(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】燃料電池の冷却システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04701 20160101AFI20241001BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20241001BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20241001BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20241001BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241001BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241001BHJP
【FI】
H01M8/04701
H01M8/04029
H01M8/0432
H01M8/04694
H01M8/04746
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2021074923
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴史
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-189864(JP,A)
【文献】特開2010-067394(JP,A)
【文献】実開昭60-191782(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0276251(US,A1)
【文献】特開2005-188586(JP,A)
【文献】特開昭58-102879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/64 - 31/72
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の冷却システムであって、
燃料電池(10)を冷却する冷媒が流通する冷媒流路(21)と、
前記燃料電池を通過した前記冷媒を放熱させるラジエータ(22)と、
前記ラジエータをバイパスして前記冷媒を流すバイパス流路(25)と、
前記冷媒の温度に応じて、前記ラジエータおよび前記バイパス流路との間で前記冷媒の流通経路を選択するサーモスタット弁(26)と、
前記燃料電池を通過した後の前記冷媒の温度を計測する冷媒温度センサ(27)と、
前記燃料電池の目標温度と前記冷媒温度センサの検出温度との温度差が所定値以上の場合に、前記サーモスタット弁の温度ヒステリシス特性を変更して前記温度差を小さくする温度調整処理を実行する制御部(28)と、
を備える、燃料電池の冷却システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記温度調整処理において、前記サーモスタット弁に流れる前記冷媒の温度および流量の少なくとも一方を変化させることで、前記温度ヒステリシス特性を変更する、請求項1に記載の燃料電池の冷却システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記燃料電池の目標温度が前記冷媒温度センサの検出温度よりも高い場合、前記温度調整処理において、前記サーモスタット弁に流れる前記冷媒の温度上昇および流量減少の少なくとも一方を実施することで、前記温度ヒステリシス特性を変更する、請求項1または2に記載の燃料電池の冷却システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記燃料電池の目標温度が前記冷媒温度センサの検出温度よりも低い場合、前記温度調整処理において、前記サーモスタット弁に流れる前記冷媒の温度低下および流量増加の少なくとも一方を実施することで、前記温度ヒステリシス特性を変更する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料電池の冷却システム。
【請求項5】
燃料電池の冷却システムであって、
燃料電池(10)を冷却する冷媒が流通する冷媒流路(21)と、
前記燃料電池を通過した前記冷媒を放熱させるラジエータ(22)と、
前記ラジエータをバイパスして前記冷媒を流すバイパス流路(25)と、
前記冷媒の温度に応じて、前記ラジエータおよび前記バイパス流路との間で前記冷媒の流通経路を選択するサーモスタット弁(26)と、
前記燃料電池を通過した後の前記冷媒の温度を計測する冷媒温度センサ(27)と、
前記燃料電池の目標温度と前記冷媒温度センサの検出温度との温度差が所定値以上の場合に、前記サーモスタット弁の前記ラジエータ側を一時的に全閉または全開させ
ることで前記サーモスタット弁の温度ヒステリシス特性の影響をリセットさせた後に前記温度差を小さくする温度調整処理を実行する制御部(28)と、
