(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】多段トレイ
(51)【国際特許分類】
B65D 5/52 20060101AFI20241001BHJP
B65D 5/56 20060101ALI20241001BHJP
B65D 5/20 20060101ALI20241001BHJP
B65D 5/481 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B65D5/52 L
B65D5/56 A
B65D5/20 C
B65D5/481 A
(21)【出願番号】P 2021111008
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】塩田 隼介
(72)【発明者】
【氏名】大橋 里佳子
(72)【発明者】
【氏名】井上 順二
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-172339(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0194012(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0019020(US,A1)
【文献】国際公開第2021/028756(WO,A1)
【文献】実開昭58-053022(JP,U)
【文献】米国特許第04241863(US,A)
【文献】米国特許第03863832(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0222649(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0305650(US,A1)
【文献】米国特許第02913101(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/00- 5/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚のブランクシートが折り曲げられ前記ブランクシートの端縁どうしが突き合わせられた状態で底壁部と前記底壁部から折り立てられた姿勢をなす側壁部とで収容空間を囲むトレイ形状に成形された紙製の基材に、前記突き合せられた前記端縁を跨ぐ透明なフィルムが内装された
複数のフィルム付きトレイ
を積み重ねた多段トレイであって、
前記複数のフィルム付きトレイには、本体トレイと、前記本体トレイに積み重ねられた中皿トレイと、が含まれており、
前記中皿トレイは、
前記基材と前記基材に内装された前記フィルムの一部との複層構造をなす壁部と、
前記基材の設けられていない開口領域を覆う領域に延在するとともに前記壁部に設けられた前記フィルムの前記一部と一体であって前記フィルムにおいて前記一部を除く他部のみが設けられた単層構造をなす窓部と、を備え
、
前記壁部には、前記基材の一部に設けられ平面視でコの字型をなす切込みで三辺が囲まれたシート片を持ち上げて前記切込みを開いて形成され、持ち上げられた前記シート片を前記壁部に対してへ字状に折り立てて前記収容空間を区画する仕切りが含まれており、
前記窓部は、前記切込みが開かれた領域に生じ、開かれた前記切込みと折り立てられた前記仕切りの端縁とで囲まれた前記開口領域に対応して設けられているとともに、前記中皿トレイの前記底壁部に配置されている
ことを特徴する
多段トレイ
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り曲げられた紙製のブランクシートに対して内面にフィルムが積層された複数のフィルム付きトレイを積み重ねた多段トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、折り曲げられた紙製のブランクシートに対して内面にフィルムが積層されたトレイが知られている。
【0003】
たとえば、折り曲げられた一枚のブランクシートにおける端縁どうしが突き合わせられた状態で収容空間を囲むトレイ状に成形された紙製の基材に、突き合わされた端縁を跨いでフィルムが内装されたフィルム付きトレイが提案されている。このようなフィルム付きトレイとして、全域に亘って基材およびフィルムの複層構造をなすトレイが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
