(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F02M 26/74 20160101AFI20241001BHJP
F02M 26/26 20160101ALI20241001BHJP
F02M 26/51 20160101ALI20241001BHJP
F02M 26/70 20160101ALI20241001BHJP
F02M 26/72 20160101ALI20241001BHJP
F16K 11/052 20060101ALI20241001BHJP
F16K 31/524 20060101ALI20241001BHJP
F16K 31/53 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F02M26/74 331
F02M26/26
F02M26/51
F02M26/70 301
F02M26/72
F16K11/052 Z
F16K31/524 A
F16K31/53
(21)【出願番号】P 2021128440
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立石 将吾
(72)【発明者】
【氏名】守谷 勇一朗
(72)【発明者】
【氏名】林 秀樹
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-090876(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0007835(US,A1)
【文献】特表2016-505781(JP,A)
【文献】特開2010-180820(JP,A)
【文献】特開2009-162215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/00-26/74
F16K 11/052
F16K 31/524
F16K 31/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGRガスの流量を増減するバルブ装置であって、
EGRクーラー(80)で冷却された前記EGRガスが流入する第1上流通路(121)、前記EGRクーラーをバイパスした前記EGRガスが流入する第2上流通路(122)、前記第1上流通路のガス流れ下流側と前記第2上流通路のガス流れ下流側とにそれぞれ連結された合流部(124)、および前記合流部を介して前記第1上流通路と前記第2上流通路とに連結された下流通路(123)が形成されたハウジング(12)と、
前記第2上流通路に設けられ、
バイパス弁軸心(CLb)まわりに回転することにより前記第2上流通路を開閉するバイパス弁体(20)と、
前記下流通路に設けられ、EGR弁軸心(CLa)まわりに回転することにより前記下流通路を開閉するEGR弁体(14)と、
前記EGR弁体を回転駆動するモータ(24)と、
前記EGR弁体の回転動作に対し前記バイパス弁体を連動させる連動部(28)とを備え、
前記モータは、前記バイパス弁体に対し前記合流部を挟んで反対側に配置されて
おり、
前記連動部は、前記EGR弁体と共に回転しカム軌道(291)を有するカム(29)と、前記バイパス弁体と共に回転しカム従動子(302)を有する従動回転部(30)とを有し、
前記従動回転部は、前記カム従動子を前記カム軌道に沿わせながら前記カムの回転動作に連動して回転し、
前記カムには、前記EGR弁軸心の軸方向(Da)に貫通したカム貫通孔(29a)が形成されており、
前記カムは、前記カム貫通孔の周縁(29b)から前記EGR弁軸心の軸方向に突き出て前記カム貫通孔の周縁に沿って延びるカム突起部(292)を有している、バルブ装置。
【請求項2】
EGRガスの流量を増減するバルブ装置であって、
EGRクーラー(80)で冷却された前記EGRガスが流入する第1上流通路(121)、前記EGRクーラーをバイパスした前記EGRガスが流入する第2上流通路(122)、前記第1上流通路のガス流れ下流側と前記第2上流通路のガス流れ下流側とにそれぞれ連結された合流部(124)、および前記合流部を介して前記第1上流通路と前記第2上流通路とに連結された下流通路(123)が形成されたハウジング(12)と、
前記第2上流通路に設けられ、
バイパス弁軸心(CLb)まわりに回転することにより前記第2上流通路を開閉するバイパス弁体(20)と、
前記下流通路に設けられ、EGR弁軸心(CLa)まわりに回転することにより前記下流通路を開閉するEGR弁体(14)と、
前記EGR弁体を回転駆動するモータ(24)と、
前記EGR弁体の回転動作に対し前記バイパス弁体を連動させる連動部(28)とを備え、
前記モータは、前記バイパス弁体に対し前記合流部を挟んで反対側に配置されて
おり、
前記連動部は、前記EGR弁体と共に回転しカム軌道(291)を有するカム(29)と、前記バイパス弁体と共に回転しカム従動子(302)を有する従動回転部(30)とを有し、
前記従動回転部は、前記カム従動子を前記カム軌道に沿わせながら前記カムの回転動作に連動して回転し、
前記カムは、該カムの表面(29c)に設けられ前記EGR弁軸心の軸方向(Da)に突き出たカム突起部(293)を有しており、
前記従動回転部は、該従動回転部の表面(301a)に設けられ前記バイパス弁軸心の軸方向(Da)に突き出た従動突起部(303)を有している、バルブ装置。
【請求項3】
前記第1上流通路と前記第2上流通路とのうち一方の通路は、前記下流通路の向き(D1)と同じ向きで前記下流通路に対し前記合流部を介して直列に連結され、
前記第1上流通路と前記第2上流通路とのうち他方の通路は、前記下流通路の向きと交差する向き(D2)で前記下流通路に対し前記合流部を介して連結され、
前記EGR弁体は、前記EGR弁軸心に垂直で前記EGR弁体に沿った方向の一方側に一側端(141)を有し、
前記EGR弁体が前記下流通路を全開にした状態では、前記一側端は、前記他方の通路を該他方の通路の向きに沿って仮想的に延長して得られる延長空間(B2、B3)のうち前記下流通路側に設けられる側縁(B2a、B3a)よりもガス流れ上流側に位置し、
前記一側端が前記側縁よりもガス流れ上流側に位置する場合において、前記モータは、前記下流通路を閉じる向きに前記EGR弁体を回転させる場合には、前記一側端が前記他方の通路から遠ざかる向きに前記EGR弁体を回転させる、請求項1
または2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
EGRガスの流量を増減するバルブ装置であって、
EGRクーラー(80)で冷却された前記EGRガスが流入する第1上流通路(121)、前記EGRクーラーをバイパスした前記EGRガスが流入する第2上流通路(122)、前記第1上流通路のガス流れ下流側と前記第2上流通路のガス流れ下流側とにそれぞれ連結された合流部(124)、および前記合流部を介して前記第1上流通路と前記第2上流通路とに連結された下流通路(123)が形成されたハウジング(12)と、
前記第2上流通路に設けられ、前記第2上流通路を開閉するバイパス弁体(20)と、
前記下流通路に設けられ、EGR弁軸心(CLa)まわりに回転することにより前記下流通路を開閉するEGR弁体(14)と、
前記EGR弁体を回転駆動するモータ(24)と、
前記EGR弁体の回転動作に対し前記バイパス弁体を連動させる連動部(28)とを備え、
前記モータは、前記バイパス弁体に対し前記合流部を挟んで反対側に配置されて
おり、
前記第1上流通路と前記第2上流通路とのうち一方の通路は、前記下流通路の向き(D1)と同じ向きで前記下流通路に対し前記合流部を介して直列に連結され、
前記第1上流通路と前記第2上流通路とのうち他方の通路は、前記下流通路の向きと交差する向き(D2)で前記下流通路に対し前記合流部を介して連結され、
前記EGR弁体は、前記EGR弁軸心に垂直で前記EGR弁体に沿った方向の一方側に一側端(141)を有し、
前記EGR弁体が前記下流通路を全開にした状態では、前記一側端は、前記他方の通路を該他方の通路の向きに沿って仮想的に延長して得られる延長空間(B2、B3)のうち前記下流通路側に設けられる側縁(B2a、B3a)よりもガス流れ上流側に位置し、
前記一側端が前記側縁よりもガス流れ上流側に位置する場合において、前記モータは、前記下流通路を閉じる向きに前記EGR弁体を回転させる場合には、前記一側端が前記他方の通路から遠ざかる向きに前記EGR弁体を回転させる、バルブ装置。
