(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】物体検出装置、物体検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 15/931 20200101AFI20241001BHJP
【FI】
G01S15/931
(21)【出願番号】P 2021114123
(22)【出願日】2021-07-09
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇田 幸典
(72)【発明者】
【氏名】菅江 一平
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/140769(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018216790(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0302069(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52 - G01S 7/64
G01S 15/00 - G01S 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された送受信部による送信波の送信と前記送受信部による物体からの反射波の受信との結果に基づいて検出される前記送受信部から前記物体までの距離である物体距離を複数回取得するともに、前記車両の移動速度を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された複数の前記物体距離と、前記移動速度と、に基づいて、前記物体の高さを判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、斜辺の長さを前記複数回における所定の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第1の直角三角形の隣辺の長さと、斜辺の長さを前記複数回における前記所定の回の後の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第2の直角三角形の隣辺の長さと、の差分の絶対値と、前記移動速度に基づいて算出される前記所定の回から前記後の回までの前記車両の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、前記物体の高さは前記送受信部の取り付け高さ未満であると判定する、物体検出装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記複数回における所定の回の前記物体距離と前記複数回における前記所定の回の後の回の前記物体距離との差分の絶対値と、前記移動速度に基づいて算出される前記所定の回から前記後の回までの前記車両の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、前記物体の高さは前記送受信部の取り付け高さ以上であると判定する、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
車両に搭載された送受信部による送信波の送信と前記送受信部による物体からの反射波の受信との結果に基づいて検出される前記送受信部から前記物体までの距離である物体距離を複数回取得するともに、前記車両の移動速度を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された複数の前記物体距離と、前記移動速度と、に基づいて、前記物体の高さを判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記複数回における所定の回の前記物体距離と前記複数回における前記所定の回の後の回の前記物体距離との差分の絶対値と、前記移動速度に基づいて算出される前記所定の回から前記後の回までの前記車両の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、路面からの前記物体の上端の高さは前記路面からの前記送受信部の取り付け高さ以上であると判定
し、斜辺の長さを前記複数回における所定の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第1の直角三角形の隣辺の長さと、斜辺の長さを前記複数回における前記所定の回の後の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第2の直角三角形の隣辺の長さと、の差分の絶対値と、前記移動速度に基づいて算出される前記所定の回から前記後の回までの前記車両の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、前記路面からの前記物体の前記上端の高さは前記路面からの前記送受信部の取り付け高さ未満であると判定する、物体検出装置。