を備える燃料電池の冷却システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記燃料電池の目標温度が前記冷媒温度センサの検出温度よりも高い場合、前記温度調整処理において、前記サーモスタット弁に流れる前記冷媒の温度を一時的に低下させて前記サーモスタット弁の前記ラジエータ側を全閉させ、その後、前記ラジエータの放熱能力低下および前記冷媒の流量減少の少なくとも一方を実施して、前記温度差を小さくする、請求項5に記載の燃料電池の冷却システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記燃料電池の目標温度が前記冷媒温度センサの検出温度よりも低い場合、前記温度調整処理において、前記サーモスタット弁に流れる前記冷媒の温度を一時的に上昇させて前記サーモスタット弁の前記ラジエータ側を全開させ、その後、前記ラジエータの放熱能力増加および前記冷媒の流量増加の少なくとも一方を実施して、前記温度差を小さくする、請求項5または6に記載の燃料電池の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーモスタット弁および流量調整弁を用いて、燃料電池の温度を調整する燃料電池の冷却システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、サーモスタット弁および流量調整弁を用いた複雑な流量制御によって燃料電池を狙いの温度に調整するため、システム構成やシステム制御が非常に複雑なものになってしまう。
【0005】
本開示は、複雑化することなく、燃料電池を狙いの温度に調整可能な燃料電池の冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
燃料電池の冷却システムであって、
燃料電池(10)を冷却する冷媒が流通する冷媒流路(21)と、
燃料電池を通過した冷媒を放熱させるラジエータ(22)と、
ラジエータをバイパスして冷媒を流すバイパス流路(25)と、
冷媒の温度に応じて、ラジエータおよびバイパス流路との間で冷媒の流通経路を選択するサーモスタット弁(26)と、
燃料電池を通過した後の冷媒の温度を計測する冷媒温度センサ(27)と、
燃料電池の目標温度と冷媒温度センサの検出温度との温度差が所定値以上の場合に、サーモスタット弁の温度ヒステリシス特性を変更して温度差を小さくする温度調整処理を実行する制御部(28)と、を備える。
【0007】
このように、サーモスタット弁の温度ヒステリシス特性の変更によって、燃料電池の目標温度と冷媒温度センサの検出温度との温度差を縮小させる構成とすれば、従来のようなサーモスタット弁および流量調整弁を用いた複雑な流量制御が不要となる。したがって、複雑化させることなく、燃料電池を狙いの温度に調整可能となる。
【0008】
請求項5に記載の発明は、
燃料電池の冷却システムであって、
燃料電池(10)を冷却する冷媒が流通する冷媒流路(21)と、
燃料電池を通過した冷媒を放熱させるラジエータ(22)と、
ラジエータをバイパスして冷媒を流すバイパス流路(25)と、
冷媒の温度に応じて、ラジエータおよびバイパス流路との間で冷媒の流通経路を選択するサーモスタット弁(26)と、
燃料電池を通過した後の冷媒の温度を計測する冷媒温度センサ(27)と、
燃料電池の目標温度と冷媒温度センサの検出温度との温度差が所定値以上の場合に、サーモスタット弁のラジエータ側を一時的に全閉または全開させることでサーモスタット弁の温度ヒステリシス特性の影響をリセットさせた後に温度差を小さくする温度調整処理を実行する制御部(28)と、を備える。
【0009】
サーモスタット弁のラジエータ側が全閉または全開になっている状態では、サーモスタット弁の温度ヒステリシス特性の影響がリセットされるので、燃料電池の温度調整が実施し易くなる。このため、サーモスタット弁のラジエータ側を一時的に全閉または全開させた後に燃料電池の目標温度と実温度と温度差を小さくすることが望ましい。これによると、従来のようなサーモスタット弁および流量調整弁を用いた複雑な流量制御が不要となり、複雑化させることなく、燃料電池を狙いの温度に調整可能となる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る燃料電池の冷却システムを含む燃料電池システムの概略構成図である。
【
図2】燃料電池システムの制御装置を示す模式的なブロック図である。
【
図3】サーモスタット弁の温度ヒステリシス特性と冷媒の温度変化との関係を説明するための説明図である。
【
図4】サーモスタット弁の温度ヒステリシス特性を説明するための説明図である。
【
図5】第1実施形態の制御装置が実行する温度調整処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態の制御装置が実行する温度調整処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~
