(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】シフト切替装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/029 20120101AFI20241001BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20241001BHJP
F16J 15/14 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F16H57/029
F16J15/10 U
F16J15/14 B
(21)【出願番号】P 2021104447
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】菊川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 淳史
(72)【発明者】
【氏名】水野 嘉博
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 優
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-57963(JP,A)
【文献】特開2011-178362(JP,A)
【文献】特開平8-210509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/029
F16J 15/10
F16J 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が変速機ケースに収容されるとともに他端が前記変速機ケースから外部側に向かって突き出し、回転することで変速機のシフトレンジを切り替えるマニュアルシャフトと、前記変速機ケースの外部に取り付けられ、前記マニュアルシャフトを回転させるためのアクチュエータと、前記アクチュエータの筐体であるアクチュエータケースと、を備えるシフト切替装置であって、
前記変速機ケースと前記アクチュエータケースとの間に形成される隙間にシール部材が介挿され、
前記シール部材は、所定量以上の熱が加えられると、前記変速機ケースおよび前記アクチュエータケースに密着するように構成されている
ことを特徴とするシフト切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機のシフトレンジを切り替えるシフト切替装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一端が変速機ケースに収容され回転することで変速機のシフトレンジを切り替えるためのマニュアルシャフトと、前記マニュアルシャフトを回転させるアクチュエータと、前記アクチュエータの筐体であるアクチュエータケースと、を備えるシフト切替装置が知られている。特許文献1に記載の自動変速機の制御ユニットがそれである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、マニュアルシャフトが変速機ケースから突き出し、変速機ケースとアクチュエータケースとの間からマニュアルシャフトが露出しているため、外部の水分がマニュアルシャフトに付着することでマニュアルシャフトが錆び付き、変速機ケースとマニュアルシャフトとの間に設けられるオイルシールが傷つく虞がある。これに対して、外部からの浸水を抑制するための浸水用シールを設けることが考えられるものの、変速機出荷時に変速機側のリークテストを実施するに当たり、オイルシールからの気密漏れが発生した場合であっても浸水用シールによってシールされるために気密漏れを検知できないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、アクチュエータによって回転させられるマニュアルシャフトを備えるシフト切替装置において、マニュアルシャフトに外部からの水分が付着することが防止でき、且つ、変速機のリークテストを実施可能な構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の要旨とするところは、(a)一端が変速機ケースに収容されるとともに他端が前記変速機ケースから外部側に向かって突き出し、回転することで変速機のシフトレンジを切り替えるマニュアルシャフトと、前記変速機ケースの外部に取り付けられ、前記マニュアルシャフトを回転させるためのアクチュエータと、前記アクチュエータの筐体であるアクチュエータケースと、を備えるシフト切替装置であって、(b)前記変速機ケースと前記アクチュエータケースとの間に形成される隙間にシール部材が介挿され、(c)前記シール部材は、所定量以上の熱が加えられると、前記変速機ケースおよび前記アクチュエータケースに密着するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、変速機ケースとアクチュエータケースとの間の隙間に接触状態で介挿されるシール部材は、所定量以上の熱が加えられると変速機ケースおよびアクチュエータケースに密着するように構成されているため、シール部材に熱が加えられることでシール部材と変速機ケースおよびアクチュエータケースとの間が密着させられ、外部からの浸水が防止される。