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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
   A01B 71/00 20060101AFI20241001BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241001BHJP
   B60K 17/28 20060101ALI20241001BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241001BHJP
【FI】
A01B71/00
B60L50/60
B60K17/28 D
B60K1/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021077742
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2022171218
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宮本 知彦
(72)【発明者】
【氏名】北条 勝之
(72)【発明者】
【氏名】今村 達也
(72)【発明者】
【氏名】末松 真弘
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 奈々恵
(72)【発明者】
【氏名】大澤 亮
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-143965(JP,A)
【文献】特開2013-056629(JP,A)
【文献】特開2013-018408(JP,A)
【文献】特開2015-033353(JP,A)
【文献】特開2020-000115(JP,A)
【文献】特開2018-123676(JP,A)
【文献】特開2001-169608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 71/00
B60K 1/00-8/00
B60K 16/00
B60L 50/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、車体と、アタッチメントを有する作業機械と、前記車体と前記作業機械とを連結する連結装置と、前記車輪にトルクを出力する走行用駆動源と、前記アタッチメントにトルクを出力する作業用モータと、バッテリと、制御装置と、を備え、
前記連結装置は、前記アタッチメントを地面に接触させる作業姿勢及び前記アタッチメントを前記地面から離間した位置まで持ち上げた退避姿勢を実現可能な状態で前記作業機械を前記車体に連結しており、
前記制御装置は、前記作業機械の姿勢が前記作業姿勢である状況下で前記アタッチメントの動作の減速が要求された場合、前記アタッチメントの動作を減速させる際に前記作業用モータに回生エネルギーを発生させ、当該回生エネルギーで前記バッテリを充電させる充電処理を実行するようになっており、
前記制御装置は、前記連結装置の作動によって、前記作業機械の姿勢が前記作業姿勢である場合よりも前記アタッチメントを前記地面から離す方向に前記作業機械を変位させた状態で、前記充電処理を実行する
トラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの駆動によって作動する作業機械を備えるトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているトラクタは、複数の電動モータを備えている。複数の電動モータのうち、第1モータの出力トルクは車輪に伝達される。第1モータとは別の第2モータの出力トルクは、PTO軸を介して作業機械のアタッチメントに伝達される。こうしたトラクタにあっては、PTO軸の回転を減速させる際に第2モータで回生エネルギーを発生させ、当該回生エネルギーでバッテリを充電させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-143965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回生エネルギーを発生させることのできる第2モータを備えるトラクタにあっては、第2モータによる回生エネルギーの発生効率の向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのトラクタは、車輪と、車体と、アタッチメントを有する作業機械と、前記車体と前記作業機械とを連結する連結装置と、前記車輪にトルクを出力する走行用駆動源と、前記アタッチメントにトルクを出力する作業用モータと、バッテリと、制御装置と、を備えている。前記連結装置は、前記アタッチメントを地面に接触させる作業姿勢及び前記アタッチメントを前記地面から離間した位置まで持ち上げた退避姿勢を実現可能な状態で前記作業機械を前記車体に連結している。前記制御装置は、前記作業機械の姿勢が前記作業姿勢である状況下で前記アタッチメントの動作の減速が要求された場合、前記アタッチメントの動作を減速させる際に前記作業用モータに回生エネルギーを発生させ、当該回生エネルギーで前記バッテリを充電させる充電処理を実行するようになっている。前記制御装置は、前記連結装置の作動によって、前記作業機械の姿勢が前記作業姿勢である場合よりも前記アタッチメントを前記地面から離す方向に前記作業機械を変位させた状態で、前記充電処理を実行する。