しかしながら、上述のように一つの収容空間を囲むトレイは、底壁部や側壁部などの各部位が収容空間に対して支持されていないため、強度が十分ではないおそれがある。
よって、複数のフィルム付きトレイを積み重ねた多段トレイの強度を確保するうえで改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、複数のフィルム付きトレイを積み重ねた多段トレイの強度を確保することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【0006】
本件は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、フィルム付きトレイの外側から内容物が見えるようにすることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件によれば、複数のフィルム付きトレイを積み重ねた多段トレイの強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0008】
本件によれば、フィルム付きトレイの外側から内容物を見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の多段トレイを示す分解斜視図である。
【
図3】フィルム付きトレイの本体トレイ用ブランクシートの平面図である。
【
図4】フィルム付きトレイの中皿トレイ用ブランクシートの平面図である。
【
図5】フィルム付きトレイの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、フィルム付きトレイを実施するための形態を説明する。
本実施形態では、それぞれがフィルム付きトレイをなす本体トレイおよび中皿トレイの積み重ねられた多段トレイとして例示する。
以下の説明では、フィルム付きトレイが水平面に載置された姿勢を例示する。
水平面においてフィルム付きトレイの中心を基準にして前後左右方向(図中には「F」,「B」,「L」,「R」で示す)を定める。本フィルム付きトレイは、前後対称および左右対称である。また、鉛直方向のうち重力の作用方向を下方(図中には「D」で示す)とし、下方の反対方向を上方(図中には「U」で示す)とする。さらに、トレイ付き容器の収容空間側を内側とし、内側の反対側を外側とする。
【0011】
[I.一実施形態]
以下の説明では、まず、項目[1]で一実施形態の構成を説明する。この項目[1]では、多段トレイに関する要部構成を小項目[1-1]で概説する。次に、本体トレイに関する構成を小項目[1-2]で説明し、中皿トレイに関する構成を小項目[1-3]で述べる。項目[2]では、本体トレイと中皿トレイとのそれぞれに用いるブランクシートに関する構成を述べる。それから、項目[3]で項目[1]および[2]で述べた構成による作用効果を説明する。
【0012】
[1.構成]
[1-1.多段トレイ]
本実施形態では、フィルム付きトレイが適用された多段トレイについて説明する。
多段トレイは、複数のフィルム付きトレイが積み重ねられた容器である。
図1に例示する多段トレイ1は、本体トレイ10(第一トレイ)と本体トレイ10に積み重ねられた中皿トレイ20(第二トレイ)との二段で構成された中皿付きトレイである。本体トレイ10と中皿トレイ20とのそれぞれは、上側が開口をなす収容空間を有する容器である。
【0013】
この多段トレイ1では、本体トレイ10が下方に配置され、中皿トレイ20が上方に配置されている。本実施形態で本体トレイ10および中皿トレイ20のそれぞれの輪郭は、平面視で八角形状(または四隅が面取りされた四角形状)をなす。
多段トレイ1に収容される物品としては、弁当や総菜といった食品が挙げられる。冷やし中華用の弁当容器として多段トレイ1が用いられる場合には、本体トレイ10側に麺を収容し、中皿トレイ20側に具材を収容する利用形態を例に挙げることができる。
【0014】
<フィルム付きトレイ>
本体トレイ10と中皿トレイ20とのそれぞれには、フィルム付きトレイが適用されている。
本実施形態でフィルム付きトレイとは、一枚のブランクシート(
図3,
図4で符号10S,20S)が折り曲げられてトレイ形状に成形された紙製の基材10A,20Aに、透明なフィルム10B,20Bが積層された容器である。ブランクシートはトレイを組み立てるために用いるシート材である。