また、シール部材に熱が加えられない状態では、シール部材と変速機ケースおよびアクチュエータケースとの間からの空気の漏れが許容されるためリークテストを実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1のアクチュエータを拡大した正面視図である。
【
図3】
図1のアクチュエータの内部構造を示す図である。
【
図4】アクチュエータによって駆動されるパーキング機構の構成を示す図である。
【
図5】パーキング機構とアクチュエータとの間を繋ぐマニュアルシャフトの嵌合部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、好適には、前記シール部材は、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム)を主成分とする発泡体から構成される。このシール部材に熱が加わるとシール部材が軟化し、変速機ケースおよびアクチュエータケースのシール部材と接触するシール面に形成される微小な凹凸にシール部材が入り込むことで、シール部材と変速機ケースおよびアクチュエータケースのシール面との間が密着させられる。
【0010】
また、好適には、前記シール部材には、変速機の出荷後の車両走行中に発生する熱が加えられることで、前記シール部材と前記変速機ケースおよび前記アクチュエータケースとの間が密着させられる。これより、車両出荷後に車両が走行させられることで前記シール部材に熱が加えられることにより、前記シール部材が前記変速機ケースおよび前記アクチュエータケースに密着させられる。
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明が適用された変速機10の外観図である。変速機10の変速機ケース12には、後述するマニュアルシャフト58を回転させるためのシフトバイワイヤアクチュエータ14(以下、アクチュエータ14)が設けられている。変速機10の変速機ケース12の外部に取り付けられるアクチュエータ14と、変速機ケース12内部に収容される後述するパーキング機構(
図4参照)とを、含んで変速機10のシフトレンジを切り替えるシフト切替装置8が構成される。
【0013】
図2は、
図1のアクチュエータ14を拡大した正面視図であり、
図3は、アクチュエータ14の内部構造を示す図である。
【0014】
アクチュエータ14は、ハウジング16およびカバー18によって形成される空間内に、ECU基板20、モータ22、ロータシャフト24、ドライブギヤ26、ドリブンギヤ28、および出力軸30を備えている。
【0015】
ハウジング16およびカバー18は、それぞれ盆形状に形成されている。また、ハウジング16およびカバー18の開口側には、それぞれの縁部に沿うようにしてフランジ部16a、18aが形成され、互いのフランジ部16a、18aの合わせ面が当接した状態で、ハウジング16およびカバー18が締結ボルト32によって互いに締結される。ハウジング16およびカバー18が互いに締結されることで、アクチュエータ14の筐体であるアクチュエータケース19が形成される。
【0016】
ハウジング16には、アクチュエータ14を変速機ケース12に固定するための固定部34が複数箇所形成され、各固定部34には図示しないボルトを挿し通すためのボルト穴34aが形成されている。また、ハウジング16には、ECU基板20と不図示の外部配線とを接続するためのコネクタ36a、36bが設けられている。カバー18の外壁には、粘着テープ38によって制振材40が貼り付けられている。
【0017】
ハウジング16およびカバー18によって形成される空間内において、カバー18側にECU基板20が収容されている。ECU基板20は、アクチュエータ14を構成するモータ22の制御用として設けられている。また、ECU基板20とカバー18との間には、緩衝材42が介挿されている。
【0018】
