(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ロータ製造装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20241001BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K15/03 Z
(21)【出願番号】P 2021087548
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤石 正幸
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/167953(WO,A1)
【文献】特許第5983869(JP,B2)
【文献】特開2017-038459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアの軸方向に穿孔された、対向する一対の内壁面を有する長孔形状のスロットにシート部材及び永久磁石を挿入する、ロータ製造装置であって、
前記ロータコアの軸が鉛直方向を向くように当該ロータコアが配置された状態で、前記シート部材及び前記永久磁石が挿入され、
前記スロットの一対の前記内壁面のそれぞれ上方に配置され、前記シート部材を前記スロットに送り込む、対向配置された一対のシートガイドと、
一対の前記シートガイド間に設けられ、前記スロットの上方から前記永久磁石を当該スロットに送出する磁石送出口を備えるホルダと、
を備え、
一対の前記シートガイドは、当該シートガイドの側面を正面とする正面視で線対称であって、
一対の前記シートガイドの対称軸と前記磁石送出口の中心軸が前記正面視で一致
し、
前記磁石送出口には、前記永久磁石の重量に抗して前記永久磁石を挟持する一対の保持プレートが設けられ、
一対の前記保持プレートは、前記永久磁石の前記スロットへの挿入時には前記対称軸から離隔されるように撓められ、
それぞれの前記シートガイドは、アーム及び保護プレートを備え、
前記アームは、前記対称軸に向かって斜め下方に延設され、
前記アームの上面は、前記シート部材が通過するガイド面であり、
前記アームの上面に対して隙間を空けて、前記保護プレートが配置される、
ロータ製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロータ製造装置であって
、
一対の前記保持プレートのばね定数が等しい、
ロータ製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載のロータ製造装置であって、
前記ホルダには、前記シート部材が前記スロット内に挿入された後に一対の前記保持プレートの狭持力に抗して前記永久磁石を下方に付勢する付勢器が設けられる、
ロータ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、回転電機のロータの製造に用いられる装置が開示される。
【背景技術】
【0002】
永久磁石界磁型の回転電機には、ロータコアに永久磁石が設けられる。例えば埋込磁石型(IPM)の回転電機では、ロータコアの軸方向にスロットと呼ばれる貫通穴が穿孔され、このスロットに永久磁石が挿入される。
【0003】
例えば特許文献1、2では、永久磁石をスロットに挿入するための装置(治具)として、ガイド孔を備えたガイド装置が用いられる。永久磁石の挿入に際して、ガイド孔とスロット孔とが位置合わせされる。ガイド孔の入口開口は断面テーパ形状となっており拡径されている。この拡径されたテーパ面に当たりながら永久磁石がガイド孔に位置合わせされる。さらに位置合わせされた永久磁石がガイド孔に挿入され、さらにその奥のスロットまで押し込まれる。
【0004】
スロットまで挿入された永久磁石は、ロータコアに固定される。例えば特許文献3では、スロット内壁面と永久磁石との間に、接着剤である樹脂が充填されることで、永久磁石がロータコアに固定される。
【0005】
また特許文献4では、樹脂の充填に代えて、接着剤が含浸されたシート部材が、永久磁石とスロット内壁面との間に挿入される。例えばスロットは、対向する一対の内壁面を有する長孔形状に形成され、この一対の内壁面に沿って、一対のシート部材が配置される。この一対のシート部材間に永久磁石が挟まれる。この状態でシート部材を加熱硬化することで、永久磁石がシート部材を介してロータコアに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-38459号公報
