容易となる。したがって、より容易に上記半導体装置を製造することができる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の半導体装置の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0021】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1における半導体装置の構成について説明する。図1は、実施の形態1における半導体装置の概略斜視図である。図2は、図1に示す半導体装置をベース板の厚さ方向に見た場合の概略平面図である。図3は、図1に示す半導体装置を組み立てる前の分解斜視図である。図4は、図1に示す半導体装置を組み立てる前の分解側面図である。図5は、図1に示す半導体装置の一部を示す概略断面図である。図5は、図2中のV-Vで切断した場合の概略断面図であり、後述する環状部材を含む領域の概略断面図である。
【0022】
図1図2図3図4および図5を参照して、実施の形態1における半導体装置11aは、ベース板12と、ベース板12上に配置される枠体13と、ベース板12上に配置される基板17a,17bと、板状の端子(バスバー)19a,19b,19c,19dと、コンデンサ18a,18bと、半導体チップ21a,21b,21c,21d,21e,21f,22a,22b,22c,22d,22e,22fと、プレスフィットピン26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hと、を備える。ベース板12および枠体13によって、半導体装置11aに備えられるケース20が構成される。ベース板12および枠体13によって構成されるケース20内の空間30には、図示しない樹脂が充填される。樹脂の種類としては、たとえばエポキシ樹脂やシリコーンゲル、ウレタン樹脂が選択される。
【0023】
ベース板12は、金属製である。ベース板12は、たとえば銅製である。ベース板12の表面には、ニッケル等のめっき処理が施されてもよい。ベース板12の外形形状は、厚さ方向に見て、X方向に延びる辺を長辺とし、Y方向に延びる辺を短辺とした矩形状である。基板17a,17bはそれぞれ、ベース板12の厚さ方向の一方に位置する第1の面12a上に図示しないはんだ等によって接合される。ベース板12の厚さ方向の他方に位置する裏面12bには、たとえば、放熱を効率的に行う放熱フィン(図示しない)等が取り付けられる場合がある。ベース板12の厚さ方向および基板17a,17bの厚さ方向は、Z方向である。なお、半導体装置11aの高さ方向については、Z方向で示される。
【0024】
ベース板12は、ベース板12の厚さ方向に貫通する4つの第1貫通孔12c,12d,12e,12fを有する。第1貫通孔12c,12d,12e,12fはそれぞれ、矩形状のベース板12の四隅に近い部分に設けられている。第1貫通孔12c,12d,12e,12fを構成する第1側壁面12g,12h,12i,12jはそれぞれ、Z方向に沿って延びるストレート形状である。すなわち、第1貫通孔12c,12d,12e,12fはそれぞれ、ベース板12の四つの角部に近い領域をZ方向に真っ直ぐに貫通するように形成されている。第1貫通孔12c,12d,12e,12fは、後述する第2貫通孔32a,32b,32c,32dおよび第3貫通孔42a,42b,42c,42dを有する環状部材41a,41b,41c,41dと共に、例えば第3貫通孔42a,42b,42c,42dに図示しないボルトの胴部を収容するようにして、半導体装置11aを所定の設置個所に取り付ける際に有効に利用される。
【0025】
基板17aは、絶縁性を有する絶縁板14aと、導電性を有する回路パターン16aと、を有する。回路パターン16aは、絶縁板14aの上に配置される。基板17aは、絶縁板14aの上に回路パターン16aを積層した構成である。回路パターン16aは、複数の回路板から構成される。本実施形態においては、回路パターン16aは、第1回路板15aと、第2回路板15bと、第3回路板15cと、第4回路板15dと、第5回路板15eと、第6回路板15fと、を含む。本実施形態においては、回路パターン16aは、銅配線である。基板17aと同様に、基板17bは、絶縁性を有する絶縁板14bと、銅配線である回路パターン16bと、を有する。回路パターン16bは、第7回路板15gと、第8回路板15hと、第9回路板15iと、第10回路板15jと、第11回路板15kと、を含む。