【請求項5】
前記連動部は、前記EGR弁体と前記バイパス弁体とを連結する連結レバー(33)を有し、前記EGR弁体の回転動作に対し前記連結レバーを介して前記バイパス弁体を連動させる、請求項
4に記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記バイパス弁体は、バイパス弁軸心(CLb)まわりに回転することにより前記第2上流通路を開閉し、
前記連動部は、前記EGR弁体と共に回転する主動歯車(35)と、前記バイパス弁体と共に回転し前記主動歯車に噛み合う従動歯車(36)とを有する、請求項
4に記載のバルブ装置。
【請求項7】
前記バイパス弁体は、バイパス弁軸心(CLb)まわりに回転することにより前記第2上流通路を開閉し、
前記連動部は、前記EGR弁体と共に回転しカム軌道(291)を有するカム(29)と、前記バイパス弁体と共に回転しカム従動子(302)を有する従動回転部(30)とを有し、
前記従動回転部は、前記カム従動子を前記カム軌道に沿わせながら前記カムの回転動作に連動して回転する、請求項
4に記載のバルブ装置。
【請求項8】
前記モータの回転中心(CLm)は、前記EGR弁軸心と平行であり、且つ、前記EGR弁軸心に対して、前記下流通路の向き(D1)に垂直な方向(D2)に並んで配置されている、請求項1
ないし7のいずれか1つに記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGRガスの流量を増減するバルブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、EGR装置が記載されている。この特許文献1のEGR装置は、EGR通路と、そのEGR通路に設けられたEGRクーラーと、EGRクーラーを迂回するEGRバイパス通路とを備えている。また、EGR装置は、EGRバイパス通路に設けられEGRバイパス通路を開閉する切替バルブと、EGR通路のうちEGRクーラーの下流側でEGRバイパス通路と合流する合流箇所よりも更に下流側に設けられたEGR弁とを備えている。
【0003】
切替バルブとEGR弁は制御装置によって制御されるので、アクチュエータをそれぞれ備えている。そのため、例えば、切替バルブのアクチュエータは、EGRバイパス通路の近傍に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のEGR装置において、EGRバイパス通路を流れるEGRガスは、EGRクーラーを迂回しているので高温である。そして、EGRバイパス通路に設けられた切替バルブのアクチュエータは、EGRバイパス通路に流れる高温のEGRガスから熱の影響を受けやすい。そのため、切替バルブのアクチュエータが熱害を受け、切替バルブの故障が発生する可能性がある。発明者らの詳細な検討の結果、以上のようなことが見出された。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、EGRクーラーをバイパスした高温のEGRガスによる熱害を低減できるバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のバルブ装置は、
EGRガスの流量を増減するバルブ装置であって、
EGRクーラー(80)で冷却されたEGRガスが流入する第1上流通路(121)、EGRクーラーをバイパスしたEGRガスが流入する第2上流通路(122)、第1上流通路のガス流れ下流側と第2上流通路のガス流れ下流側とにそれぞれ連結された合流部(124)、および合流部を介して第1上流通路と第2上流通路とに連結された下流通路(123)が形成されたハウジング(12)と、
第2上流通路に設けられ、バイパス弁軸心(CLb)まわりに回転することにより第2上流通路を開閉するバイパス弁体(20)と、
下流通路に設けられ、EGR弁軸心(CLa)まわりに回転することにより下流通路を開閉するEGR弁体(14)と、
EGR弁体を回転駆動するモータ(24)と、
EGR弁体の回転動作に対しバイパス弁体を連動させる連動部(28)とを備え、
モータは、バイパス弁体に対し合流部を挟んで反対側に配置されており、
連動部は、EGR弁体と共に回転しカム軌道(291)を有するカム(29)と、バイパス弁体と共に回転しカム従動子(302)を有する従動回転部(30)とを有し、
従動回転部は、カム従動子をカム軌道に沿わせながらカムの回転動作に連動して回転し、
カムには、EGR弁軸心の軸方向(Da)に貫通したカム貫通孔(29a)が形成されており、
カムは、カム貫通孔の周縁(29b)からEGR弁軸心の軸方向に突き出てカム貫通孔の周縁に沿って延びるカム突起部(292)を有している。
【0008】
このようにすれば、バイパス弁体を作動させるモータは、第2上流通路から遠ざけて配置される。そのため、そのモータは、例えば第2上流通路に隣接して配置される場合と比較して、第2上流通路に流れる高温のEGRガスの熱の影響を受けにくい。従って、特許文献1に記載されたEGR装置の構成と比較して、EGRクーラーをバイパスした高温のEGRガスによる熱害を低減できる。併せて、上記モータでEGR弁体とバイパス弁体との両方を作動させることができるので、バルブ装置の体格拡大を抑制し、バルブ装置の低コスト化を図ることが可能である。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態において、バルブ装置を含む内燃機関システムの概略構成を模式的に示した図である。
【
図2】第1実施形態のバルブ装置を示した図であって、バルブ装置のうちハウジングをEGR弁軸心に垂直な断面で示した部分断面図である。
【
図3】第1実施形態のバルブ装置を第1上流通路側から見た図であって、バルブ装置のうちハウジングを
図2のIII-III断面で示した部分断面図である。
【
図4】
図2から連動部の図示とハウジングの一部分の図示とを省略した部分断面図である。
【
図5】
図1からEGRクーラーとバイパス通路とバルブ装置とを抜粋して示すと共に、バルブ装置を模式的な断面で示した図である。
【
図6】第2実施形態において、ハウジングをEGR弁軸心に垂直な断面で示したバルブ装置の図であって、
図2に相当する図である。
【
図7】第3実施形態において、ハウジングをEGR弁軸心に垂直な断面で示したバルブ装置の図であって、
図2に相当する図である。
【
図8】第4実施形態において、連動部およびその周辺を抜粋して示した斜視図である。
【
図9】第5実施形態において、連動部およびその周辺を抜粋して示した斜視図であって、
図8に相当する図である。
【
図10】第6実施形態において、
図4に相当する断面を模式的に示したバルブ装置の断面図であって、EGR弁体が下流通路を全開にした状態からEGR弁周方向の一方側へ回転した状態を示した図である。
【
図11】第1比較例において、
図10に対応した断面を模式的に示した断面図である。
【
図12】第7実施形態において、EGRクーラーとバイパス通路とバルブ装置とを抜粋して示すと共にバルブ装置を模式的な断面で示した図であって、
図5に相当する図である。
【
図13】第8実施形態において、EGR弁体が下流通路を全開にした状態からEGR弁周方向の一方側へ回転した状態を模式的に示したバルブ装置の断面図であって、
図10に相当する図である。
【
図14】第2比較例において、
図13に対応した断面を模式的に示した断面図である。
【
図15】他の実施形態を説明するために、EGRクーラーとバイパス通路とバルブ装置とを抜粋して模式的に示した図であって、
図5に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、各実施形態を説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態において、バルブ装置10は、車両の走行用として車両に設けられた内燃機関システム70の一部を構成する。この内燃機関システム70は、燃料としての水素に点火し水素を燃焼させることで走行用の駆動力を発生する。内燃機関システム70は、バルブ装置10を備えると共に、エンジン71と吸気通路72と排気通路73とEGR通路74とバイパス通路75とターボ式過給器76とインタークーラー77とスロットル弁78とインテークマニホールド79とEGRクーラー80と制御装置85とを備えている。