【文献】特許第5983869号公報
【文献】特開2013-31805号公報
【文献】特開平9-163649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、シート部材及び永久磁石をスロットに挿入するに際して、先にスロットに永久磁石を挿入し、後にシート部材を挿入しようとすると、挿入済みの永久磁石とスロット内壁面との僅かな隙間に可撓性のシート部材を挿入することになり、作業が困難となる。そこで、先にシート部材をスロットに挿入してから永久磁石を挿入する工程が考えられる。この工程を、ガイド装置を用いて行おうとすると、シート部材がガイド装置のガイド孔及びロータコアのスロットに挿入された後に、永久磁石がガイド孔及びスロットに挿入される。
【0008】
ここで上述のように、永久磁石をガイド孔に挿入する際には、ガイド孔の入口開口に設けられたテーパ面に永久磁石の下端が当たりながら、永久磁石がガイド孔の中心軸に位置合わせされる。この過程で、予めテーパ面上に配置されたシート部材が永久磁石の下端に引き掻かれて損傷するおそれがある。
【0009】
そこで本明細書では、シート部材への損傷を避けつつ、接着シート及び永久磁石を適切にロータコアのスロットに挿入可能な、ロータ製造装置が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書で開示されるロータ製造装置は、ロータコアの軸方向に穿孔されたスロットにシート部材及び永久磁石を挿入する。なおスロットは、対向する一対の内壁面を有する長孔形状となっている。この挿入プロセスでは、ロータコアの軸が鉛直方向を向くように当該ロータコアが配置された状態で、シート部材及び永久磁石が挿入される。ロータ製造装置は、シートガイド及びホルダを備える。シートガイドは一対であって対向配置される。この一対のシートガイドは、スロットの一対の内壁面のそれぞれ上方に配置され、シート部材をスロットに送り込む。ホルダは、一対のシートガイド間に設けられ、スロットの上方から永久磁石を当該スロットに送出する磁石送出口を備える。一対のシートガイドは、当該シートガイドの側面を正面とする正面視で線対称である。さらに一対のシートガイドの対称軸と磁石送出口の中心軸が正面視で一致する。
【0011】
上記構成によれば、ロータ製造装置に、シート部材挿入手段(シートガイド)と磁石挿入手段(ホルダ)が個別に設けられるので、永久磁石をガイドする際のシート部材への損傷が免れる。さらに一対のシートガイドの対称軸と磁石送出口の中心軸が正面視で一致するような構造を採ることで、例えば磁石送出口の中心軸をスロットの中心軸と位置合わせするのみにて、シート部材及び永久磁石が適切にスロットに挿入可能となる。
【0012】
また上記構成において、磁石送出口には、永久磁石の重量に抗して永久磁石を挟持する一対の保持プレートが設けられてよい。この場合、一対の保持プレートは、永久磁石のスロットへの挿入時には対称軸から離隔されるように撓められる。ここで、一対の保持プレートのばね定数は等しくなるように定められる。
【0013】
保持プレートの狭持力に抗して永久磁石が押し下げられたときに、保持プレートは磁石送出時に外側に、つまり対称軸から離れるように撓み、これに抗する弾性力(復元力)が生じる。ここで、一対の保持プレートのばね定数が等しいため、この一対の保持プレートによって永久磁石が対称軸に位置合わせ(センタリング)されながらスロットに挿入可能となる。
【0014】
また上記構成において、ホルダには付勢器が設けられてよい。この付勢器は、シート部材がスロット内に挿入された後に一対の保持プレートの狭持力に抗して永久磁石を下方に付勢する。
【0015】
上記構成によれば、シート部材のスロットへの挿入完了を待って永久磁石をスロット内に挿入可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書に開示されるロータ製造装置は、シート部材への損傷を避けつつ、接着シート及び永久磁石を適切にロータコアのスロットに挿入可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係るロータ製造装置であるガイド装置による、シート部材及び永久磁石のロータコアへの挿入工程を例示する斜視図である。
【
図2】磁石ガイド孔及びスロットの中心軸C2,C3を説明するための斜視図である。
【
図5】
図3のA-A断面を例示する、ガイド装置の斜視断面図である。
【
図6】
図3のA-A断面を例示する、ガイド装置の正面視断面図である。
【