【0026】
コンデンサ18aは、一方の電極と、他方の電極とを含む。一方の電極が、第5回路板15eと接合され、他方の電極が、第6回路板15fと接合される。コンデンサ18bも同様に、一方の電極および他方の電極を含み、一方の電極が第10回路板15jと接合され、他方の電極が第11回路板15kと接合される。
【0027】
半導体チップ21a,21b,21c,22a,22b,22cは、第1回路板15a上に配置される。半導体チップ21d,21e,21f,22d,22e,22fは、第7回路板15g上に配置される。半導体チップ21a,21b,21c,21d,21e,21f,22a,22b,22c,22d,22e,22fは、ワイドバンドギャップ半導体チップである。ワイドバンドギャップ半導体チップとは、バンドギャップがシリコンよりも大きい材質から構成される半導体層を動作層として有する半導体チップをいう。ワイドバンドギャップ半導体チップは、たとえば、炭化ケイ素、窒化ガリウムまたは酸化ガリウムから構成される半導体層を動作層として有する。このようなワイドバンドギャップ半導体チップは、絶縁破壊電圧が高く、ドリフト層の抵抗を小さくできることからオン抵抗を小さくすることができる。半導体チップ21a,21b,21c,21d,21e,21fは、例えばショットキーバリアダイオード(SBD)である。半導体チップ22a,22b,22c,22d,22e,22fは、例えば金属-酸化物-半導体電界効果型トランジスタ(MOSFET)である。
【0028】
枠体13は、ベース板12の第1の面12aから立ち上がり、ベース板12の厚さ方向に見て、基板17a,17bの外周を取り囲むようにベース板12に取り付けられる。枠体13は、第1の面12aと対向する第2の面13eを含む。枠体13は、たとえば接着剤によりベース板12に固定される。すなわち、ベース板12の第1の面12aと枠体13の第2の面13eとが接着される。
【0029】
枠体13は、第1壁部13aと、第2壁部13bと、第3壁部13cと、第4壁部13dと、を含む。第1壁部13aと第2壁部13bとは、ベース板12の厚さ方向に見てベース板12の短辺に対応する方向(Y方向)において対向して配置される。第3壁部13cと第4壁部13dとは、ベース板12の厚さ方向に見てベース板12の長辺に対応する方向(X方向)において対向して配置される。枠体13に含まれる第1壁部13a、第2壁部13b、第3壁部13cおよび第4壁部13dはそれぞれ、第1の面12aに交差する方向に立ち上がる。具体的には、第1壁部13a、第2壁部13b、第3壁部13cおよび第4壁部13dはそれぞれ、第1の面12aに対して垂直に立ち上がる。枠体13は、第1壁部13aの内壁面27aと、内壁面27aに対向する第3壁部13cの内壁面27bと、内壁面27aおよび内壁面27bと連なる第2壁部13bの内壁面27cと、内壁面27aおよび内壁面27bと連なり、内壁面27cと対向する第4壁部13dの内壁面27dと、を含む。
【0030】
枠体13の材質としては、絶縁性および強度が高い材質が用いられ、具体的には例えばPPS(Polyphenylenesulfide)樹脂が採用される。このような樹脂は、熱可塑性樹脂であって成形性が良好であり、絶縁性、耐湿性、耐熱性が優れており、強度も高い。なお、枠体13の材質として他にPBT(Poly Butylene Terephtalate)樹脂を用いてもよい。枠体13の具体的な構成については、後に詳述する。
【0031】
端子(バスバー)19a,19b,19c,19dはそれぞれ、板状であって、金属製である。端子19a,19b,19c,19dはそれぞれ、枠体13に取り付けられている。具体的には、端子19a,19bは、第3壁部13cに取り付けられている。端子19c,19dは、第4壁部13dに取り付けられている。本実施形態においては、端子19a,19b,19c,19dは、インサート成型により、枠体13に取り付けられている。端子19a,19b,19c,19dは、それぞれ屈曲した帯状の形状を有する。本実施形態においては、端子19a,19b,19c,19dは、それぞれ例えば、帯状の銅板を折り曲げて形成される。半導体装置11aは、端子19a,19b,19c,19dによって外部との電気的な接続を確保する。