図5を参照して説明する。本実施形態では、本開示の燃料電池10の冷却システム20を、燃料電池10にて車両走行用のモータへ供給する電力を得る車両FCVに適応した例について説明する。FCVは、Fuel Cell Vehicleの略称である。燃料電池10の冷却システム20は、燃料電池システム1の一部を構成している。
【0014】
燃料電池システム1は、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生させる燃料電池10を備えている。燃料電池10は、インバータINV等の電力変換機器11に電力を供給する。インバータINVは、燃料電池10から供給された直流電流を交流電流に変換して走行用モータ等の負荷機器12に供給して当該負荷機器12を駆動する。
【0015】
図示しないが、燃料電池10には、電力を蓄積する蓄電装置が接続されている。燃料電池システム1は、燃料電池10から出力される電力のうち余剰となる電力が蓄電装置に蓄積されるように構成されている。
【0016】
燃料電池10は、最小単位となる燃料電池セルCが複数積層されたセルスタックCSとして構成されている。燃料電池セルCは、電解質膜、触媒、ガス拡散層、セパレータを有する固体高分子電解質型のセル(いわゆる、PEFC)で構成されている。燃料電池セルCは、電解質膜が触媒、ガス拡散層、セパレータで挟持されている。燃料電池セルCは、アノード電極側に水素が供給され、カソード電極側に酸素が供給されると、以下の反応式F1、F2に示す電気化学反応が起きて電気エネルギが発生する。
・アノード電極側:H2→2H++2e-・・・(F1)
・カソード電極側:2H++1/2O2+2e-→H2O・・・(F2)
上記の電気化学反応が起きるためには、燃料電池セルCの電解質膜は、水を含んだ湿潤状態になっている必要がある。燃料電池システム1は、燃料電池10の内部の電解質膜を加湿する。電解質膜の加湿は、燃料ガスである水素または酸化剤ガスである空気の供給経路に加湿装置等を配置することで実現可能である。
【0017】
燃料電池システム1は、燃料電池10に向けて酸素を含む空気を供給するための空気供給経路30が設けられている。空気供給経路30には、最上流部にエアフィルタ31が設けられ、エアフィルタ31の下流にエアポンプ32が設けられている。エアポンプ32は、燃料電池10に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部を構成する。エアポンプ32は、後述の制御装置100からの制御信号に基づいて、燃料電池10への空気の供給能力が制御される。
【0018】
燃料電池システム1は、燃料電池10から排出される空気のオフガス(すなわち、オフ空気)を図示しないマフラに流すための空気排出経路34が設けられている。空気排出経路34には、エアバルブ35が設けられている。エアバルブ35は、燃料電池10の内部のエア圧力を調整する調整弁である。
【0019】
燃料電池システム1には、燃料電池10に向けて水素を供給するための水素供給経路40が設けられている。水素供給経路40には、図示しないが、最上流部に高圧水素タンクが設けられ、高圧水素タンクの下流に燃料バルブが設けられている。
【0020】
燃料電池システム1は、燃料電池10から排出される水素のオフガス(すなわち、オフ燃料)を図示しないマフラに流すための水素排出経路41が設けられている。水素排出経路41には、図示しないが、排気バルブが設けられている。水素排出経路41の下流側は、空気排出経路34に接続されている。これにより、水素排出経路41を流れるオフ燃料は、オフ空気と混合されて希釈された後にマフラから排気される。
【0021】
ところで、燃料電池10は、水素と酸素との電気化学反応により発熱する。そして、燃料電池10は、発電効率向上、電解質膜の劣化抑制等の関係で、その作動温度を80℃程度に維持する必要がある。
【0022】
燃料電池システム1は、燃料電池10の温度を適温に調整するための冷却システム20を備える。この冷却システム20は、冷媒を用いて燃料電池10の熱を外部に放熱させたり、外部の熱を燃料電池10に供給したりすることで、燃料電池10の温度を調整する。
【0023】
冷却システム20は、燃料電池10を冷却する冷媒が流通する冷媒流路21、ラジエータ22、送風ファン23、冷媒ポンプ24、バイパス流路25、サーモスタット弁26、冷媒温度センサ27を含んでいる。冷却システム20は、燃料電池10を通過する冷媒の流量を調整するための流量調整弁が含んでいない。
【0024】
冷媒流路21は、ラジエータ22と燃料電池10との間で冷媒を循環させる循環回路を構成する。冷媒流路21は、ラジエータ22を通過した冷媒を燃料電池10に導く第1流路部211および燃料電池10を通過した冷媒をラジエータ22に導く第2流路部212を有する。
【0025】