図7】ガイド装置を用いた、シート部材及び永久磁石のロータコアへの挿入工程を説明する正面視断面図(1/2)である。
【
図8】ガイド装置を用いた、シート部材及び永久磁石のロータコアへの挿入工程を説明する正面視断面図(2/2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、回転電機のロータ100と、その組立時に用いられる、本実施形態に係るロータ製造装置であるガイド装置10が例示される。回転電機は、例えば電気自動車やハイブリッド車両の駆動源として用いられる。
【0019】
<ロータの構成>
ロータ100は、ロータコア110、永久磁石85、及びシート部材80A,80Bを含んで構成される。ロータコア110は円筒形状の部材であって、中空にシャフト(図示せず)が挿入される。ロータコア110は例えば電磁鋼板の積層体から構成される。
【0020】
回転電機は、例えば埋込磁石型(IPM)のものであって、ロータコア110に永久磁石85が埋め込まれる。ロータコア110には、中心軸C1方向に沿って穿孔された磁石挿入孔であるスロット112が周方向に沿って複数形成されている。
【0021】
スロット112は例えば、ロータコア110の径方向を短手方向とし、周方向を長手方向とする長孔形状となるように形成される。より詳細には、
図2を参照して、スロット112は、周方向に長い矩形状の開口部である矩形部114と、矩形部114の周方向両側から突出する突出溝部116A,116Bとを含んで構成される。
【0022】
後述されるように、ガイド装置10とスロット112との位置合わせに際して、スロット112の中心軸C3とガイド装置10の中心軸C2とが位置合わせされる。スロット112の中心軸C3とは、矩形部114の対角線が交わる点からロータコア110の軸方向に沿って延伸される線を指す。また後述されるように、ガイド装置10の中心軸C2とは、断面矩形の開口である磁石ガイド孔33の対角線が交わる点から磁石ガイド孔33の延伸方向に沿って延伸される線を指す。
【0023】
長孔形状のスロット112には、長手方向に延伸し互いに対向する一対の内壁面112A,112Bが形成される。一対のシート部材80A,80Bは、この内壁面112A,112Bに沿うようにしてスロット112内に挿入される。
【0024】
シート部材80A,80Bは絶縁性材料から構成される。シート部材80A,80Bは、例えばロール状に巻回されており、図示しない送りモータ等によりシートガイド40A,40Bに搬出される。
【0025】
シート部材80A,80Bは、内壁面112A,112Bと同等の幅を備えており、永久磁石85とロータコア110との間に挟まれることで両者の接触及び電気的な導通が抑制される。永久磁石85とロータコア110とが非接触になることで、永久磁石85から生じた渦電流のロータコア110への回り込みが抑制される。
【0026】
さらにシート部材80A,80Bは、永久磁石85とロータコア110とを絶縁させる機能に加えて、永久磁石85をロータコア110に固定させる接着剤としての機能と、さらに永久磁石85を冷却する機能も備えている。
【0027】
例えばシート部材80A,80Bは発泡性材料から構成される。例えばスロット112内に永久磁石85及びシート部材80A,80Bが挿入された状態のロータコア110に対して加熱処理が行われる。例えばロータコア110が加熱炉に入れられて加熱させられる。この加熱処理によりシート部材80A,80Bが発泡及び膨張する。シート部材80A,80Bの膨張により永久磁石85がロータコア110に固定される。
【0028】
さらにシート部材80A,80Bが発泡する際にそれぞれの気泡が繋がって連泡となることで、シート部材80A,80Bには流路が形成される。この流路に空気や冷却液が流れることで、永久磁石85が冷却される。
【0029】
図1を参照して、永久磁石85は、例えばネオジム等の希土類磁石から構成される。永久磁石85は例えば平板片形状であって、永久磁石85はスロット112の径よりも一回り小さい形状となるように形成される。このようにすることで、永久磁石85とスロット112との間にシート部材80A,80Bが挿入可能な隙間が形成される。
【0030】
<ガイド装置の構成>
ガイド装置10(ロータ製造装置)は、スロット112に一対のシート部材80A,80B及び永久磁石85を挿入する治具(補助工具)である。
図3には本実施形態に係るガイド装置10の単体斜視図が例示され、
図4にはガイド装置10の正面図(Y軸視図)が例示される。さらに
図5には、
図3のA-A断面が示された斜視断面図が例示され、
