(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】市場サーバ、および電力取引システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20241001BHJP
G06Q 30/0601 20230101ALI20241001BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q30/0601 312
(21)【出願番号】P 2021137932
(22)【出願日】2021-08-26
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 和峰
(72)【発明者】
【氏名】工藤 由貴
(72)【発明者】
【氏名】小幡 一輝
(72)【発明者】
【氏名】木暮 宏光
(72)【発明者】
【氏名】間庭 佑太
(72)【発明者】
【氏名】菊池 智志
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-056666(JP,A)
【文献】特許第6915729(JP,B1)
【文献】特開2021-043935(JP,A)
【文献】特開2001-312675(JP,A)
【文献】特開2002-229449(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110889750(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力取引市場の参加者の参加者情報を記憶するメモリと、
プロセッサとを備え、
前記参加者情報は、
前記参加者を特定する参加者IDと、
前記参加者IDに対応付けられると共に前記参加者の取引履歴に基づいて設定される
評価ポイントとを含み、
前記電力取引市場で取引される電力は、
単位量の電力が生成されるために第1量の二酸化炭素が排出される第1電力と、
前記単位量の電力が生成されるために前記第1量よりも少ない第2量の二酸化炭素が排出される第2電力とを含み、
前記プロセッサは、
前記参加者により取引きされた電力のうちの前記第2電力が占める比率が大きい程、該参加者の前記参加者IDにより特定された前記参加者の評価ポイントを多く増加させ、
前記
評価ポイントが
第1閾値以上である場合に、該
評価ポイントに対応付けられた前記参加者IDにより特定される前記参加者による前記電力取引市場への参加を許可する、市場サーバ。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記評価ポイントを、該評価ポイントに対応付けられた前記参加者IDにより特定された前記参加者の取引履歴に基づいて増減させる、
請求項1に記載の市場サーバ。
【請求項3】
前記参加者の取引履歴は、
該参加者により取引きされた取引電力量と、
該参加者により取引きされた電力取引時間とのうちの少なくとも1つを含む、
請求項2に記載の市場サーバ。
【請求項4】
前記参加者の取引履歴
は、該参加者により取引きされた電力取引価
格を含む、
請求項2または
請求項3に記載の市場サーバ。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記参加者IDと電力取引に関する取引データとを取得し、
前記取引データの内容が適切条件を満たせば、前記参加者IDに対応付けられた評価ポイントを増加させ、
前記取引データの内容が前記適切条件を満たさなければ、前記参加者IDに対応付けられた評価ポイントを減少させる、
請求項1~
請求項4のいずれか1項に記載の市場サーバ。
【請求項6】
前記適切条件は、前記取引データに含まれる電力取引価格が第1正常範囲内であることを含む、
請求項5に記載の市場サーバ。
【請求項7】
前記適切条件は、前記取引データに含まれる取引電力量が第2正常範囲内であることを含む、
請求項5または
請求項6に記載の市場サーバ。
【請求項8】
前記取引データは、売却される電力の生成手法を示す生成情報を含み、
前記適切条件は、前記市場サーバが、前記生成情報が正確であることを示す情報を取得
することを含む、
請求項5~
請求項7のいずれか1項に記載の市場サーバ。
【請求項9】
前記取引データは、電力取引時間帯と、取引電力量とを含み、
前記適切条件は、前記参加者により、前記電力取引時間帯で、前記取引電力量の電力を取引したことを含む、
請求項5~
請求項8のいずれか1項に記載の市場サーバ。
【請求項10】
前記プロセッサは、要求条件に対して入札する前記参加者の前記評価ポイントを、該要求条件を提示した参加者が利用するエージェント装置と、前記入札する参加者が利用するエージェント装置とのうちの少なくとも一方に出力する、
請求項1~
請求項9のいずれか1項に記載の市場サーバ。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記評価ポイントが高い程、前記参加者が得られる利益が多くなるように前記参加者情報を更新する、
請求項1~
請求項10のいずれか1項に記載の市場サーバ。
【請求項12】
前記利益が多くなるとは、取引電力量が増加することを含む、
請求項11に記載の市場サーバ。
【請求項13】
前記利益が多くなるとは、前記参加者が利用するエージェント装置がアクセス可能な電力取引データが増加することを含む、
請求項11または
請求項12に記載の市場サーバ。
【請求項14】
前記利益が多くなるとは、電力取引の約定優先度を上昇させることを含む、請求項
11~
請求項13のいずれか1項に記載の市場サーバ。
【請求項15】
前記電力取引市場で取引される電力は、
単位量の電力が生成されるために第1量の二酸化炭素が排出される第1電力と、
前記単位量の電力が生成されるために前記第1量よりも少ない第2量の二酸化炭素が排出される第2電力とを含み、
前記利益
が多くなることは、前記第2電力の取引量を増加することを含む、
請求項11~
請求項14のいずれか1項に記載の市場サーバ。
【請求項16】
前記市場サーバは、前記参加者IDに対応付けられた評価ポイントに対応する暗号鍵を前記参加者が利用するエージェント装置に送信し、
前記エージェント装置は、
前記電力取引市場への参加に関する取引データとを前記暗号鍵で暗号化することにより暗号化データを生成し、
参加者IDと、前記暗号化データとを前記市場サーバに送信し、
前記市場サーバは、
前記暗号鍵に対応する復号鍵で前記暗号化データを復号することにより、前記取引データ、前記参加者ID、および評価ポイントを取得し、
前記取得した前記参加者IDに対応付けられている評価ポイントと、前記取得した評価ポイントとが一致している場合は、前記暗号鍵は改ざんされていないと判断する、
請求項1~
請求項15のいずれか1項に記載の市場サーバ。
【請求項17】
電力取引市場の市場サーバと、
前記電力取引市場の参加者が利用するエージェント装置とを備え、
前記市場サーバは、前記参加者の参加者情報を記憶するメモリを有し、
前記参加者情報は、
前記参加者を特定する参加者IDと、
前記参加者IDに対応付けられると共に前記参加者の取引履歴に基づいて設定される
評価ポイントとを含み、
前記電力取引市場で取引される電力は、
単位量の電力が生成されるために第1量の二酸化炭素が排出される第1電力と、
前記単位量の電力が生成されるために前記第1量よりも少ない第2量の二酸化炭素が排出される第2電力とを含み、
前記市場サーバは、
前記参加者により取引きされた電力のうちの前記第2電力が占める比率が大きい程、該参加者の前記参加者IDにより特定された前記参加者の評価ポイントを多く増加させ、
前記
評価ポイントが
第1閾値以上である場合に、該
評価ポイントに対応付けられた前記参加者IDにより特定される前記参加者による前記電力取引市場への参加を許可する、電力取引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、市場サーバ、および電力取引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-9334号公報(特許文献1)には、電力取引システムが開示されている。この電力取引システムにおいて、参加者としての電力売却者と、参加者としての電力購入者との間で、電力の取引が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術において、悪意のある参加者が電力取引市場に参加する場合がある。たとえば、悪意のある参加者としての電力購入者が、高額で電力を購入することにより、電力の買い占めを行う場合がある。この場合には、電力取引市場の混乱などを招く場合がある。このように、従来の電力取引システムでは、参加者の信頼性が担保されずに、電力取引市場が提供されてしまうという問題が生じ得る。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、参加者の信頼性が担保された電力取引市場を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による市場サーバは、電力取引市場の参加者の参加者情報を記憶するメモリと、プロセッサとを備える。参加者情報は、参加者を特定する参加者IDと、参加者IDに対応付けられると共に参加者の取引履歴に基づいて設定される参加者評価とを含む。プロセッサは、参加者評価が所定条件を満たす場合に、該参加者評価に対応付けられた参加者IDにより特定される参加者による電力取引市場への参加を許可する。
【0007】
このような構成によれば、参加者評価が所定条件を満たす場合に、該参加者評価に対応付けられた参加者IDにより特定される参加者による電力取引市場への参加を許可することから、参加者の信頼性が担保された電力取引市場を提供することができる。
【0008】
また、参加者評価は、評価ポイントとしてもよい。参加者評価が所定条件を満たすとは、評価ポイントが第1閾値以上であることとしてもよい。