ラジエータ22は、燃料電池10を通過した冷媒を放熱させる放熱器である。ラジエータ22は、外気を熱媒体として、当該外気との熱交換によって冷媒を放熱させる。ラジエータ22は、車両FCVの走行時に外気が導入されるように、車両FCVの前面に配置されている。ラジエータ22には、送風ファン23が併設されている。
【0026】
送風ファン23は、ラジエータ22に向けて熱媒体である外気を送風するものである。送風ファン23は、ラジエータ22に近接して配置されている。送風ファン23は、通電量に応じて送風能力を調整可能な電動ファンで構成されている。送風ファン23は、制御部28からの制御信号に応じて通電量が調整される。
【0027】
冷媒ポンプ24は、燃料電池10に向けて冷媒を圧送するものである。冷媒ポンプ24は、冷媒流路21のうち、第1流路部211に配置されている。冷媒ポンプ24は、制御部28からの制御信号に応じて作動が制御される。
【0028】
バイパス流路25は、ラジエータ22をバイパスして冷媒を流す流路である。バイパス流路25は、一端側が第1流路部211に接続され、他端側が第2流路部212に接続されている。バイパス流路25と第1流路部211との接続部には、サーモスタット弁26が配置されている。
【0029】
サーモスタット弁26は、冷媒の温度に応じて、ラジエータ22およびバイパス流路25との間で冷媒の流通経路を選択するものである。サーモスタット弁26は、冷媒の温度が所定温度以上なると膨張するワックス、当該ワックスの膨張によって変位する弁体を含んでいる。サーモスタット弁26は、冷媒の温度が高い場合にラジエータ22側を開いてラジエータ22に冷媒を流通させる。サーモスタット弁26は、冷媒の温度が低い場合にラジエータ22側を閉じてバイパス流路25に冷媒を流通させる。
【0030】
冷媒温度センサ27は、燃料電池10を通過直後の冷媒の温度を検出する温度センサである。冷媒温度センサ27は、第2流路部212に配置されている。冷媒温度センサ27の検出温度Tfcは、燃料電池10の温度(すなわち、FC温度)に相当する。
【0031】
次に、燃料電池システム1の制御装置100について
図2を参照しつつ説明する。
図2に示すように、制御装置100は、燃料電池システム1を構成する各種の制御対象機器の作動を制御する。制御装置100は、プロセッサ、メモリを含むマイクロコンピュータとその周辺回路を備えている。制御装置100のメモリは、非遷移的実体的記憶媒体である。
【0032】
制御装置100は、その入力側に、冷媒温度センサ27、エアフローメータ101、FC電圧検出部102、FC電流検出部103等が接続されている。
【0033】
エアフローメータ101は、空気供給経路30に配置されている。エアフローメータ101は、空気供給経路30を流れる空気の流量を検出するセンサである。
【0034】
FC電圧検出部102およびFC電流検出部103は、燃料電池10とインバータINVとの接続ラインに設けられている。FC電圧検出部102は、燃料電池10が出力する出力電圧(すなわち、FC電圧)を検出するセンサである。FC電流検出部103は、燃料電池10を流れる電流を検出するセンサである。
【0035】
制御装置100の出力側には、送風ファン23、冷媒ポンプ24、エアポンプ32、エアバルブ35、図示しない燃料バルブ等の制御対象機器が接続されている。また、制御装置100は、インバータINV等の電力変換機器11が接続されている。制御装置100は、メモリに記憶された制御プログラムに基づいて、出力側に接続される制御対象機器を動作させて、燃料電池10の運転を制御する。
【0036】
制御装置100は、冷却システム20の制御対象機器である送風ファン23および冷媒ポンプ24を制御する制御部28を含んでいる。制御部28は、冷却システム20の一部を構成している。制御部28は、冷却システム20に含まれる送風ファン23および冷媒ポンプ24を制御する。
【0037】
このように構成される燃料電池システム1は、走行用モータ等の負荷機器12からの要求電力に応じた電力が出力されるように、出力側に接続される制御対象機器の作動が制御装置100によって制御される。
【0038】
制御装置100は、燃料電池10への要求電力が小さい場合、燃料電池10への水素および空気の供給量が少なくなるように、エアポンプ32の能力および燃料バルブの開度を制御する。
【0039】
一方、制御装置100は、燃料電池10への要求電力が大きい場合、燃料電池10への水素および空気の供給量が多くなるように、エアポンプ32の能力および燃料バルブの開度を制御する。
【0040】
燃料電池10への要求電力が大きい場合、燃料電池10を流れる電流が大きくなって燃料電池10が高負荷になる。この際、燃料電池10の発熱量が増大することで、燃料電池10が目標温度Tdを超える高温となってしまう。
【0041】
このため、制御装置100に含まれる制御部28は、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定値ΔTth1以上の場合に、当該温度差ΔTを小さくする温度調整処理を実行する。温度差ΔTは、燃料電池10の目標温度Tdに対する実際の燃料電池10の相対温度である。温度差ΔTは、絶対値である。