【0015】
基材10A,20Aは、フィルム付きトレイのベース部材であり、折り曲げられたブランクシートの端縁どうしが突き合わせられた状態で収容空間を囲むトレイ形状に成形されている。フィルム10B,20Bには、例えば透明なフィルムが適用されるのに対して、基材10A,20Aには不透明な紙(資材)が適用される。ここで透明とは、フィルム10B,20Bの主面における一方(一側)から他方(他側)が透けて見えることを言う。ここでいう透明には、半透明であることを含むものとする。
【0016】
このようにトレイ形状に成形された基材10A,20Aに対して、折り曲げられたブランクシートの端縁(
図1で符号10X,10Yで示す)どうしの突き合わせられた箇所を跨ぐフィルム10B,20Bが内装される。
フィルム10B,20Bは、紙製の基材10A,20Aの内面側の全体を被覆するシート層である。フィルム10B,20Bは、例えば公知の真空吸引によって基材10A,20Aの内面に吸着される。
【0017】
このように折り曲げられたブランクシートの端縁どうしの突き合わせられた箇所を跨ぐフィルム10B,20Bは、基材10A,20Aのトレイ形状を保持する機能を付与する機能層である。
すなわち、基材10A,20Aには、折り曲げられたブランクシートどうしを貼合するための糊代が設けられておらずフィルム10B,20Bによってトレイ形状が維持されている。
【0018】
基材10A,20Aに用いる紙材料としては、一般的に用いられている紙であればとくに限定されず、植物由来のパルプを主成分とする紙であることが好ましく、木材パルプを主成分とする紙であることがより好ましい。
具体的には、クラフト紙,上質紙,白板紙,紙器用原紙,ミルクカートン原紙,カップ原紙,ライナ紙,塗工紙,片艶紙,グラシン紙,グラファン紙等が挙げられる。これらのなかでもクラフト紙,上質紙,白板紙,紙器用原紙,カップ原紙,片艶紙が好ましい。剛性の面から、白板紙の中では高級板紙,特殊板紙,カップ原紙,クラフト紙がより好ましい。クラフト紙は、晒クラフト紙,未晒クラフト紙および片艶晒クラフト紙が挙げられ、印刷適性や衛生面から、晒クラフト紙および片艶晒クラフト紙が好ましい。
また、ライナと中芯とライナの三層で構成された段ボールを使用しても良く、特に基材10A,20Aの強度と成形加工性の両立の観点から、段ボールの厚みの小さいマイクロフルートが好ましい。
【0019】
紙には、種々の添加剤が含有されてよく、内添サイズ剤としては、ロジン系,アルキルケテンダイマー系,アルケニル無水コハク酸系,スチレン-アクリル系,高級脂肪酸系,石油樹脂系等が挙げられる。内添サイズ剤以外に、公知のその他の内添剤を添加してもよい。内添剤としては、填料,紙力増強剤,歩留り向上剤,pH調整剤,濾水性向上剤,耐水化剤,柔軟剤,帯電防止剤,消泡剤,スライムコントロール剤,染料・顔料等が挙げられる。
【0020】
填料としては、二酸化チタン,カオリン,タルク,炭酸カルシウム等が挙げられる。
紙の抄紙においては、公知の湿式抄紙機を適宜選択して使用することができる。
抄紙機としては、長網抄紙機,ギャップフォーマー型抄紙機,円網式抄紙機,短網式抄紙機等が挙げられる。
抄紙機によって形成された紙層は、たとえば、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させることが好ましい。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
また、前記のようにして得られた紙に、カレンダーによる表面処理を施して厚さやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
なお、基材10A,20Aに用いる材料は上記に限らず種々の紙製資材を用いることができる。
【0021】
フィルム10B,20Bに用いる材料には、付与する機能に応じた性質を有するシート材が用いられる。例えば、基材10A,20Aにフィルム10B,20Bを吸着させる際にフィルム10B,20Bが伸長することを加味した延伸性や、バリア性、耐水性,耐熱性,熱融着性などの機能をもつプラスチックシートがフィルム10B,20Bに採用される。