図6にはA-A断面図(正面断面図)が例示される。
【0031】
なお
図3-
図6には、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸が示される。Z軸はガイド装置10の長手方向軸であり、ガイド装置10の中心軸C2と平行な軸となっている。Z軸の正方向が上側となり、負方向は下側となる。
【0032】
Y軸はシートガイド40A,40Bの側面を正面とする正面視軸であって、例えばホルダプレート22A,22Bの幅方向と平行な軸である。X軸はY軸及びZ軸に対して垂直に交わる軸であって、例えばホルダプレート22A,22Bの厚さ方向と平行な軸である。
【0033】
ガイド装置10は、シート部材80A,80Bをスロット112に送り込む一対のシートガイド40A,40Bを備える。またガイド装置10は、永久磁石85をスロット112に送出するホルダ20を備える。つまりガイド装置10は、シート部材80A,80Bの送出手段と、永久磁石85の送出手段を個別に備える。
【0034】
さらにガイド装置10は、シートガイド40A,40B及びホルダ20を支持するアーム12(
図3参照)を備える。アーム12は図示しない3軸ステージやアクチュエータ等の駆動機構に接続される。これによりガイド装置10は、ロータコア110に対して3次元的に移動可能となっている。
【0035】
シートガイド40A,40Bは、正面視(Y軸視)で線対称構造となっており、その対称軸は、磁石ガイド孔33及び磁石送出口35(
図6参照)の中心軸C2と少なくとも正面視(Y軸視)で一致する。なお、対称軸と中心軸C2とに僅かな位置ずれが生じていても、そのずれ量が所定の公差内に収まる範囲であれば実質的な一致として捉えられる。
【0036】
また以下ではシートガイド40Aの構造が説明されるが、その構造の対称性により、符号の末尾のサフィックス「A」を「B」に変えることで、下記説明はシートガイド40Bの構造説明となる。
【0037】
図3を参照して、シートガイド40Aは、ガイドアーム42A、ガイドプレート52A、及びシート保護プレート50Aを備える。ガイドアーム42Aは正面視(Y軸視)で略L字型の部材であって、その上端にはフランジ43Aが設けられる。フランジ43Aは、ホルダプレート22Aにボルト・ナット締結や溶接等により固定される。
【0038】
フランジ43Aの下端から、フランジ43Aに対して傾斜するようにアーム上部44Aが延設される。アーム上部44Aは、例えばその上端から下端に向かって、中心軸C2から離隔するように、斜め外側に延設される。さらにアーム上部44Aの下端からアーム下部45Aが延設される。アーム下部45Aはその上端から下端に向かって、中心軸C2に向かうように、斜め内側に延設される。
【0039】
図3、
図5を参照して、アーム上部44Aの下側かつ幅方向中央部分には、厚さ方向に穿孔されたシートゲート46Aが形成される。後述される
図7のように、このシートゲート46Aにシート部材80Aが送り込まれる。
【0040】
アーム上部44A及びアーム下部45Aの折り返し部分近傍に、ガイドプレート52Aが設けられる。シート部材80Aの送り方向に沿うと、ガイドプレート52Aの下流端がボルト・ナット締結や溶接等によりガイドアーム42Aに固定される。
【0041】
またアーム下部45Aの下端部にはシート保護プレート50Aが載置される。例えばシート保護プレート50Aは、アーム下部45Aの上面に固定される。例えばシート保護プレート50Aの幅方向(Y軸方向)両端がボルト・ナット締結や溶接等によりアーム下部45Aに固定される。
【0042】
図5、
図6に例示されるように、シート保護プレート50Aの幅方向中央部分は、その両端部分と比較して肉薄となっている。このような構造によって、アーム下部45Aとシート保護プレート50Aの下面との間に隙間が生じる。この隙間がシートガイド孔54Aとなる。
【0043】
つまり
図7に例示されるように、シート部材80Aはガイドプレート52Aからアーム下部45Aに送られ、さらにシートガイド孔54Aを通過してロータコア110のスロット112内に送り込まれる。
【0044】
シートガイド40Aの下流端にシートガイド孔54Aを設け、その上方をシート保護プレート50Aで覆うことで、その直上に配置された保持プレート30Aとシート部材80Aとの接触が抑制される。後述されるように、永久磁石85がスロット112内に挿入される際に、保持プレート30Aが中心軸C2から離隔されるように外側に撓められる。このとき、その撓み量が多いときであっても、シート保護プレート50Aが保持プレート30Aを押し留めるため、保持プレート30Aとシート部材80Aとの接触が抑制される。