【0042】
ここで、冷却システム20は、サーモスタット弁26が温度ヒステリシス特性を有するので、燃料電池10の温度と目標温度Tdとの間にずれが生じ易い。この温度ヒステリシス特性は、サーモスタット弁26が冷媒の流通経路をラジエータ22からバイパス流路25へ切り替える温度と、バイパス流路25からラジエータ22へ切り替える温度とが互いに異なるという特性を意味する。
【0043】
本発明者らは、サーモスタット弁26の温度ヒステリシス特性と冷媒の温度変化との関係について検証した。この検証結果、サーモスタット弁26は、冷媒の温度変化に応じて温度ヒステリシス特性が変動する傾向があることが判った。
【0044】
図3は、本発明者らの検証によって得られたサーモスタット弁26の温度ヒステリシス特性である。
図3の上段は、送風ファン23の送風能力の変化を「小」とした際のサーモスタット弁26の温度ヒステリシス特性を示している。
図3の中段は、送風ファン23の送風能力の変化を「中」とした際のサーモスタット弁26の温度ヒステリシス特性を示している。
図3の下段は、送風ファン23の送風能力の変化を「大」とした際のサーモスタット弁26の温度ヒステリシス特性を示している。
図3に示す温度ヒステリシス特性は、縦軸がサーモスタット弁26におけるラジエータ22側の開度であり、横軸がサーモスタット弁26の出口側の冷媒温度である。
【0045】
図3に示すように、サーモスタット弁26は、冷媒の温度変化等に応じて温度ヒステリシス特性が変動する傾向があることが判った。具体的には、送風ファン23の送風能力の変化が大きく、冷媒の温度変化が速い場合、サーモスタット弁26のラジエータ22側を開く温度と閉じる温度との温度差(いわゆる、ヒステリシス幅)が拡大する傾向がある。また、送風ファン23の送風能力の変化が小さく、冷媒の温度変化が遅い場合、ヒステリシス幅が縮小する傾向がある。
【0046】
図4の一点鎖線および二点鎖線で示すようにヒステリシス幅が拡大している場合、
図4の実線で示すヒステリシス幅が縮小している場合に対して、サーモスタット弁26の出口側の冷媒温度が高温側および低温側にずれる。このため、ヒステリシス幅が拡大している場合、ヒステリシス幅が縮小している場合に比べて、燃料電池10と冷媒との温度差を確保して燃料電池10の早い昇温や早い降温を期待することができる。
【0047】
これらを加味して、本実施形態の制御部28は、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定値ΔTth1以上の場合に、サーモスタット弁26の温度ヒステリシス特性を変更して、前記の温度差ΔTを小さくする。
【0048】
以下、制御部28が実行する温度調整処理について、
図5を参照しつつ説明する。
図5に示す温度調整処理は、燃料電池10の起動後に周期的または不定期に制御部28によって実行される。
【0049】
図5に示すように、制御部28は、ステップS100にて、制御装置100の入力側に接続された機器等を介して各種信号を読み込む。制御部28は、例えば、冷媒温度センサ27の検出温度Tfcを読み込む。
【0050】
続いて、制御部28は、ステップS110にて、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定値ΔTth1以上であるか否かを判定する。
【0051】
ここで、燃料電池10では、発電性能確保や劣化防止の観点から2℃~3℃といった細かな温度調整が必要となる。このため、所定値ΔTth1は、2℃~3℃に設定されていることが望ましい。
【0052】
燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定値ΔTth1未満である場合、燃料電池10の温度が目標温度Tdに近いので、燃料電池10の温度調整が不要と考えられる。このため、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定値ΔTth1未満である場合、制御部28は、以降の処理をスキップして温度調整処理を抜ける。
【0053】
一方、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定値ΔTth1以上である場合、目標温度Tdに対して燃料電池10の温度が大きくずれている。このため、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定値ΔTth1以上である場合、制御部28は、ステップS120の処理に移行する。
【0054】
制御部28は、ステップS120にて、燃料電池10の昇温が必要なのか燃料電池10の降温が必要なのかを判定する。具体的には、制御部28は、冷媒温度センサ27の検出温度Tfcが燃料電池10の目標温度Tdを下回っている場合に、“昇温要”と判定する。制御部28は、冷媒温度センサ27の検出温度Tfcが燃料電池10の目標温度Tdを上回っている場合に、“降温要”と判定する。