【0009】
このような構成によれば、評価ポイントが第1閾値以上である場合に、評価ポイントに対応付けられた参加者IDにより特定される参加者による電力取引市場への参加を許可することから、参加者の信頼性が担保された電力取引市場を提供することができる。
【0010】
また、プロセッサは、評価ポイントを、該評価ポイントに対応付けられた参加者IDにより特定された参加者の取引履歴に基づいて増減させるようにしてもよい。
【0011】
このような構成によれば、電力取引市場における電力取引を参加者に促進することができる。
【0012】
また、参加者の取引履歴は、該参加者により取引きされた取引電力量と、該参加者により取引きされた電力取引時間とのうちの少なくとも1つを含むようにしてもよい。
【0013】
このような構成によれば、取引電力量および電力取引時間のうちの少なくとも1つの増加を参加者に促進することができる。
【0014】
また、電力取引市場で取引される電力は、単位量の電力が生成されるために第1量の二酸化炭素が排出される第1電力と、単位量の電力が生成されるために第1量よりも少ない第2量の二酸化炭素が排出される第2電力とを含むようにしてもよい。参加者の取引履歴は、該参加者により取引きされた電力のうちの第2電力が占める比率と、該参加者により取引きされた電力取引価格とのうちの少なくとも1つを含むようにしてもよい。
【0015】
このような構成によれば、取引きされた電力のうちの第2電力が占める比率と、電力取引価格とのうちの少なくとも1つの増加を参加者に促進することができる。
【0016】
また、プロセッサは、参加者IDと電力取引に関する取引データとを取得し、取引データの内容が適切条件を満たせば、参加者IDに対応付けられた評価ポイントを増加させるようにしてもよい。プロセッサは、取引データの内容が適切条件を満たさなければ、参加者IDに対応付けられた評価ポイントを減少させるようにしてもよい。
【0017】
このような構成によれば、取引データの内容が適切条件を満たすことを参加者に促進することができる。
【0018】
また、適切条件は、取引データに含まれる電力取引価格が第1正常範囲内であることを含むようにしてもよい。
【0019】
このような構成によれば、電力取引価格が第1正常範囲内となることを参加者に促進することができる。
【0020】
また、適切条件は、取引データに含まれる取引電力量が第2正常範囲内であることを含むようにしてもよい。
【0021】
このような構成によれば、電力取引価格が第2正常範囲内となることを参加者に促進することができる。
【0022】
また、取引データは、売却される電力の生成手法を示す生成情報を含むようにしてもよい。また、適切条件は、市場サーバが、生成情報が正確であることを示す情報を取得することを含むようにしてもよい。
【0023】
このような構成によれば、供給される電力の生成手法を正確にすることを参加者に促進することができる。
【0024】
また、取引データは、電力取引時間帯と、取引電力量とを含むようにしてもよい。また、適切条件は、参加者により、電力取引時間帯で、取引電力量の電力を取引したことを含むようにしてもよい。
【0025】
このような構成によれば、参加者が、意図した電力取引時間帯で意図した取引電力量の電力取引を行うことを該参加者に促進することができる。
【0026】
また、プロセッサは、要求条件に対して入札する参加者の評価ポイントを、該要求条件を提示した参加者が利用するエージェント装置と、入札する参加者が利用するエージェント装置とのうちの少なくとも一方に出力するようにしてもよい。
【0027】
このような構成によれば、要求条件に対して入札する参加者の評価ポイントを、該要求条件を提示した参加者、および該入札する参加者のうち少なくとも一方に認識させることができる。
【0028】
また、プロセッサは、評価ポイントが高い程、参加者が得られる利益が多くなるように参加者情報を更新するようにしてもよい。
【0029】
このような構成によれば、評価ポイントを高くすることを参加者に促進できる。
また、利益が多くなるとは、取引電力量が増加することを含むようにしてもよい。
【0030】
このような構成によれば、評価ポイントを高くした参加者の取引電力量を増加させることから、該参加者に有利な電力取引を実現させることができる。
【0031】
また、利益が多くなるとは、参加者が利用するエージェント装置がアクセス可能な電力取引データが増加することを含むようにしてもよい。
【0032】
このような構成によれば、評価ポイントを高くした参加者は視認できる、電力取引に関するデータに基づく画面の数を増加させることから、該参加者に有利な電力取引を実現させることができる。
【0033】
また、利益が多くなるとは、電力取引の約定優先度を上昇させることを含むようにしてもよい。
【0034】
このような構成によれば、評価ポイントを高くした参加者の約定優先度を上昇させることから、該参加者に有利な電力取引を実現させることができる。
【0035】
また、電力取引市場で取引される電力は、単位量の電力が生成されるために第1量の二酸化炭素が排出される第1電力と、単位量の電力が生成されるために第1量よりも少ない第2量の二酸化炭素が排出される第2電力とを含むようにしてもよい。また、利益は、第2電力の取引量を増加することを含むようにしてもよい。
【0036】
このような構成によれば、評価ポイントを高くした参加者の取引電力量を増加させることから、該参加者に有利な電力取引を実現させることができる。
【0037】
また、市場サーバは、参加者IDに対応付けられた評価ポイントに対応する暗号鍵を参加者が利用するエージェント装置に送信するようにしてもよい。また、エージェント装置は、電力取引市場への参加に関する取引データとを暗号鍵で暗号化することにより暗号化データを生成し、参加者IDと、暗号化データとを市場サーバに送信するようにしてもよい。市場サーバは、暗号鍵に対応する復号鍵で暗号化データを復号することにより、取引データ、参加者ID、および評価ポイントを取得し、取得した参加者IDに対応付けられている評価ポイントと、取得した評価ポイントとが一致している場合は、暗号鍵は改ざんされていないと判断するようにしてもよい。
【0038】
このような構成によれば、参加者を評価するための評価ポイントを用いて、暗号化データは改ざんされていないことを判断できる。したがって、参加者を評価するためのデータと、暗号化データは改ざんされていないことを判断するためのデータとが別の市場サーバと比較して、用いられるデータの容量を削減できる。
【0039】
また、本開示の電力取引システムは、電力取引市場の市場サーバと、電力取引市場の参加者が利用するエージェント装置とを備える。市場サーバは、参加者の参加者情報を記憶するメモリを有する。参加者情報は、参加者を特定する参加者IDと、参加者IDに対応付けられると共に参加者の取引履歴に基づいて設定される参加者評価とを含む。市場サーバは、参加者評価が所定条件を満たす場合に、該参加者評価に対応付けられた参加者IDにより特定される参加者による電力取引市場への参加を許可する。
【0040】
このような構成によれば、参加者評価が所定条件を満たす場合に、該参加者評価に対応付けられた参加者IDにより特定される参加者による電力取引市場への参加を許可することから、参加者の信頼性が担保された電力取引市場を提供することができる。
【発明の効果】
【0041】
本開示によれば、参加者の信頼性が担保された電力取引市場を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図2】本実施の形態の電力取引システムの構成例を示す図である。
【
図3】本実施の形態の電力取引システムの構成例を示す図である。
【
図4】エージェント装置と、市場サーバとのハードウェア構成を示す図である。
【
図6】エージェントデータベースの一例を示す図である。
【
図8】エージェント装置と市場サーバとの機能ブロック図である。
【
図9】評価ポイントと、閾値と関係の一例を示す図である。
【
図10】第1更新条件が成立したときの評価ポイントの増減の一例を示す図である。
【
図12】本実施の形態の利益の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0044】
[第1の実施の形態]
<電力取引市場>
本実施の形態においては、いわゆるP2P(Peer to Peer)電力取引が採用された電力取引市場が開示される。電力取引市場に参加する者は、「参加者」と称される。参加者は、要求条件を提示する提示者と、該要求条件に対して入札する入札者とを含む。提示者は、電力売却者と、電力購入者とを含む。また、提示者が、電力売却者である場合には、入札者は、電力購入者となる。また、提示者が、電力購入者である場合には、入札者は、電力売却者となる。また、本実施の形態では、「参加」は、「要求条件の提示」と、「該要求条件への入札」との双方を含む。また、「電力取引」は、電力の購入と、電力の売却との双方を含む。
【0045】
図1は、参加者を示す図である。参加者は、該参加者が利用するエージェント装置100を保有する。
図1の上部においては、提示者が電力購入者であり、入札者が電力売却者である例が示されている。提示者は、該提示者のアカウントによりログインしたエージェント装置100に対して、要求条件Rをエージェント装置100の入力画面(
図5参照)から入力する。要求条件Rは、電力取引時間帯と、取引電力価格と、取引電力量とにより構成される。
【0046】
電力取引時間帯は、提示者(電力購入者)が、電力の購入を希望する時間帯である。取引電力価格は、提示者(電力購入者)が、希望する電力購入価格である。取引電力量は、提示者(電力購入者)が、購入した電力量である。
図1の例においては、電力取引時間帯は14時~16時であり、取引電力価格はA円であり、取引電力量はBkWhである。
【0047】