【0013】
エンジン71は、車両の走行用動力源である。エンジン71は、燃料である水素を燃焼させるために、インジェクタ711と点火プラグ712とを有している。吸気通路72は、インテークマニホールド79を介してエンジン71の吸気側に連結し、排気通路73は、エンジン71の排気側に連結している。
【0014】
内燃機関システム70では、外部の空気である新気が吸気通路72の上流端から矢印Aiのように吸い込まれ、その新気は、吸気通路72からインテークマニホールド79を介してエンジン71の燃焼室内に取り入れられる。また、燃料タンク82に貯蔵されている燃料(具体的には、水素)は、減圧弁83で減圧されてからエンジン71のインジェクタ711へ供給される。
【0015】
エンジン71は、インジェクタ711から噴射された燃料と吸気通路72から取り入れた吸入空気とが混合された混合気を燃焼室内で点火プラグ712によって点火し燃焼させ、これにより、走行用の駆動力を発生する。燃焼後の排気ガスは、排気通路73を通って排気通路73の下流端から矢印Aoのように車外へと排出される。なお、
図1では、各通路72、73、74、75におけるガス流れが太線矢印で示されている。
【0016】
吸気通路72には、上流側から順に、ターボ式過給器76のコンプレッサ761と、インタークーラー77と、スロットル弁78とが配置されている。また、排気通路73には、ターボ式過給器76のタービン762が配置されている。
【0017】
ターボ式過給器76においてコンプレッサ761の羽根車とタービン762の羽根車は直結されており、それらの羽根車は一体回転する。従って、ターボ式過給器76は、排気通路73の排気ガス流れを利用して、外部から吸気通路72への空気の吸入を促進する。
【0018】
インタークーラー77は、そのインタークーラー77を通過する空気を冷却する。スロットル弁78は吸気通路72の開度を増減し、それにより、吸気通路72に流通する空気の流量を増減する。
【0019】
EGR通路74は、エンジン71から排出された排気ガスの一部をEGRガスとしてエンジン71の吸気側へ流すためのガス通路である。そのため、EGR通路74の上流端は、排気通路73のうちエンジン71のガス流れ下流側かつタービン762のガス流れ上流側に連結されている。そして、EGR通路74の下流端は、吸気通路72のうちスロットル弁78のガス流れ下流側かつインテークマニホールド79のガス流れ上流側に連結されている。これにより、EGRガスはEGR通路74から吸気通路72へ流入し、吸気通路72を流れる新気と共に、インテークマニホールド79を経てエンジン71へ吸い込まれる。
【0020】
また、EGR通路74には、EGRクーラー80が配置されている。EGRクーラー80は、例えば熱交換器であり、冷却用の流体とEGR通路74を流れるEGRガスとを熱交換させることにより、そのEGRガスを冷却する。
【0021】
バイパス通路75は、EGRクーラー80を迂回させてEGRガスを流すためのガス通路である。そのため、バイパス通路75の上流端は、EGR通路74のうちEGRクーラー80のガス流れ上流側に連結されている。そして、バイパス通路75の下流端は、EGR通路74のうちEGRクーラー80のガス流れ下流側に連結されている。
【0022】
本実施形態では、バイパス通路75によって、EGRクーラー80を迂回させてEGRガスを流すことにより、EGR通路74のうちバイパス通路75の下流端が連結する連結部位よりもガス流れ下流側で、EGRガスが露点以上に温調される。これにより、その連結部位よりもガス流れ下流側において凝縮水の発生が抑制される。特に本実施形態のエンジン71は水素エンジンであるので、例えば既存のディーゼルエンジンとの比較で2.4倍程度の水蒸気を含むEGRガスが排気通路73からEGR通路74へ流入する。そのため、凝縮水の発生を抑制することは重要である。
【0023】
制御装置85は、不図示のCPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータで構成されており、非遷移的実体的記録媒体であるROM、RAMなどの半導体メモリに格納されたコンピュータプログラムを実行する。制御装置85は、エンジン71に関する種々の制御を実行するエンジン制御装置として機能し、例えば、エンジン71、スロットル弁78、およびバルブ装置10などの作動制御を行う。
【0024】
バルブ装置10は、バイパス通路75に流れるEGRガスの流量を増減すると共に、EGR通路74から吸気通路72へ流れるEGRガスの流量(すなわち、EGR流量)を増減する。そのため、バルブ装置10は、EGRクーラー80のガス流れ下流側でEGR通路74とバイパス通路75とが連結する通路連結部分に設けられている。
【0025】
図2、
図3に示すように、バルブ装置10は、ハウジング12、EGR弁体14、EGR弁軸15、EGR弁付勢部16、バイパス弁体20、バイパス弁軸21、バイパス弁付勢部22、モータ24、減速装置26、および連動部28を備えている。なお、
図2においてハウジング12は
図3のII-II断面で示されている。
【0026】
図1~
図3に示すように、ハウジング12はバルブ装置10の外殻を成し、回転しない非回転部材である。ハウジング12の内部には、EGRガスが流通する第1上流通路121と第2上流通路122と下流通路123と合流部124とが形成されている。すなわち、ハウジング12は、複数の通路121、122、123が形成された通路形成部である。
【0027】
第1上流通路121と合流部124と下流通路123は、第1通路方向D1に沿って、第1上流通路121、合流部124、下流通路123の順にガス流れ上流側から直列に連結ており、直線的に延びる1本の通路を形成している。すなわち、第1上流通路121の向きと下流通路123の向きは同じであり、何れも第1通路方向D1とされている。そして、第1上流通路121は、下流通路123に対し合流部124を介して直列に連結されている。
【0028】
また、第1上流通路121と合流部124と下流通路123は、EGR通路74のうちEGRクーラー80に対するガス流れ下流側の一部を構成している。従って、第1上流通路121には、EGRクーラー80で冷却されたEGRガスが流入する。例えば、第1上流通路121と合流部124と下流通路123とからなる1本の通路は、第1通路方向D1に垂直な断面にて円形状を成している。
【0029】
第2上流通路122は、バイパス通路75の下流端を含み、バイパス通路75の一部を構成している。従って、第2上流通路122には、EGRクーラー80をバイパスしたEGRガスが流入する。
【0030】
また、第2上流通路122は、第2通路方向D2に沿って直線的に延びた通路である。その第2通路方向D2は、第1通路方向D1に対し交差する方向、厳密に言えば第1通路方向D1に対し垂直な方向である。すなわち、第2上流通路122の向きは第2通路方向D2とされ、第2上流通路122は、第1上流通路121と下流通路123とに対し交差する向きで配置されている。
【0031】
例えば、第2上流通路122は、第2通路方向D2に垂直な断面にて円形状を成している。第2上流通路122は、第1上流通路121と下流通路123とに対し小径になっている。
【0032】
図2~
図4に示すように、下流通路123は、第1上流通路121と第2上流通路122とのガス流れ下流側に合流部124を介して連結されている。すなわち、合流部124は、第1上流通路121のガス流れ下流側と第2上流通路122のガス流れ下流側と下流通路123のガス流れ上流側とにそれぞれ連結されている。要するに、合流部124は、ハウジング12内に形成された通路のうち第1上流通路121と第2上流通路122とが合流する空間である。従って、下流通路123には、第1上流通路121から流出したEGRガスと第2上流通路122から流出したEGRガスとが合わさって流入する。
【0033】
図4に示すように例えば、合流部124は、第1上流通路121をその第1上流通路121の向きに沿って仮想的に延長して得られる空間B1と第2上流通路122をその第2上流通路122の向きに沿って仮想的に延長して得られる空間B2とが重複した空間として形成されている。なお、第1上流通路121の向きとは第1通路方向D1のことであり、第2上流通路122の向きとは第2通路方向D2のことである。また、