【0055】
ステップS120の判定処理にて“昇温要”と判定された場合、制御部28は、ステップS130にて、高温ずらし処理を実行する。この高温ずらし処理は、サーモスタット弁26に流れる冷媒の温度上昇および流量減少の少なくとも一方を実施することで、サーモスタット弁26におけるラジエータ22側を開き始める温度と閉じ始める温度との差を拡大させる処理である。
【0056】
サーモスタット弁26に流れる冷媒の温度上昇は、例えば、送風ファン23の送風能力を減少させ、ラジエータ22の放熱能力を低下させることで実現することができる。また、サーモスタット弁26に流れる冷媒の流量減少は、冷媒ポンプ24の冷媒の吐出能力を低下させることで実現することができる。冷媒の温度上昇量や冷媒の流量減少量は、例えば、予め温度差ΔT、温度ヒステリシス特性、冷媒の温度上昇量、冷媒の流量減少量の関係を規定した制御マップ等を参照して決定すればよい。
【0057】
高温ずらし処理が実施されると、冷媒の温度変化によって、サーモスタット弁26の温度ヒステリシス特性のヒステリシス幅が拡大する。これにより、高温側にシフトした冷媒が燃料電池10に供給されることで燃料電池10の温度が上昇する。
【0058】
一方、ステップS120の判定処理にて“降温要”と判定された場合、制御部28は、ステップS140にて、低温ずらし処理を実行する。この低温ずらし処理は、サーモスタット弁26に流れる冷媒の温度低下および流量増加の少なくとも一方を実施することで、サーモスタット弁26におけるラジエータ22側を開き始める温度と閉じ始める温度との差を拡大させる処理である。
【0059】
サーモスタット弁26に流れる冷媒の温度低下は、例えば、送風ファン23の送風能力を増加させ、ラジエータ22の放熱能力を増加させることで実現することができる。また、サーモスタット弁26に流れる冷媒の流量増加は、冷媒ポンプ24の冷媒の吐出能力を高めることで実現することができる。冷媒の温度低下量や冷媒の流量増加量は、例えば、予め温度差ΔT、温度ヒステリシス特性、冷媒の温度低下量、冷媒の流量増加量の関係を規定した制御マップ等を参照して決定すればよい。
【0060】
低温ずらし処理が実施されると、冷媒の温度変化によって、サーモスタット弁26の温度ヒステリシス特性のヒステリシス幅が拡大する。これにより、低温側にシフトした冷媒が燃料電池10に供給されることで燃料電池10の温度が低下する。
【0061】
続いて、制御部28は、ステップS150にて、制御装置100の入力側に接続された機器等を介して各種信号を読み込む。制御部28は、例えば、冷媒温度センサ27の検出温度Tfcを読み込む。
【0062】
続いて、制御部28は、ステップS160にて、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定の閾値ΔTth2未満であるか否かを判定する。閾値ΔTth2は、所定値ΔTth1と同じ値または所定値ΔTth1よりも小さい値に設定される。
【0063】
燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定の閾値ΔTth2未満である場合、燃料電池10の温度調整が不要と考えられるので、制御部28は、温度調整処理を抜ける。
【0064】
一方、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定の閾値ΔTth2以上である場合、燃料電池10の温度調整が必要と考えられるので、制御部28は、ステップS120の処理に戻る。
【0065】
以上説明した燃料電池10の冷却システム20は、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定値ΔTth1以上の場合に、当該温度差ΔTを小さくする温度調整処理を制御部28が実行する。
【0066】
このように、サーモスタット弁26の温度ヒステリシス特性の変更によって、上記の温度差ΔTを縮小させる構成とすれば、従来のようなサーモスタット弁26および流量調整弁を用いた複雑な流量制御が不要となる。したがって、複雑化させることなく、燃料電池10を狙いの温度に調整することができる。換言すれば、流量調整弁に相当する構成の存否によらず、燃料電池10を狙いの温度に調整することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0068】
(1)制御部28は、温度調整処理において、サーモスタット弁26に流れる冷媒の温度および流量の少なくとも一方を変化させることで、温度ヒステリシス特性を変更する。これによれば、流量調整弁を用いた複雑な流量制御を行うことなく、燃料電池10を狙いの温度に調整することができる。
【0069】