後述の市場サーバ300は、要求条件を取得すると、電力取引時間帯で規定されている開始時刻よりも所定時間前に各エージェント装置100に対して開催通知を行う。たとえば、該開始時刻が15時であれば、1時間(所定時間)前である14時に開催通知を行う。
【0048】
該開催通知を受信したエージェント装置100の1以上の入札者(電力購入者)は、入札者のアカウントによりログインしたエージェント装置100(開催通知を受信したエージェント装置)に対して、入札条件を入力画面(
図5参照)から入力する。入札条件は、電力取引時間帯と、取引電力価格と、取引電力量とにより構成される。
【0049】
電力取引時間帯は、入札者(電力売却者)が、電力の売却を希望する時間帯である。取引電力価格は、入札者(電力売却者)が、希望する電力売却価格である。取引電力量は、入札者(電力売却者)が、売却した電力量である。
【0050】
図1の下部においては、提示者が電力売却者であり、入札者が電力購入者である例が示されている。提示者は、該提示者のアカウントによりログインしたエージェント装置100に対して、要求条件Rを入力画面(
図5参照)から入力する。要求条件は、電力取引時間帯と、取引電力価格と、取引電力量とにより構成される。
【0051】
電力取引時間帯は、提示者(電力売却者)が、電力の売却を希望する時間帯である。取引電力価格は、提示者(電力売却者)が、希望する電力売却価格である。取引電力量は、提示者(電力売却者)が、売却した電力量である。
図1の例においては、電力取引時間帯は11時~13時であり、取引電力価格はC円であり、取引電力量はDkWhである。
【0052】
市場サーバは、要求条件を取得すると、電力取引時間帯で規定されている開始時刻よりも所定時間前に各エージェント装置100に対して開催通知を行う。たとえば、該開始時刻が15時であれば、1時間(所定時間)前である14時に開催通知を行う。
【0053】
該開催通知を受信したエージェント装置100の1以上の入札者(電力売却者)は、入札者のアカウントによりログインしたエージェント装置100(開催通知を受信したエージェント装置)に対して、入札条件を入力画面(
図5参照)から入力する。入札条件は、電力取引時間帯と、取引電力価格と、取引電力量とにより構成される。
【0054】
電力取引時間帯は、入札者(電力購入者)が、電力の購入を希望する時間帯である。取引電力価格は、入札者(電力購入者)が、希望する電力購入価格である。取引電力量は、入札者(電力購入者)が、購入した電力量である。
【0055】
そして、後述する市場サーバ300が、要求条件と入札条件とが適合すると判断すると、電力取引の約定を成立させる。「要求条件と入札条件とが適合する」とは、たとえば、入札条件の電力取引時間帯が、要求条件の電力取引時間帯以内であり、入札条件の取引電力量が、要求条件の取引電力量と一致または略一致し、入札条件の取引電力価格が、要求条件の取引電力価格と一致または略一致するということである。電力取引の約定が成立した場合には、その後、入札条件に含まれる電力取引時間帯において、該提示者と入札者とにより、電力の取引(電力の授受)が実行される。また、市場サーバ300が、要求条件と入札条件とが適合しないと判断すると、電力取引の約定を不成立とする。
【0056】
要求条件を提示する提示者が利用するエージェント装置(つまり、要求条件が入力されるエージェント装置)は、「第1エージェント装置」とも称される。また、入札条件を提示する入札者が利用するエージェント装置(つまり、入札条件が入力されるエージェント装置)は、「第2エージェント装置」とも称される。
【0057】
図2は、本実施の形態に係る電力取引システム1000の構成例である。
図2の例では、電力取引システム1000は、エージェント装置100と、市場サーバ300と、電力装置451などを備える。
【0058】
電力装置451は、電力を生成して出力する(放電する)ことができる。また、電力装置451は、外部からの電力を受けて入力される(充電する)ことができる。
図2の例では、電力装置451が、電力会社401、工場402、および会社403に配置されている例が示されている。
【0059】
電力装置451は、たとえば、電力を消費することで動作する装置(以下、「電力動作装置」とも称される。)に充電可能である。電力動作装置は、たとえば、移動体453である。移動体453は、典型的には、走行用のバッテリが搭載された電動車両であり、たとえば電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド車(HEV:Hybrid-Electric Vehicle)、またはプラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)である。
図2の例では、電力装置451は、送電線PLを経由して他の電力装置451と電力の授受を行う。
【0060】
図2に示すように、エージェント装置100は、移動体453の車載装置に含まれるようにしてもよい。また、エージェント装置100は、電力装置451に含まれるようにしてもよい。エージェント装置100は、PC(personal computer)、タブレット、スマートフォンなどにより構成されてもよい。
図2の例では、エージェント装置100が、移動体453の車載装置として該移動体453に搭載されている例が示されている。また、
図2の例では、エージェント装置100が、人間が保有するスマートフォンである例が示されている。また、
図2の例ではエージェント装置100が、電力会社401、工場402、および会社403に配置されているPCである例が示されている。
【0061】
図3は、
図2とは異なる観点で、電力取引システム1000を示す図である。
図3の例では、電力取引システム1000は、市場サーバ300と、複数のエージェント装置100と、ネットワーク200とを含む。エージェント装置100と、市場サーバ300とは、ネットワーク200を介して通信可能である。
【0062】
[ハードウェア構成]
図4は、エージェント装置100と、市場サーバ300とのハードウェア構成を示す図である。エージェント装置100は、制御装置150と、入力装置102と、表示装置104とを備える。制御装置150は、CPU(Central Processing Unit)60と、プログラムおよびデータを格納する記憶部と、通信I/F(Interface)68とを有する。各構成要素はデータバスによって相互に接続されている。エージェント装置100が、車載装置に含まれる場合には、CPU60は、ECU(Electronic Control Unit)に代替されてもよい。
【0063】
記憶部は、ROM(Read Only Memory)62、RAM(Random Access Memory)64およびHDD(Hard Disk Drive)66を含む。ROM62は、CPU60にて実行されるプログラムを格納できる。RAM63は、CPU60におけるプログラムの実行により生成されるデータ、および通信I/F68を経由して入力されたデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能できる。HDD66は、不揮発性の記憶装置であり、様々な情報を格納できる。あるいは、HDD66に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。
【0064】
通信I/F68は、ネットワーク200を介して、市場サーバ300と通信するためのインターフェイスである。また、通信I/F68は、入力装置102と、表示装置104と通信可能である。
【0065】
入力装置102は、たとえばキーボードあるいはマウスなどのポインティングデバイスであり、ユーザによる操作を受け付ける。表示装置104は、たとえば液晶(LCD:Liquid Crystal Display)パネルで構成され、ユーザに情報を表示する。ユーザインターフェースとしてタッチパネルが用いられる場合には、入力装置102と表示装置104とが一体的に形成される。
【0066】
市場サーバ300は、CPU72と、記憶部(ROM76、RAM74およびHDD78)と、通信I/F84とを有する。
【0067】
ROM76は、CPU72にて実行されるプログラムを格納できる。RAM74は、CPU72におけるプログラムの実行により生成されるデータ、およびエージェント装置100からのデータなどを一時的に格納することができるデータメモリとして機能できる。HDD78は、不揮発性の記憶装置であり、市場サーバ300で生成された情報を格納できる。あるいは、HDD78に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。通信I/F84は、ネットワーク200を介して、エージェント装置100と通信するためのインターフェイスである。
【0068】
[入力画面]
図5は、エージェント装置100の表示装置104の表示領域104Aに表示される入力画面350の一例である。エージェント装置100は、参加者は、この入力画面350に対して、入力装置102を用いて、要求条件または入札条件を入力する。たとえば、開催通知を受けていない状態での入力画面350は、提示者が要求条件を入力する入力画面350となる。また、開催通知を受けた状態での入力画面350は、入札者が入札条件を入力する入力画面350となる。
【0069】
入力画面350において、「市場参加画面」という文字画像351が表示されている。また、入力画面350において、「取引種別」という入力欄352が表示される。該取引種別の選択肢として、電力購入という選択肢354と、電力売却の選択肢356とが表示される。本実施の形態においては、選択肢は、チェックボックスの態様で表示される。
【0070】
「電力購入」の選択肢354にチェックが入力された場合には、電力購入者として電力取引市場に参加できる。また、「電力売却」の選択肢356にチェックが入力された場合には、電力売却者として電力取引市場に参加できる。