【0045】
図1を参照して、ホルダ20は永久磁石85を一時的に保持するとともに、その永久磁石85を上方からスロット112内に送出する。ホルダ20は一対のシートガイド40A,40B間に設けられる。
図2、
図3を参照して、ホルダ20はホルダプレート22A,22B、スペーサ24A,24B(
図2参照)、保持プレート30A,30B、及び付勢器であるプッシャ60(
図1参照)を備える。
【0046】
図2、
図4を参照して、ホルダプレート22A,22Bは互いに平板部材であって、スペーサ24A,24Bを介して厚さ方向(X軸方向)に離隔される。スペーサ24A,24Bはホルダプレート22A,22Bの幅方向両端に設けられる。
【0047】
ホルダプレート22A,22B及びスペーサ24A,24Bによって断面矩形の開口が形成される。この開口が磁石ガイド孔33となる。磁石ガイド孔33は、例えばスロット112の矩形部114と同一形状であるか、または一回り小さい寸法に定められる。例えば矩形部114よりも中心側に0.5mm程度オフセットした断面形状となるように、磁石ガイド孔33が形成される。
【0048】
磁石ガイド孔33の中心軸C2は、断面矩形の磁石ガイド孔33の対角線が交わる点から、磁石ガイド孔33の延伸方向に沿って延びる軸線となる。この中心軸C2は、一対のシートガイド40A,40Bの対称軸と、正面視(Y軸視)で一致する。
【0049】
また、
図6を参照して、ホルダプレート22A,22Bの内面上端には、テーパ面23A,23Bが形成される。テーパ面23A,23Bは磁石ガイド孔33の入口端に設けられた拡径部であり、下方から上方に向かって、磁石ガイド孔33の断面開口が広がるように形成される。永久磁石85が磁石ガイド孔33に挿入される際には、永久磁石85がテーパ面23A,23Bにガイドされながら位置合わせされる。
【0050】
図3を参照して、プッシャ60(付勢器)は、シート部材80A,80Bがスロット112内に挿入された後に、保持プレート30A,30Bの挟持力に抗して永久磁石85を下方に付勢する。プッシャ60(付勢器)は、プッシュプレート62及びアクチュエータ64を備える。プッシュプレート62は、その断面形状が永久磁石85の断面形状と略同一となっており、磁石ガイド孔33内に挿入可能となっている。
【0051】
アクチュエータ64は、磁石ガイド孔33(
図2参照)の上方に設けられ、中心軸C2に沿って、プッシュプレート62を磁石ガイド孔33内で進退(上下)移動させる。
【0052】
また例えば、磁石ガイド孔33に永久磁石85を装填する際には、その装填時の動線にプッシャ60が被らないように、中心軸C2からX軸方向またはY軸方向に移動させる移動機構がプッシャ60に設けられてもよい。
【0053】
ホルダプレート22A,22Bの下端に、一対の保持プレート30A,30Bが設けられる。保持プレート30A,30Bはホルダプレート22A,22Bの下端よりも更に下方に延設される。より具体的には、保持プレート30A,30Bは、ホルダプレート22A,22Bの下端から下方に向かって、中心軸C2に向かうようにして内側傾斜される。
【0054】
また、
図7に例示されるように、一対の保持プレート30A,30Bの下端間の隙間が、永久磁石85が送出される磁石送出口35となる。
図4、
図7を参照して、保持プレート30A,30Bに負荷が掛けられていない無負荷状態における磁石送出口35の離隔距離W2が、永久磁石85の厚さW1未満となるように、保持プレート30A,30Bの傾斜角、長さ等が定められる。このように、磁石送出口35の開口径が永久磁石85の厚さよりも小さいことにより、保持プレート30A,30Bによる永久磁石85の保持が可能となる。
【0055】
保持プレート30A,30Bは例えばアルミ等の金属材料から構成される薄板片であって、ばね板の機能を備える。後述されるように、一対の保持プレート30A,30Bは、永久磁石85が磁石ガイド孔33に挿入され降下したときにこれを受け止める。つまり保持プレート30A,30Bは、永久磁石85の重量に抗して永久磁石85を挟持(保持)可能な弾性力を備える。
【0056】
さらに
図8に例示されるように、保持プレート30A,30Bの狭持力に抗してプッシュプレート62が永久磁石85を下方に付勢すると、保持プレート30A,30Bは中心軸C2から離隔されるようにして撓められる。これによって永久磁石85が磁石送出口35(
図7参照)から降下して、ロータコア110のスロット112内に挿入される。
【0057】
