(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】故障検出装置及び故障検出方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20241001BHJP
G01R 31/64 20200101ALI20241001BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241001BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20241001BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R31/64
H02J7/00 Y
H02J7/02 H
(21)【出願番号】P 2021116679
(22)【出願日】2021-07-14
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】溝口 朝道
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114374(JP,A)
【文献】特開平11-118860(JP,A)
【文献】特開2002-247771(JP,A)
【文献】特開2015-177555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
H02J 7/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信経路(50)を介して送信装置から交流信号
が入力
される受信装置に設けられ、前記通信経路上に設けられたコンデンサ部(60)の故障を検出する故障検出装置(30,40)において、
前記コンデンサ部は、直流電流を遮断するように、直列に接続された複数のコンデンサ(61,62)によって構成され、
前記通信経路を介して前記送信装置から予め定められた検出用信号
が入力
される信号入力部(41)と、
前記信号入力部
に入力
された前記検出用信号の電圧変化量に基づいて、前記コンデンサ部を構成するいずれかの前記コンデンサの短絡故障を検出する検出部(44)と、を有する故障検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記検出用信号の出力開始時からの電圧変化量が所定量に達するまでの時間が所定時間以上である場合には、短絡故障していると検出する請求項1に記載の故障検出装置。
【請求項3】
前記送信装置からハイレベル信号とローレベル信号とが出力されるように構成されており、
前記受信装置は、前記信号入力部
に入力
された信号が閾値電圧以上の場合には、ハイレベル信号
が入力
されたと判定する一方、前記閾値電圧未満の場合には、ローレベル信号
が入力
されたと判定する信号判定部(53)を備え、
前記検出部は、前記送信装置から前記検出用信号であるハイレベル信号
が出力さ
れてから前記信号判定部によってローレベル信号
が入力
されたと判定されるまでの時間が所定時間以上である場合、又は前記送信装置から前記検出用信号であるローレベル信号
が出力さ
れてから前記信号判定部によってハイレベル信号
が入力
されたと判定されるまでの時間が所定時間以上である場合、短絡故障していると検出する請求項2に記載の故障検出装置。
【請求項4】
前記検出用信号として、前記送信装置からハイレベル信号とローレベル信号とが所定周期で交互に出力されるように構成されており、
前記受信装置は、
前記信号入力部
に入力
された信号が閾値電圧以上の場合には、ハイレベル信号
が入力
されたと判定する一方、前記閾値電圧未満の場合には、ローレベル信号
が入力
されたと判定する信号判定部(53)と、
前記信号入力部
に入力される信号の遷移タイミング及び通信周期に基づいて設定されるサンプリングタイミングにおいて、前記信号判定部の判定結果を取得し、当該判定結果に基づいて前記送信装置からハイレベル信号とローレベル信号のうちいずれが出力されたかを判定する論理判定部(44)と、を備え、
前記検出部は、前記送信装置から前記検出用信号
が出力さ
れてから、前記通信周期を徐々に変化させて、前記論理判定部による判定結果が反転するタイミングを特定し、反転したタイミングにおける通信周期により、前記電圧変化量が所定量に達するまでの時間を特定する請求項2に記載の故障検出装置。
【請求項5】
故障検出時おいて、前記送信装置から前記ハイレベル信号
が出力さ
れる場合、前記閾値電圧を高く設定する一方、前記ローレベル信号
が出力さ
れる場合、前記閾値電圧を低く設定する閾値設定部(70)を備える請求項3又は4に記載の故障検出装置。
【請求項6】
前記送信装置と前記受信装置との間には、複数の前記通信経路(151,152)が存在し、
故障検出時において、複数の前記通信経路のうち1つを選択する選択部(201)を備え、
前記信号入力部
には、故障検出時において、前記選択部により選択された前記通信経路を介して前記送信装置から前記検出用信号
が入力
され、
前記検出部は、故障検出時において、前記信号入力部
に入力
された前記検出用信号の電圧変化量に基づいて、前記選択部により選択された前記通信経路における前記コンデンサ部を構成するいずれかの前記コンデンサの短絡故障を検出する請求項1~5のうちいずれか1項に記載の故障検出装置。
【請求項7】
前記送信装置と前記受信装置との間には、対となる前記通信経路(50A,50B)が存在し、前記送信装置と前記受信装置は、その対となる前記通信経路を介して、差動通信を行うように構成されており、
前記信号入力部
には、対となる前記通信経路を介して前記送信装置から前記検出用信号
が入力
され、
前記検出部は、前記信号入力部
に入力
された前記検出用信号の電圧変化量に基づいて、対となる前記通信経路における前記コンデンサ部を構成するいずれかの前記コンデンサの短絡故障を検出する請求項1
又は2に記載の故障検出装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記電圧変化量に基づいて、短絡故障しているコンデンサの個数を検出する請求項
7に記載の故障検出装置。
【請求項9】
通信経路(50)を介して送信装置から交流信号を入力する受信装置に設けられ、前記通信経路上に設けられたコンデンサ部(60)の故障を検出する故障検出装置(30,40)が実施する故障検出方法において、
前記コンデンサ部は、直流電流を遮断するように、直列に接続された複数のコンデンサ(61,62)によって構成されており、
前記通信経路を介して前記送信装置から予め定められた検出用信号
が入力
される信号入力ステップ(S103)と、
前記信号入力ステップにおいて入力
