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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】燃料電池車
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/063 20060101AFI20241001BHJP
   B60K 15/07 20060101ALI20241001BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20241001BHJP
   B62D 21/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B60K15/063 B
B60K15/07
B62D25/20 G
B62D21/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021137082
(22)【出願日】2021-08-25
(65)【公開番号】P2023031539
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 学
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0061081(US,A1)
【文献】特開2014-151805(JP,A)
【文献】特開2020-189578(JP,A)
【文献】特開2005-075224(JP,A)
【文献】特開2017-149194(JP,A)
【文献】特表2008-518827(JP,A)
【文献】特開2009-057030(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110843935(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/063
B60K 15/07
B62D 25/20
B62D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に平行に延びている2本のサイドメンバと、2本の前記サイドメンバを連結している複数のクロスメンバを含んでいるラダーフレームと、
前記ラダーフレームに支持されている燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックで使用する燃料ガスを蓄える燃料タンクと、
前記燃料タンク内の高圧の前記燃料ガスを通すパイプを連結する継手と、
前記燃料タンクと前記継手を連結している金属製の第1燃料パイプと、
前記継手と前記燃料電池スタックを連結している第2燃料パイプと、
フロアパネルに設けられているセンタートンネルと、
を備えており、
前記燃料タンクと前記継手が前記ラダーフレームに支持されているとともに前記センタートンネルに配置されており、
前記センタートンネルは、第1トンネルと、前記第1トンネルの後端に続いており断面積が前記第1トンネルの断面積よりも小さい第2トンネルを含んでおり、
前記継手は、前記燃料タンクと前記第1トンネルの天井との間に配置されている、
燃料電池車。
【請求項2】
前記燃料タンクを前記ラダーフレームに固定するバンドをさらに備えており、前記継手が前記バンドに支持されている、請求項1に記載の燃料電池車。
【請求項3】
前記バンドと前記燃料タンクの間に介在している弾性部材をさらに備えている、請求項に記載の燃料電池車。
【請求項4】
前記第2燃料パイプに減圧弁が備えられおり、前記減圧弁が前記ラダーフレームに支持されている、請求項1からのいずれか1項に記載の燃料電池車。
【請求項5】
前後方向に平行に延びている2本のサイドメンバと、2本の前記サイドメンバを連結している複数のクロスメンバを含んでいるラダーフレームと、
前記ラダーフレームに支持されている燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックで使用する燃料ガスを蓄える燃料タンクと、
前記燃料タンク内の高圧の前記燃料ガスを通すパイプを連結する継手と、
前記燃料タンクと前記継手を連結している金属製の第1燃料パイプと、
前記継手と前記燃料電池スタックを連結している第2燃料パイプと、
フロアパネルに設けられているセンタートンネルと、
前記ラダーフレームの後部に支持されている付加燃料タンクと、
外部燃料供給装置のノズルが接続されるレセプタクルと、
前記ラダーフレームに支持されている付加継手と、