フィルム10B,20Bに用いるシートは、延伸性やバリア性を含む樹脂積層体であることが好ましい。樹脂積層体は、中間層にバリア層を含み、基材10A,20Aの内面に接する層は、基材10A,20Aにヒートシールされる必要があるため、熱可塑性樹脂からなる層を含む樹脂積層体であることがより好ましい。すなわち、樹脂積層体は、中間層にバリア層を含み、基材10A,20Aの内面に接する層に熱可塑性樹脂からなる層を含むフィルム層であることがより好ましい。
【0022】
前記バリア層は、樹脂に限られず、金属箔等でもよいが、紙基材層の印刷面を視認できるようにし、意匠性を高める観点から、樹脂から構成されることが好ましく、透明の樹脂から構成されることがより好ましい。
バリア層を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂,ポリビニルアルコール,エチレン-ビニルアルコール共重合体およびポリ塩化ビニリデン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、ポリアミド系樹脂,ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1つがより好ましい。
ポリアミド系樹脂としては、芳香族ポリアミドが好ましく、ポリアミドMXD6がより好ましい。
【0023】
樹脂積層体で基材10A,20Aの内面に接する層を構成する樹脂としては、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂,ナイロン6等の脂肪族ポリアミド系樹脂,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂が挙げられる。
収容空間の内側を向いた層は、例えばポリプロピレン(PP)樹脂、具体的には、ホモポリプロピレン,ランダムポリプピレン共重合体,ブロックポリプロピレン共重合体であり、特に、ランダムポリプロピレン共重合体を用いるのが好ましい。
【0024】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン69,ナイロン610,ナイロン612,ナイロン11,ナイロン12などの脂肪族ポリアミド重合体,ナイロン6-66(ナイロン6とナイロン66の共重合体を表す。以下同様に表記する),ナイロン6-10,ナイロン6-12,ナイロン6-69,ナイロン6-610,ナイロン66-69などの脂肪族ポリアミド共重合体を例示することができる。なかでも、脂肪族ポリアミド共重合体が好ましく、特にナイロン6-66,ナイロン6-10またはナイロン6-12が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂としては、たとえば、直鎖状低密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂,ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂,プロピレン-エチレン共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体,アイオノマー樹脂,エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体,エチレン-(メタ)アクリル酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体などの各種共重合体が挙げられる。好ましくは、ポリエチレン系樹脂であり、特に好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレンである。これらは単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0026】
ポリエステル系樹脂としては、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート/イソフタレート)、ポリ(エチレングリコール/シクロへキサンジメタノール/テレフタレート)などが代表格としてあげられ、更にこれらの重合体に共重合成分としてエチレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオールなどのジオール類、あるいはイソフタール類、ベンゾフェノンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、プロピレンビス(フェニルカルボン酸)、ジフェニルオキサイドジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、サバチン酸、ジエチルコハク酸などのジカルボン酸を含有せしめたものが使用できる。