【0032】
端子19aと第1回路板15aとは、超音波接合により直接接合されている。端子19bと第2回路板15bとは、超音波接合により直接接合されている。端子19cと第7回路板15gとは、超音波接合により直接接合されている。端子19dと第7回路板15gとは、超音波接合により直接接合されている。なお、各端子19a,19b,19c,19dを接合する際の超音波接合ツールが押し当てられる領域23a,23b,23c,23dの一例を図2における破線で示している。
【0033】
半導体チップ21aと半導体チップ22aとは、ワイヤ24aで接続されている。半導体チップ21bと半導体チップ22bとは、ワイヤ24bで接続されている。半導体チップ21cと半導体チップ22cとは、ワイヤ24cで接続されている。半導体チップ21dと半導体チップ22dとは、ワイヤ24dで接続されている。半導体チップ21eと半導体チップ22eとは、ワイヤ24eで接続されている。半導体チップ21fと半導体チップ22fとは、ワイヤ24fで接続されている。半導体チップ22aと第4回路板15dとは、ワイヤ25aで接続されている。半導体チップ22bと第4回路板15dとは、ワイヤ25bで接続されている。半導体チップ22cと第4回路板15dとは、ワイヤ25cで接続されている。半導体チップ22dと第8回路板15hとは、ワイヤ25dで接続されている。半導体チップ22eと第8回路板15hとは、ワイヤ25eで接続されている。半導体チップ22fと第8回路板15hとは、ワイヤ25fで接続されている。
【0034】
第2回路板15bと第8回路板15hとは、ワイヤ29aで接続されている。第4回路板15dと第7回路板15gとは、ワイヤ29bで接続されている。半導体チップ22a,22b,22cと第3回路板15cとは、それぞれワイヤ28aで接続されており、半導体チップ22d,22e,22fと第9回路板15iとは、それぞれワイヤ28bで接続されている。ワイヤとして、アルミニウム太線を採用してもよいし、リボンワイヤを採用してもよい。
【0035】
プレスフィットピン26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hは、外部との電気的な接続を確保するために設けられている。プレスフィットピン26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hはそれぞれ、導電性であって、棒状である。プレスフィットピン26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hはそれぞれ、回路パターン16a,16bから立ち上がるように回路パターン16a,16bに取り付けられている。具体的には、プレスフィットピン26aの一方の端部は、第3回路板15cに接合されている。プレスフィットピン26bの一方の端部は、第4回路板15dに接合されている。プレスフィットピン26cの一方の端部は、第5回路板15eに接合されている。プレスフィットピン26dの一方の端部は、第6回路板15fに接合されている。プレスフィットピン26eの一方の端部は、第9回路板15iに接合されている。プレスフィットピン26fの一方の端部は、第8回路板15hに接合されている。プレスフィットピン26gの一方の端部は、第10回路板15jに接合されている。プレスフィットピン26hの一方の端部は、第11回路板15kに接合されている。回路パターン16aに接合されるプレスフィットピン26a,26b,26c,26dはそれぞれ、X方向に間隔をあけて配置される。回路パターン16bに接合されるプレスフィットピン26e,26f,26g,26hはそれぞれ、X方向に間隔をあけて配置される。なお、プレスフィットピン26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hのそれぞれの他方の端部はそれぞれ自由端であり、フリーな状態となっている。プレスフィットピン26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hの延びる方向は、Z方向である。