を備えており、
前記燃料タンクと前記継手が前記ラダーフレームに支持されているとともに前記センタートンネルに配置されており、
前記継手から延びる第3燃料パイプと、前記付加燃料タンクから延びる第4燃料パイプと、前記レセプタクルから延びる第5燃料パイプが前記付加継手に連結されている、
燃料電池車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、ラダーフレームと燃料タンクを備えた燃料電池車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている燃料電池車は、センタートンネル内に燃料タンクを配置し、センタートンネル内の空間を有効に活用する。燃料タンクはフロアパネルに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-185843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラダーフレームタイプの自動車は、ラダーフレームの上に、フロアパネルを含むボディが配置される。ボディは防振マウントを介してラダーフレームに支持される。走行中、ラダーフレームはボディに対して相対的に振動する。燃料電池スタックと燃料タンクはラダーフレームに支持(固定)されることが想定される。燃料タンクと燃料電池スタックは、燃料パイプで接続される。燃料タンクには高圧の燃料ガス(水素ガス)が蓄えられる。燃料タンクから燃料電池スタックまで、高圧の燃料ガスを送る少なくとも2本の燃料パイプは継手によって連結される。燃料タンク内の高圧の燃料ガスを通す燃料パイプ(燃料タンク内の燃料ガスが減圧されずに通る燃料パイプ)には高い耐圧が要求されるため、金属製の燃料パイプが採用される。継手がボディ(フロアパネル)に支持されてしまうと、走行中に燃料タンクに対して継手が相対的に振動する。燃料タンクに対する継手の相対振動は、燃料タンクと継手を連結している金属製の燃料パイプを繰り返し変形させる。燃料パイプが繰り返し変形すると、燃料パイプの金属疲労が進行する。本明細書は、燃料タンクと継手を連結している金属製の燃料パイプの疲労劣化(振動に起因する疲労劣化)を抑える技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する燃料電池車は、ラダーフレーム、燃料電池スタック、燃料タンク、継手、センタートンネルを備える。ラダーフレームは、前後方向に平行に延びている2本のサイドメンバと、2本のサイドメンバを連結している複数のクロスメンバを含む。燃料タンクは、燃料電池スタックで使用する燃料ガス(水素ガス)を蓄える。燃料タンクと継手が金属製の第1燃料パイプで接続されており、継手と燃料電池スタックは第2燃料パイプで接続されている。燃料電池スタックと燃料タンクはラダーフレームに支持されている。継手もラダーフレームに支持されている。燃料タンクと継手は、フロアパネルに設けられているセンタートンネルの中(下)に配置されている。本明細書が開示する燃料電池車では、燃料電池スタックと燃料タンクと継手がラダーフレームに支持されている。燃料タンクと継手がラダーフレームに支持されていることにより、燃料タンクに対する継手の相対振動が小さくなり、第1燃料パイプの疲労劣化(振動に起因する疲労劣化)が抑えられる。また、燃料タンクと継手はセンタートンネルの中(下)に配置されており、センタートンネルの余剰空間が有効に活用される。
【0006】
センタートンネルは、第1トンネルと、第1トンネルの後端に続いており断面積が第1トンネルの断面積よりも小さい第2トンネルを含んでいることがある。その場合、継手は、第1トンネルに配置されているとよい。さらに、継手は、燃料タンクと第1トンネルの天井との間に配置されているとよい。センタートンネルの中の余剰空間をさらに有効に活用できる。
【0007】
本明細書が開示する燃料電池車では、燃料タンクをラダーフレームに固定するバンドをさらに備えており、継手がバンドに支持されているとよい。さらに、バンドと燃料タンクの間に弾性部材が介在しているとよい。弾性部材は、燃料タンクの直径の変化を吸収する。
【0008】
継手と燃料電池スタックを連結する第2燃料パイプの途中に減圧弁が備えられている場合がある。第2燃料パイプのうち、継手と減圧弁の間の部位は、高圧の燃料ガスが流れるので金属で作られている。その場合、減圧弁もラダーフレームに支持されているとよい。継手と減圧弁の間の燃料パイプ(第2燃料パイプの一部)の疲労劣化(金属パイプの疲労劣化)が抑えられる。
【0009】