された前記検出用信号の電圧変化量に基づいて、前記コンデンサ部を構成するいずれかの前記コンデンサの短絡故障を検出する検出ステップ(S104~S108)と、を有する故障検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡を検出する故障検出装置及び故障検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電池セル毎に、電圧などの電池状態を監視する電池監視装置では、電池監視装置の監視結果等が各電池監視装置間で順次シリアル伝送されるように、各電池監視装置をデイジーチェーン方式により接続される構成が知られている。この場合、各電池監視装置間で基準電圧(グランド)が異なることから、各電池監視装置間における通信線には、通信線の電流を制限するために、絶縁素子としてコンデンサなどが設けられることが一般的である。
【0003】
このような通信線に設けられたコンデンサが短絡故障すると、過電流や過電圧により電池監視装置に不具合が生じる。そこで、特許文献1や特許文献2に記載されている方法で、短絡故障時における過電流等を防止し、電池監視装置に不具合が生じることを防止している。
【0004】
特許文献1,2における過電流等を防止方法について簡単に説明する。特許文献1では、短絡故障し、制限電圧以上の電圧が印加された際に、保護素子を介して通信線を基準線(グランド)に短絡させ、過電流等が流れることを防止している。特許文献2では、複数のコンデンサを直列に接続することにより、いずれか一方のコンデンサが短絡故障しても、通信を維持しつつ、過電流等が流れることを防止している。
【0005】
ところで、特許文献1の方法では、短絡故障した際に、電池監視装置は通信不能となる。そして、電池監視装置から電池状態を受信できない状態となった場合、電気自動車など、モータ以外に駆動源がない車両においては、安全を確保することができず、走行不能に陥るといった問題があった。
【0006】
一方、特許文献2の方法では、いずれか一方のコンデンサが短絡故障しても通信可能であるため、電池監視装置から電池状態を受信することができる。しかしながら、両方のコンデンサが短絡故障してしまえば通信不能となるので、一方のコンデンサが短絡故障した時点で短絡故障を検出する必要がある。そこで、特許文献2では、コンデンサ間の中間電圧を検出し、コンデンサの短絡故障を検出するための故障検出回路を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-222216号公報
【文献】特開2016-114374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2では、電源監視装置とは別に、高電圧を検出可能な故障検出回路を別途設ける必要があり、部品点数が増え、装置が複雑となり、コストが高くなるといった問題がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成で短絡故障を検出可能な故障検出装置及び故障検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、通信経路を介して送信装置から交流信号を入力する受信装置に設けられ、前記通信経路上に設けられたコンデンサ部の故障を検出する故障検出装置において、前記コンデンサ部は、直流電流を遮断するように、直列に接続された複数のコンデンサによって構成され、前記通信経路を介して前記送信装置から予め定められた検出用信号を入力する信号入力部と、前記信号入力部が入力した前記検出用信号の電圧変化量に基づいて、前記コンデンサ部を構成するいずれかの前記コンデンサの短絡故障を検出する検出部と、を有する。
【0011】
コンデンサ部は、直列に接続された複数のコンデンサにより構成されている。いずれかのコンデンサが短絡故障すると、コンデンサ部における合成容量は大きくなり、充放電に係る時定数が大きくなる。その結果、予め定められた検出用信号がコンデンサに印加された場合、電圧が緩やかに変化することとなる。
【0012】
このため、検出部は、検出用信号の電圧変化量に基づいて、コンデンサ部を構成するいずれかのコンデンサの短絡故障を検出することが可能となる。つまり、受信装置に故障検出するための回路を設ける必要はなく、簡素な構成で故障検出を実現することが可能となる。
【0013】
なお、コンデンサ部において、いずれかのコンデンサが短絡故障しても直流電流の遮断を継続することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】通常時における信号の入出力タイミングを説明するためのタイミングチャート。
【
図4】故障検出時における信号の入出力タイミングを説明するためのタイミングチャート。
【
図6】充電時間及び放電時間を説明するためのタイミングチャート。
【
図7】マンチェスタ符号化データを用いた通信方法についての説明を示すタイミングチャート。
【
図8】第2実施形態における信号の入出力タイミングを説明するためのタイミングチャート。
【
図9】第2実施形態における信号の入出力タイミングを説明するためのタイミングチャート。
【
図10】第2実施形態における故障検出処理のフローチャート。
【
図11】第3実施形態における電池測定システムの構成図。
【
図12】第3実施形態における送受信部及びコンデンサ部を示す構成図。
【
図13】第3実施形態における充電時間を説明するためのタイミングチャート。
【
図14】変形例における電池測定システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、故障検出装置を車両(例えば、電気自動車)に適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。詳しくは、本実施形態の故障検出装置は、車両において、蓄電池の状態を測定する電池測定システムを構成する受信装置に適用される。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0016】
(第1実施形態)
図1に示すように、電池測定システム100は、組電池10と、組電池10に接続され、組電池10の状態を監視する電池監視装置20と、電池監視装置20に接続され、電池監視装置20を制御するECU30と、を備える。
【0017】
組電池10は、例えば百V以上となる端子間電圧を有し、複数の電池モジュール11が直列に接続されて構成されている。各電池モジュール11は、複数の電池セル12が直列に接続されて構成されている。電池セル12として、例えば、リチウムイオン蓄電池や、ニッケル水素蓄電池を用いることができる。
【0018】
電池監視装置20は、電池モジュール11ごとに設けられ、各電池セル12の電池状態を検出(監視)する。電池状態には、電圧、電流、SOC、SOH、内部インピーダンス、電池温度等が含まれていてもよい。本実施形態において、各電池セル12の電池状態として電圧を検出するものとして説明する。また、電池監視装置20は、電池モジュール11ごとに限らず、複数の電池セル12ごとに、若しくは、電池セル12ごとに、あるいは組電池10ごとに設けてもよい。