フィルム層に用いるフィルムシートは、上記の構成の他、種々を組み合わせた多層構成としてもよい。
【0027】
また、フィルム層に用いるフィルムシートは、環境負荷低減の観点から、ポリ乳酸(PLA),ポリグリコール酸(PGA),ポリブチレンサクシネート(PBS)等の生分解性樹脂を用いることも好ましい。
フィルム層の厚さは、好ましくは10~300μmであり、より好ましくは15~200μmであり、より好ましくは20~100μmであり、さらに好ましくは30~50μmである。
フィルム層に用いるフィルムシートは、それぞれドライラミネート法により積層してもよいが、同時に溶融押出しする、共押出し法により形成したフィルムが好ましい。
また、本フィルム10B,20Bは、基材10A,20Aの内側を向いた面に設けられる構造に限らず、基材10A,20Aの外側を向いた面に設けても良い。
【0028】
[1-2.本体トレイ]
図1に示す本体トレイ10は、一つの収容空間15を有するトレイ状に成形された基材10Aにフィルム10Bが内装された容器である。
本体トレイ10には、収容空間15を囲む壁部として、平面視で八角形状の底壁部11と底壁部11の各辺から折り立てたれた複数の側壁部12とが設けられている。各側壁部12の上縁には、外側へ向かって鍔状にせり出したフランジ部13が接続されている。フィルム10Bは、フランジ部13で上側を向いた面にも積層されている。
【0029】
図1に示す本体トレイ10は、八つの側壁部12の側縁どうしが突き合わせられた角部を八つ有する八角錐台形状に成形されている。なお、ここでいう角部は、角錐台において上底および下底をむすぶ側壁部12において角をなす部位であり、側壁部12と底壁部11との角をなす部位を含まない。
本体トレイ10が八角錐台形状をなすことで、例えば四角錐台形状のトレイに比べて、多面体をなすトレイで面部の数が増えるため、本体トレイ10の強度が向上し、本体トレイ10に衝撃を加えた際の歪みを防止する効果がある。
かかる本体トレイ10は、八つの側壁部12のうち四つを「四角錐台の角をなす角壁部14」と見做せば、四つの主な側壁部12と、これらの側壁部12どうしの間で面取り形状をなす四つの角壁部14とを有する四角錐台形状の容器と概観することも可能である。
【0030】
<側壁部>
側壁部12のそれぞれには、下方から上方へ向かって、第一立壁部(立壁部)12Aと、テラス部12Bと、第二立壁部(立壁部)12Cとがこの順に設けられている。
側壁部12のうち、第一立壁部12Aおよび第二立壁部12Cは、底壁部11に交差する方向に沿って延在する壁面をなす部位である。
側壁部12のうち、テラス部12Bは、底壁部11に対して平行に延在する面部をなす段状に形成された部位である。
図1のテラス部12Bは、本体トレイ10の周方向の全周に亘って設けられている。
なお、
図1では、側壁部12,第一立壁部12A,テラス部12B,第二立壁部12Cの符号をそれぞれ一箇所のみ示す。
【0031】
図1に示すように、第一立壁部12Aはテラス部12Bに対して下側(すなわち、側壁部12が底壁部11に対して折り立てられた方向とは反対方向)の位置に延在している。第二立壁部12Cはテラス部12Bに対して上側(すなわち、側壁部12が底壁部11に対して折り立てられた方向)の位置に延在している。
これら第一立壁部12Aおよび第二立壁部12Cのそれぞれは、上方へ向かって外側に傾斜した面部をなす。また、
図1の第一立壁部12Aは、下側部分と上側部分との間で谷折りされ、側面視でくの字型に屈曲された形状をなす。第二立壁部12Cは第一立壁部12Aの上側部分と略平行をなす。
【0032】
テラス部12Bは、下側に延在する第一立壁部12Aと上側に延在する第二立壁部12Cとの間に挟まれた位置に設けられている。テラス部12Bは、第一立壁部12Aの上縁から外側へ鍔状にせり出した面部であり、第二立壁部12Cの下縁から内側へ鍔状にせり出した面部とも言える。
図1に例示されたテラス部12Bは、水平面に沿う底壁部11に対して平行をなす(すなわち水平方向に延在する)面部をなす。本実施形態で底壁部11に対して平行に延在する面部とは、底壁部11に対して厳密に平行をなす面に限らず、略平行をなす面を含むものとする。
【0033】
