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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】シールドコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6474 20110101AFI20241001BHJP
   H01R 13/6581 20110101ALI20241001BHJP
【FI】
H01R13/6474
H01R13/6581
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021122066
(22)【出願日】2021-07-27
(65)【公開番号】P2023018171
(43)【公開日】2023-02-08
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 英一
(72)【発明者】
【氏名】平松 和樹
(72)【発明者】
【氏名】加登山 太河
(72)【発明者】
【氏名】山下 真直
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-051872(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0117778(US,A1)
【文献】特開2020-202145(JP,A)
【文献】特開2021-027036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6474
H01R 13/6581
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄側内導体と雄側誘電体と雄側外導体を有する雄側コネクタと、
雌側内導体と雌側誘電体と雌側外導体を有する雌側コネクタとを備え、
前記雄側コネクタと前記雌側コネクタが嵌合した状態では、前記雄側誘電体の雄側嵌合面と前記雌側誘電体の雌側嵌合面とが対向し、前記雄側内導体の細長いタブが前記雄側嵌合面から突出して前記雌側内導体に挿入され、
前記雄側誘電体における前記雄側嵌合面側の端部には、前記雄側誘電体の外面を切り欠いた形状をなし、前記タブの基端部を包囲する減肉部が形成され、
前記雌側外導体と前記雄側外導体のうち少なくとも一方に、前記減肉部の外面を近接した状態又は接触した状態で覆うインピーダンス調整部が形成され、
前記インピーダンス調整部が、前記雌側外導体における前記雌側嵌合面側の端部に形成され、
前記減肉部の外面には、前記雄側コネクタと前記雌側コネクタの嵌合方向と平行をなし、前記インピーダンス調整部に対して近接した位置関係又は接触した位置関係となる平行面が形成されているシールドコネクタ。
【請求項2】
雄側内導体と雄側誘電体と雄側外導体を有する雄側コネクタと、
雌側内導体と雌側誘電体と雌側外導体を有する雌側コネクタとを備え、
前記雄側コネクタと前記雌側コネクタが嵌合した状態では、前記雄側誘電体の雄側嵌合面と前記雌側誘電体の雌側嵌合面とが対向し、前記雄側内導体の細長いタブが前記雄側嵌合面から突出して前記雌側内導体に挿入され、
前記雄側誘電体における前記雄側嵌合面側の端部には、前記雄側誘電体の外面を切り欠いた形状をなし、前記タブの基端部を包囲する減肉部が形成され、
前記雌側外導体と前記雄側外導体のうち少なくとも一方に、前記減肉部の外面を近接した状態又は接触した状態で覆うインピーダンス調整部が形成され、
前記インピーダンス調整部が、前記雌側外導体における前記雌側嵌合面側の端部に形成され、
前記雄側コネクタと前記雌側コネクタが嵌合した状態では、前記雌側外導体が前記雄側外導体の内部に収容されるようになっており、
前記インピーダンス調整部が、前記雄側コネクタ側に向かうほど前記タブに接近するように内側へ傾斜した形状であるシールドコネクタ。
【請求項3】
前記インピーダンス調整部が、前記雌側誘電体の外面を近接した状態又は接触した状態で覆っている請求項1又は請求項2に記載のシールドコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シールドコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、雄型内導体端子の細長いタブ部を角筒状の雌型内導体端子に挿入することによって、雄型内導体端子と雌型内導体端子を接続し、両内導体端子の接続部分を、雄側外導体端子と雌側内導体端子とで包囲したシールドコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-347191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