【請求項4】
前記車両の幅方向の位置が異なる複数の前記送受信部を備える、
請求項1~
3のうちいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項5】
物体検出装置で実行される物体検出方法であって、
車両に搭載された送受信部による送信波の送信と前記送受信部による物体からの反射波の受信との結果に基づいて検出される前記送受信部から前記物体までの距離である物体距離を複数回取得するともに、前記車両の移動速度を取得するステップと、
取得された複数の前記物体距離と、前記移動速度と、に基づいて、前記物体の高さを判定するステップと、
を含み、
前記判定するステップは、斜辺の長さを前記複数回における所定の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第1の直角三角形の隣辺の長さと、斜辺の長さを前記複数回における前記所定の回の後の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第2の直角三角形の隣辺の長さと、の差分の絶対値と、前記移動速度に基づいて算出される前記所定の回から前記後の回までの前記車両の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、前記物体の高さは前記送受信部の取り付け高さ未満であると判定する、物体検出方法。
【請求項6】
物体検出装置で実行される物体検出方法であって、
車両に搭載された送受信部による送信波の送信と前記送受信部による物体からの反射波の受信との結果に基づいて検出される前記送受信部から前記物体までの距離である物体距離を複数回取得するともに、前記車両の移動速度を取得するステップと、
取得された複数の前記物体距離と、前記移動速度と、に基づいて、前記物体の高さを判定するステップと、
を含み、
前記判定するステップは、前記複数回における所定の回の前記物体距離と前記複数回における前記所定の回の後の回の前記物体距離との差分の絶対値と、前記移動速度に基づいて算出される前記所定の回から前記後の回までの前記車両の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、路面からの前記物体の上端の高さは前記路面からの前記送受信部の取り付け高さ以上であると判定
し、斜辺の長さを前記複数回における所定の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第1の直角三角形の隣辺の長さと、斜辺の長さを前記複数回における前記所定の回の後の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第2の直角三角形の隣辺の長さと、の差分の絶対値と、前記移動速度に基づいて算出される前記所定の回から前記後の回までの前記車両の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、前記路面からの前記物体の前記上端の高さは前記路面からの前記送受信部の取り付け高さ未満であると判定する、物体検出方法。
【請求項7】
コンピュータを、
車両に搭載された送受信部による送信波の送信と前記送受信部による物体からの反射波の受信との結果に基づいて検出される前記送受信部から前記物体までの距離である物体距離を複数回取得するともに、前記車両の移動速度を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された複数の前記物体距離と、前記移動速度と、に基づいて、前記物体の高さを判定する判定部と、
として機能させ、
前記判定部は、斜辺の長さを前記複数回における所定の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第1の直角三角形の隣辺の長さと、斜辺の長さを前記複数回における前記所定の回の後の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第2の直角三角形の隣辺の長さと、の差分の絶対値と、前記移動速度に基づいて算出される前記所定の回から前記後の回までの前記車両の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、前記物体の高さは前記送受信部の取り付け高さ未満であると判定する、プログラム。
【請求項8】
コンピュータを、
車両に搭載された送受信部による送信波の送信と前記送受信部による物体からの反射波の受信との結果に基づいて検出される前記送受信部から前記物体までの距離である物体距離を複数回取得するともに、前記車両の移動速度を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された複数の前記物体距離と、前記移動速度と、に基づいて、前記物体の高さを判定する判定部と、
として機能させ、
