(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20241001BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241001BHJP
【FI】
H02M1/00 F
H02M7/48 M
H02M1/00 H
(21)【出願番号】P 2021135218
(22)【出願日】2021-08-20
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】モイセエフ セルゲイ
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/099959(WO,A1)
【文献】特表2016-519921(JP,A)
【文献】特開2000-324846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1印加電流が流れる第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子と互いに直列に接続され、第2印加電流が流れる第2スイッチング素子と、
前記第1印加電流の変化、又は前記第2印加電流の変化に応じて逆起電圧を発生させるインダクタンス成分と、
前記逆起電圧を第1フィードバック電圧に変換する第1フィードバック回路と、
入力された電圧を第2フィードバック電圧に変換する第2フィードバック回路と、
前記第1印加電流及び前記第2印加電流が前記第2フィードバック回路に流れることを抑制するとともに、前記逆起電圧に基づく電圧を前記第2フィードバック回路に出力する電流抑制部と、
第1外部指令電圧に基づいて、前記第1スイッチング素子を駆動させる第1ドライバ回路と、
第2外部指令電圧に基づいて、前記第2スイッチング素子を駆動させる第2ドライバ回路と、を備え、
前記インダクタンス成分が前記第1印加電流の変化によって前記逆起電圧を発生させる場合、前記第1ドライバ回路は、前記第1外部指令電圧と、前記第1フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、前記第1スイッチング素子に出力し、前記第2ドライバ回路は、前記第2外部指令電圧と、前記第2フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、前記第2スイッチング素子に出力し、
前記インダクタンス成分が前記第2印加電流の変化によって前記逆起電圧を発生させる場合、前記第1ドライバ回路は、前記第1外部指令電圧と、前記第2フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、前記第1スイッチング素子に出力し、前記第2ドライバ回路は、前記第2外部指令電圧と、前記第1フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、前記第2スイッチング素子に出力する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記インダクタンス成分は、前記第1スイッチング素子又は/及び前記第2スイッチング素子と接続される配線の寄生インダクタンスにより実現される、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電流抑制部は、前記インダクタンス成分と磁気結合されたインダクタを備え、
前記インダクタは、前記インダクタンス成分が発生させる前記逆起電圧により、起電圧を発生させ、
前記第2フィードバック回路は、前記インダクタが発生させた前記起電圧を前記第2フィードバック電圧に変換する、
請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電流抑制部は、差動増幅回路を備え、
前記差動増幅回路は、前記逆起電圧が一対の入力端子に入力され、前記一対の入力端子間の電位差を増幅して出力し、
前記第2フィードバック回路は、前記差動増幅回路が出力した電圧を前記第2フィードバック電圧に変換する、
請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スイッチング素子としてのIGBTを駆動させるドライバ回路が記載されている。特許文献1に記載のドライバ回路は、スイッチング損失の低減とサージ電圧又はサージ電流の低減との両立を図るために、エミッタ配線のインダクタンス成分にて発生する逆起電圧をフィードバックさせるアクティブゲート制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、アクティブゲート制御を行う場合、インダクタンス成分は、少なくともアクティブゲート制御に使用できるレベルの逆電圧を発生させることができるインダクタンス値を有する必要がある。
【0005】
互いに直列に接続される複数のスイッチング素子を有する電力変換装置では、スイッチング素子毎に、アクティブゲート制御に使用できるレベルの逆電圧を発生させることができるインダクタンス値を有するインダクタンス成分を設けると、配線インダクタンスの増加に伴うサージ電圧やサージ電流が増加してしまったり、装置が大型化してしまったりする場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する電力変換装置は、第1印加電流が流れる第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子と互いに直列に接続され、第2印加電流が流れる第2スイッチング素子と、前記第1印加電流の変化、又は前記第2印加電流の変化に応じて、逆起電圧を発生させるインダクタンス成分と、前記逆起電圧を第