図4、後述の
図5、
図12、および
図15では、合流部124にドット状のハッチングが付されている。
【0034】
図2~
図4に示すように、EGR弁体14は、下流通路123に配置されており、EGR弁軸心CLaまわりに回転する。そして、EGR弁体14は、EGR弁軸心CLaまわりに回転することにより下流通路123を開閉する。別言すると、EGR弁体14は、EGR弁軸心CLaまわりに回転することにより、下流通路123の開度を増減する。EGR弁軸心CLaは、第1通路方向D1と第2通路方向D2とに垂直な弁軸方向Daに沿った軸心である。そのEGR弁軸心CLaは、下流通路123が第2通路方向D2に有する幅の中心に位置している。
【0035】
具体的に、EGR弁体14は、バタフライ弁体であり、例えば下流通路123の断面形状に合った円形を成し弁軸方向Daに沿った板状に形成されている。その弁軸方向Daに沿った板状とは、言い換えれば、EGR弁軸心CLaに垂直な方向に厚みを有する板状である。
【0036】
EGR弁軸15は、ハウジング12に回転可能に支持された回転軸である。EGR弁軸15にはEGR弁体14がネジ止め等によって固定されており、EGR弁軸15とEGR弁体14は、EGR弁軸心CLaを中心として一体回転する。EGR弁軸15は、EGR弁体14の固定箇所から弁軸方向Daの両側それぞれに延伸しており、EGR弁体14に対する弁軸方向Daの両側それぞれでハウジング12によって回転可能に支持されている。
【0037】
EGR弁付勢部16は、EGR弁体14を付勢するリターンスプリングとして機能し、例えば1つまたは複数のトーションコイルスプリング等によって構成されている。EGR弁付勢部16はハウジング12内に収容されている。EGR弁付勢部16は、EGR弁軸心CLaの周方向Dacの一方側へEGR弁体14を常に付勢している。これにより、EGR弁付勢部16は、EGR弁体14が所定の基準回転位置に戻るように、EGR弁軸15を介してEGR弁体14を常に付勢している。例えば、EGR弁体14が基準回転位置にある場合には、EGR弁体14またはEGR弁軸15が、EGR弁付勢部16の付勢力に対抗する不図示のストッパに対しEGR弁軸心CLaの周方向Dacに押し当てられる。そのため、EGR弁体14は、モータ24の非通電時である非駆動時には、そのEGR弁体14の基準回転位置へEGR弁付勢部16の付勢力によって戻される。
【0038】
なお、本実施形態におけるEGR弁体14の基準回転位置は、EGR弁体14が下流通路123を全開にする回転位置、具体的には、
図2に表示されたEGR弁体14の回転位置である。すなわち、EGR弁体14は基準回転位置にあるときには、下流通路123を全開にする。また、本実施形態の説明では、EGR弁軸心CLaの周方向DacをEGR弁周方向Dacとも称する。
【0039】
下流通路123の全開とは下流通路123の開度が100%であること、すなわち、EGR弁体14の可動範囲内において下流通路123の開度が最大開度にされていることを意味する。また、下流通路123の全閉とは下流通路123の開度が0%であることを意味し、下流通路123の全閉では、EGRガスの漏れを除き下流通路123においてEGRガスの流通が阻止される。第2上流通路122の全開および全閉についても、この下流通路123の全開および全閉と同様である。
【0040】
例えば、本実施形態では、EGR弁体14は、EGR弁体14の基準回転位置からEGR弁周方向Dacの一方側へは回転せず、基準回転位置からEGR弁周方向Dacの他方側へ90度以下の範囲内で回転可能となっている。EGR弁体14が、矢印Raで示すように基準回転位置からEGR弁周方向Dacの他方側へ回転するほど、下流通路123の開度は小さくなる。
【0041】
バイパス弁体20は、第2上流通路122に配置されており、EGR弁軸心CLaと平行なバイパス弁軸心CLbまわりに回転する。そして、バイパス弁体20は、バイパス弁軸心CLbまわりに回転することにより第2上流通路122を開閉する。別言すると、バイパス弁体20は、バイパス弁軸心CLbまわりに回転することにより、第2上流通路122の開度を増減する。バイパス弁軸心CLbは、第2上流通路122が第1通路方向D1に有する幅の中心に位置している。なお、本実施形態ではEGR弁軸心CLaとバイパス弁軸心CLbは互いに平行であるので、弁軸方向DaはEGR弁軸心CLaの軸方向であると共に、バイパス弁軸心CLbの軸方向でもある。
【0042】
具体的に、バイパス弁体20はバタフライ弁体である。例えば、EGR弁体14が基準回転位置にあるときには、バイパス弁体20は、第2上流通路122を全開にする。そして、EGR弁体14が基準回転位置からEGR弁周方向Dacの他方側へ回転すると、それに伴って、バイパス弁体20は、矢印Rbで示すようにバイパス弁軸心CLbの周方向Dbcの一方側へ回転する。バイパス弁体20が第2上流通路122を全開にする
図2の回転位置からバイパス弁軸心CLbの周方向Dbcの一方側へ回転するほど、第2上流通路122の開度は小さくなる。
【0043】
また、EGR弁体14がモータ24の非駆動時に基準回転位置へEGR弁付勢部16の付勢力によって戻されるときには、それと同時に、バイパス弁体20は、第2上流通路122を全開にする回転位置に戻される。そのバイパス弁体20が第2上流通路122を全開にする回転位置とは、具体的には、
図2に表示されたバイパス弁体20の回転位置である。なお、本実施形態の説明では、バイパス弁軸心CLbの周方向Dbcをバイパス弁周方向Dbcとも称する。
【0044】
図2~
図4に示すように、バイパス弁軸21は、ハウジング12に回転可能に支持された回転軸である。バイパス弁軸21にはバイパス弁体20がネジ止め等によって固定されており、バイパス弁軸21とバイパス弁体20は、バイパス弁軸心CLbを中心として一体回転する。バイパス弁軸21は、バイパス弁体20の固定箇所から弁軸方向Daの両側それぞれに延伸しており、バイパス弁体20に対する弁軸方向Daの両側それぞれでハウジング12によって回転可能に支持されている。
【0045】
バイパス弁付勢部22は、例えばトーションコイルスプリング等によって構成されている。バイパス弁付勢部22は、ハウジング12外に配置され、ハウジング12に支持されている。バイパス弁付勢部22は、バイパス弁体20がバイパス弁周方向Dbcの一方側へ回転するように、バイパス弁軸21を介してバイパス弁体20を常に付勢している。
【0046】
モータ24は、EGR弁体14とバイパス弁体20とを回転動作させる駆動源である。モータ24はハウジング12内に収容されており、ハウジング12に固定されたモータ本体241と、モータ24の回転中心であるモータ軸心CLmまわりに回転するモータ軸242と、モータ軸242の回転角度を検出する不図示のモータ回転センサとを有している。なお、モータ軸心CLmは、EGR弁軸心CLaと平行である。
【0047】
モータ24は、
図1の制御装置85からの信号に従ってモータ軸242を回転させ、モータ回転センサによって検出されたモータ軸242の回転角度を示す信号を制御装置85へ出力する。従って、モータ軸242の回転角度および回転方向は制御装置85によって制御される。例えば、モータ24は、EGR弁付勢部16の付勢力に対抗してEGR弁体14とバイパス弁体20とを回転動作させる場合には、その付勢力に打ち勝つトルクを発生する。
【0048】
また、モータ24は、通電されることでモータ軸242の回転角度を現状維持することもでき、モータ24の非通電時にはモータ軸242の回転角度を保持せずモータ軸242を自由回転可能にする。
【0049】
モータ軸242は、減速装置26を介してEGR弁軸15に動力伝達可能に連結されている。その減速装置26は、常時噛み合った複数の歯車を含んで構成されており、モータ軸242の回転を減速してEGR弁軸15へ伝達する。また、減速装置26は、バルブ装置10の外殻の一部を構成するケースを有し、減速装置26が有する複数の歯車はそのケース内に収容されている。
【0050】
また、EGR弁軸15は、そのEGR弁軸15のうちEGR弁体14の固定箇所に対する弁軸方向Daの一方側で連動部28に動力伝達可能に連結し、EGR弁体14の固定箇所に対する弁軸方向Daの他方側で減速装置26に動力伝達可能に連結している。そして、連動部28は、EGR弁軸15とバイパス弁軸21とを動力伝達可能に連結している。そのため、モータ24の回転駆動力は、モータ軸242、減速装置26、EGR弁軸15、連動部28、バイパス弁軸21の順に伝達される。