前記判定部は、前記複数回における所定の回の前記物体距離と前記複数回における前記所定の回の後の回の前記物体距離との差分の絶対値と、前記移動速度に基づいて算出される前記所定の回から前記後の回までの前記車両の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、路面からの前記物体の上端の高さは前記路面からの前記送受信部の取り付け高さ以上であると判定
し、斜辺の長さを前記複数回における所定の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第1の直角三角形の隣辺の長さと、斜辺の長さを前記複数回における前記所定の回の後の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第2の直角三角形の隣辺の長さと、の差分の絶対値と、前記移動速度に基づいて算出される前記所定の回から前記後の回までの前記車両の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、前記路面からの前記物体の前記上端の高さは前記路面からの前記送受信部の取り付け高さ未満であると判定する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体検出装置、物体検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の周囲に存在する物体の高さを判定する技術について検討されている。このような技術として、例えば、車両の異なる高さ位置や車両の異なる前後位置に複数の超音波センサを設置し、当該複数の超音波センサにより超音波を送受信することで、物体の高さを判定する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-105915号公報
【文献】特開2014-215283号公報
【文献】特開2018-204964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の技術は、車両の異なる高さ位置や車両の異なる前後位置に複数の超音波センサを設置することを必要とするため、車両の設計の自由度が制限されることがある。
【0005】
そこで、本開示の課題の一つは、車両の設計の自由度を損なうことなく物体の高さを判定することが可能な物体検出装置、物体検出方法、及びプログラムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例としての物体検出装置は、車両に搭載された送受信部による送信波の送信と前記送受信部による物体からの反射波の受信との結果に基づいて検出される前記送受信部から前記物体までの距離である物体距離を複数回取得するともに、前記車両の移動速度を取得する取得部と、前記取得部によって取得された複数の前記物体距離と、前記移動速度と、に基づいて、前記物体の高さを判定する判定部と、を備える。
【0007】
このような構成によれば、送受信部の位置によらず、物体距離と移動速度とに基づいて、物体の高さを判定することができる。よって、車両の設計の自由度を損なうことなく物体の高さを判定することができる。
【0008】
前記物体検出装置では、例えば、前記判定部は、前記複数回における所定の回の前記物体距離と前記複数回における前記所定の回の後の回の前記物体距離との差分の絶対値と、前記移動速度に基づいて算出される前記所定の回から前記後の回までの前記車両の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、前記物体の高さは前記送受信部の取り付け高さ以上であると判定する。
【0009】
このような構成によれば、例えば、高さが送受信部の取り付け高さ以上の物体を検出することができる。
【0010】
前記物体検出装置では、例えば、前記判定部は、斜辺の長さを前記複数回における所定の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第1の直角三角形の隣辺の長さと、斜辺の長さを前記複数回における前記所定の回の後の回の前記物体距離とし対辺の長さを前記送受信部の取り付け高さとする第2の直角三角形の隣辺の長さと、の差分の絶対値と、前記移動速度に基づいて算出される前記所定の回から前記後の回までの前記車両の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、前記物体の高さは前記送受信部の取り付け高さ未満であると判定する。
【0011】
このような構成によれば、例えば、高さが送受信部の取り付け高さ未満である物体を検出することができる。
【0012】
前記物体検出装置は、例えば、前記車両の幅方向の位置が異なる複数の前記送受信部を備える。
【0013】
このような構成によれば、例えば、車両の幅方向に並べられた複数の送受信部ごとに物体の高さの判定をすることができる。よって、車両の周囲の比較的広範囲に位置する物体の高さを判定することができる。
【0014】