【0036】
次に、枠体13の具体的な構成について説明する。枠体13は、第1平板部31aと、第2平板部31bと、第3平板部31cと、第4平板部31dと、を含む。第1平板部31aおよび第2平板部31bは、第3壁部13cと連なって設けられている。第1平板部31aは、第3壁部13cの外側、すなわち、X方向において空間30が位置する側と逆側であって第1壁部13aと連なって設けられている。第2平板部31bは、第3壁部13cの外側、すなわち、X方向において空間30が位置する側と逆側であって第2壁部13bと連なって設けられている。第3平板部31cおよび第4平板部31dは、第4壁部13dと連なって設けられている。第3平板部31cは、第4壁部13dの外側、すなわち、X方向において空間30が位置する側と逆側であって第2壁部13bと連なって設けられている。第4平板部31dは、第4壁部13dの外側、すなわち、X方向において空間30が位置する側と逆側であって第1壁部13aと連なって設けられている。枠体13は、ベース板12の厚さ方向において、第2の面13eと反対側に位置する表面13fを含む。表面13fは、第1平板部31a、第2平板部31b、第3平板部31cおよび第4平板部31dに設けられている。
【0037】
枠体13は、ベース板12の厚さ方向に貫通する4つの第2貫通孔32a,32b,32c,32dを有する。第2貫通孔32a,32b,32c,32dはそれぞれ、第1平板部31a、第2平板部31b、第3平板部31cおよび第4平板部31dに設けられている。第2貫通孔32a,32b,32c,32dを構成する第2側壁面33a,33b,33c,33dはそれぞれ、Z方向に沿って延びるストレート形状である。第2貫通孔32a,32b,32c,32dはそれぞれ、第1平板部31a、第2平板部31b、第3平板部31cおよび第4平板部31dをZ方向に真っ直ぐに貫通するように形成されている。第2貫通孔32a,32b,32c,32dは、枠体13が第1の面12a上に配置された状態で、第1貫通孔12c,12d,12e,12fの位置と一致するように配置される。
【0038】
枠体13は、ベース板12の厚さ方向に貫通する第3貫通孔42a,42b,42c,42dを有する4つの金属製の環状部材41a,41b,41c,41dを含む。第3貫通孔42a,42b,42c,42dはそれぞれ、環状部材41a,41b,41c,41dに設けられている。第3貫通孔42a,42b,42c,42dを構成する第3側壁面43a,43b,43c,43dはそれぞれ、Z方向に沿って延びるストレート形状である。4つの環状部材41a,41b,41c,41dはそれぞれ、中実円筒状である。4つの環状部材41a,41b,41c,41dはそれぞれ、第2貫通孔32a,32b,32c,32dに取り付けられる。第3貫通孔42a,42b,42c,42dはそれぞれ、第2貫通孔32a,32b,32c,32dに取り付けられた際に、Z方向に真っ直ぐに貫通するように形成されている。環状部材41a,41b,41c,41dはそれぞれ、カラーとも呼ばれる部材である。
【0039】
ここで、環状部材41aの構成について説明する。環状部材41b,41c,41dの構成は、環状部材41aと同様であるため、それらの説明を省略する。図6は、環状部材41aの拡大断面図である。なお、図6に示す断面は、図5に示す断面に相当する。また、理解を容易にする観点から、第2の面13eを破線で示している。
【0040】
併せて図6を参照して、環状部材41aは、第2貫通孔32a内に配置される第1領域44aと、第2の面13eから突出する第2領域45aと、を含む。ベース板12側に配置される環状部材41aの一方側の端部46aは、第2の面13eから突出する。また、Z方向において、環状部材41aの他方側の端部47aの位置は、厚さ方向において第2の面13eと反対側に位置する表面13fの位置と揃えられている。Z方向において、端部47aの位置と表面13fとの位置は同じである。なお、本実施形態においては、端部46a,47aは共に、X-Y平面に平行な平面である。