【0071】
入力画面350において、「電力種別」という入力欄358が表示される。該電力種別の選択肢として、再生エネルギー電力という選択肢360と、通常電力の選択肢362とが表示される。
【0072】
ここで、再生エネルギー電力と、通常電力とについて説明する。電力取引システム1000において取引される電力は、第1電力と第2電力とを含む。第1電力は、単位量の電力が生成されるために第1量の二酸化炭素が排出される電力である。単位量は予め定められた量である。また、第2電力は、該単位量の電力が生成されるために第1量よりも少ない第2量の二酸化炭素が排出される電力である。つまり、生成される場合に排出される二酸化炭素の量は、第2電力の方が、第1電力よりも少ない。
【0073】
第1電力は、たとえば、枯渇性エネルギーが用いられて生成された電力である。枯渇性エネルギーは、たとえば、石油、天然ガス、オイルサンド、メタンハイドレート、およびウランなどを含む。
【0074】
第2電力は、たとえば、再生可能エネルギーが用いられて生成された電力である。再生可能エネルギーは、たとえば、風力、太陽光、水力、およびバイオマスなどのエネルギーを含む。よって、地球の環境保護などの観点から、第1電力が取引されるよりも第2電力が取引されることが好ましい。本実施の形態においては、再生エネルギー電力は、第2電力の一例であり、通常電力は、第1電力の一例である。
【0075】
「再生エネルギー電力」の選択肢360にチェックが入力された場合には、参加者は、再生エネルギーの電力購入者または電力売却者として電力取引市場に参加できる。また、「通常電力」の選択肢362にチェックが入力された場合には、参加者は、通常電力の電力購入者または電力売却者として電力取引市場に参加できる。
【0076】
また、入力画面350において、「取引電力量」という入力欄364が表示される。また、該入力欄364に対応付けられて、該取引電力量の入力領域366が表示される。該入力領域366には、参加者は、取引電力量の数値を入力可能である。参加者は、入力領域366に入力された取引電力量で電力購入者または電力売却者として電力取引市場に参加できる。
【0077】
また、入力画面350において、「取引時間帯」という入力欄368が表示される。また、該入力欄368に対応付けられて、該取引時間帯の開始時刻の入力領域370と、終了時刻の入力領域372が表示される。参加者は、入力領域370に電力取引の開始時刻を入力可能であり、入力領域372に電力取引の終了時刻を入力可能である。参加者は、入力領域370に入力された取引時間帯で電力購入者または電力売却者として電力取引市場に参加できる。
【0078】
また、入力画面350において、「電力価格」という入力欄374が表示される。また、該入力欄374に対応付けられて、該電力価格の入力領域376が表示される。該入力領域376には、参加者は、電力価格の数値を入力可能である。参加者は、入力領域376に入力された電力価格で電力購入者または電力売却者として電力取引市場に参加できる。
【0079】
また、入力画面350において、参加開始ボタン378が表示される。参加者が、取引種別、電力種別、取引電力量、取引時間帯、および電力価格に入力した後には、参加者は、参加開始ボタン378を操作可能となる。参加者により、参加開始ボタン378が操作された場合には、電力取引市場に参加する。
【0080】
[データベース]
次に、本実施の形態の電力取引システム1000において使用されるデータベースを説明する。
図6は、エージェントデータベースの一例を示す図である。エージェントデータベースは、エージェント装置100が保持するデータベースである。
図6の例では、参加者ID、パスワード、およびその他の情報が記憶されている。本実施の形態においては、初めて電力取引システム1000に参加する参加者は、市場サーバ300に新規に参加申請を行う。該新規の参加申請においては、新規登録画面(図示せず)に、該参加者は、該参加者の氏名、住所などを入力する。初めての参加者により、該参加者の氏名、住所などが入力された場合には、市場サーバは、該参加者に対してアカウントを付与する。アカウントは、参加者IDおよび該参加者IDに対応付けられたパスワードにより構成される。処理部108は、
図7に示すように、市場サーバ300により付与された参加者ID、市場サーバ300により付与されたパスワード、およびその他の情報(たとえば、参加者が保有する車両の車種など)を記憶する。
【0081】
図7は、参加者データベースの一例である。参加者データベースは、市場サーバ300が保持するデータベースである。参加者データベースは、たとえば、ブロックチェーンの手法で管理される。
図7の例では、参加者IDに対して、評価ポイント、過去の取引実績、フラグ、復号鍵、およびその他の情報が対応付けられている。「評価ポイント」は、参加者を評価するために用いられる参加者評価(指標)の一例である。評価ポイントについては後述する。
【0082】
「過去の取引実績」については、参加者IDにより特定される参加者による電力取引システム1000における過去の取引実績が示される。過去の取引実績には、過去の電力購入の実績と、過去の電力売却の実績とが含まれる。過去の取引実績は、約定した入札に基づく取引の履歴である。
【0083】
「フラグ」は、許可フラグ、非許可フラグ、小利益フラグ、および大利益フラグを含む。許可フラグは、電力取引システム1000に対する参加が許可されることを示すフラグである。非許可フラグは、電力取引システム1000に対する参加が許可されていないことを示すフラグである。小利益フラグは、電力取引システム1000に対する参加が許可され、かつ後述する小利益が付与されていることを示すフラグである。大利益フラグは、電力取引システム1000に対する参加が許可され、かつ後述する大利益が付与されていることを示すフラグである。
【0084】
次に、「復号鍵」について説明する。後述するように、市場サーバ300は、参加者ID毎に、該参加者IDに対応するポイントに対応した暗号鍵を生成する。この復号鍵は、該暗号鍵で生成された暗号化データを復号するための鍵である。その他の情報は、たとえば、参加者IDから特定される参加者の個人情報(氏名および住所など)を含む。
【0085】
図7の例では、A1である参加者IDに対応付けられている評価ポイントは10ポイントである。また、A1である参加者IDに対応付けられている過去の取引実績は、2020年1月6日に13時~15時の時間帯で、X1kWhの再生エネルギー電力を、Y1円で購入した実績などを含む。A1である参加者IDに対応付けられているフラグは、許可フラグである。A1である参加者IDに対応付けられている復号鍵は、復号鍵R1である。なお、
図7の例での3点リーダは、実際はデータが格納されているが、記載を省略していることを示している。
【0086】
また、参加者データベースで規定されている情報において参加者ID以外の情報は、本開示の「参加者情報」に対応する。
【0087】
[機能ブロック図]
図8は、エージェント装置100と市場サーバ300との機能ブロック図である。
図8の例では、制御装置150は、入力部106と、処理部108と、出力部110と、記憶部112とを有する。記憶部112は、主に、暗号鍵1121と、エージェントデータベースとを記憶する。エージェントデータベース1122は、
図6のデータベースである。また、暗号鍵は、参加者IDに対応づけて記憶される。なお、
図8では、データベースは、DB(Data Base)と記載されている。
【0088】
また、市場サーバ300は、入力部302と、処理部304と、記憶部306と、出力部308とを有する。記憶部306は、主に、参加者データベース3061を記憶する。参加者データベース3061は、
図7のデータベースである。記憶部306は、本開示の「メモリ」に対応する。また、入力部302と、処理部304と、出力部308とは、本開示の「プロセッサ」に対応する。
【0089】
市場サーバ300の処理部304は、全ての参加者ID毎に、該参加者IDに対応付けられている評価ポイントに対応付けた暗号鍵と、該暗号鍵に対応する復号鍵とを所定タイミングで生成する。該所定タイミングについては評価ポイントが更新されたタイミングである。該所定タイミングについては、後述する。処理部108は、復号鍵を、参加者IDと対応付けて参加者データベースに記憶する(
図7の説明参照)。なお、
図8では、評価ポイントは、「評価Pt」と表示されている。
【0090】
また、処理部304は、出力部308経由で、全ての参加者IDに対応するエージェント装置100に対して、該参加者IDに対応する暗号鍵を送信する。エージェント装置100の入力部106には、該暗号鍵が入力される。該暗号鍵は、処理部108に出力される。処理部108は、該暗号鍵を記憶部112に記憶する(暗号鍵1121参照)。このように、暗号鍵1121は、予め記憶部112に記憶される。
【0091】
また、表示装置104には、
図5の入力画面350が表示される。以下では、入力画面350に入力される要求条件および入力画面350に入力される入札条件はまとめて、「入力条件」とも称される。参加者は、該入力画面350に対して、入力装置102を用いて、入力条件を入力する。入力条件は、制御装置150の入力部106に入力される。入力部106に入力された入力条件は、処理部108に出力される。
【0092】
処理部108は、入力条件を、電力取引市場への参加に関する取引データとして処理する。本実施の形態では、取引データは、
図5に示すように、取引種別、電力種別、取引電力量、取引時間帯、および電力価格を示すデータである。
【0093】
処理部108は、該取引データを暗号鍵1121で暗号化することにより、暗号化データを生成する。ここで、暗号化データについては、該暗号鍵1121に対応する評価ポイントが含まれるように生成される。そして、処理部108は、該暗号化データと、エージェントデータベースに格納されている参加者IDとを出力部110経由で市場サーバ300に送信する。