(2)制御部28は、燃料電池10の目標温度Tdが冷媒温度センサ27の検出温度Tfcよりも高い場合、温度調整処理にて、サーモスタット弁26に流れる冷媒の温度上昇および流量減少の少なくとも一方を実施することで、温度ヒステリシス特性を変更する。これにより、サーモスタット弁26におけるラジエータ22側を開き始める温度と閉じ始める温度との差が拡大することで、燃料電池10を目標温度Tdまで昇温させ易くなり、燃料電池10を適切な温度帯で動作させることができる。
【0070】
(3)制御部28は、燃料電池10の目標温度Tdが冷媒温度センサ27の検出温度Tfcよりも低い場合、温度調整処理にて、サーモスタット弁26に流れる冷媒の温度低下および流量増加の少なくとも一方を実施することで、温度ヒステリシス特性を変更する。これにより、サーモスタット弁26におけるラジエータ22側を開き始める温度と閉じ始める温度との差が拡大することで、燃料電池10を目標温度Tdまで降温させ易くなり、燃料電池10を適切な温度帯で動作させることができる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図6を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0072】
本実施形態の冷却システム20は、制御部28が実行する温度調整処理の内容が第1実施形態と異なっている。以下、本実施形態の制御部28が実行する温度調整処理について、
図6を参照しつつ説明する。
図6に示す温度調整処理は、燃料電池10の起動後に周期的または不定期に制御部28によって実行される。なお、
図6に示すステップS200~S220までの処理は、
図5に示すステップS100~S120までの処理と略同じである。
【0073】
図6に示すように、制御部28は、ステップS200にて、制御装置100の入力側に接続された機器等を介して各種信号を読み込む。制御部28は、例えば、冷媒温度センサ27の検出温度Tfcを読み込む。
【0074】
続いて、制御部28は、ステップS210にて、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定値ΔTth1以上であるか否かを判定する。
【0075】
燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定値ΔTth1未満である場合、制御部28は、以降の処理をスキップして温度調整処理を抜ける。
【0076】
一方、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定値ΔTth1以上である場合、制御部28は、ステップS220の処理に移行する。
【0077】
制御部28は、ステップS220にて、冷媒温度センサ27の検出温度Tfcと燃料電池10の目標温度Tdとの比較に基づいて、燃料電池10の昇温が必要なのか燃料電池10の降温が必要なのかを判定する。
【0078】
ステップS220の判定処理にて“昇温要”と判定された場合、制御部28は、ステップS230にて、サーモスタット弁26のラジエータ22側が全閉されるように、各機器を制御する。
【0079】
サーモスタット弁26のラジエータ22側を全閉するためには、サーモスタット弁26に流入する冷媒の温度を低くすればよい。このため、制御部28は、サーモスタット弁26に流れる冷媒の温度が低下するように、例えば、送風ファン23の送風能力を増加させたり、冷媒ポンプ24の冷媒の吐出能力を高めたりする。
【0080】
その後、制御部28は、ステップS240にて、昇温処理を実行する。この昇温処理は、ラジエータ22の放熱能力低下および冷媒の流量減少の少なくとも一方を実施して燃料電池10の昇温を促進させる処理である。
【0081】
ラジエータ22の放熱能力低下は、例えば、送風ファン23の送風能力を減少させることで実現することができる。また、サーモスタット弁26に流れる冷媒の流量減少は、冷媒ポンプ24の冷媒の吐出能力を低下させることで実現することができる。
【0082】
一方、ステップS220の判定処理にて“降温要”と判定された場合、制御部28は、ステップS250にて、サーモスタット弁26のラジエータ22側が全開されるように、各機器を制御する。
【0083】
サーモスタット弁26のラジエータ22側を全開するためには、サーモスタット弁26に流入する冷媒の温度を高くすればよい。このため、制御部28は、サーモスタット弁26に流れる冷媒の温度が高まるように、例えば、送風ファン23の送風能力を減少させたり、冷媒ポンプ24の冷媒の吐出能力を低下させたりする。
【0084】
その後、制御部28は、ステップS260にて、降温処理を実行する。この降温処理は、ラジエータ22の放熱能力増加および冷媒の流量増加の少なくとも一方を実施して燃料電池10の降温を促進させる処理である。
【0085】
ラジエータ22の放熱能力増加は、例えば、送風ファン23の送風能力を増加させることで実現することができる。また、サーモスタット弁26に流れる冷媒の流量増加は、冷媒ポンプ24の冷媒の吐出能力を高めることで実現することができる。
【0086】
続いて、制御部28は、ステップS270にて、制御装置100の入力側に接続された機器等を介して各種信号を読み込む。制御部28は、例えば、冷媒温度センサ27の検出温度Tfcを読み込む。