【0041】
環状部材41aは、第1領域44aの外径面51aと、第2領域45aの外径面52aと、を含む。第1領域44aの外径面51aは、ストレート形状を含む。すなわち、第1領域44aの外径面51aは、Z方向に真っ直ぐに延びる形状を含む。第2領域45aの外径面52aは、先端に近づくにしたがって外径が小さくなっている。本実施形態においては、第2領域45aの外径面52aは、テーパ状である。第1領域44aの外径面51aと第2領域45aの外径面52aとのなす角度θは、30°である。なお、この角度θについては、45°以下の任意の値を選択することもできる。ストレート形状とテーパ状の境界53aについては、第1領域44aに配置される。
【0042】
第2領域45aの外径面52aの最小の直径Dは、第1貫通孔12cの直径Dよりも小さい。第2領域45aの外径面52aの最大の直径Dは、第1貫通孔12cの直径よりも大きい。ベース板12の厚さ方向において、第1貫通孔12cを構成する第1側壁面12gのうちの第1の面12a側の端部12kは、第2領域45aの外径面52aと接触している。環状部材41aの第1の面12a側の端部46aは、第1貫通孔12c内にある。ベース板12の厚さ方向において、環状部材41aの第1の面12a側の端部46aは、第1の面12aよりも裏面12b側に位置する。
【0043】
第1貫通孔12cの直径Dと第2領域45aの外径面52aの最小の直径Dの差は、0.5mm以上1mm以下である。本実施形態においては、具体的には、第1貫通孔12cの直径Dと第2領域45aの外径面52aの最小の直径Dの差は、0.5mmである。第1貫通孔の直径Dと第2領域の外径面の最大の直径Dの差は、2mm以上である。具体的には、第1貫通孔の直径Dと第2領域の外径面の最大の直径Dの差は、2mmである。
【0044】
次に、このような半導体装置11aの製造方法の一例について、簡単に説明する。図7は、図1に示す実施の形態1における半導体装置11aの製造方法の代表的な工程を示すフローチャートである。図7を参照して、実施の形態1における半導体装置11aの製造方法では、まず工程(S10)として、枠体およびベース板準備工程が実施される。この工程(S10)では、まず、基板17a,17b、コンデンサ18a,18b、半導体チップ21a,21b,21c,21d,21e,21f,22a,22b,22c,22d,22e,22f、ワイヤ24a,24b,24c,24d,24e,24f,25a,25b,25c,25d,25e,25f,28a,28b,29a,29bおよびプレスフィットピン26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hが取り付けられ、4つの第1貫通孔12c,12d,12e,12fが設けられた上記構成のベース板12を準備する。また、4つの第2貫通孔32a,32b,32c,32dが設けられ、端子19a,19b,19c,19dおよび環状部材41a,41b,41c,41dが取り付けられた上記構成の枠体13を準備する。すなわち、半導体装置11aの製造方法は、枠体13およびベース板12を準備する工程を含む。
【0045】
次に、工程(S20)として、枠体載置工程が実施される。図8は、枠体13をベース板12上に載置した状態の一部を示す概略断面図である。図8においては、理解を容易にする観点から、枠体13をベース板12上に載置した状態を左側に示し、図5に示す状態を右側に示している。図8を併せて参照して、この工程(S20)では、枠体13をベース板12上に載置する。ここで、環状部材41a,41b,41c,41dのそれぞれの第2領域45aが、第1貫通孔12c,12d,12e,12f内に配置されるように枠体13をベース板12上に載置する。この時、環状部材41a,41b,41c,41dのそれぞれの第2領域45aの外径面52aと第1貫通孔12c,12d,12e,12fのそれぞれの第1の面12a側の端部12kとが接触し、その他の部分は接触していない状態である。この場合、上記した直径D,D,Dの寸法関係であるため、容易に上記したように載置することができる。ここで、Z方向において、端子19aと、回路パターン16aとの間、具体的には回路パターン16aの第3回路板15cとの間には、隙間Sが形成される。この隙間SのZ方向の長さGについては、半導体装置11aを構成する各部品の寸法関係、製造誤差等により大きくなったり、小さくなったりする。すなわち、半導体装置11aの製造方法は、上記準備する工程の後に、枠体13をベース板12上に載置する工程を含む。