【0019】
電池監視装置20は、制御基板21を備え、制御基板21上に、監視IC40などが設けられている。電池監視装置20は、外部のECU30や他の電池監視装置20に対してデイジーチェーン方式で接続されており、ECU30や他の電池監視装置20と通信可能に構成されている。電池監視装置20は、通信元(送信元、上流側)と通信先(送信先、下流側)がそれぞれ予め決められている。
【0020】
監視IC40は、受信部41や、送信部42、電圧検出部43などの各種機能を備えている。これらの機能は、監視IC40に設けられた記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより、又は監視IC40に設けられた回路等のハードウェアにより、又はそれら両方によって実現される。
【0021】
受信部41は、ECU30や他の電池監視装置20等の通信元から信号を受信するためのものである。この受信部41を備えることにより、ECU30や監視IC40は、受信装置として機能する。送信部42は、ECU30や他の電池監視装置20等の通信先に対して信号を送信するためのものである。この送信部42を備えることにより、ECU30や監視IC40は、送信装置として機能する。
【0022】
電圧検出部43は、受信部41を介して、監視対象の電池セル12を指定するセル選択指令を示す制御信号を入力すると、セル選択指令により指定された監視対象とする電池セル12の電圧を検出する。そして、電圧検出部43は、送信部42を介して検出結果を示す制御信号を送信する。
【0023】
ECU30は、電池監視装置20と同様に受信部41や送信部42を有する。また、ECU30は、各電池セル12の電池状態を監視するために各種制御を実行する制御部31を備え、各種制御信号を送受信する。例えば、ECU30は、所定のタイミングで、監視対象とする電池セル12を選択し、選択した電池セル12の電圧を要求するセル選択指令(制御信号)を各電池監視装置20に送信する。そして、ECU30は、各電池監視装置20から各電池セル12の電池状態の検出結果(制御信号)を受信し、検出結果に応じて異常判定処理などを実行する。
【0024】
次に、
図2に基づいて、受信部41及び送信部42の具体的な構成について説明する。ここでは、電池監視装置20の受信部41及び送信部42を例示して説明するが、ECU30の受信部41及び送信部42も同様である。
【0025】
送信部42は、送信する制御信号に基づいて交流信号を発生させる発信器51と、バッファ52を有している。この送信部42は、通信経路50に接続されており、通信経路50を介して受信部41に接続されている。
図3(a)に示すように、送信部42は、ハイレベル信号とローレベル信号からなる交流信号(2値信号)を出力することによって制御信号を送信するように構成されている。
【0026】
送信部42は、送信側グランドGA2に接地されており、送信側グランドGA2の電圧を基準(0V)として、ハイレベル信号とローレベル信号からなる交流信号を出力する。ハイレベル信号は、送信側グランドGA2の電圧を基準(0V)として、例えば5Vの信号であり、ローレベル信号は、送信側グランドGA2の電圧を基準(0V)として、例えば0Vの信号である。本実施形態において、送信部42が出力する交流信号を、信号Voと示し、送信部42が出力するハイレベル信号をハイレベル信号Vpoと示し、送信部42が出力するローレベル信号をローレベル信号Vnoと示す場合がある。
【0027】
受信部41は、差動アンプ53が設けられており、差動アンプ53の非反転入力端子に通信経路50が接続されている。
図3(b)に示すように、差動アンプ53の非反転入力端子には、通信経路50を介して送信部42からの交流信号が入力される。また、差動アンプ53の反転入力端子には、閾値設定回路により生成される閾値電圧Vthが入力される。なお、差動アンプ53の非反転入力端子に入力される交流信号を、信号Viと示す場合がある。
【0028】
閾値設定回路は、抵抗体R10及び第1補助電源55の直列接続体であり、その一端は、通信経路50に接続され、他端は、受信側グランドGA1に接続される。抵抗体R10と第1補助電源55との接続点に、反転入力端子が抵抗体R20を介して接続されている。このため、閾値電圧Vthは、受信側グランドGA1の電圧を基準(0V)として設定される。第1補助電源55の電圧は、ハイレベル信号Vpoの電圧とローレベル信号Vnoの電圧との間の電圧であり、例えば、2.5Vである。したがって、本実施形態において、閾値電圧Vthは、受信側グランドGA1の電圧を基準(0V)として2.5Vの電圧となっている。
【0029】
図3(b)、
図3(c)に示すように、差動アンプ53は、非反転入力端子に入力された信号Viが閾値電圧Vthよりも高い場合、つまり、非反転入力端子と反転入力端子との間における差動電圧が基準とする論理反転閾値よりも高い場合には、ハイレベル信号Vpoが入力されたと判定する。この場合、差動アンプ53は、
図3(d)に示すように、その旨を出力する(ハイレベル信号Hを出力する)。以下、差動アンプ53が出力するハイレベル信号を、ハイレベル信号Hと示す。
【0030】
同様に、差動アンプ53は、非反転入力端子に入力された信号Viが閾値電圧Vthよりも低い場合、つまり、差動電圧が論理反転閾値よりも低い場合には、ローレベル信号Vnoが入力されたと判定する。この場合、差動アンプ53は、
図3(d)に示すように、その旨を出力する(ローレベル信号Lを出力する)。以下、差動アンプ53が出力するローレベル信号を、ローレベル信号Lと示す。
【0031】
なお、差動アンプ53は、ヒステリシス特性を有する。このため、実際には、非反転入力端子に入力された信号が閾値電圧Vthよりも所定値高い(又は低い)場合に論理が反転する。つまり、ローレベル信号Lからハイレベル信号Hに遷移する(又はハイレベル信号Hからローレベル信号Lに遷移する)。
図3(c)において、論理反転閾値のヒステリシス特性を白丸で図示している。
【0032】
監視IC40は、差動アンプ53から出力されたハイレベル信号Hとローレベル信号Lからなる交流信号に基づいて、制御信号を受信する。
【0033】
上述したように、送信部42は、送信側グランドGA2に接続されており、受信部41は、受信側グランドGA1に接続されている。例えば、
図1に示すように、送信側グランドGA2及び受信側グランドGA1は、それぞれ電池監視装置20が接続されている電池モジュール11の負極側電圧である。このため、送信側グランドGA2と、受信側グランドGA1は、電圧レベルが異なっている。したがって、送信部42と受信部41を直接接続すると、電圧レベルの違いから過電流が流れ、監視IC40等、電池監視装置20やECU30に不具合が生じる可能性がある。
【0034】
そこで、通信経路50には、直流電流を遮断する絶縁部としてコンデンサ部60が設けられ、送信部42は、コンデンサ部60を介して受信部41に接続されている。コンデンサ部60は、複数(電池監視装置20の間では2つ)の直列接続されたコンデンサ61,62(絶縁素子としてのカップリングコンデンサ)から構成されている。