1フィードバック電圧に変換する第1フィードバック回路と、入力された電圧を、第2フィードバック電圧に変換する第2フィードバック回路と、前記第1印加電流及び前記第2印加電流が前記第2フィードバック回路に流れることを抑制するとともに、前記逆起電圧に基づく電圧を前記第2フィードバック回路に出力する電流抑制部と、第1外部指令電圧に基づいて、前記第1スイッチング素子を駆動させる第1ドライバ回路と、第2外部指令電圧に基づいて、前記第2スイッチング素子を駆動させる第2ドライバ回路と、を備え、前記インダクタンス成分が前記第1印加電流の変化によって前記逆起電圧を発生させる場合、前記第1ドライバ回路は、前記第1外部指令電圧と、前記第1フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、前記第1スイッチング素子に出力し、前記第2ドライバ回路は、前記第2外部指令電圧と、前記第2フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、前記第2スイッチング素子に出力し、前記インダクタンス成分が前記第2印加電流の変化によって前記逆起電圧を発生させる場合、前記第1ドライバ回路は、前記第1外部指令電圧と、前記第2フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、前記第1スイッチング素子に出力し、前記第2ドライバ回路は、前記第2外部指令電圧と、前記第1フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、前記第2スイッチング素子に出力することを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、電力変換装置は、互いに直列に接続される第1スイッチング素子、及び第2スイッチング素子に対して、共通のインダクタンス成分を用いてフィードバック制御を行う。これにより、電力変換装置は、スイッチング損失の低減とサージ電圧又はサージ電流の低減との両立を図りつつ、電力変換装置を小型化することができる。
【0008】
上記電力変換装置において、前記インダクタンス成分は、前記第1スイッチング素子又は/及び前記第2スイッチング素子と接続される配線の寄生インダクタンスにより実現されてもよい。
【0009】
かかる構成によれば、電力変換装置は、寄生インダクタンスを用いることにより、別途インダクタンスを備える場合に比して、小型化することができる。
上記目的を達成する電力変換装置において、前記電流抑制部は、前記インダクタンス成分と磁気結合されたインダクタを備え、前記インダクタは、前記インダクタンス成分が発生させる前記逆起電圧により、起電圧を発生させ、前記第2フィードバック回路は、前記インダクタが発生させた前記起電圧を前記第2フィードバック電圧に変換してもよい。
【0010】
上記目的を達成する電力変換装置において、前記電流抑制部は、差動増幅回路を備え、前記差動増幅回路は、前記逆起電圧が一対の入力端子に入力され、前記一対の入力端子間の電位差を増幅して出力し、前記第2フィードバック回路は、前記差動増幅回路が出力した電圧を前記第2フィードバック電圧に変換してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スイッチング損失の低減とサージ電圧又はサージ電流の低減との両立を図りつつ、電力変換装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
[電力変換装置10の構成]
以下、電力変換装置の一実施形態について説明する。本実施形態の電力変換装置10は、例えば、車両200に搭載されており、車両200に設けられている電動モータ201を駆動するのに用いられる。
【0014】
詳細には、本実施形態の電動モータ201は、車両200の車輪を回転させるための走行用モータである。本実施形態の電動モータ201は、3相コイル202u,202v,202wを有している。3相コイル202u,202v,202wは、例えば、Y結線されている。3相コイル202u,202v,202wが所定のパターンで通電されることにより、電動モータ201が回転する。なお、3相コイル202u,202v,202wの結線態様は、Y結線に限られず任意であり、例えばデルタ結線でもよい。
【0015】
図1に示すように、車両200は、蓄電装置203を有している。本実施形態の電力変換装置10は、蓄電装置203の直流電力を電動モータ201が駆動可能な交流電力に変換するインバータ装置である。換言すれば、電力変換装置10は、蓄電装置203を用いて電動モータ201を駆動させる駆動装置とも言える。
【0016】
本実施形態の電力変換装置10は、電動モータ201の3相コイル202u,202v,202wに係る構成をそれぞれ有する。以降の説明において、電力変換装置10が備える各種構成のうち、上アームに係る構成の符号に「a」を付し、下アームに係る構成の符号の末尾に「b」を付して説明する。また、電力変換装置10が備える各種構成のうち、u相に係る構成の符号の末尾に「u」を付し、v相に係る符号の末尾に「v」を付し、w相に係る構成の符号の末尾に「w」を付して説明する。
【0017】
本実施形態の電力変換装置10は、複数のスイッチング素子11を有している。詳細には、電力変換装置10は、u相コイル202uに対応する上アームスイッチング素子11au、及び下アームスイッチング素子11buと、v相コイル202vに対応する上アームスイッチング素子11av、及び下アームスイッチング素子11bvと、w相コイル202wに対応する上アームスイッチング素子11aw、及び下アームスイッチング素子11bwとを備える。
【0018】