雄型内導体端子と雌型内導体端子を接続した状態では、正規嵌合面に隣接する雄側空間部が形成される。この雄側空間部においては、雄型内導体端子と雄側外導体端子との間に大きな空気層が介在するため、インピーダンスが高くなる。これに対し、オス側コネクタのうち雄側空間部を挟んで正規嵌合面とは反対側の領域では、雄型内導体端子と雄側外導体端子との間に合成樹脂製の雄側誘電体が介在するので、インピーダンスは雄側空間部よりも低い。
【0005】
本開示のシールドコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、インピーダンスの不整合を緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のシールドコネクタは、
雄側内導体と雄側誘電体と雄側外導体を有する雄側コネクタと、
雌側内導体と雌側誘電体と雌側外導体を有する雌側コネクタとを備え、
前記雄側コネクタと前記雌側コネクタが嵌合した状態では、前記雄側誘電体の雄側嵌合面と前記雌側誘電体の雌側嵌合面とが対向し、前記雄側内導体の細長いタブが前記雄側嵌合面から突出して前記雌側内導体に挿入され、
前記雄側誘電体における前記雄側嵌合面側の端部には、前記雄側誘電体の外面を切り欠いた形状をなし、前記タブの基端部を包囲する減肉部が形成され、
前記雌側外導体と前記雄側外導体のうち少なくとも一方に、前記減肉部の外面を近接した状態又は接触した状態で覆うインピーダンス調整部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、インピーダンスの不整合を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1の雄側コネクタの側断面図である。
図2図2は、雌側コネクタの側断面図である。
図3図3は、雄側コネクタと雌側コネクタの嵌合状態をあらわす部分拡大側断面図である。
図4図4は、雄側コネクタと雌側コネクタの嵌合状態をあらわす部分拡大平断面図である。
図5図5は、雄側シールド端子において雄側外導体を外した状態をあらわすの斜視図である。
図6図6は、雌側シールド端子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のシールドコネクタは、
(1)雄側内導体と雄側誘電体と雄側外導体を有する雄側コネクタと、雌側内導体と雌側誘電体と雌側外導体を有する雌側コネクタとを備え、前記雄側コネクタと前記雌側コネクタが嵌合した状態では、前記雄側誘電体の雄側嵌合面と前記雌側誘電体の雌側嵌合面とが対向し、前記雄側内導体の細長いタブが前記雄側嵌合面から突出して前記雌側内導体に挿入され、前記雄側誘電体における前記雄側嵌合面側の端部には、前記雄側誘電体の外面を切り欠いた形状をなし、前記タブの基端部を包囲する減肉部が形成され、前記雌側外導体と前記雄側外導体のうち少なくとも一方に、前記減肉部の外面を近接した状態又は接触した状態で覆うインピーダンス調整部が形成されている。
【0010】
本開示の構成によれば、雄側コネクタのうちタブの基端部を挟んで雄側嵌合面とは反対側の領域では、雄側内導体の外形寸法がタブよりも大きくて、雄側内導体の金属量がタブよりも多いので、インピーダンスは比較的低い。一方、雄側コネクタにおける雄側嵌合面側の端部、即ちタブの基端部が存在する領域では、タブの基端部を包囲する減肉部が、雄側誘電体の外面を切り欠いた形状であり、インピーダンス調整部がタブの基端部に近い位置に配置されている。さらに、インピーダンス調整部は、減肉部の外面を近接した状態又は接触した状態で覆っているので、インピーダンス調整部とタブの基端部との間に大きな空気層は介在しない。よって、タブの基端部が存在する領域のインピーダンスも、比較的低い。本開示によれば、インピーダンスの不整合を緩和することができる。
【0011】
(2)前記インピーダンス調整部が、前記雌側外導体における前記雌側嵌合面側の端部に形成されていることが好ましい。この構成によれば、雌側外導体を切り欠くことなくインピーダンス調整部を形成することができるので、インピーダンス調整部を形成したことに起因するシールド性能の低下を回避できる。
【0012】