図1に示すように、コンデンサ61,62のうち一方のコンデンサ61は、受信部41の側の制御基板21上に搭載されており、他方のコンデンサ62は、送信部42の側の制御基板21上に搭載されている。本実施形態のコンデンサ部60は、複数の直列接続されたコンデンサ61,62から構成されているため、いずれか1つが短絡故障しても、直流電流を遮断することが可能となっている。
【0035】
なお、送信部42からハイレベル信号Vpoが出力された場合、ハイレベル信号Vpoのほうが閾値電圧Vthよりも高いため、コンデンサ部60を構成するコンデンサ61,62が充電される。その結果、
図3(b)に示すように、非反転入力端子に入力される信号Viの電圧が低下し、
図3(c)に示すように、差動電圧も低下する(閾値電圧Vthとの差が小さくなる)。
【0036】
また、送信部42からローレベル信号Vnoが出力された場合、ローレベル信号Vnoのほうが閾値電圧Vthよりも低いため、コンデンサ61,62が放電する。その結果、
図3(b)に示すように、非反転入力端子に入力される信号Viの電圧が上昇し、
図3(c)に示すように、差動電圧も上昇する(閾値電圧Vthとの差が小さくなる)。
【0037】
なお、通信時において、交流信号の周期(ハイレベル信号Vpoとローレベル信号Vnoの切替周期)は、コンデンサ部60における充放電の時定数を考慮して設定される。このため、通常の使用において、コンデンサ部60の影響によって信号Viの電圧が変化して誤判定されることはない。
【0038】
ところで、直列接続されたコンデンサ61,62のいずれかが短絡故障すると、コンデンサ部60における合成容量が大きくなる。例えば、コンデンサ61,62が同じ容量である場合、いずれかが短絡故障すると、コンデンサ部60における合成容量は2倍となる。そして、コンデンサ部60における合成容量が大きくなれば、前述した充放電の時定数も大きくなる。その結果、コンデンサ部60における充放電に時間がかかるようになり、差動電圧が変化しにくくなる。
【0039】
本実施形態では、この原理を利用し、監視IC40は、受信部41に印加された信号Viの電圧変化量に基づいてコンデンサ部60を構成するいずれかのコンデンサ61,62の短絡故障を検出することとしている。以下、詳しく説明する。
【0040】
図1に示すように、監視IC40は、故障検出部44としての機能を備える。故障検出部44は、ソフトウェアまたはハードウェア若しくはその両方により実現される。故障検出部44は、受信部41に入力された信号Viの電圧変化量を計測し、その電圧変化量に基づいて、いずれかのコンデンサ61,62の短絡故障を検出する。電圧変化量に基づく短絡故障検出の原理について詳しく説明する。なお、説明の都合上、予め決められた検出用信号として、送信部42からハイレベル信号Vpoが出力される場合について説明するが、ローレベル信号Vnoの場合も同様である。
【0041】
図4に示すように、時点T10において、送信部42から検出用信号としてのハイレベル信号Vpoが出力されると、受信部41に入力される信号Viが遷移する。これに伴い、時点T10において、差動アンプ53に入力される信号Viの電圧が閾値電圧Vthより高くなるので、差動アンプ53は、その結果としてハイレベル信号Hを故障検出部44に出力する。
【0042】
そのまま、送信部42からハイレベル信号Vpoが出力され続けると、コンデンサ部60への充電に伴い、受信部41に入力される信号Viの電圧が変化(低下)する。このとき、コンデンサ部60の合成容量によって、充電の時定数が異なる。具体的には、いずれかのコンデンサ61,62が短絡故障すると、合成容量が大きくなり、充電の時定数が大きくなる。したがって、受信部41に入力される信号Viの電圧が、ある電圧まで変化(低下)するために費やす時間が異なる。若しくは、ある時点において、受信部41に入力される信号Viの電圧が異なる(つまり、電圧変化量が異なる)。なお、
図4では、短絡故障していないときにおける信号の様子を実線で示し、短絡故障しているときにおける信号の様子を破線で示している。
【0043】
本実施形態では、受信部41に入力される信号Viの電圧が、ある電圧まで低下するために費やす時間が、所定時間Tthよりも長くなったか否かを判定することにより、電圧変化量の大きさを判定し、短絡故障を検出している。つまり、送信部42からハイレベル信号Vpoが出力され続けても、コンデンサ部60への充電に伴い、受信部41に入力される信号Viの電圧が、いつかは閾値電圧Vthまでに低下する。このとき、差動アンプ53は、ローレベル信号Lを出力する。このため、送信部42から検出用信号であるハイレベル信号Vpoを出力させた時点から差動アンプ53からローレベル信号Lを入力するまでの時間を計測し、所定時間Tthよりも長くなったかを判定することにより、短絡故障を検出することができる。
【0044】
ただし、一般的に、受信部41に入力される信号Viの電圧が、コンデンサ部60への充電に伴って閾値電圧Vthまで低下する時間は長時間となる。そこで、本実施形態では、故障診断を行うときに、差動アンプ53の閾値電圧Vthを変更するようにしている。具体的には、故障検出を行うため、送信部42からハイレベル信号Vpoを出力させる場合、差動アンプ53の閾値電圧Vthを閾値電圧Vthよりも予め決められた値だけ高い第1閾値電圧Vth1に変更するようにしている。
図4では、白抜きの矢印でヒステリシス特性を考慮した論理反転閾値(白丸で示す)が変更されていることを図示している。なお、故障検出を行うため、送信部42からローレベル信号Vnoを出力させる場合、同様に、差動アンプ53の閾値電圧Vthを閾値電圧Vthよりも予め決められた値だけ低い第2閾値電圧Vth2に変更するようにしている。第1閾値電圧Vth1,第2閾値電圧Vth2は、時定数や所定時間Tthなどを考慮して、実験などにより設定される。
【0045】
これにより、故障検出が行われる場合、差動アンプ53は、信号Viの電圧が第1閾値電圧Vth1以下となった場合、ローレベル信号Lを出力することとなる。つまり、故障検出部44は、ハイレベル信号Vpoを出力させた時点からローレベル信号Lを入力するまでの時間(充電時間Tcに相当)が、所定時間Tthよりも長い場合には、短絡故障していると判定する。一方、故障検出部44は、ハイレベル信号Vpoを出力させた時点からローレベル信号Lを入力するまでの時間が、所定時間Tth以下の場合には、短絡故障していないと判定する。
【0046】
次に、閾値変更回路70の一例について説明する。閾値電圧Vthを変更するための閾値変更回路70は、
図2に示すように受信部41に設けられている。閾値変更回路70は、抵抗体R30と、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、第2補助電源71と、を備える。
【0047】