【0006】
上記構成によれば、作業機械の姿勢が作業姿勢である場合、作業用モータの駆動によってアタッチメントを動作させることにより、トラクタが作業を行う。このように作業機械の姿勢が作業姿勢である状態でアタッチメントの動作の減速が要求されると、連結装置の作動によってアタッチメントを地面から離間させる方向に作業機械が変位する。このように作業機械を変位させた状態で充電処理が実行される。
【0007】
アタッチメントを地面から離間させる方向に作業機械を変位させると、アタッチメントの動力源である作業用モータの負荷が低減する。すなわち、上記構成では、作業機械の姿勢を作業姿勢で維持した状態で充電処理を実行する場合と比較し、充電処理の実行中における作業用モータの負荷を小さくできる。
【0008】
充電処理が実行されると、作業用モータを減速させる際に当該作業用モータで回生エネルギーが発生する。作業機械の姿勢を作業姿勢で維持した状態で充電処理を実行する場合と比較し、作業用モータの負荷が小さい分、アタッチメントの動作を減速させる際に作業用モータで発生する回生エネルギーの量を多くできる。すなわち、上記構成によれば、作業用モータで回生エネルギーを効率よく発生させることができる。
【0009】
なお、作業用モータで発生した回生エネルギーでバッテリが充電される。この際、作業用モータで回生エネルギーを効率よく発生させることができるため、バッテリでは効率よく充電できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態のトラクタを示す模式図。
図2】同トラクタを示す模式図。
図3】同トラクタの概略構成を示すブロック図。
図4】同トラクタの制御装置で実行される一連の処理を説明するフローチャート。
図5】作業用モータに対するトルクの指令値と作業用モータのコイルに流れる電流との関係を示す図。
図6】作業用モータを減速させる際のタイミングチャート。
図7】作業用モータに対するトルクの指令値と作業用モータの回転数との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、トラクタの一実施形態を図1図6に従って説明する。
<全体構成>
図1及び図2に示すように、トラクタ10は、車両11と、車両11よりも後方Z2に配置されている作業機械20とを備えている。車両11は、複数の車輪12と、車体13とを有している。
【0012】
作業機械20は、ロータリ21を備えている。本実施形態では、ロータリ21が、「アタッチメント」に対応する。作業機械20は、圃場の地面100にロータリ21が触れている状態でロータリ21を回転させることにより、圃場を耕耘できる。すなわち、作業機械20が圃場を耕耘することは、作業機械20の作業の一例である。
【0013】
トラクタ10は、車体13と作業機械20とを連結する支持機構30を備えている。支持機構30は、車両11の横方向に延びる支持軸31を有している。そして、支持機構30は、支持軸31を中心に作業機械20を回動させることができる。すなわち、作業機械20は、ロータリ21を地面100に接近させる方向である接近方向D1、及び、ロータリ21を地面100から離間させる方向である離間方向D2に変位できるように支持機構30によって車両11に連結されている。言い換えると、支持機構30は、ロータリ21を接地させる作業姿勢、及び、ロータリ21を地面100から離間した位置まで持ち上げた退避姿勢を実現可能に作業機械20を支持している。
【0014】
なお、作業機械20の姿勢を退避姿勢から作業姿勢に変更すると、ロータリ21は降下する。反対に、作業機械20の姿勢を作業姿勢から退避姿勢に変更すると、ロータリ21は上昇する。
【0015】
図3に示すように、トラクタ10は、走行用モータ41を備えている。走行用モータ41の出力トルクは、動力伝達機構15を介して車輪12に伝達される。すなわち、走行用モータ41は、トラクタ10を走行させるためのモータである。
【0016】
トラクタ10は、作業用モータ42と、PTO25とを備えている。「PTO」とは、「パワー・テイク・オフ」である。PTO25は、PTO出力軸25aを有している。作業用モータ42の出力トルクは、PTO出力軸25aに入力される。そして、PTO出力軸25aを介して作業用モータ42の出力トルクが作業機械20のロータリ21に入力される。すなわち、作業用モータ42を駆動させると、PTO出力軸25aが回転する。こうしたPTO出力軸25aの回転によって作業用モータ42の出力トルクがロータリ21に伝わり、ロータリ21が回転する。そのため、ロータリ21を地面100に接触させた状態で作業用モータ42を駆動させることにより、作業機械20が圃場を耕耘できる。
【0017】