【0094】
市場サーバ300の入力部302には、参加者IDおよび暗号化データが入力される。入力された参加者IDおよび暗号化データは、処理部304に出力される。処理部304は、参加者データベースを参照して、該参加者IDに対応する復号鍵(つまり、暗号鍵に対応する復号鍵)で、該暗号化データを復号する。上述のように、該暗号化データには、該暗号化データを生成するための暗号鍵に対応する評価ポイントが含まれる。したがって、処理部304は、暗号化データを復号することにより、取引データ、参加者ID、および評価ポイントを取得する。そして、処理部304は、該取得した参加者IDに関連付けられている評価ポイントを、参加者データベース(
図7参照)から抽出する。そして、処理部304は、制御装置150から取得した評価ポイント(以下、「第1評価ポイント」とも称される。)と、参加者データベースから抽出した評価ポイント(以下、「第2評価ポイント」とも称される。)とを比較する。
【0095】
ここで、後述する評価ポイントが高い場合には、参加者に対して様々な利益が付与される。したがって、悪意のある人物(たとえば、エージェント装置100の持ち主など)が、評価ポイントを増加するように、暗号鍵などを改ざんする場合がある。暗号鍵が改ざんされている場合には、第1評価ポイントと第2評価ポイントとは異なる。よって、処理部304は、第1評価ポイントと第2評価ポイントとは異なると判断した場合には、暗号鍵は改ざんされていると判断する。市場サーバ300は、暗号鍵が改ざんされていると判断された場合には、暗号鍵が改ざんされている旨をエージェント装置100の送信する。一方、処理部304は、第1評価ポイントと第2評価ポイントとが一致していると判断した場合には、暗号鍵は改ざんされていないと判断する。
【0096】
また、市場サーバ300は、エージェント装置100に対して、該エージェント装置100に記憶されている参加者IDに対応する評価ポイントを通知することができる。エージェント装置100は、評価ポイントを表示装置104に表示することができる。評価ポイントの表示については、後述の
図14で説明する。
【0097】
また、本実施の形態においては、エージェント装置100は、参加者が入力画面に対して入力した入力条件を取引データとして処理する構成を説明した。しかしながら、エージェント装置100は、該エージェント装置100に対応づけられた電力動作装置のSOC(State Of Charge)などに基づいて取引データを生成するようにしてもよい。
【0098】
[評価ポイント]
次に、評価ポイントを説明する。上述のように、評価ポイントは、参加者を評価するために用いられる参加者評価の一例である。評価ポイントは、参加者の取引履歴に基づいて設定(更新)される。本実施の形態においては、市場サーバ300は、第1更新条件または第2更新条件が成立したときに、評価ポイントを更新する。また、市場サーバ300は、電力取引システム1000に対して好ましい取引が実行された場合には、評価ポイントを増加させ、電力取引システム1000に対して好ましくない取引が実行された場合には、評価ポイントを減少させる。
【0099】
図9は、評価ポイントと、閾値と関係の一例を示す図である。
図9に示すように、評価ポイントの初期値は0ポイントである。たとえば、電力取引システム1000に初めて参加した参加者の評価ポイントは、初期値(0ポイント)である。
【0100】
また、第1閾値は、-10ポイントである。市場サーバ300は、評価ポイントが第1閾値(-10ポイント)以上である場合には、評価ポイントに関連付けられた参加者IDに特定される参加者による電力取引市場(電力取引システム1000)への参加を許可する。参加者による電力取引市場(電力取引システム1000)への参加を許可する処理とは、典型的には、該参加者の参加者IDに許可フラグを関連付ける処理である(
図7の「フラグ」の欄参照)。また、「評価ポイントが第1閾値以上である」ということは、本開示の「所定条件を満たす」ということに対応する。
【0101】
また、市場サーバ300は、評価ポイントが第1閾値未満である場合には、評価ポイントに関連付けられた参加者IDに特定される参加者による電力取引市場への参加を禁止する。参加者による電力取引市場への参加を禁止する処理とは、典型的には、該参加者の参加者IDに非許可フラグを関連付ける処理である(
図7の「フラグ」の欄参照)。
【0102】
また、第2閾値は、10ポイントである。市場サーバ300は、評価ポイントが第2閾値(10ポイント)以上である場合には、該評価ポイントに対応する参加者に対して、後述の小利益を付与する。参加者に対して小利益を付与する処理とは、典型的には、該参加者の参加者IDに小利益フラグを関連付ける処理である(
図7の「フラグ」の欄参照)。換言すれば、参加者に対して小利益を付与する処理とは、典型的には、小利益が付与されるように、参加者情報が更新される処理である。
【0103】
また、第3閾値は、20ポイントである。市場サーバ300は、評価ポイントが第3閾値(20ポイント)以上である場合には、該評価ポイントに対応する参加者に対して、後述の大利益を付与する。参加者に対して大利益を付与する処理とは、典型的には、該参加者の参加者IDに大利益フラグを関連付ける処理である(
図7の「フラグ」の欄参照)。換言すれば、参加者に対して大利益を付与する処理とは、典型的には、大利益が付与されるように、参加者情報が更新される処理である。
【0104】
次に、評価ポイントの更新を説明する。まず、第1更新条件を説明する。第1更新条件は、たとえば、所定期間が経過するということである。所定期間は、如何なる期間であってもよい。たとえば、1週間としてもよく、1か月としてもよい。本実施の形態においては、所定期間は、1か月とする。また、市場サーバ300は、第1更新条件が成立したときには、評価ポイントを、該評価ポイントに関連付けられた参加者IDにより特定された参加者の取引履歴に基づいて増減させる。
【0105】
図10は、第1更新条件が成立したときの評価ポイントの増減の一例を示す図である。市場サーバ300は、参加者の取引履歴に基づいて、評価ポイント増減する。本実施の形態では、市場サーバ300は、参加者の取引履歴から算出される達成度に基づいて評価ポイントを増減する。達成度は、電力取引システム1000の電力取引の介入度合いを示す指数である。
図10の例では、市場サーバ300は、以下の式(1)により達成度を算出する。
【0106】
達成度=A×B×C×D (1)
式(1)の例では、市場サーバ300は、実数A、実数B、実数C、および実数Dを乗算することにより達成度を算出する。
【0107】
式(1)の右辺の実数Aは、参加者により過去に取引きされた取引電力量の合計量である。式(1)の右辺の実数Bは、参加者により過去に取引きされた電力取引時間の合計量である。式(1)の右辺の実数Cは、参加者により過去に取引きされた電力価格の合計量である。式(1)の右辺の実数Dは、参加者により過去に取引きされた再生エネルギー電力の比率の合計量である。再生エネルギー電力の比率は、たとえば、以下の式(2)により算出される。
【0108】
再生エネルギー電力の比率=過去に取引きされた再生エネルギー電力の合計量/過去に取引きされた全ての電力の合計量 (2)
式(2)の例では、市場サーバ300は、「過去に取引きされた再生エネルギー電力の合計量」を、「過去に取引きされた全ての電力の合計量」で除算することにより、再生エネルギー電力の比率(実数D)を算出する。過去に取引きされた全ての電力の合計量は、通常電力と再生エネルギー電力との合計量である。
【0109】
市場サーバ300は、実数A~実数Dについては、たとえば、参加者データベース(
図7参照)の過去の取引履歴から取得できる。
【0110】
なお、変形例として、市場サーバ300は、実数A、実数B、実数C、および実数Dのうちの1~3つの実数を用いて達成度を算出するようにしてもよい。また、市場サーバ300は、実数A~実数Dのうちの少なくとも2つの和により達成度を算出するようにしてもよい。
【0111】
そして、
図10に示すように、市場サーバ300は、前回の達成度(つまり、1か月まえの達成度)と、今回の達成度(つまり、現時点での達成度)との差分を算出する。具体的には、市場サーバ300は、今回の達成度から前回の達成度を差し引くことにより差分を算出する。そして、市場サーバ300は、差分が予め定められた閾値以上である場合には、所定量(本実施の形態では、1ポイント)分、評価ポイントを増加させる。一方、市場サーバ300は、差分が該閾値未満である場合には、特定量(本実施の形態では、1ポイント)分、評価ポイントを減少させる。ここで、閾値は、予め定められた値であり、たとえば、市場サーバ300の管理者などが変更可能としてもよい。
【0112】
差分が閾値以上であるということは、前回の達成度算出から今回の達成度算出までの期間(つまり1か月)の間に、参加者は、多くの電力取引を行ったということである。したがって、市場サーバ300は、このような参加者の評価ポイントを増加させる。一方、差分が閾値未満であるということは、前回の達成度算出から今回の達成度算出までの期間の間に、参加者は、殆ど電力取引を行っていない、または、全く電力取引を行っていないということである。したがって、市場サーバ300は、このような参加者の評価ポイントを減少させる。
【0113】
次に、第2更新条件を説明する。第2更新条件は、電力取引が開始したという条件または電力取引が終了したという条件を含む。市場サーバ300は、第2更新条件が成立したときにおいて、取引データの内容が適切条件を満たせば、該取引データに対応する評価ポイントを所定量(たとえば、1ポイント)増加させる。一方、市場サーバ300は、第2更新条件が成立したときにおいて、取引データの内容が適切条件を満たさなければ、該取引データに対応する評価ポイントを特定量(たとえば、1ポイント)減少させる。