モータ22は、ECU基板20からの指令によって駆動させられ、ECU基板20からの指令に応じてロータシャフト24を所定の回転位置まで回転させる。ロータシャフト24には、ドライブギヤ26が相対回転不能に固定されている。ドライブギヤ26は、ドリブンギヤ28に噛み合わされている。ドリブンギヤ28は、出力軸30に溶接等で接合されている。ドリブンギヤ28は、出力軸30の軸方向に見たとき円弧状に形成されている。また、ドリブンギヤ28の直径は、ドライブギヤ26の直径よりも長いことから、モータ22から出力されるトルクが増幅して出力軸30に伝達される。出力軸30には、後述するマニュアルシャフト58がスプライン嵌合されるスプライン歯が形成されたスプライン穴44が形成されている。
【0019】
図4は、アクチュエータ14およびアクチュエータ14によって駆動されるパーキング機構46を含んで構成されるシフト切替装置8の全体構造を示す図である。
図4(a)は、アクチュエータ14およびパーキング機構46の全体構造を示し、
図4(b)は、
図4(a)のパーキング機構46を後述するパーキングロックギヤ48の回転軸線CLの方向に見た図に対応している。なお、
図4(a)は、
図4(b)のパーキング機構46を矢印A方向から見た図に対応している。パーキング機構46は、
図4では図示されない変速機ケース12内部に収容されている。
【0020】
パーキング機構46は、パーキングロックギヤ48、パーキングポール50、カム52、ロッド54、ディテントレバー56、マニュアルシャフト58、およびディテントスプリング60を含んで構成されている。パーキングロックギヤ48は、変速機10の図示しない出力軸に相対回転不能に固定されている。パーキングポール50は、長手状の部材であり、回動支持部50aを中心にして回動可能となっている。パーキングポール50のパーキングロックギヤ48と対向する部位には、パーキングロックギヤ48の外周歯と噛合可能なロック歯50bが形成されている。パーキングポール50は、カム52によって回動させられる。
【0021】
カム52は、円錐状に形成され、パーキングポール50の長手方向で回動支持部50aと反対側の部位に当接させられている。カム52は、
図4(a)においてパーキングロックギヤ48の回転軸線CLと平行な方向(紙面に対して垂直な方向)に移動可能とされている。カム52が移動させられると、カム52のパーキングポール50と当接する部位が変更されることで、パーキングポール50が回動させられる。例えば、カム52が
図4(a)において紙面手前側に移動する、すなわちカム52が
図4(b)において紙面右側に移動すると、パーキングポール50が回動支持部50aを中心にして反時計回りに回動させられる。このとき、
図4(a)に示すようにパーキングロックギヤ48の外周歯とパーキングポール50のロック歯50bとが噛み合った状態となり、パーキングロックギヤ48の回転が阻止される。すなわち、変速機10の出力軸の回転が阻止される。一方、カム52が
図4(a)において紙面奥側に移動する、すなわちカム52が
図4(b)において紙面左側に移動すると、パーキングポール50が回動支持部50aを中心にして時計回りに回動させられる。このとき、パーキングロックギヤ48の外周歯とパーキングポール50のロック歯50bとの噛合が解除され、パーキングロックギヤ48の回転が許容される。
【0022】
ロッド54は、カム52とディテントレバー56とを連結している。ディテントレバー56は、扇状に形成された部材であり、マニュアルシャフト58に一体的に固定されている。従って、マニュアルシャフト58が回転すると、ディテントレバー56がマニュアルシャフト58を中心にして回転させられ、ロッド54を介してカム52が移動させられる。ディテントレバー56には、波状に形成された凹凸である波状面56aが形成されており、この波状面56aにディテントスプリング60の端部が当接するように押し付けられている。ディテントレバー56の波状面56aに形成される各谷にディテントスプリング60の端部が当接した状態で、各谷毎に規定される所定のシフトレンジに切り替えられた状態となる。このように、ディテントスプリング60の端部がディテントレバー56の波状面56aに押し付けられることで、ディテントレバー56が所定のシフトレンジに対応する回転位置で保持される。
【0023】
マニュアルシャフト58は、一端が変速機ケース12内に収容されるとともに、他端が変速機ケース12から外部側に向かって突き出し、回転させられることで変速機10のシフトレンジが切り替えられる。マニュアルシャフト58は、アクチュエータ14によって回転させられる。マニュアルシャフト58が回転すると、ディテントレバー56およびロッド54を介してカム52が移動するとともに、パーキングポール50が回動支持部50aを中心にして回動させられる。