以降の説明において、上アームスイッチング素子11au、上アームスイッチング素子11av、及び上アームスイッチング素子11awを互いに区別しない場合には、単に「上アームスイッチング素子11a」と記載する。また、下アームスイッチング素子11bu、下アームスイッチング素子11bv、及び下アームスイッチング素子11bwを互いに区別しない場合には、単に「下アームスイッチング素子11b」と記載する。上アームスイッチング素子11aは、「第1スイッチング素子」の一例であり、下アームスイッチング素子11bは、「第2スイッチング素子」の一例である。
【0019】
各スイッチング素子11は、例えば、パワースイッチング素子であり、一例としては、MOSFETである。スイッチング素子11は、還流ダイオードDを有する。詳しくは、上アームスイッチング素子11auは、還流ダイオードDauを有し、上アームスイッチング素子11avは、還流ダイオードDavを有し、上アームスイッチング素子11awは、還流ダイオードDawを有する。下アームスイッチング素子11buは、還流ダイオードDbuを有し、下アームスイッチング素子11bvは、還流ダイオードDbvを有し、下アームスイッチング素子11bwは、還流ダイオードDbwを有する。還流ダイオードDのアノードは、スイッチング素子11のソース端子に接続され、還流ダイオードDのカソードは、スイッチング素子11のドレイン端子に接続される。
【0020】
上アームスイッチング素子11a、及び下アームスイッチング素子11bは、互いに直列に接続されている。詳細には、上アームスイッチング素子11auのソース端子と、下アームスイッチング素子11buのドレイン端子とが、中間配線LC1u,LC2uを介して接続されている。詳しくは、中間配線LC1uと、中間配線LC2uとは、それぞれ第1端と、第2端とを有する。中間配線LC1uの第1端が、上アームスイッチング素子11auのソース端子に接続されている。中間配線LC2uの第2端は、下アームスイッチング素子11buのドレイン端子と接続されている。u相コイル202uと接続される中間配線LC3uは、中間配線LC2uに接続されている。上アームスイッチング素子11avのソース端子と、下アームスイッチング素子11bvドレイン端子とが、中間配線LC1v,LC2vを介して接続されている。詳しくは、中間配線LC1vと、中間配線LC2vとは、それぞれ第1端と、第2端とを有する。中間配線LC1vの第1端が、上アームスイッチング素子11avのソース端子に接続されている。中間配線LC1vの第2端と、中間配線LC2vの第1端とが、接続されている。中間配線LC2vの第2端と、下アームスイッチング素子11bvのドレイン端子とが接続されている。中間配線LC1v,LC2vの接続点と、v相コイル202vとは、中間配線LC3vにより接続されている。上アームスイッチング素子11awのソース端子と、下アームスイッチング素子11bwドレイン端子とが、中間配線LC1w,LC2wを介して接続されている。詳しくは、中間配線LC1wと、中間配線LC2wとは、それぞれ第1端と、第2端とを有する。中間配線LC1wの第1端が、上アームスイッチング素子11awのソース端子に接続されている。中間配線LC1wの第2端と、中間配線LC2wの第1端とが、接続されている。中間配線LC2wの第2端と、下アームスイッチング素子11bwのドレイン端子とが接続されている。中間配線LC1w,LC2wの接続点と、w相コイル202wとは、中間配線LC3wにより接続されている。
【0021】
以降の説明において、中間配線LC1u、中間配線LC1v、及び中間配線LC1wを互いに区別しない場合には、単に「中間配線LC1」と記載する。また、中間配線LC2u、中間配線LC2v、及び中間配線LC2wを互いに区別しない場合には、単に「中間配線LC2」と記載する。また、中間配線LC3u、中間配線LC3v、及び中間配線LC3wを互いに区別しない場合には、単に「中間配線LC3」と記載する。
【0022】
上アームスイッチング素子11aのドレイン端子は、正極母線LN1に接続されており、下アームスイッチング素子11bのソース端子は、負極母線LN2に接続されている。正極母線LN1は、蓄電装置203の高圧側である正極端子(+端子)に接続されており、負極母線LN2は、蓄電装置203の低圧側である負極端子(-端子)に接続されている。これにより、上アームスイッチング素子11a、及び下アームスイッチング素子11bの直列接続体に対して蓄電装置203の直流電圧Vdcが印加される。
【0023】
電力変換装置10は、スイッチング素子11を駆動させるドライバ回路12を備える。本実施形態のドライバ回路12は、所謂ゲートドライバ回路である。本実施形態の電力変換装置10は、複数のスイッチング素子11に対応させてドライバ回路12を複数有している。詳しくは、上アームスイッチング素子11auは、ドライバ回路12auを有し、下アームスイッチング素子11buは、ドライバ回路12buを有する。上アームスイッチング素子11avは、ドライバ回路12avを有し、下アームスイッチング素子11bvは、ドライバ回路12bvを有する。上アームスイッチング素子11awは、ドライバ回路12awを有し、下アームスイッチング素子11bwは、ドライバ回路12bwを有する。以降の説明において、ドライバ回路12au,12av,12awを互いに区別しない場合、単に「上アームドライバ回路12a」と記載する。また、ドライバ回路12bu,12bv,12bwを互いに区別しない場合、単に「下アームドライバ回路12b」と記載する。上アームドライバ回路12aは、「第1ドライバ回路」の一例であり、下アームドライバ回路12bは、「第2ドライバ回路」の一例である。
【0024】