(3)(2)において、前記減肉部の外面には、前記雄コネクタと前記雌コネクタの嵌合方向と平行をなし、前記インピーダンス調整部に対して近接した位置関係又は接触した位置関係となる平行面が形成されていることが好ましい。この構成によれば、雄コネクタと雌コネクタが嵌合方向又は離脱方向へ相対変位したときに、インピーダンス調整部と減肉部の外面とが干渉するおそれがない。
【0013】
(4)(2)又は(3)において、前記インピーダンス調整部が、前記雌側誘電体の外面を近接した状態又は接触した状態で覆っていることが好ましい。この構成によれば、インピーダンス調整部と雌側誘電体の外周面との間に大きな空気層が介在しないので、空気層が介在することに起因してインピーダンスが高くなることを抑制できる。
【0014】
(5)(2)~(4)において、前記雄コネクタと前記雌コネクタが嵌合した状態では、前記雌側外導体が前記雄側外導体の内部に収容されるようになっており、前記インピーダンス調整部が、前記雄コネクタ側に向かうほど前記タブに接近するように内側へ傾斜した形状であることが好ましい。この構成によれば、雌側外導体が雄側外導体に収容されるときに、インピーダンス調整部が雄側外導体の開口縁と干渉することを防止できる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1を、図1図6を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
本実施例1のシールドコネクタは、雄側コネクタ10と雌側コネクタ50とを備えている。本実施例1において、雄側コネクタ10の前後の方向については、図1,3,4における右方、及び図5における斜め右下方を、前方と定義する。雌側コネクタ50の前後の方向については、図2~4における左方、及び図6における斜め左下方を、前方と定義する。つまり、雄側コネクタ10と雌側コネクタ50における前後の向きは、互いに逆方向と定義される。両コネクタの嵌合方向と直交する上下方向については、図1~3,5,6にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。上下方向と高さ方向は同義で用いる。左右方向と幅方向は同義で用いる。
【0017】
<雄側コネクタ10>
雄側コネクタ10は、図1に示すように、雄側ハウジング11と、雄側ハウジング11内に取り付けられた雄側シールド端子12とを備えている。雄側シールド端子12は、雄側シールド電線13の前端部に接続されている。雄側シールド電線13と雄側シールド端子12は、高速通信用の差動伝送線路を構成している。
【0018】
雄側シールド電線13は、STP(Shielded Twisted Pair)ケーブルであり、2本の被覆電線14と、両被覆電線14を包囲するシールド層17と、シース18とを有する。2本の被覆電線14の前端部は、シース18から前方へ露出している。シールド層17の前端部は、後方へ折り返されてシース18の外周面を包囲している。
【0019】
雄側シールド端子12は、左右一対の雄側内導体20と、合成樹脂製の雄側誘電体30と、雄側外導体40とを組み付けて構成されている。雄側内導体20は、金属板材に曲げ加工等を施すことにより、全体として前後方向に細長い形状に成形した単一部品である。雄側内導体20は、角筒状の支持部21と、支持部21から前方へ突出したタブ22と、支持部21から後方へ延出した雄側圧着部25とを有する。雄側圧着部25は、オープンバレル状のワイヤバレル部26と、オープンバレル状のインシュレーションバレル部27を備えている。ワイヤバレル部26は、被覆電線14の芯線15に圧着されている。インシュレーションバレル部27は、被覆電線14の絶縁被覆16の外周面に圧着されている。
【0020】
タブ22は、支持部21の前端に連なる基端部23と、基端部23から前方へ細長く延びた接続機能部24とを有する。タブ22の基端部23は、支持部21の前端外周縁から前方へ突出し、前方に向かって外形寸法が次第に小さくなるような角錐形をなす。接続機能部24の突出方向は、雄側コネクタ10と雌側コネクタ50の嵌合方向と平行な方向である。接続機能部24の外形寸法は支持部21の外形寸法よりも小さい。接続機能部24の高さ寸法は支持部21の高さ寸法よりも小さく、接続機能部24の幅寸法は支持部21の幅寸法よりも小さい。
【0021】
雄側誘電体30は、図3,5に示すように、雄側ロアケース31と雄側アッパケース32とを上下に合体して構成されている。雄側誘電体30の前面、即ち雌側コネクタ50と対向する面を、雄側嵌合面33と定義する。図4に示すように、雄側誘電体30には、一対の雄側内導体20が左右に並んだ状態で取り付けられている。雄側誘電体30内には、雄側内導体20のうち支持部21の全体と、雄側圧着部25の全体と、タブ22のうち基端部23のみが収容されている。タブ22の接続機能部24は、雄側誘電体30の前端面、即ち雄側嵌合面33から前方へ突出して露出した状態となっている。