第2補助電源71の正極端子は、第1スイッチSW1を介して抵抗体R30の両端のうち第1端に接続されている。同様に、第2補助電源71の負極端子は、第2スイッチSW2を介して抵抗体R30の第1端に接続されている。第2補助電源71は、第1補助電源55の端子間電圧(例えば、2.5V)よりも高い端子間電圧(例えば、5.0V)を出力可能となっている。また、第2補助電源71は、受信側グランドGA1に接地されている。抵抗体R30の第2端は、抵抗体R20と反転入力端子との間に接続されている。
【0048】
そして、第1スイッチSW1がオンされ、第2スイッチSW2がオフされることにより、差動アンプ53の反転入力端子には、閾値電圧Vthよりも高い第1閾値電圧Vth1が印加される。また、第1スイッチSW1がオフされ、第2スイッチSW2がオンされることにより、差動アンプ53の反転入力端子には、閾値電圧Vthよりも低い第2閾値電圧Vth2が印加される。すなわち、閾値変更回路70は、第1スイッチSW1がオンされることにより、閾値電圧Vthを第1閾値電圧Vth1に変更し、第2スイッチSW2がオンされることにより、閾値電圧Vthを第2閾値電圧Vth2に変更する。なお、この閾値変更回路70は、一例であり、任意にその回路構成を変更してもよい。
【0049】
次に、故障検出部44が実行する故障検出処理について
図5に基づいて説明する。故障検出処理は、所定の実行タイミング、例えば、電源起動時等に実行される。なお、
図5における故障検出処理は、送信部42から検出用信号であるハイレベル信号Vpoを出力させて故障検出を行うものであるが、ローレベル信号Vnoの場合も同様であるため、説明を省略する。また、故障検出処理の開始時において、送信部42からローレベル信号Vnoが出力されていたものとして説明する。また、故障検出処理の開始前において、コンデンサ部60への充放電電流が安定して流れ(交流信号が流れ)、充放電されているものとして説明する。
【0050】
所定の実行タイミングで、故障検出部44は、故障検出処理の実行を開始して、閾値変更回路70の第1スイッチSW1をオンにする(ステップS101)。これにより、差動アンプ53の反転入力端子に入力される閾値電圧Vthが第1閾値電圧Vth1に変更される。
【0051】
次に、故障検出部44は、通信周期Tを設定する(ステップS102)。そして、故障検出部44は、通信元の送信部42に対して、検出用信号であるハイレベル信号Vpoを出力させるように指示する(ステップS103)。
【0052】
これにより、
図6に示すように、送信部42はハイレベル信号Vpoを出力し、差動アンプ53の非反転入力端子に入力される信号Viの電圧が、第1閾値電圧Vth1よりも高くなり、差動アンプ53は、ハイレベル信号Hを故障検出部44に出力する。なお、前述したように、差動アンプ53にはヒステリシス特性を有するため、実際には信号Viの電圧が、第1閾値電圧Vth1よりも所定値高くなった場合に、ハイレベル信号Hが出力される。
【0053】
次に、
図5に示すように、故障検出部44は、差動アンプ53からローレベル信号Lが出力されたか否かを判定する(ステップS104)。この判定結果が否定の場合、故障検出部44は、通信周期Tの経過後、再びステップS104の処理を実行する。つまり、故障検出部44は、通信周期Tごとに、差動アンプ53からローレベル信号Lが出力されたか否かを判定する。
【0054】
この間、送信部42はハイレベル信号Vpoの出力を継続する。このため、
図6に示すように、コンデンサ部60が充電され、差動アンプ53の非反転入力端子に入力される信号Viの電圧が徐々に低下する。そして、差動アンプ53の非反転入力端子に入力される信号Viの電圧が第1閾値電圧Vth1以下となると、差動アンプ53は、ローレベル信号Lを故障検出部44に出力する。なお、前述したように、差動アンプ53にはヒステリシス特性を有するため、実際には信号Viの電圧が、第1閾値電圧Vth1よりも所定値低くなった場合に、ローレベル信号Lが出力される。
【0055】
ステップS104の判定結果が肯定の場合、故障検出部44は、ハイレベル信号Vpoの出力時点からローレベル信号Lの出力時点までの時間(充電時間Tc)を取得し、充電時間Tcが所定時間Tthよりも短いか否かを判定する(ステップS106)。
図6において、充電時間Tcを図示する。なお、ローレベル信号Vnoを出力させて故障検出を行う場合には、ローレベル信号Vnoの出力時点からハイレベル信号Hの出力時点までの時間(放電時間Td)を測定することとなる。
【0056】
図5に示すように、ステップS106の判定結果が肯定の場合(短い場合)、故障検出部44は、コンデンサ部60が正常であると判定する(ステップS107)。一方、ステップS106の判定結果が否定の場合、故障検出部44は、いずれかのコンデンサ61,62が短絡故障していると検出する(ステップS108)。
【0057】
ステップS107,108の終了後、故障検出部44は、閾値変更回路70の第1スイッチSW1をオフにする(ステップS109)。これにより、差動アンプ53の反転入力端子に、閾値電圧Vthが入力される。また、故障検出部44は、通信元の送信部42に対して、ハイレベル信号Vpoの出力停止を指示する。その後、故障検出部44は、故障検出処理を終了する。ステップS108において、短絡故障を検出した場合、故障検出部44は、故障検出処理の終了後、その旨をECU30に通知するなど、短絡故障に係る処理を実施する。
【0058】
上記実施形態によれば、故障検出処理を実施する故障検出部44を有する監視IC40が、故障検出装置に相当する。なお、上記実施形態において、ECU30の制御部31に故障検出部44を備え、故障検出処理を実施させてもよい。この場合、ECU30が故障検出装置に相当することとなる。
【0059】
また、上記実施形態によれば、受信部41が、検出用信号を入力する信号入力部に相当する。また、故障検出部44が、コンデンサ61,62の短絡故障を検出する検出部に相当する。差動アンプ53が、信号判定部に相当する。また、閾値変更回路70が、閾値設定部に相当する。また、故障検出処理のステップS103が、信号入力ステップに相当し、ステップS104~S108が、コンデンサ61,62の短絡故障を検出する検出ステップに相当する。
【0060】
上記実施形態のような構成とすることにより、以下に示すような優れた効果を得ることができる。
【0061】
コンデンサ部60は、直列に接続された複数のコンデンサ61,62により構成されている。いずれかのコンデンサ61,62が短絡故障すると、コンデンサ部60における合成容量は大きくなり、充放電に係る時定数が大きくなる。その結果、予め定められた検出用信号を出力させている場合、受信部41が入力する信号Viの電圧が緩やかに変化することとなる。
【0062】