電力変換装置10は、各ドライバ回路12を制御する変換制御装置14を備える。本実施形態の変換制御装置14はインバータ制御装置である。変換制御装置14は、外部からの指令(例えば要求回転速度)に基づいて、電動モータ201に流れる目標電流を決定し、その目標電流が流れるための外部指令電圧を導出する。そして、変換制御装置14は、外部指令電圧をドライバ回路12に向けて出力する。
【0025】
本実施形態では、変換制御装置14は、ドライバ回路12毎に外部指令電圧を導出し、各ドライバ回路に外部指令電圧を出力する。これにより、スイッチング素子11が個別に制御される。以降の説明において、変換制御装置14が上アームドライバ回路12aに出力する外部指令電圧を、「第1外部指令電圧」とも記載し、変換制御装置14が下アームドライバ回路12bに出力する外部指令電圧を、「第2外部指令電圧」とも記載する。
【0026】
電力変換装置10は、上アームスイッチング素子11aをフィードバック制御する第1フィードバック回路15と、インダクタンス成分16とを、各相に備える。詳しくは、電力変換装置10は、第1フィードバック回路15u,15v,15wと、インダクタンス成分16u,16v,16wとを備える。以降の説明において、第1フィードバック回路15u,15v,15wを互いに区別しない場合、単に「第1フィードバック回路15」と記載し、インダクタンス成分16u,16v,16wを互いに区別しない場合、単に「インダクタンス成分16」と記載する。
【0027】
なお、インダクタンス成分16は、スイッチング素子11を流れる印加電流の変化に応じて逆起電圧を発生させるものであり、少なくともフィードバック制御に使用できるレベルの逆電圧を発生させることができるインダクタンス値を有している。本実施形態では、インダクタンス成分16は、インダクタである。
【0028】
また、電力変換装置10は、電流抑制部17と、下アームスイッチング素子11bをフィードバック制御する第2フィードバック回路18と、を各相に備える。電流抑制部17は、例えば、インダクタンス成分16と磁気結合されたインダクタ19と、第2フィードバック回路18とを接続する接続線LJ3,LJ4とを備える。インダクタ19では、インダクタンス成分16に流れる印加電流が変化することによって発生した逆起電圧Vdにより、起電圧Vd´が発生する。インダクタ19に発生した起電圧Vd´は、接続線LJ3,LJ4を介して第2フィードバック回路18に出力される。第2フィードバック回路18と、インダクタ19とを接続する接続線LJ3,LJ4の詳細は、後述する。
【0029】
インダクタ19に発生した起電圧Vd´は、第2フィードバック回路18に入力される。第2フィードバック回路18は、入力された起電圧Vd´を第2フィードバック電圧に変換して下アームドライバ回路12bに出力する。詳しくは、電力変換装置10は、電流抑制部17u,17v,17wを備える。電流抑制部17uは、インダクタ19uを備え、電流抑制部17vは、インダクタ19vを備え、電流抑制部17wは、インダクタ19wを備える。また、電力変換装置10は、第2フィードバック回路18u,18v,18wを備える。以降の説明において、電流抑制部17u,17v,17wを互いに区別しない場合、単に「電流抑制部17」と記載する。また、第2フィードバック回路18u,18v,18wを互いに区別しない場合、単に「第2フィードバック回路18」と記載する。また、インダクタ19u,19v,19wを互いに区別しない場合、単に「インダクタ19」と記載する。
【0030】
[各種接続の詳細]
以下、
図2を用いて上アームドライバ回路12a、下アームドライバ回路12b、第1フィードバック回路15、インダクタンス成分16、電流抑制部17、及び第2フィードバック回路18の接続の詳細について説明する。これらの接続は、各相において同様であるため、以降の説明では、各相に対応する末尾の符号を省略して説明する。
【0031】
図2に示すように、上アームスイッチング素子11aは、ON状態である場合に第1ドレイン電流Id1が流れるスイッチング素子である。第1ドレイン電流Id1は、上アームスイッチング素子11aのソース-ドレイン間を流れる電流である。上アームスイッチング素子11aは、ゲート電圧が入力されるゲート端子と、ON状態である場合に第1ドレイン電流Id1が流れるドレイン端子及びソース端子とを備える。
【0032】
また、下アームスイッチング素子11bは、ON状態である場合に第2ドレイン電流Id2が流れるスイッチング素子である。第2ドレイン電流Id2は、下アームスイッチング素子11bのソース-ドレイン間を流れる電流である。下アームスイッチング素子11bは、ゲート電圧が入力されるゲート端子と、ON状態である場合に第2ドレイン電流Id2が流れるドレイン端子及びソース端子とを備える。
【0033】
上アームドライバ回路12aと、上アームスイッチング素子11aのゲート端子とは、接続されている。上アームドライバ回路12aは、第1外部指令電圧に基づいて、上アームスイッチング素子11aにゲート電圧を出力し、上アームスイッチング素子11aをON状態、又はOFF状態に制御する。また、下アームドライバ回路12bと、下アームスイッチング素子11bのゲート端子とは、接続されている。下アームドライバ回路12bは、第2外部指令電圧に基づいて、下アームスイッチング素子11bにゲート電圧を出力し、下アームスイッチング素子11bをON状態、又はOFF状態に制御する。
【0034】
第1フィードバック回路15と、インダクタンス成分16とは、接続されている。第1フィードバック回路15は、一対の入力端子を備え、インダクタンス成分16は、一対の接続端子を備える。詳しくは、第1フィードバック回路15は、第1入力端子tc1と、第2入力端子tc2とを備える。また、インダクタンス成分16は、第1接続端子t1と、第2接続端子t2とを備える。第1入力端子tc1と、第1接続端子t1とは、接続線LJ1により接続される。また、第2入力端子tc2と、第2接続端子t2とは、接続線LJ2により接続される。