【0087】
続いて、制御部28は、ステップS280にて、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定の閾値ΔTth2未満であるか否かを判定する。閾値ΔTth2は、所定値ΔTth1と同じ値または所定値ΔTth1よりも小さい値に設定される。
【0088】
燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定の閾値ΔTth2未満である場合、燃料電池10の温度調整が不要と考えられるので、制御部28は、温度調整処理を抜ける。
【0089】
一方、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定の閾値ΔTth2以上である場合、燃料電池10の温度調整が必要と考えられるので、制御部28は、ステップS220の処理に戻る。
【0090】
以上説明した燃料電池10の冷却システム20は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。制御部28は、燃料電池10の目標温度Tdと冷媒温度センサ27の検出温度Tfcとの温度差ΔTが所定値ΔTth1以上の場合に、サーモスタット弁26のラジエータ22側を一時的に全閉または全開させた後に温度差ΔTを小さくする温度調整処理を実行する。
【0091】
サーモスタット弁26のラジエータ22側が全閉または全開になっている状態では、サーモスタット弁26の温度ヒステリシス特性の影響がリセットされるので、燃料電池10の温度調整が実施し易くなる。このため、サーモスタット弁26のラジエータ22側を一時的に全閉または全開させた後に燃料電池10の目標温度Tdと実温度と温度差ΔTを小さくすることが望ましい。これによると、従来のようなサーモスタット弁26および流量調整弁を用いた複雑な流量制御が不要となり、複雑化させることなく、燃料電池10を狙いの温度に調整可能となる。
【0092】
また、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0093】
(1)制御部28は、燃料電池10の目標温度Tdが冷媒温度センサ27の検出温度Tfcよりも高い場合、温度調整処理にて、サーモスタット弁26に流れる冷媒の温度を一時的に低下させてサーモスタット弁26のラジエータ22側を全閉させる。その後、制御部28は、ラジエータ22の放熱能力低下および冷媒の流量減少の少なくとも一方を実施して、温度差ΔTを小さくする。これによると、燃料電池10を目標温度Tdまで昇温させ易くなり、燃料電池10を適切な温度帯で動作させることができる。
【0094】
(2)制御部28は、燃料電池10の目標温度Tdが冷媒温度センサ27の検出温度Tfcよりも低い場合、温度調整処理にて、サーモスタット弁26に流れる冷媒の温度を一時的に上昇させてサーモスタット弁26のラジエータ22側を全開させる。その後、制御部28は、ラジエータ22の放熱能力増加および冷媒の流量増加の少なくとも一方を実施して、温度差ΔTを小さくする。これによると、燃料電池10を目標温度Tdまで降温させ易くなり、燃料電池10を適切な温度帯で動作させることができる。
【0095】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0096】
上述の如く、制御部28は、燃料電池10の目標温度Tdが実温度よりも高い場合および燃料電池10の目標温度Tdが実温度よりも低い場合の双方において、サーモスタット弁26の温度ヒステリシス特性を変更することが望ましいが、これに限定されない。例えば、制御部28は、燃料電池10の目標温度Tdが実温度よりも高い場合および燃料電池10の目標温度Tdが実温度よりも低い場合の一方において、サーモスタット弁26の温度ヒステリシス特性を変更すようなっていてもよい。
【0097】
上述の冷却システム20は、燃料電池10を通過する冷媒の流量を調整するための流量調整弁が含まれていないが、これに限らず、当該流量調整が含まれていてもよい。
【0098】
上述の実施形態では、本開示の燃料電池システム1を車両FCVに適用した例について説明したが、本開示の燃料電池システム1は、車両FCV以外にも適用することができる。
【0099】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0100】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0101】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0102】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 燃料電池
20 冷却システム
21 冷媒流路
22 ラジエータ
25 バイパス流路
26 サーモスタット弁
27 冷媒温度センサ
28 制御部