トラクタ10は、変位用モータ43と、油圧装置35とを備えている。変位用モータ43を駆動させることにより、油圧装置35に発生させる油圧を調整できる。そして、油圧装置35が発生する油圧を調整することにより、支持機構30を作動させることができる。すなわち、当該油圧を調整することにより、作業機械20を接近方向D1及び離間方向D2に変位させることができる。したがって、本実施形態では、変位用モータ43、油圧装置35及び支持機構30により、車体13と作業機械20とを連結する「連結装置」の一例が構成される。すなわち、変位用モータ43、油圧装置35及び支持機構30により、作業姿勢及び退避姿勢を実現可能な状態で作業機械20が車体13に連結されている。
【0018】
トラクタ10は、トラクタ10のオペレータが操作する操作部50を備えている。操作部50は、例えば、ステアリングハンドル及び各種の操作スイッチを含んでいる。そして、オペレータによる操作部50の操作に応じた信号が、後述する制御装置70に入力される。
【0019】
トラクタ10は、各電動モータ41,42,43に供給する電力を蓄えるバッテリ80を備えている。
<トラクタ10の制御構成>
図3に示すように、トラクタ10は、各電動モータ41~43を制御する制御装置70を備えている。制御装置70は、走行用モータ41のインバータ回路71、作業用モータ42のインバータ回路72及び変位用モータ43のインバータ回路73を有している。
【0020】
制御装置70では、走行用モータ41を駆動させる場合、インバータ回路71が動作する。これにより、バッテリ80からインバータ回路71を介して電流が走行用モータ41のコイルに流れるため、走行用モータ41が駆動する。
【0021】
制御装置70では、作業用モータ42を駆動させる場合、インバータ回路72が動作する。これにより、バッテリ80からインバータ回路72を介して電流が作業用モータ42のコイルに流れるため、作業用モータ42が駆動する。
【0022】
制御装置70では、変位用モータ43を駆動させる場合、インバータ回路73が動作する。これにより、バッテリ80からインバータ回路73を介して電流が変位用モータ43のコイルに流れるため、変位用モータ43が駆動する。
【0023】
制御装置70は、制御回路75を有している。例えば、制御回路75は、CPU75a、ROM75b及び記憶装置75cを含んでいる。ROM75bには、CPU75aが実行する制御プログラムが記憶されている。記憶装置75cには、CPU75aの演算結果などが記憶される。
【0024】
図3に示すように、制御回路75には、操作部50から出力された信号が入力される。また、制御回路75には、各種のセンサから検出信号が入力される。センサとしては、例えば、第1回転角センサ61、第2回転角センサ62及び第3回転角センサ63を挙げることができる。第1回転角センサ61は、走行用モータ41の回転子の回転速度である第1回転数Nmg1に応じた信号を検出信号として出力する。第2回転角センサ62は、作業用モータ42の回転子の回転速度である第2回転数Nmg2に応じた信号を検出信号として出力する。第3回転角センサ63は、変位用モータ43の回転子の回転速度である第3回転数Nmg3に応じた信号を検出信号として出力する。
【0025】
制御回路75は、第1回転数Nmg1を基にインバータ回路71を動作させることにより、走行用モータ41を駆動させる。同様に、制御回路75は、第2回転数Nmg2を基にインバータ回路72を動作させることにより、作業用モータ42を駆動させる。制御回路75は、第3回転数Nmg3を基にインバータ回路73を動作させることにより、変位用モータ43を駆動させる。
【0026】
制御回路75は、作業機械20の姿勢を作業姿勢にさせる接近処理を実行する。制御回路75は、接近処理において、変位用モータ43を駆動させることにより、ロータリ21が地面100に押し付けられるまで作業機械20を接近方向D1に変位させる。ロータリ21が地面100に触れていない場合、変位用モータ43の負荷が小さいため、変位用モータ43の出力トルクはあまり大きくない。しかし、ロータリ21が地面100に触れると、ロータリ21が地面100に触れる前と比較し、変位用モータ43の負荷が大きくなるため、変位用モータ43の出力トルクを大きくしないと、作業機械20を接近方向D1に変位させることができない。そこで、制御回路75は、変位用モータ43の出力トルクが判定値以上よりも大きくなった場合に、ロータリ21が地面100に押し付けられたと判定することができる。例えば、制御回路75は、接近処理を実行させる旨の信号が操作部50から入力された場合、接近処理を実行する。
【0027】
制御回路75は、作業機械20に作業させる作業処理を実行する。作業処理において、制御回路75は、ロータリ21が地面100に接する状態で作業用モータ42を駆動させることにより、作業機械20に作業させる。また、制御回路75は、走行用モータ41を駆動させることにより、図1及び図2に示す前方Z1にトラクタ10を走行させる。例えば、制御回路75は、作業処理を実行させる旨の信号が操作部50から入力された場合、作業処理を実行する。
【0028】