そこで、故障検出部44は、受信部41が入力した信号Viの信号電圧の電圧変化量に基づいて、コンデンサ部60を構成するいずれかのコンデンサ61,62の短絡故障を検出することとした。これにより、受信側の電池監視装置20に故障検出するための回路を設ける必要はなく、簡素な構成で故障検出を実現することが可能となる。なお、コンデンサ部60において、いずれかのコンデンサ61,62が短絡故障しても直流電流の遮断を継続することが可能となっている。
【0063】
故障検出部44は、検出用信号であるハイレベル信号Vpo(又はローレベル信号Vno)を出力させてからの電圧変化量が所定量に達するまでの時間が所定時間Tth以上の場合には、短絡故障していると検出する。これにより、信号Viの電圧を測定するセンサを必要としないため、簡素な構成で故障検出を実現することができる。
【0064】
より詳しくは、故障検出部44は、送信部42からハイレベル信号Vpoの出力期間中、ハイレベル信号Vpoを出力させた時からローレベル信号Lが出力される時までの時間(充電時間Tc)を測定し、その時間が所定時間Tth以上である場合、短絡故障していると検出する。同様に、故障検出部44は、送信部42からローレベル信号Vnoの出力期間中、ローレベル信号Vnoを出力させた時からハイレベル信号Hが出力される時までの時間(放電時間Td)を測定し、その時間が所定時間Tth以上である場合、短絡故障していると検出する。このように、受信部41の差動アンプ53による信号判定に基づいて、電圧変化量に対応する充電時間Tc(又は放電時間Td)を計測し、充電時間Tc(又は放電時間Td)と所定時間Tthとの比較に基づいて短絡故障を検出する。つまり、短絡故障を検出するために特別な装置(回路素子やセンサなど)がなくても、通信時に使用する信号判定を流用することにより、短絡故障を検出することができる。
【0065】
故障検出時おいて、送信部42から検出用信号であるハイレベル信号Vpoが出力される場合、閾値電圧Vthを、当該閾値電圧Vthよりも高い第1閾値電圧Vth1に変更する一方、送信部42から検出用信号であるローレベル信号Vnoが出力される場合、閾値電圧Vthを、当該閾値電圧Vthよりも低い第2閾値電圧Vth2に変更する閾値変更回路70を備えた。これにより、故障検出時において、閾値電圧Vthを変更しない場合に比較して、充電時間Tc及び放電時間Tdを短くすることができ、判定を素早く行うことが可能となる。
【0066】
(第2実施形態)
上記第1実施形態の構成を、次の第2実施形態のように変更してもよい。以下、第2実施形態では、主に、上記各実施形態で説明した構成に対する相違部分について説明する。また、第2実施形態では、基本構成として、第1実施形態の電池測定システム100を例に説明する。
【0067】
第2実施形態の受信部41及び送信部42は、マンチェスタ符号化データを用いて通信を行っている。マンチェスタ符号化データについての概要について説明する。
図7に、マンチェスタ符号化データの復号化方法を示す。マンチェスタ符号は、2進数の「1」に、そのビット周期を1周期とする矩形波パターン「10」を割り当て、2進数の「0」に、前述の矩形波パターンとは180°位相が異なる矩形波パターン「01」を割り当てた符号である。従って、その反対に、マンチェスタ符号化データから2進数のデータを復号化する場合には、マンチェスタ符号化データのビット周期前半部又は後半部いずれか一方の情報を検出できれば、そのデータが2進数の「1」を表すのか「0」を表すのかを判定することができる。
【0068】
このため、マンチェスタ符号化データの変化点から復号用クロック(再生クロック)を再生すると、その位相をマンチェスタ符号化データの変化点に同期させた後、マンチェスタ符号化データのビット周期前半部又は後半部いずれか一方に対応するサンプリングクロック(クロックタイミング)で、これらサンプリングクロックに現れる情報を取り出すことにより、復号データを求める手法が採られる。
【0069】
例えば、
図7の場合、すなわち、1Mbpsで伝送されるマンチェスタ符号のビット周期後半部から復号データを得る場合、マンチェスタ符号化データに対し2倍の周波数(2MHz)を有する再生クロックを当該データに位相同期させた後、当該再生クロックを構成する偶奇2種類のクロックタイミングのうち、ビット周期後半部に対応するサンプリングクロックを選択し、当該選択されたサンプリングクロックでマンチェスタ符号化データをサンプリングし、復号データとする手法が採られる。因みに、
図7の場合、ビット周期後半部に対応するクロックは、偶数番目のクロックであるので、これをサンプリングクロックに選択する。この結果得られるのが、復号データ1である。実際には、さらにこの復号データ1を極性反転することにより、最終的な復号データ2(出力結果、論理結果)を得る。
【0070】
ところで、マンチェスタ符号化データを用いるような場合、送信部42は、常にハイレベル信号Vpo及びローレベル信号Vnoを交互に出力し続けるように構成されている。このため、第1実施形態のように故障検出を行う際に、複数周期に亘って、いずれか一方の信号のみを出力させ続けることができない。
【0071】
そこで、第2実施形態では、以下に説明するように通信周期Tを変更することにより、充電時間Tc及び放電時間Tdを測定するようにしている。充電時間Tc及び放電時間Tdの測定方法について、
図8、
図9に基づいて説明する。
図8は、通信周期Tの1/4周期が充電時間Tc(又は放電時間Td)よりも短い場合のタイミングチャートである。
図9は、通信周期Tの1/4周期が充電時間Tc(又は放電時間Td)よりも長い場合のタイミングチャートである。また、
図8、
図9において、通信周期Tの後半部から復号データを得るものとして説明する。つまり、
図8、
図9の場合、後半部に対応する再生クロックは、奇数番目のクロックであるので、これをサンプリングクロックに選択する。
【0072】
図8,9において、送信部42は、検出用信号として、ハイレベル信号Vpoとローレベル信号Vnoを交互に出力する。それに伴い、スイッチSW1,SW2が交互にオンオフされる。これにより、受信部41に入力される信号Viは、送信部42からハイレベル信号Vpoが出力されるタイミング(時点T20,T30)で、第1閾値電圧Vth1よりも高くなる。なお、少なくともこの時点T20,T30において、差動アンプ53からハイレベル信号Hが出力されることとなる。
【0073】
再生クロックは、ローレベル信号Vnoからハイレベル信号Vpoに遷移されるタイミング(時点T20,T30)で設定される。再生クロックに基づき、通信周期Tの1/4周期経過時(サンプリングクロック(時点T21,T31))において、故障検出部44は、差動アンプ53から出力された信号(ハイレベル信号H又はローレベル信号L)を復号データ1として読み取る。そして、故障検出部44は、復号データ1の極性を反転し、復号データ2(出力結果、論理結果)を取得する。これにより、故障検出部44が、論理判定部としての機能を有する。
【0074】