図1で第一立壁部12Aとテラス部12Bと第二立壁部12Cとは、径方向に沿う切断面から視て、側壁部12がクランク形状に折り曲げられて成形された部位である。
具体的には、第一立壁部12Aは、底壁部11に対して谷折りで折り立てられた姿勢をなす。テラス部12Bは第一立壁部12Aに対して山折りで折り立てられた姿勢をなす。第二立壁部12Cはテラス部12Bに対して谷折りで折り立てられた姿勢をなす。
【0034】
[1-3.中皿トレイ]
中皿トレイ20は、一つの収容空間25を囲むトレイ状に成形された基材20Aにフィルム20Bが内装された容器である。
中皿トレイ20は、本体トレイ10の収容空間15を上下に分離する仕切り(中底壁)ともいえる。
【0035】
中皿トレイ20には、収容空間25を囲む壁部として、平面視で八角形状の底壁部21と底壁部21の各辺から折り立てられた複数の側壁部22とが設けられている。
側壁部22の上縁には、側壁部22の外側かつ下方へ向かって折り返された折り返し部22Aが接続されている。中皿トレイ20が本体トレイ10に載置された状態では、折り返し部22Aの端縁がテラス部12Bの上側を向いた面に当接する。すなわち、中皿トレイ20は、折り返し部22Aにより本体トレイ10に支持されている。
【0036】
中皿トレイ20で収容空間25の深さは、本体トレイ10の収容空間15よりも浅く設定されている。
また、折り返し部22Aの高さは、第二立壁部12Cの高さ(第二立壁部12Cの上縁とテラス部12Bとの間の離間する寸法)以下に設定されるのが好ましい。ここで、折り返し部22Aの高さは側壁部22の上縁と折り返し部22Aの端縁との間の離間する寸法に対応する。
【0037】
<仕切り>
中皿トレイ20には、収容空間25を三つの中収容空間に区画する二つの仕切り28が設けられている。
仕切り28のそれぞれは、複数の側壁部22のうち向かい合った一対の側壁部22どうしの間に直線状に延在している。各仕切り28の一端は向かい合った一対の側壁部22の一方に突き合せられており、他端は向かい合った一対の側壁部22の他方に突き合せられている。この仕切り28には、仕切り28で区切られた中収容空間の一方側に配置された第一壁部と、他方側で第一壁部に向かい合う第二壁部と、第一壁部の上縁と第二壁部の上縁との間に接続された第三壁部とが含まれている。
【0038】
三つの中収容空間のうち二つのそれぞれには、その中収容空間を二つの小収容空間に区画する小仕切り29が設けられている。
小仕切り29は、ブランクシート(基材の一部)に設けられた切込み29Aを開いて形成される。切込み29Aは平面視でコの字型をなす切り込みである。切込み29Aで三辺が囲まれたシート片を持ち上げて切込み29Aが開かれる。持ち上げられたシート片を底壁部21に対して「へ」字状に折り立てて、小仕切り29が形成される。
【0039】
<窓部>
底壁部21のうち上記の小仕切り29が形成された領域には切込み29Aの開かれた箇所に開口が生じる。
中皿トレイ20には、上記の開口を利用した窓部20Cが設けられている。本実施形態の窓部20Cは、底壁部21に配置されており、底壁部21の外側および内側の一方から他方が見える部位である。中皿トレイ20で窓部20C以外の部分は、外側および内側の一方から他方が見えない壁部20Dをなす。
【0040】
壁部20Dは、基材20Aと基材20Aに内装されたフィルム20Bの一部(
図2で符号20BX)との複層構造をなす部位である。具体的には、壁部20Dには、底壁部21で開口領域26を除く部分と側壁部22とが含まれている。壁部20Dには、基材20Aとフィルム20Bとの両方が設けられており、不透明な基材20Aにより外側および内側の一方から他方が見えないようになっている。
【0041】
窓部20Cは、
図2に示すように、基材20Aの設けられていない開口領域26を覆う領域に延在するとともに、窓フィルム27のみが設けられた単層構造をなす部位である。
窓フィルム27は、壁部20Dに設けられたフィルム20Bの一部20BXと一体であって、フィルム20Bのうち壁部20Dに設けられたフィルム20Bの一部を除く他部である。
すなわち、フィルム20Bには、壁部20Dに設けられたフィルム20Bの一部20BXと、窓部20Cに設けられた窓フィルム27(壁部20Dに含まれたフィルム20Bの一部を除く他部)とが含まれている。
【0042】