【0114】
図11は、適切条件を説明するための図である。
図11の例では、適切条件は、第1適切条件、第2適切条件、第3適切条件、および第4適切条件を含む。
【0115】
第1適切条件は、取引データに含まれる取引電力価格(
図5の入力画面350に入力される電力価格)が第1正常範囲以内であることを含む。該第1正常範囲は、予め定められる範囲である。第1正常範囲は、所定のアルゴリズムにより、市場サーバ300に定められるようにしてもよい。また、第1正常範囲は、市場サーバ300の管理者などにより手動で定められるようにしてもよい。
【0116】
電力購入者が取引電力価格を異常に高く入力した場合(つまり、取引電力価格が第1正常範囲を上回っている場合)には、たとえば、該電力購入者により電力取引市場での電力の買占めが行われるという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力購入者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0117】
また、電力購入者が取引電力価格を異常に安く入力した場合(つまり、取引電力価格が第1正常範囲を下回っている場合)には、たとえば、電力取引市場での電力価格が異常に安くなるという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力購入者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0118】
また、電力売却者が取引電力価格を異常に高く入力した場合(つまり、取引電力価格が第1正常範囲を上回っている場合)には、たとえば、電力取引市場での電力価格が異常に高くなるという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力売却者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0119】
また、電力売却者が取引電力価格を異常に安く入力した場合(つまり、取引電力価格が第1正常範囲を下回っている場合)には、たとえば、電力購入者により電力取引市場での電力の買占めが行われるという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力売却者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0120】
一方、電力購入者または電力売却者が入力した取引電力価格が第1正常範囲以内であれば、上述の弊害は生じ難く、スムーズな電力取引が行われる。したがって、市場サーバ300は、このような電力購入者または電力売却者の評価ポイントを増加させることが好ましい。
【0121】
第2適切条件は、取引データに含まれる取引電力量(
図5の入力画面350に入力される取引電力量)が第2正常範囲以内であることを含む。該第2正常範囲は、予め定められる範囲である。第2正常範囲は、所定のアルゴリズムにより、市場サーバ300に定められるようにしてもよい。また、第2正常範囲は、市場サーバ300の管理者などにより手動で定められるようにしてもよい。
【0122】
電力購入者が取引電力量を異常に多く入力した場合(つまり、取引電力量が第2正常範囲を上回っている場合)には、たとえば、該電力購入者により電力取引市場での電力の買占めが行われるという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力購入者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0123】
また、電力購入者が取引電力量を異常に少なく入力した場合(つまり、取引電力量が第2正常範囲を下回っている場合)には、たとえば、電力取引市場での電力取引の混乱を招くという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力購入者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0124】
また、電力売却者が取引電力量を異常に多く入力した場合(つまり、取引電力量が第2正常範囲を上回っている場合)には、たとえば、電力購入者により電力取引市場での電力の買占めが行われるという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力売却者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0125】
また、電力売却者が取引電力量を異常に少なく入力した場合(つまり、取引電力量が第2正常範囲を下回っている場合)には、たとえば、電力取引市場での電力取引の混乱を招くという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力売却者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0126】
一方、電力購入者または電力売却者が入力した取引電力量が第2正常範囲以内であれば、上述の弊害は生じ難く、スムーズな電力取引が行われる。したがって、市場サーバ300は、このような電力購入者または電力売却者の評価ポイントを増加させることが好ましい。
【0127】
次に、第3適切条件を説明する。
図5の「電力種別」の入力欄358に示すように、電力売却者は、売却する電力が、再生エネルギー電力であるか否かを入力する。ここで、入力欄358に入力する情報は、電力の生成手法を示す情報であることから、該情報は、本開示の「生成情報」に対応する。第3適切条件は、市場サーバ300が、この生成情報が正確であることを示す情報を取得するという条件である。
【0128】
悪意のある電力売却者が、実際は再生エネルギー電力でないにもかかわらず、再生エネルギー電力の選択肢360にチェックを入れて電力を売却するという虚偽を行う場合がある。市場サーバ300は、このような虚偽を行う電力売却者の評価ポイントを減少させることが好ましい。一方、電力売却者が、再生エネルギー電力の選択肢360にチェックを入れて再生エネルギー電力を売却した場合には、地球環境保護に貢献したことから、該電力売却者の評価ポイントを増加させることが好ましい。
【0129】
生成情報が正確であるか否かの判断の手法は、たとえば、市場サーバ300の管理者などが、再生ラベルを付して電力を売却した電力売却者の電力装置を検査する手法などを含む。
【0130】
該管理者が該電力装置451を検査した結果、生成情報は正確であると判断した場合には、該生成情報が正確であることを示す正確情報を、入力装置(図示せず)を用いて市場サーバ300に入力する。この場合には、市場サーバ300は、該正確情報を取得する。該正確情報を取得した場合には、取引データ第3適切条件を満たしたとして、該電力売却者の評価ポイントを増加させる。
【0131】
一方、該管理者は、該電力装置451を検査した結果、生成情報は誤りであると判断した場合(つまり、電力売却者が虚偽をした場合)には、該生成情報が不正確であることを示す不正確情報を入力装置を用いて市場サーバ300に入力する。この場合には、市場サーバ300は、該不正確情報を取得する。該不正確情報を取得した場合には、取引データ第3適切条件を満たしていないとして、該電力売却者の評価ポイントを減少させる。
【0132】
また、市場サーバ300が、電力売却者の電力装置451からの電力を分析することにより、再生エネルギー電力であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0133】
次に、第4適切条件を説明する。
図5の「取引電力量」の入力欄
364および「取引時間帯」の入力領域370、372に示すように、参加者(電力売却者および電力購入者)は、取引電力量と、取引時間帯とを入力する。また、入力した取引電力量および取引時間帯通りに電力取引を行わない参加者がいる。たとえば、参加者が、取引電力量および取引時間帯を入力したにも関わらず、電力取引を行わない場合などである。この場合には、該参加者の相手方の参加者に被害を被るのみならず、電力取引市場においてスムーズな電力取引が実現できない場合がある。
【0134】
そこで、市場サーバ300は、入力された取引電力量および取引時間帯通りに電力取引を行わない参加者の評価ポイントを減少させる。一方、市場サーバ300は、入力した取引電力量および取引時間帯通りに電力取引を行った参加者の評価ポイントを増加させる。
【0135】
次に、入力された取引電力量および取引時間帯通りに参加者が電力取引を行ったか否かの市場サーバ300による判断手法を説明する。
【0136】
特に図示しないが、電力装置451は、授受情報取得部を有する。授受情報取得部は、授受情報を取得し、該授受情報を市場サーバ300に送信する。
【0137】
参加者(電力売却者)が電力を売却した場合、つまり、電力装置451が電力を出力した場合には、授受情報は、該電力を出力した時間帯(つまり、取引時間帯)と、該電力量(つまり、取引電力量)とを含む。電力装置451は、該電力装置451の参加者(電力売却者)の参加者IDと、該授受情報とを市場サーバ300に送信する。市場サーバ300は、該参加者IDと、該授受情報とを受信する。
【0138】
市場サーバ300は、受信した参加者IDに対応する授受情報により示される時間帯および電力量と、該参加者IDに対応する過去の取引履歴により示される取引時間帯および取引電力量とが一致するか否かを判断する。該判断の結果が一致するという結果である場合には、取引データが第4適切条件を満たしたとして、該電力売却者の評価ポイントを増加させる。また、該判断の結果が一致していないという結果である場合には、取引データ第4適切条件を満たしていないとして、該電力売却者の評価ポイントを減少させる。
【0139】