本開示の一例としての物体検出方法は、物体検出装置で実行される物体検出方法であって、車両に搭載された送受信部による送信波の送信と前記送受信部による物体からの反射波の受信との結果に基づいて検出される前記送受信部から前記物体までの距離である物体距離を複数回取得するともに、前記車両の移動速度を取得するステップと、取得された複数の前記物体距離と、前記移動速度と、に基づいて、前記物体の高さを判定するステップと、を含む。
【0015】
このような構成によれば、送受信部の位置によらず、物体距離と移動速度とに基づいて、物体の高さを判定することができる。よって、車両の設計の自由度を損なうことなく物体の高さを判定することができる。
【0016】
本開示の一例としてのプログラムは、コンピュータを、車両に搭載された送受信部による送信波の送信と前記送受信部による物体からの反射波の受信との結果に基づいて検出される前記送受信部から前記物体までの距離である物体距離を複数回取得するともに、前記車両の移動速度を取得する取得部と、前記取得部によって取得された複数の前記物体距離と、前記移動速度と、に基づいて、前記物体の高さを判定する判定部と、として機能させる。
【0017】
このような構成によれば、送受信部の位置によらず、物体距離と移動速度とに基づいて、物体の高さを判定することができる。よって、車両の設計の自由度を損なうことなく物体の高さを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両の構成の一例を示す上面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車両制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る物体検出装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態において物体を検出する際のエコー情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る物体検出装置が実行する物体の高さの判定方法を説明する図であって、物体の高さが送受信部の取り付け高さ以上の場合の図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る物体検出装置が実行する物体の高さの判定方法を説明する図であって、物体の高さが送受信部の取り付け高さ未満の場合の図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る物体検出装置が実行する処理(物体検出方法)の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び効果は一例であって、本発明は以下の記載内容に限定されるものではない。
【0020】
図1は、実施形態に係る車両1の構成の一例を示す上面図である。車両1は、本実施形態に係る物体検出装置が搭載される車両の一例である。本実施形態に係る物体検出装置は、車両1から超音波を送信し物体からの反射波を受信することにより取得されるTOF(Time Of Flight)、ドップラーシフト情報等に基づき、車両1の周辺に存在する物体を検出する装置である。
【0021】
本実施形態に係る物体検出装置は、複数の送受信部21A~21H(以下、複数の送受信部21A~21Hを区別する必要がない場合には送受信部21と略記する。)を有する。各送受信部21は、車両1の外装としての車体2に設置され、車体2の外側へ向けて超音波(送信波)を送信し、車体2の外側に存在する物体からの反射波を受信する。
図1に示す例では、車体2の前端部に複数(一例として4つ)の送受信部21A~21Dが配置され、後端部に複数(一例として4つ)の送受信部21E~21Hが配置されている。複数の送受信部21A~21Dは、車両1の幅方向の位置が異なる。また、複数の送受信部21E~21Hは、車両の幅方向の位置が異なる。なお、送受信部21の数及び設置位置は上記例に限定されるものではない。
【0022】
図2は、実施形態に係る車両制御装置10の構成の一例を示すブロック図である。車両制御装置10は、物体検出装置11及びECU12を含む。車両制御装置10は、物体検出装置11から出力される情報に基づいて車両1を制御するための処理を行う。
【0023】
物体検出装置11は、複数の送受信部21及び制御部22を含む。各送受信部21は、圧電素子等を利用して構成される振動子31、増幅器等を含み、振動子31の振動により超音波の送受信を実現するものである。具体的には、各送受信部21は、振動子31の振動に応じて発生する超音波を送信波として送信し、当該送信波が物体Оにより反射された反射波によりもたらされる振動子31の振動を検出する。当該物体Оには、車両1が接触を避けるべき物体Oと、車両1が走行する路面Gとが含まれる。振動子31の振動は、電気信号に変換され、当該電気信号に基づいて、物体Оからの反射波の強度(振幅)の経時的変化を示すエコー情報を取得できる。当該エコー情報に基づいて、送受信部21(車体2)から物体Оまでの距離に対応するTOF等を取得できる。