【0022】
雄側誘電体30の前端部には、雄側誘電体30の外周面のうち上面と下面を切り欠いた形状の減肉部34が形成されている。前後方向において、減肉部34の形成範囲は、タブ22の基端部23の形成範囲とほぼ同じ領域である。減肉部34の上面は、タブ22の基端部23の上面と同様、総体的に前方に向かって低くなるように傾斜している。減肉部34の下面は、タブ22の基端部23の下面と同様、総体的に前方に向かって高くなるように傾斜している。減肉部34の上面と下面には、それぞれ、平行面35が形成されている。平行面35は、雄側コネクタ10と雌側コネクタ50の嵌合方向と平行な平面である。
【0023】
雄側外導体40は、角筒状をなす雄側シェル41と、雄側バレル部45を有する雄側圧着部材44とを組み付けて構成されている。雄側シェル41は、筒状取付部42と、筒状取付部42の前端から前方へ延出したフード部43とを有している。雄側外導体40は、雄側誘電体30に対し筒状取付部42で包囲した状態で取り付けられている。
【0024】
筒状取付部42の前端部は、前方に向かって高さ寸法及び幅寸法が増大するようにテーパ状に拡径している。図4に示すように、筒状取付部42の前端部内周面と、雄側誘電体30の外周面との間にはクリアランスが空いている。フード部43は、雄側嵌合面33よりも前方へ突出している。
【0025】
雄側バレル部45は、図1に示すように、雄側シェル41から後方へ延出し、シールド層17の前端部外周面に圧着されている。雄側内導体20の雄側圧着部25を被覆電線14に圧着し、雄側外導体40の雄側バレル部45をシールド層17に圧着することによって、雄側シールド電線13の前端部と雄側シールド端子12の後端部とが接続されている。
【0026】
<雌側コネクタ50>
雌側コネクタ50は、図2に示すように、雌側ハウジング51と、雌側ハウジング51内に取り付けられた雌側シールド端子52とを備えている。雌側シールド端子52は、雌側シールド電線53の前端部に接続されている。雌側シールド電線53は、雄側シールド電線13と同じ構成であるため、同じ構成については雄側シールド電線13と同じ符号を付す。雌側シールド電線53と雌側シールド端子52は、高速通信用の差動伝送線路を構成している。
【0027】
雌側シールド端子52は、左右一対の雌側内導体60と、合成樹脂製の雌側誘電体70と、雌側外導体80とを組み付けて構成されている。雌側内導体60は、金属板材に曲げ加工等を施すことにより、全体として前後方向に細長い形状に成形した単一部品である。雌側内導体60は、角筒状の本体部61と、本体部61から後方へ延出した雌側圧着部63とを有する。本体部61の内部には弾性接触片62が収容されている。雌側圧着部63は、オープンバレル状のワイヤバレル部64と、オープンバレル状のインシュレーションバレル部65を備えている。ワイヤバレル部64は、雌側シールド電線53の被覆電線14の芯線15に圧着されている。インシュレーションバレル部65は、被覆電線14の絶縁被覆16の外周面に圧着されている。
【0028】
雌側誘電体70は、図2,3に示すように、雌側ロアケース71と雌側アッパケース72とを上下に合体して構成されている。雌側誘電体70の前面、即ち雄側コネクタ10と対向する面を、雌側嵌合面73と定義する。雌側誘電体70には、一対の雌側内導体60が左右に並んだ状態で収容されている。雌側誘電体70の前端部には、雌側誘電体70の外周面をテーパ状に切り欠いた形状の面取部74が形成されている。前後方向において、面取部74の形成範囲は、雌側内導体60の前端よりも前方の領域である。
【0029】
雌側外導体80は、角筒状をなす雌側シェル81と、雌側バレル部83を有する雌側圧着部材82とを組み付けて構成されている。雌側外導体80は、雌側誘電体70に対し、雌側シェル81で包囲した状態で取り付けられている。雌側バレル部83は、雌側シェル81から後方へ延出し、シールド層17の前端部外周面に圧着されている。雌側内導体60の雌側圧着部63を被覆電線14に圧着し、雌側外導体80の雌側バレル部83をシールド層17に圧着することによって、雌側シールド電線53の前端部と雌側シールド端子52の後端部とが接続されている。
【0030】