【0046】
その後、工程(S30)として、枠体圧入工程が実施される。この工程(S30)では、枠体13をベース板12側へ押し進めて、環状部材41a,41b,41c,41dのそれぞれの第2領域45aを第1貫通孔12c,12d,12e,12f内に圧入する。この場合、Z方向においてベース板12を固定した状態で、矢印Zで示す向きと反対の向きに枠体13を押し進める。そうすると、環状部材41a,41b,41c,41dは押し進められて、第2領域45aが徐々に第1貫通孔12c,12d,12e,12f内に入り込んでくる。すなわち、半導体装置11aの製造方法は、上記載置する工程の後に、枠体13を圧入する工程を含む。
【0047】
図9は、圧入に要する力と圧入量との関係を示すグラフである。図9において、縦軸は、圧入に要する力を示し、横軸は、圧入量であるストロークを示す。図9において、圧入に要する力を加えていくと、圧入量が増える。そして、圧力PとストロークLの交点に至るまでは、ストロークに比例して圧力が増加する。そして、交点Mに至ると、同じストローク分押し進もうとするのに必要とされる力が大きくなる。ここでは、端子19aと回路パターン16aとが接触したことにより、力が大きくなると解することができる。すなわち、端子19aと回路パターン16aとが適切な接触状態になったと把握することができる。この時点で枠体圧入工程を終了する。
【0048】
次に、工程(S40)として、接合工程が実施される。この工程(S40)では、端子19aと回路パターン16aとを接合する。この場合、超音波接合により端子19aと回路パターン16aとを接合する。他の端子19b,19c,19dと回路パターン16a,16bとも超音波接合を行う。すなわち、半導体装置11aの製造方法は、上記圧入する工程の後に、端子19a,19b,19c,19dと回路パターン16a,16bとを接合する工程を含む。
【0049】
その後、工程(S50)として、樹脂注入工程が実施される。この工程(S50)では、枠体13およびベース板12によって形成される空間30内に熱硬化性樹脂を流入させる。すなわち、半導体装置11aの製造方法は、上記接合する工程の後に、樹脂を注入する工程を含む。次に、工程(S60)として、樹脂硬化工程が実施される。この工程(S60)では、注入させた樹脂を加温等により硬化される。そして、ベース板12および枠体13によって取り囲まれる空間30を封止する。すなわち、半導体装置11aの製造方法は、上記注入する工程の後に、樹脂を硬化させる工程を含む。このようにして、半導体装置11aを製造する。
【0050】
上記半導体装置11aによると、第2貫通孔32a,32b,32c,32d内に配置される第1領域44aと、第2の面13eから突出する第2領域45aと、を含む環状部材41a,41b,41c,41dが枠体13に取り付けられている。そして、第2領域45aの外径面52aは、先端に近づくにしたがって外径が小さくなっている。また、第2領域45aの外径面52aの最小の直径Dは、第1貫通孔12c,12d,12e,12fの直径Dよりも小さい。また、第2領域45aの外径面52aの最大の直径Dは、第1貫通孔12c,12d,12e,12fの直径Dよりも大きい。したがって、環状部材41a,41b,41c,41dの第2領域45aをベース板12の第1貫通孔12c,12d,12e,12f内にある状態として、枠体13をベース板12に押し当てて圧入していき、端子19a,19b,19c,19dと回路パターン16a,16bとの距離を適切な距離とすることが容易となる。この場合、第2領域45aの外径面52aは、先端に近づくにしたがって外径が小さくなっているため、この圧入量を調整して、接合前の端子19a,19b,19c,19dと回路パターン16a,16bとの位置決めを高精度に行うことができる。その後、端子19a,19b,19c,19dと回路パターン16a,16bとを接合することにより、ベース板12および枠体13に過大な応力が負荷されることを抑制しながら、端子19a,19b,19c,19dと回路パターン16a,16bとの適切な接合を行うことができる。その結果、このような半導体装置11aは、信頼性の向上を図ることができる。