また、参加者(電力購入者)が電力を購入した場合、つまり、電力装置451に電力が入力された場合には、授受情報は、該電力が入力された時間帯(つまり、取引時間帯)と、該電力量(つまり、取引電力量)とを含む。電力装置451は、該電力装置451の参加者(電力購入者)の参加者IDと、該授受情報とを市場サーバ300に送信する。市場サーバ300は、該参加者IDと、該授受情報とを受信する。
【0140】
市場サーバ300は、受信した参加者IDに対応する授受情報により示される時間帯および電力量と、該参加者IDに対応する取引履歴により示される取引時間帯および取引電力量とが一致するか否かを判断する。該判断の結果が一致するという結果である場合には、取引データが第4適切条件を満たしたとして、該電力購入者の評価ポイントを増加させる。また、該判断の結果が一致していないという結果である場合には、取引データ第4適切条件を満たしていないとして、該電力購入者の評価ポイントを減少させる。
【0141】
「受信した参加者IDに対応する授受情報により示される時間帯および電力量と、該参加者IDに対応する取引履歴により示される取引時間帯および取引電力量とが一致する」について、完全に一致していなくても、略一致していてもよい。ここで、「受信した参加者IDに対応する授受情報により示される時間帯と、参加者IDに対応する取引履歴により示される取引時間帯とが略一致する」とは、該時間帯と、該取引時間帯との差分が生じていたとしても、該差分により電力取引市場の電力取引に支障がないという意味である。また、「受信した参加者IDに対応する授受情報により示される電力量と、参加者IDに対応する取引履歴により示される取引電力量とが略一致する」とは、該電力量と、該取引電力量との差分が生じていたとしても、該差分により電力取引市場の電力取引に支障がないという意味である。これらの差分は、たとえば、市場サーバ300の管理者などにより調整される。
【0142】
従来の電力取引システムにおいては、悪意のある参加者が電力取引市場に参加する場合がある。たとえば、悪意のある参加者としての電力購入者が、高額で電力を購入することにより、電力の買い占めを行う場合がある。この場合には、電力取引市場の混乱などを招く場合がある。このように、参加者の信頼性が担保されずに、電力取引市場が提供されてしまうという問題が生じ得る。
【0143】
そこで、本実施の形態においては、
図7に示すように、市場サーバ300は、参加者IDと、該参加者IDに対応する参加者の取引履歴に基づいて設定される評価ポイントを記憶する。そして、
図9に示すように、市場サーバ300は、評価ポイントが第1閾値以上である場合に、該評価ポイントに対応付けられた参加者IDにより特定される参加者による電力取引市場への参加を許可する。したがって、本実施形態によれば、参加者の信頼性が担保された電力取引市場を提供することができる。
【0144】
また、
図10に示すように、市場サーバ300は、評価ポイントを、該評価ポイントに対応付けられた前記参加者IDにより特定された前記参加者の取引履歴に基づいて増減させる。したがって、電力取引システム1000は、電力取引市場における電力取引を参加者に促進することができる。
【0145】
また、
図10の達成度の式に示すように、参加者の取引履歴は、該参加者により取引きされた取引電力量(実数A)と、加者により取引きされた電力取引時間(実数B)とを含む。したがって、電力取引システム1000は、取引電力量および電力取引時間の増加を参加者に促進することができる。
【0146】
また、参加者の取引履歴は、参加者により取引きされた取引電力価格(実数C)と、全体の電力のうち再生エネルギー電力の比率(実数D)とを含む。したがって、電力取引システム1000は、再生エネルギー電力および取引電力価格の増加を参加者に促進することができる。
【0147】
また、市場サーバ300は、取引データの内容が適切条件を満たせば評価ポイントを増加させ、取引データの内容が前記適切条件を満たさなければ評価ポイントを減少させる(
図11参照)。したがって、電力取引システム1000は、取引データの内容が適切条件を満たすことを参加者に促進することができる。
【0148】
また、
図11に示すように、適切条件は、前記取引データに含まれる取引電力価格が第1正常範囲内であるという第1適切条件を含む。したがって、電力取引システム1000は、取引電力価格が第1正常範囲内となることを参加者に促進することができる。
【0149】
また、
図11に示すように、適切条件は、前記取引データに含まれる取引電力量が第2正常範囲内であるという第2適切条件を含む。したがって、電力取引システム1000は、取引電力価格が第2正常範囲内となることを参加者に促進することができる。
【0150】
また、
図11に示すように、適切条件は、売却される電力の生成手法を示す生成情報が正確であることを示す情報を取得するという第3適切条件を含む。したがって、電力取引システム1000は、売却される電力の生成手法を正確にすることを参加者に促進することができる。
【0151】
また、取引データは、電力取引時間帯と、取引電力量とを含む。そして、
図11に示すように、適切条件は、参加者により、前記電力取引時間帯で、前記取引電力量の電力を取引したという第4適切条件を含む。したがって、電力取引システム1000は、参加者が意図した電力取引時間帯で意図した取引電力量の電力取引を行うことを該参加者に促進することができる。
【0152】
[利益]
次に、
図9で示した利益(大利益、小利益)を説明する。
図12は、本実施の形態の利益の一覧を示す図である。利益は、第1利益、第2利益、第3利益、および第4利益を含む。さらに、第1利益は、第1小利益と、第1大利益とを含む。第2利益は、第2小利益と、第2大利益とを含む。第3利益は、第3小利益と、第3大利益とを含む。第4利益は、第4小利益と、第4大利益とを含む。
【0153】
第1利益は、該第1利益が付与されていない場合と比較して、取引可能電力量が増加するという利益である。取引可能電力量は、取引を行うことができる電力量(1回の取引で購入または売却できる電力量)である。第1小利益は、該第1小利益が付与されていない場合と比較して、取引可能電力量がX1増加するという利益である。また、第1大利益は、該第1大利益が付与されていない場合と比較して、取引可能電力量がX2増加するという利益である。ただし、X2はX1よりも大きい。
【0154】
このように、評価ポイントが高い程、該評価ポイントに対応付けられた参加者が取引できる電力量(取引可能電力量)が増加する。したがって、電力取引システム1000は、評価ポイントを高くした参加者の取引電力量を増加させることから、該参加者に有利な電力取引を実現させることができる。
【0155】
第2利益は、該第2利益が付与されていない場合にはエージェント装置100がアクセスできない電力取引データにアクセス可能となる利益である。エージェント装置100は、該電力取引データにアクセスすることにより、該エージェント装置100の表示装置104に該電力取引画面を表示させることができる。
【0156】
図13は、電力取引画面の一例である。
図13の電力取引画面として、自分および他の参加者による取引情報(取引時間帯、取引電力量、および取引電力価格)が表示される。
図13の例では、取引時間帯がA1年B1月C1日E1~F1時であり、取引電力量がG1kWhであり、取引電力価格がH1円である例が示されている。
図13の例では、一部の取引情報のみが表示されてが、実際は、多数の取引情報が表示される。
【0157】
参加者は、取引情報を視認することにより、たとえば、どの時間帯で有利な取引を行えるなどを確認できる。有利な取引とは、参加者が電力売却者であれば、高く電力を売ることであり、参加者が電力購入者であれば、安く電力を買うことである。また、
図13の例では、プライベート保護により、他の参加者が特定される情報は表示されない。
【0158】
本実施の形態では、第2小利益は、過去の所定期間(たとえば、1か月)の電力取引画面を表示できるだけの電力取引データにアクセス可能となる利益である。また、第2大利益は、全ての期間の電力取引画面を表示できるだけの電力取引データにアクセス可能となる利益である。
【0159】
本実施の形態においては、第2大利益と第2小利益との差分は、取引情報の期間である構成を説明した。変形例として、該差分は、取引情報における情報の種別としてもよい。
【0160】
このように、評価ポイントが高い程、エージェント装置100がアクセス可能な電力取引データが増加する。したがって、電力取引システム1000は、評価ポイントを高くした参加者はより多くの取引情報を視認できるから、該参加者に有利な電力取引を実現させることができる。
【0161】
第3利益は、該第3利益が付与されていない場合と比較して、市場サーバ300が、優先的に電力取引を約定させるという利益である。また、このような第3利益が採用される場合には、市場サーバ300が、参加者同士の約定の権限を有する。
【0162】
第3小利益は、約定優先度が上昇するという利益である。また、第3大利益は、約定優先度がさらに上昇するという利益である。たとえば、第3小利益が付与されている電力購入者の入札条件と、第3小利益が付与されていない電力購入者の入札条件とが同一または略同一である場合には、市場サーバ300は、第3小利益が付与されている電力購入者の入札を優先的に約定させる。また、第3大利益が付与されている電力購入者の入札条件と、第3大利益が付与されていない電力購入者(第3小利益が付与されている電力購入者または第3小利益が付与されていない電力購入者)の入札条件とが同一または略同一である場合には、市場サーバ300は、第3大利益が付与されている電力購入者の入札を優先的に約定させる。
【0163】
第4利益は、該第4利益が付与されていない場合と比較して、再生エネルギー電力の取引可能電力量が増加するという利益である。第4小利益は、該第4小利益が付与されていない場合と比較して、再生エネルギー電力の取引可能電力量がY1増加するという利益である。また、第4大利益は、該第4大利益が付与されていない場合と比較して、再生エネルギー電力の取引可能電力量がY2増加するという利益である。ただし、Y2はY1よりも大きい。