【0024】
図5は、パーキング機構46とアクチュエータ14との間を繋ぐマニュアルシャフト58の嵌合部を示す断面図である。変速機ケース12には、円筒状の第1筒部62が形成され、第1筒部62の内周側にはマニュアルシャフト58が貫通する貫通穴63が形成されている。マニュアルシャフト58は、貫通穴63を貫通するとともに、一端がケース外部に向かって突き出している。また、貫通穴63の内周面とマニュアルシャフト58の外周面との間には、変速機ケース12内部からのオイルの漏れを防止するためのオイルシール64が設けられている。ハウジング16には、変速機ケース12の貫通穴63と嵌合する円筒状の第2筒部66が形成されており、第2筒部66の外周面が貫通穴63の内周面に面接触した状態で嵌合させられている。
【0025】
マニュアルシャフト58の変速機ケース12から突き出した部位には、スプライン歯68が形成され、出力軸30に形成されるスプライン穴44にスプライン嵌合されている。従って、マニュアルシャフト58および出力軸30が一体的に回転させられる。出力軸30は、その外周面が第2筒部66の内周面に対して摺動可能な状態で嵌合されている。また、出力軸30の外周には、ドリブンギヤ28が溶接等によって固定されている。
【0026】
ここで、外部の水が変速機ケース12とハウジング16との間を通って内部に侵入すると、マニュアルシャフト58の表面を錆び付かせる虞がある。これに関連して、オイルシール64が傷付くと、変速機10内のオイルがオイルシール64とマニュアルシャフト58の間から漏れ出す虞がある。これを防止するため、マニュアルシャフト58の軸方向において、変速機ケース12とハウジング16との間に形成される隙間Lに、外部からの水の侵入を防止するための発泡シール材70が介挿されている。発泡シール材70は、環状形状を有している。なお、発泡シール材70が、本発明のシール部材に対応している。
【0027】
ハウジング16の第2筒部66の基部側には、基部から第2筒部66に対して垂直に伸びる壁部72が形成されている。発泡シール材70は、マニュアルシャフト58の軸方向において第1筒部62の端部とハウジング16の壁部72との間に形成される隙間Lに介挿されている。組付前では、発泡シール材70は、
図5の破線で示すように断面が四角に形成されている。一方、組付の際に変速機ケース12の第1筒部62とハウジング16の第2筒部66とが嵌合させられると発泡シール材70が圧縮変形させられ、発泡シール材70が
図5の実線で示すような断面L字の形状となる。組付に当たって、発泡シール材70の第2シール面76に接触する部位に予め接着剤が塗布され、発泡シール材70が第2シール面76に接着させられた状態で組み付けられる。
【0028】
発泡シール材70は、変速機ケース12とハウジング16との間に介挿された状態において、第1筒部62の先端に形成される第1シール面74およびハウジング16の壁部72に形成される第2シール面76に接触した状態になる。なお、発泡シール材70と第2シール面76との間は、上述したように予め接着剤によって接着されている。変速機ケース12とハウジング16との間に介挿される発泡シール材70によって、外部からの水の侵入が阻止される。また、発泡シール材70は、オイルに対して弱い性質を有するものの、変速機ケース12とマニュアルシャフト58との間にオイルシール64が介挿されることで、オイルが発泡シール材70まで到達することが防止される。
【0029】
ところで、変速機10の出荷時において、変速機10内部からのオイルの漏れを判定するリークテストが実施される。リークテストでは、変速機10の内部から圧力をかけたときに気密漏れが検出されるか否かが判定される。このとき変速機ケース12とハウジング16との間が発泡シール材70によって密着した状態になると気密漏れを検出することが困難となる。これに対して、発泡シール材70は、発泡シール材70に所定量以上の熱が加えられると変速機ケース12の第1シール面74に密着するように構成されている。発泡シール材70は、例えばEPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム)を主成分とする発泡体から構成されている。この発泡シール材70に熱が加えられると発泡シール材70が軟化し、第1シール面74に形成される微小な凹凸に発泡シール材70が入り込み、発泡シール材70と第1シール面74とが密着させられる。また、発泡シール材70が第1シール面74に形成される微小な凹凸に一端入り込むと、熱が加えられなくなっても密着状態が維持される。