本明細書が開示する燃料電池車は、ラダーフレームの後部に支持されている付加燃料タンクと、外部の燃料供給装置のノズルを接続するレセプタクルと、ラダーフレームに支持されている付加継手を備えていてもよい。その場合、燃料電池車は、次の特徴を有していてもよい。継手から延びる第3燃料パイプと、付加燃料タンクから延びる第4燃料パイプと、レセプタクルから延びる第5燃料パイプが付加継手で連結されている。上記の特徴によると、燃料電池スタックと、レセプタクルと、2個の燃料タンクをつなぐ複数の燃料パイプのレイアウトがシンプルになる。付加継手もラダーフレームに支持されるので、高圧の燃料ガスが流れる第3燃料パイプと第4燃料パイプの疲労劣化(振動に起因する疲労劣化)も抑えることができる。
【0010】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例の燃料電池車の斜視図である(ボディとフロアパネルをシャシから分離した図)。
図2】燃料タンクとセンタートンネルの位置関係を示す斜視図である。
図3】シャシの平面図である。
図4図3のIV-IV線に沿ったシャシ断面である。
図5図3のV-V線に沿ったシャシ断面である。
図6】第1タンクを固定するバンドの近傍の部分斜視図である。
図7図6のVII-VII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して実施例の燃料電池車1を説明する。図1に、燃料電池車1の斜視図を示す。図1は、シャシ2からフロアパネル7とボディ9を分離した斜視図である。図中の座標系の+X方向、+Y方向、+Z方向は、それぞれ、車両の前方向、左側方、上方に相当する。座標系の各軸が示す方向は、全ての図で同じである。
【0013】
燃料電池車1は、走行用の電気モータ3a、3b、燃料タンク20、21、燃料電池スタック4、バッテリ5を備える。燃料電池車1は、電源(燃料電池スタック4とバッテリ5)の直流電力を、電気モータ3a(3b)の駆動電力に変換するインバータも備えるが、インバータの図示は省略した。電気モータ3aは前輪を駆動し、電気モータ3bは後輪を駆動する。燃料電池車1は四輪駆動車である。
【0014】
燃料タンク20、21には、水素ガス(燃料ガス)が貯蔵されている。良く知られているように、燃料電池スタック4は、燃料タンク20、21の水素ガスと、空気中の酸素を反応させて電力を得る。燃料電池スタック4とバッテリ5の直流電力は、インバータによって交流電力に変換され、走行用の電気モータ3a、3bに供給される。バッテリ5は、燃料電池スタック4の出力電力の余剰を蓄える。また、バッテリ5は、回生電力(車の慣性エネルギを使って電気モータ3a、3bが発電する電力)も蓄える。また、バッテリ5は、燃料電池スタック4の出力の不足分を補う場合がある。
【0015】
燃料電池車1は、ラダータイプのフレーム(ラダーフレーム10)を有する。ラダーフレーム10は、シャシ2の前後方向に延びる2本のサイドメンバ11R、11Lと、サイドメンバ11R、11Lを連結する複数のクロスメンバ12を含む。駆動系デバイス(電気モータ3a、3b、バッテリ5、燃料電池スタック4、燃料タンク20、21、タイヤなど)と、それらを支持するラダーフレーム10をシャシ2と称する。なお、図1では、燃料電池スタック4と燃料タンク20、21をつなぐ燃料パイプは図示を省略した。以下では、
【0016】
図1ではフロアパネル7をボディ9から分離して描いてあるが、フロアパネル7はボディ9に接合される。フロアパネル7はボディ9の一部である。フロアパネル7を含むボディ9は、ラダーフレーム10のサイドメンバ11R、11Lに設けられた複数の防振マウント13に支持される。防振マウント13は防振ゴムを含んでおり、シャシ2の振動からボディ9を保護する。別言すれば、シャシ2の振動は防振マウント13で減衰し、ボディ9にはわずかな振動だけが伝搬する。シャシ2(ラダーフレーム10)は走行中に振動し、防振マウント13がボディ9の振動を抑えるので、走行中にシャシ2(ラダーフレーム10)はボディ9に対して相対的に振動する。
【0017】
燃料タンク20はバンド41、42でラダーフレーム10に固定される。燃料タンク20の上側を覆うバンド41には、ベースプレート47が固定されており、ベースプレート47に減圧弁23と第1継手22が固定されている。減圧弁23と第1継手22については後述する。
【0018】
図2に、シャシ2と、シャシ2の上に配置されたフロアパネル7の斜視図を示す。図3に、シャシ2の平面図を示す。図2図3では、フロアパネル7を仮想線で描いてある。先に述べたように、フロアパネル7は、ボディ9に固定されており、フロアパネル7を含むボディ9が防振マウント13を介してシャシ2に支持される。図2図3ではボディ9の図示は省略した。