【0164】
評価ポイントが高い電力売却者は、「売却する再生エネルギー電力が、他の電力であるという」虚偽を行う可能性は極めて低い。したがって、電力売却者の評価ポイントが増加すると、該電力売却者による再生エネルギー電力の売却可能量が増加する。したがって、電力購入者は、安心して、該電力売却者から再生エネルギー電力を購入することができる。
【0165】
ところで、再生エネルギー電力の生成量は、時間帯により変動する場合がある。再生エネルギー電力が、たとえば、太陽光発電により生成されるのであれば、再生エネルギー電力の生成量は、日照時間によって異なる。したがって、電力売却者は、再生エネルギー電力の生成時間帯を考慮して、再生エネルギー電力の売却時間帯を計画する場合がある。
【0166】
仮に、評価ポイントが低い電力購入者の再生エネルギー電力の購入量が多い場合には、該電力購入者の要求条件に含まれている電力取引時間帯では、再生エネルギー電力の取引を行わない可能性がある。この場合には、電力売却者は、再生エネルギー電力の売却時間帯を計画したにもかかわらず、該売却時間帯で電力を売却できず、該電力売却者は損害を被る場合がある。そこで、本実施の形態においては、電力購入者の評価ポイントが増加すると、該電力購入者による再生エネルギー電力の購入可能量が増加させる。換言すると、電力購入者の評価ポイントが低いと、該電力購入者による再生エネルギー電力の購入可能量も低くなる。したがって、電力取引システム1000は、電力売却者の上述の損害を発生させることなく、スムーズな電力取引を実現することができる。
【0167】
また、市場サーバ300が、
図9~
図12で説明した処理を実行可能なプログラムは、記憶部306(たとえば、ROM76)に記憶されている。
【0168】
なお、本実施の形態においては、
図9に示すように、第1小利益、第2小利益、第3小利益、および第4小利益が付与される第2閾値は、全て同一である(第2閾値は、全て、10ポイントである)構成を説明した。しかしながら、第1小利益、第2小利益、第3小利益、および第4小利益のうち少なくとも2つの小利益の各々は、第2閾値が異なっていてもよい。
【0169】
また、本実施の形態においては、
図9に示すように、第1大利益、第2大利益、第3大利益、および第4大利益が付与される第3閾値は、全て同一である(第3閾値は、全て、20ポイントである)構成を説明した。しかしながら、第1大利益、第2大利益、第3大利益、および第4大利益のうち少なくとも2つの大利益の各々は、第3閾値が異なっていてもよい。また、第1利益~第4利益とは別の利益が採用されてもよい。
【0170】
[ポイント表示]
図7でも説明したように、市場サーバ300は、評価ポイントを表示することができる。たとえば、電力購入者が、要求条件をエージェント装置100に入力した場合において、該要求条件に対する入札者が複数いる場合には、該エージェント装置100は、該複数の入札者の評価ポイントを表示するようにしてもよい。
図14は評価ポイントの表示例である。
【0171】
図14の例では、参加者ID7については、取引希望時間帯、取引希望電力量、および電力希望価格が対応付けられているとともに、評価ポイントが25である旨が対応付けられている。提示者(電力購入者または電力売却者)は、評価ポイントを参照して該画面から入札者(たとえば、評価ポイントが高い入札者)を選択することができる。したがって、提示者は、評価ポイントを認識することができ、その結果、信頼性の高い電力取引を行うことができる。また、参加者は、自分のエージェント装置100に表示された評価ポイントを視認することができる。
【0172】
[フローチャート]
図15および
図16は、本実施の形態のエージェント装置100と、市場サーバ300との処理を示すフローチャートである。
図15は、取引開始フローであり、エージェント装置100が、入力画面(
図5参照)を表示したときに開始される。
【0173】
ステップS2において、エージェント装置100は、参加開始ボタン378(
図5参照)が操作されたか否かを判断する。ステップS2でNOと判断されるまで、エージェント装置100は、ステップS2の処理を繰り返す。ステップS2でYESと判断されると、処理は、ステップS4に進む。
【0174】
ステップS4において、エージェント装置100は、暗号鍵1121で取引データを暗号化することにより暗号化データを生成する。そして、エージェント装置100は、入力された参加者IDと、暗号化データを市場サーバ300に送信する。
【0175】
ステップS6において、市場サーバ300は、該暗号化データを受信する。そして、ステップS8において、市場サーバ300は、暗号化データを復号することにより、取引データ、参加者ID、および評価ポイントを取得する。
【0176】
次に、ステップS10において、市場サーバ300は、該取得した参加者IDに対応付けられている評価ポイントと、該取得した評価ポイントとが一致しているか否かを判断する。双方の評価ポイントが一致していない場合には(ステップS10でNO)、ステップS14において、市場サーバ300は、暗号鍵は改ざんされていると判断する。その後、市場サーバ300は、暗号鍵は改ざんされた旨をエージェント装置100に送信するとともに、
図15の処理は終了する。
【0177】
一方、双方の評価ポイントが一致している場合には(ステップS10でYES)、ステップS12において、市場サーバ300は、暗号鍵は改ざんされていないと判断する。次に、ステップS16において、ステップS8で復号された取引データの内容が第1適切条件および第2適切条件を満たすか否かを判断する。取引データの内容が第1適切条件および第2適切条件の少なくとも一方を満たさない場合には、ステップS20において、市場サーバ300は、評価ポイントを減少させる。
【0178】
一方、取引データの内容が第1適切条件および第2適切条件のいずれも満たす場合には、ステップS18において、市場サーバ300は、評価ポイントを増加させる。ステップS18またはステップS20の後、市場サーバ300は、取引データを記憶して、取引開始フローを終了する。
【0179】
図16は、取引終了フローであり、市場サーバ300が、約定した取引の電力取引時間帯の終了時刻となった場合に実行されるフローチャートである。ステップS104において、市場サーバ300は、取引データの内容は、第4適切条件を満たすか否かを判断する。
【0180】
取引データの内容が第4適切条件を満たさない場合には(ステップS104でNO)、ステップS108において、市場サーバ300は、評価ポイントを減少させる。一方、取引データの内容が第4適切条件を満たす場合には(ステップS104でYes)、ステップS106において、市場サーバ300は、評価ポイントを増加させる。
【0181】
ステップS110において、市場サーバ300は、評価ポイントに応じたフラグ制御を実行する。ステップS110においては、評価ポイントが第2閾値以上になった場合には、市場サーバ300は、小利益を付与する(
図7の小利益フラグを対応付ける)。また、ステップS110においては、評価ポイントが第3閾値以上になった場合には、市場サーバ300は、大利益を付与する(
図7の大利益フラグを対応付ける)。また、ステップS110においては、評価ポイントが第1閾値未満になった場合には、市場サーバ300は、電力取引子市場へのアクセスを禁止する(
図7の非許可フラグを対応付ける)。
【0182】
次に、市場サーバ300は、評価ポイントが対応付けられた暗号鍵を生成し、エージェント装置100に送信する。次に、ステップS120において、エージェント装置100は、暗号鍵を受信すると、記憶部112に、暗号鍵1121として記憶する(
図8参照)。
【0183】
[変形例]
上記の実施の形態においては、参加者評価は、評価ポイントである構成を説明した。しかしながら、参加者評価は、他の情報としてもよい。たとえば、参加者評価は、参加者ランクとしてもよい。参加者ランクは、たとえば、5段階で構成されており、第1ランク、第2ランク、第3ランク、第4ランク、第5ランクにより構成される。
【0184】
たとえば、第1ランクは、エージェント装置100による電力取引市場へのアクセスが禁止されるランクである。第2ランクは、エージェント装置100による電力取引市場へのアクセスが許容されるランクである。第3ランクは、上述の小利益が付与されるランクである。第4ランクは、上述の大利益が付与されるランクである。第5ランクは、大利益よりもさらに大きな利益が付与されるランクである。
【0185】
参加者ランクの初期ランクは、第2ランクである。また、市場サーバ300は、第1更新条件または第2更新条件が成立したときに、参加者ランクを更新する。市場サーバ300は、たとえば、上記の評価ポイントを増加させる条件が1以上の回数成立したときに、参加者ランクを上のランクに上昇させる。また、市場サーバ300は、たとえば、上記の評価ポイントを減少させる条件が1以上の回数成立したときに、参加者ランクを下のランクに下降させる。
【0186】
第1ランクは、たとえば、「ブラックリスト会員」と称される。第2ランクは、たとえば、「レギュラー会員」と称される。第3ランクは、たとえば、「シルバー会員」と称される。第4ランクは、たとえば、「ゴールド会員」と称される。第5ランクは、たとえば、「プラチナ会員」と称される。
【0187】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0188】
100 エージェント装置、102 入力装置、104 表示装置、104A 表示領域、150 制御装置、200 ネットワーク、300 市場サーバ、304 処理部、306 記憶部、350 入力画面、351 文字画像、1000 電力取引システム。