図6に示すように、角筒状をなす雌側シェル81の角縁部には、雌側シェル81の前端から後方へ切り欠いた形状のスリット84が形成されている。雌側シェル81を構成する4枚の平板状をなす板部の前端側領域は、スリット84で区画され、個別に弾性変位し得る可撓性板部85として機能する。各可撓性板部85には、可撓性板部85の一部を山形に切り起こすことによってバネ部86が形成されている。
【0031】
各可撓性板部85には、インピーダンス調整部87が一体に形成されている。インピーダンス調整部87は、可撓性板部85の前端部を斜め前方内向きに曲げ加工した部位である。前後方向におけるインピーダンス調整部87の形成範囲は、雌側誘電体70の面取部74の後端から、雌側誘電体70の雌側嵌合面73よりも前方の位置に至る領域である。即ち、インピーダンス調整部87の前端部は、雌側嵌合面73よりも雄側コネクタ10側へ突出している。インピーダンス調整部87は、面取部74の外面を近接した状態で覆っている。換言すると、インピーダンス調整部87は、面取部74の外面に沿うように配置されている。
【0032】
<実施例1の作用及び効果>
雄側コネクタ10と雌側コネクタ50を嵌合した状態では、雄側内導体20のタブ22の接続機能部24が、雌側内導体60の本体部61内に挿入され、弾性接触片62に対して弾性的に接続される。雄側嵌合面33と雌側嵌合面73が突き当たり、上下一対のインピーダンス調整部87の前端部が、雄側誘電体30の減肉部34の外面、即ち上面と下面を近接した状態で覆う。上下一対のインピーダンス調整部87の前端縁(突出端縁)は、平行面35の外面に対して近接した位置関係となる。
【0033】
図3に示すように、雄側内導体20によって構成される差動伝送線路のうち、前後方向において支持部21が形成されている領域を非調整領域と定義する。差動伝送線路のうち、タブ22の基端部23を減肉部34が包囲し、減肉部34の外面をインピーダンス調整部87が覆う領域を調整領域と定義する。非調整領域は、雄側コネクタ10のうちタブ22の基端部23を挟んで雄側嵌合面33とは反対側の領域である。支持部21の外形寸法はタブ22の基端部23の外形寸法よりも大きく、支持部21の金属量はタブ22の基端部23の金属量よりも多いので、金属量のみを比較すると非調整領域のインピーダンスは調整領域のインピーダンスよりも低い。
【0034】
一方、タブ22の基端部23を覆う減肉部34の厚さは、雄側誘電体30のうち支持部21を覆う部位よりも薄く、減肉部34の外面にインピーダンス調整部87が接近している。そのため、タブ22の基端部23とインピーダンス調整部87(雌側外導体80)との間隔は、支持部21と雄側外導体40との間隔よりも短いので、外導体との間隔のみを比較すると、調整領域のインピーダンスは非調整領域のインピーダンスよりも低い。したがって、金属量の条件と、外導体との間隔の条件の両方を勘案すると、調整領域と非調整領域との間では総体的にインピーダンスの不整合が緩和されている。
【0035】
本実施例1のシールドコネクタは、雄側コネクタ10と雌側コネクタ50とを備えている。雄側コネクタ10は、雄側内導体20と雄側誘電体30と雄側外導体40を有する。雌側コネクタ50は、雌側内導体60と雌側誘電体70と雌側外導体80を有する。雄側コネクタ10と雌側コネクタ50が嵌合した状態では、雄側誘電体30の雄側嵌合面33と雌側誘電体70の雌側嵌合面73とが対向して当接し、雄側内導体20の細長いタブ22が、雄側嵌合面33から突出して雌側内導体60に挿入され、雄側内導体20と雌側内導体60が接続される。雄側誘電体30における雄側嵌合面33側の端部には、雄側誘電体30の外面を切り欠いた形状をなし、タブ22の基端部23を包囲する減肉部34が形成されている。雌側外導体80には、減肉部34の外面を近接した状態で覆うインピーダンス調整部87が一体に形成されている。
【0036】
雄側コネクタ10における伝送線路のうち、タブ22の基端部23を挟んで雄側嵌合面33とは反対側の非調整領域では、雄側内導体20を構成する支持部21の外形寸法が、タブ22の外形寸法よりも大きい。支持部21の金属量はタブ22の金属量よりも多いので、非調整領域のインピーダンスは、比較的低い。一方、雄側コネクタ10における伝送線路のうち、雄側嵌合面33側の端部、即ちタブ22の基端部23が存在する調整領域では、雄側誘電体30の減肉部34がタブ22の基端部23を包囲する。減肉部34は、雄側誘電体30の外面を切り欠いた形状であり、比較的肉薄であるため、インピーダンス調整部87はタブ22の基端部23に近い位置に配置されている。さらに、インピーダンス調整部87は、減肉部34の外面を近接した状態で覆っているので、インピーダンス調整部87と減肉部34との間、及びインピーダンス調整部87とタブ22の基端部23との間には、大きな空気層が介在しない。よって、タブ22の基端部23が存在する調整領域のインピーダンスも、比較的低い。本実施例1のシールドコネクタによれば、非調整領域と調整領域との間におけるインピーダンスの不整合を緩和することができる。