【0024】
エコー情報は、1つの送受信部21により取得されるデータに基づいて生成されてもよいし、複数の送受信部21のそれぞれにより取得される複数のデータに基づいて生成されてもよい。例えば、車体2の前方の存在する物体Оについてのエコー情報は、車体2の前方に配置された4つの送受信部21A~21D(
図1参照)のうちの2つ以上により取得された2以上のデータ(例えば平均値等)に基づいて生成されてもよい。同様に、車体2の後方の存在する物体Оについてのエコー情報は、車体2の後方に配置された4つの送受信部21E~21H(
図1参照)のうちの2つ以上により取得された2以上のデータに基づいて生成されてもよい。
【0025】
なお、
図2に示す例では、送信波の送信と反射波の受信との両方が単一の振動子31を利用して行われる構成が例示されているが、送受信部21の構成はこれに限定されるものではない。例えば、送信波の送信用の振動子と反射波の受信用の振動子とが個別に設けられた構成のように、送信側と受信側とが分離された構成であってもよい。
【0026】
制御部22は、入出力装置41、記憶装置42、及びプロセッサ43を含む。入出力装置41は、制御部22と外部(送受信部21、ECU12等)との間で情報の送受信を実現するためのインターフェースデバイスである。記憶装置42は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置を含む。プロセッサ43は、制御部22の機能を実現するための各種処理を実行する集積回路であり、例えばプログラムに従い動作するCPU(Central Processing Unit)、特定用途向けに設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含む。プロセッサ43は、記憶装置42に記憶されたプログラムを読み出して実行することで各種の演算処理及び制御処理を実行する。
【0027】
ECU12は、物体検出装置11等から取得される各種情報に基づき、車両1を制御するための各種処理を実行するユニットである。ECU12は、入出力装置51、記憶装置52、及びプロセッサ53を有する。入出力装置51は、ECU12と外部機構(物体検出装置11、車速センサ54、駆動機構、制動機構、操舵機構、変速機構、車内ディスプレイ、スピーカ等)との間で情報の送受信を実現するためのインターフェースデバイスである。記憶装置52は、ROM、RAM等の主記憶装置、HDD、SSD等の補助記憶装置を含む。プロセッサ53は、ECU12の機能を実現するための各種処理を実行する集積回路であり、例えばCPU、ASIC等を含む。プロセッサ53は、記憶装置52に記憶されたプログラムを読み出して各種の演算処理及び制御処理を実行する。
【0028】
車速センサ54は、例えば、車両1の車輪の近傍に設けられたホール素子を有し、車輪の回転量又は単位時間当たりの回転数を検出するセンサである。車速センサ54は、検出した回転量又は回転数を示す車輪速パルス数を、車速を算出するためのセンサ値として出力する。ECU12は、車速センサ54から取得したセンサ値に基づいて車両1の移動速度(車速)や移動量等を算出することができる。
【0029】
図3は、実施形態に係る物体検出装置11の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る物体検出装置11は、取得部101及び判定部102を含む。これらの機能的構成要素101,102は、
図2に例示するような物体検出装置11のハードウェア構成要素、及びファームウェア、プログラム等のソフトウェア構成要素の協働により実現される。
【0030】
取得部101は、各種情報を取得する。例えば、取得部101は、送受信部21により取得されたデータを処理し、各種情報を生成する。取得部101は、例えば、振動子31の振動に対応する電気信号に対する増幅処理、フィルタ処理、包絡線処理等を行い、送受信部21により送信され物体Оにより反射された反射波の強度(振幅)の経時的変化を示すエコー情報を生成する。当該エコー情報に基づいて、車両1の周辺に存在する物体Оに対応するTOFを検出し、送受信部21(車体2)から物体Оまでの距離(以後、物体距離とも称する)を算出すなわち取得する。取得部101は、送受信部21の送信波の送信及び反射波の受信である送受信ごとに物体距離を取得する。すなわち、取得部101は、物体距離を複数回取得する。
【0031】
図4は、実施形態において物体Oを検出する際のエコー情報の一例を示す図である。
図4には、送受信部21が送受信する超音波の強度の経時的変化を示すエコー情報としての包絡線L11が例示されている。
図4に示すグラフにおいて、横軸は時間(TOF)に対応し、縦軸は送受信部21により送受信される超音波の強度に対応する。
【0032】
包絡線L11は、振動子31の振動の大きさを示す強度の経時的変化を示している。この包絡線L11からは、振動子31がタイミングt0から時間Taだけ駆動されて振動することで、タイミングt1で送信波の送信が完了し、その後タイミングt2に至るまでの時間Tbの間、慣性による振動子31の振動が減衰しながら継続する、ということが読み取れる。従って、