このように作業処理が実行されているときにトラクタ10を走行させることにより、制御回路75は、作業機械20に耕耘させることができる。
ちなみに、制御回路75は、作業処理において、作業用モータ42を回転数制御する。すなわち、制御回路75は、作業用モータ42の第2回転数Nmg2と、第2回転数Nmg2の目標値との偏差を入力とするフィードバック制御によって作業用モータ42を駆動させる。
【0029】
制御回路75は、作業機械20の姿勢を離間姿勢にさせる退避処理を実行する。制御回路75は、退避処理において、変位用モータ43を駆動させることにより、ロータリ21が地面100から離間するまで作業機械20を離間方向D2に変位させる。例えば、制御回路75は、変位用モータ43の回転子の回転角を基に、変位用モータ43の駆動に起因するロータリ21の上昇量を導出する。そして、制御回路75は、導出した上昇量を基に、ロータリ21が地面100から離間したか否かを判定できる。例えば、制御回路75は、退避処理を実行させる旨の信号が操作部50から入力された場合、退避処理を実行する。
【0030】
<作業用モータ42で回生エネルギーを発生させるための処理の流れ>
トラクタ10では、作業用モータ42の第2回転数Nmg2を減少させる際に作業用モータ42で回生エネルギーを発生させることができる。そして、作業用モータ42で発生した回生エネルギーによってバッテリ80が充電される。
【0031】
図4には、作業用モータ42で回生エネルギーを発生させ、当該回生エネルギーでバッテリ80を充電する際の一連の処理の流れが図示されている。当該一連の処理は、作業処理が実行されているときに開始される。
【0032】
一連の処理において、はじめのステップS11では、制御回路75は、作業用モータ42を減速させる要求があるか否かを判定する。すなわち、制御回路75は、ロータリ21の回転(動作)を減速させる要求があるか否かを判定する。例えば、耕耘中にトラクタ10の進行方向を転換する際には、作業用モータ42を停止させることがある。また、耕耘の終了時にも作業用モータ42が停止される。このような場合、制御回路75は、減速の要求があると判定する。作業用モータ42を減速させる要求がないと判定した場合(S11:NO)、制御回路75は、減速の要求があると判定できるまでステップS11の判定を繰り返し実行する。一方、作業用モータ42を減速させる要求があると判定した場合(S11:YES)、制御回路75は、処理をステップS13に移行する。
【0033】
ステップS13において、制御回路75は、バッテリ80の蓄電量SOCが判定蓄電量SOCth未満であるか否かを判定する。判定蓄電量SOCthは、蓄電量SOCが多いか否かの判断基準である。蓄電量SOCが判定蓄電量SOCth以上である場合は、バッテリ80には十分な量の電荷が蓄えられており、現時点ではバッテリ80の充電が不要であると見なせる。一方、蓄電量SOCが判定蓄電量SOCth未満である場合は、バッテリ80に電荷をさらに蓄えさせる余裕があるため、バッテリ80を充電してもよいと見なせる。蓄電量SOCが判定蓄電量SOCth未満である場合(S13:YES)、制御回路75は、処理をステップS15に移行する。
【0034】
一方、ステップS13において、蓄電量SOCが判定蓄電量SOCth以上である場合(NO)、制御回路75は、一連の処理を終了する。この場合、制御回路75は、作業用モータ42で回生エネルギーを発生させることなく、作業用モータ42を減速させる。
【0035】
ステップS15において、制御回路75は、作業機械20を離間方向D2に変位させる処理を開始する。すなわち、制御回路75は、変位用モータ43を駆動させる。すると、支持機構30が作動し、作業機械20が離間方向D2に変位し始める。これにより、作業機械20の姿勢が作業姿勢である場合と比較し、ロータリ21を地面100に押し付ける力を小さくできる。
【0036】
次のステップS17において、制御回路75は、作業用モータ42の負荷が閾値未満になったか否かを判定する。すなわち、作業用モータ42の駆動時にロータリ21を地面100に押し付ける力が大きいほど、作業用モータ42の負荷は大きい。言い換えると、作業機械20を離間方向D2に変位させてロータリ21を地面100に押し付ける力を小さくすると、作業用モータ42の負荷は小さくなる。すなわち、作業用モータ42を離間方向D2に変位させることにより、負荷を閾値よりも小さくできる。
【0037】
ここで、図5を参照し、作業用モータ42の負荷が閾値未満になったか否かの判定の一例について説明する。図5には、作業用モータ42に対するトルクの指令値であるモータトルク指令値TQmg2Trを横軸とし、作業用モータ42のコイルに流れる電流であるモータ電流Img2を縦軸とするグラフが示されている。図5に示す境界線L1は、負荷が閾値と等しい場合におけるモータトルク指令値TQmg2Trとモータ電流Img2とを示す点の集合体である。すなわち、境界線L1よりもモータ電流Img2の小さい側の領域A11に、モータトルク指令値TQmg2Trとモータ電流Img2とを示す点が位置する場合、負荷が閾値よりも小さいと見なせる。一方、境界線L1よりもモータ電流Img2の大きい側の領域A12に、モータトルク指令値TQmg2Trとモータ電流Img2とを示す点が位置する場合、負荷が閾値よりも大きいと見なせる。