【0035】
インダクタンス成分16は、第1ドレイン電流Id1が流れるように、上アームスイッチング素子11a及び下アームスイッチング素子11bとの間に設けられている。詳しくは、インダクタンス成分16の第1接続端子t1は、第1中間配線LC1を介して上アームスイッチング素子11aのソース端子に接続され、インダクタンス成分16の第2接続端子t2は、第2中間配線LC2を介して下アームスイッチング素子11bのドレイン端子に接続される。なお、3相コイル202u,202v,202wのいずれかに接続される第3中間配線LC3は、第2中間配線LC2に接続されている。
【0036】
本実施形態のインダクタンス成分16は、第1ドレイン電流Id1の変化に応じて接続端子t1,t2の両端に逆起電圧Vdを発生させる。第1ドレイン電流Id1の変化とは、インダクタンス成分16に第1ドレイン電流Id1が流れ始める場合と、インダクタンス成分16に流れていた第1ドレイン電流Id1が停止する場合とを含む。逆起電圧Vdは、第2接続端子t2の電位よりも第1接続端子t1の電位が高くなる方向に発生する。第1ドレイン電流Id1は、「第1印加電流」の一例である。
【0037】
第1フィードバック回路15の入力端子tc1,tc2には、インダクタンス成分16が第1ドレイン電流Id1の変化によって発生させた逆起電圧Vdが入力される。第1フィードバック回路15と、上アームドライバ回路12aとは、接続されている。第1フィードバック回路15は、逆起電圧Vdを第1フィードバック電圧に変換して上アームドライバ回路12aに出力する。
【0038】
なお、第1フィードバック回路15は、配線のみで構成されていてもよい。この場合、第1フィードバック回路15は、逆起電圧Vdを、配線抵抗等によって逆起電圧Vdから若干下がった電圧に変換して上アームドライバ回路12aに出力する。
【0039】
本実施形態の上アームドライバ回路12aは、第1外部指令電圧と、第1フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、ゲート電圧として上アームスイッチング素子11aに出力する。
【0040】
また、第2フィードバック回路18と、インダクタ19とは、接続されている。第2フィードバック回路18は、一対の入力端子を備え、インダクタ19は、一対の接続端子を備える。詳しくは、第2フィードバック回路18は、第1入力端子td1と、第2入力端子td2とを備える。また、インダクタ19は、第1接続端子t3と、第2接続端子t4とを備える。第1入力端子td1と、第1接続端子t3とは、接続線LJ3により接続されている。また、第2入力端子td2と、第2接続端子t4とは、接続線LJ4により接続されている。
【0041】
本実施形態では、上述したように、電流抑制部17のインダクタ19は、インダクタンス成分16と磁気結合されている。インダクタンス成分16と、インダクタ19とは、絶縁トランスとしての機能を有する。したがって、インダクタンス成分16を流れる第1ドレイン電流Id1が、第2フィードバック回路18に流れ込むことはない。すなわち、電流抑制部17は、第2フィードバック回路18に第1ドレイン電流Id1が流れることを遮断しており、第2フィードバック回路18に第1ドレイン電流Id1が流れることを抑制しているといえる。また、インダクタ19は、インダクタンス成分16が発生させる逆起電圧Vdにより、起電圧Vd´を発生させ、起電圧Vd´は、接続線LJ3,LJ4を介して第2フィードバック回路18に出力される。すなわち、電流抑制部17は、逆起電圧に基づく電圧(本実施の形態では起電圧Vd´)を第2フィードバック回路18に出力しているといえる。なお、起電圧Vd´は、例えば、第2接続端子t4の電位よりも第1接続端子t3の電位が高くなる方向に発生する。
【0042】
また、本実施形態のインダクタ19は、逆起電圧Vdとは異なる電圧値を有する起電圧Vd´を第2フィードバック回路18に出力するように巻数が設定されているが、これに限られない。インダクタ19は、逆起電圧Vdと同じ電圧値を有する起電圧を第2フィードバック回路18に出力するように巻数が設定されていてもよい。
【0043】
第2フィードバック回路18の入力端子tc1,tc2には、起電圧Vd´が入力される。第2フィードバック回路18と、下アームドライバ回路12bとは、接続されている。第2フィードバック回路18は、入力された起電圧Vd´を第2フィードバック電圧に変換して下アームドライバ回路12bに出力する。ここで、第2フィードバック電圧は、第1フィードバック電圧と同じ電圧値であっても、異なる電圧値であってもよい。
【0044】
なお、第2フィードバック回路18は、配線のみで構成されていてもよい。この場合、インダクタ19が、逆起電圧Vdを第2フィードバック電圧よりも若干高い電圧に変換して第2フィードバック回路18に出力する。第2フィードバック回路18は、入力された第2フィードバック電圧よりも若干高い電圧を、配線抵抗等によって第2フィードバック電圧に変換して下アームドライバ回路12bに出力する。
【0045】
本実施形態の下アームドライバ回路12bは、第2外部指令電圧と、第2フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、ゲート電圧として下アームスイッチング素子11bに出力する。
【0046】
[電力変換装置10の効果]