【0051】
また、
図2、
図5に示すように、モータ24は、バイパス弁体20に対し合流部124を挟んで反対側に配置されている。そして、モータ軸心CLmは、EGR弁軸心CLaに対して、下流通路123の向き(すなわち、第1通路方向D1)に垂直な方向である第2通路方向D2に並んで配置されている。なお、
図5、後述の
図12、および
図15において白抜き矢印はEGRガスの流れを示している。
【0052】
図2、
図3に示すように、連動部28は、EGR弁体14の回転動作に対しバイパス弁体20を連動させる連動機構である。具体的に、本実施形態の連動部28はカムリンク機構として構成されており、カム29と、そのカム29の回転に対して従動する従動回転部30とを有している。
【0053】
カム29は、弁軸方向Daに厚みを有する平板状を成し、EGR弁軸15に固定されている。そのため、カム29は、EGR弁体14およびEGR弁軸15と共にEGR弁軸心CLaまわりに一体回転する。カム29は、カム29の周縁に形成されたカム軌道291を有している。このカム軌道291は、カム29のプロファイルとも称される。カム29には、EGR弁軸心CLaの軸方向である弁軸方向Daに貫通したカム貫通孔29aが、例えばカム29の肉盗みとして形成されている。
【0054】
また、従動回転部30は、弁軸方向Daに厚みを有する平板状のレバー301と、レバー301に回転可能に支持されたカム従動子としてのローラー302とを有している。ローラー302は、バイパス弁軸心CLbに平行な軸心まわりにレバー301に対し相対回転し、そのローラー302の軸心は、バイパス弁軸心CLbに対して径方向にずれて配置されている。
【0055】
また、レバー301はバイパス弁軸21に固定されている。そのため、レバー301は、バイパス弁体20およびバイパス弁軸21と共にバイパス弁軸心CLbまわりに一体回転する。
【0056】
バイパス弁付勢部22は、バイパス弁軸21に固定されたバイパス弁体20を上記したように付勢すると共に、バイパス弁軸21に固定されたレバー301も付勢する。すなわち、バイパス弁付勢部22は、レバー301がバイパス弁周方向Dbc(
図4参照)の一方側へ回転するように、バイパス弁軸21を介してレバー301を常に付勢している。これにより、従動回転部30のローラー302は常にカム軌道291に押し付けられているので、従動回転部30は、ローラー302をカム軌道291に沿わせながらカム29の回転動作に連動して回転する。
【0057】
このように構成されたバルブ装置10では、
図2~
図4に示すように、モータ24が通電されることによりモータ軸242を回転させると、そのモータ軸242の回転は減速装置26を介してEGR弁軸15へ伝達され、EGR弁軸15が回転する。そして、EGR弁体14とカム29とがEGR弁軸心CLaまわりにEGR弁軸15と一体回転する。
【0058】
下流通路123の開度は、このEGR弁体14の回転によって変化する。また、カム29が回転すると、従動回転部30のレバー301がローラー302をカム軌道291に沿わせながら、そのカム29の回転動作に連動して回転する。そして、バイパス弁体20とバイパス弁軸21とが、バイパス弁軸心CLbまわりにレバー301と一体回転する。第2上流通路122の開度は、このバイパス弁体20の回転によって変化する。
【0059】
上述したように、本実施形態によれば、
図2、
図5に示すように、モータ24は、バイパス弁体20に対し合流部124を挟んで反対側に配置されている。これにより、EGR弁体14とバイパス弁体20とを回転動作させるモータ24は、第2上流通路122から遠ざけて配置される。そのため、そのモータ24は、例えば第2上流通路122に隣接して配置される場合と比較して、第2上流通路122に流れる高温のEGRガスの熱の影響を受けにくい。従って、特許文献1に記載されたEGR装置の構成と比較して、EGRクーラー80をバイパスした高温のEGRガスによる熱害を低減できる。
【0060】
そして、本実施形態のバルブ装置10では、1つのモータ24でEGR弁体14とバイパス弁体20との両方を作動させることができるので、バルブ装置10の体格拡大を抑制し、バルブ装置10の低コスト化を図ることが可能である。
【0061】
また、EGRクーラー80を通過したEGRガスに、EGRクーラー80をバイパスしたEGRガスがハウジング12内の合流部124で混合される。そのため、その合流部124に対するガス流れ下流側では、EGRガスを露点限界まで昇温させることにより、凝縮水の発生を回避することが可能である。
【0062】
また、EGR弁体14が下流通路123に設けられ、バイパス弁体20が第2上流通路122に設けられているので、第1上流通路121に弁体を設けなくても、EGRクーラー80を通過するEGRガスの流量を調整できる。そのため、第1上流通路121に弁体を設ける場合と比較して、仮に凝縮水が発生したとしても、その凝縮水の凝固に起因したバルブ装置10の作動不良を回避しやすい。
【0063】
(1)また、本実施形態によれば、モータ軸心CLmは、EGR弁軸心CLaと平行であり、且つ、EGR弁軸心CLaに対して、下流通路123の向きに垂直な方向(すなわち、第2通路方向D2)に並んで配置されている。従って、EGR弁体14とそのEGR弁体14を回転駆動するモータ24とを互いに隣接させ且つ最短距離で配置することができる。これにより、例えば、モータ24を設けるために必要とされる体積を小さくすることが可能である。
【0064】
(2)また、本実施形態によれば、
図2、
図3に示すように、連動部28は、EGR弁体14と共に回転しカム軌道291を有するカム29と、バイパス弁体20と共に回転しローラー302を有する従動回転部30とを有している。そして、その従動回転部30は、ローラー302をカム軌道291に沿わせながらカム29の回転動作に連動して回転する。
【0065】
従って、カム軌道291の形状に応じて、EGR弁体14の回転量とバイパス弁体20の回転量とが例えば非線形の関係となるようにEGR弁体14とバイパス弁体20とを連動させることが容易である。要するに、第2上流通路122の開度と下流通路123の開度との関係である通路開度特性を設定することの自由度を高くすることが可能である。
【0066】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。このことは後述の実施形態の説明においても同様である。
【0067】
図6に示すように、本実施形態では連動部28の構造が、第1実施形態と異なる。つまり、本実施形態の連動部28は、カムリンク機構ではなく、レバーリンク機構として構成されている。
【0068】
具体的に、本実施形態の連動部28は、カム29と従動回転部30(
図2参照)とを有しておらず、その替わりに、第1アーム31と第2アーム32と連結レバー33とを備えている。
【0069】
第1アーム31は、EGR弁軸15に固定されている。そのため、第1アーム31は、EGR弁体14およびEGR弁軸15と共にEGR弁軸心CLaまわりに一体回転する。また、第2アーム32は、バイパス弁軸21に固定されている。そのため、第2アーム32は、バイパス弁体20およびバイパス弁軸21と共にバイパス弁軸心CLbまわりに一体回転する。
【0070】
連結レバー33は、EGR弁体14とバイパス弁体20とを連結するものである。そのため、連結レバー33は、第1アーム31に対し回転可能に連結された一端部331と、第2アーム32に対し回転可能に連結された他端部332とを有している。その連結レバー33の一端部331は、EGR弁軸心CLaに対し偏心して配置され、連結レバー33の他端部332は、バイパス弁軸心CLbに対し偏心して配置されている。
【0071】
このような構成により、本実施形態の連動部28は、EGR弁体14の回転動作に対し連結レバー33を介してバイパス弁体20を連動させる。例えば、EGR弁体14が基準回転位置からEGR弁周方向Dacの他方側へ矢印Rcのように回転すると、バイパス弁体20は、第2上流通路122を全開にする回転位置から矢印Rdのようにバイパス弁周方向Dbcの他方側へ回転する。
【0072】