図4に示されるグラフにおいては、時間Tbが、いわゆる残響時間に対応する。
【0033】
包絡線L11は、送信波の送信が開始したタイミングt0から時間Tpだけ経過したタイミングt4で、振動子31の振動の大きさが検出閾値Th1以上となるピークを迎える。この検出閾値Th1は、振動子31の振動が検出対象である物体O(他車両、構造物、歩行者等)からの反射波の受信によってもたらされたものか、又は、検出対象の物体O以外の物体(例えば路面G等)からの反射波の受信によってもたらされたものかを識別するために設定される値である。検出閾値Th1以上のピークを有する振動は、検出対象の物体Oからの反射波の受信によってもたらされたものとみなすことができる。
【0034】
本例の包絡線L11では、タイミングt4以降で振動子31の振動が減衰していることが示されている。従って、タイミングt4は、物体Oからの反射波の受信が完了したタイミング、換言すればタイミングt1で最後に送信された送信波が反射波として戻ってくるタイミングに対応する。
【0035】
また、包絡線L11において、タイミングt4におけるピークの開始点としてのタイミングt3は、物体Oからの反射波の受信が開始したタイミング、換言すればタイミングt0で最初に送信された送信波が反射波として戻ってくるタイミングに対応する。従って、タイミングt3とタイミングt4との間の時間ΔTは、送信波の送信時間としての時間Taと等しくなる。
【0036】
以上のことから、TOFを利用して超音波の送受信元から物体Oまでの距離を求めるためには、送信波が送信され始めたタイミングt0と反射波が受信され始めたタイミングt3との間の時間Tfを求めることが必要となる。この時間Tfは、タイミングt0と反射波の強度が検出閾値Th1を超えてピークを迎えるタイミングt4との差分としての時間Tpから、送信波の送信時間としての時間Taに等しい時間ΔTを差し引くことで求めることができる。
【0037】
送信波が送信され始めたタイミングt0は、物体検出装置11が動作を開始したタイミングとして容易に特定することができ、送信波の送信時間としての時間Taは、設定等によって予め定められている。従って、反射波の強度が検出閾値Th1以上となるピークを迎えるタイミングt4を特定することにより、送受信元から物体Oまでの距離(物体距離)を求めることができる。取得部101は、例えば上記のような方法により物体距離を算出する。
【0038】
また、取得部101は、車両1の移動速度をECU12から受信すなわち取得する。なお、取得部101は、車速センサ54のセンサ値を受信して、当該センサ値に基づいて車両1の移動速度を算出してもよい。
【0039】
判定部102は、取得部101によって取得された複数の物体距離と、車両1の移動速度と、に基づいて、物体Оの高さ(以後、物体高さH2とも称する)を判定する。判定部102は、例えば、物体Оの高さが送受信部21の取り付け高さ(以後、送受信部高さH1とも称する)以上であるか否かを判定することができる。ここで、物体Оの高さ及び送受信部21の取り付け高さは、例えば路面Gからの高さである。すなわち、路面Gは、物体Оの高さ及び送受信部21の高さの基準である。送受信部高さH1は、路面Gから送受信部21の所定位置(例えば振動子31の中心等)までの高さであり、既知の値である。
【0040】
図5は、実施形態に係る物体検出装置11が実行する物体Оの高さの判定方法を説明する図であって、物体Оの高さが送受信部21の取り付け高さ以上の場合の図である。判定部102は、下記の方法を用いて、物体Оの高さが送受信部21の取り付け高さ以上であると判定することができる。ここで、
図5は、送受信部21が位置P1から位置P2に移動するように車両1が移動し、位置P1と位置P2とのぞれぞれで送受信部21の送受信が行われた場合の例である。すなわち、位置P1が送受信部21による所定の回の送受信が行われた位置であり、位置P2が送受信部21による所定の回の後の回(一例として次の回)の送受信が行われた位置である。このときの車両1の移動距離Yは、位置P2と位置P1との間の距離であり、車両1の移動速度と、上記所定の回から上記後の回までの時間と、の積によって算出される。ここで、所定の回すなわち位置P1における送受信部21と物体Оとの距離を距離F1とし、所定の回の後の回すなわち位置P2における送受信部21と物体Оとの距離を距離F2とする。判定部102は、距離F1と距離F2との差分の絶対値と、車両1の移動距離Yと、の差分の絶対値が、閾値K以下の場合に、物体高さH2は送受信部高さH1以上であると判定する。すなわち、判定部102は、下記の式(1)が成立する場合に、物体高さH2は送受信部高さH1以上であると判定する。
||(F1-F2)|-Y|≦K ・・・(1)
【0041】