(1)電力変換装置10において、第1フィードバック回路15は、インダクタンス成分16が発生させた逆起電圧Vdを第1フィードバック電圧に変換する。電流抑制部17は、第1ドレイン電流Id1が第2フィードバック回路18に流れることを抑制(詳述すると、遮断)するとともに、逆起電圧Vdに基づく電圧(本実施の形態では起電圧Vd´)を、第2フィードバック回路18に出力する。第2フィードバック回路18は、入力された起電圧Vd´を第2フィードバック電圧に変換する。上アームドライバ回路12aは、第1外部指令電圧と、第1フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、上アームスイッチング素子11aに出力する。下アームドライバ回路12bは、第2外部指令電圧と、第2フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、下アームドライバ回路12bに出力する。
【0047】
ここで、第1フィードバック回路15のフィードバック制御と、第2フィードバック回路18のフィードバック制御とは、同期する。例えば、第1ドレイン電流Id1の変化に伴い、第1フィードバック回路15は、フィードバック制御として上アームスイッチング素子11aのゲート電圧を所定の期間、所定の電圧だけ下げる制御を行う場合がある。この場合、第2フィードバック回路18は、フィードバック制御として下アームスイッチング素子11bのゲート電圧を、第1フィードバック回路15と同一のタイミングで、所定の期間、所定の電圧だけ下げる制御を行うことが好ましい。また、第1フィードバック回路15は、フィードバック制御として上アームスイッチング素子11aのゲート電圧を所定の期間、所定の電圧だけ上げる制御を行う場合がある。この場合、第2フィードバック回路18は、フィードバック制御として下アームスイッチング素子11bのゲート電圧を、第1フィードバック回路15と同一のタイミングで、所定の期間、所定の電圧だけ上げる制御を行うことが好ましい。
【0048】
一方で、第1ドレイン電流Id1が、抑制されることなく、第2フィードバック回路18に入力されると第2フィードバック回路18が破損するおそれがある。かかる構成の電力変換装置10において、第1フィードバック回路15は、インダクタンス成分16が発生させる逆起電圧Vdを第1フィードバック電圧に変換する。また、電流抑制部17は、インダクタンス成分16と磁気結合されたインダクタ19に発生した起電圧Vd´を第2フィードバック回路18に出力し、第2フィードバック回路18は、入力された起電圧Vd´を第2フィードバック電圧に変換する。これにより、電力変換装置10は、互いに直列に接続されている上アームスイッチング素子11a、及び下アームスイッチング素子11bに対して、共通のインダクタンス成分16を用いて、逆起電圧Vdの変化に基づく同期したフィードバック制御を行うことができる。
【0049】
また、電力変換装置10は、上アームスイッチング素子11aにフィードバック制御に使用できるレベルの逆電圧を発生させるインダクタンス値を有するインダクタンス成分と、下アームスイッチング素子11bにフィードバック制御に使用できるレベルの逆電圧を発生させるインダクタンス値を有するインダクタンス成分とをそれぞれ備える場合に比して、配線インダクタンスを低減することができる。したがって、電力変換装置10は、スイッチング素子11毎にインダクタンス成分を備える場合に比して、スイッチング損失の低減とサージ電圧又はサージ電流の低減との両立を図ることができる。
【0050】
(2)電力変換装置10は、上アームスイッチング素子11aにフィードバック制御に使用できるレベルの逆電圧を発生させるインダクタンス値を有するインダクタンス成分と、下アームスイッチング素子11bにフィードバック制御に使用できるレベルの逆電圧を発生させるインダクタンス値を有するインダクタンス成分とをそれぞれ備える場合に比して、小型化することができる。
【0051】
上記各実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記実施形態及び以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。
○上記実施形態では、インダクタンス成分16が第1ドレイン電流Id1の変化によって逆起電圧Vdを発生させる場合について説明したが、これに限られない。インダクタンス成分16は、例えば、第2ドレイン電流Id2の変化によって逆起電圧Vdを発生させてもよい。
【0052】
図3に示すように、この場合、インダクタンス成分16の第1接続端子t1は、下アームスイッチング素子11bのソース端子に接続され、インダクタンス成分16の第2接続端子t2は、負極母線LN2に接続されている。インダクタンス成分16は、第2ドレイン電流Id2の変化によって接続端子t1,t2の両端に逆起電圧Vdを発生させる。第2ドレイン電流Id2の変化とは、インダクタンス成分16に第2ドレイン電流Id2が流れ始める場合と、インダクタンス成分16に流れていた第2ドレイン電流Id2が停止する場合とを含む。第2ドレイン電流Id2は、「第2印加電流」の一例である。
【0053】
また、この場合、下アームドライバ回路12bは、第1フィードバック回路15と接続される。上アームドライバ回路12aは、第2フィードバック回路18及び電流抑制部17と接続される。上アームドライバ回路12aは、第1外部指令電圧と、第2フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、ゲート電圧として上アームスイッチング素子11aに出力する。また、下アームドライバ回路12bは、第2外部指令電圧と、第1フィードバック電圧とを加算し、その加算された加算電圧を、下アームドライバ回路12bに出力する。かかる構成によれば、電力変換装置10は、(1)や(2)と同様の効果を得ることができる。
【0054】