【0019】
フロアパネル7には、センタートンネル8が形成されている。センタートンネル8は、運転席と助手席(不図示)の間で、シャシ2の前後方向に延びている。説明の都合上、センタートンネル8を、第1トンネル8aと第2トンネル8bに分ける。第1トンネル8aは、前端が大きく、後方に向けて徐々に小さくなる。第1トンネル8aは、後端が最も小さい。第1トンネル8aの後端に第2トンネル8bが続いている。第2トンネル8bの断面積は、第1トンネル8aの断面積よりも小さい。図2に示すように、センタートンネル8の中(下)に燃料タンク20と減圧弁23と第1継手22が配置される。
【0020】
先に述べたように、燃料電池スタック4、電気モータ3a、3b、燃料タンク20、21、バッテリ5は、ラダーフレーム10に支持されている(図3参照)。燃料タンク20は、クロスメンバ12a、12bに固定されている。ラダーフレーム10は、複数のクロスメンバ12を有しており、クロスメンバ12a、12bは、シャシ2の前後方向における中央のクロスメンバである。燃料タンク20は、ラダーフレーム10の中央(前後方向の中央)に支持(固定)されており、燃料タンク21はラダーフレーム10の後部に支持(固定)されている。
【0021】
図4に、図3のIV-IV線に沿ったシャシ断面を示す。先に述べたように、燃料タンク20は、フロアパネル7のセンタートンネル8の中(下方)に配置されている。少なくとも燃料タンク20の上半分がセンタートンネル8の中に位置しており、下半分はセンタートンネル8の下方に位置している。
【0022】
従来のエンジン車(Front engine Rear drive車)では、センタートンネルに、トランスミッションが配置されていた。燃料電池車ではトランスミッションは不要である。燃料電池車1では、トランスミッションの代わりに燃料タンク20がセンタートンネル8の中に配置されている。
【0023】
燃料タンク20の下には、保護板50が配置されている。図1から図3では保護板50の図示は省略した。保護板50は、走行中に道路から跳ねあがる小石などから燃料タンク20を保護する。保護板50は、クロスメンバ12a、12bの下面に固定されている。
【0024】
燃料タンク20は、バンド41、42でクロスメンバ12aに固定されているとともに、支持板48でクロスメンバ12bに固定されている。支持板48は、燃料タンク20の首の部分を支持している。バンド41、42と燃料タンク20の間には、弾性部材43が介在している。弾性部材43の一例は後述する。
【0025】
バンド41にベースプレート47が固定されており、ベースプレート47の上に、減圧弁23と第1継手22が固定されている。減圧弁23と第1継手22は、バンド41とベースプレート47を介してラダーフレーム10に支持されている。減圧弁23と第1継手22は、第1トンネル8aの中に配置されている。別言すれば、減圧弁23と第1継手22は、燃料タンク20と、第1トンネル8aの天井8cの間に配置されている。先に述べたように、第1トンネル8aは、前方から後方に向けて断面積が徐々に小さくなる。燃料タンク20と天井8cの間の空間は、余剰の空間であり、減圧弁23と第1継手22は、その余剰の空間に配置されている。
【0026】
図4では、図3のIV-IV線よりも手前に位置する第1継手22と第1燃料パイプ31を仮想線で描いてある。図4では第3パイプ33の図示は省略した。第1燃料パイプ31は、第1継手22と燃料タンク20を連結する燃料パイプである。なお、第1継手22と燃料電池スタック4は第2燃料パイプ32で連結され、第2燃料パイプ32の途中に減圧弁23が備えられている。第1継手22(および、後述する第2継手36)は、高圧の水素ガスを送る燃料パイプを連結する流体継手である。第1燃料パイプ31と第2燃料パイプ32、および、その他の燃料パイプについては後述する。
【0027】
図3のV-V線に沿ったシャシ断面を図5に示す。図5では、センタートンネル8(フロアパネル7)と、燃料タンク20を保護する保護板50(図4参照)の図示は省略した。バンド41、42は燃料タンク20を囲んでおり、クロスメンバ12aに設けられている支柱45に、ボルト44で固定されている。バンド41、42と燃料タンク20の間には、弾性部材43が介在している。弾性部材43は、シャシ2の振動から燃料タンク20を保護する。また、燃料タンク20は、水素ガスが満充填されているときには膨らむ。水素ガスが少なくなるにつれて燃料タンク20の直径は小さくなる。弾性部材43は、燃料タンク20の直径の変化を吸収することができる。別言すれば、燃料タンク20の直径の変化に応じて弾性部材43が変形するため、燃料タンク20の直径が変わってもバンド41、42の位置と、燃料タンク20の中心軸の位置は変わらない。