【0051】
本実施形態において、第2領域45aの外径面52aは、テーパ状である。したがって、より確実に環状部材41a,41b,41c,41dを第1貫通孔12c,12d,12e,12f内に圧入させて、端子19a,19b,19c,19dと回路パターン16a,16bとの接合を確実に行うことができる。
【0052】
本実施形態において、第1貫通孔12c,12d,12e,12fの直径Dと第2領域45aの外径面52aの最小の直径Dの差は、0.5mm以上1mm以下である。よって、上記半導体装置11aの製造時において、第2領域45aの外径面52aと第1貫通孔12c,12d,12e,12fを構成する第1側壁面12g,12h,12i,12jとの干渉を抑制して、突出した第2領域45aを含む環状部材41a,41b,41c,41dを第1貫通孔12c,12d,12e,12f内に挿入しやすくすることができる。したがって、より容易に上記半導体装置を製造することができる。
【0053】
本実施形態において、第1貫通孔12c,12d,12e,12fの直径Dと第2領域45aの外径面52aの最大の直径Dの差は、2mm以上である。よって、第1貫通孔12c,12d,12e,12fを構成する第1側壁面12g,12h,12i,12jのうちの第1の面12a側の端部12kと第2領域45aの外径面52aとを接触しやすくすることができる。したがって、より確実に上記半導体装置11aを製造することができる。
【0054】
本実施形態において、回路パターン16a,16bは、端子19a,19b,19c,19dの一部が溶融して端子と接合されている。このような接合は、例えば、超音波接合により行うことができる。したがって、接着剤や接合材を用いることなく、確実に端子19a,19b,19c,19dと回路パターン16a,16bとを電気的に接続することができる。
【0055】
本実施形態においては、ベース板12は、厚さ方向に見て矩形状である。第1貫通孔12c,12d,12e,12fは、矩形状のベース板12の4隅に対応して4つ設けられている。第2貫通孔32a,32b,32c,32dは、4つの第1貫通孔12c,12d,12e,12fに対応するように4つ設けられている。環状部材41a,41b,41c,41dは、4つの第2貫通孔32a,32b,32c,32dに対応するように4つ取り付けられている。よって、矩形状のベース板12を含む半導体装置11aにおいて、4つの環状部材41a,41b,41c,41d、4つの第1貫通孔12c,12d,12e,12fおよび4つの第2貫通孔32a,32b,32c,32dにより、端子19a,19b,19c,19dと回路パターン16a,16bとの接合状態をより適切にすることができる。したがって、より信頼性の高い半導体装置11aとすることができる。
【0056】
(実施の形態2)
次に、他の実施の形態である実施の形態2について説明する。図10は、実施の形態2における半導体装置の一部を示す概略断面図である。実施の形態2の半導体装置は、第2領域の外径面が曲面を含む点において実施の形態1の場合と異なっている。
【0057】
図10を参照して、実施の形態2に係る半導体装置に含まれる枠体に取り付けられる環状部材61aは、第1領域44aの外径面51aと、第2領域45aの外径面62aと、を含む。第2領域45aの外径面62aは、曲面である。具体的には、第2領域45aの外径面62aは、端部47aに近づくにしたがって、最大の直径が小さくなる割合が高くなるように構成されている。このようにすることによっても、第1貫通孔を構成する側壁面のうちの第1の面側の端部と第2領域45aの外径面62aとを接触させながら、環状部材の第1の面側の端部を、第1貫通孔内にあるようにすることが容易となる。なお、第2領域45aの外径面62aは、円弧面であってもよい。
【0058】
(他の実施の形態)