【0030】
ここで、発泡シール材70には、変速機10の出荷後に熱が加えられる。具体的には、変速機10の出荷後の車両走行中に発生する熱によって、発泡シール材70が、第1シール面74に密着させられる。言い換えれば、リークテストの実施時点では発泡シール材70に熱が加えられていないため、発泡シール材70と第1シール面74との間は密着しておらず、発泡シール材70と第1シール面74との間が気密になっていない。なお、発泡シール材70と第2シール面76との間は、予め接着剤で接着されることで気密となっている。
【0031】
これより、変速機10の出荷時では、発泡シール材70と第1シール面74との間は互いに接触するものの密着していないため、発泡シール材70と第1シール面74との間に形成される微小な隙間から空気が通過することが許容される。従って、リークテストにおいて変速機10に気密漏れがあると、変速機10内から漏れ出した空気が、発泡シール材70と第1シール面74との間から漏れ出ることで気密漏れの発生が検知される。従って、リークテストが好適に実施されることとなる。
【0032】
また、変速機10の出荷後に、車両の走行に伴って発泡シール材70に所定量以上の熱が加えられることで、発泡シール材70と第1シール面74との間が密着させられ、外部からの水の侵入が防止される。このように、車両走行中に発生する熱が発泡シール材70に加えられることで、発泡シール材70と第1シール面74とが密着させられるため、第1シール面74の表面に凹凸が形成された状態であっても、熱が加えられることで互いの接触面が隙間なく密着させることができる。また、変速機ケース12とアクチュエータ14のハウジング16との間の距離の精度が出ない場合であっても、発泡シール材70に熱が加えられることで発泡シール材70が軟化し、第1シール面74の表面に形成される凹凸に発泡シール材70が入り込むことで、発泡シール材70と第1シール面74との間を確実に密着させることができる。
【0033】
上述のように、本実施例によれば、変速機ケース12とアクチュエータケース19との間の隙間に介挿される発泡シール材70は、所定量以上の熱が加えられると変速機ケース12およびアクチュエータケース19の間を密着するように構成されているため、発泡シール材70に熱が加えられることで発泡シール材70と変速機ケース12およびアクチュエータケース19との間が密着させられ、外部からの浸水が防止される。また、発泡シール材70に熱が加えられない状態では、発泡シール材70と変速機ケース12およびアクチュエータケース19との間からの空気の漏れが許容されるためリークテストを実施することが可能になる。
【0034】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0035】
例えば、前述の実施例では、発泡シール材70は、EPDMゴムを主成分とする発泡体が使用されていたが、本発明は必ずしもこれに限定されない。具体的には、走行中に加わる熱によって軟化させられることで、シール面に密着させられる特性を有するシール部材であればよい。
【0036】
また、前述の実施例では、第1筒部62の第1シール面74に特殊な加工を施すことなく各シール面74に形成される微小な凹凸に発泡シール材70を入り込ませることで、発泡シール材70を各シール面74に密着させるものであったが、各シール面74に積極的に凹凸を形成する加工を施し、発泡シール材70を第1シール面74に接触的に密着させるものであっても構わない。例えば、各シール面74に、肉眼で確認できる程度の大きさの凹凸が形成される加工が施されても構わない。
【0037】
また、前述の実施例では、発泡シール材70と第2シール面76とが接着剤によって予め接着されていたが、必ずしも発泡シール材70と第2シール面76とを接着剤によって接着する必要はなく、発泡シール材70と第2シール面76との間についても所定量以上の熱が加えられることで密着させられるものであっても構わない。この場合には、リークテストにおいて発泡シール材70と第2シール面76との間からも空気の漏れが生じることとなる。もしくは、発泡シール材70と第1シール面74との間が接着剤によって予め接着され、発泡シール材70と第2シール面76との間が、所定量以上の熱が加えられることで密着させられるように構成されても構わない。
【0038】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0039】
8:シフト切替装置
10:変速機
12:変速機ケース
14:アクチュエータ
19:アクチュエータケース
58:マニュアルシャフト
63:貫通穴
70:発泡シール材(シール部材)