【0028】
燃料タンク20の上半分を覆っているバンド41に支柱46が設けられており、支柱46にベースプレート47が固定されている。先に述べたように、ベースプレート47に減圧弁23と第1継手22が固定されている。先に述べたように、第1継手22と燃料電池スタック4(図3参照)を連結する第2燃料パイプ32の途中に減圧弁23が設けられている。第1継手22と燃料タンク20は第1燃料パイプ31(図5では不図示)で連結されている。第1継手22には、燃料タンク21(図3参照)の水素ガスを送る第3燃料パイプ33も連結されている。
【0029】
図3を参照して、燃料パイプ31~35のレイアウトについて説明する。先に述べたように、燃料タンク20と第1継手22は第1燃料パイプ31で連結されており、第1継手22と燃料電池スタック4は第2燃料パイプ32で連結されている。第2燃料パイプ32の途中に減圧弁23が設けられている。燃料タンク20から減圧弁23までは、燃料タンク20内の高圧の水素ガスが減圧されずに流れる。水素ガスの圧力は減圧弁23で減じられる。減圧弁23から燃料電池スタック4までの間を流れる水素ガスの圧力は、燃料タンク20から減圧弁23までの間を流れる水素ガスの圧力よりも低い。水素ガスの高圧に耐え得るように、第1燃料パイプ31は金属で作られる。第2燃料パイプ32のうち、第1継手22から減圧弁23までの間も金属で作られる。第2燃料パイプ32の残りの部分は、金属で作られてもよいし、柔軟な素材(例えばゴム)で作られていてもよい。なお、燃料電池スタック4は、ラダーフレーム10の前部に支持されている。
【0030】
ラダーフレーム10の後部には燃料タンク21が支持されている。第2継手36もラダーフレーム10に支持されている。第1継手22と第2継手36は、第3燃料パイプ33で連結されている。第2継手36には、燃料タンク21から延びる第4燃料パイプ34と、レセプタクル37から延びる第5燃料パイプ35も連結されている。第2継手36は、第3燃料パイプ33と第4燃料パイプ34と第5燃料パイプ35を連結する。レセプタクル37は、外部燃料供給装置のノズルを接続するインレットである。レセプタクル37も、ラダーフレーム10に支持されている。
【0031】
レセプタクル37を通じて外部から供給された水素ガスは、第5燃料パイプ35を通じて第2継手36に送られる。水素ガスは、第2継手36で第3燃料パイプ33と第4燃料パイプ34に分流する。第4燃料パイプ34へ流れる水素ガスは、燃料タンク21に供給される。第3燃料パイプ33へ流れる水素ガスは、第1継手22と第1燃料パイプ31を通じて燃料タンク20に供給される。
【0032】
燃料電池スタック4を運転するとき、燃料タンク20の水素ガスは第1燃料パイプ31と第2燃料パイプ32で燃料電池スタック4へ送られ、燃料タンク21の水素ガスは、第4燃料パイプ34と第2継手36と第3燃料パイプ33と第1継手22と第2燃料パイプ32を通じて燃料電池スタック4に送られる。燃料パイプ31、33-35は、高圧の水素ガスが流れるので、耐圧の高い金属で作られる。燃料タンク20、21の水素ガスは、減圧弁23を通る際に減圧され、燃料電池スタック4へ供給される。
【0033】
図3に示すように、実施例の燃料電池車1では、燃料電池スタック4、レセプタクル37、および、2個の燃料タンク20、21をつなぐ複数の燃料パイプ31-35のレイアウトがシンプルである。
【0034】
燃料タンク20とバンド41、42の間に介在している弾性部材43の一つの具体例を、図6、7を参照して説明する。弾性部材43の一つの具体例は、複数の板バネ143である。図6は、タンク20を固定するバンド41、42の近傍の部分斜視図である。図7は、図6のVII-VII線に沿った断面図である。
【0035】
先に述べたように、クロスメンバ12aから上方へ支柱45が延びており、タンク20を固定するバンド41、42がボルト44で支柱45に固定されている。バンド41、42の両側端から複数の板バネ143が延びている。複数の板バネ143は、バンド41(42)と一体に作られている。すなわち、複数の板バネ143とバンド41(42)は、一枚の鋼板から作られている。
【0036】