○上記実施形態では、電流抑制部17が、インダクタ19を備える場合について説明したが、これに限られない。電流抑制部17は、差動増幅回路20を備えてもよい。
図4に示すように、差動増幅回路20は、一対の入力端子を備える。詳しくは、差動増幅回路20は、第1入力端子te1と、第2入力端子te2とを備える。第1入力端子te1は、第1接続端子t1に接続され、第2入力端子te2は、第2接続端子t2に接続される。差動増幅回路20は、分圧抵抗21,22,23,24と、オペアンプ25とを備える。分圧抵抗21と、分圧抵抗22とは、互いに直列に接続されており、分圧抵抗23と、分圧抵抗24とは、互いに直列に接続されている。分圧抵抗23の両端のうち、分圧抵抗24に接続される端部と異なる端部は、第1入力端子te1に接続されている。また、分圧抵抗21の両端のうち、分圧抵抗22に接続される端部と異なる端部は、第2入力端子te2に接続されている。分圧抵抗22の両端のうち、分圧抵抗21に接続される端部と異なる端部と、分圧抵抗24の両端のうち、分圧抵抗23に接続される端部と異なる端部とは、接続されており、その接続点は、第2入力端子td2に接続されている。
【0055】
オペアンプ25の+端子には、分圧抵抗21と、分圧抵抗22との接続点が接続されている。オペアンプ25の-端子には、分圧抵抗23と、分圧抵抗24との接続点が接続されている。オペアンプ25の出力端子は、第1入力端子td1に接続されている。
【0056】
この構成により、差動増幅回路20の一対の入力端子te1,te2には、逆起電圧Vdが入力され、差動増幅回路20は、一対の入力端子te1,te2間の電位差を増幅した電圧Vd´´を、出力端子から出力する。ここで、分圧抵抗21と、分圧抵抗23との抵抗値は、一致し、分圧抵抗22と、分圧抵抗24との抵抗値は、一致する。つまり、分圧抵抗21,22の分圧比と、分圧抵抗23,24の分圧比とは、一致する。
【0057】
なお、分圧抵抗21,22の分圧比、分圧抵抗23,24の分圧比、及びオペアンプ25増幅率は、オペアンプ25の出力端子と、第2入力端子td2との間の電位差である電圧Vd´´が、逆起電圧Vdと一致するような分圧比、及び増幅率に設定されていてもよいし、電位Vd´´が、逆起電圧Vdと異なるような分圧比、及び増幅率に設定されていてもよい。
【0058】
かかる構成によれば、電流抑制部17aは、第1ドレイン電流Id1が第2フィードバック回路18に流れることを抑制するとともに、インダクタンス成分16が発生させる逆起電圧Vdに基づく電圧(本実施形態では電位差Vd´´)を第2フィードバック回路18に出力する。これにより、電力変換装置10は、(1)と同様の効果を得ることができる。
【0059】
なお、
図4に示す一例において、インダクタンス成分16は、例えば、第2ドレイン電流Id2の変化によって逆起電圧Vdを発生させてもよい。この場合、インダクタンス成分16の第1接続端子t1は、下アームスイッチング素子11bのソース端子に接続されており、インダクタンス成分16の第2接続端子t2は、負極母線LN2に接続されている。また、上アームドライバ回路12aは、第2フィードバック回路18及び差動増幅回路20を有する電流抑制部17aと接続されており、下アームドライバ回路12bは、第1フィードバック回路15aに接続されている。この構成における電力変換装置10の動作は、上述した実施形態、及び変形例と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
○また、差動増幅回路20は、逆起電圧Vdをより精度よく検出する差動増幅回路20aにより実現されてもよい。こ
図5に示すように、差動増幅回路20aは、分圧抵抗21,22,23,24、28,29と、オペアンプ26,27,30とを備える。分圧抵抗21,22,23,24の接続は、上述した
図4の場合と同様であるため、説明を省略する。
【0061】
オペアンプ27の+端子には、分圧抵抗21と、分圧抵抗22との接続点が接続されている。オペアンプ27の-端子には、オペアンプ27の出力端子が接続されている。オペアンプ26の+端子には、分圧抵抗23と、分圧抵抗24との接続点が接続されている。オペアンプ26の-端子には、オペアンプ26の出力端子が接続されている。これにより、オペアンプ26,27は、ボルテージ・フォロワ回路として動作する。
【0062】
また、オペアンプ26の出力端子は、オペアンプ30の-端子に接続されており、オペアンプ27の出力端子は、分圧抵抗28の一端に接続されている。分圧抵抗28の他端は、分圧抵抗29の一端に接続されている。分圧抵抗29の他端は、第2入力端子td2に接続されている。つまり、分圧抵抗28と、分圧抵抗29とは、オペアンプ27の出力端子と、第2入力端子td2との間に、互いに直列に接続されている。オペアンプ30の+端子には、分圧抵抗28と、分圧抵抗29との接続点が接続されている。オペアンプ30の出力端子は、第1入力端子td1に接続されている。
【0063】
この構成により、差動増幅回路20aの一対の入力端子te1,te2には、逆起電圧Vdが入力され、差動増幅回路20aは、一対の入力端子te1,te2間の電位差を増幅した電圧Vd´を、出力端子から出力する。
【0064】
なお、分圧抵抗21,22の分圧比、分圧抵抗23,24の分圧比、分圧抵抗28,29の分圧比、及びオペアンプ30の増幅率は、オペアンプ30の出力端子と、第2入力端子td2との電位差である電圧Vd´が、逆起電圧Vdと一致するような分圧比、及び増幅率に設定されていてもよいし、電圧Vd´が、逆起電圧Vdと異なるような分圧比、及び増幅率に設定されていてもよい。
【0065】