開口領域26は、切込み29Aが開かれて小仕切り29が形成された状態で底壁部21に生じた開口の一部である。開口領域26は、小仕切り29における切り込まれた端縁に隣接した領域であり、開かれた切込み29Aの端縁と折り立てられた小仕切り29の端縁29Bとに囲まれている。
すなわち、小仕切り29を形成することにともない、底壁部21をなすブランクシートの一部(基材20Aの一部)で切込み29Aが開かれた領域に生じた開口が窓部20Cをなす開口領域26に利用されている。
図1の中皿トレイ20には、二つの小仕切り29のそれぞれを形成した際に生じた二つの開口領域26に対応して、二つの窓部20Cが設けられている。
【0043】
[2.ブランクシート]
図3に示すように、本体トレイ10を組み立てるために用いるブランクシート10Sには、平面視で八角形状の底壁部シート片11Sと、底壁部シート片11Sの各辺に接続された複数の側壁部シート片12Sと角壁部シート片14Sが設けられている。
各側壁部シート片12Sで底壁部シート片11Sの接続された辺とは反対側にはフランジ部シート片13Sが接続されている。
各側壁部シート片12Sには、本体トレイ10に組み立てられた状態で第一立壁部12A,テラス部12B,第二立壁部12Cのそれぞれに対応するシート片12AS、シート片12BS、シート片12CSが設けられている。
なお、
図3では、側壁部シート片12S,シート片12AS、シート片12BS、シート片12CS,フランジ部シート片13S,角壁部シート片14Sの符号をそれぞれ一箇所のみ示す。
【0044】
図4に示すように、中皿トレイ20を組み立てるために用いるブランクシート20Sには、中皿トレイ20に組み立てられた状態で底壁部21に対応する底壁部シート片21Sと、中皿トレイ20に組み立てられた状態で側壁部22に対応する側壁部シート片22Sとが設けられている。各側壁部シート片22Sで底壁部シート片21Sの接続された辺とは反対側には、中皿トレイ20に組み立てられた状態で折り返し部22Aに対応するシート片22ASが接続されている。
【0045】
底壁部シート片21Sには、仕切り28に対応する仕切りシート片28Sと、小仕切り29に対応する小仕切りシート片29Sとが設けられている。小仕切りシート片29Sの周囲は、コの字型の切込み29Aが設けられている。
【0046】
底壁部シート片21Sは、二つの仕切りシート片28Sにより三つの部分に分割されている。
側壁部シート片22Sのうち、二つの側壁部シート片22Sのそれぞれは、中皿トレイ20に組み立てられた状態で仕切り28の一端(または他端)が突き合せられる箇所で三つの部分に分割されている。
【0047】
そのほか、
図3および
図4に示すブランクシート10S,20Sで折り曲げられる箇所のそれぞれには折線が設けられており、各折線に沿ってミシン目が形成されている。折線に沿ってミシン目が設けられていることで、ブランクシート10S,20Sをトレイ10,20に組み立てる工程で、基材10A,20Aにフィルム10B,20Bを吸引する際の吸着性が向上する。また、ブランクシート10S,20Sが折線で折り曲げやすくなるのでトレイ10,20の成形性が向上する。
【0048】
[3.作用および効果]
第一実施形態の多段トレイ1は、上述のように構成されるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
本体トレイ10の側壁部12において、テラス部12Bが底壁部11に対して平行に延在する面部をなす段状に形成されている。このようにテラス部12Bの面部が側壁部12の壁面に対して立体的に設けられていることから、テラス部12Bは、テラス部12Bの延在する面に交差する方向(
図1では前後左右方向)への変形に対して側壁部12を補強する補強リブとして作用する。そのため、側壁部12の姿勢保持や、側壁部12の歪み抑制に寄与する。よって、側壁部12にテラス部12Bが形成された本体トレイ10では、底壁部と平面状に延在する側壁部とで収容空間を囲む従来のトレイに比べて、強度が向上する。
【0049】
本体トレイ10のテラス部12Bで上側を向いた面に中皿トレイ20が載置されることで、本体トレイ10と中皿トレイ20との多段トレイ1が得られる。多段トレイ1では、中皿トレイ20が本体トレイ10の収容空間15を上下方向に沿って二つに分離する仕切りなすため、一つの収容空間15を二つに分けて使用することができる。
また、多段トレイ1では、この中皿トレイ20が収容空間15側で側壁部12を支持するため、本体トレイ10の強度がより向上する。