なお、スロット112内への永久磁石85の挿入時に、当該永久磁石85を中心軸C2に位置合わせさせるセンタリングが可能となるように、保持プレート30A,30Bのばね定数は等しくなるように構成される。例えば保持プレート30A,30Bの幅及び厚さは同一とされる。また
図4を参照して、保持プレート30A,30Bのホルダプレート22A,22Bからの延設長さL1,L2は同一長さとなるように構成される。なお、これらの寸法は、所定の公差内に収まる差異であれば同一の範囲に含まれるものとする。
【0058】
<シート部材及び永久磁石の挿入工程>
図7,
図8には、本実施形態に係るガイド装置10を用いた、シート部材80A,80B及び永久磁石85の、ロータコア110のスロット112への挿入工程が例示される。
【0059】
挿入工程では、ロータコア110は、その中心軸C1(
図1参照)が鉛直方向を向くように配置された状態で、スロット112にシート部材80A,80B及び永久磁石85が挿入される。またロータコア110は、図示しない固定プレートにより固定される。
【0060】
ガイド装置10は、ロータコア110の上方から、シート部材80A,80B及び永久磁石85をスロット112内に挿入する。ここで、図示しないカメラやセンサ機構により、磁石ガイド孔33の中心軸C2(
図2参照)とスロット112の中心軸C3とが一致するように、ガイド装置10が位置制御される。
【0061】
上述のように、シートガイド40A,40Bの対称軸と磁石ガイド孔33の中心軸C2とは一致しているから、磁石ガイド孔33とスロット112との位置合わせを行うことで、シートガイド40A,40Bもスロット112に対して位置合わせされる。つまり磁石ガイド孔33の中心軸C2とスロット112の中心軸C3とが一致すると、これに伴い、シートガイド40A,40Bはスロット112の内壁面112A,112Bの上方に配置される。
【0062】
上記の位置決めの後、シート部材80A,80Bが、図示しないロールから、図示しないモータ機構等により、シートガイド40A,40Bに送られる。また、手作業やロボット等により、永久磁石85が磁石ガイド孔33に挿入される。磁石ガイド孔33に挿入された永久磁石85は、保持プレート30A,30Bに挟持され、スロット112への降下が留められる。
【0063】
図示しないモータ機構等により、シート部材80A,80Bがさらに送られ、スロット112内に送り込まれる。スロット112の下端にシート部材80A,80Bの下端が到達したことが、カメラ等のセンサで検知されると、プッシャ60(
図1参照)のアクチュエータ64が駆動して、プッシュプレート62を下方へ送り出す。
【0064】
下方に送り出されたプッシュプレート62が永久磁石85の上端に当接すると、
図8のようにプッシュプレート62はそのまま永久磁石85を下方に付勢する。その結果、
図8のように保持プレート30A,30Bが中心軸C2から離隔する方向に撓められる(拡げられる)。ここで、保持プレート30A,30Bはその復元力により永久磁石85を側方から押さえる。このような側方からの押さえ付け(挟み込み)により、永久磁石85の降下速度が抑えられ、プッシュプレート62の降下速度に併せて永久磁石85を降下可能となる。
【0065】
また、永久磁石85は保持プレート30A,30Bにより位置合わせ(センタリング)される。上述のように、保持プレート30A,30Bのばね定数は等しく構成されるから、永久磁石85の中心軸は磁石ガイド孔33及び磁石送出口35(
図6参照)の中心軸C2に維持される。このようなセンタリングにより、スロット112に対する永久磁石85の位置の偏りが抑制される。
【0066】
さらに永久磁石85がスロット112内に完全に収容されると、シート部材80A,80Bの、スロットからはみ出している部分が図示しないカッターにより切断される。その後、シート部材80A,80B及び永久磁石85が未挿入の、空のスロット112にガイド装置10が移動される。
【符号の説明】
【0067】
10 ガイド装置(ロータ製造装置)、20 ホルダ、22A,22B ホルダプレート、23A,23B テーパ面、24A,24B スペーサ、30A,30B 保持プレート、33 磁石ガイド孔、35 磁石送出口、40A,40B シートガイド、42A ガイドアーム、50A シート保護プレート、52A ガイドプレート、54A シートガイド孔、60 プッシャ、62 プッシュプレート、64 アクチュエータ、80A,80B シート部材、85 永久磁石、100 ロータ、110 ロータコア、112 スロット、112A,112B スロットの内壁面。