【0037】
インピーダンス調整部87は、雌側外導体80における雌側嵌合面73側の端部に一体に形成されている。この構成によれば、雌側外導体80の一部を切り欠くことなくインピーダンス調整部87を形成することができるので、インピーダンス調整部87を形成したことに起因するシールド性能の低下を回避できる。
【0038】
減肉部34の外面には、雄側コネクタ10と雌側コネクタ50の嵌合方向と平行をなし、インピーダンス調整部87に対して近接した位置関係となる平行面35が形成されている。この構成によれば、雄側コネクタ10と雌側コネクタ50が嵌合方向又は離脱方向へ相対変位したときに、インピーダンス調整部87と減肉部34の外面とが干渉することを防止できる。また、両コネクタ10,50が嵌合方向又は離脱方向へ相対変位したときに、インピーダンス調整部87の前端部と減肉部34の外面との距離がほぼ一定に保たれるので、調整領域のインピーダンスが殆ど変動しない。
【0039】
インピーダンス調整部87は、雌側誘電体70の外面を近接した状態で覆っている。この構成によれば、インピーダンス調整部87と雌側誘電体70の外面との間に大きな空気層が介在しないので、空気層が介在することに起因してインピーダンスが高くなることを抑制できる。
【0040】
雄側コネクタ10と雌側コネクタ50が嵌合した状態では、雌側外導体80が雄側外導体40の内部に収容されるようになっている。インピーダンス調整部87は、雄側コネクタ10側に向かうほどタブ22に接近するように内側へ傾斜した形状である。この構成によれば、雌側外導体80が雄側外導体40に収容されるときに、インピーダンス調整部87が雄側外導体40の開口縁と干渉することを防止できる。
【0041】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例1に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例1では、インピーダンス調整部を雌側外導体のみに形成したが、インピーダンス調整部は、雄側外導体のみに形成してもよく、雌側外導体と雄側外導体の両方に形成してもよい。
上記実施例1では、減肉部が雌側嵌合面の凹部に収容されないが、減肉部が凹部に収容される形態としてもよい。
上記実施例1では、減肉部に平行面を形成したが、減肉部に平行面を形成しない形態としてもよい。
上記実施例1では、インピーダンス調整部が、雌側誘電体の外周面を近接した状態で覆うが、インピーダンス調整部は、雌側誘電体の外周面を接触した状態で覆ってもよい。
上記実施例1では、インピーダンス調整部が雌側誘電体の外周面を覆う形状であるが、インピーダンス調整部は、雌側誘電体の外周面を覆わない形状であってもよい。
上記実施例1では、インピーダンス調整部が、雄コネクタ側に向かうほどタブに接近するように傾斜した形状であるが、インピーダンス調整部は、屈曲した形状であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…雄側コネクタ
11…雄側ハウジング
12…雄側シールド端子
13…雄側シールド電線
14…被覆電線
15…芯線
16…絶縁被覆
17…シールド層
18…シース
20…雄側内導体
21…支持部
22…タブ
23…基端部
24…接続機能部
25…雄側圧着部
26…ワイヤバレル部
27…インシュレーションバレル部
30…雄側誘電体
31…雄側ロアケース
32…雄側アッパケース
33…雄側嵌合面
34…減肉部
35…平行面
40…雄側外導体
41…雄側シェル
42…筒状取付部
43…フード部
44…雄側圧着部材
45…雄側バレル部
50…雌側コネクタ
51…雌側ハウジング
52…雌側シールド端子
53…雌側シールド電線
60…雌側内導体
61…本体部
62…弾性接触片
63…雌側圧着部
64…ワイヤバレル部
65…インシュレーションバレル部
70…雌側誘電体
71…雌側ロアケース
72…雌側アッパケース
73…雌側嵌合面
74…面取部
80…雌側外導体
81…雌側シェル
82…雌側圧着部材
83…雌側バレル部
84…スリット
85…可撓性板部
86…バネ部
87…インピーダンス調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6