【0038】
そこで、制御回路75は、現在のモータトルク指令値TQmg2Trに対応するモータ電流Img2である判定モータ電流Img2Thを、境界線L1を基に導出する。図5に示すグラフでは、現在のモータトルク指令値TQmg2Trと判定モータ電流Img2Thとを示す点は、境界線L1上に位置する。制御回路75は、現在のモータ電流Img2が判定モータ電流Img2Thよりも小さい場合、負荷が閾値未満であると判定する。一方、制御回路75は、現在のモータ電流Img2が判定モータ電流Img2Th以上である場合、負荷が閾値以上であると判定する。
【0039】
図4に戻り、ステップS17において、作業用モータ42の負荷が閾値以上であると判定した場合(NO)、制御回路75は、負荷が閾値未満であると判定できるまでステップS17の判定を繰り返し実行する。一方、作業用モータ42の負荷が閾値未満であると判定した場合(S17:YES)、制御回路75は、処理をステップS19に移行する。
【0040】
ステップS19において、制御回路75は、作業機械20の変位を終了する。すなわち、制御回路75は、変位用モータ43の駆動を停止させる。すなわち、制御回路75は、ステップS17の判定がYESになった時点の位置で作業機械20を保持する。
【0041】
そして、制御回路75は、充電処理を開始する。すなわち、充電処理におけるはじめのステップS21において、制御回路75は、作業用モータ42の減速を開始させる。そして、制御回路75は、作業用モータ42での回生エネルギーの発生を開始させる。また、制御回路75は、作業用モータ42で発生した回生エネルギーでバッテリ80を充電させる。
【0042】
続いて、ステップS23において、制御回路75は、作業用モータ42の減速を終了させるための条件である終了条件が成立したか否かを判定する。例えば、制御回路75は、第2回転数Nmg2が所望する回転数まで低下した場合、終了条件が成立したと判定する。また例えば、作業用モータ42の駆動を停止させる旨が要求されている場合、制御回路75は、作業用モータ42の駆動が停止すると、終了条件が成立したと判定する。
【0043】
終了条件が成立したと判定していない場合(S23:NO)、制御回路75は、終了条件が成立するまでステップS23の判定を繰り返し実行する。すなわち、制御回路75は、充電処理の実行を継続する。一方、終了条件が成立したと判定している場合(S23:YES)、制御回路75は、処理をステップS25に移行する。
【0044】
ステップS25において、制御回路75は、作業用モータ42の減速を終了させる。すなわち、制御回路75は、充電処理を終了する。そして、制御回路75は、一連の処理を終了する。
【0045】
<本実施形態における作用及び効果>
図6には、バッテリ80の蓄電量SOCが判定蓄電量SOCth未満である場合のタイミングチャートが図示されている。
【0046】
トラクタ10が耕耘している場合のタイミングt11で、作業用モータ42の減速が要求される。例えば、作業用モータ42の停止が要求される。すると、作業機械20が離間方向D2に変位し始める。そのため、ロータリ21を地面100に押し付ける力が徐々に小さくなる。こうした作業機械20の変位によって、タイミングt12からは作業用モータ42の負荷が低下し始める。すると、第2回転数Nmg2を維持するためにモータトルク指令値TQmg2Trが低下する。そのため、作業用モータ42の出力トルクTQmg2が低下し始める。この場合、モータ電流Img2が低下し始めるため、作業用モータ42で消費される電力Pmg2が小さくなり始める。
【0047】
タイミングt13で作業用モータ42の負荷が閾値未満になったと判定される。そのため、作業機械20の変位が停止され、充電処理が開始される。すると、作業用モータ42の減速が開始され、作業用モータ42で回生エネルギーが発生するようになる。この場合、バッテリ80からインバータ回路72を介して作業用モータ42に電流が流れるのではなく、作業用モータ42からインバータ回路72を介してバッテリ80に電流が流れるようになる。その結果、電力Pmg2が負の値となる。このように電力Pmg2が負の値である場合、電力Pmg2の絶対値が大きいほど、回生エネルギーの発生量が多いことを意味する。なお、このように回生エネルギーを発生させている場合、PTO出力軸25aの回転によって作業用モータ42が回転させられている状態になるため、作業用モータ42の出力トルクTQmg2もまた負の値となる。
【0048】
作業用モータ42の負荷を小さくしてから作業用モータ42の減速を開始させているため、第2回転数Nmg2の減少速度を小さくできる。その結果、作業用モータ42の減速期間中における回生エネルギーの発生量を多くできる。
【0049】
図6に示す例では、タイミングt14で作業用モータ42の減速が終了される。すなわち、第2回転数Nmg2が0になる。そのため、充電処理が終了される。