図8では、前提より、サンプリングクロック(時点T21)において、信号Viの電圧は、第1閾値電圧Vth1以下(より詳しくは、ヒステリシス特性に基づいて第1閾値電圧Vth1よりも所定値低い電圧以下)となってはいない。このため、差動アンプ53は、ハイレベル信号Hを復号データ1として出力する。なお、最終的な復号データ2は、この復号データ1が極性反転され、ローレベル信号(論理L)となる。
【0075】
一方、
図9では、前提より、サンプリングクロック(時点T31)において、信号Viの電圧は、第1閾値電圧Vth1以下(より詳しくは、ヒステリシス特性に基づいて第1閾値電圧Vth1よりも所定値低い電圧以下)となっている。このため、差動アンプ53は、ローレベル信号Lを復号データ1として出力する。なお、最終的な復号データ2は、この復号データ1が極性反転され、ハイレベル信号(論理H)となる。
【0076】
以上のように、通信周期Tを徐々に変更することにより、入力される信号が反転する。そして、この反転するタイミングが、通信周期Tの1/4周期と充電時間Tcとが一致するタイミングに等しい。このため、故障検出部44は、この反転するタイミングにおける通信周期Tに基づいて充電時間Tcを特定することが可能となる。なお、放電時間Tdの場合も同様にして特定可能である。
【0077】
以下、第2実施形態における故障検出処理について
図10に基づいて説明する。
【0078】
故障検出部44は、まず、通信周期Tに初期値を設定する(ステップS201)。初期値は、その1/4周期が充電時間Tc(又は放電時間Td)よりも確実に短くなるように設定されることが望ましい。
【0079】
次に、故障検出部44は、第1スイッチSW1をオンし、第2スイッチSW2をオフする(ステップS202)。これにより、差動アンプ53の反転入力端子に入力される閾値電圧Vthが第1閾値電圧Vth1に変更される。
【0080】
次に、故障検出部44は、通信元の送信部42に対して、ハイレベル信号Vpoを出力させるように指示する(ステップS203)。つまり、復号データ2として論理Lを出力させるために、ローレベル信号Vnoからハイレベル信号Vpoに遷移するように指示する。そして、故障検出部44は、サンプリングクロックにおいて、差動アンプ53からの出力結果(復号データ2)を取得する(ステップS204)。故障検出部44は、出力結果を受信信号Vi_1として記憶する。ちなみに、
図8,9に示すように、信号Viが、電圧変化によって第1閾値電圧Vth1(より詳しくは、ヒステリシス特性に基づいて第1閾値電圧Vth1よりも所定値低い電圧、以下同じ)以下とならなければ、復号データ2として論理Lが取得され、第1閾値電圧Vth1以下となった場合、論理が反転し、論理Hが取得される。
【0081】
次に、故障検出部44は、通信周期Tに基づく切替タイミングにおいて、第1スイッチSW1をオフし、第2スイッチSW2をオンする(ステップS205)。これにより、差動アンプ53の反転入力端子に入力される閾値電圧Vthが第2閾値電圧Vth2に変更される。
【0082】
次に、故障検出部44は、通信元の送信部42に対して、ローレベル信号Vnoを出力させるように指示する(ステップS206)。つまり、通信周期Tに基づく切替タイミングにおいて、復号データ2として論理Hを出力させるために、ハイレベル信号Vpoからローレベル信号Vnoに遷移するように指示する。そして、故障検出部44は、サンプリングクロックにおいて、差動アンプ53からの出力結果(復号データ2)を読み取る(ステップS207)。故障検出部44は、出力結果を受信信号Vi_2として記憶する。ちなみに、
図8,9にしめすように、信号Viが、電圧変化によって第2閾値電圧Vth2(より詳しくは、ヒステリシス特性に基づいて第2閾値電圧Vth2よりも所定値高い電圧、以下同じ)以上とならなければ、復号データ2として論理Hが取得され、第2閾値電圧Vth2以上となった場合、論理が反転し、論理Lが取得される。
【0083】
そして、故障検出部44は、受信信号Vi_1が論理Hであって、かつ、受信信号Vi_2が論理Lであるか否かを判定する(ステップS208)。つまり、送信部42から出力させた信号Voと、出力結果が一致しなくなったか否かを判定する。すなわち、復号データ2として論理Lが出力されるはずにもかかわらず、受信信号Vi_1が論理Hとなり、復号データ2として論理Hが出力されるはずにもかかわらず、受信信号Vi_2が論理Lとなって、論理が反転したか否かを判定する。
【0084】
この判定結果が否定の場合(反転していない場合)、故障検出部44は、それまでの通信周期Tに増加時間ΔTを加算し、新たな通信周期Tとして設定する(ステップS209)。そして、故障検出部44は、再びステップS202以降の処理を実施する。
【0085】
一方、ステップS208の判定結果が肯定の場合(反転した場合)、故障検出部44は、設定されている通信周期Tの1/4周期が、所定時間Tth未満であるか否かを判定する(ステップS210)。つまり、故障検出部44は、送信部42から出力させた信号Voと出力結果が一致しない場合(反転した場合)、現在設定されている通信周期Tの1/4周期が、充電時間Tc(又は放電時間Td)に相当すると判断し、通信周期Tの1/4周期が所定時間Tth未満であるか否かを判定する。
【0086】
ステップS210の判定結果が肯定の場合、故障検出部44は、正常であると判定し(ステップS211)、否定の場合には、故障検出部44は、短絡故障を検出する(ステップS212)。ステップS211,212の処理後、故障検出部44は、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2をともにオフする(ステップS213)。つまり、差動アンプ53の反転入力端子に閾値電圧Vthが入力されるようにする。そして、故障検出部44は、故障検出処理を終了する。
【0087】
上記実施形態により、以下のような優れた効果を有する。
【0088】
故障検出部44は、通信周期Tを徐々に変化させて、送信部42から送信される信号Voを遷移させてから差動アンプ53からの出力結果を取得するサンプリングタイミング(サンプリングクロック)までの時間を変化させる。これにより、故障検出部44は、出力結果が反転するタイミングを特定し、反転したタイミングにおける通信周期Tを1/4にすることにより、電圧変化量が所定量に達するまでの時間(充電時間Tc及び放電時間Td)を特定する。
【0089】
これにより、マンチェスタ符号化データのように、ハイレベル信号Vpoとローレベル信号Vnoのうちいずれか一方の信号を継続して出力させることができない場合であっても、通信周期Tに基づいて、充電時間Tc(又は放電時間Td)を特定することができる。したがって、特別な回路などの構成を追加することなく、簡素な構成で故障検出を実現することができる。
【0090】
(第3実施形態)
上記第1実施形態の構成を、次の第3実施形態のように変更してもよい。以下、第3実施形態では、主に、上記各実施形態で説明した構成に対する相違部分について説明する。また、第3実施形態では、基本構成として、第1実施形態の電池測定システム100を例に説明する。