上述したように、オペアンプ26,27は、ボルテージ・フォロワ回路として動作する。このため、オペアンプ26,27,30の入力端子には、入力バイアス電圧が流れない。したがって、オペアンプ26,27,30の入力端子に入力される電圧には、入力バイアス電流に伴うオフセット電圧降下が生じない。このため、差動増幅回路20aは、差動増幅回路20に比して、より高精度に逆起電圧Vdを検出することができる。
【0066】
かかる構成によれば、差動増幅回路20aは、より精度よくオペアンプ30に逆起電圧Vdを伝搬できる。これにより、電力変換装置10は、(1)と同様の効果を得ることができる。
【0067】
なお、
図5に示す一例において、インダクタンス成分16は、例えば、第2ドレイン電流Id2の変化によって逆起電圧Vdを発生させてもよい。この場合、インダクタンス成分16の第1接続端子t1は、下アームスイッチング素子11bのソース端子に接続され、インダクタンス成分16の第2接続端子t2は、負極母線LN2に接続されている。また、上アームドライバ回路12aは、第2フィードバック回路18及び差動増幅回路20aを有する電流抑制部17bと接続されており、下アームドライバ回路12bは、第1フィードバック回路15aと接続されている。この構成における電力変換装置10の動作は、上述した実施形態、及び変形例と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
○スイッチング素子11は、MOSFETに限られず任意であり、例えばIGBTでもよい。この場合、スイッチング素子11のゲート端子が「制御端子」に対応する。また、上アームスイッチング素子11aのコレクタ-エミッタ間を流れるコレクタ電流が「第1印加電流」に対応する。また、下アームスイッチング素子11bのコレクタ-エミッタ間を流れるコレクタ電流が「第2印加電流」に対応する。
【0069】
〇上アームスイッチング素子11aと下アームスイッチング素子11bとの間にインダクタンス成分16を設ける場合、すなわち、上アームスイッチング素子11aに流れる第1ドレイン電流Id1が、インダクタンス成分16に流れる場合、中間配線LC3は、インダクタンス成分16の両端の間に接続するとよい。詳しくは、インダクタンス成分16が、上述の実施形態のように、第1接続端子t1と第2接続端子t2とを有するインダクタの場合、中間配線LC3は、第1接続端子t1,第2接続端子t2間に接続する。また、インダクタンス成分16が寄生インダクタンスの場合、中間配線LC3は、中間配線LC1における上アームスイッチング素子11aと接続される第1端部と、中間配線LC2における下アームスイッチング素子11bと接続される第2端部との間に接続する。
【0070】
中間配線LCは、3相コイル202u,202v,202wのいずれかに接続する必要があるため、上アームスイッチング素子11aと下アームスイッチング素子11bとを十分に離して配置させる必要がある。したがって、上アームスイッチング素子11aと下アームスイッチング素子11bとの間に設けられる中間配線LCの長さも長くなる。そこで、中間配線LCのうち、3相コイル202u,202v,202wのいずれかに接続される配線を、インダクタンス成分16における両端の間に接続することで、上アームスイッチング素子11aと下アームスイッチング素子11bとの間に設けられる中間配線LCが長くなることを抑制することができる。
【0071】
○インダクタ19は、逆起電圧Vdと逆極性の起電圧Vd´を発生させるものであってもよい。この場合、第2フィードバック回路18は、起電圧Vd´を反転増幅し、ドライバ回路12に出力する。
【0072】
○分圧抵抗21,22,23,24,28.29、オペアンプ25の増幅率、及びオペアンプ30の増幅率の組み合わせは、変換損失やドライバ回路12、第2フィードバック回路18、オペアンプ25,26,27,30の電圧降下等を考慮した増幅率であってもよい。詳しくは、分圧抵抗21,22,23,24,28.29、オペアンプ25の増幅率、及びオペアンプ30の増幅率の組み合わせは、ドライバ回路12、第2フィードバック回路18、オペアンプ25,26,27,30の電圧降下等が回復するように、逆起電圧Vd´を増幅する増幅率であってもよい。
【0073】
○各スイッチング素子11はインバータを構成していたが、これに限られず、任意であり、例えば蓄電装置203の直流電力を異なる電圧の直流電力に変換するDC/DCコンバータを構成してもよい。すなわち、電力変換装置10は、インバータに限られず、DC/DCコンバータ、AC/ACコンバータ、AC/DCインバータ等任意である。換言すれば、電力変換装置10は、直流電力又は交流電力を直流電力又は交流電力に変換するものでもよい。
【0074】
○負荷は電動モータ201に限られず任意である。
○電力変換装置10は、車両200以外に搭載されてもよい。すなわち、電力変換装置10は、車両200に設けられた負荷以外の負荷を駆動させるものでもよい。
【0075】
○インダクタンス成分16は、インダクタンス成分16が設けられる配線の寄生インダクタンスにより実現されてもよい。この場合、インダクタンス成分16は、接続端子を有していない。かかる構成によれば、電力変換装置10は、寄生インダクタンスを用いることにより、別途インダクタンスを備える場合に比して、小型化することができる。
【0076】
〇第1フィードバック回路15と第2フィードバック回路18は、同じ構成であっても違う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
10…電力変換装置、15,15a,15u,15v,15w…第1フィードバック回路、16,16u,16v,16w…インダクタンス成分、17,17a,17b,17u,17v,17w…電流抑制部、18,18u,18v,18w…第2フィードバック回路、19,19u,19v,19w…インダクタ、20,20a…差動増幅回路、Vd…逆起電圧。