本実施形態では、作業用モータ42の負荷を低減させた状態で充電処理が実行される。この場合、負荷を低減させることなく充電処理を実行する場合と比較し、作業用モータ42での回生エネルギーの発生量を多くできる。
【0050】
作業用モータ42で発生した回生エネルギーでバッテリ80が充電される。そのため、作業用モータ42での回生エネルギーの発生量が多い分、バッテリ80の充電効率を高くできる。
【0051】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
・作業機械20の姿勢を退避姿勢にしてから充電処理を開始するようにしてもよい。
・作業機械20の離間方向D2への変位を開始させると、作業用モータ42の負荷が閾値未満になったと判定できる前から充電処理を開始してもよい。例えば、作業機械20の離間方向D2への変位によって負荷が低下し始めたら充電処理を開始してもよい。この場合、充電処理が開始されても作業機械20の離間方向D2への変位が継続してもよいし、充電処理が開始されると作業機械20の離間方向D2への変位を終了してもよい。
【0053】
・制御回路75は、トルク数制御によって作業用モータ42を制御してもよい。この場合、制御回路75は、実際の出力トルクTQmg2とモータトルク指令値TQmg2Trとの偏差を入力とするフィードバック制御によって作業用モータ42を駆動させることになる。この場合、制御回路75は、以下に示す手法によって、作業用モータ42の負荷が閾値未満になったか否かを判定するとよい。
【0054】
図7には、作業用モータ42に対するモータトルク指令値TQmg2Trを横軸とし、作業用モータ42の第2回転数Nmg2を縦軸とするグラフが示されている。図7に示す境界線L2は、負荷が閾値と等しい場合におけるモータトルク指令値TQmg2Trと第2回転数Nmg2とを示す点の集合体である。すなわち、境界線L2よりも第2回転数Nmg2の低い側の領域A21に、モータトルク指令値TQmg2Trと第2回転数Nmg2とを示す点が位置する場合、負荷が閾値よりも大きいと見なせる。一方、境界線L2よりも第2回転数Nmg2の高い側の領域A22に、モータトルク指令値TQmg2Trと第2回転数Nmg2とを示す点が位置する場合、負荷が閾値よりも小さいと見なせる。
【0055】
そこで、制御回路75は、現在のモータトルク指令値TQmg2Trに対応する第2回転数Nmg2である判定回転数Nmg2Thを、境界線L2を基に導出する。図7に示すグラフでは、現在のモータトルク指令値TQmg2Trと判定回転数Nmg2Thとを示す点は、境界線L2上に位置する。そして、制御回路75は、現在の第2回転数Nmg2が判定回転数Nmg2Thよりも大きい場合、負荷が閾値未満であると判定する。一方、制御回路75は、現在の第2回転数Nmg2が判定回転数Nmg2Th以下である場合、負荷が閾値以上であると判定する。
【0056】
・トラクタ10の作業機械は、耕耘以外の作業を行うものであってもよい。この場合、作業機械のアタッチメントは、ロータリ21以外のものであってもよい。ロータリ21以外のアタッチメントとしては、例えば、清掃のためのブラシ、芝刈り用の回転刃を挙げることができる。
【0057】
・車輪12にトルクを出力する走行用駆動源は、走行用モータ41ではなく、内燃機関であってもよい。
・制御回路75は、CPU75aとプログラムを格納するROM75bとを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。すなわち、制御回路75は、以下(a)~(c)の何れかの構成であればよい。
(a)制御回路75は、コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備えている。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含んでいる。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含んでいる。
(b)制御回路75は、各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備えている。専用のハードウェア回路としては、例えば、特定用途向け集積回路、すなわちASIC又はFPGAを挙げることができる。なお、ASICは、「Application Specific Integrated Circuit」の略記であり、FPGAは、「Field Programmable Gate Array」の略記である。
(c)制御回路75は、各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうちの残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備えている。
【符号の説明】
【0058】
10…トラクタ
12…車輪
13…車体
20…作業機械
21…ロータリ
30…支持機構
35…油圧装置
41…走行用モータ
42…作業用モータ
43…変位用モータ
70…制御装置
80…バッテリ
100…地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7