【0091】
第3実施形態では、送信部42と受信部41との間で差動通信が行われる。以下、差動通信を行うための構成及び差動通信を行う場合における故障検出方法について説明する。
【0092】
図11に示すように、第3実施形態では、送信部42と受信部41との間は、対となる通信経路50A,50Bが設けられている。各通信経路50A,50Bには、第1実施形態と同様に、それぞれコンデンサ部60A,60Bが設けられている。
【0093】
図12に示すように、通信経路50Aは、差動アンプ53の非反転入力端子に接続され、通信経路50Bは、差動アンプ53の反転入力端子に接続されている。受信部41の側において、通信経路50Aと通信経路50Bとの間には、複数の抵抗体R41,R42が直列接続された直列接続体が設けられており、第1補助電源55の正極は、抵抗体R41と抵抗体R42との接続点に接続され、負極は受信側グランドGA1に接続されている。
【0094】
図12に示すように、通信経路50Aのコンデンサ部60Aは、通信経路50Bのコンデンサ部60Bに直列に接続されていることとなる。このため、故障検出部44は、第1実施形態と同様に、受信部41に入力された信号Viの電圧変化量を計測し、その電圧変化量に基づいて、いずれかのコンデンサ61A,61B,62A,62Bの短絡故障を検出する。
【0095】
詳しく説明すると、
図13に示すように、時点T40において、送信部42から通信経路50Aを介してハイレベル信号Vpoが出力されるとともに、通信経路50Bを介してローレベル信号Vnoが出力されると、受信部41に入力される信号Viが遷移する。これに伴い、時点T40において、差動アンプ53に入力される信号Viに基づく差動電圧が、閾値電圧Vthより高くなるので、差動アンプ53は、その結果としてハイレベル信号Hを故障検出部44に出力する。なお、第3実施形態の差動アンプ53において、ヒステリシス特性は有さない。
【0096】
そのまま、送信部42からハイレベル信号Vpoが出力され続けると、コンデンサ部60A,60Bへの充電に伴い、受信部41に入力される信号Viの電圧が変化し、差動電圧が低下する。このとき、コンデンサ部60A,60Bの合成容量によって、充電の時定数が異なる。具体的には、いずれかのコンデンサ61A,61B,62A,62Bが短絡故障すると、合成容量が大きくなり、充電の時定数が大きくなる。なお、複数のコンデンサ61A,61B,62A,62Bが短絡故障すると、合成容量がより大きくなり、充電の時定数がより大きくなる。
【0097】
したがって、差動電圧が、ある電圧まで変化(低下)するために費やす時間が異なる。若しくは、ある時点において差動電圧が異なる(つまり、電圧変化量が異なる)。具体的には、
図13に示すように、いずれかのコンデンサ61A,61B,62A,62Bが短絡故障すると、差動電圧が、ある電圧まで変化(低下)するために費やす時間が長くなる。その際、複数のコンデンサ61A,61B,62A,62Bが短絡故障すると、差動電圧が、ある電圧まで変化(低下)するために費やす時間が長くなる。
【0098】
図13において、いずれのコンデンサ61A,61B,62A,62Bも短絡故障していない場合の差動電圧等を実線で示す。また、いずれか1つのコンデンサ61A,61B,62A,62Bが短絡故障している場合の差動電圧等を一点鎖線で示す。また、コンデンサ61A,62Aのうちいずれか1つと、コンデンサ61B,62Bのうちいずれか1つのコンデンサが短絡故障している場合の差動電圧等を破線で示す。
【0099】
本実施形態では、差動電圧が、閾値電圧Vthまで低下するために費やす時間(
図13における充電時間Tc1,Tc2,Tc3)が、所定時間Tthよりも長くなったか否かを判定することにより、電圧変化量の大きさを判定し、短絡故障を検出している。つまり、送信部42からハイレベル信号Vpoが出力され続けても、コンデンサ部60A,60Bへの充電に伴い、差動電圧が、いつかは閾値電圧Vthまでに低下する。このとき、差動アンプ53は、ローレベル信号Lを出力する。
【0100】
そこで、本実施形態において、故障検出部44は、送信部42から通信経路50Aを介してハイレベル信号Vpoを出力させるとともに、通信経路50Bを介してローレベル信号Vnoを出力させた後、差動アンプ53からローレベル信号Lを入力するまでの時間(
図13における充電時間Tc1,Tc2,Tc3)を計測する。そして、故障検出部44は、計測した時間が、所定時間Tthよりも長くなったかを判定することにより、短絡故障を検出する。これにより、簡素な構成で故障検出を実現することができる。
【0101】
その際、故障検出部44は、計測した時間の違いにより、いくつのコンデンサ61A,61B,62A,62Bが短絡故障しているかを検出してもよい。例えば、故障検出部44は、計測した時間が、第2所定時間Tth2(第2所定時間Tth2>所定時間Tth)よりも長いと判定した場合、コンデンサ61A,62Aのうちいずれか1つと、コンデンサ61B,62Bのうちいずれか1つのコンデンサが短絡故障していると判定する。このため、短絡故障しているコンデンサ61A,61B,62A,62Bの数を特定することができる。つまり、故障検出部44は、両方の通信経路50A,50Bで短絡しているか、片方の通信経路50A,50Bで短絡しているかを判定することが可能となる。
【0102】
(変形例)
・上記第1実施形態において、
図14に示すように、送信部42と、受信部41との間に、複数の通信経路151,152を設けてもよい。その際、複数の通信経路151,152のうち一方の通信経路151を、例えば、クロック線としてもよい。このようにする場合、故障検出する通信経路151,152を選択する選択部としての選択回路201を備えればよい。そして、故障検出部44は、選択回路201によって、故障検出を行う通信経路151,152を選択したうえで、コンデンサ部161,162における短絡故障を検出すればよい。
【0103】
・上記実施形態において、コンデンサ部60、60A,60B,161,162を構成するコンデンサの数は、2以上の数であれば、任意に変更してもよい。
・上記第1実施形態のステップS104を通信周期Tごとに判定したが、差動アンプ53からローレベル信号Lが出力された場合、割り込みして、充放電時間Tc,Tdを特定するようにしてもよい。
【0104】
・上記実施形態において、故障検出部44は、検出用信号の出力開始時における信号Viの電圧と、検出用信号を出力させてから所定時間経過時における信号Viの電圧を測定し、電圧変化量を算出してもよい。そして、故障検出部44は、電圧変化量と閾値とを比較して、短絡を検出するように構成してもよい。
【0105】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0106】
30…ECU、40…監視IC、41…受信部、44…故障検出部、50…通信経路、60…コンデンサ部、61…コンデンサ、62…コンデンサ。