なお、上記の実施の形態においては、端子と回路パターンとの接合において、超音波接合を利用することとしたが、これに限らず、導電性を有する接着剤や接合材、はんだ等を利用して、端子と回路パターンとを電気的に接合することとしてもよい。また、一部を超音波接合して、他を接合材により接合してもよい。
【0059】
また、上記の実施の形態においては、環状部材の端部は、平面であることとしたが、これに限らず、例えばテーパ状の外径面の先端がそのまま環状部材の端部を構成することとしてもよい。
【0060】
なお、上記の実施の形態においては、半導体チップは、SiCから構成される半導体層を含むこととしたが、これに限らず、半導体チップは、GaNから構成される半導体層を含んでもよい。すなわち、半導体チップは、SiCまたはGaNから構成される半導体層を含んでもよい。このようにすることにより、半導体チップを、ワイドバンドギャップ半導体チップとして利用することができる。また、半導体チップは、Siから構成される半導体層を含んでもよい。このようにすることにより、汎用性の高いものとすることができる。すなわち、半導体チップは、SiC、GaNまたはSiから構成される半導体層を含んでもよい。
【0061】
また、上記の実施の形態においては、各第2貫通孔内に上記構成の環状部材を取り付けることとしたが、これに限らず、4つの第2貫通孔の少なくともいずれか1つに上記構成の環状部材を取り付ける構成としてもよい。
【0062】
なお、上記の実施の形態において、4つの環状部材の第2の面から突出する突出量は、均等であることが望ましい。このようにすることにより、それぞれの環状部材を均等に圧入することができる。この場合、他の部材によって、ベース板と枠体との位置決めを行うとよい。また、4つの環状部材のうち少なくとも1つの第2の面から突出する突出量は、他の環状部材の第2の面から突出する突出量と異なってもよい。このようにすることにより、最も突出する環状部材を対応する第1貫通孔内に配置した後、これを基準として、他の環状部材を他の第1貫通孔内に配置することが容易となる。したがって、より容易に上記半導体装置を製造することができる。
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示の半導体装置は、信頼性の向上が求められる場合に特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0065】
11a 半導体装置
12 ベース板
12a 第1の面
12b 裏面
12c,12d,12e,12f 第1貫通孔
12g,12h,12i,12j 第1側壁面
13 枠体
13a 第1壁部
13b 第2壁部
13c 第3壁部
13d 第4壁部
13e 第2の面
13f 表面
14a,14b 絶縁板
15a 第1回路板
15b 第2回路板
15c 第3回路板
15d 第4回路板
15e 第5回路板
15f 第6回路板
15g 第7回路板
15h 第8回路板
15i 第9回路板
15j 第10回路板
15k 第11回路板
16a,16b 回路パターン
17a,17b 基板
18a,18b コンデンサ
19a,19b,19c,19d 端子
20 ケース
21a,21b,21c,21d,21e,21f,22a,22b,22c,22d,22e,22f 半導体チップ
23a,23b,23c,23d 領域
24a,24b,24c,24d,24e,24f,25a,25b,25c,25d,25e,25f,28a,28b,29a,29b ワイヤ
26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26h プレスフィットピン
27a,27b,27c,27d 内壁面
31a 第1平板部
31b 第2平板部
31c 第3平板部
31d 第4平板部
32a,32b,32c,32d 第2貫通孔
33a,33b,33c,33d 第2側壁面
41a,41b,41c,41d,61a 環状部材
42a,42b,42c,42d 第3貫通孔
43a,43b,43c,43d 第3側壁面
44a 第1領域
45a 第2領域
46a,47a 端部
51a,52a,62a 外径面
53a 境界
,D,D 直径
長さ
ストローク
M 交点
圧力
隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10