(1)上述したように、本実施形態によれば、連動部28は、EGR弁体14の回転動作に対し連結レバー33を介してバイパス弁体20を連動させるので、EGR弁軸心CLaとバイパス弁軸心CLbとの間の距離に応じて連結レバー33の長さを定めればよい。従って、EGR弁軸心CLaとバイパス弁軸心CLbとの間の距離を設定する場合における自由度を高くすることが可能である。
【0073】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0074】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0075】
図7に示すように、本実施形態では連動部28の構造が、第1実施形態と異なる。つまり、本実施形態の連動部28は、カムリンク機構ではなく、ギヤリンク機構として構成されている。
【0076】
具体的に、本実施形態の連動部28は、カム29と従動回転部30(
図2参照)とを有しておらず、その替わりに、主動歯車35と従動歯車36とを有している。
【0077】
主動歯車35は、EGR弁軸15に固定されている。そのため、主動歯車35は、EGR弁体14およびEGR弁軸15と共にEGR弁軸心CLaまわりに一体回転する。また、従動歯車36は、バイパス弁軸21に固定されている。そのため、従動歯車36は、バイパス弁体20およびバイパス弁軸21と共にバイパス弁軸心CLbまわりに一体回転する。更に、主動歯車35と従動歯車36は、互いに常時噛み合っている。
【0078】
このような構成により、本実施形態の連動部28は、EGR弁体14の回転動作に対し主動歯車35と従動歯車36とを介してバイパス弁体20を連動させる。例えば、EGR弁体14が基準回転位置からEGR弁周方向Dacの他方側へ矢印Reのように回転すると、バイパス弁体20は、第2上流通路122を全開にする回転位置から矢印Rfのようにバイパス弁周方向Dbcの他方側へ回転する。
【0079】
(1)上述したように、本実施形態によれば、連動部28は、EGR弁体14と共に回転する主動歯車35と、バイパス弁体20と共に回転し主動歯車35に噛み合う従動歯車36とを有している。従って、EGR弁体14とバイパス弁体20とを回転動作させるモータ24のトルク変動が小さいので、EGR弁体14とバイパス弁体20とを回転動作させる際の制御性が良い。
【0080】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0081】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0082】
図8に示すように、本実施形態では、カム29はカム突起部292を有している。そのカム突起部292は、カム貫通孔29aの周縁29bから弁軸方向Da(
図3参照)の一方側に突き出ている。そして、そのカム突起部292は、カム貫通孔29aの周縁29bに沿って延びている。例えば、カム突起部292は、カム貫通孔29aの全周にわたって設けられ、弁軸方向Daに延びた筒状に形成されている。
【0083】
(1)このようにカム29にカム突起部292が設けられているので、バルブ作動時に空気と触れる部分の表面積を増やすことが可能である。従って、バルブ装置10の熱を外部へ放散する冷却効果を高めることが可能である。
【0084】
例えば、カム29が矢印RgのようにEGR弁軸15と共に回転すると、カム突起部292に対し相対的に空気流れA1が生じ、その空気流れA1がカム突起部292に当たるので、カム29からの放熱が促進される。
【0085】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0086】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0087】
図9に示すように、本実施形態では、カム29は複数のカム突起部293を有し、従動回転部30のレバー301は複数の従動突起部303を有している。その複数のカム突起部293は、カム29のうち弁軸方向Da(
図3参照)の一方側に形成された一方側表面29cに設けられ、その一方側表面29cから弁軸方向Daの一方側へ突き出ている。複数のカム突起部293は相互間隔をあけて互いに平行に配置され、カム29の一方側表面29cに沿って延びている。
【0088】
複数の従動突起部303は、レバー301のうち弁軸方向Daの一方側に形成された一方側表面301aに設けられ、その一方側表面301aから弁軸方向Daの一方側へ突き出ている。複数の従動突起部303は相互間隔をあけて互いに平行に配置され、レバー301の一方側表面301aに沿って延びている。なお、カム29の一方側表面29cは本開示のカムの表面に対応し、レバー301の一方側表面301aは本開示の従動回転部の表面に対応する。
【0089】
(1)このようにカム突起部293と従動突起部303とが設けられているので、バルブ作動時に空気と触れる部分の表面積を増やすことが可能である。従って、バルブ装置10の熱を外部へ放散する冷却効果を高めることが可能である。
【0090】
例えば、カム29が矢印RhのようにEGR弁軸15と共に回転すると、カム突起部293に対し相対的に空気流れA2が生じ、その空気流れA2がカム突起部293に当たるので、カム29からの放熱が促進される。また、レバー301が回転した場合に関してもこれと同様であり、レバー301からの放熱が促進される。
【0091】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0092】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0093】
図10に示すように、EGR弁体14は、EGR弁軸心CLaに垂直で平板状のEGR弁体14に沿った方向であるEGR弁体横方向の一方側に設けられた一側端141と、そのEGR弁体横方向の他方側に設けられた他側端142とを有している。本実施形態において、このことは第1実施形態と同様である。
【0094】
ここで、第2上流通路122をその第2上流通路122の向きに沿って仮想的に延長して得られる空間B2である延長空間B2を想定する。この場合、EGR弁体14が下流通路123を全開にした状態では、EGR弁体14の一側端141は、延長空間B2が下流通路123側に有する側縁B2aよりもガス流れ上流側に位置する。そのEGR弁体14が下流通路123を全開にした状態とは、EGR弁体14の基準回転位置にある状態である。本実施形態において、このことも第1実施形態と同様である。なお、
図10では、その基準回転位置にあるEGR弁体14の一部分が二点鎖線L1で表されている。
【0095】
但し、本実施形態では、EGR弁体14が下流通路123を閉じる向きに回転する場合の回転方向は矢印Riのとおりであり、EGR弁体14が下流通路123を開く向きに回転する場合の回転方向は、矢印Riとは逆方向とされている。この点で、本実施形態は第1実施形態に対し異なっている。
【0096】
具体的に本実施形態では、モータ24は、EGR弁体14が下流通路123を全開にした状態から下流通路123を閉じる向きにEGR弁体14を回転させる場合には、常に矢印RiのようにEGR弁体14を回転させる。すなわち、
図10の一側端141が側縁B2aよりもガス流れ上流側に位置する場合において、モータ24は、下流通路123を閉じる向きにEGR弁体14を回転させる場合には、常に一側端141が第2上流通路122から遠ざかる向きにEGR弁体14を回転させる。
【0097】
その一方で、モータ24は、下流通路123の全開へ向けて下流通路123を開く向きにEGR弁体14を回転させる場合には、常に矢印Riとは逆方向へEGR弁体14を回転させる。すなわち、
図10の一側端141が側縁B2aよりもガス流れ上流側に位置する場合において、モータ24は、下流通路123を開く向きにEGR弁体14を回転させる場合には、常に一側端141が第2上流通路122へ近づく向きにEGR弁体14を回転させる。
【0098】
別言すると、モータ24は、EGR弁体14を基準回転位置から下流通路123を閉じる向きにEGR弁体14を回転させる場合には、EGR弁周方向Dacの一方側へEGR弁体14を回転させる。そして、モータ24は、EGR弁体14を基準回転位置から下流通路123を閉じる向きにEGR弁体14を回転させる場合、EGR弁体14を基準回転位置からEGR弁周方向Dacの他方側へはEGR弁体14を回転させない。