ここで、閾値Kは、一例として「0」である。すなわち、判定部102は、距離F1と距離F2との差分の絶対値と、車両1の移動距離Yとが一致した場合に、物体高さH2は送受信部高さH1以上であると判定する。なお、閾値Kは、「0」よりも大きい値であってもよい。例えば、閾値Kは、TОFのばらつきに応じた距離F1のばらつきと距離F2とのばらつきとの差分の最大値であってもよく、例えば、2~3[cm]であってよい。換言すると、判定部102は、距離F1と距離F2との差分の絶対値と、車両1の移動距離Yと、の差分の絶対値が、予め決められた範囲内である場合に、物体高さH2は送受信部高さH1以上であると判定してもよい。なお、閾値は、上記に限定されず、送受信部21の取り付け位置のばらつき等を考慮して設定されてよい。また、上記所定の回から次の回までの時間は、検出周期とも称される。また、所定の回は、任意の回や基準回、ある回等とも称される。
【0042】
図6は、実施形態に係る物体検出装置11が実行する物体Оの高さの判定方法を説明する図であって、物体Оの高さが送受信部21の取り付け高さ未満の場合の図である。判定部102は、下記の方法を用いて、物体Оの高さが送受信部21の取り付け高さ未満であると判定することができる。ここで、
図6は、
図5と同様に、送受信部21が位置P1から位置P2に移動するように車両1が移動し、位置P1と位置P2とのぞれぞれで送受信部21の送受信が行われた場合の例である。
【0043】
判定部102は、位置P1,P2ごとに直角三角形R1,R2を作成して、当該直角三角形R1,R2に基づいて物体Оの高さを判定する。直角三角形R1,R2は、それぞれ、斜辺R1a,R2aと、対辺R1b,R2bと、隣辺R1c,R2cと、を有する。直角三角形R1は、第1の直角三角形の一例であり、直角三角形R2は、第2の直角三角形の一例である。
【0044】
斜辺R1a,R2aは、各位置P1,P2での送受信部21と物体Оとに亘る辺であり、斜辺R1a,R2aの長さは、各位置P1,P2での距離F1,F2である。
【0045】
対辺R1b,R2bは、路面Gと送受信部21とに亘る辺であり、対辺R1b,R2bの長さは、送受信部高さH1である。
【0046】
隣辺R1c,R2cは、車両1の移動方向に沿った辺であって、路面Gに沿う。隣辺R1c,R2cの長さD1,D2は、以下の式(2)、(3)で示される。
D1=√((F1)2-(H1)2) ・・・(2)
D2=√((F2)2-(H1)2) ・・・(3)
【0047】
判定部102は、隣辺R1cの長さD1と隣辺R2cの長さD2との差分の絶対値と、車両1の移動速度に基づいて算出される所定の回から後の回までの車両1の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、物体高さH2は送受信部高さH1未満であると判定する。すなわち、判定部102は、下記の式(4)が成立する場合に、物体高さH2は送受信部高さH1未満であると判定する。
||(D1-D2)|-Y|≦K ・・・(4)
【0048】
なお、物体高さH2が送受信部高さH1未満である物体Оは、低物体や低段差とも称される。また、物体0は、障害物とも称される。また、検出対象(判定対象、静止対象)の物体Оが壁の場合、反射波がマルチパスとなり物体Оと路面Gとの境界からも送受信部21に反射する場合が有り得るが、この場合の反射波も壁からの反射波であるとして上記処理を行ってよい。
【0049】
図7は、実施形態に係る物体検出装置11が実行する処理(物体検出方法)の一例を示すフローチャートである。
図7の処理は、複数の送受信部21のそれぞれに対して行われる。
【0050】
取得部101が、物体距離及び車両1の移動距離を取得する(S101)。物体距離は、送受信部21によるN回(一例として2回)の超音波の送受信のそれぞれにおける物体距離である。ここで、上記N回が2回の場合には、所定の回は、1回目の回であり、後の回は、2回目の回である。
【0051】
次に、判定部102が、||(F1-F2)|-Y|≦Kであるか否かを判定する(S102)。判定部102は、||(F1-F2)|-Y|≦Kであると判定した場合(S102:Yes)、物体高さは送受信部高さ以上であると判定する(S103)。判定部102は、||(F1-F2)|-Y|≦Kではないと判定した場合(S102:No)、S104に進む。
【0052】
S104において、判定部102は、||(D1-D2)|-Y|≦Kであるか否かを判定する。判定部102は||(D1-D2)|-Y|≦Kであると判定した場合(S104:Yes)、物体高さは送受信部高さ未満であると判定する(S105)。判定部102は、||(D1-D2)|-Y|≦Kではないと判定した場合(S104:No)、物体高さを判定せずに(S106)、S101に戻る。
【0053】
以上のように、本実施形態の物体検出装置11は、取得部101と、判定部102と、を備える。取得部101は、車両1に搭載された送受信部21による送信波の送信と送受信部21による物体Оからの反射波の受信との結果に基づいて検出される送受信部21から物体Оまでの距離である物体距離を複数回取得するともに、車両1の移動速度を取得する。判定部102は、取得部101によって取得された複数の物体距離と、移動速度と、に基づいて、物体Оの高さを判定する。