【0050】
中皿トレイ20には、開口領域26を覆う領域に透明な窓フィルム27のみが設けられた単層構造をなす窓部20Cが設けられている。そのため、窓部20Cを通じて底壁部21の一方側から他方側を見ることができる。よって、中皿トレイ20の外側から内容物を見ることができる。
窓フィルム27は中皿トレイ20に内装されたフィルム20Bを利用しているので、中皿トレイ20(フィルム付きトレイ)の必須構成要素であるフィルム20Bを利活用して無駄なく窓部20Cを形成することができる。
【0051】
窓部20Cが底壁部21に配置されている場合、底壁部21側から内容物を見ることができる。例えば、多段トレイ1では中皿トレイ20の底壁部21側から本体トレイ10の内容物を見ることができる。
中皿トレイ20の底壁部21に設けられた切込み29Aを開いて形成された小仕切り29が設けられており、この切込み29Aが開かれた領域に生じた開口領域26に対応して、窓部20Cが設けられている。そのため、小仕切り29の形成に付随して生じる開口を利活用して無駄なく窓部20Cを形成することができる。
【0052】
[II.変形例]
上述の各実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
フィルム付きトレイにおいて窓部が配置される箇所は底壁部に限らず任意の箇所であってよい。
【0053】
図5は、窓部の配置に関する変形例として、窓部が側壁部に配置された場合を例に挙げている。
図5に示すフィルム付きトレイ30では、側壁部32に窓部50が配置されている。窓部50は、基材の設けられていない開口領域を覆う領域に窓フィルムのみが設けられた単層構造をなす。フィルム付きトレイ30では、窓部50の箇所除く他部が基材と基材に内装されたフィルムとが設けられた複層構造を壁部51である。また、
図5のフィルム付きトレイ30には、底壁部31に対して折り立てられた姿勢をなす仕切り40が設けられている。窓部50の設けられた側壁部32とは別の側壁部32で向かい合う一対の側壁部32どうしの間に直線状に延在する仕切り40が設けられている。仕切り40は収容空間を区画する仕切りとして機能するだけでなく、底壁部を収容空間側で支持する支持構造として機能する。
【0054】
図5に示すフィルム付きトレイ30では、側壁部32に設けた窓部50を通じて外側から内容物を見えるようするとともに、仕切り40が収容空間側から側壁部32を支持することで、側壁部32の補強を図ることができる。
そのほか、窓部は、側壁部と底壁部とに跨がって配置されていてもよいし、側壁部に形成された切り欠きの部分に設けられていてもよい。
【0055】
本件の側壁部にテラス部が設けられてフィルム付きトレイは、多段トレイでなく単独のトレイとして使用されてもよい。この場合、テラス部によって強度が向上したフィルム付きトレイを得ることができる。
本件のフィルム付きトレイは、側壁部において二以上のテラス部を備えていてもよい。この場合、側壁部において一つのテラス部を備える構造に比べてテラス部による補強性能が強化される。
【0056】
また、多段トレイで本体トレイの側壁部に二つ以上のテラス部が設けられている場合、中皿トレイを安定して載置可能な段数を増やすことができる。この場合、本体トレイの収容空間を三以上の収容空間に区画して使用することができる。
本件の本体トレイに中皿トレイを組み合わせた多段トレイにおいて、中皿トレイに窓部が設けられていなくてもよい。この場合、中皿トレイに開口領域が設けられていないので、中皿トレイによる本体トレイの補強性能がより強化される。
【符号の説明】
【0057】
1 :多段トレイ
10 :本体トレイ(フィルム付きトレイ)
10A :基材
10B :フィルム
10X,10Y :端縁
11 :底壁部
12 :側壁部
12A :第一立壁部
12B :テラス部
12C :第二立壁部
13 :フランジ部
14 :角壁部
15 :収容空間
20 :中皿トレイ(フィルム付きトレイ)
20A :基材
20B :フィルム
20C :窓部
20D :壁部
21 :底壁部
22 :側壁部
22A :折り返し部
25 :収容空間
26 :開口領域
27 :窓フィルム(フィルム)
28 :仕切り
29 :小仕切り(仕切り)
29A :切込み
29B :小仕切りの端部
30 :フィルム付きトレイ
31 :底壁部
32 :側壁部
40 :仕切り
50 :窓部
51 :壁部