【0099】
従って、本実施形態では、EGR弁体14は下流通路123を全開にした状態からEGR弁周方向Dacの一方側へ回転するほど、一側端141を第2上流通路122から遠ざけながら下流通路123の開度を小さくする。そして、モータ24は、EGR弁体14が下流通路123を全閉にした全閉回転位置からEGR弁周方向Dacの他方側へ90度回転した回転位置までの回転範囲R1内でEGR弁体14を回転させる。
【0100】
このようにEGR弁体14が回転動作するので、EGRクーラー80で冷却され矢印E1のように流れるEGRガスは、そのままでは、EGR弁体14に当たらない。すなわち、その冷却され矢印E1のように流れるEGRガスは、EGRクーラー80をバイパスし矢印E2のように流れるEGRガスと混合し昇温してから、矢印E3で示すようにEGR弁体14に当たる。従って、EGR弁体14が冷やされにくい。
【0101】
そのため、EGR弁体14に高温多湿のEGRガスが当たることに起因した凝縮水の発生を抑制することができる。そして、その凝縮水の発生を抑制しつつ、EGR弁軸心CLaを合流部124に近づけて配置することによりEGR弁体14とバイパス弁体20との間隔を縮めて、バルブ装置10の小型化を図ることができる。
【0102】
ここで、本実施形態において凝縮水の発生が抑制される理由を説明するために、
図11に示す第1比較例を用いる。その第1比較例のバルブ装置90では、
図11に示すように、EGR弁体14は、下流通路123を全開にした状態から本実施形態とは逆向きに回転する。
【0103】
具体的に、第1比較例において、モータ24は、EGR弁体14が下流通路123を全開にした状態から下流通路123を閉じる向きにEGR弁体14を回転させる場合には、常に矢印RjのようにEGR弁体14を回転させる。すなわち、
図11の一側端141が側縁B2aよりもガス流れ上流側に位置する場合において、モータ24は、下流通路123を閉じる向きにEGR弁体14を回転させる場合には、一側端141が第2上流通路122へ近づく向きにEGR弁体14を回転させる。
【0104】
その一方で、第1比較例のモータ24は、下流通路123の全開へ向けて下流通路123を開く向きにEGR弁体14を回転させる場合には、常に矢印Rjとは逆方向へEGR弁体14を回転させる。すなわち、
図11の一側端141が側縁B2aよりもガス流れ上流側に位置する場合において、モータ24は、下流通路123を開く向きにEGR弁体14を回転させる場合には、一側端141が第2上流通路122から遠ざかる向きにEGR弁体14を回転させる。これらの点を除き、第1比較例は本実施形態と同様である。
【0105】
この第1比較例では、
図11に示すように、EGR弁体14は、EGRクーラー80で冷却され矢印E4のように流れるEGRガスと、EGRクーラー80をバイパスし矢印E5のように流れるEGRガスとの混合を妨げる姿勢になりやすい。そのため、EGRクーラー80で冷却され矢印E4のように流れるEGRガスがEGR弁体14に直接当たる場合が多いので、EGR弁体14が冷やされやすい。その結果、冷えたEGR弁体14に高温多湿のEGRガスが当たることに起因して凝縮水Wcが発生しやすい。
【0106】
これに対し、本実施形態では第1比較例との比較で、上記したようにEGR弁体14が冷やされにくいので、EGR弁体14に高温多湿のEGRガスが当たることに起因した凝縮水の発生を抑制することができる。
【0107】
なお、本実施形態では、EGR弁体14の回転動作する方向が上記のように限定されているので、これに合わせて、バルブ装置10の種々の構成も第1実施形態に対して変更される。例えば、本実施形態のEGR弁付勢部16(
図3参照)は、EGR弁軸心CLaの周方向Dacの一方側ではなく他方側へEGR弁体14を常に付勢している。また、連動部28のカム29の形状は第1実施形態と同様ではなく、そのカム29は、EGR弁体14の回転動作する方向に合わせて形成されている。
【0108】
また、本実施形態では、第1上流通路121が本開示の一方の通路に対応し、第2上流通路122が本開示の他方の通路に対応する。
【0109】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0110】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2~第5実施形態の何れかと組み合わせることも可能である。
【0111】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0112】
図12に示すように、本実施形態では、第1上流通路121、第2上流通路122、およびバイパス弁体20の配置などが、第1実施形態と異なっている。
【0113】
具体的に本実施形態では、第2上流通路122と合流部124と下流通路123は、第1通路方向D1に沿って、第2上流通路122、合流部124、下流通路123の順にガス流れ上流側から直列に連結ており、直線的に延びる1本の通路を形成している。すなわち、第2上流通路122の向きと下流通路123の向きは同じであり、何れも第1通路方向D1とされている。そして、第2上流通路122は、下流通路123に対し合流部124を介して直列に連結されている。
【0114】
また、第1上流通路121は、第2通路方向D2に沿って直線的に延びている。すなわち、第1上流通路121の向きは第2通路方向D2とされ、第1上流通路121は、第2上流通路122と下流通路123とに対し交差する向きで配置されている。そして、第1上流通路121は、下流通路123に対し合流部124を介して連結されている。なお、本実施形態でも第1実施形態と同様に、第2通路方向D2は、第1通路方向D1に対し交差する方向、厳密に言えば第1通路方向D1に対し垂直な方向である。
【0115】
本実施形態のバイパス弁体20は、第1実施形態と同様に、第2上流通路122に配置されており、EGR弁軸心CLaと平行なバイパス弁軸心CLbまわりに回転する。そのため、バイパス弁体20の回転中心であるバイパス弁軸心CLbは、EGR弁体14の回転中心であるEGR弁軸心CLaに対し第1通路方向D1に並んで配置されている。そして、バイパス弁軸21も、EGR弁軸15に対し第1通路方向D1に並んで配置されている。
【0116】
また、本実施形態のEGR弁体14は合流部124に入ることなく、合流部124から離れて配置されている。
【0117】
なお、本実施形態では、上記のようにEGR弁軸心CLaとバイパス弁軸心CLbとの相対的な位置関係が第1実施形態とは異なるので、これに合わせて、バルブ装置10の種々の構成も第1実施形態に対して変更される。例えば、連動部28のカム29(
図2参照)の形状は第1実施形態と同様ではなく、そのカム29は、EGR弁軸心CLaとバイパス弁軸心CLbとの相対的な位置関係に合わせて形成されている。
【0118】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0119】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2~第5実施形態の何れかと組み合わせることも可能である。
【0120】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第7実施形態と異なる点を主として説明する。
【0121】
図13に示すように、本実施形態は、第7実施形態に第6実施形態を組み合わせた実施形態である。具体的に説明すると、本実施形態のEGR弁体14は、第6実施形態と同様に一側端141と他側端142とを有している。本実施形態において、このことは第7実施形態と同様である。
【0122】
ここで、第1上流通路121をその第1上流通路121の向き(すなわち、第2通路方向D2)に沿って仮想的に延長して得られる空間B3である延長空間B3を想定する。この場合、EGR弁体14が下流通路123を全開にした状態では、EGR弁体14の一側端141は、延長空間B3が下流通路123側に有する側縁B3aよりもガス流れ上流側に位置する。この点で、本実施形態は第7実施形態に対し異なっている。なお、EGR弁体14が下流通路123を全開にした状態とは、第7実施形態と同様に、EGR弁体14の基準回転位置にある状態である。また、
図13でも