【0054】
このような構成によれば、送受信部21の位置によらず、物体距離と移動速度とに基づいて、物体Оの高さを判定することができる。よって、車両1の設計の自由度を損なうことなく物体Оの高さを判定することができる。
【0055】
また、判定部102は、複数回における所定の回の物体距離と複数回における所定の回の後の回の物体距離との差分の絶対値と、移動速度に基づいて算出される所定の回から後の回までの車両1の移動距離と、の差分の絶対値が、閾値以下の場合に、物体Оの高さは送受信部21の取り付け高さ以上であると判定する。
【0056】
このような構成によれば、例えば、高さが送受信部21の取り付け高さ以上の物体Оを検出することができる。
【0057】
また、判定部102は、斜辺R1aの長さを複数回における所定の回の物体距離とし対辺R1bの長さを送受信部21の取り付け高さとする直角三角形R1(第1の三角形)の隣辺R1cの長さと、斜辺R2aの長さを複数回における所定の回の後の回の物体距離とし対辺R1bの長さを送受信部21の取り付け高さとする直角三角形R2(第2の三角形)の隣辺R1cの長さと、の差分の絶対値と、移動速度に基づいて算出される所定の回から後の回までの車両1の移動距離との差分の絶対値が、閾値以下の場合に、物体Оの高さは送受信部21の取り付け高さ未満であると判定する。
【0058】
このような構成によれば、例えば、高さが送受信部21の取り付け高さ未満である物体Оを検出することができる。
【0059】
また、物体検出装置11は、車両1の幅方向に並べられた複数の送受信部21を備える。
【0060】
このような構成によれば、例えば、車両1の幅方向に並べられた複数の送受信部21ごとに物体Оの高さの判定をすることができる。よって、車両1の周囲の比較的広範囲に位置する物体Оの高さを判定することができる。また、複数の送受信部21ごとに物体Оの高さ判定の処理を実行することができるので、例えば、近距離に物体Оとして段差が近距離に複数有る場合でも、それぞれの段差に対して高さの判定処理を行うことができるので、複数の段差を一つの壁と誤判定するのが抑制されやすい。
【0061】
上記実施形態における各種機能を実現するための処理をコンピュータ(例えば制御部22のプロセッサ43、ECU12のプロセッサ53等)に実行させるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供することが可能なものである。また、当該プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布されてもよい。
【0062】
なお、上記の例では、S101において、取得部101が、送受信部21による2回の超音波の送受信のそれぞれにおける物体距離と車両1の移動距離とを取得した例が示されたが、これに限定されない。例えば、S101において、取得部101は、送受信部21による3回以上の超音波の送受信のそれぞれにおける物体距離と車両1の移動距離とを取得してもよい。この場合には、例えば、送受信部21による連続する2回の超音波の送受信ごとに、距離F1と距離F2と車両1の移動距離とそれぞれ取得する。すなわち、取得部101は、複数の距離F1と複数の距離F2と車両1の複数の移動距離とを取得する。そして、判定部102は、複数の距離F1の平均値と、複数の距離F21の平均値と、複数の移動距離の平均値と、を用いて、S102以降の処理を行ってもよい。
【0063】
ここで、複数の送受信部21が車両1の上下方向にずれて配置されていない場合には、送受信部高さよりも高い位置にある物体О(例えば、駐車場の出入口において路面Gの上方に設置され水平方向に延びる遮断棒等)に対しては、物体Оと路面Gとの境界からの反射波と判定する可能性がある。この場合には、複数の送受信部21を車両1の上下方向にずれして配置して、各送受信部21の送受信に対して上記処理を実行することにより、送受信部21の高さ位置と、送受信部21の送受信結果とに基づいて、物体Оが送受信部高さよりも高い位置にあるのか否かを判定することができ、ひいては、物体Оが遮断棒等の場合に段差と誤判定するのが抑制される。
【0064】
以上、本開示の実施形態について説明したが、上述した実施形態及びその変形例はあくまで例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態及び変形例は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、及び変更を行うことができる。上述した実施形態及び変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1…車両、11…物体検出装置、21,21A~21H…送受信部、101…取得部、102…判定部、O…物体、R1…直角三角形(第1の直角三角形)、R2…直角三角形(第2の直角三角形)、R1a,R2a…斜辺、R1b,R2b…対辺、R1c,R2c…隣辺。