複数の板バネ143は燃料タンク20を囲むように配置されている。夫々の板バネ143は、先端に近づくにつれて燃料タンク20の中心軸へ近づくように延びている。図7の仮想線143aは、燃料タンク20がないときの板バネの形状を示している。夫々の板バネ143は、先端が燃料タンク20に接しつつ、燃料タンク20にその中心軸方向の荷重を加える。燃料タンク20を囲んでいる複数の板バネ143は、燃料タンク20を周囲から中心軸に向けて均一に荷重する。燃料タンク20に貯蔵される水素ガスの量が変化すると、燃料タンク20の内圧が変化し、燃料タンク20の直径が変化する。図7の仮想線143bは、燃料タンク20が膨らんだときの板バネの形状を示している。複数の板バネ143が燃料タンク20をその周囲から均一に荷重しているので、燃料タンク20の直径が変化しても中心軸の位置は変わらない。
【0037】
なお、複数の板バネ143は、弾性部材43の一例であり、弾性部材43は板バネ143に限定されない。弾性部材43は、厚み方向に伸縮する難燃性のゴムシートなどであってもよい。
【0038】
実施例の燃料電池車1の特徴を述べる。先に述べたように、ボディ9は防振マウント13を介してラダーフレーム10に支持されている。走行中、ボディ9に対してラダーフレーム10は相対的に振動する。燃料電池スタック4と燃料タンク20がラダーフレーム10に支持されており、第1継手22が仮にボディ9に支持されていると、走行中に燃料タンク20と第1継手22は相対的に振動する。両者は金属パイプ(第1燃料パイプ31)で連結されている。燃料タンク20と第1継手22が相対的に振動すると、両者を接続する金属製の第1燃料パイプ31が繰り返し変形する。金属製の第1燃料パイプ31の繰り返し変形は、金属疲労を早める。燃料電池車1では、燃料電池スタック4と燃料タンク20と第1継手22がラダーフレーム10に支持されている。それゆえ、走行中であっても燃料タンク20と第1継手22の相対位置は不変である。それゆえ、燃料タンク20と第1継手22をつなぐ第1燃料パイプ31は変形しない。燃料タンク20と第1継手22がともにラダーフレーム10に支持されていることで、金属製の第1燃料パイプ31の疲労劣化(繰り返し変形に起因する疲労劣化)が抑えられる。
【0039】
実施例の燃料電池車1では、燃料タンク21もラダーフレーム10に支持されている。タンク20とタンク21をつなぐ燃料パイプ33、34も、減圧されない高圧の水素ガスが流れるため、金属で作られる。第3燃料パイプ33と第4燃料パイプ34を連結する第2継手36もラダーフレーム10に支持される。それゆえ、第3燃料パイプ33と第4燃料パイプ34も走行中に変形せず、それらの金属製の燃料パイプの劣化疲労が抑えられる。
【0040】
燃料電池車1では、燃料電池に関するデバイス(燃料電池スタック4、燃料タンク20、21、それらを連結する燃料パイプ31-35、継手22、36、減圧弁23)が全てラダーフレーム10に支持されている。ラダーフレーム10とボディ9の間に燃料パイプが架け渡されていないので、安全性が高まる。
【0041】
また、燃料電池に関するデバイスが全てラダーフレーム10に支持されているので、ボディ9をシャシ2に取り付ける前に、水素ガス漏れの有無を点検することができる。水素ガス漏れが発見された場合、ボディ9を取り付ける前であれば、部品交換が容易である。
【0042】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。燃料タンク21が付加燃料タンクの一例であり、第2継手36が付加継手の一例である。継手22、36は、3本以上の燃料パイプが連結される流体分配継手であり、マニホールドと呼ばれることがある。
【0043】
実施例の燃料電池車は2個の燃料タンク20、21を備えている。本明細書が開示する燃料電池車は、さらに多くの燃料タンクを備えていてもよい。
【0044】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0045】
1:燃料電池車 2:シャシ 3a、3b:電気モータ 4:燃料電池スタック 5:バッテリ 7:フロアパネル 8:センタートンネル 8a:第1トンネル 8b:第2トンネル 8c:天井 9:ボディ 10:ラダーフレーム 11L、11R:サイドメンバ 12、12a、12b:クロスメンバ 13:防振マウント 20、21:燃料タンク 22、36:継手 23:減圧弁 31-35:燃料パイプ 37:レセプタクル 41、42:バンド 43:弾性部材 45:支柱 48:支持板 143:板バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7