図10と同様に、その基準回転位置にあるEGR弁体14の一部分が二点鎖線L1で表されている。
【0123】
また、本実施形態では、EGR弁体14が下流通路123を閉じる向きに回転する場合の回転方向は矢印Riのとおりであり、EGR弁体14が下流通路123を開く向きに回転する場合の回転方向は、矢印Riとは逆方向とされている。
【0124】
具体的に本実施形態では、モータ24は、EGR弁体14が下流通路123を全開にした状態から下流通路123を閉じる向きにEGR弁体14を回転させる場合には、常に矢印RiのようにEGR弁体14を回転させる。すなわち、
図13の一側端141が側縁B3aよりもガス流れ上流側に位置する場合において、モータ24は、下流通路123を閉じる向きにEGR弁体14を回転させる場合には、常に一側端141が第1上流通路121から遠ざかる向きにEGR弁体14を回転させる。
【0125】
その一方で、モータ24は、下流通路123の全開へ向けて下流通路123を開く向きにEGR弁体14を回転させる場合には、常に矢印Riとは逆方向へEGR弁体14を回転させる。すなわち、
図13の一側端141が側縁B3aよりもガス流れ上流側に位置する場合において、モータ24は、下流通路123を開く向きにEGR弁体14を回転させる場合には、常に一側端141が第1上流通路121へ近づく向きにEGR弁体14を回転させる。
【0126】
別言すると、モータ24は、EGR弁体14を基準回転位置から下流通路123を閉じる向きにEGR弁体14を回転させる場合には、EGR弁周方向Dacの一方側へEGR弁体14を回転させる。そして、モータ24は、EGR弁体14を基準回転位置から下流通路123を閉じる向きにEGR弁体14を回転させる場合、EGR弁体14を基準回転位置からEGR弁周方向Dacの他方側へはEGR弁体14を回転させない。
【0127】
従って、本実施形態では、EGR弁体14は下流通路123を全開にした状態からEGR弁周方向Dacの一方側へ回転するほど、一側端141を第1上流通路121から遠ざけながら下流通路123の開度を小さくする。そして、モータ24は、EGR弁体14が下流通路123を全閉にした全閉回転位置からEGR弁周方向Dacの他方側へ90度回転した回転位置までの回転範囲R1内でEGR弁体14を回転させる。
【0128】
このようにEGR弁体14が回転動作するので、EGRクーラー80(
図12参照)で冷却され矢印E6のように流れるEGRガスは、そのままでは、EGR弁体14に当たらない。すなわち、その冷却され矢印E6のように流れるEGRガスは、EGRクーラー80をバイパスし矢印E7のように流れるEGRガスと混合し昇温してから、矢印E8で示すようにEGR弁体14に当たる。従って、EGR弁体14が冷やされにくい。
【0129】
そのため、本実施形態でも第6実施形態と同様に、EGR弁体14に高温多湿のEGRガスが当たることに起因した凝縮水の発生を抑制することができる。そして、その凝縮水の発生を抑制しつつ、EGR弁軸心CLaを合流部124に近づけて配置することによりEGR弁体14とバイパス弁体20との間隔を縮めて、バルブ装置10の小型化を図ることができる。
【0130】
ここで、本実施形態において凝縮水の発生が抑制される理由を説明するために、
図14に示す第2比較例を用いる。その第2比較例のバルブ装置92では、
図14に示すように、EGR弁体14は、下流通路123を全開にした状態から本実施形態とは逆向きに回転する。
【0131】
具体的に、第2比較例において、モータ24は、EGR弁体14が下流通路123を全開にした状態から下流通路123を閉じる向きにEGR弁体14を回転させる場合には、
図11の第1比較例と同様に、常に矢印RjのようにEGR弁体14を回転させる。
【0132】
その一方で、第2比較例のモータ24は、下流通路123の全開へ向けて下流通路123を開く向きにEGR弁体14を回転させる場合には、
図11の第1比較例と同様に、常に矢印Rjとは逆方向へEGR弁体14を回転させる。これらの点を除き、第2比較例は本実施形態と同様である。
【0133】
この第2比較例では、
図14に示すように、EGR弁体14は、EGRクーラー80で冷却され矢印E9のように流れるEGRガスと、EGRクーラー80をバイパスし矢印E10のように流れるEGRガスとの混合を妨げる姿勢になりやすい。そのため、第2比較例でも第1比較例と同様に、EGRクーラー80で冷却され矢印E9のように流れるEGRガスがEGR弁体14に直接当たる場合が多いので、EGR弁体14が冷やされやすい。その結果、冷えたEGR弁体14に高温多湿のEGRガスが当たることに起因して凝縮水Wcが発生しやすい。
【0134】
これに対し、本実施形態では第2比較例との比較で、上記したようにEGR弁体14が冷やされにくいので、EGR弁体14に高温多湿のEGRガスが当たることに起因した凝縮水の発生を抑制することができる。
【0135】
なお、本実施形態では、EGR弁体14の回転動作する方向が上記のように限定されているので、これに合わせて、バルブ装置10の種々の構成も第7実施形態に対して変更される。例えば、本実施形態のEGR弁付勢部16(
図3参照)は、EGR弁軸心CLaの周方向Dacの一方側ではなく他方側へEGR弁体14を常に付勢している。また、連動部28のカム29の形状は第7実施形態と同様ではなく、そのカム29は、EGR弁体14の回転動作する方向に合わせて形成されている。
【0136】
また、本実施形態では、第1上流通路121が本開示の他方の通路に対応し、第2上流通路122が本開示の一方の通路に対応する。
【0137】
以上説明したことを除き、本実施形態は第7実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第7実施形態と共通の構成から奏される効果を第7実施形態と同様に得ることができる。
【0138】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態において、
図1に示す内燃機関システム70で用いられる燃料は水素であるが、これは一例である。その内燃機関システム70は、例えばガソリンなどの化石燃料を動力発生用の燃料として用いるものであっても差し支えない。
【0139】
(2)上述の第3実施形態では、
図7に示すように、従動歯車36は、主動歯車35に対し直接噛み合っているが、これは一例である。例えば、主動歯車35と従動歯車36との他に中間歯車が設けられ、従動歯車36は、主動歯車35に対し、その中間歯車を介して間接的に噛み合っていても差し支えない。
【0140】
(3)上述の第1実施形態では、
図5に示すように、モータ軸心CLmは、EGR弁軸心CLaに対して第2通路方向D2に並んで配置されているが、モータ24の配置はこれに限定されるものではない。モータ24がバイパス弁体20に対し合流部124を挟んで反対側に配置されていればよく、例えば
図15に示すように、モータ24は、二点鎖線M1で示す位置に配置されていてもよい。或いは、モータ24は、二点鎖線M2で示す位置に配置されていてもよい。
【0141】
(4)上述の第7実施形態では、
図12に示すように、モータ24は、第2通路方向D2で下流通路123に対し第1上流通路121側とは反対側に配置されているが、これは一例である。例えば、モータ24は、
図12の二点鎖線M3で示す位置に配置されていてもよい。すなわち、モータ24は、第2通路方向D2で下流通路123に対し第1上流通路121側に配置されていてもよい。このモータ24の配置であっても、モータ24がバイパス弁体20に対し合流部124を挟んで反対側に配置されていることに変わりはない。
【0142】
(5)上述の第1実施形態では、
図2に示すように、カム軌道291はカム29の周縁の一部によって構成されているが、カム29の周縁ではなく、例えばカム29に設けられた溝または長孔によって構成されていても差し支えない。
【0143】
(6)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【0144】
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0145】
10 バルブ装置
12 ハウジング
14 EGR弁体
20 バイパス弁体
24 モータ
28 連動部
121 第1上流通路
122 第2上流通路
123 下流通路
124 合流部